説明

画像形成装置

【課題】装置を大型化することなく、スイッチバック動作時に記録紙が周辺のユニットに接触しないようにする。
【解決手段】補助ローラ72を、スイッチバックローラ対67と手差し用ガイド部材78との間で且つスイッチバック動作中の記録紙Pと第2ユニット9の内壁面との接触を防止する位置に配設し、スイッチバック動作中の記録紙Pを補助ローラ72に当接させながら搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録紙の搬送路の一方側のみに画像形成部を配設しておき、記録紙の一側の面に印刷した後に、該記録紙を表裏反転させて印刷部へ再供給して他側の面に印刷することで、記録紙の両面に印刷を行うようにした画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、用紙搬送路の途中に接続されてこの用紙搬送路を搬送される記録紙が送り込まれる反転路と、反転路に送り込まれた記録紙をスイッチバックさせて用紙搬送路へ送り出す用紙反転手段とを備えた画像形成装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−296848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像形成装置では、用紙反転手段を構成するスイッチバックローラを逆回転させることで水平方向に記録紙を送り出すようにしている。ここで、例えば、画像形成部とスイッチバックローラとの位置関係や装置内のスペース等の制約から、スイッチバック時の記録紙の送り出し方向を変更したいという要望がある。この場合には、スイッチバックローラ自体を回動させて送り出し方向を変更する等の特殊な動作が必要となる。
【0005】
しかしながら、送り出し方向を変更するためにスイッチバックローラを回動させた場合には、スイッチバックローラで挟持している記録紙も合わせて回動して、スイッチバックローラの周辺に配置されている他のユニットや装置カバー等に記録紙が接触するおそれがある。
【0006】
このように、記録紙が周辺のユニットに接触した状態でスイッチバックローラにより送り出されると、記録紙の表面に傷が付いてしまい、製品品質が劣化してしまうという問題があった。また、記録紙が周辺のユニットに接触しないように、記録紙の方向転換のための空間を装置本体内に確保しようとすると、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置を大型化することなく、スイッチバック動作時に記録紙が周辺のユニットに接触しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明は、スイッチバック手段とその近傍に配設された手差し手段との間に補助ローラを設け、スイッチバック動作中の記録紙表面に補助ローラを当接させて記録紙と手差し手段との接触を防止するようにした。
【0009】
具体的に、本発明は、記録紙の片側面に印刷を行う印刷部を備え、該印刷部にて一側の面に印刷された記録紙を表裏反転させて該印刷部へ再供給し且つ該印刷部にて他側の面に印刷することによって、該記録紙の両面に印刷を行う画像形成装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、前記印刷部にて印刷された後で表裏反転された前記記録紙をスイッチバックさせて、該記録紙の後端側から該印刷部の上流側へ供給するスイッチバック手段と、
前記スイッチバック手段の近傍に配設され、前記印刷部に供給する前記記録紙を手差し挿入するための手差し手段と、
前記スイッチバック手段と前記手差し手段との間に配設され、スイッチバック動作中の前記記録紙表面に当接して、該記録紙と該手差し手段との接触を防止する補助ローラとを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1の発明では、スイッチバック手段により、印刷部にて印刷された後で表裏反転された記録紙がスイッチバックされる。スイッチバックされた記録紙は、その後端側から印刷部の上流側へ供給される。スイッチバック手段の近傍には、印刷部に供給する記録紙を手差し挿入するための手差し手段が配設される。そして、スイッチバック手段と手差し手段との間には、スイッチバック動作中の記録紙表面に当接して、記録紙と手差し手段との接触を防止する補助ローラが配設される。
【0012】
このような構成とすれば、スイッチバック動作中の記録紙は、その表面が補助ローラに当接しながら印刷部の上流側へ供給されることとなり、スイッチバック動作中に記録紙表面が手差し手段に接触して傷が付いてしまう等の不具合を解消することができる。さらに、記録紙の搬送に伴って補助ローラが回転することで、スイッチバックする記録紙をスムーズに移動させることができる。
【0013】
また、スイッチバック動作中の記録紙が手差し手段に接触しないように、装置本体内のスペースを広く確保してしまうと、装置が大型化してしまうため好ましくないが、本発明では、必要最小限のスペースで記録紙のスイッチバックを行うことができるため、装置の小型化を図る上で有利となる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記スイッチバック手段及び前記補助ローラを収容する収容ユニットを備え、
前記補助ローラは、スイッチバック動作中の前記記録紙と前記収容ユニットの内壁面との接触を防止する位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2の発明では、スイッチバック手段及び補助ローラは、収容ユニットに収容される。補助ローラは、スイッチバック動作中の記録紙と収容ユニットの内壁面との接触を防止する位置に配設される。
【0016】
このような構成とすれば、スイッチバック動作中の記録紙は、その表面が補助ローラに当接しながら印刷部の上流側へ供給されることとなり、スイッチバック動作中に記録紙表面が収容ユニットの内壁面に接触して傷が付いてしまう等の不具合を解消することができる。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
前記補助ローラは、複数設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明では、補助ローラが複数設けられているため、補助ローラを適切に配置することで、スイッチバック動作中の記録紙が手差し手段等に接触してしまうことをより確実に防止することができる。また、補助ローラを所定の間隔をあけて配置することで、スイッチバック動作中の記録紙に加わる負荷を分散させるようにすれば、補助ローラに当接している記録紙が折れ曲がる等の不具合を解消することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スイッチバック動作中の記録紙は、その表面が補助ローラに当接しながら印刷部の上流側へ供給されることとなり、スイッチバック動作中に記録紙表面が手差し手段に接触して傷が付いてしまう等の不具合を解消することができる。さらに、記録紙の搬送に伴って補助ローラが回転することで、スイッチバックする記録紙をスムーズに移動させることができる。
【0020】
