説明

画像形成装置

【課題】大型の交換部材が収納された場合でも収納部にて交換部材の書き込み制御を、特別な構成を用いることなく収納部の開閉操作のみで実行できる構成を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ノズルに対する液体収納部材としてのインクカートリッジを挿脱可能に支持する収納部1A1を一部に備え、該収納部1A1表面には該収容部を覆うことが可能な開閉可能なカバー4を設けた画像形成装置1において、前記カバー4は、装置本体1Aに対して開閉可能に支持される開閉部40Aと、当該開閉部40Aに対して進退可能に設けられた進退部40Bと、を有し、前記進退部40Bは、前記開閉部40Aの閉動作により前記インクカートリッジが突き当たることに連動して前記収容部表面から外側に進出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、インクジェット記録装置におけるインクカートリッジの収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタ、ファクシミリ装置や複写装置あるいはプロッタさらにはこれら機能を併せ持つ複合機などの画像形成装置の一つに、インク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式によるインクジェット記録装置がある。
【0003】
この液体吐出記録方式のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する)を行ない、その型式として、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0004】
なお、本発明における液体吐出記録方式の画像形成装置としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体を対象として、インクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0005】
さらに、本発明の説明に用いるインクとは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、樹脂、薬品、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いられているものが含まれる。
【0006】
また、本発明で挙げる用紙とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0007】
この液体吐出記録方式の画像形成装置は、製本や各種印刷物を少量生産する為に使用される設備型のインクジェットプリンターの場合、高速で駆動させる為、サーマル型またピエゾ型のインクジェットヘッドを多数個配置し、紙搬送方向に対し直角方向の駆動(キャリッジ駆動)を持たず、紙搬送のみで画像を形成することができるようになっている。
【0008】
この種のインクジェット記録装置は、高速かつ低騒音であり、記録媒体の種類に制約が少なく、カラー化も容易であるなどの利点があることから、現在広く普及している。
【0009】
インクジェット記録装置では、消耗品であるインクが用いられており、インクはカートリッジなどに収容されてインクジェット記録装置本体内に収納されている。
【0010】
インクカートリッジは内部に収容されているインクが消費され終わると、装置本体側から取り出されて新品と交換される。
交換に際しては、装置本体側の収納部外表面に位置するカバーを開放することによりインクカートリッジが取り出されるようになっている例えば、特許文献1)。
【0011】
ところで、上記特許文献1に開示されているように、インクカートリッジは、収容されているインクの色情報や交換時期などの色情報が書き込まれるようになっており、情報を書き込まれたICチップがカートリッジの一部に設けられている。
ICチップへの情報書込を行うのはインクカートリッジを収納している装置本体側のカバーが閉じられている状態で行われるため、カバーが開放される際には書込を禁止することが必要となる。
【0012】
一方、使用頻度の高い色のインクカートリッジを対象として、そのカートリッジの交換頻度を少なくするために、カートリッジを大型のものとする場合がある。
しかし、カートリッジの一つでも他のカートリッジよりも大型のものが用いられる場合、他のカートリッジの収納スペースを設定した収納部に大型のカートリッジを配置すると、この大型のカートリッジが他のカートリッジよりも突出してしまうことがあり、これによってカバーを完全に閉じることができなくなる虞がある。
このようにカバーが閉じられていないと、上述したICチップへの情報書込が行えなくなり、印字処理が行えなくなる虞がある。
【0013】
そこで、特許文献1記載の技術では、開閉可能なカバーとは別に、大型のインクカートリッジを装填した際にも操作が可能な制御レバーを設け、制御レバーの操作状態によってICチップへの情報書き込み制御が行えるようにした構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献1開示の構成では、ICチップへの書き込み制御を行うための構成として、装置本体の一部を開閉可能に設けたカバーとは別の構造が必要となる。このため、構造の複雑化は否めない。
