説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の大型化及びファーストコピータイムの延長を防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、中間転写ベルト311、用紙搬送路35、プロセス制御用センサ39、及びカバー部材61を備える。プロセス制御用センサ39は、中間転写ベルト311に近接して配置され、プロセス制御の実行中に中間転写ベルト311に担持されたトナー像の濃度を検出する。カバー部材61は、プロセス制御用センサ39を覆う閉位置と露出する開位置とに変位する。用紙搬送路35の側壁351は、画像形成処理の実行中のみに中間転写ベルト311へ用紙を搬送する用紙搬送路35を構成する。カバー部材の少なくとも一部は、開位置において用紙搬送路35内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロセス制御用センサを像担持体に対して開閉するカバー部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成プロセスを経てシートに画像を形成する画像形成装置の中には、シートに画像を形成する画像形成処理の非実行中に行われるプロセス制御であって画像形成部の駆動状態を制御するプロセス制御の実行中に像担持体上のトナー像の濃度を検出する検出部を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。検出部は、像担持体に近接して配置される。
【0003】
検出部に像担持体から飛散したトナーが付着すると検出部の検出精度が低下するので、像担持体に対して検出部を覆う閉位置と検出部を露出するように像担持体の移動方向に沿う方向に変位した開位置とに変位するカバー部材を画像形成装置に備えることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−148897公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、像担持体の近傍には、シート搬送路が設けられる。また、像担持体の近傍には、トナー像の電荷を調整する転写前帯電装置が備えられることもある。このため、像担持体の近傍にカバー部材が変位するための領域が新たに設けられると、像担持体の近傍の像担持体の移動方向に沿う方向の寸法が広がらざるを得ず、画像形成装置の大型化、及び、画像形成処理の開始から1枚目の画像形成処理が終了するまでの時間であるファーストコピータイムの延長という問題が生じる。
【0006】
この発明の目的は、画像形成装置の大型化及びファーストコピータイムの延長を防止できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の画像形成装置は、画像形成部、像担持体、領域構成部材、検出部、及びカバー部材、を備える。画像形成部は、電子写真方式の画像形成プロセスを経て画像データに基づくトナー像を形成する。像担持体は、画像形成部が形成したトナー像を担持しつつ回転移動する。領域構成部材は、像担持体との間に所定の作用領域を構成するように配置された領域構成部材であってシートに画像を形成する画像形成処理の実行中のみに像担持体に対して作用領域を介して作用する。検出部は、像担持体に近接して配置され、シートに画像を形成する画像形成処理の非実行中に行われるプロセス制御であって画像形成部の駆動状態を制御するプロセス制御の実行中に像担持体に担持されたトナー像の濃度を検出する。カバー部材は、像担持体に対して検出部を覆う閉位置と検出部を露出するように像担持体の移動方向に沿う方向に変位した開位置とに変位する。カバー部材の少なくとも一部は、開位置において作用領域内に配置される。
【0008】
この構成では、領域構成部材は、画像形成処理の実行中のみに像担持体に対して作用領域を介して作用する。このため、作用領域が像担持体に対して使用されるのは、画像形成処理の実行中のみである。これに対して、カバー部材が開位置に配置されるのはプロセス制御の実行中であって画像形成処理の非実行中なので、カバー部材が開位置に配置されるときには作用領域は使用されていない。このため、カバー部材の少なくとも一部が開位置において作用領域内に配置されても、画像形成処理の障害にならない。一方、カバー部材の少なくとも一部が開位置において作用領域内に配置されることで、像担持体の近傍にカバー部材が変位するための領域を新たに設ける必要がないので、像担持体の移動方向に沿う方向の寸法が広がらない。
【0009】