また、スイッチバック動作中の記録紙が手差し手段に接触しないように、装置本体内のスペースを広く確保してしまうと、装置が大型化してしまうため好ましくないが、本発明では、必要最小限のスペースで記録紙のスイッチバックを行うことができるため、装置の小型化を図る上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェットプリンタAの外観を示し、図2は、インクジェットプリンタAの内部の構成を概略的に示す。このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロックから通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいて記録紙P(図3、図6等参照)に印刷を行うものである。この記録紙Pは、所定の大きさの単票紙であり、この大きさとしては複数種類の大きさが予め設定されている(記録紙Pの大きさに応じて記録紙Pの長さ及び幅が決まっている)。
【0023】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1と、このプリンタ本体部1の筐体2の一側面の上部に着脱自在に取り付けられ且つ複数枚の記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態で収容可能なカセット5と、前記筐体2の上面に着脱自在に取り付けられた両面印刷ユニット7とを備えている。なお、本実施形態では、前記カセット5が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、前記カセット5に収容され且つプリンタ本体部1及び両面印刷ユニット7において搬送される記録紙Pの幅方向と一致している。
【0024】
図2に示すように、前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態で、後に詳細に説明するように記録紙Pの表裏両面に印刷することが可能になる。一方、記録紙Pの片面のみに印刷し、両面印刷が必要でない場合には、通常、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1から外しておく(図13参照)。但し、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態であっても、記録紙Pの片面のみに印刷することは可能である。両面印刷した記録紙Pを複数枚束ねることで、フォトアルバムやフォトブックを作製することができる。
【0025】
前記カセット5は、記録紙Pの大きさ毎に異なるものであり、オペレータは、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、そのカセット5に対応した記録紙Pの大きさ(長さ及び幅)を、不図示の操作スイッチにより入力する。また、不図示の操作部材の操作によって、後述の補正機構81の幅規制部材84,85(図10参照)を、記録紙Pの幅に対応した位置への位置合わせを行う。なお、カセット5に例えばICチップを設けて、このICチップに記録紙Pの大きさ等を記憶するようにしておき、カセット5が取り付けられたときに、プリンタ本体部1が該ICチップの記憶内容を読み取るようにしてもよい。こうすれば、オペレータの前記入力作業は不要になる。また、オペレータの操作スイッチによる前記入力結果、又はICチップの記憶内容の読み取り結果に応じて、補正機構81の幅規制部材84,85の位置合わせをモータにより自動で行うようにしてもよい。
【0026】
図3に詳細に示すように、前記カセット5内には、記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態でセットするためのセットトレイ11が配設されている。このセットトレイ11は、カセット5内において、該セットトレイ11のプリンタ前後方向の略中央にてプリンタ左右方向に延びる軸11a周りに回動可能に支持されている。セットトレイ11は、そのプリンタ後側端が上昇する側に回動するようにバネで付勢されている。これにより、セットトレイ11上にセットされた複数枚の記録紙Pのうち最上部の記録紙Pが、カセット5内のプリンタ後側端部の上部に配設された送出しローラ14に当接することになる。
【0027】
前記送出しローラ14は、プリンタ本体部1の側に配設された不図示のモータにより図3で反時計回り方向に駆動されるようになっており、このモータにより送出しローラ14が回転駆動されると、最上部の記録紙Pが1枚だけプリンタ後側へ移動してカセット5の外側へ送り出される。このとき、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られて複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されないようにするために、送出しローラ14が所定量だけ回転すると、トレイ押下げ機構16によって、セットトレイ11のプリンタ後側端が下降するようになされている。
【0028】
前記トレイ押下げ機構16は、前記プリンタ本体部1に、プリンタ左右方向に延びる軸17a周りに回動可能に支持されたトレイ押下げレバー17と、このトレイ押下げレバーを前記軸17a周りに回動させるためのレバー回動カム18とを有している。このレバー回動カム18は、不図示のモータにより軸18a周りに回動するようになされている。また、トレイ押下げレバー17の一端部は、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、カセット5内に、セットトレイ11のプリンタ後側端部の上側に位置するように進入する。一方、トレイ押下げレバー17の他端部は、レバー回動カム18のカム面に当接している。この当接状態を常に維持するためにトレイ押下げレバー17は、前記他端部がレバー回動カム18の側へ移動するように(つまり一端部が上側に移動するように)バネで付勢されている。
【0029】
そして、送出しローラ14が所定量だけ回転したときに、レバー回動カム18が回転し、これにより、トレイ押下げレバー17の前記一端部がセットトレイ11のプリンタ後側端部に当接してこれを押し下げる。これにより、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られるのが防止され、複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されなくなる。なお、レバー回動カム18が半回転すると、トレイ押下げレバー17の前記一端部が上昇し始め、これに伴って、セットトレイ11のプリンタ後側端が前記バネにより上昇して、次に最上部となる記録紙Pが送出しローラ14に当接する。レバー回動カム18が1回転したとき、レバー回動カム18の回転が停止し、トレイ押下げレバー17は初期の状態に戻る。
【0030】
前記送出しローラ14によりカセット5の外側に送り出された記録紙Pは、プリンタ本体部1における後述の印刷部21へ供給されるようになっている。このことで、カセット5の送出しローラ14は、印刷部21へ記録紙Pを供給する記録紙供給部を構成する。
