説明

画像形成装置

【課題】複数の排出キャップから1つの吸引手段で排出を行なうときに個別排出経路を閉塞するために排出経路が詰まる。
【解決手段】ヘッド101a〜101dのノズルから回復動作で排出されるインクを受ける排出キャップ51a〜51dと、複数の排出キャップ51a〜51dに共通の1つの排出ポンプ52と、複数の排出キャップ51a〜51dにそれぞれ連通する可撓性チューブなどの変形可能な個別吸引経路53a〜53dと、複数の個別吸引経路53a〜53dを相互に連通して排出ポンプ52に通じる共通吸引経路54と、複数の個別吸引経路53a〜53dの流路断面積を、連通状態を維持したままそれぞれ可変させる流体抵抗可変手段として流路抵抗変更カム55a〜55dとを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出するヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
液体吐出方式の画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、一般的にインクの吐出不良を低減するために、記録ヘッドのノズルから気泡や増粘インク等を強制的に排出させるメンテナンス動作が適時行われている。このメンテナンス動作としては、ノズルから強制的にインクを吸引排出させる吸引方式によるものと、記録ヘッドにインクを加圧供給してノズルから強制的にインクを排出させる加圧方式によるもの、両方式を組み合わせたものが知られている。
【0005】
そして、記録ヘッドのノズルから排出されるインクの回収は、記録ヘッドの下方に配置されるキャップ(インク回収部材;以下「排出キャップ」という。)により受け止められる。この排出キャップ内のインクを自然落下で廃液タンクに排出させる構成、記録ヘッドのノズル面の保護、乾燥防止を行う排出キャップ内にインクを溜め、排出キャップに接続したポンプなどの吸引手段により廃液タンクに排出させる構成が採用される。
【0006】
また、ライン型画像形成装置として、複数のヘッドを配列してライン型ヘッドを構成した記録ヘッドを使用する場合、排出キャップは各ヘッドそれぞれに複数個配置して、複数の排出キャップそれぞれにインクの移送を行う吸引手段を設けるもの、あるいは、複数の排出キャップに共通の1つの吸引手段を備えて互いに連通した排出経路を通じて複数の排出キャップ内のインクを同時に廃液タンクなどに移送するものなどが知られている。
【0007】
例えば、複数のキャップ手段と吸引駆動モ‐タとを複数のインクチュ‐ブを介して連結し、さらに複数のインクチュ‐ブ部材を選択的に折り曲げ可能な、突起部材からなる折り曲げ手段を設け、吸引駆動モ‐タを駆動させるに先立って、複数のキャップ手段のうち負圧を発生させたくないキャップ手段については対応するインクチュ‐ブ部材を折り曲げ手段を用いて折り曲げて閉塞させた状態とし、その後に吸引駆動モ‐タを駆動させことにより、所望のキャップ手段内だけに負圧を発生させるもの知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−170562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように複数の排出キャップが互いに連通した排出経路を設けて1つの吸引手段で複数の排出キャップ内のインクを同時に移送させる場合、1つでインクが空の排出キャップがあると、排出経路のエアーとインクの流体抵抗の差により、空の排出キャップよりエアーのみを移送してしまい、複数の排出キャップの排出状態が不均一になるという課題がある。
【0010】
そこで、特許文献1に開示されているように、複数の排出キャップの排出経路を選択的に閉塞し、複数の排出キャップを選択的に吸引するものもあるが、排出経路を閉塞するために、乾燥等により増粘したインクが排出経路内に残留した場合、インクの張り付きにより閉塞した状態が元に戻らず、排出経路が詰まるという課題がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、排出経路の詰まりを抑えつつ簡単な構成で複数の排出キャップから選択的に排出を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドと、
前記ヘッドのノズルから液体を排出させて前記ヘッドの吐出状態を回復する回復手段と、
