説明

画像形成装置

【課題】容器本体に直接液体を収容し、容器内に大気を導入するとき、液体によって大気導入部材が塞がれて液体供給が安定化しない。
【解決手段】カートリッジホルダ部4には、インクカートリッジ10のインク供給口部102、大気導入口部103に対応するインク導出部材202、大気導入部材203を有し、インクカートリッジ10の着脱に応じて体積が減少、増加する空気室210が設けられ、大気導入部材203を大気開放部位213に通じる第1空気流路212を有し、第1空気流路212は途中の分岐部分214で第2空気流路215を通じて空気室210と接続し、インクカートリッジ10が挿入されるときに空気室210の空気が大気導入部材203に送り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、例えば記録ヘッドを搭載したキャリッジ上に、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンクとも称される。)を搭載し、メインのインクカートリッジ(メインタンクとも称される)を画像形成装置本体(以下、単に「装置本体」という。)側に着脱自在に装着し、サブタンクに装置本体側のインクカートリッジからインクを補充供給するようにしたものが知られている。
【0005】
従来、インクカートリッジとして、例えば、剛体からなる容器本体に直接インクを収容するタイプのものであって,インクを外部に供給するための供給口部とインクカートリッジ内部を大気に開放する大気開放口部(大気導入口部)とを備えたものが知られている(特許文献1、2)。このようなインクカートリッジを着脱自在に装着する装置本体のカートリッジホルダには、インクカートリッジの供給口部及び大気導入口部のそれぞれに対応する中空状の針が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3697213号公報
【特許文献2】特許第4217454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように容器本体に直接インクを収容し、内部に大気を導入する大気導入口部を有するインクカートリッジにあっては、大気導入口部に挿通される大気導入針内部にインクが付着し、増粘したときに、大気開放流路が塞がれて大気導入を行なえなくなる。その結果、インク供給時に容器本体が密閉空間になってインクカートリッジからインクを吸いだしにくくなり、インク供給不足が生じて画像が乱れるという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で大気導入流路を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
内部に液体を収容する容器本体と、前記液体を供給する供給口部と、内部に大気を導入する大気導入口部と、を有する液体収容容器が、着脱可能に装着される容器ホルダ部を備え、
前記容器ホルダ部には、
前記液体収容容器の供給口部に挿入されて前記液体を導出する中空状の液体導出部材と、
前記液体収容容器の大気開放口部に挿入されて前記液体収容容器内を大気に開放する大気導入部材と、
前記液体収容容器の装着及び取出しにより体積が減少及び復元する空気室と、
前記液体収容容器が装着されて前記空気室の体積が減少するときに、前記空気室の空気を前記大気導入部材に与える手段を備えている
構成とした。
【0010】
ここで、
前記大気導入部材から大気開放部部位までの第1空気流路と、
前記第1空気流との途中に設けられた分岐部分から前記空気室に通じる第2空気流路と、
前記第1空気流路と前記第2空気流路の分岐部分に設けられ、前記空気室の体積が減少するときに、前記第1空気流路と前記第2空気流路との間の流路抵抗よりも前記第1空気流路の前記分岐部分の前記大気開放部位側の流路抵抗を大きくする流路抵抗可変手段と、を備えている
構成とできる。
【0011】
この場合、前記流路抵抗可変手段は、前記第1空気流路の前記分岐部分の前記大気開放部位側の流路を開閉する弁手段である構成とできる。
【0012】
また、前記弁手段が閉じる位置に移動した状態で、前記第1空気流路の分岐部分より前記大気導入部材側の流路と前記分岐部分より前記大気開放部位側の流路が流路抵抗が大きくなった状態で通じている構成とできる。
【0013】
また、前記第1空気流路は、前記分岐部分より前記大気導入部材側の流路の流路抵抗に比べて、前記分岐部分より前記大気開放部位側の流路の流路抵抗が大きい構成とできる。
【0014】
また、前記弁手段は、前記空気室からの圧力を受けて開閉動作をする構成とできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置によれば、前記液体収容容器の装着及び取出しにより体積が減少及び復元する空気室と、前記液体収容容器が装着されて前記空気室の体積が減少するときに、前記空気室の圧力を前記前記大気導入部材に与える手段を備えている構成としたので、液体収容容器を装着するときに大気導入部材から空気室の圧縮空気が流れ込むことで大気導入部材内の液体を液体収容容器内に排出することができ、簡単な構成で大気導入流路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】カートリッジホルダ部にインクカートリッジを装着した状態の模式的平面説明図である。
【図5】同インクカートリッジの模式的断面説明図である。
【図6】同カートリッジホルダ部の模式的断面説明図である。
【図7】カートリッジホルダ部にインクカートリッジを装着した状態の模式的断面説明図である。
【図8】流路抵抗可変手段の説明に供する要部拡大説明図である。
【図9】大気導入部材にインクが付着することによる不都合の説明に供するインクカートリッジの断面説明図である。
【図10】同じくカートリッジホルダ部にインクカートリッジを装着する状態の模式的断面説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態の説明に供する分岐部分の拡大説明図である。
【図12】本発明の第3実施形態の説明に供する断面説明図である。
【図13】本発明の第4実施形態のカートリッジホルダ部の断面説明図である。
【図14】同じくインクカートリッジの断面説明図である。
