説明

画像形成装置

【課題】 被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成し、画像形成後に熱定着がなされた被記録媒体に再び画像を形成可能な画像形成装置において、被記録媒体の抵抗値の変動を効率的に抑制して2面目にも良好な画像を形成すること。
【解決手段】 環境の温度,湿度を読み込むことによって(S2)、用紙の抵抗値を推定し(S3)、その抵抗値が高くなるにつれて、定着器下流に設けられたファンの駆動状態を、ファン停止(S7),ファン低速(S6),ファン中速(S5),ファン高速(S4)と切り換えて冷却作用を順次高める。この制御によって、用紙の抵抗値が高いほどその用紙を強く冷却して更なる抵抗値の上昇を抑制することができ、延いては2面目にも良好な画像を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に、その被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、画像形成後に熱定着がなされた被記録媒体に再び画像を形成可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば用紙等の被記録媒体に、その被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して記録材を付着させる電子写真方式で画像を形成する画像形成装置では、被記録媒体に形成された画像を熱定着することがなされている。例えば、記録材がトナーである場合、この熱定着によってトナーを溶融させて被記録媒体に付着させることにより、画像を安定化することができる。また、この種の画像形成装置では、上記のように画像が熱定着された後の被記録媒体では水蒸気の蒸発が起こり、その被記録媒体が乾燥して熱容量が低下する。そこで、被記録媒体の熱容量が小さくなり過ぎて両面印刷などにおける2面目の画像形成時にトナーの過溶着が発生するのを防止するため、湿度が所定値以下のときには定着後の被記録媒体に冷却風を吹き付けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−27368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、被記録媒体の乾燥は、その被記録媒体の抵抗値にも影響を及ぼす。被記録媒体の抵抗値は、その被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式で画像形成がなされる場合、その画像の形成状態に大きな影響を及ぼす。このため、水蒸気の蒸発によって被記録媒体の抵抗値が上昇するような場合も、上記のように冷却風を吹き付けて被記録媒体の乾燥を抑制するのが望ましい。
【0004】
しかしながら、用紙等の被記録媒体の熱容量とその抵抗値とは必ずしも1対1の関係で対応するものではなく、例えば、湿度が高くても温度が低いときには被記録媒体の抵抗値は高くなる。このような状況下で冷却風を吹き付けずに2面目の画像を形成すると、1面目の画像の熱定着によって被記録媒体の抵抗値が更に高くなり、2面目に良好な画像が形成できない場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成し、画像形成後に熱定着がなされた被記録媒体に再び画像を形成可能な画像形成装置において、被記録媒体の抵抗値の変動を効率的に抑制して2面目にも良好な画像を形成することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、被記録媒体に、その被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段により被記録媒体に形成された画像を熱定着する定着手段と、該定着手段によって画像の熱定着がなされた被記録媒体を、上記画像形成手段まで再び搬送して画像を形成させる再搬送手段と、上記定着手段による画像の熱定着がなされてから上記再搬送手段によって上記画像形成手段まで搬送される被記録媒体の搬送経路途中に設けられ、その被記録媒体を冷却する冷却手段と、上記被記録媒体の抵抗値と関連するパラメータを検出するパラメータ検出手段と、該パラメータ検出手段が検出したパラメータから上記被記録媒体の抵抗値を推測する抵抗値推測手段と、上記冷却手段を制御して、上記抵抗値推測手段によって推測される抵抗値が高いほど、上記冷却手段による冷却作用を高める冷却制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明の画像形成装置では、画像形成手段は、被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式でその被記録媒体に画像を形成する。定着手段は、画像形成手段により被記録媒体に形成された画像を熱定着し、その熱定着がなされた被記録媒体を、再搬送手段が上記画像形成手段まで再び搬送して画像形成に呈する。
