説明

画像形成装置

【課題】 新規な技術的思想に基づき、カバー等の揺動部材の損傷を防止することが可能な技術を提供する。
【解決手段】 フロントカバー19の揺動を規制する第1ストッパ部23F及び第2ストッパ部23Gをアーム部23に設けるとともに、第1ストッパ部23Fは、ボス部25との係合状態を開放する向きに弾性変位可能であり、かつ、第2ストッパ部23Gは、第1ストッパ部23Fより揺動方向前進側に位置させる。これにより、ユーザがフロントカバー19に過度な力を作用させると、第1ストッパ部23Fが係合状態を開放する向きに弾性的に変位し、ユーザが感知するフロントカバー19からの反作用が変化するので、この反作用の変化により、ユーザはフロントカバー19に過度な力を作用させていることを感知することができ、フロントカバー19の損傷を防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものであり、特に、開閉カバー等の揺動部材を揺動可能に装置本体に連結するヒンジ機構に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、カバーが開状態で過度な力をユーザがカバーに作用させたときには、カバー自体が装置本体から外れてしまうことにより、カバーの損傷を未然に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−203777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明では、カバーが装置本体から外れることによりカバーの損傷を防ぐ発明であるので、ユーザはカバーが外れるまでカバーに力を作用し続け、カバーが外れたときに初めて過度な力をカバーに作用させていたことに気付くこととなる。そして、カバーが外れてしまうと、ユーザは外れたカバーを装置本体に取り付ける必要があるが、この作業が困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、特許文献1に記載の発明と異なる新規な技術的思想に基づき、カバー等の揺動部材の損傷を防止することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、記録シートに画像を形成する画像形成部(5)と、画像形成部(5)が収納された装置本体(3)に対して揺動可能な揺動部材(19、23)と、装置本体(3)及び揺動部材(19、23)のうちいずれか一方の部材(3)に設けられ、他方の部材(19、23)側に突出する突起部(25)と、他方の部材(19、23)に設けられ、突起部(25)と衝突して係合することにより揺動部材(19、23)の揺動を規制する第1ストッパ部(23F)及び第2ストッパ部(23G)とを備え、突起部(25)及び第1ストッパ部(23F)のうち少なくとも一方は、その係合状態を開放する向きに弾性変位可能であり、さらに、第1ストッパ部(23F)に突起部(25)を衝突させる方向を揺動方向と呼ぶとき、第2ストッパ部(23G)は、第1ストッパ部(23F)より揺動方向前進側に位置していることを特徴とする。
【0007】
これにより、本発明では、ユーザが揺動部材(19、23)に過度な力を作用させると、第1ストッパ部(23F)及び突起部(25)の少なくとも一方が係合状態を開放する向きに弾性的に変位し、ユーザが感知する揺動部材(19、23)からの反作用が変化するので、この反作用の変化により、ユーザは揺動部材(19、23)に過度な力を作用させていることを感知することができ、揺動部材(19、23)の損傷を防止することが可能となる。
【0008】
このとき、突起部(25)と第1ストッパ部(23F)との係合状態を開放されても、突起部(25)と第2ストッパ部(23G)とが衝突して係合するので、揺動部材(19、23)が装置本体(3)から外れてしまうことはない。
【0009】
つまり、本発明では、ユーザが揺動部材(19、23)に過度な力を作用させて突起部(25)と第1ストッパ部(23F)との係合状態を開放されても、外れた揺動部材(19、23)を装置本体(3)に取り付けるといった作業は発生しない。