前記複数のヘッドからそれぞれ排出される液体を受ける複数の排出キャップと、
前記複数の排出キャップに共通の1つの吸引手段と、
前記複数の排出キャップにそれぞれ連通する複数の変形可能な個別吸引経路と、
前記複数の個別吸引経路を相互に連通して前記吸引手段に通じる共通吸引経路と、
前記複数の個別吸引経路の流路断面積を、連通状態を維持したままそれぞれ可変させる流体抵抗可変手段と、を有している
構成とした。
【0013】
ここで、前記流体抵抗可変手段は前記個別吸引経路に当接可能なカムであり、各個別吸引経路のカムは共通の回転軸に設けられている構成とできる。
【0014】
また、前記複数のヘッドが千鳥状に配列されてライン型ヘッドを構成している構成とできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置によれば、複数のヘッドからそれぞれ排出される液体を受ける複数の排出キャップと、複数の排出キャップに共通の1つの吸引手段と、複数の排出キャップにそれぞれ連通する複数の変形可能な個別吸引経路と、記複数の個別吸引経路を相互に連通して前記吸引手段に通じる共通吸引経路と、前記複数の個別吸引経路の流路断面積を、連通状態を維持したままそれぞれ可変させる流体抵抗可変手段と、を有している構成としたので、排出経路の詰まりを抑えつつ、簡単な構成で複数の排出キャップから選択的に排出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明する概略斜視説明図である。
【図2】同じく側面概略説明図である。
【図3】同じく要部平面説明図である。
【図4】同じく維持回復動作の説明に供する説明図である。
【図5】同じくインク供給系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】同じくインク排出系の説明に供する斜視説明図である。
【図7】流路抵抗変更カムの説明に供する説明図である。
【図8】各流路抵抗変更カム位置と個別排出経路の流路形状の説明に供する説明図である。
【図9】排出キャップからのインク排出動作の説明に供する説明図である。
【図10】従前の排出キャップからのインク排出動作の説明に供する説明図である。
【図11】個別排出経路の流体抵抗の変更の説明に供する説明図である。
【図12】制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図13】回復動作の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略斜視説明図、図2は同じく側面説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
【0018】
この画像形成装置は、液滴を吐出するライン型記録ヘッドで構成される画像形成ユニット1と、画像形成ユニット1の記録ヘッドにインクを供給するインク供給部2と、画像形成ユニット1の記録ヘッドに対向して用紙を搬送する搬送手段としての搬送ユニット3と、用紙Pを搬送ユニット3に給紙する給紙部4と、搬送ユニット3の用紙搬送方向下流側に配置され、画像形成ユニット1のライン型記録ヘッドの維持回復を行う維持回復手段としての維持回復ユニット5と、排紙部6と、画像形成ユニット1を用紙搬送方向に沿って搬送ユニット3に対応する位置と維持回復ユニット5に対応する位置との間で双方向(図1の矢示A方向)に移動させるヘッド移動手段7などとを備えている。
【0019】
画像形成ユニット1は、ライン型記録ヘッドとして、ベース部材12上に、液滴を吐出する複数(ここでは2個)のヘッド201をノズル配列方向に配列した4つのヘッド列11A〜11Dからなる記録ヘッドユニット11を有している。記録ヘッドユニット11の各ヘッド列11A〜11Dの各ヘッド201は2列のノズル列を有し、隣り合う2つのヘッド列で1ライン分の液滴を吐出する構成としている。例えば、ヘッド列11A、11Bの一方のノズル列でブラック(K)の液滴を、他方のノズル列でシアン(C)の液滴を吐出し、ヘッド列11C、11Dの一方のノズル列でマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列でイエロー(Y)の液滴を吐出する。なお、記録ヘッドの構成はこれに限るものではない。
【0020】