上述の構成において、領域構成部材は、像担持体が担持するトナー像を転写されるべく像担持体の表面へシートを供給するシート搬送路を構成する側壁であり、カバー部材の少なくとも一部は、開位置においてシート搬送路内に配置されるように構成することができる。カバー部材が開位置に配置されるのはプロセス制御の実行中であって画像形成処理の非実行中なので、カバー部材が開位置に配置されるときにはシート搬送路にシートは搬送されない。このため、カバー部材の少なくとも一部が開位置においてシート搬送路内に配置されても、画像形成処理の障害にならない。一方、カバー部材の少なくとも一部が開位置においてシート搬送路内に配置されることで、像担持体の近傍にカバー部材が変位するための領域を新たに設ける必要がないので、像担持体の移動方向に沿う方向の寸法が広がらない。
【0010】
また、カバー部材は、閉位置においてシート搬送路の側壁の一部を構成することができる。カバー部材がシート搬送路の側壁の一部に兼用されるので、カバー部材とシート搬送路の側壁とが隣接するように設けられる場合よりも像担持体の移動方向に沿った方向のスペースを小さくすることができる。また、カバー部材の少なくとも一部が開位置においてシート搬送路内に配置されるが、カバー部材を変位させるためにシート搬送路の側壁を移動させる必要がないので駆動手段等の部品点数の増加を防止でき、また、シート搬送路の側壁に切り欠きを設ける必要もないので、製造工程を簡素化できる。
【0011】
さらに、領域構成部材は、像担持体に担持されたトナー像の電荷を調整する転写前帯電装置であり、カバー部材の少なくとも一部は、開位置において転写前帯電装置と像担持体との間に配置されるように構成することができる。カバー部材が開位置に配置されるのはプロセス制御の実行中であって画像形成処理の非実行中なので、カバー部材が開位置に配置されるときには転写前帯電装置は駆動しない。このため、カバー部材の少なくとも一部が開位置において転写前帯電装置と像担持体との間に配置されても、画像形成処理の障害にならない。一方、転写前帯電装置は検出部と比較して像担持体の移動方向に沿う方向の長さが大きいので、転写前帯電装置と像担持体との間にはカバー部材を配置するための十分なスペースがある。このため、カバー部材の少なくとも一部が開位置において転写前帯電装置と像担持体との間に配置されることで、像担持体の近傍にカバー部材が変位するための領域を新たに設ける必要がないので、像担持体の移動方向に沿う方向の寸法が広がらない。
【0012】
また、検出部は、像担持体の回転軸方向に複数備えられ、カバー部材は、閉位置において複数の検出部の全てを覆う長さまで回転軸方向に延びるように構成することができる。複数の検出部を開閉するために1個のカバー部材を変位させればよいので、駆動の制御を簡素化できる。
【0013】
さらに、検出部は、像担持体の回転軸方向に複数備えられ、カバー部材は、検出部のそれぞれに対応して複数備えられ、複数のカバー部材は閉位置と開位置とに互いに連動して変位するように構成することができる。複数の検出部を開閉するために1個のカバー部材を変位させれば全てのカバー部材が変位するので、駆動の制御を簡素化できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、画像形成装置の大型化及びファーストコピータイムの延長を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】実行中の処理と各部の状態との関係を示す図である。
【図3】画像形成装置の一部の構成を示す図である。
【図4】画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。
【図5】他の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す図である。
【図6】さらに他の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置10は、画像データに基づいて、シートの一例である用紙に多色又は単色の画像を形成する。画像形成装置10は、画像形成ステーション(画像形成部)21,22,23,24、中間転写ベルトユニット31、複数の一次転写ローラ32A〜32D、二次転写ベルト33、定着装置34、用紙搬送路(シート搬送路)35、給紙トレイ36、排紙トレイ37、転写前帯電装置38、プロセス制御用センサ(検出部)39、及び制御部100を備えている。制御部100は、画像形成装置10を統括的に制御している。
【0018】
