説明

画像形成装置

【課題】比較的高い効率での両面印刷を可能とする画像形成装置を提供する。
【解決手段】シートにトナー画像を形成する画像形成部と、トナー画像をシートに定着させる定着部と、定着部からシートを案内する主排出搬送路と、シートが排出される第1排出部及び第2排出部と、主排出搬送路から分岐して、第1排出部へシートを案内する第1排出搬送路と、主排出搬送路の下流端から第2排出部へシートを案内する第2排出搬送路と、下流端において第2排出搬送路と接続されるとともに画像形成部の上流にシートを案内する戻し搬送路と、シートを第1排出搬送路へ選択的に案内する切り換えガイドと、を備え、第2排出部は、シートを排出する排出方向と、下流端へ戻す戻し方向との間で、第2排出搬送路によって案内されたシートの搬送方向を切り換えることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面印刷機能を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの両面に印刷処理を施す機能を有する画像形成装置は、省資源化の観点から、多くの使用者に好まれて用いられている。両面印刷を行った場合、片面印刷のときと較べて、紙の使用量は半減されることとなる。
【0003】
両面印刷機能は、多くの場合、シートを筐体から所定の長さ排出した後、筐体内にシートを引き戻すスイッチバック操作によって達成される。先行するシートとの干渉を防止するため、スイッチバック操作が行われている間、後続のシートに対する搬送は遅延される。この結果、両面印刷の効率は片面印刷のときと較べて、大きく劣ることとなる。
【0004】
両面印刷の効率を向上させるため、2つの排出口を設けることも考えられる。特許文献1は、2つの排出口を備える画像形成装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−316016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される画像形成装置は、2つの排出口を備えるが、両面印刷機能を有するものではない。したがって、特許文献1に開示される技術を用いても、そのまま両面印刷の効率向上に寄与することはない。
【0007】
特許文献1に示されるように、2つの排出口を有する画像形成装置は、上側の排出口を形成する上側筐体と、下側の排出口を形成する下側筐体とを備え、上側筐体及び下側筐体はそれぞれ別体に形成される。上側筐体は、使用者の要求に応じて、取り付けられるものである。
【0008】
両面印刷機能は、画像形成装置全体の制御を司る制御回路や制御プログラムによって実現されるため、両面印刷機能を実現させるためのスイッチバック装置は、オプション的に取り付けられる上側の筐体ではなく、画像を形成するために必要とされる各種装置を収容する下側の筐体の排出口に取り付けられる。下側の排出口にスイッチバック装置を設けた場合には、既に両面印刷がなされたシートは、スイッチバック装置によるスイッチバック操作の間隙を縫って排出される必要がある。このことは、両面印刷効率を著しく低減させる。また、このような構造では、使用される部品の数が増大するのに加えて、シートの搬送経路が複雑化し、シートの詰まりといったトラブルを誘発しやすくなると考えられる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、比較的高い両面印刷効率を発揮できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、シートにトナー画像を形成する画像形成部と、前記トナー画像をシートに定着させる定着部と、前記定着部から前記シートを案内する主排出搬送路と、前記シートが排出される第1排出部及び第2排出部と、前記主排出搬送路から分岐して、前記第1排出部へ前記シートを案内する第1排出搬送路と、前記主排出搬送路の下流端から前記第2排出部へ前記シートを案内する第2排出搬送路と、前記下流端において前記第2排出搬送路と接続されるとともに前記画像形成部の上流に前記シートを案内する戻し搬送路と、前記シートを前記第1排出搬送路へ選択的に案内する切り換えガイドと、を備え、前記第2排出部は、前記シートを排出する排出方向と、前記下流端へ戻す戻し方向との間で、前記第2排出搬送路によって案内された前記シートの搬送方向を切り換えることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