【0008】
また、上記定着手段による画像の熱定着がなされてから上記再搬送手段によって上記画像形成手段まで搬送される被記録媒体の搬送経路途中に設けられた冷却手段は、その被記録媒体を冷却する。更に、パラメータ検出手段は上記被記録媒体の抵抗値と関連するパラメータを検出し、抵抗値推測手段は、上記パラメータ検出手段が検出したパラメータから上記被記録媒体の抵抗値を推測する。そして、冷却制御手段は、上記冷却手段を制御して、上記抵抗値推測手段によって推測される抵抗値が高いほど、上記冷却手段による冷却作用を高める。
【0009】
このため、本発明の画像形成装置では、パラメータ検出手段によって検出された上記パラメータに対応する抵抗値が高いほど、被記録媒体を強く冷却して更なる抵抗値の上昇を抑制することができる。このため、被記録媒体の抵抗値の変動を効率的に抑制して、2面目にも良好な画像を形成することができる。
【0010】
なお、上記冷却制御手段による冷却手段の制御とは、単にオンオフが切り替えられるだけであってもよく、常に駆動されていて駆動量のみが制御されてもよく、オンオフと駆動量との双方が制御されてもよい。また、上記1面目,2面目は必ずしも表裏面である必要はなく、被記録媒体の片面に1面目,2面目の画像が重ね合わされてもよい。
【0011】
更に、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記パラメータ検出手段は、温度と湿度を上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、その温度と湿度とから被記録媒体の抵抗値を推測するようにしてもよい。すなわち、前述のように湿度だけでは被記録媒体の抵抗値を正しく推測することは難しいが、温度と湿度とを検出することによって被記録媒体の抵抗値を正しく推測することができる。また、温度や湿度を検出するパラメータ検出手段(例えばセンサ)は、画像形成装置への設置が容易で、既存の画像形成装置に後付けすることもできる。なお、上記パラメータ検出手段は、環境の温度を検出してもよく、被記録媒体の温度を検出してもよい。
【0012】
また、上記パラメータ検出手段は、被記録媒体を介して通電される電流と電圧を上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、その電流と電圧とから被記録媒体の抵抗値を推測するようにしてもよい。この場合、被記録媒体の抵抗値が当該被記録媒体を介して通電される電流と電圧から推測されるので、上記冷却作用の制御をより適切に行うことができる。しかも、この場合、被記録媒体の種類に起因する抵抗値の差も検出することができる。なお、この場合、定着後の被記録媒体の抵抗値を検出すると一層効果的であるが、定着前若しくは画像形成前の被記録媒体の抵抗値を検出してもよく、その場合はパラメータ検出手段(例えばセンサ)の設置が容易になる。
【0013】
また、上記転写電流を所定の電流値に定電流制御する定電流制御手段を、更に備え、上記パラメータ検出手段は、上記画像形成手段によって画像を形成する際に上記転写電流制御手段が出力する転写電圧を上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、その転写電圧から被記録媒体の抵抗値を推測するようにしてもよい。この場合、センサ等を追加することなく、既存の定電流制御手段の信号を利用して制御を行うこともできる。なお、上記定電流制御手段の代わりに上記転写電流を定電圧制御する定電圧制御手段を備えた場合は、パラメータ検出手段は上記転写電流の電流値を上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、その電流値から被記録媒体の抵抗値を推測するようにしてもよい。
【0014】
更に、上記いずれかに記載の画像形成装置において、上記冷却制御手段は、上記冷却手段による冷却作用を複数の段階に切り替えて制御してもよい。この場合、上記冷却作用のより詳細な制御が可能となり、2面目にも一層良好な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1の概略構成を表す縦断面図である。なお、以下の説明においては、図1における左側を前方とする。
【0016】
(レーザプリンタの全体構成)