【0010】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置において、フロントカバー19を開いた状態を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置において、フロントカバー19を閉じた状態を示す側面図(ヒンジ機構21のみ断面図)である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置において、フロントカバー19を開いた状態を示す側面図(ヒンジ機構21のみ断面図)である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置において、フロントカバー19を開いた状態を示す側面図(ヒンジ機構21のみ断面図)である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置において、フロントカバー19を開いた状態を示す側面図(ヒンジ機構21のみ断面図)である。
【図7】(a)は図3のA−A断面図であり、(b)は図4のA−A断面図である。
【図8】(a)は図5のA−A断面図であり、(b)は図6のA−A断面図である。
【図9】図6のB−B断面図であって、(a)はボス部25と第1ストッパ部23Fとが係合している状態を示す図であり、(b)はボス部25と第2ストッパ部23Gとが係合している状態を示す図である。
【図10】移動部23Hの作用・効果を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の第1ストッパ部23F(突起部23K)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は電子写真方式の画像形成装置に本発明に係る画像形成装置を適用したものであり、以下に本実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.画像形成装置の概要
画像形成装置1の装置本体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成する画像形成部5が収納されており、この画像形成部5は、周知のごとく、プロセスユニット7、露光器9及び定着器11等から構成されている。
【0013】
因みに、本実施形態に係る画像形成装置1は、ダイレクトタンデム方式のカラー画像形成装置であるため、ベルトユニット13によって搬送される用紙の搬送方向に沿って直列に複数個(本実施形態では、4個)のプロセスユニット7が配設されているとともに、各プロセスユニット7に担持されている現像剤像は、転写ローラ15にて用紙に転写されて用紙上で重ね合わせられる。
【0014】
なお、装置本体3とは、図2に示すように、画像形成部5を挟んで両側に配設された一対の支持フレーム3A及び支持フレーム3A等を覆って意匠面を構成する筐体カバー3B等の画像形成部5を収納するものをいう。因みに、画像形成部5、ベルトユニット13及び給紙トレイ17は、装置本体3から取り外すことが可能であり、図2は、これら5、13、17が取り外された状態を示している。
【0015】
そして、筐体カバー3B内、つまり一対の支持フレーム3A間には、画像形成部5、ベルトユニット13、及び画像形成部5に供給する用紙が収納される給紙トレイ17(図1参照)等が収容される空間3Cが形成されている。
【0016】
また、筐体カバー3B(装置本体3)のうち、ベルトユニット13上を搬送される用紙の搬送方向一端側(本実施形態では、装置本体3の前方側)には、空間3Cを開放するための開口部3D、及びこの開口部3Dを開閉するフロントカバー19が設けられている。
【0017】
そして、フロントカバー19は、その下端側に設けられたヒンジ機構21を介して装置本体3(本実施形態形態では、支持フレーム3A)に対して揺動可能に連結されており、開口部3Dを閉塞する板状のカバー本体19A及びヒンジ機構21によりフロントカバー19が構成されている。
【0018】
なお、フロントカバー19は、現像剤の補充(プロセスユニット7の交換)時や詰まった用紙の除去作業時(ジャム処理時)等の際にユーザにより開かれるものであり、通常時には、閉じられている(図1参照)。
【0019】
2.フロントカバーのヒンジ機構について
フロントカバー19は、図2に示すように、カバー本体19Aの下端側を揺動中心として装置本体3に対して揺動する揺動部材であり、その揺動中心軸線方向L1は、カバー本体19Aの板面19B(図3参照)と平行な方向(本実施形態では、画像形成装置の左右方向)に延びている。なお、揺動中心軸線方向L1とは、フロントカバー19の揺動中心を通り、フロントカバー19の揺動方向と直交する方向をいう。
【0020】
そして、ヒンジ機構21は、図3に示すように、カバー本体19のうち揺動中心軸線方向両端側に連結されてカバー本体19Aと一体的に変位するアーム部23、並びに支持フレーム3Aに設けられたボス部25及び嵌合穴27等から構成されている。
【0021】