上記構成によれば、画像形成部により形成されたトナー画像を定着部はシートに定着させる。主排出搬送路は、定着部からシートを案内する。切り換えガイドによって、主排出搬送路から分岐する第1排出搬送路へ案内されたシートは第1排出部から排出される。切り換えガイドによって第1排出搬送路へ案内されないシートは、主排出搬送路の下流端に到達し、その後、第2排出搬送路に案内され、第2排出部から排出される。第2排出部が戻し方向にシートを搬送すると、シートは戻し搬送路によって画像形成部の上流に至る。第2排出部が、戻し方向にシートを搬送している間、第1排出部からシートが排出可能となる。したがって、両面印刷時におけるシートの排出効率が高まるため、両面印刷効率が向上することとなる。
【0012】
上記構成において、前記下流端を開閉する弁部を更に含み、前記下流端を開く開位置にある前記弁部は、前記主排出搬送路から前記第2排出搬送路へ前記シートを案内し、前記下流端を閉じる閉位置にある前記弁部は、前記第2排出搬送路から前記戻し搬送路へ前記シートを案内することが好ましい(請求項2)。
【0013】
上記構成によれば、下流端を開く開位置にある弁部は、主排出搬送路から第2排出搬送路へシートを案内する。このため、主排出搬送路から第2排出搬送路へのシートの搬送が好適に行われることとなる。また、下流端を閉じる閉位置にある弁部は、第2排出搬送路から戻し搬送路へシートを案内する。このため、第2排出搬送路から戻し搬送路へのシートの搬送が好適に行われることとなる。
【0014】
上記構成において、前記主排出搬送路は、前記第2排出部側に傾斜する方向に延出することが好ましい(請求項3)。
【0015】
上記構成によれば、主排出搬送路は、第2排出部側に傾斜して延びることとなるため、主排出搬送路から第2排出搬送路へのシートの搬送が好適に行われることとなる。
【0016】
上記構成において、筐体を更に備え、該筐体内に、前記第1排出搬送路及び前記第2排出搬送路が形成され、前記第1排出搬送路と前記第2排出搬送路との間で、前記筐体は分断されないように形成されることが好ましい(請求項4)。
【0017】
上記構成によれば、第1排出搬送路と第2排出搬送路との間のシートの搬送経路が一体的に形成されることとなり、好適なシートの搬送が実現されることとなる。
【0018】
本発明の他の局面に係る両面印刷機能を有する画像形成装置は、両面印刷機能を有する画像形成装置であって、シートにトナー画像を形成する画像形成部と、前記トナー画像を前記シートに定着させる定着部と、前記シートが排出される第1排出部と、前記トナー画像が定着された前記シートを排出する排出方向に所定量だけ搬送した後、前記排出方向とは反対方向の戻し方向に搬送する第2排出部と、該第2排出部によって前記戻し方向に搬送された前記シートを前記画像形成部へ向けて案内する戻し搬送路と、を備え、前記第1排出部は、前記戻し搬送路を通じて、前記画像形成部に送られ、両面に前記トナー画像が形成された前記シートを排出することを特徴とする(請求項5)。
【0019】
上記構成によれば、画像形成部がシートにトナー画像を形成し、定着部はトナー画像を定着させる。トナー画像の定着がなされたシートは、第2排出部によって、シートを排出する排出方向に所定量だけ搬送された後、搬送方向とは反対方向の戻し方向に搬送される。戻し搬送路は、戻し方向に送られたシートを画像形成部に向けて案内する。この結果、画像形成部はシートの両面にトナー画像を形成することができる。その後、シートは第1排出部によって排出されることとなる。かくして、シートの搬送方向を切り換える第2排出部とは異なる第1排出部を用いて、シートを排出することができるので、第2排出部のシートの搬送方向の切り換えの影響をほとんど受けることなくシートが効率よく排出されることとなる。かくして、シートの両面印刷効率が向上されることとなる。
【0020】
上記構成において、前記定着部から前記シートを案内する主排出搬送路と、該主排出搬送路から分岐して、前記第1排出部へ前記シートを案内する第1排出搬送路と、前記主排出搬送路の下流端に到達したシートを前記第2排出部へ案内する第2排出搬送路と、前記両面に前記トナー画像が形成された前記シートの搬送経路を第1排出搬送路に切り換える切り換えガイドと、を更に含むことが好ましい(請求項6)。
【0021】
上記構成によれば、定着部から送られたシートは主排出搬送路の下流端に到達した後、第2排出搬送路へ送られる。その後、第2排出部によって、シートの搬送方向の切り換えがなされる。シートに両面印刷が施与された後、切り換えガイドは、第1排出搬送路に切り換える。この結果、第1排出部によって、シートが排出されることとなる。かくして、シートの搬送方向を切り換える第2排出部とは異なる第1排出部を用いて、シートを排出することができるので、第2排出部のシートの搬送方向の切り換えの影響をほとんど受けることなくシートが効率よく排出されることとなる。かくして、シートの両面印刷効率が向上されることとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、比較的高い効率での両面印刷を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示される画像形成装置の排出構造の断面図である。