このレーザプリンタ1は、直接転写タンデム方式のカラーレーザプリンタであって、図1に示すように、略箱型の本体ケーシング2を備えており、本体ケーシング2の上面には、画像形成後の被記録媒体としての用紙4が積載される排紙トレイ5が形成されている。また、本体ケーシング2の下部には、画像を形成するための用紙4が積載される給紙カセット7が前方へ引き出し可能に装着されている。給紙カセット7の前端上方位置には、用紙4を搬送する給紙ローラ9が設けられ、その給紙ローラ9による用紙搬送方向下流側には、給紙ローラ9にて搬送される用紙4を1枚毎に分離する分離ローラ10と分離パッド11とが設けられている。
【0017】
給紙カセット7の最上位の用紙4は、図示省略した機構によって給紙ローラ9に向かって押圧され、給紙ローラ9の回転によって分離ローラ10と分離パッド11との間に挟み込まれたときに1枚毎に分離される。そして、分離ローラ10と分離パッド11との間から送り出された用紙4は、一対の搬送ローラ12によって、レジストローラ13へ送られる。レジストローラ13では、その用紙4を所定のタイミングで、後方のベルトユニット15上へ送り出す。
【0018】
ベルトユニット15は、本体ケーシング2に対して着脱可能とされており、前後に離間して配置された一対のベルト支持ローラ16,17間に水平に架設される搬送ベルト18を備えている。搬送ベルト18は、ポリカーボネート等の樹脂材からなる無端状のベルトであり、後側のベルト支持ローラ17が回転駆動されることにより図1の時計回り方向に循環移動して、その上面に載せられた用紙4を後方へ搬送する。搬送ベルト18の内側には、後述する画像形成ユニット26が有する各感光体ドラム31と対向配置される4つの転写ローラ19が前後方向に一定間隔で並んで設けられ、各感光体ドラム31と対応する転写ローラ19との間に搬送ベルト18を挟んだ状態となっている。
【0019】
本体ケーシング2内における上部には、スキャナユニット20が設けられ、その下側に画像形成手段の一例としてのプロセス部25が設けられ、更にそのプロセス部25の下側に前述のベルトユニット15が配置されている。スキャナユニット20は、所定の画像データに基づいた各色毎のレーザ光Lを対応する感光体ドラム31の表面上に高速走査にて照射する。スキャナユニット20の構成については後に詳述する。
【0020】
プロセス部25は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色に対応した4つの画像形成ユニット26を備えており、これらの画像形成ユニット26が前後に並んで配置されている。なお、本実施の形態では、レーザプリンタ1の前面側からブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの順で各画像形成ユニット26が並んでいる。各画像形成ユニット26は、感光体ドラム31、スコロトロン型帯電器32、及び、現像カートリッジ34等を備えて構成されている。
【0021】
感光体ドラム31は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層をポリカーボネートなどからなる正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。スコロトロン型帯電器32は、感光体ドラム31の後側斜め上方において、感光体ドラム31と接触しないように所定間隔を隔てて、感光体ドラム31と対向配置されている。このスコロトロン型帯電器32は、タングステン等の帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させることにより、感光体ドラム31の表面を一様に正極性に帯電させる。
【0022】
現像カートリッジ34は、略箱形をなし、その内部には、上部にトナー収容室38が設けられ、その下側に供給ローラ39、現像ローラ40、及び、層厚規制ブレード41が設けられている。各トナー収容室38には、記録材として、ブラック,シアン,マゼンタ,またはイエローの各色の正帯電性非磁性1成分トナーがそれぞれ収容されている。また、各トナー収容室38には、トナーを撹拌するためのアジテータ42が設けられている。
【0023】
供給ローラ39は、金属製のローラ軸を導電性の発泡材料で被覆することにより構成されており、現像ローラ40は、金属製のローラ軸を導電性のゴム材料で被覆することにより構成されている。トナー収容室38から放出されたトナーは、供給ローラ39の回転により現像ローラ40に供給され、供給ローラ39と現像ローラ40との間で正に摩擦帯電される。更に、現像ローラ40上に供給されたトナーは、現像ローラ40の回転に伴って、層厚規制ブレード41と現像ローラ40との間に進入し、ここで更に十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ40上に担持される。
【0024】