画像形成装置10は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ、及びイエローの4色の各色相に対応した画像データを用いて、電子写真方式の画像形成処理を行う。画像形成ステーション21〜24では、各色相のトナー像が形成される。画像形成ステーション21〜24は、中間転写ベルトユニット31に沿って水平方向に一列に配置されている。
【0019】
以下では、主として画像形成ステーション21について説明する。画像形成ステーション22〜24は、画像形成ステーション21と実質的に同様に構成されている。ブラックの画像形成ステーション21は、感光体ドラム41、帯電装置42、露光装置43、現像装置44、及びクリーニングユニット45を備え、電子写真方式の画像形成プロセスを経て、ブラックのトナー像を形成する。
【0020】
感光体ドラム41は、静電潜像担持体であって、円筒状を呈し、図示しない第1駆動源から駆動力を伝達されることで回転する。感光体ドラム41は、円筒状の導電性基体、及び、導電性基体の周面に設けられる感光層を有する。
【0021】
帯電装置42は、感光体ドラム41の周面に対向するように、感光体ドラム41の軸方向に沿って配置される。帯電装置42は、非接触型の帯電装置であって、感光体ドラム41の周面を所定の電位に均一に帯電させる。
【0022】
露光装置43は、半導体レーザを有しており、ブラック用の画像データによって変調されたレーザビームを感光体ドラム41に照射する。感光体ドラム41の周面には、ブラック用の画像データによる静電潜像が形成される。
【0023】
現像装置44は、ブラックの現像剤を収容している。現像剤として、例えばトナーとキャリアとからなる二成分系の現像剤が用いられる。現像装置44は、トナーとキャリアとを攪拌することでトナーを帯電させる。現像装置44は、静電潜像が形成された感光体ドラム41の周面にトナーを供給することで、静電潜像をトナー像に現像する。
【0024】
なお、画像形成ステーション22〜24のそれぞれの現像装置44には、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色の現像剤が収容されており、それぞれの感光体ドラム41には、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色のトナー像が形成される。
【0025】
中間転写ベルトユニット31は、中間転写ベルト311、駆動ローラ312、及び従動ローラ313を有している。中間転写ベルト311として、例えば100〜150μmの範囲内の所定の厚さのフィルムが用いられる。中間転写ベルト311は、像担持体を構成し、駆動ローラ312と従動ローラ313とに張架され、一方向へ周回移動している。なお、中間転写ベルト311は駆動ローラ312と従動ローラ313とに張架されて回転しており、回転軸となる部材が存在するわけではないが、中間転写ベルト311の回転軸方向は、駆動ローラ312の回転軸方向と実質的に同じである。
【0026】
中間転写ベルト311の外周面は、画像形成ステーション21〜24のそれぞれの感光体ドラム41に対向している。一例として、駆動ローラ312は、中間転写ベルト311の移動方向91において画像形成ステーション21〜24の下流側に配置され、従動ローラ313は、画像形成ステーション21〜24の上流側に配置されている。
【0027】
一次転写ローラ32A〜32Dは、中間転写ベルト311を挟んで画像形成ステーション21〜24のそれぞれの感光体ドラム41に対向するように配置されている。一次転写ローラ32B〜32Dは、一次転写ローラ32Aと実質的に同様に構成されている。一次転写ローラ32Aは、直径8〜10mmの金属(例えば、ステンレス)を素材とする軸、及びこの軸の周面を被覆する導電性の弾性材を有している。導電性の弾性材によって、中間転写ベルト311に均一に高電圧が印加される。中間転写ベルト311が画像形成ステーション21〜24のそれぞれの感光体ドラム41に対向する位置が、一次転写位置である。
【0028】
一次転写ローラ32A〜32Dには、感光体ドラム41の周面に担持されたトナー像を中間転写ベルト311上に一次転写するために、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、画像形成ステーション21〜24のそれぞれの感光体ドラム41に形成された各色相のトナー像は中間転写ベルト311の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト311の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0029】
