説明

画像形成装置

【課題】どのようなユーザでも、原稿シート束の揃え作業が容易に行える画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、画像形成部が内部に組み込まれると共に、ユーザが通常操作時に対峙する前面10Fを有する本体筐体11と、本体筐体11の上面10Tに載置され、原稿シートを原稿読取部へ自動搬送するADF20とを含む。上面10Tには、前記画像形成部で形成される画像の原稿画像を読み取る原稿読取部が配置されている。本体筐体11の前面10Fと上面10Tとの交差部には、上面10Tよりも高さ位置が低い段差面15が形成され、この段差面15の上方には、透明なテーブル40が配置されている。テーブル40の表面の高さ位置は、前記原稿読取面と略同じ高さである。ユーザは、テーブル40を利用して、原稿シート束の揃え作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、ファクシミリ装置若しくはこれらの複合機に関し、特に自動原稿搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像形成処理を施す画像形成部が収容された装置本体の筐体の上に、複数枚の原稿シートを所定の原稿読取位置へ給送する自動原稿搬送装置が載置された画像形成装置が汎用されている。複数枚の原稿シートを、自動原稿搬送装置を用いて自動的に読み取らせる場合、ユーザは、原稿シートの束を揃えるために何処か原稿揃えに適した揃え面を捜し、該揃え面で原稿シート束を整えた上で、自動原稿搬送装置の給紙トレイにセットすることが多い。
【0003】
上記の揃え面を備えた作業台が画像形成装置の近くに配置されていれば良いが、そうでない場合は、ユーザは原稿シート束の揃え作業をスムースに行うことが困難になる。画像形成装置の一部の適宜な面を揃え面として利用することも可能であるが、自動原稿搬送装置が備えられた画像形成装置の上方部分には、揃え面として好適に利用できる面が少ないのが実情である。昨今の装置の小型化の趨勢から、一層、揃え面として利用可能な箇所は減っていると言える。
【0004】
この問題に対応するため、特許文献1の画像形成装置では、自動原稿搬送装置の筐体の上面に、原稿シートを揃えるための揃え面となる平面部を形成している。この装置では、自動原稿搬送装置の給紙トレイの、前記平面部の上方に対応する部分に切り欠き部を設け、前記平面部の上方に作業空間を確保し、ユーザが原稿シート束の揃え作業が行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4347272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置のように自動原稿搬送装置の筐体の上面を揃え面とすると、例えば車椅子に搭乗したユーザのように、操作や作業に適した高さ位置が低いユーザには不便である。すなわち、自動原稿搬送装置は、原稿シートの給紙トレイ及び排紙トレイが上下方向に並び、また原稿シートの搬送機構が内蔵されていることから、相応の高さ寸法を有している。さらに、ユーザが対峙する装置本体の前面から見れば、自動原稿搬送装置はその前面から奥の位置に配置されている。このため、自動原稿搬送装置の筐体の一部を原稿シート揃え面として利用する方式では、作業に適した高さ位置が低いユーザについては原稿シート束の揃え作業が行い難く、ユニバーサルデザインの観点から望ましくない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたものであって、どのようなユーザでも、原稿シート束の揃え作業が容易に行える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成される画像の原稿画像を読み取る原稿読取部と、前記画像形成部が内部に組み込まれると共に、ユーザが通常操作時に対峙する前面と、前記原稿読取部が配置される上面とを有する本体筐体と、前記本体筐体の上面の上に載置され、前記原稿画像を備えた原稿シートを、前記原稿読取部へ自動搬送する自動原稿搬送装置と、前記本体筐体の前面と上面との交差部又はその近傍に配置される光透過性のテーブルと、を備える(請求項1)。
【0009】
この構成によれば、テーブルが、本体筐体の前面と上面との交差部又はその近傍、つまり、自動原稿搬送装置の上面位置よりも低い位置であって、本体筐体の前面の側に備えられる。従って、ユーザは、このテーブルを利用して、自動原稿搬送装置に読み取らせる原稿シート束の揃え作業を行うことができ、とりわけ、作業に適した高さ位置が低いユーザにとって便利である。また、テーブルを光透過性のものとすることで、該テーブルがユーザの視界を遮ることを抑止できると共に、装置の高さが低いとユーザに感じさせる視覚的効果も提供することができる。
