説明

画像形成装置

【課題】消費電力を増大させることなく、トナー像の溶融によって転写材に生じる問題を回避することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、排出された用紙PAを載置する排出トレイ53と、当該排出トレイ53に排出された用紙PAに付与されている熱を電力に変換するペルチェ素子71と、当該ペルチェ素子によって生成された電力を利用して回転する排熱用ファン55と、排熱用ファン55から出力される出力信号であって当該排熱用ファン55の回転状態を示す出力信号である回転状態信号に基づいて、排出トレイ53の温度を推定する温度推定部と、当該温度推定部によって推定された温度に基づいて、用紙PAの排出時間間隔を制御する排出時間間隔制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ等の画像形成装置では、用紙上に形成されたトナー像は、定着器等の加熱によって、当該用紙に定着される。そして、定着器を通過した用紙は、排出用の排紙ローラ対をさらに通過して、排紙トレイ上に排出される。
【0003】
また、複数の印刷出力物を連続して出力する連続印刷時においては、複数の印刷出力物(用紙)が排紙トレイ上に積層されて載置される。このとき、排紙トレイ上の各用紙は、定着器等の加熱によって、かなり高温になっている。そのため、積層された複数の用紙のうちの或る用紙上のトナー像が他の用紙に付着する、あるいは、或る用紙上のトナー像を介して隣接する用紙同士が貼り付いてしまうなどの現象が生じることがある。このような現象は、用紙に形成される画像を劣化させるため好ましくない。
【0004】
このような現象を回避する技術として、例えば、特許文献1に記載の画像形成装置が存在する。この画像形成装置は、排出トレイに排出される用紙に対して送風する冷却ファンと、定着後の用紙の表面温度を検知する温度検知センサとを備える。そして、この画像形成装置は、冷却ファンによって定着処理後の用紙を冷却するとともに、温度検知センサによって検知される定着処理後の用紙の表面温度に応じて、或る用紙が排紙トレイに排出されてから次の用紙が排紙トレイに排出されるまでの時間間隔を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−91627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置は、上述したような現象を回避する処理において、冷却ファンを回転させる電力を要するため、その消費電力が増大するという問題を有している。
【0007】
そこで、この発明の課題は、消費電力を増大させることなく、トナー像の溶融によって転写材に生じる問題を回避することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、画像形成装置であって、排出された転写材を載置する載置部と、前記載置部に排出された転写材に付与されている熱を電力に変換する熱電変換手段と、前記熱電変換手段によって生成された電力を利用して回転するファンと、前記ファンから出力される出力信号であって前記ファンの回転状態を示す出力信号である回転状態信号に基づいて、前記載置部の温度を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された温度に基づいて、転写材の排出時間間隔を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係る画像形成装置において、前記回転状態信号は、前記ファンの回転が安定している状態を示す安定状態信号と前記ファンの回転が安定していない状態を示す不安定状態信号とのいずれかとして前記ファンから選択的に出力され、前記推定手段は、前記ファンによって出力される複数の回転状態信号における前記安定状態信号の出力頻度に基づいて、前記載置部の温度を推定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る画像形成装置において、前記回転状態信号に基づいて、前記ファンが正常に動作していない状態を検知する異常検知手段、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし請求項3に記載の発明によれば、載置部に排出された転写材に付与されている熱が電力に変換され、当該電力を利用してファンが回転し、当該ファンから出力される出力信号であって当該ファンの回転状態を示す出力信号である回転状態信号に基づいて載置部の温度が推定され、さらに、当該温度に基づいて転写材の排出時間間隔が制御されるので、消費電力を増大させることなく、トナー像の溶融によって転写材に生じる問題を回避することができる。