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4個の感光体ドラム41のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われる。例えば、モノクロ画像形成処理時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム41のみにおいて静電潜像の形成及びトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト311の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0030】
クリーニングユニット45は、現像及び一次転写後における感光体ドラム41の周面に残留したトナーを、除去及び回収する。
【0031】
一次転写位置のそれぞれにおいて中間転写ベルト311の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト311の周回移動によって、所定の二次転写位置へ搬送される。二次転写ベルト33は、中間転写ベルト311を挟んで駆動ローラ312に圧接するように配置されている。二次転写ベルト33は、所定のニップ圧で中間転写ベルト321に圧接している。二次転写ベルト33が中間転写ベルト311を挟んで駆動ローラ312と対向する位置が、二次転写位置である。なお、二次転写ベルト33は、二次転写ローラで代替することができる。
【0032】
中間転写ベルト311の移動方向91において最も下流側に配置された画像形成ステーション24と二次転写位置との間に、転写前帯電装置38が配置されている。転写前帯電装置38は、非接触型の帯電装置であって、中間転写ベルト311の外周面に近接して配置されている。中間転写ベルト311を挟んで転写前帯電装置38に対向するように、対向ローラ53が配置されている。
【0033】
転写前帯電装置38は、画像形成処理の実行中のみに駆動する。転写前帯電装置38は、駆動することで、中間転写ベルト311の外周面に担持されたトナー像に、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と同極性(例えば、マイナス)の電荷を付与する。これによって、トナー像の電荷が調整され、二次転写位置において中間転写ベルト311の外周面から用紙へトナー像を転写する二次転写の性能が向上する。
【0034】
給紙トレイ36は用紙を収容している。給紙トレイ36から給紙された用紙が二次転写ベルト33と中間転写ベルト311との間を通過する際に、二次転写ベルト33にトナーの帯電極性(例えば、マイナス)とは逆極性(例えば、プラス)の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト311の外周面から用紙にトナー像が二次転写される。
【0035】
4個の感光体ドラム41の一部又は全部から中間転写ベルト311へ一次転写されたトナーのうち、用紙へ転写されずに中間転写ベルト311上に残留したトナーは、次工程での混色を防止するために、中間転写ベルト用クリーニングユニット51によって回収される。
【0036】
定着装置34は、加熱ローラ341及び加圧ローラ342を有している。トナー像が転写された用紙は、定着装置34へ導かれ、加熱ローラ341と加圧ローラ342との間を通過することで加熱及び加圧される。これによって、トナー像が、用紙に堅牢に定着する。トナー像が定着した用紙は、排紙ローラ対52によって排紙トレイ37上へ排出される。
【0037】
画像形成装置10には、給紙トレイ36に収容されている用紙を、二次転写ベルト33と中間転写ベルト32との間及び定着装置34を経由して排紙トレイ37へ送るための、用紙搬送路35が設けられている。用紙搬送路35は、略鉛直方向に延びている。
【0038】
用紙搬送路35には、ピックアップローラ、搬送ローラ対54A,54B,54C、レジストローラ対55、及び上述の排紙ローラ対52が配置されている。ピックアップローラは、給紙トレイ36内の用紙を一枚ずつ用紙搬送路35へ繰り出す。搬送ローラ対54A,54B,54Cは、繰り出された用紙を用紙搬送路35に沿って搬送する。レジストローラ対55は、搬送されてきた用紙を所定のタイミングで二次転写ベルト33と中間転写ベルト311との間に導く。
【0039】
レジストローラ55は、感光体ドラム41や中間転写ベルト311の動作開始時には回転を停止している。中間転写ベルト311の回転に先立って給紙された用紙は、前端がレジストローラ55に突き当てられた状態で停止する。この後、レジストローラ55は、二次転写ベルト33と中間転写ベルト311とが圧接する位置で、用紙の前端部と中間転写ベルト311上に担持されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
