説明

画像形成装置

【課題】媒体が転写搬送部材から帯状搬送部材に搬送される際に発生する画質低下を低減すること。
【解決手段】転写領域(Q4)を通過する媒体(S)に像保持体(B)の可視像を転写する転写部材(T2b)と、転写部材(T2b)と支持部材(1)との間に張架されて表面に媒体(S)を保持して下流側に搬送する無端帯状の転写搬送部材(2)と、転写搬送部材(2)に対して下流側に配置されて媒体(S)を表面に保持して搬送する無端状の帯状搬送部材(6c)と、転写搬送部材(2)と帯状搬送部材(6c)との間に配置されて通過する媒体(S)の除電を行う除電部材(13)と、を備えた画像形成装置(U)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、可視像が媒体に転写される転写領域において、媒体を表面に保持して搬送する無端帯状の部材、いわゆる転写搬送ベルトを使用する構成が知られている。前記転写搬送ベルトを備えた構成において、転写領域を通過する際に帯電した媒体を除電するための技術として、以下の特許文献1〜3記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1としての特許第3829965号公報には、転写ベルト(22)の下流側に配置され且つ転写材(P)をガイドする第1ガイド(40)と、第1ガイド(40)の下流側に配置された第2ガイド(41)と、の間に、除電針または除電ブラシにより構成された除電部材(42)を配置して、転写材(P)の除電を行う構成が記載されている。
特許文献2としての特許第3850597号公報には、転写ベルト(4)の下流側に配置され且つ転写材(16)をガイドするガイド部材(18)において、転写材(16)の搬送方向に対してガイド部材(18)の中央部に、除電針(36b)により構成された除電部材(36)を配置して、転写材(16)の除電を行う構成が記載されている。
【0004】
特許文献3としての特許第4107986号公報には、転写ベルト(31)の下流側に配置され且つ用紙(P)をガイドする用紙搬送ガイド(6)において、用紙(P)の搬送方向に対して用紙搬送ガイド(6)の下流端部に、除電針(8a)により構成された除電部材(8)を配置して、用紙(P)の除電を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3829965号公報(「0031」〜「0059」、図2〜図18)
【特許文献2】特許第3850597号公報(図1〜図3、図5、図6)
【特許文献3】特許第4107986号公報(図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、媒体が転写搬送部材から帯状搬送部材に搬送される際に発生する画質低下を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の発明の画像形成装置は、
表面に媒体に転写される可視像を保持する像保持体と、
前記像保持体に対向して配置されて前記像保持体と対向する転写領域を通過する媒体に前記像保持体の可視像を転写する転写部材と、前記転写部材に対して前記媒体の搬送方向の下流側に配置された支持部材と、前記転写部材と前記支持部材との間に張架されて表面に前記媒体を保持して媒体搬送方向の下流側に搬送する無端帯状の転写搬送部材と、を有する転写搬送装置と、
前記転写搬送部材に対して前記媒体の搬送方向の下流側に配置されて、未定着の可視像が転写された媒体を表面に保持して下流側に搬送する無端状の帯状搬送部材を有する下流側の搬送装置と、
前記転写搬送部材と前記帯状搬送部材との間に配置されて、通過する媒体の除電を行う除電部材と、
前記下流側の搬送装置に対して前記媒体の搬送方向の下流側に配置されて、前記媒体表面の未定着の可視像を定着させる定着装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
通過する媒体に対して非接触の状態で配置された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、
先端が前記媒体に対向して配置された鋸歯形状の前記除電部材、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、
複数の導電性の毛を有する刷毛状の前記除電部材、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置において、
接地された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記媒体を除電させる除電用の電圧が印加された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記除電部材の上端よりも上方に配置された第1の案内面を有し、前記除電部材と前記転写搬送部材との間に配置されて、前記転写搬送部材から送られた媒体の下面を案内可能な第1の案内部材と、
前記第1の案内面よりも下方且つ前記帯状搬送部材の上流端の高さよりも上方に配置された第2の案内面を有し、前記除電部材と前記帯状搬送部材との間に配置されて、媒体の下面を案内可能な第2の案内部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像形成装置において、
前記除電部材の前記媒体側の先端が、前記第1の案内面と同一または媒体から離れる側の位置に配置されたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の画像形成装置において、
前記転写搬送装置と前記下流側の搬送装置との間に跨った媒体の位置に対して、前記除電部材の前記媒体側の先端および前記第1の案内面が、同一または離れた位置に配置されたことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記転写搬送部材が媒体を搬送する速度に比べて、媒体の搬送速度が高速に設定された前記帯状搬送部材、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記媒体の搬送方向に沿って配置された複数の前記帯状搬送部材を有する前記下流側の搬送装置と、