【図3】図1に示される画像形成装置の排出構造の断面斜視図である。
【図4】他の実施形態に係る排出構造を概略的に示す模式図である。
【図5】図1乃至図4に関連して説明される排出構造と、従来技術に基づき構築された排出構造とを比較する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、何ら本発明を限定するものではない。また、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパや画像形成処理を受ける他のシート材料を意味する。以下の説明で用いられる「上流」、「下流」及びこれらに類する用語は、シートの搬送方向における「上流」、「下流」及びこれらに類する概念を意味する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。尚、図1の画像形成装置は、複写機であるが、他の実施形態において、プリンタ、ファクシミリ装置、これらの機能を備える複合機やトナー画像をシートに形成するための他の装置であってもよい。
【0026】
画像形成装置1は、トナー画像を形成するのに必要とされる機器を収容するための筐体2と、筐体2の上面に配設される原稿送り装置3とを含む。筐体2は、下部筐体21と、下部筐体21の上方に配設される上部筐体22と、下部筐体21と上部筐体22とを接続する連結筐体23とを含む。下部筐体21、上部筐体22及び連結筐体23に取り囲まれてなる空間24には、印刷処理がなされたシートが排出される。空間24には、略水平方向に延びるトレイ241が形成される。トレイ241は、空間24を、上部空間242と下部空間243とに仕切る。
【0027】
上部筐体22は、主に、トナー画像の基となる原稿を読み取るための機器を収容する。下部筐体21は、トナー画像を形成するための機器を収容する。連結筐体23は、トナー画像が形成されたシートを排出するための機器を収容する。筐体2の外面には、画像形成装置1を操作するための操作パネル(図示せず)が配設される。使用者は、操作パネルを通じて、画像形成装置に所望の指示を与える。
【0028】
原稿送り装置3は、上下に回動するように筐体2に取り付けられる。原稿送り装置3は、原稿が載置される載置トレイ31と、筐体2の上面上で横たわる押さえカバー32と、載置トレイ31上の原稿を押さえカバー32の下面と筐体2の上面との間に送り込む原稿送り部33とを含む。使用者は、載置トレイ31上に所望の原稿を載置する。その後、操作パネルを操作し、原稿送り部33を動作させ、原稿を押さえカバー32の下面と筐体2の上面との間に送り込むことができる。代替的に、使用者は、原稿送り装置3を上方に回動させ、筐体2の上面に原稿を載置し、その後、原稿送り装置3を下方に回動させることで、原稿を筐体2の上面と押さえカバー32の下面との間に配設することができる。
【0029】
上部筐体22内には、筐体2の上面と押さえカバー32の下面との間に配設された原稿を走査して読み取る走査機構221が構築される。走査機構221は、光学的に原稿に付された像を走査して読み取る。その後、走査機構221は、読み取った像をデジタル信号として出力する。
【0030】
下部筐体21内には、走査機構221から出力されたデジタル信号に基づくトナー画像が形成されるシートを収容するカセット410が配設される。図1に示される画像形成装置1は、上下方向に積み重ねられた3つのカセット410を含むが、他の実施形態において、3未満のカセット410或いは4以上のカセット410が下部筐体21に内蔵されてもよい。
【0031】
カセット410は、リフト板411と、リフト板411の下流端(図1中、右端)をカセット410内で上下に回動させるための昇降機構412とを含む。使用者は、複数のシートが積層されてなるシートの束をリフト板411上に載置する。リフト板411の下流端が昇降機構412によって押し上げられることにより、カセット410からシートが搬送されることとなる。
【0032】
下部筐体21の右側板から手差しトレイ420が突出する。手差しトレイ420は、下部筐体21の右側板に対して上下に回動可能に取り付けられる。使用者は、手差しトレイ420にシートを載置してもよい。手差しトレイ420上のシートは、下部筐体21内に引き込まれ、その後、トナー画像の形成処理がなされることとなる。
【0033】
カセット410及び手差しトレイ420は、シートの供給源として用いられる。使用者は、操作パネルの操作を通じて、所望の大きさのシートを収容するカセット410或いは手差しトレイ420を選択することができる。選択されたシート供給源410,420に配設されたシートは、下部筐体2内で搬送され、画像形成処理を受けることとなる。