【0040】
なお、画像形成ステーション21〜24の全てにおいて画像形成処理が行われるフルカラー画像形成処理時には、4個の一次転写ローラ32A〜32Dが中間転写ベルト311を全ての感光体ドラム41に圧接させる。一方、画像形成ステーション21のみにおいて画像形成処理が行われるモノクロ画像形成処理時には、画像形成ステーション21に対向する一次転写ローラ32Aのみが中間転写ベルト311を画像形成ステーション21の感光体ドラム41のみに圧接させる。
【0041】
プロセス制御用センサ39は、転写前帯電装置38と二次転写位置との間であって転写前帯電装置38に近接するように配置されている。また、プロセス制御用センサ39は、中間転写ベルト311にも近接している。この実施形態では、プロセス制御用センサ39は、駆動ローラ312の回転軸方向において中央部と端部との間に、1個備えられている。
【0042】
画像形成装置10は、用紙に画像を形成する画像形成処理の非実行中に、画像形成ステーション21〜24の駆動状態を制御するプロセス制御を行う。一例として、プロセス制御は、画像形成装置10の起動時、及び所定回数の画像形成処理毎に実行される。画像形成処理の実行中にはプロセス制御は実行されず、プロセス制御の実行中には画像形成処理は実行されない。
【0043】
プロセス制御では、中間転写ベルト311の外周面に、所定のパターンのトナー像が形成される。プロセス制御用センサ39は、プロセス制御の実行中に、中間転写ベルト311の外周面に担持されたトナー像の濃度を検出し、検出濃度を制御部100へ出力する。
【0044】
制御部100は、プロセス制御用センサ39から入力した検出濃度と予め記憶している基準値とを比較し、比較結果に基づいて画像形成ステーション21〜24の駆動状態を制御する。画像形成ステーション21〜24の駆動状態として、現像バイアス電圧(V)、及び露光装置43の露光条件即ちレーザデューティ(%)が挙げられる。
【0045】
プロセス制御が実行されることで、画像形成処理において中間転写ベルト311の外周面に形成されるトナー像の最高濃度及び中間調濃度が、正確に表現されるようになる。
【0046】
図2に示すように、画像形成処理の実行中とプロセス制御の実行中とで、用紙搬送、転写前帯電装置38の駆動、及びプロセス制御用センサ39の検出又は非検出の状態が異なる。具体的には、用紙搬送路35での用紙の搬送は、画像形成処理の実行中には行われる一方、プロセス制御の実行中には行われない。また、転写前帯電装置38は、画像形成処理の実行中には駆動する一方、プロセス制御の実行中には駆動しない。さらに、プロセス制御用センサ39は、画像形成処理の実行中には検出を行わない一方、プロセス制御の実行中には検出を行う。
【0047】
図3に示すように、プロセス制御用センサ39は、中間転写ベルト311に下方から対向するように配置されている。プロセス制御用センサ39に中間転写ベルト311から飛散したトナーが付着することでプロセス制御用センサ39の検出精度が低下するのを防ぐために、画像形成装置10は、カバー部材61を備えている。カバー部材61は、中間転写ベルト311に対してプロセス制御用センサ39を覆う閉位置と、プロセス制御用センサ39を露出する開位置とに変位することができる。制御部100は、カバー部材61を、プロセス制御の実行中には開位置に配置し、プロセス制御の非実行中即ち画像形成処理の実行中には閉位置に配置する。
【0048】
カバー部材61は、プロセス制御用センサ39を覆うことができるカバー部611、及びカバー部611を支持する支持部612を有しており、一例として断面L字状に形成されている。支持部612は、駆動ローラ312の回転軸方向においてプロセス制御用センサ39と重ならない位置で、中間転写ベルト311の移動方向91に沿う方向に変位自在に軸支されている。カバー部611は、プロセス制御用センサ39を覆うことができる長さまで、駆動ローラ312の回転軸方向に延びている。
【0049】
カバー部材61は、中間転写ベルト311に対してプロセス制御用センサ39を覆う閉位置から、中間転写ベルト311に対してプロセス制御用センサ39を露出するように中間転写ベルト311の移動方向91に沿う方向に変位することで、開位置に配置される。図3では、閉位置に配置された状態のカバー部材61を2点鎖線で示し、開位置に配置された状態のカバー部材61を実線で示している。
【0050】