感光体ドラム31の表面は、その回転時、先ずスコロトロン型帯電器32により一様に正帯電される。その後、スキャナユニット20からのレーザ光Lの高速走査により露光されて、用紙4に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ40の回転により、現像ローラ40上に担持され正帯電されているトナーが、感光体ドラム31に対向して接触するときに、感光体ドラム31の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム31の静電潜像は可視像化され、感光体ドラム31の表面には、露光部分にのみトナーが付着したトナー像が担持される。
【0025】
その後、各感光体ドラム31の表面上に担持されたトナー像は、搬送ベルト18によって搬送される用紙4が感光体ドラム31と転写ローラ19との間を通るときに、感光体ドラム31から転写ローラ19に向けて定電流制御で通電される転写電流によって、用紙4に順次転写される。こうしてトナー像が転写された用紙4は、次いで定着手段の一例としての定着器43に搬送される。
【0026】
定着器43は、本体ケーシング2内における搬送ベルト18の後方に配置されている。この定着器43は、ハロゲンランプ等の熱源を備えて回転駆動される加熱ローラ44と、加熱ローラ44の下方において、加熱ローラ44を押圧するように対向配置され従動回転される加圧ローラ45とを備えている。この定着器43では、4色のトナー像を坦持した用紙4を、加熱ローラ44と加圧ローラ45とによって狭持搬送しながら加熱することにより、トナー像を用紙4に熱定着させる。そして、トナー像が熱定着された用紙4は、定着器43の斜め後上方に配置された排紙ローラ46と2つのピンチローラ47との間に挟まれてカールを除去されつつ更に搬送され、本体ケーシング2の上部に設けられた最終排紙ローラ48と2つのピンチローラ49とに挟まれて、更にカールを除去された上で前述の排紙トレイ5に排出される。
【0027】
スキャナユニット20は、箱型の樹脂製のハウジング50を備え、その内部における略中央に、ポリゴンモータ51によって駆動される例えば6面のポリゴンミラー52が回転可能に設けられている。ハウジング50には、ポリゴンミラー52の右側近傍に4つのレーザ光源(図示省略)が次のように設けられている。
【0028】
ブラックの画像データに対応するレーザ光Lkを出射するレーザ光源は、やや上方位置から斜め下方に位置するポリゴンミラー52の一偏向面に向けられ、ポリゴンミラー52で偏向されたレーザ光Lkはレーザプリンタ1の前面側に導かれ第1走査レンズ53(例えばfθレンズ)を透過する。続いて、そのレーザ光Lkは反射ミラー54,55に反射され第2走査レンズ56(例えばトーリックレンズ)を透過して、最も前方に配設された感光体ドラム31の表面上に照射される。
【0029】
イエローに対応するレーザ光源は、やや下方位置から斜め上方に位置するポリゴンミラー52の一偏向面(上記と同じ偏向面)に向けられ、その偏向面で偏向されたレーザ光Lyは、レーザプリンタ1の前面側に導かれ第1走査レンズ53を透過する。続いて、そのレーザ光Lyは反射ミラー57,58,59に反射され第2走査レンズ60を透過して、前から2番目に配設された感光体ドラム31の表面上に照射される。
【0030】
マゼンタ対応するレーザ光源は、やや上方位置から斜め下方に位置するポリゴンミラー52の一偏向面(上記偏向面に隣接する偏向面)に向けられ、その偏向面で偏向されたレーザ光Lmは、レーザプリンタ1の後面側に導かれ第1走査レンズ61を透過する。続いて、そのレーザ光Lmは反射ミラー62,63,64に反射され第2走査レンズ65を透過して、前から3番目に配設された感光体ドラム31の表面上に照射される。
【0031】
シアンに対応するレーザ光源は、やや下方位置から斜め上方に位置するポリゴンミラー52の一偏向面(マゼンタと同様の偏向面)に向けられ、その偏向面で偏向されたレーザ光Lcは、レーザプリンタ1の後面側に導かれ第1走査レンズ61を透過する。続いて、そのレーザ光Lcは反射ミラー66,67に反射され第2走査レンズ68を透過して、最も後方に配設された感光体ドラム31の表面上に照射される。なお、このような構成を有するスキャナユニット20は、例えば特開2007−253480号公報等により公知であるので参照されたい。
【0032】