【0010】
上記構成において、前記原稿読取部は、その上を前記自動原稿搬送装置により自動搬送される原稿シートが通過するコンタクトガラスを備え、前記本体筐体の上面は、前記コンタクトガラスが嵌め込まれてなる原稿読取面を含み、前記本体筐体の前面と上面との交差部には、前記原稿読取面よりも高さ位置が低い段差面が形成され、前記テーブルは、前記段差面の上方に配置され、その表面の高さ位置が、前記原稿読取面と同じ高さ若しくは前記原稿読取面よりも低い高さとされていることが望ましい(請求項2)。
【0011】
この構成によれば、テーブルと、このテーブルの下方の段差面という、二段階の面が形成される。このため、テーブルの表面を原稿シート束の揃え作業用に、段差面を物品や機器の配置スペースに活用することができ、ユーザにとって利便性に優れた構成とすることができる。
【0012】
この場合、前記段差面は、前記本体筐体の前面の左右方向の全幅に亘って形成されていることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、段差面が本体筐体の前面の左右方向の全幅に存在し、これによりテーブルも全幅に亘ったものとすることができるので、ユーザにとって、より利用し易いテーブル及び段差面とすることができる。
【0013】
ここで、前記段差面は平面であり、前記テーブルが透明な平板からなり、前記テーブルは、前記段差面から立設された支柱で支持されていることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、テーブルを簡単な支持構造で支持させることができる。
【0014】
この場合、前記テーブルの前端縁が、前記本体筐体の前面と略面一とされていることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、テーブルの前端縁が本体筐体の前面から突出しないので、画像形成装置の空間占有性を抑制できる一方で、本体筐体の前面から突出しない範囲で、テーブルの面積を最大化することができる。
【0015】
上記構成において、前記テーブルの前端縁に湾曲部が備えられていても良い(請求項6)。この構成によれば、例えばユーザが画像形成装置と対峙するのに望ましい位置を、前端縁の湾曲部によって誘導することが可能となる。
【0016】
また、前記テーブルの表面に曲面が備えられていても良い(請求項7)。この構成によれば、凸又は凹の曲面を、物品の係止や収納用に活用することができ、テーブルの利用性を向上させることができる。
【0017】
さらに、前記段差面に、収容凹部が設けられていても良い(請求項8)。この構成によれば、収容凹部に、様々な物品(クリップやステイプル等)を収納させることが可能となり、段差面の利用性を向上させることができる。
【0018】
上記構成において、ユーザ認証を行うリーダ装置をさらに備え、前記リーダ装置は、前記段差面に取り付けられている構成とすることができる(請求項9)。この構成によれば、テーブルと段差面との間の空間を、セキュリティエリアとしても利用でき、段差面の利用性を向上させることができる。
【0019】
上記構成において、前記テーブルはガラス板からなり、該テーブルの裏面には透過フィルムが貼着されていることが望ましい(請求項10)。この構成によれば、テーブル安価で透明性が良好なものとするができる一方で、仮にテーブルが破損したとしても、透過フィルムによって破片の飛散を防止することができる。
【0020】
上記構成において、前記テーブルの周縁部を覆うフレーム保護部材をさらに備えることが望ましい(請求項11)。この構成によれば、テーブルの周縁部が機械的に補強され、該周縁部の保護を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業に適した高さ位置が低いユーザについても、原稿シート束の揃え作業が容易に行える画像形成装置、すなわち、ユニバーサルデザインの観点において優れた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】画像形成装置の内部構造を概略的に示す正面断面図である。
【図3】画像形成装置の右側面図である。
【図4】画像形成装置の上面図である。
【図5】第1実施形態の変形例を示す、テーブル部分の斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線部分断面図である。
【図7】第2実施形態に係る画像形成装置の上面図である。
【図8】第3実施形態に係る画像形成装置の上面図である。