【0012】
また特に、請求項3に記載の発明によれば、回転状態信号に基づいて、ファンが正常に動作していないことが検知されるので、ファンの故障を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】コントローラ(制御部)の機能ブロックを示す図である。
【図3】排熱用ファンの駆動系を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る処理を示すフローチャートである。
【図5】排出トレイの温度を推定する処理に関するフローチャートである。
【図6】ファン安定駆動率を排出トレイの上昇温度に変換するテーブルを示す図である。
【図7】排出トレイの温度を排出割合に変換するテーブルを示す図である。
【図8】第2実施形態に係る処理を示すフローチャートである。
【図9】排出枚数をカウントする処理に関するフローチャートである。。
【図10】排熱用ファンの異常を検知する処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
<1.第1実施形態>
<1−1.装置概要>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、像担持体上の静電潜像を現像して画像を形成する装置である。ここでは、画像形成装置として、電子写真方式の印刷出力装置、より詳細にはタンデム方式のフルカラー印刷出力装置を例示する。
【0016】
画像形成装置1は、ネットワーク等を介して接続された他の情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)から伝送されてきた画像データに基づく画像を、後述の印刷機構を用いて印刷出力することによって、カラーページプリンタとして機能する。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置1は、複数のイメージングユニット10(詳細には、10Y,10M,10C,10K)を備えている。具体的には、画像形成装置1は、イエローのイメージングユニット10Yと、マゼンタのイメージングユニット10Mと、シアンのイメージングユニット10Cと、ブラックのイメージングユニット10Kとを備えている。各イメージングユニット10は、それぞれ、最終出力画像のうちの各色成分(具体的には、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各成分)の画像を電子写真方式によって形成し、中間転写ベルト(中間転写体とも称される)21に転写する。そして、中間転写ベルト21上に重畳された各色成分の画像が、搬送路を通過するシート状の用紙(転写材とも称する)PAにさらに転写されることによって、用紙PAにフルカラー画像が形成される。なお、中間転写ベルト21は、各感光体11(後述)から転写されたトナー画像を一時的に担持する像担持体であるとも表現される。
【0018】
4つのイメージングユニット10(10Y,10M,10C,10K)は、駆動ローラ23と巻き掛けローラ24とに巻き掛けられた中間転写ベルト21の下側直線部分の主に下部において、当該下側直線部分に沿って直列に配置されている。各イメージングユニット10は、それぞれ、感光体11と帯電器12と露光器13と現像器14と第1転写器(1次転写器)15とイレーサ(除電器)16とクリーナ17とを有している。詳細には、各イメージングユニット10において、略円柱状の感光体11の外周を囲むように、帯電器12と露光器13と現像器14と第1転写器15とイレーサ16とクリーナ17とがこの順序で時計回りに配置されている。このうち、第1転写器(詳細には転写ローラ(1次転写ローラ))15は、中間転写ベルト21を隔てて、感光体11と対向する位置に配置されている。
【0019】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ23の駆動によって矢印AR1の向きに移動する。また、駆動ローラ23に対向する位置には、中間転写ベルト21を隔てて、第2転写器(転写ローラ(2次転写ローラ))22が設けられている。転写ローラ22による電圧印加に応じて、中間転写ベルト21上のトナー画像(フルカラートナー画像等)が用紙PAに転写される。
【0020】
また、駆動ローラ23および転写ローラ22の位置を通過した用紙PAの搬送方向下流側には定着部45が設けられている。定着部45は、用紙PAに熱を加えることによって、用紙PA上に形成されたトナー像を用紙PAに定着する。
【0021】