【図15】インクカートリッジをカートリッジホルダ部に装着した状態の断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図、図2は同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図、図3は同機構部の要部平面説明図である。
【0018】
この画像形成装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1と、装置本体1に装着したまま所定の用紙補給位置まで引出し可能な給紙カセット2と、給紙カセット2の蓋部材を兼ね、装置本体1に揺動可能に装着されて給紙カセット2の上方を開閉可能な排紙トレイ3とを備えている。給紙カセット2は装置本体1内に給紙する用紙がストックされ、排紙トレイ3には画像が記録(形成)された用紙がストックされる。さらに、装置本体1の前面の一端部側には、液体収容容器であるインクカートリッジを着脱自在に装填する(装着する)ためのカートリッジ装填部(カートリッジホルダ部)4を有し、このカートリッジホルダ部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0019】
そして、機構部については、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0020】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0021】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0022】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジホルダ部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10k(区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)から、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0023】
一方、給紙カセット2の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部(給紙手段)として、底板41上の用紙42を1枚ずつ分離給送する給紙ローラ43及び給紙ローラ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(フリクションパッド)44を備え、この分離パッド44は給紙ローラ43側に付勢されている。
【0024】
そして、この給紙カセット2から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0025】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0026】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0027】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0028】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
【0029】
また、この維持回復機構81の下方側には維持回復動作のうちの空吐出受け84に対する空吐出及びワイパ部材83の清掃によって空吐出受け84から生じる廃液を収容するための交換されない第1廃液タンク90を、維持回復機構81の側方側にはカートリッジ装填部4の下側に装置本体の前面側から交換可能な第2廃液タンク91を、それぞれ備えている。インクカートリッジ10及び第1廃液タンク91は、装置本体1の前面の共通のカバーを開くことで、装置本体前面側から交換することができるため、低コスト化を図れる。
【0030】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0031】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙カセット2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0032】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0033】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0034】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0035】
次に、本発明における液体収容容器としてのインクカートリッジ及び容器ホルダ部としてのカートリッジホルダ部について図4ないし図8を参照して説明する。なお、図4はカートリッジホルダ部にインクカートリッジを装着した状態の模式的平面説明図、図5は同インクカートリッジの模式的断面説明図、図6は同カートリッジホルダ部の模式的断面説明図、図7はカートリッジホルダ部にインクカートリッジを装着した状態の模式的断面説明図、図8は流路抵抗可変手段の説明に供する要部拡大説明図である。
【0036】
インクカートリッジ10は、剛体からる容器本体(ケース)101内に直接インク100が収容され、容器本体101には装着方向前面の下部にインク供給口部102が設けられ、インク液面よりも上部に大気導入口部103が設けられている。インク供給口部102及び大気導入口部103はいずれも圧入されたシールゴムなどの封止部材104、105で封止されている。この封止部材104、105にカートリッジホルダ部4の液体導出部材(インク導出部材202)や大気導入部材204が刺し通されることで、インクの供給や容器本体101内部の大気への開放(大気の導入)が行われる。
【0037】
このようなインクカートリッジ10は、図5に示すように、インク供給に伴って容器本体101内のインクが減少するが、このとき、仮に大気が導入されていないとすると、剛体の容器本体101は変形しづらいため容器本体101内が負圧となり、インク供給しづらい状態となる。そこで、容器本体101の上部に大気導入口部103を設けて,大気と連通させておくことで、インク減少分を補うだけの大気が容器本体101の外部から導入され、容器本体101内部が過剰な負圧となることを防止している。