画像形成ユニット1の記録ヘッドユニット11のヘッド101に各色のインクを供給するインク供給部2は、各色のインクを収容した交換可能なメインタンク(インクカートリッジ)20を含むメインタンクユニットと、メインタンクからインク供給チューブ26を介してインクが供給される液体タンクであるサブタンク(インクタンク)21と、サブタンク21内を加圧する加圧回復装置27と、サブタンク21から供給チューブ23を介してインクが供給され、供給されるインクを、供給チューブ24を介して各ヘッド11aに分岐して供給する分岐部(分配部材)22とを備え、各サブタンク21と画像形成ユニット1の記録ヘッドユニット11との間に水頭差を設けてヘッド201に所要の負圧を発生させている。
【0021】
画像形成ユニット1のベース部材12は記録ヘッドユニット11を保持する第1ベース部材12Aと、この第1ベース部材12Aを少なくとも上下方向に移動自在に保持する第2ベース部材12Bとで構成されている。この第2ベース部材12B上には、インク供給部2のサブタンク21及び分岐部22なども保持されている。
【0022】
そして、この第2ベース部材12Bは、ヘッド移動手段7の駆動ローラ72と従動ローラ72に掛け回されたタイミングベルト74に連結され、駆動ローラ72が駆動モータ75によって回転駆動されることにより、用紙搬送方向に沿って移動される。これにより、画像形成ユニット1を用紙搬送方向に沿って搬送ユニット3に対応する位置と維持回復ユニット5に対応する位置との間で双方向に移動される。
【0023】
このように、画像形成ユニット1とインク供給部2のサブタンク21などもベース部材12(ここでは、第2ベース部材12B)上に保持して一体的に移動させることによってサブタンク21から記録ヘッド11に対するインク供給用のチューブの変形による内部圧力の変化などの不具合を防止できる。
【0024】
搬送ユニット3は、給紙部4から分離ローラ41及び給紙ローラ42によって1枚ずつ分離されて給紙される用紙Pを画像形成ユニット1に対向して搬送する搬送ベルト31を備えている。この搬送ベルト31は、搬送駆動ローラ32と搬送従動ローラ33との間に掛け回された無端状ベルトであり、表面には複数の図示しない穴が形成されており、搬送ベルト31の下部には用紙Pを吸引するエアー吸着ファン(吸引ファン)34が配置されている。また、搬送ユニット3には画像形成ユニット1の記録ヘッド11のノズル面と搬送ベルト41の表面(用紙搬送面)との間のギャップを規制するギャップ調整手段35が備えられている。
【0025】
搬送駆動ローラ32は図示しないモータにより回転されることで搬送ベルト31が周回移動し、用紙Pは搬送ベルト31上に吸引ファン34により吸い付けられ、搬送ベルト31の周回移動によって搬送される。なお、用紙の吸着は吸引に限られるものではなく、静電吸着や粘着などによって保持する構成にしてもよい。
【0026】
この搬送ユニット3は、搬送ベルト31、吸引ファン34、ギャップ調整手段35などが一体的に用紙搬送方向上流側の従動ローラ33を支点として用紙搬送方向下流側の駆動ローラ32が下がる状態で回動可能に配置され、記録ヘッド11(画像形成ユニット1)に近接するホーム位置(図2の実線図示の位置:第1位置)と記録ヘッド10から離間する解除位置(図2の破線図示の位置:第2位置)との間で矢示B方向に変位可能とされている。搬送ユニット3の用紙搬送方向下流側が下がって解除される構成とすることで、ジャムの場合のジャム用紙の取出しが容易になり、また、画像形成ユニット1を維持回復ユニット5側へ移動するときに画像形成ユニット1の記録ヘッド11のノズル面と搬送ベルト31との干渉のおそれを防止できる。
【0027】
この搬送ユニット3をホーム位置と解除位置との間で変位させる解除機構8は、搬送ユニット解除駆動モータ81と、この駆動モータ81の回転がピニオン82を介して伝達されるセクタギヤ83とを備え、搬送ユニット解除駆動モータ81とピニオン82は画像形成装置のベース側(装置筐体側)に固定され、セクタギヤ83は図示しない搬送ユニット3のユニットフレーム側に固定され、ピニオン82が回転することによってセクタギヤ83が移動、即ち搬送ユニット3が回動変位する機構となっている。なお、搬送ベルト解除駆動モータ81からピニオン82まではタイミングベルトやギヤ等の動力伝達機構を用いているが図示を簡略化している。
【0028】