因みに、本実施形態に係る支持フレーム3Aは、樹脂製(本実施形態では、PC/ABS樹脂製)の下部フレームと金属製(本実施形態では、SPCC製)上部フレームとから構成されており、ボス部25及び嵌合穴27は、下部フレームに一体形成されている。
【0022】
そして、アーム部23は、図2に示すように、カバー本体19Aから支持フレーム3A側に延びる略円弧状の部材であり、このアーム部23は、フロントカバー19の揺動に伴って支持フレーム3Aと筐体カバー3Bとの間に形成された隙間(空間)を出入りする(図3〜図6参照)。
【0023】
また、アーム部23は、図7(a)に示すように、カバー本体19Aの板面と略直交するアームプレート23A及びアームプレート23Aから支持フレーム3A側に突出する壁状の補強リブ23B等から構成されており、これら23A、23Bは樹脂(本実施形態ではABS樹脂)にて一体成形されている。
【0024】
因みに、図3〜図6は、案内溝23C、ボス部25及び嵌合穴27の形状等を図示すべく、図7(a)のA−A断面位置におけるアーム部23等の状態、つまりアームプレート23Aを削除した状態の断面を示している。
【0025】
また、ボス部25は、支持フレーム3Aからアーム部23側に向けて突出した円筒状又は円柱状の突起部であり、このボス部25は、アーム部23に設けられた案内溝23Cに移動可能に填め込まれている。
【0026】
また、案内溝23Cは、ボス部25の突出方向と直交する方向からボス部25を挟み込むように設けられた一対の案内壁23Dにて構成されたもので、これら案内壁23Dにボス部25の外周面が摺動可能に接触することより、アーム部23に対するボス部25の相対移動が案内される(図8(a)及び図8(b)参照)。
【0027】
また、案内溝23Cは、図3に示すように、アーム部23に一体形成された揺動軸23E側を曲率中心とする略円弧状に延びた溝状の案内部である。そして、フロントカバー19が閉じた状態にある場合においては、ボス部25は、案内溝23Cの延び方向一端側(図3の上端側)に位置し、一方、フロントカバー19が開いた状態にある場合においては、ボス部25は、図6に示すように、案内溝23Cの延び方向他端側(図3の下端側)に位置する。
【0028】
そこで、以下、案内溝23Cの延び方向一端側を「案内溝23Cの閉端側」と呼び、案内溝23Cの延び方向他端側を「案内溝23Cの開端側」と呼び、案内溝23Cに沿った方向を「揺動方向」と呼び、閉端側から開端側に向かう向きを「揺動方向前進側に向かう向き」という。
【0029】
また、案内溝23Cの開端側には、図9(a)及び図9(b)に示すように、アームプレート23Aのうちボス部25の先端部と対向する部位からボス部25の根元側に突出する壁状の第1ストッパ部23Fが一体形成されており、この第1ストッパ部23Fより揺動方向前進側には、第1ストッパ部23Fと同様にボス部25の根元側に突出する壁状の第2ストッパ部23Gが設けられている。
【0030】
そして、第1ストッパ部23F及び第2ストッパ部23Gは、案内溝23C内を揺動方向前進側に向かう向きに移動してきたボス部25と衝突して係合することによりフロントカバー19(アーム部23)の揺動を規制する。
【0031】
すなわち、案内溝23C内を揺動方向前進側に向かう向きに移動してきたボス部25は、図9(a)に示すように、最初に第1ストッパ部23Fの壁面に衝突し、これにより、フロントカバー19の揺動が規制される。
【0032】
しかし、ボス部25と第1ストッパ部23Fとの衝突時の力が大きい場合、又はボス部25と第1ストッパ部23Fとが係合した状態で更にフロントカバー19に外力が作用した場合には、アーム部23は、図9(b)に示すように、ボス部25から離間する向きに弾性的に変形するため、第1ストッパ部23Fは、ボス部25との係合状態を開放する向きに変位する。
【0033】
このとき、筐体カバー3Bには、アーム部23(アームプレート23A)と接触してアーム部23の変形を規制する第3ストッパ部3Eが設けられているため、アーム部23が過度に変形変位してしまうことが防止される。
【0034】
そして、本実施形態では、アーム部23が弾性変形する前の状態において、第1寸法D1が第2寸法D2より小さく、かつ、第2寸法D2が第3寸法D3より小さくなるように設定されているので(図9(a)参照)、第1ストッパ部23Fは、ボス部25との係合状態を開放する向きに変位して、ボス部25と第1ストッパ部23Fとの係合状態が開放された場合であっても、ボス部25と第2ストッパ部23Gとの係合状態は維持される(図9(b)参照)。
【0035】