【0038】
一方、カートリッジホルダ部4は、インクカートリッジ10の前面に対向して、対向面4aから突き出して、インクカートリッジ10のインク供給口部102の封止部材104に刺し通されるインク導出部材202と、大気導入口部103の封止部材105に刺し通される大気導入部材203が設けられている。インク導出部材202及び大気導入部材203はいずれも中空針で構成し、孔202a、203aを有している。
【0039】
また、カートリッジホルダ部4には、図6に示すように、インクカートリッジ10の装着及び取り外しに応じて変位することで内部の体積が減少及び増加する空気室210を形成する空気室部材211が設けられている。この空気室部材211は、蛇腹状部材からなり、インクカートリッジ10の装着及び取り外し(挿入及び抜き去り)によって伸縮するもので、これにより空気室210の体積が増減する。
【0040】
そして、大気導入部材211には、一端が開口して大気開放部材213となるたチューブなどからなる第1空気流路212が接続され、この第1空気流路212の途中には分岐部分214が設けられて、この分岐部分214から空気室210に通じるチューブなどからなる第2空気流路215が接続されている。
【0041】
この第1空気流路212と第2空気流路215との分岐部分214内には、図7に示すように、分岐部分214の中間部位に設けられたストッパ216aと、分岐部分214の大気開放部位213側に設けられたストップ216bで揺動範囲が規制される弁体217からなる弁手段218が設けられている。
【0042】
この弁手段218は、図8(a)に示すように、通常は、弁体217が自重でストッパ216a側に位置して、大気導入部材203と大気開放部位213との間を開放し、図8(b)に示すように、第2空気流路215からの空気の流れを受けたとき、弁体217がストッパ216b側に揺動して大気導入部材203と大気開放部位213との間を閉じる。
【0043】
つまり、この弁手段218により、空気室210の体積が減少するときに、第1空気流路212と第2空気流路215との間の流路抵抗よりも第1空気流路212の分岐部分214の大気開放部位213側の流路抵抗を大きくする流路抵抗可変手段を構成している。
【0044】
そして、第2空気流路215と弁手段218により、インクカートリッジ10が装着されて空気室210の体積が減少するときに、空気室210の空気を大気導入部材203に与える手段を構成している。
【0045】
このように構成したので、図7に示すように、インクカートリッジ10がカートリッジホルダ部4内に挿入するとき、インクカートリッジ10で空気室形成部材211が押されて縮みことで空気室210の体積が減少し、この空気室210の空気が第2空気流路215を通じて分岐部分214に送られ、この空気の流れによって弁手段218が閉じる。これにより、空気室210から押し出された空気は、分岐部分214から第1空気流路212を通じて大気導入部材203を経て、インクカートリッジ10の容器本体101内に流れ込む。この空気の流れより、大気導入部材203内部に侵入していたインクは、容器本体101内に排出される(押し戻される)る。
【0046】
そして、インクカートリッジ10のカートリッジホルダ部4内に装着されてセットされた状態になると、弁手段219の弁体217は空気室210からの気流がなくなるので、自重により図8(a)に示す中間位置(開位置)まで戻る。
【0047】
これによって、大気導入部材203から第1空気流路212を通じて大気開放部位213に至る大気開放流路が確保される。
【0048】
ここで、上述した大気導入部材にインクが付着することによる不都合について図9及び図10を参照して説明する。
まず、図9に示すように、インクカートリッジ10の内部にインク100と空気が存在する場合、インクカートリッジ10に振動が加わると、インク100と空気が混ざり合ってインク泡100aが発生することがあり、特に界面活性剤を含有しているインクは泡立ちやすい。
【0049】
このようにインク泡100aが発生しているインクカートリッジ10をカートリッジホルダ部4に装着したとき、図10(a)に示すように容器本体101内の上部までインク泡101aが来ていると、図10(b)に示すように大気導入部材203がインク泡100aに包まれた状態になる。そのため、インク泡100aの一部が大気導入部材203に開けられている孔203aから内部に侵入する。この侵入したインク泡が、そのまま、あるいは潰れてインクとして凝固してしまうと、大気導入部材203内の流路が次第に狭くなり、最後には詰まってしまい、インクカートリッジ10内部を大気開放できない状態になってしまう。
【0050】
インクカートリッジ10内部を大気開放できなければ、前述したように、負圧が過剰になってインク供給が間に合わなくなり、供給不足による画質の低下などが発生する。
【0051】
そこで、本実施形態のように、インクカートリッジ10をカートリッジホルダ部4に装着するときに、空気室210の空気を大気導入部材203内に与える(送り込む)ことによってインク泡の侵入を阻止して、大気導入部材203の目詰まりを防止できる。
【0052】
次に、本発明の第2実施形態について図11を参照して説明する。なお、図11は同実施形態における分岐部分の拡大説明図である。
ここでは、弁手段218が大気開放部位213側を完全に閉じないように、つまり、弁手段218が閉じても第1空気流路212の大気開放部位213側への流路219が確保されるようにストッパ216bと壁面との間に隙間を設けている。なお、流路219の開口断面積を第1空気流路212の開口断面積に比べて十分小さくしておけば、大気導入部材203側への空気の流れを生じさせることができる。
【0053】
このように隙間を設けることで、空気室210の空気が圧縮されることで生じる気流により、弁手段218が閉じたときに、密閉空間となる部分の圧力が高くなり、弁手段218の弁体217が大気開放部位(ストッパ216側)に押され続けて、大気開放流路が閉じられることがないようにできる。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態について図12を参照して説明する。なお、図12は同実施形態に説明に供する断面説明図である。