しかも、ICチップへの書き込み制御はカバーの開閉動作によるのでなく、制御レバーを用いることから、カバーが開放した状態のまま、換言すれば、カバーが完全に閉じられないままで放置されることもある。従って、カバーの開閉操作に応じてICチップへの書き込み制御を行えるようにすることは期待できない。
【0015】
本発明の目的は、上記従来の画像形成装置、特に挿脱可能な交換部材のうちで大型の交換部材が収納された場合でも収納部にて交換部材の書き込み制御を特別な構成を用いることなく収納部の開閉操作のみで実行できる構成を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)液滴吐出ノズルに対する液体収納部材としてのインクカートリッジを挿脱可能に支持する収納部を一部に備え、該収納部表面には該収容部を覆うことが可能な開閉可能なカバーを設けた画像形成装置において、
前記カバーは、装置本体に対して開閉可能に支持される開閉部と、当該開閉部に対して進退可能に設けられた進退部と、を有し、
前記進退部は、前記開閉部の閉動作により前記インクカートリッジが突き当たることに連動して前記収容部表面から外側に進出することを特徴とする画像形成装置。
【0017】
(2)前記カバーは、閉じ位置にあるときに前記収容部表面と面一状をなし、このときに、前記インクカートリッジへの書き込み制御を可能にするスイッチを作動させる作動部を備えていることを特徴とする(1)記載の画像形成装置。
【0018】
(3)前記カバーの一部に設けられている進退部は、該カバーの本体に形成された嵌合部に対して摺動可能に嵌合された枠体で構成され、周縁部には、前記収容部表面から進出した際に前記嵌合部周縁部との間の隙間を覆うことができる片部が設けられていることを特徴とする(1)または(2)記載の画像形成装置。
【0019】
(4)前記カバーの本体側および前記進退部には、前記進退方向に沿って複数の係止部が設けられ、該係止部に係合することで進退方向の位置決めが行われることを特徴とする(1)乃至(3)のうちの一つに記載の画像形成装置。
【0020】
(5)前記係止部は凸部で構成され、該係止部に対する係合部は撓み変形可能な片部が用いられ、該片部が前記凸部を乗り越えた後、形状復元することにより該係止部と係合した状態を維持する構成であることを特徴とする(4)記載の画像形成装置。
【0021】
(6)前記進退部は、前記カバーの本体が開放されてその開放端が着地した際に着地面に押し動かされて該カバーの本体と同一面となる位置まで摺動可能であることを特徴とする(1)乃至(5)のうちの一つに記載の画像形成装置。
【0022】
(7)前記進退部が透明体であることを特徴とする(1)乃至(6)のうちの一つに記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、カバーが装置筐体に対して開閉可能に設けられている開閉部とこの開閉部に対して進退可能な進退部を備え、この進退部が装置内に格納されるインクカートリッジなどの大きさが大きい場合にその大型のインクカートリッジによって押し動かされる。これにより、大型のインクカートリッジが格納された場合でもカバーの一部のみが外部に進出するようにしてカバーが閉じられなくなるのを防止することができる。この結果、カバーの閉じ状態でインクカートリッジに対する書き込み制御を行う場合の作動を保障することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による画像形成装置の外観図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に設けられているインクカートリッジ収納部を開放した状態を示す外観図である。
【図3】図2に示した状態でのインクカートリッジ収納部の拡大図である。
【図4】図2に示したインクカートリッジ収納部に用いられるカバーの分解斜視図である。
【図5】図4に示したカバーの組み立て状態および作用を説明するための斜視図である。
【図6】図5中符号(6)で示す箇所の拡大図である。
【図7】図5中、符号(7)で示す方向の矢視図である。
【図8】図5に示したカバーの正面図である。
【図9】図2に示したインクカートリッジの収納部に大型のインクカートリッジを収納した状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示した大型のインクカートリッジを用いた場合のカバーの閉じ状態を示す斜視図である。
【図11】図10に示したカバーが閉じ状態から開放位置に移動した状態を示す斜視図である。
【図12】図10に示すカバーの開放状態での作用を説明するための斜視図である。
【図13】図1に示した画像形成装置における要部変形例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図に示す実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による画像形成装置の一つである、インクジェット記録装置1の外観図である。