【0031】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における前記カセット5の取付部近傍には、前記画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。この印刷部21は、図4及び図5に詳細に示すように、記録紙Pの片側面(上側面)に印刷するプリントヘッドHと、前記送出しローラ14より供給された記録紙Pを、該記録紙Pへの印刷時に該送出しローラ14とは反対側(プリンタ後側)へ搬送する印刷搬送部22と、この印刷搬送部22より搬送される記録紙Pを支持するプラテン23とを備えている。
【0032】
前記印刷搬送部22の上流側端部(プリンタ前側端部)には圧着型の上流側ローラ対24が、また印刷搬送部22の下流側端部(プリンタ後側端部)には圧着型の下流側ローラ対25がそれぞれ配設されている。これら上流側ローラ対24及び下流側ローラ対25の下側に位置する駆動ローラ24a,25aが不図示の同じモータで駆動されるようになっている。また、上流側ローラ対24及び下流側ローラ対25の上側に位置する従動ローラ24b,25bは、その対応する下側の駆動ローラ24a,25aに対して圧着された状態と該圧着が解除された状態とを切り換えることが可能になっている。
【0033】
前記上流側ローラ対24を挟んでその上流側及び下流側には、記録紙Pを検出する第1及び第2センサ27,28(両方とも投光部と受光部とからなる)がそれぞれ配設されている。第1センサ27は、前記カセット5又は両面印刷ユニット7より記録紙Pの先端がプリンタ本体部1の筐体2内に入ったことを検出するものであり、この検出により、前記上流側ローラ対24の駆動ローラ24aを駆動する。第2センサ28は、上流側ローラ対24より送り出された記録紙Pの先端を検出するものであり、この第2センサ28による記録紙P先端の検出から、記録紙Pの印刷開始部分がプリントヘッドHの下側位置に達するような量だけ上流側ローラ対24により記録紙Pを搬送したときに、当該記録紙Pへの印刷を開始する。また、第2センサ28による記録紙Pの先端の検出から、記録紙Pの先端が下流側ローラ対25のところに達するような量だけ上流側ローラ対24により記録紙Pを搬送したときに、上流側ローラ対24を圧着状態から圧着解除状態にし且つ下流側ローラ対25を圧着解除状態から圧着状態にして、今度は下流側ローラ対25で記録紙Pを搬送する。
【0034】
前記プリントヘッドHは、記録紙Pの上側位置において記録紙Pの幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向X(図5参照)に延びる2本のガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であって記録紙Pの移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Y(図5参照)に並ぶ2つのヘッドユニット32を有しており、これら2つのヘッドユニット32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、記録紙Pの上側面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0035】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、前記インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、記録紙Pは、前記上流側ローラ対24又は下流側ローラ対25により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクが記録紙Pの上側面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0036】
ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0037】
前記プラテン23は板状の部材からなり、その上面が記録紙Pを支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引用孔23b(図5参照)が設けられている。プラテン23の下側には、該プラテン23とともに空間を形成するケース体35が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36が配設されている。そして、前記吸引用孔23bは、前記ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引用孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、記録紙Pがプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時の記録紙Pの平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0038】
また、プラテン23の支持面23aには、インク吸収材38を収容するための、副走査方向Yに延びる凹部23c(図5参照)が形成されている。このインク吸収材38は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が前記支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、前記凹部23cは、支持面23aにおいて該支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、5種類の幅の記録紙Pに対応可能にするべく、片側5個ずつの合計10個の凹部23cが設けられている。前記インク吸収材38は、インク吸収性に優れた、例えばスポンジ状のものが好ましい。
【0039】
ここで、前記縁なし印刷を行う場合、記録紙Pの幅方向については端縁ぎりぎりにインクを吐出し、その端縁からはみ出したインクを前記インク吸収材38により吸収するようにしているが、記録紙Pの先端及び後端ぎりぎりにはインクを吐出せず、所定量(例えば2mm)だけ余白をあけて印刷を行う。そして、この余白を後述のカッター40により切断することで、縁なしに仕上げる。このようにするのは、記録紙Pの先端又は後端に向けてインクを吐出すると、そのインクが前記吸引用孔23bによる吸い込み作用により吸引用孔23bへ引き込まれて印刷品質が低下するとともに、支持面23aがインクで汚れるからである。
【0040】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における前記印刷搬送部22の下流側には、印刷搬送部22の下流側端部(下流側ローラ対25)より送り出された記録紙Pを、表裏反転し且つ搬送の向きが逆向きになるようにUターンさせるUターン部45が設けられている。
【0041】
前記Uターン部45と印刷搬送部22との間には、前記縁なし印刷を行う場合において記録紙Pの先端及び後端における前記余白を切断するカッター40が配設されている。このカッター40は、記録紙Pの搬送経路の上側に配置された固定刃40aと、記録紙Pの搬送経路の下側に配置され、不図示のモータにより該固定刃40aに対して上下方向に移動する可動刃40bとで構成され、可動刃40bが記録紙Pの下側から上側に移動することで記録紙Pを切断する。この切断による切り屑は、筐体2の下部に配設された屑箱41(図2参照)に落下して収容される。なお、記録紙Pの両面に印刷を行う場合には、両面に印刷を行った後にカッター40により前記余白を切断する。
【0042】