【図9】第4実施形態に係る画像形成装置の右側面図である。
【図10】第5実施形態に係る画像形成装置の正面図である。
【図11】第6実施形態に係る画像形成装置の上面図である。
【図12】第7実施形態に係る画像形成装置の正面図である。
【図13】テーブルの変形例を示す図である。
【図14】テーブルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の外観を示す斜視図である。画像形成装置1は、画像形成処理のための各種機器を備える装置本体10と、該装置本体10の上面10Tの上に載置された自動原稿搬送装置(ADF)20と、画像形成処理に関する操作指示の入力をユーザから受け付ける操作パネル30と、装置本体10の上部前方に配置された光透過性のテーブル40とを含む。
【0024】
装置本体10は、直方体状の筐体構造を備える本体筐体11を含む。本体筐体11の内部には、シートに画像を形成する画像形成ユニット51(画像形成部)や、この画像形成部51で形成される画像の原稿画像を読み取る原稿読取ユニット54(原稿読取部)等が収容されている(図2に基づき後述する)。装置本体10(本体筐体11)は、ユーザが通常操作時に対峙する前面10Fと、原稿読取ユニット54が配置される上面10Tとを有している。
【0025】
本体筐体11の前面10Fの下方位置には、給紙カセット12が引き出し可能に装着されている。給紙カセット12の内部には、画像形成処理が施されるシートが貯留されている。給紙カセット12の上方には、前面カバー13が備えられている。前面カバー13は開閉可能とされており、メンテナンス時やシートジャム発生時に開放され、画像形成部51を露出させる。本体筐体11の左側面には、排紙トレイ14が取り付けられている。この排紙トレイ14には、画像形成処理後のシートが排出される。
【0026】
本体筐体11の前面10Fと上面10Tとの交差部には、上面10T(原稿読取面)よりも高さ位置が低い段差面15が形成されている。段差面15は、本体筐体11の前面10Fの左右方向の全幅に亘って形成されている。テーブル40は、この段差面15の上方に配置され、その表面の高さ位置が、上面10Tと略同じ高さとされている。この構成については、図3、図4に基づき後記で詳述する。
【0027】
ADF20は、原稿画像を備えた原稿シートを、所定の原稿読取位置(図2に示す第2コンタクトガラス542の配置位置)へ自動搬送する。装置本体10では、前記原稿シートの原稿画像に対応した画像がシートに形成される。ADF20は、原稿シートが載置される原稿トレイ21と、読取後の原稿シートが排出される原稿排出トレイ22と、原稿シートを原稿トレイ21から原稿読取位置を経由して原稿排出トレイ22まで搬送する自動搬送機構23とを備えている。ADF20は、その後部において装置本体10に対して回動可能に連結されており、ユーザは、ADF20の前部を持ち上げることで、上面10Tを開放可能である。
【0028】
操作パネル30は、ユーザから画像形成処理に関連する各種の操作指示を受け付けるユニットであり、タッチパネル31と操作キー32とを含む。タッチパネル31は、液晶表示器(LCD)等からなり、各種複写動作の設定等を入力するための操作ガイド情報等を表示すると共に、種々の操作ボタン等を表示する。操作キー32は、ユーザが印刷実行指示を入力するスタートキーや、印刷部数等の入力を受け付けるテンキー等を含む。この操作パネル30は、装置本体10の右側面上部から延出されたアーム33で支持されている。アーム33は回動機構を含み、これによりユーザは、操作パネル30を上下方向に移動させることが可能である。
【0029】
続いて、画像形成装置1の内部構造の概略を、図2に基づいて説明する。画像形成装置1の装置本体10には、画像形成ユニット51、定着ユニット52、シート反転搬送ユニット53及び画像読取ユニット54が収容されている。
【0030】
画像読取ユニット54は、左右方向から見て幅広の第1コンタクトガラス541と、幅狭の第2コンタクトガラス542(コンタクトガラス)と、光走査機構543とを含む。第1コンタクトガラス541には、ユーザが原稿シートを手置きで読み取らせる際に当該原稿が載置される。第2コンタクトガラス542は、ADF20により自動搬送される原稿シートが、その上を通過するコンタクトガラスである。これらコンタクトガラス541、542は、本体筐体11の上面10Tに設けられた取り付け枠(図示せず)に嵌め込まれており、上面10Tにコンタクトガラス541、542が表出している。従って、上面10Tの一部は、これらコンタクトガラス541、542が備えられた原稿読取面540となっている。
【0031】