【0034】
リフト板411の上方には、ピックアップローラ511が配設される。昇降機構412がリフト板411の下流端を上昇させると、リフト板411上のシートはピックアップローラ511に接触する。ピックアップローラ511は、シートをカセット外へ送り出すように回転する。
【0035】
ピックアップローラ511の下流には、給紙ローラ512及び給紙ローラ512に近接して配設される捌きローラ513が配設される。給紙ローラ512は捌きローラ513の上側に配設される。ピックアップローラ511によってカセット410から送り出されたシートは、給紙ローラ512と捌きローラ513との間に送り込まれる。給紙ローラ512は、シートを更に下流に送り出すように回転し、捌きローラ513は逆に、シートをカセット410へ戻すように回転する。この結果、ピックアップローラ511が複数枚重なったシートカセット410から送り出したとき、給紙ローラ512と接触するシート(最も上側に存するシート)のみが下流に送られ、他のシートはカセット410に戻されることとなる。かくして、シートは1枚ずつ下流へ送り込まれることとなる。
【0036】
給紙ローラ512の下流に、下方から上方に向けて延びる供給搬送路514が形成される。供給搬送路514の適所には、搬送ローラ対515が配設される。給紙ローラ512によって、供給搬送路514に送られたシートは、供給搬送路514に案内されつつ、搬送ローラ対515によって上方に送られる。
【0037】
手差しトレイ420の基端部付近に、給紙ローラ516及び給紙ローラ516に圧接される捌きパッド517が配設される。手差しトレイ420上に載置されたシートは、給紙ローラ516によって下部筐体21内に引き込まれ、給紙搬送路514内に送り込まれる。給紙ローラ516によって下部筐体21内に引き込まれるシートは、給紙ローラ516と捌きパッド517との間を通過する。給紙ローラ516が複数枚のシートを下部筐体21内に引き込もうとするとき、捌きパッド517はシートの下面に摩擦力を生じさせる。この結果、給紙ローラ516と接触するシート(最も上側に存するシート)のみが下部筐体21内に引き込まれることとなる。かくして、手差しトレイ420からシートが1枚ずつ供給搬送路514内に送り込まれることとなる。
【0038】
供給搬送路514の下流端には、レジストローラ対518が配設される。レジストローラ対518の下流には、画像形成部600が構築される。画像形成部600は、走査機構221から出力されたデジタル信号に基づいてトナー画像を形成し、シートにトナー画像を転写する。レジストローラ対518は、画像形成部600の画像形成工程にタイミングを合わせて、シートを画像形成部600へ送り込む。かくして、シートの所定位置にトナー画像が形成されることとなる。
【0039】
本実施形態において、ピックアップローラ511、給紙ローラ512,516、捌きローラ513、捌きパッド516、搬送ローラ対515、レジストローラ対518及び供給搬送路514は、シートを画像形成部600へ供給する供給部として用いられる。
【0040】
画像形成部600は、円筒形状の感光体ドラム610を含む。感光体ドラム610は、回転可能に下部筐体21内部に取り付けられる。感光体ドラム610の周面に静電潜像が形成された後、静電潜像に合致するトナー画像が形成される。その後、感光体ドラム610はトナー画像を担持しつつ回転し、レジストローラ対518によって画像形成部600に送り込まれたシートにトナー画像を転写する。
【0041】
画像形成部600は、帯電器611と露光装置612とを含む。帯電器611は、感光体ドラム610の周面を一様に帯電させる。露光装置612は、走査機構221から出力されたデジタル信号に基づいて、レーザ光を感光体ドラム610の周面に照射する。レーザ光が照射された部分の電荷が消失することによって、原稿に表された像に合致する静電潜像が感光体ドラム610の周面に形成される。
【0042】
画像形成部600は、トナーを収容するトナーコンテナ613と、トナーコンテナ613から供給されたトナーを感光体ドラム610に供給する現像装置614とを含む。感光体ドラム610は、静電潜像を担持しつつ回転し、現像装置614からトナーを供給される。現像装置614から感光体ドラム610へ供給されたトナーは、感光体ドラム610の周面に静電的に付着する。この結果、感光体ドラム610の周面にトナー画像が形成されることとなる。
【0043】
画像形成部600は、感光体ドラム610に圧接される転写ローラ615を含む。レジストローラ対518は、感光体ドラム610と転写ローラ615との間にシートを送り込む。転写ローラ615は、感光体ドラム610が担持するトナーとは逆のバイアスをシートに与える。この結果、感光体ドラム610上のトナーは電気的にシート表面に引き剥がされることとなり、トナー画像がシートに転写される。その後、感光体ドラム610と転写ローラ615は、下流へシートを送り出す。