カバー部材61を回転させるための軸は、駆動ローラ312の回転軸方向において画像形成領域の外側まで延ばされ、画像形成領域の外側に、カバー部材61の軸に対して回転させる方向に作用する図示しないソレノイド及びバネが配置されている。
【0051】
カバー部材61は、ソレノイドがオンされることで、閉位置から開位置へ変位する。また、カバー部材61は、開位置から閉位置へ変位する方向にバネによって付勢されており、ソレノイドがオフされるとバネの付勢力によって開位置から閉位置へ戻る。なお、カバー部材61が開位置から閉位置を超えてさらに変位しないように所定位置に止め具が設けられている。
【0052】
二次転写位置を経由する用紙搬送路35は、レジストローラ対55、駆動ローラ312と二次転写ベルト33、及び定着装置34の他に、用紙ガイドとして機能する側壁351,352,353によって構成されている。側壁352は、中間転写ベルト311及びプロセス制御用センサ39に近接して配置されている。側壁352は、中間転写ベルト311との間に用紙搬送路35を構成している。側壁352は、画像形成処理の実行中のみに中間転写ベルト311に対して用紙搬送路35を介して作用する。即ち、側壁352は、画像形成処理の実行中のみに、中間転写ベルト311に対して、用紙搬送路35を通すように用紙を供給する。用紙搬送路35は、画像形成処理の実行中のみに中間転写ベルト311に対して用紙を供給する作用領域である。側壁352は、用紙搬送路35を構成する領域構成部材として機能する。
【0053】
カバー部材61の少なくとも一部は、この実施形態では、開位置において用紙搬送路35内に配置される。用紙搬送路35の側壁351の一部は、カバー部材61の閉位置と開位置との間の変位を妨げないように切り欠かれている。用紙搬送路35の切り欠きは、用紙詰まりの原因とならないように、駆動ローラ312の回転軸方向において用紙搬送路35を搬送される用紙の幅より小さい。
【0054】
図4では、閉位置に配置された状態のカバー部材61Aを実線で示し、開位置に配置された状態のカバー部材61Aを2点鎖線で示している。
【0055】
図4に示すように、カバー部材61の少なくとも一部が開位置において用紙搬送路35内に配置されるので、中間転写ベルト311の移動方向91において、閉位置に配置されたカバー部材61の上流側端部と転写前帯電装置38との間隔L1、及び閉位置に配置されたカバー部材61の下流側端部と用紙搬送路35の側壁351との間隔L2のそれぞれが、カバー部材61の閉位置と開位置との間の変位寸法L3より小さくされている。上述の間隔L1,L2をカバー部材61の変位寸法L3より小さくしても、プロセス制御用センサ39を中間転写ベルト311に対して露出するようにカバー部材61を変位させることができるからである。
【0056】
中間転写ベルト311の移動方向91において、閉位置に配置されたカバー部材61の上流側端部と転写前帯電装置38との間隔L1、及び閉位置に配置されたカバー部材61の下流側端部と用紙搬送路35の側壁351との間隔L2のそれぞれが、カバー部材61の閉位置と開位置との間の変位寸法L3より小さいので、カバー部材61の少なくとも一部を開位置において用紙搬送路35内に配置することで、最も下流側に配置された画像形成ステーション24と二次転写位置との間隔を広げることなく、プロセス制御用センサ39を開閉することができる。
【0057】
また、カバー部材61が開位置に配置されるのはプロセス制御の実行中であって画像形成処理の非実行中なので、カバー部材61が開位置に配置されるときには用紙搬送路35に用紙は搬送されない。このため、カバー部材61の少なくとも一部が開位置において用紙搬送路35内に配置されても、画像形成処理の障害にならない。一方、カバー部材61の少なくとも一部が開位置において用紙搬送路35内に配置されることで、中間転写ベルト311の近傍にカバー部材61が変位するための領域を新たに設ける必要がないので、中間転写ベルト311の移動方向91に沿う方向の寸法が広がらない。具体的には、中間転写ベルト311の移動方向91において最も下流側に配置された画像形成ステーション24と二次転写位置との間にカバー部材61が変位するための領域を新たに設ける必要がないので、最も下流側に配置された画像形成ステーション24と二次転写位置との間隔が広がらない。
【0058】
したがって、プロセス制御用センサ39を開閉するカバー部材61を備えるにも関わらず、画像形成装置10の大型化、及び画像形成処理の開始から1枚目の画像形成処理が終了するまでの時間であるファーストコピータイムの延長を防止することができる。
【0059】