また、排紙ローラ46は正逆両方向に回転可能に構成され、給紙カセット7の下面には、排紙ローラ46の逆回転時に図1に二点鎖線で示すように搬送される用紙4を搬送ローラ12まで搬送する再搬送手段の一例としての再搬送機構70が設けられている。この再搬送機構70は、給紙カセット7の下面に沿って前後方向に延びる再搬送経路71と、排紙ローラ46から下方に搬送された用紙4を再搬送経路71へ案内する第1シュート72と、を備えている。また、再搬送経路71には、回転しながら用紙4に接触することによりその用紙4を前方に向けて搬送する複数組の再搬送ローラ73が設けられ、更に、再搬送機構70の前端には、再搬送ローラ73によって再搬送経路71の前端まで搬送された用紙4を搬送ローラ12に案内する第2シュート74が設けられている。
【0033】
このため、プロセス部25によって片面(1面目)に画像が形成された用紙4を、その後端近傍が排紙ローラ46と2つのピンチローラ47とに挟まれるまで搬送した後、排紙ローラ46を逆回転させて再搬送機構70により搬送ローラ12まで搬送することにより、用紙4のもう片面(2面目)にも画像を形成するいわゆる両面印刷が可能となる。
【0034】
(送風装置の構成)
また、定着器43の用紙搬送方向下流側には、熱定着後の用紙4を冷却するための冷却手段の一例としての送風装置80が設けられている。図2は、送風装置80の横断面を表す模式図である。図2に示すように、送風装置80は、側方に設けられたファン81と、そのファン81が発生した風を案内するダクト82とを有している。このダクト82は、図1に示すように、定着器43の直近の用紙搬送方向下流側に開口部82Aを有している。また、この開口部82Aは、加熱ローラ44からピンチローラ47に到る間の用紙4の搬送経路途中の、上記再搬送時の用紙経路と重畳しない位置に開口している。
【0035】
このため、ファン81を駆動することにより、定着器43を出た直後の用紙4に風を吹き付けてその用紙4を冷却することができ、用紙4の熱乾燥を良好に抑制することができる。また、排紙ローラ46が逆回転して用紙4を再搬送機構70へ送るときは、用紙4はダクト82の後方を通って再搬送機構70方向へ送られる。ここで、図2ではダクト82の側方にファン81を設けているが、図3に示すように、ダクト82の下方(後方であってもよい)にファン81を設けてもよいし、ファンはブロアーファンであってもよい。
【0036】
(制御系の構成及びその処理)
次に、図4は、レーザプリンタ1の制御系の構成を表すブロック図である。図4に示すように、ファン81を駆動するファンモータ85は、上記画像データが入力されるインタフェース86や、環境の湿度,温度を検出するパラメータ検出手段の一例としての湿度センサ88,温度センサ89と共に、冷却制御手段の一例としての制御部90に接続されている。なお、制御部90には、前述のポリゴンモータ51なども接続されているが、以下に説明する処理の主要部とは直接関連がないので図示省略した。
【0037】
制御部90は、CPU91,ROM92,RAM93を備えたマイクロコンピュータとして構成され、ROM92に記憶されたプログラムに基づいて次のような処理を実行する。図5は、インタフェース86に印刷設定等を含む画像データが入力されたときに、制御部90にて実行される処理を表すフローチャートである。
【0038】
図5に示すように、この処理では、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同様)にて、上記画像データの印刷設定等に基づき、前述の両面印刷が指示されているか否かが判断される。両面印刷が指示されている場合は(S1:Y)、S2にて、温度センサ89,湿度センサ88を介して温度及び湿度が読み込まれ、続くS3にて、その温度及び湿度に基づいて用紙4の抵抗値を推測し、推測された抵抗値が次のどの範囲にあるか判断される。
【0039】
すなわち、用紙4の抵抗値は、図6に例示するように温度と湿度との2軸を有する2次元マップによって一意に推定(推測)することができる。ここで、図6では、用紙4の抵抗値が高い順にA,B,C,Dとなるように、4つの範囲に分割がなされている。そこで、S3では、S2にて読み込まれた温度及び湿度に基づき、これらの温度及び湿度から推測される用紙4の抵抗値がA〜Dのどの範囲にあるかが判断されるのである。なお、制御部90は、S3において用紙4の抵抗値が推測される処理を実行することによって抵抗値推測手段として機能することになる。
【0040】
そして、用紙4の抵抗値がAの範囲にある場合は(S3:A)、S4にて、ファンモータ85を介してファン81が高速で駆動され、処理は後述のS8へ移行する。同様に、用紙4の抵抗値がBの範囲にある場合は(S3:B)、ファン81が中速で駆動され(S5)、Cの範囲にある場合は(S3:C)、ファン81が低速で駆動され(S6)、Dの範囲にある場合は(S3:D)、ファン81が停止されて(S7)、処理はS8へ移行する。また、前述のS1にて両面印刷が指示されていないと判断された場合は(S1:N)、処理はS1からS7へ直接移行し、ファン81が停止されて処理はS8へ移行する。