また、定着部45の搬送方向下流側には、排出ローラ51と用紙検知センサ52とが設けられている。排出ローラ51は、定着部45を通過した用紙PAを排出トレイ53に排出する。また、用紙検知センサ52は、排出ローラ51によって排出される用紙PAの先端部分および後端部分が当該用紙検知センサ52を通過したことを検知する。
【0022】
さらに、排出ローラ51の搬送方向下流側には、排出トレイ53とペルチェ素子71とが設けられている。排出トレイ53は、排出ローラ51によって排出される用紙PAを積層して載置する。ペルチェ素子71は、熱電変換素子とも称され、排出トレイ53に接する状態で設けられている。また、ペルチェ素子71は、排出トレイ53に排出された用紙に付与されている熱を電力に変換にする。
【0023】
また、排出ローラ51の搬送方向下流側かつ排出トレイ53の上側には、排熱用ファン(冷却ファンとも称する)55が設けられている。排熱用ファン55は、ペルチェ素子71によって生成される電力を動力源として利用して回転する。そして、排熱用ファン55は、当該回転にともなう送風によって、排出トレイ53に排出されて載置される用紙PAを冷却する。また、排熱用ファン55は、その回転状態を示す回転状態信号SGを制御部100の回転状態信号検出部111(後述)に向けて出力する。
【0024】
また、各イメージングユニット10および転写ローラ43の下側(搬送経路上において上流側)には給紙部30が設けられている。給紙部30は、給紙トレイ31とピックアップローラ32と給紙ローラ33とサバキローラ34とを備えており、タイミングローラ41および転写ローラ22に向けて、用紙PAを供給することが可能である。
【0025】
また、画像形成装置1には、機内温度検知センサ61がさらに設けられている。機内温度検知センサ61は、当該画像形成装置1内の機内温度を検知する。
【0026】
<1−2.機能ブロック>
図2は、画像形成装置1の制御部(コントローラ)100の機能ブロックを示す図である。図2に示すように、制御部100は、回転状態信号検出部111、温度推定部113、排出時間間隔制御部115、排出枚数カウント部117、ファン異常検知部119等の各種の処理部を備えている。なお、制御部100は、物理的にはCPUおよび半導体メモリなどにより構成されており、当該CPU等において所定のプログラムPG(不図示)を実行することなどによって上記の各処理部111,113,115,117,119等を機能的に実現する。
【0027】
回転状態信号検出部111は、排熱用ファン55からの出力信号である回転状態信号SGを検出する。回転状態信号SGは、排熱用ファン55の回転状態を示す信号である。回転状態信号SGは、排熱用ファン55の回転が安定している状態を示す安定状態信号SG1と排熱用ファン55の回転が安定していない状態を示す不安定状態信号SG0とのいずれかとして排熱用ファン55から選択的に出力される。回転状態信号検出部111は、回転状態信号SGとして、安定状態信号SG1と不安定状態信号SG0とのいずれかを選択的に検出する。なお、回転状態信号SGは、ペルチェ素子71によって生成される電圧(ひいては電力)に応じて決定される。具体的には、ペルチェ素子71によって生成される電圧が閾値TH以上の場合には、安定状態信号SG1に決定され、それ以外の場合には、不安定状態信号SG0に決定される。閾値THは、回転状態信号SGを安定状態信号SG1と不安定状態信号SG0とのいずれかに決定するためのしきい値であり、所定の電圧値(例えば、2.2V)である。
【0028】
温度推定部113は、回転状態信号検出部111によって検出される回転状態信号SGに基づいて、排出トレイ53の温度Tを推定する。換言すれば、温度推定部113は、排熱用ファン55から出力される出力信号であって排熱用ファン55の回転状態を示す出力信号である回転状態信号SGに基づいて、排出トレイ53の温度Tを推定する。より詳細には、温度推定部113は、排熱用ファン55によって時系列で出力される複数の回転状態信号SGにおける安定状態信号SG1の出力頻度に基づいて、排出トレイ53の温度を推定する。
【0029】
排出時間間隔制御部115は、温度推定部113によって推定された排出トレイ53の温度Tに基づいて、用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔を制御する。より詳細には、排出時間間隔制御部115は、排出トレイ53の温度Tに基づいて、或る用紙PAが排出トレイ53に排出されてから次の用紙PAが排出トレイ53に排出されるまでの時間間隔を制御する。
【0030】