同図に示すインクジェット記録装置1は、図示しないが、装置本体の筐体1A内に色毎の液滴、つまりインクを吐出可能な複数の液滴吐出ノズルを備えた記録ヘッドが備えられており、液滴吐出ノズルへは、後述するが、筐体1Aの壁面の一部に設けられている収納部に格納されたインクカートリッジからインクが供給されるようになっている。
【0026】
筐体1Aには、図1において符号Fで示す正面側に排紙口1Bが形成されており、排紙口1Bの下方には給紙カセット1Cが挿脱可能に設けられている。
排出口1Bの内側には、詳細を説明しないが、排出される用紙の排出方向先端を衝止可能なエンドフェンス2および用紙の幅方向両端を規制するサイドフェンス3がそれぞれ摺動可能に設けられている。
【0027】
一方、筐体1Aの正面において用紙の幅方向一方側には、筐体壁面の一部をなすカバー4が開閉可能に設けられている。
カバー4は、符号4Aで示すヒンジ軸が筐体1Aの正面壁内部に支持されることにより開閉することができるようになっている。これにより、閉じた状態にあるときには図1に示すように筐体1Aの正面側壁面を構成し、開放されたときには、図2に示すようにインクカートリッジY1,C1,M1,K1の収納部1A1を外部に露呈させることができる。なお、図2においてインクカートリッジに付した符号Y,C,M,Kは、イエロー、シアン、マゼンタそしてブラックを意味している。
【0028】
インクカートリッジの収納部1A1は、全てのインクカートリッジを対象として、同じ長さの奥行きを持たせたスペースで構成されており、その下方には廃液タンク5の収納部1A2が設けられている。
インクカートリッジY1,M2,C1およびK1は、カバー4近傍の拡大図である図3に示すように、縦方向両側面が収納部1A1の天井内面および底盤内面にそれぞれ設けられているガイド部材1A3に当接することでガタツキなどが生じないようにガイドされると共に収容部1A1内で定置されるようになっている。
【0029】
図3において、カバー4の内側にはインクカートリッジに設けられているICチップへの情報書込を可能にするための閉じ状態検知機構が設けられている。
つまり、カバー4の内側面にはインクカートリッジの収納部側に向けて突出する突片で構成されたスイッチ作動部4Bが設けられており、カバー4の閉じ状態時にスイッチ作動部4Bと対向する筐体1A側には、スイッチ作動部4Bにより押圧されることでオン動作が可能なマイクロスイッチ6が配置されている。
【0030】
インクカートリッジに設けられているICチップには、色情報や交換磁気情報などが書き込まれるようになっており、インクカートリッジが収納部1A1に収納され終わった状態に相当するカバー4の閉じ状態時に各情報の書き込み制御が行われるようになっている。
【0031】
閉じ検知状態検知機構は、カバー4の完全な閉じ状態、換言すれば、各インクカートリッジが確実に所定の収納位置に格納されたことを検知するための部材としても用いられる。
【0032】
一方、筐体1Aに対して開閉可能に設けられているカバー4は、図4以降の図に示す構成が用いられている。
図4は、カバー4の分解斜視図であり、同図においてカバー4は、筐体1Aに対して開閉可能に支持される開閉部本体40Aと開閉部本体40Aの一部に形成された嵌合部に嵌合して開閉部本体40Aに対して進退可能な進退部40Bとで構成されている。
【0033】
進退部40Bは、開閉部本体40Aの嵌合部である開口部40A1内に嵌合した際に重ねた状態となる2重構造とされている。開閉部本体40Aには、ヒンジ軸4A1(図3参照)の軸支部として軸挿通孔を有するボス40A2が揺動基端内面に設けられている。
【0034】
開閉部本体40Aは、開閉方向(矢印Rで示す方向)の一面が開放され、その周縁のうちで揺動基端側(ボス部40A2が設けられている側の端部)を除く周縁が片部で囲まれた直方体形状をなし、開放面と対向する面には、上述したように、進退部40Bが嵌合可能な開口部40A1が形成されている。開口部40A1の周辺は複数のリブにより剛性低下を抑えられている。
【0035】
進退部40Bは、嵌合部となる開閉部本体40Aの開口部40A1の内縁に沿う形状の直方体形状からなる枠体で構成され、開口部40A1の内縁に対向する周縁のうちで、開閉部本体40Aの揺動基端側に相当する片部を除く縁部には、開口部40A1への嵌合時のガイド部を兼ねて開口部40A1周縁との間の隙間を覆うことができる片部40B1が設けられている。
【0036】
枠体で構成されている進退部40Bは、片部40B1が開閉部本体40Aの開口40A1内周縁に当接することにより、図4において矢印Sで示す方向に摺動することで開閉部本体40Aに対して進退可能な部材として用いられるようになっている。
【0037】
進退部40Bにおいて周縁のうちで、進退方向(矢印Sで示す方向)の一方端、つまり、進出する方向(図4において矢印S’で示す方向)の前方端には片部40B1と一体で片部の外側に張り出した平板により形成されている蓋部40B2が設けられている。
【0038】
蓋部40B2は、開閉部本体40Aに有する開口部40A1の周縁外表面に密着することで開閉部本体40Aの非開口部と面一、つまり、図5(A)に示すように、開閉部本体40Aの揺動基端側の外表面と面一となることができるようになっている。図5(B)は、進退部40Bが開閉部本体40Aから外側に向けて進出した状態を示している。