光走査機構543は、ADF20によって第2コンタクトガラス542に自動的に給送された原稿シートと、ユーザによって第1コンタクトガラス541上に載置された原稿シートとを光走査して、原稿のアナログ画像情報を得るものである。アナログの画像データは、デジタルの画像データに変換された後、画像形成ユニット51での画像形成処理のために、後述の露光装置513に出力される。
【0032】
画像形成ユニット51は、電子写真プロセスによってシートに所定のトナー像を転写するものであ。画像形成ユニット51は、感光体ドラム511と、感光体ドラム511の周囲にその回転方向に沿って配設された、帯電器512、現像装置514、転写部515、クリーナー516および除電器517と、帯電器512および除電器517の上方に配設された露光装置513とを含む。
【0033】
感光体ドラム511は、そのドラム軸回りに回転し、その周面に静電潜像、及びこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものである。感光体ドラム511としては、周面にアモルファスシリコン層が積層されたアモルファスシリコン感光体ドラムが好適である。
【0034】
帯電器512は、回転する感光体ドラム511の周面に一様な電荷を形成する。帯電器512としては、コロナ放電によって感光体ドラム511の周面に電荷を付与する方式のものを用いることができる。この他、その周面が感光体ドラム511の周面と当接しながら従動回転しつつ、感光体ドラム511に電荷を付与する帯電ローラを採用してもよい。
【0035】
露光装置513は、前記画像データに基づき強弱が付与されたレーザ光を、回転している感光体ドラム511の周面に照射する。感光体ドラム511周面のレーザ光が照射された部分は、電荷が消去され、これによって当該感光体ドラム511の周面にレーザ光照射パターンに応じた静電潜像が形成される。
【0036】
現像装置514は、感光体ドラム511の周面に、内蔵する現像ローラを介してトナーを供給する。感光体ドラム511にトナーが供給されると、前記静電潜像が形成された部分にトナーが付着し、これによって感光体ドラム511の周面にトナー像が形成される。現像装置514には図略のトナー容器が着脱可能に装着されており、現像装置514内のトナーが費消されると、このトナー容器からトナーが補給される。
【0037】
転写部515は、感光体ドラム511とニップ部を形成する転写ローラを含み、そのニップ部に送り込まれたシートに対し、当該感光体ドラム511の周面に形成されているトナー像を転写させる。感光体ドラム511周面のトナー像は、プラスに帯電している。一方、転写部515は、トナー像の電荷と逆極性であるマイナスの電荷をシートに付与する。プラスに帯電した感光体ドラム511周面のトナー像は、マイナスに帯電されたシートの表面に向けて引き剥がされ、シートに転写される。
【0038】
クリーナー516は、転写処理後の感光体ドラム511の周面に残留しているトナーを取り除いて清浄化する。このクリーナー516によって清浄化された感光体ドラム511の周面は、次の画像形成処理のために再び帯電器512へ向かうことになる。また、除電器517は、感光体ドラム511のドラム表面の残留電荷を除去する。
【0039】
定着ユニット52は、画像形成ユニット51によってトナー像の転写処理が施されたシートに、加熱による定着処理を施す。定着ユニット52は、内部に通電発熱体が装着されたヒートローラ521と、このヒートローラ521と周面同士が対向配置された加圧ローラ522とを備えている。転写処理後のシートは、ヒートローラ521と加圧ローラ522との間のニップ部を通過することによって、ヒートローラ521からの熱を得て定着処理が施される。定着処理が施されたシートは、排紙トレイ14へ排出される。
【0040】
給紙カセット12の内部には、画像形成処理が施されるシートPが貯留されている。給紙カセット12と画像形成ユニット51との間には、シートPを搬送するシート搬送路60が設けられている。シート搬送路60には、給紙カセット12から繰り出されるシートPに搬送力を与える複数の搬送ローラ対と、所定の画像形成タイミングでシートを感光体ドラム511に向けて送り出すレジストローラ対61とが備えられている。
【0041】
次に、図3及び図4に基づいて、段差面15及びテーブル40について詳述する。テーブル40は、上面視で左右に細長い形状の、透明なガラス平板である。段差面15は、本体筐体11の前面10Fと上面10Tとが交差する部分に形成され、上面10T(原稿読取面540)よりも高さ位置が10cm程度低い位置に形成された平面である。段差面15の左右方向の幅は、本体筐体11の前面10Fの左右方向の全幅に略等しく、テーブル40と同じく上面視で左右に細長い形状を有している。