排出枚数カウント部117は、排出トレイ53に排出される用紙PAの枚数をカウントする。具体的には、まず、用紙PAの後端部分が用紙検知センサ57を通過したことを当該用紙検知センサ57によって検知する。このとき、排出枚数カウント部117は、用紙PAが排出トレイ53に排出されたとみなし、排出トレイ53に排出される用紙PAの枚数をカウントアップする。
【0031】
ファン異常検知部119は、回転状態信号検出部111によって検出される回転状態信号SG(SG1,SG0)に基づいて、当該排熱用ファン55が正常に動作していない状態を検知する。
【0032】
<1−3.動作>
ところで、複数の印刷出力物を連続的に出力する連続印刷時において、用紙PAは、排出トレイ53に積層されて載置される。このとき、用紙PAは、定着部45からの熱を吸収しているため、比較的高温状態で排出トレイ53に排出される。
【0033】
そのため、上述したように、排出トレイ53に積層された複数の用紙PAのうちの或る用紙PA上のトナー像が他の用紙PAに付着する、あるいは、或る用紙PA上のトナー像を介して隣接する用紙PA同士が貼り付いてしまうなどの現象が生じる場合がある。
【0034】
このような現象を回避するため、この実施形態に係る画像形成装置1は、排熱用ファン55の回転を利用して排出トレイ53に排出される用紙PAを冷却するとともに、排出トレイ53の温度Tに基づいて、用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔を制御する。
【0035】
最初に、排熱用ファン55による用紙PAの冷却動作について説明する。
【0036】
画像形成装置1は、排出ローラ51を通過して排出トレイ53に排出される用紙PAを排熱用ファン55の回転によって冷却する。
【0037】
図3は、排熱用ファン55の駆動系を示す図である。排熱用ファン55は、図3に示すように、ペルチェ素子71によって変換された電力を利用して回転する。より詳細には、ペルチェ素子71は、排出トレイ53に用紙PAが排出されると、当該用紙PAに付与された熱を吸熱して電力に変換する。そして、排熱用ファン55は、ペルチェ素子71によって生成された電力を動力源として利用して回転する。
【0038】
つぎに、排出時間間隔制御部115による用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔の制御について説明する。
【0039】
画像形成装置1は、図4に示すフローチャートの処理を定期的に実行することによって、連続印刷時における用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔を制御する。
【0040】
まず、図4のステップS11において、温度推定部113は、排出トレイ53の温度Tを推定する。より詳細には、温度推定部113は、図5に示すフローチャートの処理を実行することによって、排出トレイ53の温度Tを推定する。
【0041】
以下、図5のフローチャートを参照しながら、温度推定部113による温度推定処理について具体的に説明する。
【0042】
まず、ステップS31〜ステップS35においては、ファン安定駆動率FR(後述)が算出される。この後、ステップS36においては、当該ファン安定駆動率FRに基づいて、排出トレイ53の温度Tが推定される。
【0043】
具体的には、画像形成装置1は、はじめに、ステップS31〜ステップS34の処理を実行することによって、通電カウンタ変数CV(後述)と安定回転状態カウンタ変数SV(後述)とを算出する。この通電カウンタ変数CVと安定回転状態カウンタ変数SVとは、ファン安定駆動率FRの算出に使用される。なお、通電カウンタ変数CVと安定回転状態カウンタ変数SVとの値には、初期値として0が代入されている。
【0044】
また、ステップS31〜ステップS34の処理は、ステップS34において、通電カウンタ変数CVの値が所定値HV以上になるまで、繰り返し実行される。
【0045】
このとき、ステップS31〜ステップS34の処理が繰り返される回数、すなわち、ステップS34の所定値HVは、回転状態信号検出部111によって回転状態信号SG(SG1,SG0)を検出する検出周期と検出時間とによって決定される。たとえば、検出周期を10ms周期とし、検出時間を10秒とした場合には、回転状態信号検出部111は、回転状態信号SG(SG1,SG0)を10秒間に1000回検出する。このとき、ステップS34の所定値HVには1000が設定され、ステップS31〜ステップS34の処理は、1000回繰り返される。
【0046】
まず、ステップS31においては、通電カウンタ変数CVの値がインクリメントされる。具体的には、通電カウンタ変数CVには、回転状態信号検出部111によって回転状態信号SG(SG1,SG0)が検出される回数が格納される。