前記Uターン部45には、該Uターン部45の上流側部分に配設され且つ印刷搬送部22からの記録紙Pを挟持して更にプリンタ後側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対46と、該搬送ローラ対46により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きを上側へ変更する第1向き変更部材47と、この第1向き変更部材47の下流側に配設され且つ記録紙Pを挟持して上側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対48と、該搬送ローラ対48により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きをプリンタ前側へ変更する第2向き変更部材49と、Uターン部45の下流側端部に配設され、記録紙Pを挟持してUターン部45から排出する圧着型の搬送ローラ対50と、この搬送ローラ対50の近傍位置に配設され且つ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第3センサ51(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。なお、前記2組の搬送ローラ対48の間には、下側の搬送ローラ対48から送り出された記録紙Pの先端を上側の搬送ローラ対48へと導く一対のガイド板52が、搬送路を挟むように配設されている。
【0043】
前記Uターン部45の上流側部分における2組の搬送ローラ対46の間には、前記印刷部21において記録紙Pの上側面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風Wを該記録紙Pの上側面に吹き付ける乾燥装置53が設けられている。この乾燥装置53は、該乾燥装置53内に空気を取り込むための吸入ファン54と、この吸入ファン54で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ55と、乾燥装置53の下端部に開口して、加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥風Wとして記録紙Pの上側面に吹き付ける排気ノズル部56と、乾燥装置53内の温度を検出して加熱ヒータ55を緊急停止させる安全サーモ57とを備えている。
【0044】
前記Uターン部45の全搬送ローラ対46,48,50において、記録紙Pにおける前記印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上流側部分における2組の搬送ローラ対46では下側のローラであり、その下流側の2組の搬送ローラ対48ではプリンタ後側のローラであり、搬送ローラ対50では、上側のローラである)は、それぞれ駆動ローラ46a,48a,50aとされ、前記印刷面に接触するローラ(搬送ローラ対46では上側のローラであり、搬送ローラ対48ではプリンタ前側のローラであり、搬送ローラ対50では、下側のローラである)は、それぞれ従動ローラ46b,48b,50bとされている。
【0045】
前記従動ローラ46b,48b,50bは、駆動ローラ46a,48a,50aよりも軟質な材料で構成されている。例えば、駆動ローラ46a,48a,50aはポリプロピレンからなり、従動ローラ46b,48b,50bは発泡ウレタンからなる。このように、前記印刷面に接触する従動ローラ46b,48b,50bを軟質にすることで、記録紙Pの搬送速度の許容速度を高めることが可能になる。また、前記印刷面とは反対側の面に接触する駆動ローラ46a,48a,50aを硬質にすることで、記録紙Pの搬送精度を確保して、蛇行等を生じ難くすることができる。
【0046】
前記全ての駆動ローラ46a,48a,50aは同じモータ(図示せず)により駆動される。そして、この駆動ローラ46a,48a,50aの回転速度、つまり搬送ローラ対46,48,50による記録紙Pの搬送速度は可変に構成されている。すなわち、前記乾燥装置53による前記インクの乾燥度合いは、インクジェットプリンタAが設置された環境条件(温度や湿度等)に応じて変化するため、これに応じて搬送速度を変更する。また、前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pが両面印刷ユニット7により搬送されている間に前記インクが乾燥すればよいので、乾燥装置53により前記インクが完全には乾燥しないような比較的速い速度に設定する。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合(図13参照)には、Uターン部45から搬送ローラ対50により排出された記録紙Pは、そのまま筐体2の外側に排出されて筐体2の上面に重ねて載置されるようになっており、このため、乾燥装置53により前記インクがほぼ完全に乾燥するような遅めの速度に設定する。
【0047】
前記第3センサ51は、記録紙Pの後端を検出して、該記録紙PのUターン部45からの排出を検出するものである。前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合には、記録紙Pの筐体2外側への排出を検出することになる。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、両面印刷ユニット7での記録紙Pの搬送速度を変更(アップ)する。
【0048】
前記両面印刷ユニット7は、筐体2の上面を覆う第1ユニット8と、前記カセット5の上方に位置する第2ユニット9(収容ユニット)との2分割構造になっている。そして、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている状態で、第1ユニット8のみを筐体2から取り外すことが可能になっている。この第1ユニット8が取り外された状態で、筐体2の上面に設けたメンテナンス開口(通常時は蓋で塞がれる)を介して印刷部21(特にプリントヘッドH等)のメンテナンス作業を行うことができる。したがって、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1に取り付けた後においても、印刷部21のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0049】
前記両面印刷ユニット7の第1ユニット8内には、前記Uターン部45から送り出された記録紙Pを、前記印刷部21を超えて前記カセット5の側(印刷部21に対してプリンタ前側)へ搬送するリバース搬送部61が設けられている。このリバース搬送部61には、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する圧着型の3組の搬送ローラ対62と、リバース搬送部61の下流側端部(第1ユニット8のプリンタ前側端部)の位置に配設され且つ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第4センサ63(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。
【0050】