【0041】
S8では、プロセス部25を介して上記画像データに対応した周知の印刷処理が実行され、続くS9では、その印刷(画像形成)が終了したか否かが判断される。そして、印刷が終了するまで(S9:N)、S8の処理が繰り返し実行され、印刷が終了すると(S9:Y)、処理が一旦終了する。この印刷処理(S8)の実行中には、必要に応じて再搬送機構70による用紙4の再搬送が実行され、ファン81はS4〜S7にて設定された速度で駆動(または停止)され続ける。なお、ファン81は、用紙4が開口部82Aと対向しているタイミングでのみ、必要に応じて(S4〜S6)駆動されてもよい。
【0042】
(本実施の形態の効果及びその変形例)
このように、本実施の形態では、温度センサ89,湿度センサ88が検出した温度,湿度に対応する用紙4の抵抗値が高いほど、ファン81による冷却作用を高めている。このため、上記抵抗値が高いほど用紙4を強く冷却して更なる抵抗値の上昇を抑制することができる。従って、用紙4の抵抗値の変動を効率的に抑制して、2面目にも良好な画像を形成することができる。また、ファン81が必要以上に駆動されないので、消費電力及び騒音も低減することができる。更に、温度センサ89や湿度センサ88は、レーザプリンタ1への設置が容易で、既存のレーザプリンタに後付けすることもできるので、装置の製造コストも良好に低減することができる。なお、上記実施の形態では、環境の温度を検出しているが、用紙4の温度を検出するようにしてもよい。
【0043】
また、本発明は上記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、パラメータ検出手段としては、次のように種々の形態が考えられ、また、それらを組み合わせてもよい。
【0044】
前述のように、転写電流は定電流制御されている。そこで、図7に示すように、その転写電流の定電流制御を実行する転写電流制御回路100(定電流制御手段及びパラメータ検出手段の一例)を、湿度センサ88,温度センサ89の代わりに制御部90に接続してもよい。図8は、転写電流制御回路100の出力電圧(転写電圧)の変化を例示する説明図である。図8に示すように、点線で示すタイミングで感光体ドラム31と転写ローラ19との間に用紙4が挟まれたとすると、そのときに転写電圧は急上昇する。このときの上昇幅ΔVは、用紙4の抵抗値に影響される。
【0045】
そこで、この上昇幅ΔVに基づいて前述のようなファン81の制御を実行することが考えられる。その場合、前述のS2では、温度,湿度の代わりに上記上昇幅ΔVが読み込まれ、続くS3では、その上昇幅ΔVに対応する抵抗値の範囲がどの範囲に相当するか判断されるようにすればよい。この場合、新たにセンサ等を追加することなく、既存の転写電流制御回路100の信号を利用して上記制御を行うことができる。なお、転写電流が定電圧制御される場合は、転写電流の電流値を上記転写電圧の代わりに検出して用紙4の抵抗値を推測してもよい。
【0046】
また、図9に示すように、レジストローラ13を構成する一対のローラ13A,13Bを導電性材料で構成し、一方のローラ13Aを電流計210(パラメータ検出手段の一例)を介して直流電源211に接続し、他方のローラ13Bを抵抗器212を介して接地してもよい。この場合、電流計210にて検出される電流値は、ローラ13A,13Bに挟まれた用紙4の抵抗値に応じて変化する。そこで、前述のS2では、温度,湿度の代わりに上記電流値が読み込まれ、続くS3では、その電流値に対応する抵抗値の範囲がどの範囲に相当するか判断されるようにすればよい。この場合、用紙4の抵抗値が直接検出されるので、上記ファン速度の制御をより適切に行うことができる。しかも、この場合、用紙4の種類に起因する抵抗値の差も検出することができる。
【0047】
また、冷却手段としてはファン以外の構成を適用してもよく、ファン81を利用する場合であっても、図10に例示するように、定着器43を出てその下流に設けられた搬送ローラ344,345に挟まれている用紙4にファン81からの風を送ってもよい。但し、この場合、ファン81と反対側の搬送ローラ344はスポンジゴム等で構成し、ファン81側の搬送ローラ345は金属や熱伝導性のよい硬いゴム等で構成するのが望ましい。また、この場合、ファン81の制御は、片面印刷時も(S1:N)、搬送ローラ344,345の昇温を抑制するために、両面印刷時(S1:Y)と同様に行うようにするのが望ましい。更に、上記転写電流を通電する転写手段は、転写ローラ19のようなローラ型に限られるものではなく、コロトロンタイプの転写手段を使用してもよい。
【0048】