なお、第1寸法D1とは、揺動方向と平行な方向から見たときのボス部25と第1ストッパ部23Fとの重なり寸法であり、第2寸法D2とは、揺動方向と平行な方向から見たときのアーム部23と第3ストッパ部3Eとの隙間寸法であり、第3寸法D3とは、揺動方向と平行な方向から見たときのボス部25と第2ストッパ部23Gとの重なり寸法である。
【0036】
ところで、本実施形態では、図3に示すように、案内溝23Cのうち閉端側の曲率中心が、案内溝23Cのうち開端側の曲率中心より給紙トレイ17側(本実施形態では、下方側)に設定されているので、案内溝23Cは、段差状部分23Jを有する略円弧状の溝形状となっている。このため、揺動軸23Eが嵌り込む嵌合穴27は、これに対応して長穴状となっている。
【0037】
以上のような構成を有するため、本実施形態では、支持フレーム3Aに対するアーム部23(フロントカバー19)の揺動中心(揺動軸23E)は、図3〜図5に示すように、フロントカバー19の揺動に伴って嵌合穴27内をその長径方向に移動する。そこで、以下、案内溝23Cのうち閉端側(案内壁23Dのうち段差状部分23J近傍の範囲)を移動部23Hと呼ぶ。
【0038】
つまり、本実施形態に係る移動部23Hは、フロントカバー19が閉じた状態にあるときの揺動軸23Eの位置(図3に示す位置)が、フロントカバー19が開かれた状態にあるときの揺動軸23Eの位置(図4に示す位置)よりも下方側に位置するように、揺動軸23Eの位置をフロントカバー19の揺動に伴って変位させる。
【0039】
なお、本実施形態では、揺動軸23Eが嵌合穴27内をその長径方向に移動することにより、揺動軸23Eの位置が上下方向に変位するので、本実施形態では、嵌合穴27の長径方向を水平方向に対して傾けるべく、長径方向を上下方向と一致させているが、詳細には、以下のようにすることが望ましい。
【0040】
すなわち、図4に示すように、長穴状の嵌合穴27の長径方向の中点を通り、かつ、長径方向と直交する方向(短径方向)に延びる第1仮想線L2と、長穴状の嵌合穴27の長径方向の中点及びボス部25の中心を通る第2仮想線L3とが交差するように、嵌合穴27の長径方向を設定することが望ましい。そして、本実施形態では、第1仮想線L2は水平方向に延び、第1仮想線L2と第2仮想線L3とのなす角が90度未満となっている。
【0041】
3.フロントカバー(ヒンジ機構)の開閉作動
フロントカバー19が閉じた状態においては、図3に示すように、ボス部25は案内溝23Cのうち閉端側(移動部23H側)に位置しているので、カバー本体19Aの下端が給紙トレイ17の前面部上端17Aに近接した部位に位置している。
【0042】
そして、フロントカバー19が開き始めると、図4に示すように、ボス部25が移動部23H上を案内されて段差状部分23Jを乗り越える際に、揺動軸23Eが下方側から上方側に移動するので、フロントカバー19は下方側から上方側に移動しながら開方向に揺動する。
【0043】
このため、カバー本体19Aの下端と給紙トレイ17の前面部上端17Aとが干渉することなく、フロントカバー19が開方向に揺動する。因みに、仮に、移動部23Hが設けられていない場合には、カバー本体19Aの下端が給紙トレイ17の前面部上端17Aに近接しているため、図10に示すように、フロントカバー19が開き始めると、カバー本体19Aの下端と給紙トレイ17の前面部上端17Aとが干渉してしまう。
【0044】
そして、フロントカバー19が更に開かれていくと、図5に示すように、ボス部25は案内溝23Cに案内されて第1ストッパ部23Fに向かって移動し、最終的に図6に示すように、ボス部25と第1ストッパ部23Fとが衝突してフロントカバー19の揺動が止まる(図9(a)参照)。
【0045】
このとき、ユーザが過度な力をフロントカバー19に作用させる等してフロントカバー19に大きな外力が作用すると、アーム部23が弾性的に変形して第1ストッパ部23Fとボス部25との係合状態が開放されてしまう場合が発生するが、このような場合であっても、第3ストッパ部3Eによりアーム部23の弾性変形が規制されるので、ボス部25と第2ストッパ部23Gとの係合状態は維持される(図9(b)参照)。
【0046】
因みに、本実施形態に係るヒンジ機構21では、フロントカバー19が閉じた状態から開かれていく初期段階においては、カバー本体19Aの下端と給紙トレイ17の前面部上端17Aとの干渉を回避すべく、カバー本体19Aの下端が給紙トレイ17の前面部から離間するように変位するものの、カバー本体19Aの下端と給紙トレイ17の前面部上端17Aとの干渉が発生しない程度までフロントカバー19が開くと、揺動軸23Eは下方側に僅かに変位する。