【0042】
この段差面15の形成のため、本体筐体11の前面上部には、略垂直な壁部151が形成されている。上面10Tの前縁位置は、この壁部151の上縁位置である。図3に示されるように、ADF20の前面20Fの位置は、壁部151の位置に略等しくされ、これにより段差面15が形成されることに伴う画像形成装置1の前後幅の増大が、可及的に抑止されている。
【0043】
壁部151の上端には、テーブル40の後端縁40Rを支持する支持部152が形成されている。また、段差面15の左右端部付近には、テーブル40を支持する円柱状の支柱41が左右一対で立設されている(図1参照)。テーブル40の前後方向の幅は、概ね10cm〜15cm程度とすることができ、段差面15の前後方向の幅も同様に概ね10cm〜15cm程度に設定することができる。
【0044】
テーブル40は、その裏面において支持部152及び一対の支柱41で支持され、その表面の高さ位置が、上面10T(原稿読取面540)と略同じ高さとされている。勿論、上面10Tよりも若干低い高さとしても良い。また、テーブル40は、段差面15の上方に配置され、本実施形態では、テーブル40の前端縁40Fが、本体筐体11の前面10F(前面カバー13)と略面一(前面10Fの方が若干前方に突出している)とされている。
【0045】
このように構成することで、ADF20の上面20Tよりも低い位置であって、本体筐体11の前面10Fの上部に、作業用のテーブル40が配置されることになる。ユーザは、このテーブル40を利用して、例えばADF20に読み取らせる原稿シート束の揃え作業を行うことができる。とりわけ、テーブル40の表面は、ADF20の上面20Tや原稿排出トレイ22よりも低い位置に存在するので、作業に適した高さ位置が低いユーザにとって便利である。また、テーブル40の前端縁40Fが本体筐体11の前面10Fから突出しないので、画像形成装置1の空間占有性を抑制できる一方で、本体筐体11の前面10Fから突出しない範囲で、テーブル40の面積を最大化することができる。このため、原稿シート束の揃え作業等を行わせるのに十分なスペースを確保することができる。
【0046】
テーブル40と段差面15との間には、一対の支柱41に部分を除き、空間15Sが形成されている。ユーザは、この空間15Sを、各種物品や機器の配置空間として活用することができる。例えば、原稿シートを綴じるためのステイプラや、綴じ針を除去するためのリムーバ等を保管するスペースとして空間15Sを活用すれば、ユーザにとって便利である。特に本実施形態では、段差面15は、本体筐体11の前面10Fの左右方向の全幅に亘って形成されているので、比較的長尺の物品(長尺の定規等)も載置することが可能である。
【0047】
ここで、テーブル40は透明(光透過性)であることから、該テーブル40がユーザの視界を遮ることはない。従って、前面10Fに対峙して立ったユーザは、段差面15上に載置された上記のステイプラやリムーバ等を、容易に視認することができる。さらには、テーブル40をシースルーして、上面10Tよりも一段低くなった段差面15が視認されるようになるので、画像形成装置1の装置高さが低いとユーザに感じさせる視覚的効果も提供することができる。
【0048】
なお、テーブル40は必ずしも無色透明でなくとも良く、着色されていたり、透明度を若干低下させる加工が施されたりしても良い。また、テーブル40の前面を透明としなくとも良く、例えば不透明な枠体に透明なガラスを嵌め込んだ態様のテーブルとしても良い。また、テーブル40の前端縁40Fの角部にC面加工を施したり、前端縁40Fに曲面加工を施したりすることが望ましい。
【0049】
さらに、テーブル40の周縁は、ガラスエッジ面が表出しないように、樹脂、ゴム、金属等からなるフレーム保護部材で覆うことが望ましい。図5は、テーブル40の周縁部を取り囲むように、フレーム保護部材46が取り付けられた実施形態を示す斜視図、図6は、図5のVI−VI線部分断面図である。
【0050】
フレーム保護部材46は、テーブル40の前端縁40F及び後端縁40Rなどに沿う帯状部461と、この帯状部461の上端から折り曲げられテーブル40の上面に沿う上折曲部462と、帯状部461の下端から折り曲げられテーブル40の下面に沿う下折曲部463とを備える。すなわち、フレーム保護部材46は、断面視でコ字型を有し、前端縁40F及び後端縁40Rに嵌め込まれる形で、ガラステーブル40に取り付けられている。上折曲部462及び下折曲部463が形成される角部46R1、46R2は曲面に加工されている。必要に応じて、フレーム保護部材46は、接着剤を用いてテーブル40の周縁に固着される。
【0051】