【0044】
画像形成部600はクリーニング装置616を含む。クリーニング装置616は、シートへのトナー画像の転写後の感光体ドラム610の周面に残存するトナーを除去する。その後、清浄化された感光体ドラム610の周面は、帯電器611によって再度一様に帯電され、新たな画像形成処理を受けることとなる。
【0045】
画像形成部600の下流には、画像形成部600で形成されたトナー画像をシートに定着させる定着部700が配設される。定着部700は、ヒータ711を内蔵する加熱ローラ710と、加熱ローラ710に圧接される加圧ローラ720とを含む。感光体ドラム610及び転写ローラ615は、加熱ローラ710と加圧ローラ720との間にシートを送り込む。
【0046】
加熱ローラ710からの熱エネルギによって、シート上のトナーが溶融され、加熱ローラ710と加圧ローラ720との間で生ずる圧力によって、トナー画像がシートに定着されることとなる。加熱ローラ710及び加圧ローラ720は、その後、シートを下流へ送り出す。
【0047】
定着部700の下流には、排出構造800が形成される。排出構造800は、定着部700から上方へ向けて延びる主排出搬送路810と、主排出搬送路810から分岐し、下部空間243へ向けて延びる第1排出搬送路820と、主排出搬送路810から上部空間242へ向けて延びる第2排出搬送路830とを含む。本実施形態において、下方から上方へ向かう主排出搬送路810の延出方向は、第1方向と便宜的に称される。また、主排出搬送路810から下部空間243へ向かう第1排出搬送路820の延出方向は、第2方向と便宜的に称される。主排出搬送路810の下端部から上部空間242へ向かう第2排出搬送路830の延出方向は第3方向と便宜的に称される。主排出搬送路810は定着部700から第1方向(上方)へシートを案内する。第1排出搬送路820は第1方向とは異なる第2方向(左方)へシートを案内する。第2排出搬送路830は、主排出搬送路810の下流端に到達したシートを第1方向とは異なる第3方向(左方)へ案内する。
【0048】
排出構造800は、切り換えガイド840を含む。切り換えガイド840は、第1排出搬送路820の分岐点に配設される。切り換えガイド840は、主排出搬送路810を通過するシートを選択的に第1排出搬送路820へ切り換える。
【0049】
第1排出搬送路820の分岐部の上流側には、排出搬送ローラ対811が必要に応じて配設されてもよい。排出搬送ローラ対811は、排出構造800内でのシートの搬送力を供給する。
【0050】
第1排出搬送路820の下流端には、第1排出部として用いられる第1排出ローラ対821が配設される。切り換えガイド840によって、第1排出搬送路820に案内されたシートは、第1排出ローラ対821によって、下部空間243内に排出される。下部空間243に排出されたシートは、下部筐体21の上面上で蓄積されることとなる。
【0051】
第2排出搬送路830の下流端には、第2排出部として用いられる第2排出ローラ対831が配設される。切り換えガイド840がシートの搬送経路を第1排出搬送路820へ切り換えないとき、シートは主排出搬送路810の下流端に到達する。その後、シートは、第2排出搬送路830へ案内され、第2排出ローラ対831によって、上部空間242内へ排出される。上部空間242に排出されたシートは、トレイ241上で蓄積されることとなる。
【0052】
使用者は、片面印刷を行うとき、操作パネルを通じて、印刷済みのシートが排出される空間として、上部空間242又は下部空間243を指定してもよい。使用者が下部空間243をシートの排出先と指定したとき、切り換えガイド840はシートの搬送経路を第1排出搬送路820へ切り換える。
【0053】
使用者が操作パネルを通じて、両面印刷の指示を画像形成装置1に与えると、切り換えガイド840は、第1排出搬送路820への経路を閉じ、主排出搬送路810の下流端へシートを案内する。第2排出ローラ対831は、シートを上部空間842へ排出する方向と、シートを再度主排出搬送路810の下流端へ戻す方向との間で回転方向を切り換え可能に形成される。本実施形態において、シートが上部空間242へ排出されるシートの搬送方向は、便宜的に、排出方向と称される。また、シートが主排出搬送路810の下流端へ戻されるシートの搬送方向は、便宜的に戻し方向と称される。
【0054】
主排出搬送路810の下流端から、第1方向及び第3方向とは異なる第4方向へシートを案内した後、画像形成部600の上流に配設されたレジストローラ518に向けてシートを案内する戻し搬送路850が形成される。本実施形態において、第4方向は第3方向とは逆方向である。これにより、第2排出搬送路830と戻し搬送路850とが連続的なシートの搬送路を形成することとなる。戻し搬送路850の適所には、シートをレジストローラ対518に向けて搬送する搬送ローラ対851が配設される。