【0047】
なお、第1ストッパ部23Fとボス部25との係合状態が開放され、かつ、ボス部25と第2ストッパ部23Gとの係合状態は維持された状態(図9(b)に示す状態)から、フロントカバー19が揺動方向後退側、つまり閉じる向きに揺動させられると、第1ストッパ部23Fの先端部とボス部25の先端部との接触状態が開放されるため、アーム部23は、容易に元の状態(図9(a)に示す状態)に復元する。
【0048】
4.本実施形態に係る画像形成装置(特に、フロントカバー)の特徴
本実施形態では、フロントカバー19の揺動を規制する第1ストッパ部23F及び第2ストッパ部23Gをアーム部23に設けるとともに、第1ストッパ部23Fは、ボス部25との係合状態を開放する向きに弾性変位可能であり、かつ、第2ストッパ部23Gは、第1ストッパ部23Fより揺動方向前進側に位置していることを特徴としている。
【0049】
これにより、本実施形態では、ユーザがフロントカバー19に過度な力を作用させると、第1ストッパ部23Fが係合状態を開放する向きに弾性的に変位し、ユーザが感知するフロントカバー19からの反作用が変化するので、この反作用の変化により、ユーザはフロントカバー19に過度な力を作用させていることを感知することができ、フロントカバー19の損傷を防止することが可能となる。
【0050】
このとき、ボス部25と第1ストッパ部23Fとの係合状態を開放されても、ボス部25と第2ストッパ部23Gとが衝突して係合するので、フロントカバー19が装置本体3(支持フレーム3A)から外れてしまうことはない。
【0051】
つまり、本実施形態では、ユーザがフロントカバー19に過度な力を作用させてボス部25と第1ストッパ部23Fとの係合状態を開放されても、外れたフロントカバー19を装置本体3に取り付けるといった作業は発生しない。
【0052】
また、本実施形態では、アーム部23と接触してアーム部23の変形を規制することにより、ボス部25と第2ストッパ部23Gとの係合状態を維持する第3ストッパ部3Eが設けられていることを特徴としている。
【0053】
これにより、本実施形態では、ボス部25と第2ストッパ部23Gとの係合状態が維持されるので、フロントカバー19が装置本体3から外れてしまうことを確実に防止できる。
【0054】
また、本実施形態では、図9(a)に示すように、第1寸法D1は第2寸法D2より小さく、かつ、第2寸法D2は第3寸法D3より小さいことを特徴としている。
これにより、本実施形態では、ボス部25と第1ストッパ部23Fとの係合状態が開放された場合であっても、確実にボス部25と第2ストッパ部23Gとの係合状態が維持されるので、フロントカバー19が装置本体3から外れてしまうことを確実に防止できる。
【0055】
また、本実施形態では、フロントカバー19(アーム部23)に設けられた揺動軸23Eが嵌め込まれる長穴状の嵌合穴27が支持フレーム3Aに設けられていることを特徴としている。
【0056】
これにより、本実施形態では、フロントカバー19に過度な外力が作用した場合であっても、アーム部23が弾性変形しながら揺動軸23Eが嵌合穴27内をその長径方向に移動することにより、揺動軸23Eに作用する外力を吸収することができるので、揺動軸23Eの損傷を抑制できる。
【0057】
ところで、本実施形態では、揺動軸23Eが長穴状の嵌合穴27に嵌め込まれているので、フロントカバー19が滑らかに揺動せず、揺動が阻害されるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、ボス部25の突出方向と直交する方向からボス部25に接触して、フロントカバー19の揺動時にボス部25を第1ストッパ部23Fまで案内する案内溝23Cがフロントカバー19(アーム部23)に設けられていることを特徴としているので、ボス部25が案内溝23Cにより案内されることにより、フロントカバー19を滑らかに揺動させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、案内溝23Cには、フロントカバー19の揺動中心を移動させながらフロントカバー19を揺動させる移動部23Hが設けられていることを特徴としているので、上述したように、フロントカバー19の揺動範囲内に障害物(本実施形態では、給紙トレイ17)が存在する場合であっても、その障害物との干渉を回避しながらフロントカバー19を揺動させることができる。
【0059】