前記リバース搬送部61における搬送路は、プリンタ前側へ向かって下側に僅かに傾斜する直線路とされている。この傾斜の理由は以下の通りである。すなわち、前記Uターン部45の搬送ローラ対50の高さ位置は、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合に記録紙Pが載置される筐体2上面に、十分な枚数の記録紙Pが載置可能な高さ位置にする必要がある。一方、第2ユニット9内における後述のスイッチバック部66では、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する後述の供給ローラ対69の数を、記録紙Pの最小長さとの関係を考慮してできる限り減らすことが望ましく、このためにはスイッチバック部66は印刷搬送部22に近い高さ位置にする必要がある。このことから、Uターン部45とスイッチバック部66とを接続するリバース搬送部61における搬送路を前記の如く傾斜させている。
【0051】
前記リバース搬送部61の全搬送ローラ対62において、記録紙Pにおける前記印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上側のローラ)は、駆動ローラ62aとされ、前記印刷面に接触するローラ(下側のローラ)は、従動ローラ62bとされている。前記Uターン部45の搬送ローラ対46,48,50と同様に、従動ローラ62bは、駆動ローラ62aよりも軟質な材料で構成されている。
【0052】
前記全ての駆動ローラ62aは同じモータ(図示せず)により駆動される。そして、この駆動ローラ62aの回転速度、つまり搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度は、前記Uターン部45の搬送ローラ対46,48,50の駆動ローラ46a,48a,50aと同様に、可変に構成されている。前述の如く、第3センサ51による記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、搬送速度をアップする。すなわち、Uターン部45では搬送経路が曲線であるため、印刷面を傷付けることなく安定して搬送できる速度にする必要があり、また、記録紙Pの後端が搬送ローラ対50よりも上流側に位置する状態では、搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度をUターン部45での搬送速度と同じにする必要があるが、記録紙Pの後端が搬送ローラ対50から外れれば、記録紙Pを直線の搬送経路で搬送するので、許容速度が上昇し、搬送速度をアップする。但し、下流側に存在する記録紙Pの状況(存在枚数や存在位置)によって、搬送速度を調整する。
【0053】
前記第2ユニット9内には、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせて該記録紙Pの後端側から前記印刷搬送部22の上流側端部へ供給するスイッチバック部66が設けられている。
【0054】
前記スイッチバック部66には、下側の駆動ローラ67aと上側の従動ローラ67bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対67と、このスイッチバックローラ対67の上流側において搬送路を挟むように設けられ、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対67へ導く一対の第1ガイド部材68と、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する圧着型の供給ローラ対69と、スイッチバックローラ対67と供給ローラ対69との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対69へ導く一対の第2ガイド部材70とが設けられている。
【0055】
前記スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aは、不図示のモータにより、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0056】
前記スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68は、不図示のモータにより、スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aの回転軸周りに一体的に移動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aに対する従動ローラ67bの相対位置が、図6に示すように駆動ローラ67aに対してほぼ真上に位置して、記録紙Pを載置トレイ74へ排出する第1の位置(排出位置)と、図7に示すように駆動ローラ67aに対してプリンタ後側に位置して、スイッチバックされた記録紙Pを後端側から印刷部21の上流側へ供給する一方、手差し挿入された記録紙Pを印刷部21の上流側へ供給する第2の位置(スイッチバック位置、手差し位置)とに切り換えられるようになっている。
【0057】
また、第1ガイド部材68は、従動ローラ67bが第1の位置にあるときには、リバース搬送部61における搬送路の延長上に位置し(図6参照)、従動ローラ67bが第2の位置にあるときには、前記第2ガイド部材70の延長上に位置する(図7参照)。
【0058】
このような構成とすれば、スイッチバックローラ対67を構成する駆動ローラ67aと従動ローラ67bとの相対位置を変更するだけで、記録紙Pをスイッチバックするためのスイッチバック機能と、印刷後の記録紙Pを排出する排出機能と、手差し挿入された記録紙Pを印刷部の上流側へ供給する手差し機能との3つの機能を実現することができる。このため、スイッチバック用ローラ、排出用ローラ、手差し用ローラをそれぞれ別々に設ける必要がなく、部品点数を減らしてコストが削減できるとともに、装置の小型化を図る上で有利となる。
【0059】
また、スイッチバック位置と手差し位置とが同じ位置(第2の位置)となるように、駆動ローラ67aに対する従動ローラ67bの相対位置が設定されているから、スイッチバック位置と手差し位置とを1つのポジションで兼用することができる。このため、従動ローラ67bの移動範囲を、第1の位置と第2の位置との2段階に設定するだけで、記録紙Pのスイッチバック機能と、排出機能と、手差し機能との3つの機能を実現することができる。
【0060】
ここで、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせる方法を説明する。スイッチバックローラ対67が、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ67aは正回転しており、従動ローラ67bは第1の位置にある。そして、前記第4センサ63が記録紙Pの後端を検出してから、当該後端が第1ガイド部材68に位置するような量だけスイッチバックローラ対67により記録紙Pをプリンタ前側へ搬送したところで(図6参照)、駆動ローラ67aの正回転を停止する。このとき、記録紙Pの少なくとも先端部は、後述の載置トレイ74上に位置する。
【0061】