このような実施形態によれば、テーブル40の周縁がフレーム保護部材46で保護され、当該周縁の破損を抑止できる一方で、テーブル40の角部の鋭利な部分が覆われることになるので、安全性も確保することができる。また、テーブル40として透明度が高い材料を選択した場合、フレーム保護部材46の取り付けによりテーブル40周縁の視認性を向上させ、ユーザにテーブル40の存在を明認させることができる。
【0052】
さらに、上折曲部362のテーブル40の上に存在していることから、上折曲部462のエッジによってテーブル40の上面に段差Dが形成される。これにより、断面円形の筆記具のような転動物をテーブル40に載置しても、段差Dにより前記転動物の落下を抑止できる。また、段差Dを利用して、ユーザは原稿揃えなどの作業を行うことも可能である。加えて、フレーム保護部材46を導電性金属材料で形成し、該フレーム保護部材46を画像形成装置1のアース回路に接続すれば、テーブル40において発生する静電気を除去することができる。
【0053】
支柱41の配置位置、本数、太さ、材質等には特に制限はなく、テーブル40を支える強度が確保できる範囲において、自在に設定することができる。例えば、テーブル40の周縁を覆うフレーム保護部材の色と支柱41の外表面の色とを統一することは、好ましいカラーデザインの一つである。また、支柱41も透明な部材で構成すれば、テーブル40が浮遊しているような視覚的効果をユーザに提供することができる。
【0054】
以上説明した、第1実施形態に係る画像形成装置1によれば、本体筐体11の前面10Fと上面10Tとが交差する部分にテーブル40を設けたので、例えば車椅子に搭乗したユーザのように、作業に適した高さ位置が低いユーザにおいても、例えば原稿シート束の揃え作業が容易に行える。また、テーブル40の下方には段差面15が存在するので、各種物品の保管用のスペースも確保できるという利点がある。
【0055】
以上が、本発明の基本的な実施形態であるが、以下、テーブル40及び段差面15についての幾つかの変形実施形態を示す。図5は、第2実施形態に係る画像形成装置1Aの上面図である。図5において、図1〜図4で説明した第1実施形態と同一部分には同一符号を付しており、これらの部分については説明を省略する(以下、同じ)。
【0056】
画像形成装置1Aのテーブル40Aは、その前端縁の側に、凹湾曲部401と、凸湾曲部402とを備え、これら湾曲部401、402が連接してテーブル40Aの前端縁40AFが構成されている。凹湾曲部401の部分では、上面視で段差面15の一部が露呈している一方、凸湾曲部402の領域では、段差面15の上部はテーブル40Aで完全に覆われている。
【0057】
このような湾曲部401、402が備えられたテーブル40Aによれば、凸湾曲部402の前後方向の幅が幅広になるので、原稿シートを揃える作業台としてだけでなく、原稿シートの置き場としてもテーブル40Aを活用させることが可能となる。一方で、凹湾曲部401の領域では、前端縁40AFは本体筐体11の前面10Fよりも後方へ退行しているので、ユーザYの画像形成装置1Aに対するアプローチ性は阻害されない。むしろ、凹湾曲部401によって、ユーザYが画像形成装置1Aと対峙する位置が誘導されるようになり、ユーザYは自然に画像形成装置1Aへアプローチできるようになる。
【0058】
図6は、第3実施形態に係る画像形成装置1Bの上面図である。画像形成装置1Bのテーブル40Bは、装置本体10の左右の幅方向の略全長に跨る凹湾曲部403が形成された前端縁40BFを備えている。ここでは、テーブル40Bの左右の幅方向の中央部付近において、上面視で段差面15の前後方向の中央部付近までが露呈する程度に、前端部40BFを退行させている例を示している。このようなテーブル40Bによっても、凹湾曲部403の曲面形状に基づいて、ユーザYが画像形成装置1Bと対峙する位置を誘導することができる。
【0059】
図7は、第4実施形態に係る画像形成装置1Cの右側面図である。画像形成装置1Cのテーブル40Cには、その表面に、前後方向に延びる浅い凹曲面404が備えられている。図示は省略しているが、凹曲面404は、テーブル40Cの左右方向の全幅に亘って形成されている。この凹曲面404に連接して、前方側に平面部405が形成されている。このようなテーブル40Cであれば、ユーザは、平面部405で原稿シートの束の揃え作業を行えるだけでなく、凹曲面404に転動性の物品(断面が円形の筆記具等)を載置することができる。
【0060】
図8は、第5実施形態に係る画像形成装置1Dの右側面図である。この画像形成装置1Dのテーブル40Dには、その表面に、左右方向に延びる浅い凹曲面406が備えられている。凹曲面406は、テーブル40Dの左端寄りの一部を凹没させたものであり、テーブル40Dの凹曲面406以外の部分は、平面部407とされている。このようなテーブル40Dでも、凹曲面406を転動性物品の収容位置としてユーザに利用させることができる。