【0039】
進退部40Bは、開口部40A1に対しての進出位置と退出位置とを規定されるようになっており、そのための構成として、係止部とこれに係合する片部とが用いられる。以下、この構成について説明する。
【0040】
図6は、図5に示した進退部40Bが、開閉部本体40Aの開口部40A1に嵌合する位置に退出した状態(図6(A))と、開口部40A1から外側に進出した状態(図6(B))にあるときを内側から見た図である。
同図において、開閉部本体40Aの開口部40A1近傍には、縦方向に沿って複数箇所、図6では縦方向の2箇所において、図7に示すように、進退部40Bの進退方向に沿って進出位置および退出位置に対応させた凸部からなる係止部40A3、40A3’が設けられている。
【0041】
図7において係止部40A3,40A3’は、縦方向両側面を開閉部本体40A側に有する支持壁40A4と一体化されることで、後述するが、進退部40B側に位置する係合片40B3との係合時の変形を抑止されるようになっている。
【0042】
一方、進退部40Bには、縦方向で開閉部本体40A側の係止部40A3、40A3’と対向する位置に、図7に示すように、片部40B1に対して独立して揺動可能な係合片40B3が設けられている。
係合片40B3は、片部40B1にスリット40B1Aを形成することで片部40B1に対して片持ち梁部をなし、その先端が片部40B1と独立して揺動でき、開閉部本体40A側に設けてある係止部40A3,40A3’に乗り上げることができる。
【0043】
係止部40A3、40A3’のいずれかに乗り上げることができる係合片40B3は、乗り上げた際に生じる形状復元力を利用して係止部40A3,40A3’と係合を維持できるようになっており、また、その先端が、乗り上げと係合とを可能にするための鉤状断面で構成されている。
【0044】
係止部40A3,40A3’のうちで、図7において符号40A3で示す係止部は、進退部40Bが開閉部本体40Aの開口部40A1から外側に進出する方向(図7において矢印S’で示す方向)の下流側に位置しており、該方向で係止部40A3に隣接する位置には進退部40Bの抜け止めのために係合片40B3が嵌合できる凹部を構成する壁部40A3Aが設けられている。
【0045】
図8は、進退可能名部分40Bにおける係合片40B3と開閉部本体40A側の係止片40A3,40A3’との係合位置関係を説明するための平面視的な断面図であり、図8(A)は、進退部40Bが退出位置にあって、開閉部本体40Aの外表面と面一となる時を、そして図8(B)は、進退部40Bが開閉部本体40Aから外側に進出した時を示している。図8(B)に示す進出状態は、後述するが、インクカートリッジに押し動かされることで設定されるようになっている。なお、矢印Sは進退部40Bの進退方向を示している。
【0046】
図8(A)に示す退出時には、開閉部本体40A側の係止部のうちで、進退部40Bの進出方向(図8において矢印S’で示す方向)上流側に位置する係止部40A3’と進退部40B側の係合片40B3とが係合している。
図8(B)に示す進出時には、開閉部本体40A側の係止部のうちで、進退部40Bの進出方向(図8において矢印S’で示す方向)下流側に位置する係止部40A3と進退部40B側の係合片40B3とが係合し、係止部40A3に隣接する開閉部本体40A側の壁部40A3Aとで形成された凹部に嵌合することで進出位置に保持されて脱落しない状態を維持されている。
【0047】
進退部40Bの進出動作は、進退動作が開閉部本体40Aの収容部40A1内に格納されるインクカートリッジの大きさを利用して行われる。つまり、収容部40A1内に格納されるインクカートリッジには、交換頻度を少なくする目的で大型容量のものを用いることがある。
【0048】
図8(B)、図9には、インクカートリッジのうちで、使用頻度の高い色であるブラックインクを収容しているインクカートリッジ(便宜上、符号T’で示す)を、他のインクカートリッジ(便宜上、符号Tで示す)よりも大型とした場合が示されている。
この場合、インクカートリッジT’は、挿脱方向(図9において矢印Pで示す)での長さも他のインクカートリッジTより長くされて、他のインクカートリッジTよりも外側に張り出し、いわゆる、他のインクカートリッジTの先端よりも、はみ出ている。
【0049】
本実施例では、このようなインクカートリッジT’により、図8(B)に示すように、進退部40Bを押し動かすことで進退部40Bの進出動作を行わせるようになっている。図10は、進退部40Bが進出位置にあるときの外観図である。
【0050】
また、進退部40Bは、図11に示すように、カバー4が開放されて机上表面等に突き当たることで退出位置に移動することができる。
つまり、開閉カバー4は、開放された際に進退部40Bが机上などの表面に突き当たることで、ほぼ90度の開放角が得られ、インクカートリッジの収容部40A1および廃液タンク5の収容部40A2を外部に露呈することができる。
このようなカバー4の開放時には、図12に示すように、廃液タンク5を、矢印P’で示す方向に沿って外部に引き出せるようになっている。
【0051】