なお、プロセス制御用センサ39が駆動ローラ312の回転軸方向に複数(例えば、2個)備えられる場合、カバー部材61は、閉位置において複数のプロセス制御用センサ39の全てを覆う長さまで回転軸方向に延びるように構成することができる。複数のプロセス制御用センサ39を開閉するために1個のカバー部材61を変位させればよいので、カバー部材61を変位させるための駆動の制御を簡素化できる。
【0060】
また、プロセス制御用センサ39が駆動ローラ312の回転軸方向に複数備えられる場合、カバー部材61はプロセス制御用センサ39のそれぞれに対応して複数備えられ、複数のカバー部材61は閉位置と開位置とに互いに連動して変位するように構成することができる。一例として、複数のカバー部材61は、所定位置に回転自在に支持された単一の軸に固定され、軸を回転させることで全てのカバー部材61が連動して変位するように構成することができる。複数のプロセス制御用センサ39を開閉するために1個のカバー部材61を変位させれば全てのカバー部材61を変位させることができるので、カバー部材61を変位させるための駆動の制御を簡素化できる。
【0061】
さらに、中間転写ベルト311の移動方向91に沿う方向へのカバー部材61の変位は、軸を中心に回転する構成に限定されず、例えばスライドするように構成することもできる。また、カバー部材61は、断面L字状であることに限定されず、例えば支持部612を中間で屈折させた形状にすることもできる。
【0062】
図5に示すように、カバー部材61Aの少なくとも一部は、開位置において転写前帯電装置38と中間転写ベルト311との間に配置されるように構成することもできる。図5では、閉位置に配置された状態のカバー部材61Aを2点鎖線で示し、開位置に配置された状態のカバー部材61Aを実線で示している。
【0063】
転写前帯電装置38は、中間転写ベルト311との間に領域381を構成するように配置されている。転写前帯電装置38は、画像形成処理の実行中のみに中間転写ベルト311上のトナー像に対して領域381を介して電荷を付与する。
【0064】
転写前帯電装置38と中間転写ベルト311との間の領域381は、作用領域として使用される。転写前帯電装置38は、作用領域を構成する領域構成部材として機能する。
【0065】
カバー部材61Aが開位置に配置されるのはプロセス制御の実行中であって画像形成処理の非実行中なので、カバー部材61Aが開位置に配置されるときには転写前帯電装置38は駆動しない。このため、カバー部材61Aの少なくとも一部が開位置において転写前帯電装置38と中間転写ベルト311との間に配置されても、画像形成処理の障害にならない。
【0066】
一方、転写前帯電装置38はプロセス制御用センサ39と比較して中間転写ベルト311の移動方向91に沿う方向の長さが大きいので、転写前帯電装置38と中間転写ベルト311との間にはカバー部材61Aを配置するための十分なスペースがある。このため、カバー部材61Aの少なくとも一部が開位置において転写前帯電装置38と中間転写ベルト311との間に配置されることで、中間転写ベルト311の移動方向91において最も下流側に配置された画像形成ステーション24と二次転写位置との間にカバー部材61Aが変位するための領域を新たに設ける必要がなく、最も下流側に配置された画像形成ステーション24と二次転写位置との間隔が広がらない。
【0067】
図6に示すように、カバー部材61Bは、閉位置において用紙搬送路35の側壁351の一部を構成するようにすることができる。図6では、閉位置に配置された状態のカバー部材61Bを実線で示し、開位置に配置された状態のカバー部材61を2点鎖線で示している。
【0068】
カバー部材61Bが用紙搬送路35の側壁31の一部に兼用されるので、カバー部材61Bと用紙搬送路35の側壁351とが隣接するように設けられる場合よりも中間転写ベルト311の移動方向91に沿った方向のスペースを小さくすることができる。また、カバー部材61Bの少なくとも一部が開位置において用紙搬送路35内に配置されるが、カバー部材61Bを変位させるために用紙搬送路35の側壁351を移動させる必要がないので駆動手段等の部品点数の増加を防止でき、また、用紙搬送路35の側壁351に切り欠きを設ける必要もないので、製造工程を簡素化できる。
【0069】
図6に示す実施形態では、カバー部材61Bの少なくとも一部は、開位置において用紙搬送路35内に配置されるが、開位置において転写前帯電装置38と中間転写ベルト311との間に配置されるように構成することもできる。
【0070】