【0047】
この後、ステップS32において、回転状態信号検出部111によって検出される回転状態信号SGが、排熱用ファン50の回転が安定している状態を示す安定状態信号SG1であるか否かが判定される。そして、ステップS32において、回転状態信号SGが安定状態信号SG1であると判定されると、ステップS33に進み、それ以外の場合には、ステップS34に進む。
【0048】
ステップS33においては、安定回転状態カウンタ変数SVの値がインクリメントされる。より詳細には、回転状態信号検出部111によって検出される2種類の回転状態信号SGうちの安定状態信号SG1が検出された回数が格納される。
【0049】
つぎに、ステップS34では、通電カウンタ変数CVの値が所定値HV以上になったか否かが判定される。通電カウンタ変数CVの値が所定値HV以上の場合には、ステップS35に進み、それ以外の場合には、ステップS31に戻る。
【0050】
つぎに、ステップS35において、ファン安定駆動率FRを算出する。具体的には、ファン安定駆動率FRは、通電カウンタ変数CVと安定回転状態カウンタ変数SVとに基づいて算出される。より詳細には、ファン安定駆動率FR(%)は、安定回転状態カウンタ変数SVおよび通電カウンタ変数CVを用いて、
FR=SV/CV×100 ・・・(式1)
によって算出される。たとえば、通電カウンタ変数CVの値が1000、安定回転状態カウンタ変数SVの値が730であった場合には、ファン安定駆動率FRは、式1に基づいて73%と算出される。
【0051】
つぎに、ステップS36において、温度推定部113は、排出トレイ53の初期温度T0と排出トレイ53の上昇温度ΔTとに基づいて、排出トレイ53の温度Tを推定する。
【0052】
具体的には、温度推定部113は、まず、ファン安定駆動率FRに基づいて排出トレイ53の上昇温度ΔTを推定する。その後、温度推定部113は、上昇温度ΔTと排出トレイ53の初期温度T0とに基づいて、排出トレイ53の温度Tを推定する。
【0053】
排出トレイ53の初期温度T0は、画像形成装置1の電源ON時における機内温度とほぼ同じとみなされる。そのため、排出トレイ53の初期温度T0には、画像形成装置1の電源ON時の機内温度が設定される。なお、当該機内温度は、画像形成装置1の電源ON時に機内温度検知センサ61によって、予め検知され、画像形成装置1の記憶部(不図示)に記憶されているものとする。
【0054】
図6は、上昇温度変換テーブルUTを示す図である。この上昇温度変換テーブルUTは、ファン安定駆動率FRを上昇温度ΔTに変換する変換テーブルである。この上昇温度変換テーブルUTは、排出トレイ53の初期温度T0毎に用意されており、画像形成装置1の記録部(不図示)に格納されている。なお、図6に示す上昇温度変換テーブルUTは、排出トレイ53の初期温度T0が25℃の場合における上昇温度変換テーブルである。たとえば、排出トレイ53の初期温度が25℃であって、ファン駆動率73%であった場合には、図6の上昇温度変換テーブルUTに基づいて、上昇温度ΔTは56℃と推定される。
【0055】
さらに、温度推定部113は、排出トレイ53の初期温度T0と上昇温度ΔTとを加算することによって、排出トレイ53の推定温度Tを推定する。たとえば、初期温度T0が25℃であって、上昇温度ΔTが56℃である場合には、温度推定部113は、排出トレイ53の温度Tを81℃(25℃+56℃)と推定する。
【0056】
この後、ステップS37において、通電カウンタ変数CVの値と安定回転状態カウンタ変数SVの値とが初期化(0を代入)される。
【0057】
図5のフローチャートの処理、すなわち、排出トレイ53の温度Tの温度推定処理が終了すると、図4のステップS12に進む。
【0058】
ステップS12においては、画像形成装置1におけるプリント動作が実行中であるか否かが判定される。そして、プリント動作中と判定された場合には、ステップS13に進む。
【0059】
ステップS13において、排出時間間隔制御部115は、温度推定処理(ステップS11)によって推定された排出トレイ53の温度Tに基づいて、用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔を制御する。
【0060】
図7は、排出割合変換テーブルETを示す図である。この排出割合変換テーブルETは、排出トレイ53の温度Tを排出割合ERに変換する変換テーブルであり、画像形成装置1の記録部(不図示)に格納されている。たとえば、排出トレイ53の温度Tが81℃の場合には、排出割合ERの値は70%となる。
【0061】