つまり、本実施形態では、移動部23Hは、フロントカバー19が閉状態にあるときの揺動中心の位置が、フロントカバー19が開状態にあるときの揺動中心の位置よりも下方側に位置するように揺動中心を移動させることを特徴としている。
【0060】
これにより、本実施形態では、給紙トレイ17の前面部上端17Aとの干渉を回避しながらフロントカバー19を揺動させることができるとともに、フロントカバー19が開状態にあるときに過度な外力が作用しても、揺動軸23Eが下方側に移動することにより、揺動軸23Eに作用する外力を吸収することができるので、揺動軸23Eの損傷を抑制できる。
【0061】
また、給紙トレイ17の前面部上端17Aとの干渉を回避しながらフロントカバー19を揺動させることができるので、フロントカバー19が閉じられた状態において、カバー本体19Aの下端と給紙トレイ17の前面部上端17Aとを近接させてフロントカバー19と給紙トレイ17との隙間を小さくすることができ、画像形成装置1の外観意匠のデザイン自由度を向上させることができる。
【0062】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、アーム部23を含むフロントカバー19が特許請求の範囲に記載された揺動部材に相当し、嵌合穴27が特許請求の範囲に記載された長穴に相当し、ボス部25が特許請求の範囲に記載された突起部に相当し、案内溝23Cが特許請求の範囲に記載された案内部に相当する。
【0063】
(第2実施形態)
上述の実施形態では、第1ストッパ部23Fが揺動中心軸線方向L1と平行な方向に突出した壁状であったが、本実施形態は、図11に示すように、一対の案内壁23Dのうち少なくとも一方に、案内溝23Cの幅寸法Wを縮小させるように幅方向に突出する突起部23Kを設け、この突起部23Kを第1ストッパ部23Fとして機能させるものである。
【0064】
そして、ボス部25と突起部23Kとが係合した状態で、揺動方向前進側に向かう向きの過度な力がボス部25に作用すると、突起部23Kが形成された案内壁23Dが弾性変形してボス部25と突起部23Kとの係合が解除されてボス部25と第2ストッパ部23Gとが係合する。
【0065】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ボス部25及び嵌合穴27が支持フレーム3A(装置本体3)に設けられ、第3ストッパ部3Eが筐体カバー3B(装置本体3)に設けられ、かつ、第1ストッパ部23F、第2ストッパ部23G及び案内溝23Cがアーム部23(フロントカバー19)に設けられていたが、本実施形態は、これに限定されるものではない。
【0066】
また、上述の実施形態では、移動部23Hを設けていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばフロントカバー19が閉じた状態において、カバー本体19Aの下端と給紙トレイ17の前面部上端17Aとが十分に離間している場合には、移動部23Hを廃止するとともに、嵌合穴27を真円状とすることができる。
【0067】
また、上述の実施形態では、嵌合穴27を長穴状としていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば案内溝23Cの曲率中心位置の変化量が小さい場合には、嵌合穴27を、揺動軸23Eの直径寸法に前記変化量を加算した値を基準直径寸法とする真円状としてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、嵌合穴27の長径方向が上下方向と一致していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1仮想線L2と第2仮想線L3とが交差していれば十分である。
【0069】
また、上述の実施形態では、嵌合穴27は、底部がある形状であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば貫通穴であってもよい。
また、上述の実施形態では、アーム部23が弾性変形に伴って第1ストッパ部23Fが弾性変位することにより、ボス部25と第1ストッパ部23F係合を開放する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば支持フレーム3Aのうちボス部25の根元側を弾性変位可能な構成として、ボス部25を弾性変位可能な構成としてもよい。
【0070】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1…画像形成装置、3…装置本体、3A…支持フレーム、3B…筐体カバー、
3C…空間、3D…開口部、3E…第3ストッパ部、5…画像形成部、