続いて、スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68を図6で時計回り方向に回動させて従動ローラ67bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの先端側(プリンタ前側)が持ち上げられて、スイッチバックローラ対67に対して上側で且つプリンタ前側に配設された2つの補助ローラ72に当接した状態で湾曲する(図7参照)。より具体的に、この補助ローラ72は、スイッチバックローラ対67と手差し用ガイド部材78との間で且つスイッチバック動作中の記録紙Pと第2ユニット9の内壁面との接触を防止する位置に配設されている。
【0062】
その後、駆動ローラ67aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側から供給ローラ対69の側へ向けて搬送する。このとき、記録紙Pの搬送に伴って補助ローラ72が回転し、これにより、スイッチバックする記録紙Pの後端側部分(駆動ローラ67aの正回転時の先端側部分に相当)がスムーズに移動するとともに、手差し用ガイド部材78や第2ユニット9の内壁面等に擦れて傷が付くようなこともない。
【0063】
なお、本実施形態では、補助ローラ72を2つ配設するようにしたが、この形態に限定するものではなく、補助ローラ72を所定の間隔をあけて3つ以上配設することで、スイッチバック動作中の記録紙Pに加わる負荷をさらに分散させるようにしてもよい。このようにすれば、補助ローラ72に当接している記録紙Pが折れ曲がる等の不具合を解消することができる。
【0064】
前記スイッチバックローラ対67によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材68及び第2ガイド部材70を通って、供給ローラ対69のところに達する(図8参照)。
【0065】
前記供給ローラ対69は、不図示のモータにより駆動される駆動ローラ69aと、この駆動ローラ69aに対して圧着される従動ローラ69bとからなる。この従動ローラ69bの駆動ローラ69aに対する圧着状態は、後述の如く解除することが可能になっている(スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bも同様)。
【0066】
前記供給ローラ対69の下側には、プリンタ本体部1の筐体2におけるプリンタ前側面の上部に設けられた一対の第3ガイド部材73が、搬送路を挟むように配設されており、この第3ガイド部材73を介して記録紙Pが印刷搬送部22の上流側端部へ供給されることになる。このように両面印刷ユニット7を介して印刷搬送部22に供給された記録紙Pの上側面は、当該記録紙Pに対して印刷部21にて最初に印刷された面(以下、表側面という)とは反対側の面(以下、裏側面という)であり、未だ印刷されていない面である。そして、最初の印刷時と同様に裏側面に印刷することで、当該記録紙Pの両面に印刷されることになる。
【0067】
前記スイッチバックローラ対67は、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせないで第2ユニット9の外側へ排出する役目もしている。すなわち、スイッチバックローラ対67は、記録紙Pを第2ユニット9の外側へ排出する際には、駆動ローラ67aの正回転を途中で停止しないで回転し続ける。そして、第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面には、スイッチバックローラ対67により送り出された記録紙Pを受け止めて載置する載置トレイ74が設けられている。前記のように両面に印刷された記録紙Pや、表側面のみの印刷で済ませる記録紙Pは、スイッチバックローラ対67によって第2ユニット9の外側へ排出されて載置トレイ74上に載置されることになる。
【0068】
なお、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合(図2参照)には、載置トレイ74が記録紙Pを載置するための載置位置として設定されるが、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合(図13参照)には、筐体2の上面が載置位置として設定され、Uターン部45から搬送ローラ対50により排出された記録紙Pは、そのまま筐体2の外側に排出されて筐体2の上面に重ねて載置される。
【0069】
前記第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面における前記載置トレイ74の上側には、載置トレイ74に載置された記録紙Pに埃等が付着するのを防止するカバー部材75が、載置トレイ74の上側を覆うように片持ち状に支持されている。このカバー部材75は、その基端部(プリンタ後側端部)にてプリンタ左右方向に延びる軸75a周りに回動可能に支持されており、カバー部材75を軸75a周りに回動させて基端部から上側へ延びるように立設させた状態にすることも可能である。
【0070】
前記第2ユニット9の外壁の上面における前記スイッチバックローラ対67の近傍には、記録紙Pを手差し挿入することが可能な手差し挿入用開口部77が形成されている。この手差し挿入用開口部77は、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが第2の位置(図9参照)に切り換えられているときに、スイッチバックローラ対67に対してスムーズに記録紙Pを手差し挿入可能な位置に形成されている。この手差し挿入用開口部77には、一対の手差し用ガイド部材78が、手差し挿入される記録紙Pを厚み方向に挟むように配設され、この手差し用ガイド部材78により、手差し挿入された記録紙Pの先端をスイッチバックローラ対67の側へ導く。
【0071】
また、手差し挿入用開口部77は、蓋部材79(図1参照)により覆われており、オペレータは、記録紙Pを手差し挿入する際には、この蓋部材79を開けるとともに、不図示のモードスイッチを操作して、手差しモードに切り換える。これにより、図9に示すように、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが第2の位置に切り換えられるとともに、駆動ローラ67aが逆回転する。そして、オペレータが記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入する。このとき、前記カバー部材75を立設させた状態にしておけば、カバー部材75が記録紙Pを支持する受け皿の役目を果たし、記録紙Pの挿入が容易になる。こうして記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入すると、その記録紙Pがスイッチバックローラ対67によって供給ローラ対69の側へ向けて搬送され、スイッチバックして搬送される記録紙Pと同様に、供給ローラ対69によって、印刷搬送部22(印刷部21)へ供給される。
【0072】
前記スイッチバック部66における第2ガイド部材70のプリンタ左右両側には、図10に示すように、印刷搬送部22へ供給される記録紙Pの幅方向の位置を補正する補正機構81が設けられている。この補正機構81は、前記スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bを圧着解除状態にする左右一対の上側解除レバー82と、前記供給ローラ対69の従動ローラ69bを圧着解除状態にする左右一対の下側解除レバー83と、前記記録紙Pの幅方向両側端に当接する左右一対の幅規制部材84,85とを有している。