【0061】
なお、図7、図8では、凹曲面を例示したが、テーブルに凸曲面を設けるようにしても良い。例えば、所定間隔を置いて一対の小凸曲面をテーブル表面に突設し、その小凸曲面間に転動性の物品を収容させるようにしても良い。或いは、輪ゴムのような環状物品を係止する半球状の突起をテーブルに突設することもできる。
【0062】
次に、段差面15の利用態様につき例示する。図9は、第6実施形態に係る画像形成装置1Eの上面図である。画像形成装置1Eの段差面15Aには、クリップを収容する第1凹部42と、ステイプラの綴じ針を収容する第2凹部43とが備えられている。このように、段差面15Aに小物品を収容可能な凹部を設けることで、段差面15Aの利用性を向上させることができる。
【0063】
なお、図示は省略するが、段差面15に、図7及び図8で示した凹曲面404,406と同様な凹曲面を設けても良い。また、段差面15を平面とせず、例えば正面視でV字形状をなす傾斜面としても良い。或いは、段差面15の上に、例えば繊維マット、棒状の小突起付きのゴムマット、人工芝マット若しくは多孔マットのような、敷物を載置しても良い。
【0064】
図10は、第7実施形態に係る画像形成装置1Fの正面図である。画像形成装置1Fの段差面15Bには収容凹部153が設けられ、該収容凹部153にはカードリーダユニット44(リーダ装置)が収容されている。カードリーダユニット44は、画像形成装置1の利用管理を行うために付設されるオプションユニットであって、ユーザが保有する図略のICカードと無線通信を行い、前記ICカードに記憶されている識別情報を用いて、当該ICカードの所有者が画像形成装置1の利用資格を有するか否かの認証を行う。前記識別情報は、例えば、社員IDや所属部署等、ユーザの属性を特定可能なデータである。
【0065】
カードリーダユニット44は、当該ユニット90の動作制御及び各種演算を行うCPU、搬送波に信号波を重畳させる変調を行う変調回路、ICカード側からの信号波を復調させる復調回路、ICカードと無線電波の送受信を行うアンテナ、及び、認証処理を行う認証用CPU等を内蔵している。認証用CPUは、そのメモリ領域に格納された認証用データとICカードの識別情報とを比較し、認証用データ中に一致するデータが存在するか否かを確認する。一致データが存在する場合は、画像形成装置1の利用を許可すべき旨の信号を、画像形成装置1内に備えられている図略の制御部に向けて送信する。このような認証手続きを経て、ユーザは画像形成装置1を使用可能となる。
【0066】
ユーザは、画像形成装置1Fの使用時に、空間15Sに認証用のICカードを差し入れ、段差面15Bに収容されているカードリーダユニット44にICカードをかざすことになる。このような画像形成装置1Fによれば、空間15Sがユーザ認証を行うためのセキュリティエリアとしても利用され、カードリーダユニット44を目立たないようにすることができる。
【0067】
以上、本発明の第1〜第7実施形態につき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、さらに次のような変形実施形態を取ることができる。
【0068】
(1)上記実施形態では、テーブル40がガラステーブルである例を示した。このようなテーブルであれば、安価で透明性が良好なものとするができる一方で、破損して破片が飛散する懸念は拭い去れない。そこで、図11に示すように、ガラステーブル本体408の裏面側に、飛散防止用の透過フィルム409が貼着されたテーブル40Eとすることが望ましい。このようなテーブル40Eであれば、予期せぬ外力が作用してガラステーブル本体408が破損したとしても、透過フィルム409によって破片の飛散を防止することができる。
【0069】
(2)上記実施形態では、本体筐体11の前面10Fと上面10Tとの交差部に段差面15を設け、その上にテーブル40が据え付けられる例を示した。これに代えて、例えば図12に示す画像形成装置1Gのように、段差面を設けることなく、装置本体10の前面10Fの上部に、透明なテーブル40Gを突出して設けるようにしても良い。テーブル40Gは、装置本体10から延出された傾斜支柱45で支持させることができる。この変形実施形態において、テーブル40Gを回動自在とし、不使用時には下方へ折り畳めるようにしても良い。
【0070】
(3)図示は省略するが、段差面15に、前方へ引き出し可能なトレイ、若しくは回動させることで前方へ突出するトレイを組み付けても良い。このようなトレイを設ければ、ユーザは適時トレイを前方へ出し、原稿シートの置き場として利用することができる。