なお、この発明は、いずれかの色相の画像形成ステーション、例えばブラックの画像形成ステーション21を1個のみ備えた画像形成装置に適用することもできる。この実施形態では、感光体ドラム41が像担持体を構成する。転写前帯電装置38及びプロセス制御用センサ39は、感光体ドラム41に近接するとともに、互いに近接するように配置される。カバー部材61は、感光体ドラム21に対してプロセス制御用センサ39を覆う閉位置と、プロセス制御用センサ39を露出するように感光体ドラム21の回転方向に沿う方向に変位した開位置とに変位する。
【0071】
感光体ドラム41からトナー像を転写されるための用紙が感光体ドラム41へ向けて搬送される用紙搬送路は、画像形成処理の実行中のみに感光体ドラム41に対して用紙を供給する作用領域を構成する。用紙搬送路を構成する側壁は、作用領域を構成する領域構成部材として機能する。カバー部材61の少なくとも一部は、開位置において用紙搬送路内に配置される。
【0072】
また、転写前帯電装置38と感光体ドラム41との間の領域は、画像形成処理の実行中のみに感光体ドラム41上のトナー像に電荷を付与する作用領域を構成することができる。転写前帯電装置38は、作用領域を構成する領域構成部材として機能することができる。カバー部材61の少なくとも一部は、開位置において転写前帯電装置38と感光体ドラム41との間に配置することもできる。
【0073】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
10 画像形成装置
21〜24 画像形成ステーション(画像形成部)
311 中間転写ベルト(像担持体)
312 駆動ローラ
313 従動ローラ
32A〜32D 一次転写ローラ
33 二次転写ベルト
35 用紙搬送路(シート搬送路)
351 側壁(領域構成部材)
38 転写前帯電装置(領域構成部材)
39 プロセス制御用センサ(検出部)
61,61A,61B カバー部材
100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成プロセスを経て画像データに基づくトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が形成したトナー像を担持しつつ回転移動する像担持体と、
前記像担持体との間に所定の作用領域を構成するように配置された領域構成部材であってシートに画像を形成する画像形成処理の実行中のみに前記像担持体に対して前記作用領域を介して作用する領域構成部材と、
前記像担持体に近接して配置され、前記画像形成処理の非実行中に行われるプロセス制御であって前記画像形成部の駆動状態を制御するプロセス制御の実行中に前記像担持体に担持されたトナー像の濃度を検出する検出部と、
前記像担持体に対して前記検出部を覆う閉位置と前記検出部を露出するように前記像担持体の移動方向に沿う方向に変位した開位置とに変位するカバー部材と、を備え、
前記カバー部材の少なくとも一部は、前記開位置において前記作用領域内に配置される画像形成装置。
【請求項2】
前記領域構成部材は、前記像担持体が担持するトナー像を転写されるべく前記像担持体の表面へシートを供給するシート搬送路を構成する側壁であり、
前記カバー部材の少なくとも一部は、前記開位置において前記シート搬送路内に配置される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記閉位置において前記側壁の一部を構成する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記領域構成部材は、前記像担持体に担持されたトナー像の電荷を調整する転写前帯電装置であり、
前記カバー部材の少なくとも一部は、前記開位置において前記転写前帯電装置と前記像担持体との間に配置される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記像担持体の回転軸方向に複数備えられ、
前記カバー部材は、前記閉位置において複数の前記検出部の全てを覆う長さまで前記回転軸方向に延びる請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記像担持体の回転軸方向に複数備えられ、
前記カバー部材は、前記検出部のそれぞれに対応して複数備えられ、複数の前記カバー部材は前記閉位置と前記開位置とに互いに連動して変位する請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−59369(P2011−59369A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208913(P2009−208913)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】