維持回復ユニット5は、記録ヘッドユニット11のヘッド101から回復動作で強制的に排出されるインクを受ける排出キャップ51や図示しないがノズル面をワイピングするワイパブレード、排出キャップ51に接続された吸引手段としての排出ポンプ52などを備えている。この維持回復ユニット5の上方には、維持回復ユニット5を覆う搬送ガイド部材9が配置され、この搬送ガイド部材9は矢示C方向に回転して維持回復ユニット5を開放する図2の破線図示の位置と搬送ユニット3からの用紙をガイドする実線図示の位置とを取り得るようにされている。
【0029】
そして、維持回復動作を行うときには、図4に示すように、搬送ユニット3が矢示B1方向に解除位置まで回動されるとともに、搬送ガイド部材9が矢示C1方向に回動されて維持回復ユニット5の上方が開放され、ヘッド移動手段7の駆動モータ75が駆動されることでベース部材12に伴われて画像形成ユニット1が矢示A1方向に移動され、維持回復ユニット5上で停止する。
【0030】
排紙部6は、エンドフェンス61及び図示しないサイドフェンスを備えている。
【0031】
次に、この画像形成装置における回復手段を含むインク供給系について図5の模式的説明図を参照して説明する。なお、図5では1つのヘッド列分のインク供給系を示している。
サブタンク21は、可撓性を有する液体収容部材であるインクパック101と、インクパック101を密閉して収納したタンクケース(加圧ケース)102とを有している。そして、メインタンク20から供給チューブ26を介してサブタンク21のインクパック101にインクが供給される。メインタンク20からサブタンク21へのインクの供給及び供給停止はインク供給弁103を開閉制御することによって行なわれる。
【0032】
一方、サブタンク21内を加圧する加圧回復装置27は、加圧ポンプ111と、加圧気体を貯留する加圧チャンバ112とを有し、加圧ポンプ111によって加圧された加圧チャンバ112内の加圧気体を、気体供給径路113を通じてサブタンク21の加圧ケース102内(加圧ケース102とインクパック101との間の空間)に供給する。この加圧チャンバ112からサブタンク21に対する加圧気体の供給及び停止は、気体供給径路113に設けた開閉手段である電磁弁からなる供給径路開閉弁(加圧弁)114を開閉制御することによって行なわれる。
【0033】
また、加圧チャンバ112と加圧ポンプ111との間には圧力センサ114が設けられ、加圧チャンバ112には内部を大気に開放する大気開放弁115が設けられている。
【0034】
そして、記録ヘッドユニット11の各ヘッドの101の回復動作を行うときには、加圧回復装置27によってサブタンク21を加圧してヘッド101にインクを加圧供給することで、ヘッド101のノズルからインクを強制的に排出させる。
【0035】
次に、維持回復ユニット5におけるインク排出系について図6を参照して説明する。なお、図6は2列分のヘッド列に対応するインク排出系を説明する斜視説明図である。
ここでは、前述したように、各ヘッド101に対応して、各ヘッド101(ヘッド101a〜101dとする。)のノズルから回復動作で排出されるインクを受ける排出キャップ51(51a〜51d)と、複数の排出キャップ51a〜51dに共通の1つの吸引手段であるチューブポンプからなる排出ポンプ52とを備えている。
【0036】
そして、複数の排出キャップ51a〜51dにそれぞれ連通する可撓性チューブなどからなる変形可能な個別吸引経路53a〜53dと、複数の個別吸引経路53a〜53dを相互に連通して排出ポンプ52に通じる共通吸引経路54とが設けられている。
【0037】
さらに、複数の個別吸引経路53a〜53dの流路断面積を、連通状態を維持したままそれぞれ可変させる流体抵抗可変手段として流路抵抗変更カム55a〜55dを設けている。各流路抵抗変更カム55a〜55dは共通の回転軸56に取付けられている。この回転軸56は、流路抵抗変更カム駆動モータ57によってモータプーリ58、タイミングベルト59及び回転軸56のプーリ60を介して回転される。
【0038】
次に、流路抵抗変更カム位置と各個別排出経路の流体抵抗の関係について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は図6を流路抵抗変更カム55aの方向から見た側面説明図、図8は各流路抵抗変更カムの位置と各個別排出経路の流路形状を説明する説明図である。
【0039】
まず、図7(a)は、流路抵抗変更カム55a〜55dの流路抵抗変更カム面(周面)がいずれも個別排出経路53a〜53dを押しつぶしていない状態であり、このとき個別排出経路53a〜53dはいずれも開放状態にある。