排出時間間隔制御部115は、まず、排出割合変換テーブルETに基づいて、排出トレイ53の温度Tを排出割合ERに変換する。そして、排出時間間隔制御部115は、変換された排出割合ERに基づいて、用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔、すなわち、或る用紙PAが排出トレイ53に排出されてから次の用紙PAが排出トレイ53に排出されるまでの時間間隔を制御する。
【0062】
たとえば、排出時間間隔が毎分30枚の画像形成装置1において、排出割合100%の場合には、排出時間間隔制御部115は、排出トレイ53に排出する用紙PAの枚数を毎分30枚に制御する。また、同様に、排出時間間隔が毎分30枚の画像形成装置1において、排出割合70%の場合には、排出時間間隔制御部115は、排出トレイ53に排出する用紙PAの枚数を毎分21枚に制御する。
【0063】
また、図7に示すように、排出トレイ53の温度Tが高くなるにつれて、排出割合ERはの値は、小さくなるように設定されている。そのため、排出トレイ53の温度Tが高くなるにつれて、所定時間内に排出トレイ53に排出される用紙PAの枚数は少なくなり、所定時間内における用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔は長くなる。一方、排出トレイ53の温度Tが低い場合には、排出トレイ53の温度Tが高い場合よりも、所定時間内に排出トレイ53に排出される用紙PAの枚数は多くなり、所定時間内における用紙PAの排出トレイ53への排出時間間隔は短くなる。
【0064】
以上のように、この実施形態に係る画像形成装置1は、ペルチェ素子71によって変換された電力を動力源として利用して、排熱用ファン55を回転させる。したがって、画像形成装置1は、排熱用ファン55の回転にともなう新たな消費電力を必要としない。そのため、画像形成装置1は、連続印刷時において、消費電力を増大させることなく、熱によるトナー像の溶融によって用紙PAに生じる問題を回避することができる。
【0065】
また、この実施形態に係る画像形成装置1によれば、排熱用ファン55の回転状態を示す回転状態信号SG(SG1,SG0)に基づいて、ファン安定駆動率FRが算出される。そして、当該ファン安定駆動率FRから排出トレイ53の温度Tが推定されるので、排出トレイ53の温度Tを検知する温度検知センサを新たに設ける必要がない。
【0066】
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を
中心に説明する。
【0067】
この第2実施形態においては、排熱用ファン55の回転状態を示す回転状態信号SG(SG1,SG0)に基づいて、排出トレイ53の温度Tを算出するとともに排熱用ファン55の異常をも検知する場合について例示する。
【0068】
図8は、第2実施形態に係る処理を示すフローチャートである。図8においては、図4の各処理に、排熱用ファン55の異常を検知する処理がさらに加えられている。より詳細には、図8においては、ステップS52とステップS56との間に、排熱用ファン55の異常を検知する処理(ステップS53〜ステップS55の処理)が挿入されている。なお、図8のステップS51,S52,S56の処理は、それぞれ図4のステップS11,S12,S13の処理に対応する。
【0069】
まず、図8のステップS51においては、図4のステップS11と同様に、温度推定部113が、図5のフローチャートの処理を実行することによって排出トレイ53の温度Tを推定する。
【0070】
つぎに、ステップS52において、プリント動作中であるか否かが判定され、プリント動作中の場合には、ステップS53に進む。
【0071】
そして、ステップS53においては、排出枚数カウント処理が実行される。具体的には、排出枚数カウント部117によって図9のフローチャートの処理が実行され、排出トレイ53に排出される用紙PAの枚数がカウントされる。
【0072】
具体的には、図9のステップS71において、用紙PAが排出ローラ51に到達したか否かが判定される。より詳細には、ステップS71において、用紙検知センサ52によって用紙PAの後端部分が検知されると、用紙PAは排出ローラ51に到達したと判定され、ステップS72に進む。そして、ステップS72においては、排出トレイ53に排出される用紙PAの排出枚数がカウントアップされる。
【0073】
また、図8のステップS54においては、図9のステップS72においてカウントされた排出枚数が所定枚数HS以上であるか否かが判定され、所定枚数HS以上の場合には、ステップS55に進む。所定枚数HSとしては適宜の値(例えば50)が設定される。
【0074】