7…プロセスユニット、13…ベルトユニット、15…転写ローラ、
17…給紙トレイ、17A…前面部上端、19…カバー本体、
19…フロントカバー、19A…カバー本体、19B…板面、
21…ヒンジ機構、23…アーム部、23A…アームプレート、23B…補強リブ、
23C…案内溝、23D…案内壁、23E…揺動軸、23F…第1ストッパ部、
23G…第2ストッパ部、23H…移動部、23J…段差状部分、23K…突起部、
25…ボス部、27…嵌合穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が収納された装置本体に対して揺動可能な揺動部材と、
前記装置本体及び前記揺動部材のうちいずれか一方の部材に設けられ、他方の部材側に突出する突起部と、
前記他方の部材に設けられ、前記突起部と衝突して係合することにより前記揺動部材の揺動を規制する第1ストッパ部及び第2ストッパ部とを備え、
前記突起部及び前記第1ストッパ部のうち少なくとも一方は、その係合状態を開放する向きに弾性変位可能であり、
さらに、前記第1ストッパ部に前記突起部を衝突させる方向を揺動方向と呼ぶとき、前記第2ストッパ部は、前記第1ストッパ部より前記揺動方向前進側に位置していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記突起部の突出方向は、前記揺動部材の揺動中心軸線方向と平行であり、
前記第1ストッパ部は、前記他方の部材のうち前記突起部の先端部と対向する部位から前記突起部の根元側に突出した形状であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記揺動部材には、前記第1ストッパ部及び前記第2ストッパ部が形成されたアーム部が設けられ、かつ、このアーム部は、前記第2ストッパ部との係合状態を開放する向きに弾性変形可能であり、
さらに、前記装置本体には、前記アーム部と接触して前記アーム部の変形を規制することにより、前記突起部と前記第2ストッパ部との係合状態を維持する第3ストッパ部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記揺動方向と平行な方向から見たときの前記突起部と前記第1ストッパ部との重なり寸法を第1寸法と呼び、前記揺動方向と平行な方向から見たときの前記アーム部と前記第3ストッパ部との隙間寸法を第2寸法と呼び、前記揺動方向と平行な方向から見たときの前記突起部と前記第2ストッパ部との重なり寸法を第3寸法と呼ぶ場合において、
前記第1寸法は前記第2寸法より小さく、かつ、前記第2寸法は前記第3寸法より小さいことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記装置本体及び前記揺動部材のうちいずれか一方の部材には、前記揺動部材を揺動可能に前記装置本体に連結するための揺動軸が設けられ、他方の部材には、前記揺動軸が嵌め込まれる長穴が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1ストッパ部が設けられた前記他方の部材には、前記突起部の突出方向と直交する方向から前記突起部に接触して、前記揺動部材の揺動時に前記突起部を前記第1ストッパ部まで案内するための案内部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記案内部には、前記揺動部材の揺動中心を移動させながら前記揺動部材を揺動させる移動部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記揺動部材は、下端側を揺動中心として前記装置本体に設けられた開口部を開閉するカバーであり、
さらに、前記移動部は、前記カバーが閉状態にあるときの前記揺動中心の位置が、前記カバーが開状態にあるときの前記揺動中心の位置よりも下方側に位置するように前記揺動中心を移動させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1ストッパ部及び前記第2ストッパ部が設けられた前記他方の部材は、樹脂製であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−248073(P2011−248073A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120831(P2010−120831)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】