図7(b)は、図7(a)の位置から流路抵抗変更カム55aが図で時計周りに72度回転され、流路抵抗変更カム55aは個別排出経路53aを押し潰していないが、他の流路抵抗変更カム53b〜53dは個別排出経路53b〜53dをそれぞれ流路153を維持した状態で押し潰して流体抵抗を増加させている状態である。このとき、個別排出経路53aからのインクが流れ易くなる。
図7(c)は、図7(b)の位置から流路抵抗変更カム55aが図で時計周りに72度回転され、流路抵抗変更カム55aは個別排出経路53aを押し潰して個別排出経路53aの流体抵抗を増大させ、他の流路抵抗変更カム53b〜53dは個別排出経路53b〜53dをそれぞれ押し潰していない状態である。このとき、個別排出経路53aからのインクが流れ難くなる。
【0040】
ここで、各流路抵抗変更カム55a〜55dの位置と対応する個別排出経路53a〜53dの形状(流体抵抗)は、図8に示すように、全ての個別排出経路53a〜53dが開放状態にある全経路開放と、排出キャップ51a、51b、51c、51dに対応する個別排出経路53a〜53dをそれぞれ個別に開放状態とし、他の個別排出経路の流体抵抗を増大させる状態とをとる流路抵抗変更カム停止位置が設定されている。即ち、このような状態を設定できる流路抵抗変更カム形状としている。
【0041】
この場合、排出キャップ51の個数が偶数個であれば、流路抵抗変更カム形状としては、(キャップ数/2)の数の種類で足りる。例えば、図8に示す例では、キャップ数が4個であるので、流路抵抗変更カム形状は2種類でよく、流路抵抗変更カム51a、51dは同じ形状であり、流路抵抗変更カム51b、51cは同じ形状であって、流路抵抗変更カム51a、51dとは異なる形状である。また、排出キャップ51の個数が奇数個であれば、流路抵抗変更カム形状としては、(キャップ数/2+1)の数の種類で足りる。例えば、キャップ数が5個であれば、3種類の流路抵抗変更カム形状となる。
【0042】
上述したように、流路抵抗変更カム55によって個別排出経路53を押し潰すとき、個別排出経路53は完全に閉じられるのではなく、流路153(図7(c)参照)が確保されて、排出キャップ51と排出ポンプ52との間の連通状態を確保している。
【0043】
これにより、複数の排出キャップ51に共通の排出ポンプ52で吸引を行うとき、図9に示すように、排出キャップ51a〜51dに回復動作でインク400が排出され、排出キャップ53a〜53cはインク400で満たされているが、排出キャップ53dはインク400で満たされていない状態になった場合でも、排出キャップ53a以外の排出キャップ53b〜53dの個別排出経路53b〜53dを完全には閉塞しないで流路153を確保した状態で絞る(流体抵抗を増大する)ことによって、排出キャップ51aのインク400を排出することができる。
【0044】
つまり、図10に示すように、複数の排出キャップ51に共通の排出ポンプ52で吸引を行うとき、1つの排出キャップ53dはインク400で満たされていない状態である場合、排出キャップ53dの経路が他の排出キャップ53a〜53cの経路に比べて流体抵抗が相対的に低くなる(個別排出経路53dの入口側がインク400で塞がれていないため)。その結果、1つn排出ポンプ52により吸引圧力は排出キャップ51dにかかり、排出キャップ51dからしか排出が行われない。
【0045】
この場合、排出キャップ53a〜53dから選択的に排出を行うために個別排出経路53a〜53dを選択的に開閉する手段を設けると、個別排出経路53内に残留するインクの増粘などによって個別排出経路が元の状態に復元しなくなるという不具合が生じる。
【0046】
そこで、本実施形態のように、吸引を行う排出キャップ51の個別排出経路53以外の個別排出経路については、連通状態を維持したまま(前記流路153を確保したまま)流体抵抗を増大させることによって、選択的な排出が可能になるとともに、個別排出経路が詰まるなどの不具合を回避することができる。
【0047】
ここで、個別排出経路におけるインクと空気の流体抵抗について図11を参照して説明する。
まず、個別排出経路53を円筒状チューブを形成したとき、図11(a)に示すように管内を流れるインク(流体)の流体抵抗は、流路直径をd、流路長さをl、インク粘度をμとするとき、次の(1)式で表される。なお、インク密度ρ、インク音速cとする。
【0048】
【数1】

【0049】