そして、ステップS55においては、ファン異常検出処理がファン異常検知部119によって実行される。ファン異常検知部119は、排出枚数カウント部117によってカウントされた用紙PAの枚数と温度推定部113によって推定される排出トレイ53の温度Tとに基づいて、排熱用ファン55が正常に動作していない状態を検知する。具体的には、ファン異常検知部119は、図10のフローチャートの処理を実行し、排熱用ファン55が正常に動作していない状態を検知する。
【0075】
図10のフローチャートの処理においては、所定枚数HS以上の用紙PAが排出トレイ53に排出されたにもかかわらず温度推定部113による推定上昇温度ΔTが0である場合に、排熱用ファン55の異常がファン異常検知部119によって検知される。
【0076】
具体的には、ステップS91において、ファン異常検知部119は、排出トレイ53の上昇温度ΔTが0であるか否かを判定し、上昇温度ΔTが0の場合には、ステップS72に進み、排熱用ファン55に異常があると判定する。換言すれば、所定枚数HS以上の用紙PAが排出トレイ53に排出されているにもかかわらず安定状態信号SG1が出力されていない場合には、排熱用ファン55に異常が発生していると判定する。
【0077】
そして、ステップS72において、排熱用ファン55の異常が検知された場合には、画像形成装置1は、プリント動作を中断し、操作者にエラーを通知する。
【0078】
以上のように、第2実施形態に係る画像形成装置1によれば、排出枚数と排出トレイ53の温度ΔTとに基づいて、排熱用ファン55が正常に動作していない状態が検知されるので、排熱用ファン55の故障を知ることができる。
【0079】
<3.変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記で説明した内容のものに限定されるものではない。
【0080】
たとえば、上記の実施形態では、ファン異常検知部119は、回転状態信号SGに基づいて推定された排紙トレイ53の上昇温度ΔTに基づいて(謂わば、回転状態信号SGを間接的に利用して)、排熱用ファン55の異常を検知する場合を例示したが、これに限定されない。具体的には、ファン異常検知部119は、回転状態信号SGを直接的に利用して排熱用ファン55の異常を検知してもよい。例えば、ファン異常検知部119は、所定時間以上継続して印刷処理が実行される場合において、排熱用ファン55から出力される複数の回転状態信号SGに安定回転状態信号SG1が含まれていないことを条件として、排熱用ファン55の異常を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
51 排出ローラ
52 用紙検知センサ
53 排出トレイ
55 排熱用ファン
61 機内温度センサ
71 ベルチェ素子
FR ファン安定駆動率
CV 通電カウンタ変数
SV 安定回転状態カウンタ変数
ER 排出割合
ET 排出割合変換テーブル
UT 上昇温度変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
排出された転写材を載置する載置部と、
前記載置部に排出された転写材に付与されている熱を電力に変換する熱電変換手段と、
前記熱電変換手段によって生成された電力を利用して回転するファンと、
前記ファンから出力される出力信号であって前記ファンの回転状態を示す出力信号である回転状態信号に基づいて、前記載置部の温度を推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定された温度に基づいて、転写材の排出時間間隔を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記回転状態信号は、前記ファンの回転が安定している状態を示す安定状態信号と前記ファンの回転が安定していない状態を示す不安定状態信号とのいずれかとして前記ファンから選択的に出力され、
前記推定手段は、前記ファンによって出力される複数の回転状態信号における前記安定状態信号の出力頻度に基づいて、前記載置部の温度を推定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記回転状態信号に基づいて、前記ファンが正常に動作していない状態を検知する異常検知手段、
をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−107499(P2011−107499A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263676(P2009−263676)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】