【0071】
(4)テーブル40にアンテナ機能を具備させることもできる。例えば、テレビ電波を受信可能なRFIDアンテナを搭載した透明フィルムをテーブル40に貼着し、そのテレビ画像を、操作パネル30のタッチパネル31で表示させても良い。
【0072】
(5)テーブル40を、キー入力を可能とするキーボード画像の投影面としても良い。例えばモーションキャプチャー技術を適用し、投影されたキーボード画像に対するユーザの手の動き(入力操作)を解析して、入力操作信号を生成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
10 装置本体
10F 前面
10T 上面
11 本体筐体
15 段差面
20 自動原稿搬送装置(ADF)
30 操作パネル
40、40A〜40E 段差面
401、402、403 湾曲部
404、406 曲面
409 透過フィルム
41 支柱
44 カードリーダユニット(リーダ装置)
51 画像形成ユニット(画像形成部)
54 原稿読取ユニット(原稿読取部)
540 原稿読取面
541 第1コンタクトガラス
542 第2コンタクトガラス(コンタクトガラス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成される画像の原稿画像を読み取る原稿読取部と、
前記画像形成部が内部に組み込まれると共に、ユーザが通常操作時に対峙する前面と、前記原稿読取部が配置される上面とを有する本体筐体と、
前記本体筐体の上面の上に載置され、前記原稿画像を備えた原稿シートを、前記原稿読取部へ自動搬送する自動原稿搬送装置と、
前記本体筐体の前面と上面との交差部又はその近傍に配置される光透過性のテーブルと、を備える画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記原稿読取部は、その上を前記自動原稿搬送装置により自動搬送される原稿シートが通過するコンタクトガラスを備え、
前記本体筐体の上面は、前記コンタクトガラスが嵌め込まれてなる原稿読取面を含み、
前記本体筐体の前面と上面との交差部には、前記原稿読取面よりも高さ位置が低い段差面が形成され、
前記テーブルは、前記段差面の上方に配置され、その表面の高さ位置が、前記原稿読取面と同じ高さ若しくは前記原稿読取面よりも低い高さとされている、画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記段差面は、前記本体筐体の前面の左右方向の全幅に亘って形成されている、画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記段差面は平面であり、前記テーブルが透明な平板からなり、
前記テーブルは、前記段差面から立設された支柱で支持されている、画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記テーブルの前端縁が、前記本体筐体の前面と略面一とされている、画像形成装置。
【請求項6】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記テーブルの前端縁に湾曲部が備えられている、画像形成装置。
【請求項7】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記テーブルの表面に曲面が備えられている、画像形成装置。
【請求項8】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記段差面に、収容凹部が設けられている、画像形成装置。
【請求項9】
請求項3に記載の画像形成装置において、
ユーザ認証を行うリーダ装置をさらに備え、
前記リーダ装置は、前記段差面に取り付けられている、画像形成装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記テーブルはガラス板からなり、該テーブルの裏面には透過フィルムが貼着されている、画像形成装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記テーブルの周縁部を覆うフレーム保護部材をさらに備える、画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−221503(P2011−221503A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33554(P2011−33554)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】