また、チューブを流路抵抗変更カムで潰したとき流体抵抗は、断面形状が矩形状になるものとして定義すると、流路幅をw、流路高さをh、流路長さをlとしたとき、次の(2)式で表される。
【0050】
【数2】

【0051】
これらの(1)式、(2)式より、例えば内径4mmのチューブ内を流れるインク(粘度は水同じとする)の流体抵抗とチューブを潰したときに空気が流れる時の流体抵抗が同じになるチューブの流路高さは、0.61mmとなる。
したがって、流路抵抗を切替えるときの押し潰したチューブの隙間は、内径4mmのチューブを使用した場合、0.61mm以下にする必要がある。
【0052】
このように、複数のヘッドからそれぞれ排出される液体を受ける複数の排出キャップと、複数の排出キャップに共通の1つの吸引手段と、複数の排出キャップにそれぞれ連通する複数の変形可能な個別吸引経路と、記複数の個別吸引経路を相互に連通して前記吸引手段に通じる共通吸引経路と、前記複数の個別吸引経路の流路断面積を、連通状態を維持したままそれぞれ可変させる流体抵抗可変手段と、を有している構成とすることで、排出経路の詰まりを抑えつつ、簡単な構成で複数の排出キャップから選択的に排出を行なうことができる。
【0053】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図12に示すブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この装置全体の制御を司る本発明に係る回復制御及び排出制御を行う手段を兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0054】
また、記録ヘッドユニット11の各ヘッド201を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含むヘッド駆動制御部508と、記録ヘッドユニット11の各ヘッド201を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、画像形成ユニット5を移動させる画像形成ユニット移動モータ75を駆動するための画像形成ユニット移動モータ駆動部511と、搬送ベルト移動モータ512を駆動するための搬送ベルト移動モータ駆動部513と、吸引ファン44に対する吸引モータ514を駆動する吸引モータ駆動部515と、加圧回復装置27を駆動する加圧回復駆動部516と、維持回復ユニット5の排出ポンプ52及びカム駆動モータ57を駆動する維持回復駆動部517と、各種センサ群520からの情報を入力するI/O518を有している。
【0055】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル521が接続されている。
【0056】
ここで、制御部500は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称す)等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F506で受信する。
【0057】
そして、CPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にてデータの並び替え処理等(場合によっては、画像処理の一部の処理)を行ってヘッド駆動制御部508に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、該印刷ラスタデータをこの装置に転送するようにしている。
【0058】
ヘッド駆動制御部508は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ509にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ509に送出する。
【0059】
このヘッド駆動制御部508は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM502で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0060】
また、ヘッドドライバ509は、ヘッド駆動制御部508からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部508からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッドユニット11の各ヘッド201のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンを形成する。