【0073】
図11に示すように、前記各上側解除レバー82及び各下側解除レバー83は、プリンタ左右方向に延びる軸82a,83a周りにそれぞれ回動可能になっている。各上側解除レバー82の一端部は、前記スイッチバックローラ対67における第2の位置にある圧着状態の従動ローラ67bの軸端部の近傍に位置する一方、各上側解除レバー82の他端部は、プリンタ左右方向に延びる軸86aに支持された解除カム86のカム面に当接している。また、各下側解除レバー83の一端部は、前記供給ローラ対69の従動ローラ69bの軸端部に連結されている一方、各下側解除レバー83の他端部は、前記解除カム86のカム面に当接している。
【0074】
前記解除カム86はその軸86aとともに不図示のモータにより回転するようになっており、この解除カム86が90°回転することにより、図12に示すように、各上側解除レバー82が軸82a周りに同図で時計回り方向に回動してスイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが圧着解除状態とされるとともに、各下側解除レバー83が軸83a周りに同図で反時計回り方向に回動して供給ローラ対69の従動ローラ69bが圧着解除状態とされる。そして、解除カム86が更に90°回転すると、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bが圧着状態とされる。したがって、上側解除レバー82、下側解除レバー83及び解除カム86は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の圧着状態及び圧着解除状態を切り換える切換え機構を構成する。
【0075】
前記幅規制部材84,85は、前述したようにオペレータの操作によって、印刷処理する記録紙Pの幅に対応した位置に位置している。すなわち、幅規制部材84,85は、印刷処理する記録紙Pの幅方向両側端にそれぞれ当接する位置に位置している。これら幅規制部材84,85は、互いの対向面に開口する矩形の溝部が形成されるように折り曲げられてなり、これらの溝部の底面が記録紙Pの幅方向両側端にそれぞれ当接する。なお、前記溝部の底面の上流側部分は、記録紙Pが溝部内に導かれるように、上流側に向かって搬送路の幅方向外側に傾斜している。
【0076】
そして、一方(図10で左側)の幅規制部材84は、オペレータの操作によって位置付けられた位置を挟んで所定量だけ記録紙Pの幅方向に移動可能に構成されていて、他方(図10で右側)の幅規制部材85に対して近付くようにバネで付勢されている。また、前記幅規制部材85は、オペレータの操作によって位置付けられた位置に固定されている。前記幅規制部材84の付勢により記録紙Pが幅規制部材85の側に押されて、記録紙Pの幅規制部材85側の端が幅規制部材85に当接する。このときの記録紙Pの位置が搬送路の幅方向の基準位置となるように幅規制部材85が配置されている。
【0077】
しかし、前記幅規制部材84の付勢力は比較的弱く、このため、記録紙Pがスイッチバックローラ対67、又は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69により搬送されている際には、前記幅規制部材84は、該ローラ対67,69による搬送力に負けて、記録紙Pを幅規制部材85の側に押すことはできない。すなわち、幅規制部材84の付勢力は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを前記切換え機構により圧着解除状態に切り換えたときに、記録紙Pをその幅方向に移動させることが可能な値に設定されている。このため、幅規制部材84は、記録紙Pの搬送中は、記録紙Pの幅方向の位置を補正することはできず、記録紙Pの蛇行に伴って記録紙Pの幅方向に移動する。この結果、記録紙Pは、前記基準位置から図10で左側にずれる傾向にある。
【0078】
そこで、補正機構81は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを圧着解除状態に切り換えることで、幅規制部材84の付勢により記録紙Pを幅規制部材85の側へ移動させることによって、搬送路に対する記録紙Pの幅方向の位置を補正する。
【0079】
具体的には、記録紙Pの先端が所定位置(例えば供給ローラ対69の少し下流側)に達したときに、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69による記録紙Pの搬送を停止し、その後、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを前記切換え機構により圧着解除状態にする。これにより、記録紙Pはフリー状態になるため、前記幅規制部材84の付勢によって幅規制部材85の側へ移動し、記録紙Pが搬送路の幅方向の基準位置に正確に合わせられる。このようにして搬送路に対する記録紙Pの幅方向の位置が補正されるとともに、搬送路に対する記録紙Pの姿勢(傾き)も正規の姿勢に補正される。
【0080】
そして、前記圧着解除から所定時間(記録紙Pが幅規制部材84の付勢によって移動して補正が完了するまでの時間)が経過したとき、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを前記切換え機構により圧着状態にして、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69による記録紙Pの搬送を再開する。
【0081】
前記補正動作は、同じ記録紙Pに対して1回又は複数回実行されるものであり、複数回実行される場合には、前記搬送の再開から記録紙Pが所定量だけ搬送されたときに、搬送を再度停止して、前記と同様の動作を繰り返す。前記補正動作の実行回数は、記録紙Pの特性(長さ、厚み等の寸法特性や、硬さ、面質(光沢やマット)等の材料特性)に応じて決定される。例えば、記録紙Pの長さ(前述の如くオペレータによって入力される記録紙Pの大きさ)が長くなるほど前記実行回数を多くして、記録紙Pの長さ方向全体に亘って幅方向の位置の補正を行う。また、記録紙Pの厚みや硬さ(オペレータが入力するか、又はICチップに記憶しておいて、それを読み取る)が大きいと、記録紙Pが幅方向に移動し難くなるので、その分だけ前記実行回数を多くする。この実行回数に応じて、補正動作の実行に際して記録紙Pを停止させる位置(つまり前記所定位置及び所定量)を変更することが好ましい。
【0082】
こうして記録紙Pは、搬送路の幅方向の基準位置に正確に合わされた状態で印刷搬送部22(印刷部21)に供給され、このことで、印刷部21にて記録紙Pの適切な位置に安定的に印刷が行われ、印刷品質が向上する。
【0083】
前記Uターン部45、リバース搬送部61及びスイッチバック部66は、前記印刷搬送部22の下流側端部と上流側端部とを接続して該印刷搬送部22とともにプリントヘッドHを囲むような周回搬送路を形成し且つ該印刷搬送部22の下流側端部より送り出された、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて該印刷搬送部22の上流側端部へ供給する記録紙再供給部88を構成する。この記録紙再供給部88により、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷部21へ再供給することができ、この記録紙Pの裏側面にも印刷することで、記録紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0084】