廃液タンク5は、次の理由で装填されている。つまり、インクジェット記録装置1では、内蔵されている記録ヘッドにインクの不吐出状態が発生した時又はそれを予防するために記録ヘッド内のインクを加圧あるいは吸引してノズルから流出させることによりノズルの目詰まりやインク流路中に混入した気泡や異物を除去して記録ヘッドの維持回復動作を行なうための維持回復機構が配設されている。この維持回復機構には、近接位置に廃液タンク5が設けられており、回復動作により記録ヘッドのノズルから流出したインクは、維持回復機構により回収されて廃液タンク5内に貯留される。廃液タンク5は、廃インクにより満杯になると外部に取り出されて交換される部材である。このような理由に基づき、カバー4が開放された際には、廃液タンク5の取り出しも容易に行える必要がある。
【0052】
以上のような実施例においては、インクカートリッジの大きさが異なる場合においても、カバー4の開閉部本体40Aから進退部40Bを進退させることによりカバー4を確実に閉じることができ、これによりインクカートリッジへの書き込み制御を行うためのスイッチを確実に作動させることができる。
【0053】
従って、本実施例では、カバーの一部を工夫するだけの簡単な構成により、書き込み制御のための特別な部材の設置や複雑な構造さらにはカバーの開閉操作以外の特別な操作等を要求する必要がない。オペレータにとっては、大きさの異なるインクカートリッジを装填した場合でもカバー4を通常の開閉操作のみで印字記録作業に移ることができるので、誤操作などに気遣う必要がないことから操作性の向上が期待できる。
【0054】
次に、上述した実施例の要部変形例について説明する。
図13に示す構成は、カバー4の一部を透明体としたことを特徴としている。
図13において、カバー4の開閉部本体40Aに対して進退可能に設けられている進退可能な部分(便宜上、符号40B’で示す)は、透明体が用いられている。
この構成においては、インクカートリッジを交換する場合、交換対象のインクカートリッジを外部から確認しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット記録装置
1A 筐体
4 カバー
4A ヒンジ軸
4B スイッチ作動部
5 廃液タンク
6 閉じ検知スイッチ
40A 開閉部本体
40A1 開口部
40A3,40A3’ 係止部
40B、40B’ 進退部
40B3 係合片
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2003−266732号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ノズルに対する液体収納部材としてのインクカートリッジを挿脱可能に支持する収納部を一部に備え、該収納部表面には該収容部を覆うことが可能な開閉可能なカバーを設けた画像形成装置において、
前記カバーは、装置本体に対して開閉可能に支持される開閉部と、当該開閉部に対して進退可能に設けられた進退部と、を有し、
前記進退部は、前記開閉部の閉動作により前記インクカートリッジが突き当たることに連動して前記収容部表面から外側に進出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カバーは、閉じ位置にあるときに前記収容部表面と面一状をなし、このときに、前記インクカートリッジへの書き込み制御を可能にするスイッチを作動させる作動部を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カバーの一部に設けられている進退可能な部分は、該カバーの本体に形成された嵌合部に対して摺動可能に嵌合された枠体で構成され、周縁部には、前記収容部表面から進出した際に前記嵌合部周縁部との間の隙間を覆うことができる片部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カバーの本体側および前記進退可能な部分には、前記進退方向に沿って複数の係止部が設けられ、該係止部に係合することで進退方向の位置決めが行われることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記係止部は凸部で構成され、該係止部に対する係合部は撓み変形可能な片部が用いられ、該片部が前記凸部を乗り越えた後、形状復元することにより該係止部と係合した状態を維持する構成であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記進退可能な部分は、前記カバーの本体が開放されてその開放端が着地した際に着地面に押し動かされて該カバーの本体と同一面となる位置まで摺動可能であることを特徴とする請求項1乃至5のうちの一つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記進退可能な部分が透明体であることを特徴とする請求項1乃至6のうちの一つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−126017(P2012−126017A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279475(P2010−279475)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】