【0061】
次に、この制御部による排出キャップからのインク排出制御を含む回復動作について図13のフロー図を参照して説明する。
まず、加圧回復装置27を駆動制御して記録ヘッドユニット11の各ヘッド201から排出キャップ51内へのインク排出動作を開始する。
【0062】
そして、カム駆動モータ57を駆動して、前述した図8の状態2になる位置まで流路抵抗変更カム52を回転させる。その後、排出ポンプ52の駆動を開始し、予め定めた所定の吸引時間のカウントを開始し、排出キャップ51aのインクを所定時間吸引排出する。
【0063】
次いで、排出ポンプ52による排出キャップ51aからの吸引排出を所定時間行った(カウント終了)後、カム駆動モータ57を駆動して、前述した図8の状態3になる位置まで流路抵抗変更カム52を回転させる。その後、予め定めた所定の吸引時間のカウントを開始し、排出キャップ52bのインクを所定時間吸引排出する。
【0064】
次いで、排出ポンプ52による排出キャップ51bからの吸引排出を所定時間行った(カウント終了)後、カム駆動モータ57を駆動して、前述した図8の状態4になる位置まで流路抵抗変更カム52を回転させる。その後、予め定めた所定の吸引時間のカウントを開始し、排出キャップ52cのインクを所定時間吸引排出する。
【0065】
次いで、排出ポンプ52による排出キャップ51cからの吸引排出を所定時間行った(カウント終了)後、カム駆動モータ57を駆動して、前述した図8の状態5になる位置まで流路抵抗変更カム52を回転させる。その後、予め定めた所定の吸引時間のカウントを開始し、排出キャップ52dのインクを所定時間吸引排出する。
【0066】
そして、排出ポンプ52による排出キャップ51cからの吸引排出を所定時間行った(カウント終了)後、排出ポンプ52の駆動を停止し、カム駆動モータ57を駆動して前述した図8の状態1になる位置まで流路抵抗変更カム52を回転させた後、加圧回復装置27による加圧を停止して記録ヘッドユニット11の各ヘッド201から排出キャップ51内へのインク排出動作を終了する。
【0067】
なお、上記実施形態ではライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ヘッドユニット
2 インク供給部
3 搬送ユニット
4 給紙部
5 維持回復ユニット
6 排紙部
7 ヘッド移動手段
8 排紙ユニット解除機構
9 搬送ガイド部材
11 記録ヘッドユニット
12 ベース部材
21 サブタンク
27 加圧回復装置
31 搬送ベルト
51、51a〜51d 排出キャップ
52 排出ポンプ
53a〜53d 個別排出経路
54 共通排出経路
55a〜55d 流路抵抗変更カム
57 カム駆動モータ
153 流体抵抗増大後の流路
201 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドと、
前記ヘッドのノズルから液体を排出させて前記ヘッドの吐出状態を回復する回復手段と、
前記複数のヘッドからそれぞれ排出される液体を受ける複数の排出キャップと、
前記複数の排出キャップに共通の1つの吸引手段と、
前記複数の排出キャップにそれぞれ連通する複数の変形可能な個別吸引経路と、
前記複数の個別吸引経路を相互に連通して前記吸引手段に通じる共通吸引経路と、
前記複数の個別吸引経路の流路断面積を、連通状態を維持したままそれぞれ可変させる流体抵抗可変手段と、を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記流体抵抗可変手段は前記個別吸引経路に当接可能なカムであり、各個別吸引経路のカムは共通の回転軸に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数のヘッドが千鳥状に配列されてライン型ヘッドを構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−194626(P2011−194626A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61812(P2010−61812)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】