前記裏側面に印刷された記録紙Pは、Uターン部45及びリバース搬送部61により、表側面に印刷された後の搬送時(当該記録紙Pの1回目の搬送時)と同様に、スイッチバック部66へと搬送される。このとき、スイッチバック部66のスイッチバックローラ対67は正回転し続けて、記録紙Pを載置トレイ74上に排出する。なお、裏側面に印刷された記録紙PがUターン部45及びリバース搬送部61により搬送される際、搬送ローラ対46,48,50,62の駆動ローラ46a,48a,50a,62aが記録紙Pの表側面に接触することになるが、この時点では、表側面に付着したインクは既に完全に乾燥しているので、記録紙Pを1回目の搬送時と同じ速度で搬送しても問題はない。但し、より一層印刷品質を向上させるべく、2回目の搬送時の搬送速度を1回目の搬送時よりも遅くすることも可能である。
【0085】
前記記録紙再供給部88は、前記印刷部21にて1枚の記録紙Pへの印刷中に、当該記録紙Pよりも前に印刷した少なくとも1枚の記録紙Pを保持可能な搬送経路長さに設定されている。これにより、1枚の記録紙Pの表側面に印刷してから裏側面に印刷するまでの期間を、後続の少なくとも1枚の記録紙Pの印刷に利用することができる。
【0086】
例えば、前記複数種類の大きさのうち最も小さい記録紙Pに対して両面印刷を行う場合、1枚目から4枚目までの記録紙Pを連続してカセット5から印刷部21へ供給して、印刷部21にてそれら記録紙Pの表側面に連続して印刷を行う。4枚目の記録紙Pに対して印刷を行っているときに、先に印刷された3枚の記録紙Pは、記録紙再供給部88のいずれかの部分に位置している(通常、1枚目の記録紙Pはスイッチバック部66に、2枚目の記録紙Pはリバース搬送部61に、3枚目の記録紙PはUターン部45にそれぞれ位置している)。
【0087】
そして、4枚目の記録紙Pへの印刷が終了すると、今度は、表側面に印刷した前記1枚目の記録紙Pを印刷部21へ供給して該1枚目の記録紙Pの裏側面に印刷を行い、続けて前記2枚目から4枚目までの記録紙Pの裏側面に連続して印刷を行う。この4枚目の記録紙Pの裏側面に印刷を行っているときに、1枚目の記録紙Pはスイッチバックローラ対67によって載置トレイ74上に排出され、2枚目及び3枚目の記録紙Pはリバース搬送部61及びUターン部45にそれぞれ位置する。
【0088】
前記4枚目の記録紙Pの裏側面への印刷が終了すると、今度は5枚目から8枚目までの記録紙Pを連続してカセット5から印刷部21へ供給し、印刷部21にてそれら記録紙Pの表側面に連続して印刷を行う。こうして4枚の記録紙Pを1組として記録紙Pの表側面及び裏側面に印刷を順次行っていく。なお、両面印刷を行う2組の間に、片面印刷を行う組を介在させることも可能である。
【0089】
したがって、1枚の記録紙Pのみに対して両面印刷を行う場合には、表側面に印刷された記録紙Pが記録紙再供給部88の長い搬送経路を通った後に該記録紙Pの裏側面に印刷されるので、処理時間が長くなるが、業務用途等の所定枚数以上の記録紙に対して両面印刷を行う場合には、記録紙再供給部88により少なくとも1枚の記録紙Pを搬送中に他の記録紙Pに対して印刷を行うことができ、印刷処理能力を向上させることができる。
【0090】
また、印刷部21にて記録紙Pの表側面に付着したインクを、裏側面に印刷を行うまでの間に十分に乾燥させることができ、この乾燥状態で裏側面に印刷することで、記録紙Pの両面がインクで同時に濡れるようなことはなくなり、インクの染み込みによる裏写り等が生じるのを確実に防止することができる。また、記録紙Pにカールや波打現象が生じ難くなる。よって、記録紙Pの印刷品質が低下するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明は、装置を大型化することなく、スイッチバック動作時に記録紙が周辺のユニットに接触しないようにすることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】カセットの内部の詳細を示す断面図である。
【図4】印刷部及びUターン部の詳細を示す側面図である。
【図5】印刷部の詳細を示す平面図である。
【図6】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、リバース搬送部より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図7】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図6相当図である。
【図8】スイッチバックローラ対が記録紙を供給ローラ対のところまでスイッチバックさせた状態を示す図6相当図である。
【図9】記録紙が手差し挿入用開口部より手差し挿入されている状態を示す図6相当図である。
【図10】スイッチバック部の詳細を示す斜視図である。
【図11】図10のC方向矢視図である。
【図12】スイッチバックローラ対及び供給ローラ対の従動ローラを圧着解除状態にしている状態を示す図11相当図である。
【図13】両面印刷ユニットをプリンタ本体部から外した状態を示す図2相当図である。
【符号の説明】
【0093】
A インクジェットプリンタ(画像形成装置)
P 記録紙
9 第2ユニット(収容ユニット)
21 印刷部
67 スイッチバックローラ対(スイッチバック手段)
72 補助ローラ
78 手差し用ガイド部材(手差し手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙の片側面に印刷を行う印刷部を備え、該印刷部にて一側の面に印刷された記録紙を表裏反転させて該印刷部へ再供給し且つ該印刷部にて他側の面に印刷することによって、該記録紙の両面に印刷を行う画像形成装置であって、
前記印刷部にて印刷された後で表裏反転された前記記録紙をスイッチバックさせて、該記録紙の後端側から該印刷部の上流側へ供給するスイッチバック手段と、
前記スイッチバック手段の近傍に配設され、前記印刷部に供給する前記記録紙を手差し挿入するための手差し手段と、
前記スイッチバック手段と前記手差し手段との間に配設され、スイッチバック動作中の前記記録紙表面に当接して、該記録紙と該手差し手段との接触を防止する補助ローラとを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スイッチバック手段及び前記補助ローラを収容する収容ユニットを備え、
前記補助ローラは、スイッチバック動作中の前記記録紙と前記収容ユニットの内壁面との接触を防止する位置に配設されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記補助ローラは、複数設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−69786(P2010−69786A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241350(P2008−241350)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】