【0055】
使用者が操作パネルを通じて、両面印刷の指示を画像形成装置1に与えると、第2排出ローラ対831は、シートを上部空間242内へ所定量だけ送り出した後、逆方向に回転し、筐体2内にシートを引き込む。その後、第2排出ローラ対831は戻し方向にシートを搬送し続け、戻し搬送路850へシートを送り込む。その後、シートは、戻し搬送路850に案内されて、レジストローラ対518へ到達する。
【0056】
上述の如く、レジストローラ対518は、画像形成部600にシートを送る。画像形成部600は、シートのブランク面(トナー画像が未形成の面)に画像を形成する。その後、シートは上述の如く定着部700へ送られ、トナー画像の定着処理を受ける。シートは更に、排出搬送ローラ対811によって排出構造800内で搬送される。切り換えガイド840は、このとき、第1排出搬送路820にシートの搬送経路を切り換える。この結果、シートは、第1排出搬送路820を通過し、第1排出ローラ対821によって下部空間243に排出されることとなる。
【0057】
図2は、排出構造800の断面図である。図3は、排出構造800の断面斜視図である。図2及び図3と併せて、図1を参照しつつ、排出構造800が更に説明される。
【0058】
図2及び図3に示される如く、排出構造800は、単一の筐体2内で形成され、第1排出搬送路820と第2排出搬送路830との間で分断されることはない。したがって、排出構造800内のシートの搬送経路は比較的単純な形状とすることができる。
【0059】
図2に示される如く、主排出搬送路810は、上方に向かうにつれて第2排出ローラ対831側に傾斜する。この結果、主排出搬送路810から第2排出搬送路830に向けて、円滑にシートが受け渡されることとなる。
【0060】
図4は、他の実施形態に係る排出構造800の概略構造を示す模式図である。図4に示される排出構造800の構造は、図1乃至図3に関連して説明された排出部と略同様であるので、図4と併せて、図1乃至図3を参照しつつ、排出構造800が更に説明される。
【0061】
図4に示される排出構造800は、弁部832を更に含む。弁部832は、主排出搬送路810の下流端に配設される。弁部832は、主排出搬送路810を開く開位置と、主排出搬送路810を閉じる閉位置との間で回動可能である。排出搬送ローラ811が送り出したシートが切り換えガイド840に案内され、主排出搬送路810の下流端に到達すると、シートの先頭縁が弁部832に衝突し、弁部832は開位置に向けて回動する。弁部832の下面はその後、シートを第2排出搬送路830へ案内する役割を担う。第2排出ローラ対831が排出方向に所定量シートを送ると、弁部832はその自重により閉位置へ戻る。第2排出ローラ対831が戻し方向にシートをその後送り出すと、弁部832の上面は、シートを戻し搬送路850へ好適に案内する。弁部832は、戻し方向に搬送されるシートの先頭縁が、主排出搬送路810の下流端を形成する壁部812に接触することを好適に妨げ、戻し搬送路850へ送られるシートの詰まりを抑制することができる。
【0062】
図5は、本実施形態に係る排出構造800の構造と従来技術に基づき構築される排出構造800Aとを比較する模式図である。図5(a)は、本実施形態に係る排出構造800の構造を概略的に示す。図5(b)は、従来技術に基づき構築される排出構造800Aの構造を概略的に示す。図5と併せて、図1を参照しつつ、本実施形態に係る排出構造800の構造及び従来技術に基づき構築される排出構造800Aが比較される。
【0063】
従来技術に基づき、上側の第2排出ローラ対831を第1排出ローラ対821とは別体の筐体20内に形成しようとすると、図5(a)に示される如く、筐体20は、主排出搬送路810だけでなく、戻し搬送路850をも横切ることとなる。このような構造は、設計上好ましいものではない。
【0064】
したがって、従来技術に基づいて、2つの排出ローラ対821,831を有する排出構造800を構成しようとすると、図5(b)に示されるように、主排出搬送路810から、第2排出搬送路830へシートを案内するための略U字形状の搬送路833を形成し、搬送路833に、第2排出搬送路830と戻し搬送路850とを接続させる必要がある。また、両面印刷機能を発揮させるため、第1搬送ローラ対が排出方向と戻し方向との間でシートの搬送方向の切り換え(スイッチバック動作)を行う必要がある。
【0065】
この結果、図5(b)に示される構造によれば、第1排出搬送ローラ対821がスイッチバック動作を行っている間、既に両面印刷処理がなされたシートは、排出搬送ローラ対811より下流に送り出すことができないこととなる。