また更に、ファン81の制御は単なるオンオフの切り替えであってもよい。但し、上記各実施の形態のように、ファン81による冷却作用を複数の段階に切り替える場合、上記冷却作用のより詳細な制御が可能となり、2面目にも一層良好な画像を形成することができる。また、本発明はダイレクトタンデム方式のカラーレーザプリンタ以外にも、中間転写方式のカラーレーザプリンタ、4サイクル方式のカラーレーザプリンタ、モノクロレーザプリンタ等の種々の画像形成装置に適用することができる。また、現像方式としては、1成分現像方式だけでなく、2成分現像方式であってもよい。更に、再搬送手段は、両面印刷を行うものに限らず、用紙4の同じ面に画像を複数回重ねて形成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明が適用されたレーザプリンタの概略構成を表す縦断面図である。
【図2】そのレーザプリンタの送風装置の横断面を表す模式図である。
【図3】その送風装置の変形例の横断面を表す模式図である。
【図4】上記レーザプリンタの制御系の構成を表すブロック図である。
【図5】その制御系で実行される処理を表すフローチャートである。
【図6】その処理で使用される2次元マップを例示する説明図である。
【図7】上記制御系の変形例の構成を表すブロック図である。
【図8】その制御系における転写電圧の変化を例示する説明図である。
【図9】用紙の抵抗値を直接検出する構成を表す模式図である。
【図10】送風装置の変形例の構成を表す模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1…レーザプリンタ 4…用紙 13…レジストローラ
20…スキャナユニット 25…プロセス部 43…定着器
44…加熱ローラ 45…加圧ローラ 70…再搬送機構
80…送風装置 81…ファン 85…ファンモータ
86…インタフェース 88…湿度センサ 89…温度センサ
90…制御部 100…転写電流制御回路 210…電流計
211…直流電源 212…抵抗器 344,345…搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に、その被記録媒体を介して通電される転写電流を利用して電子写真方式で画像を形成する画像形成手段と、
該画像形成手段により被記録媒体に形成された画像を熱定着する定着手段と、
該定着手段によって画像の熱定着がなされた被記録媒体を、上記画像形成手段まで再び搬送して画像を形成させる再搬送手段と、
上記定着手段による画像の熱定着がなされてから上記再搬送手段によって上記画像形成手段まで搬送される被記録媒体の搬送経路途中に設けられ、その被記録媒体を冷却する冷却手段と、
上記被記録媒体の抵抗値と関連するパラメータを検出するパラメータ検出手段と、
該パラメータ検出手段が検出したパラメータから上記被記録媒体の抵抗値を推測する抵抗値推測手段と、
上記冷却手段を制御して、上記抵抗値推測手段によって推測される抵抗値が高いほど、上記冷却手段による冷却作用を高める冷却制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記パラメータ検出手段は、温度と湿度を上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、上記温度と湿度とから上記被記録媒体の抵抗値を推測することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記パラメータ検出手段は、被記録媒体を介して通電される電流と電圧とを上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、上記電流と電圧とから上記被記録媒体の抵抗値を推測することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記転写電流を所定の電流値に定電流制御する定電流制御手段を、
更に備え、
上記パラメータ検出手段は、上記画像形成手段によって画像を形成する際に上記転写電流制御手段が出力する転写電圧を上記パラメータとして検出し、上記抵抗値推測手段は、上記転写電圧から上記被記録媒体の抵抗値を推測することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記冷却制御手段は、上記冷却手段による冷却作用を複数の段階に切り替えて制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−54813(P2010−54813A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219849(P2008−219849)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】