ここでは、第1空気流路212の分岐部分214から大気開放部位213までの流路抵抗(流路断面積)を、第1空気流路212の分岐部分214から大気導入部材203側までの流体抵抗よりも大きくしている。具体的には、第1空気流路212の分岐部分214から大気開放部位213までの部分211bの流路断面積を、第1空気流路212の分岐部分214から大気導入部材203側までの部分211aの流路断面積よりも小さくしている。
【0055】
このように構成することで、インクカートリッジ10内部と大気とを連通させつつ、気体の出入り量を少なく抑えることができて、インクカートリッジ10内の水分蒸発を低減できて、インクの増粘を抑えることができる。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態について図13ないし図15を参照して説明する。なお、図13は同実施形態のカートリッジホルダ部の断面説明図、図14は同じくインクカートリッジの断面説明図、図15はインクカートリッジをカートリッジホルダ部に装着した状態の断面説明図である。
ここでは、カートリッジホルダ部4に大気導入部材203の外周を覆う筒状カバー221を設け、この筒状カバー221内に、大気導入部材203の孔203を保護するシールゴム222を設けている。そして、シールゴム222の内側に空気室210を形成する蛇腹上の空気室形成部材211を配置している。同様に、インク導出部材202側にも、インク導出部材202の外周を覆う筒状カバー221を設け、この筒状カバー221内に、インク導出部材202の孔202を保護するシールゴム222を設けている。そして、シールゴム222の内側に空気室210を形成する蛇腹上の空気室形成部材211を配置している。
【0057】
一方、インクカートリッジ10の容器本体101は、インク供給口部102及び大気導入口部103の周囲にカートリッジホルダ部4の筒状カバー221、221内が入り込むように逃げ用の凹部111が形成されている。
【0058】
このように構成したので、インクカートリッジ10をカートリッジホルダ部4に差し込む(挿入する)と、インクカートリッジ10のインク供給口部102、大気導入口部103がシールゴム222を押し込むので、空気室210が圧縮され、前述した実施形態と同様に、空気室210から押し出された空気が大気導入部材203に流れ込み、大気開放流路を確保する。
【0059】
また、インクカートリッジ10がカートリッジホルダ部4から抜かれると、空気室210は元の伸びた状態に復元する。このとき、シールゴム222とカバー221は、カートリッジ10の抜く方向と同一の向きに力が加わるので、シールゴム222がインク導出部材202の孔202a、待機導入部材203の孔203aを覆い、孔202a、203bを通じてゴミなどが侵入することを防止できる。
【符号の説明】
【0060】
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
4 カートリッジホルダ部(容器ホルダ部)
10 インクカートリッジ(液体収容容器)
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
101 容器本体
102 インク供給口部
103 大気導入口部
202 インク導出部材
203 大気導入部材
210 空気室
212 第1空気流路
213 大気開放部位
214 分岐部分
215 第2空気流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を収容する容器本体と、前記液体を供給する供給口部と、内部に大気を導入する大気導入口部と、を有する液体収容容器が、着脱可能に装着される容器ホルダ部を備え、
前記容器ホルダ部には、
前記液体収容容器の供給口部に挿入されて前記液体を導出する中空状の液体導出部材と、
前記液体収容容器の大気開放口部に挿入されて前記液体収容容器内を大気に開放する大気導入部材と、
前記液体収容容器の装着及び取出しにより体積が減少及び復元する空気室と、
前記液体収容容器が装着されて前記空気室の体積が減少するときに、前記空気室の空気を前記大気導入部材に与える手段を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記大気導入部材から大気開放部部位までの第1空気流路と、
前記第1空気流との途中に設けられた分岐部分から前記空気室に通じる第2空気流路と、
前記第1空気流路と前記第2空気流路の分岐部分に設けられ、前記空気室の体積が減少するときに、前記第1空気流路と前記第2空気流路との間の流路抵抗よりも前記第1空気流路の前記分岐部分の前記大気開放部位側の流路抵抗を大きくする流路抵抗可変手段と、を備えている
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記流路抵抗可変手段は、前記第1空気流路の前記分岐部分の前記大気開放部位側の流路を開閉する弁手段であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記弁手段が閉じる位置に移動した状態で、前記第1空気流路の分岐部分より前記大気導入部材側の流路と前記分岐部分より前記大気開放部位側の流路が流路抵抗が大きくなった状態で通じていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1空気流路は、前記分岐部分より前記大気導入部材側の流路の流路抵抗に比べて、前記分岐部分より前記大気開放部位側の流路の流路抵抗が大きいことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記弁手段は、前記空気室からの圧力を受けて開閉動作をすることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−178057(P2011−178057A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45182(P2010−45182)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】