【0066】
一方、図5(a)に示される本実施形態の構造によれば、第2排出ローラ対831がスイッチバック動作を行っている間、シートは排出搬送ローラ対811から送り出され、第1排出ローラ対821を通じて、下部空間243に排出されることとなる。
【0067】
下記の表1は、図5に示される排出構造800,800Aの構造を比較したデータである。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示されるように、図5(a)に示される排出部構造に示される構造を採用することにより、従来技術に基づいて構成された排出部と比して、両面印刷効率を有意に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、両面印刷機能を備える画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・・・画像形成装置
2・・・・・筐体
600・・・画像形成部
700・・・定着部
810・・・主排出搬送路
820・・・第1排出搬送路
821・・・第1排出ローラ対(第1排出部)
830・・・第2排出搬送路
831・・・第2排出ローラ対(第2排出部)
832・・・弁部
840・・・切り換えガイド
850・・・戻し搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートにトナー画像を形成する画像形成部と、
前記トナー画像をシートに定着させる定着部と、
前記定着部から前記シートを案内する主排出搬送路と、
前記シートが排出される第1排出部及び第2排出部と、
前記主排出搬送路から分岐して、前記第1排出部へ前記シートを案内する第1排出搬送路と、
前記主排出搬送路の下流端から前記第2排出部へ前記シートを案内する第2排出搬送路と、
前記下流端において前記第2排出搬送路と接続されるとともに前記画像形成部の上流に前記シートを案内する戻し搬送路と、
前記シートを前記第1排出搬送路へ選択的に案内する切り換えガイドと、を備え、
前記第2排出部は、前記シートを排出する排出方向と、前記下流端へ戻す戻し方向との間で、前記第2排出搬送路によって案内された前記シートの搬送方向を切り換えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記下流端を開閉する弁部を更に含み、
前記下流端を開く開位置にある前記弁部は、前記主排出搬送路から前記第2排出搬送路へ前記シートを案内し、
前記下流端を閉じる閉位置にある前記弁部は、前記第2排出搬送路から前記戻し搬送路へ前記シートを案内することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記主排出搬送路は、前記第2排出部側に傾斜する方向に延出することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
筐体を更に備え、
該筐体内に、前記第1排出搬送路及び前記第2排出搬送路は形成され、
前記第1排出搬送路と前記第2排出搬送路との間で、前記筐体は分断されないように形成されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
両面印刷機能を有する画像形成装置であって、
シートにトナー画像を形成する画像形成部と、
前記トナー画像を前記シートに定着させる定着部と、
前記シートが排出される第1排出部と、
前記トナー画像が定着された前記シートを排出する排出方向に所定量だけ搬送した後、前記排出方向とは反対方向の戻し方向に搬送する第2排出部と、
該第2排出部によって前記戻し方向に搬送された前記シートを前記画像形成部へ向けて案内する戻し搬送路と、を備え、
前記第1排出部は、前記戻し搬送路を通じて、前記画像形成部に送られ、両面に前記トナー画像が形成された前記シートを排出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記定着部から前記シートを案内する主排出搬送路と、
該主排出搬送路から分岐して、前記第1排出部へ前記シートを案内する第1排出搬送路と、
前記主排出搬送路の下流端に到達したシートを前記第2排出部へ案内する第2排出搬送路と、
前記両面に前記トナー画像が形成された前記シートの搬送経路を第1排出搬送路に切り換える切り換えガイドと、を更に含むことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154205(P2011−154205A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15811(P2010−15811)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】