前記複数の帯状搬送部材どうしの間に配置されて、通過する媒体の除電を行う第2の除電部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成装置において、
前記複数の帯状搬送部材の中で、媒体搬送方向の最上流に配置された帯状搬送部材の媒体の搬送速度が、前記転写搬送部材の媒体の搬送速度以上に設定され、且つ、
前記複数の帯状搬送部材の中で、媒体搬送方向の最下流に配置された帯状搬送部材の媒体の搬送速度が、前記転写搬送部材の媒体の搬送速度以下に設定された
ことを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項11または12に記載の画像形成装置において、
前記複数の帯状搬送部材の中で媒体搬送方向の最上流に配置された帯状搬送部材と、前記転写搬送部材と、の間に配置され、先端が前記媒体に対向して配置された鋸歯形状の前記除電部材と、
前記複数の帯状搬送部材どうしの間に配置され、複数の導電性の毛を有する刷毛状の前記第2の除電部材と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、転写搬送部材と帯状搬送部材との間に除電部材が配置されない構成に比べて、媒体が転写搬送部材から帯状搬送部材に搬送される際に発生する画質低下を低減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、非接触の除電部材を有しない構成に比べて、確実に除電を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、鋸歯状の除電部材で除電を行うことができる。
請求項4に記載の発明によれば、刷毛状の除電部材で除電を行うことができる。
請求項5に記載の発明によれば、除電部材を接地しない場合に比べて、構成を簡素化でき、費用を節減できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、除電用の電圧が印加されない場合に比べて、除電性能を制御することができる。
請求項7に記載の発明によれば、第2の案内面が第1の案内面よりも下方に配置されない場合に比べて、媒体が転写搬送部材から確実に剥離でき且つ次の帯状搬送部材に滑らかに着地することができ、媒体が帯状搬送部材に移動する際の衝撃を低減できる。
請求項8に記載の発明によれば、除電部材の先端が第1の案内面よりも突出している場合に比べて、除電部材の先端に媒体が引っ掛かることを低減できる。
請求項9に記載の発明によれば、跨った媒体の位置に対して第1の案内面および除電部材が突出する場合に比べて、第1の案内面および除電部材が媒体に接触して像乱れが発生することを低減できる。
【0022】
請求項10に記載の発明によれば、転写搬送部材と媒体との間で発生する摩擦帯電を除電部材で除電することができる。
請求項11に記載の発明によれば、複数の除電部材を有しない場合に比べて、各帯状搬送部材における画質低下を低減することができる。
請求項12に記載の発明によれば、複数の帯状搬送部材を介して媒体の搬送速度を減速できると共に、各帯状搬送部材と媒体との間で発生する摩擦帯電を複数の除電部材で除電することができる。
請求項13に記載の発明によれば、最上流において除電性能の高い鋸歯形状の除電部材で除電でき、下流側では除電性能が鋸歯形状の除電部材よりも低い刷毛状の第2の除電部材で除電できることによって、除電部材通過時の急激な除電による画像乱れを起こすことなく、帯状搬送部材に媒体が着地するときや帯状搬送部材から媒体が剥離するときの画像乱れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は実施例1の転写領域から定着領域における搬送系の要部説明図である。
【図3】図3は実施例1の最上流の除電部材の要部説明図である。
【図4】図4は実施例1の転写搬送部材の下流側に隣接して配置された除電部材の説明図である。
【図5】図5は実施例1の吸着搬送ベルトどうしの間に配置された除電部材の説明図である。
【図6】図6は転写搬送ベルトにおける剥離放電の説明図であり、図6Aはテンションラインの説明図、図6Bは剥離放電の説明図である。
【図7】図7は実施例1の画質劣化の説明図である。
【図8】図8は実施例1の実験結果の説明図であり、縦軸に用紙帯電量を取り、横軸に測定された位置を取ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、画像形成装置Uは、操作部の一例としてのユーザインタフェースUI、画像読取部の一例としてのスキャナ装置U1、給紙装置U2、画像形成装置本体U3、および用紙排出部U4を有している。
【0026】
前記ユーザインタフェースUIは、入力部の一例としてのコピースタートキー、コピー枚数設定キー、テンキー等や、表示部の一例としての表示パネルUI1を有している。
前記スキャナ装置U1は、図示しない原稿を読取って画像情報に変換し、画像形成装置本体U3に入力する。
給紙装置U2は、給紙部の一例としての複数の給紙トレイTR1〜TR4と、前記各給紙トレイTR1〜TR4に収容された媒体の一例としての記録用紙Sを取り出して画像形成装置本体U3に搬送する給紙路SH1と、を有する。
【0027】
図1において、画像形成装置本体U3は、制御部の一例としてのコントローラCや、前記制御部Cにより制御されて画像形成装置本体U3の各部材に給電する電源回路E等を有する。コントローラCは、スキャナ装置U1で読み取られた原稿の画像情報や、画像形成装置Uに接続された図示しない情報送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータから送信された画像情報が送信される。
前記コントローラCは、受信した画像情報を、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の印刷用の情報に処理して、潜像書込装置の駆動回路の一例としてのレーザ駆動回路Dに出力する。レーザ駆動回路Dは、コントローラCから入力されたレーザ駆動信号を予め設定された時期に、各色の潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。
【0028】
各潜像形成装置ROSy〜ROSkの下方には、Y,M,C,Kの像保持体ユニットUy,Um,Uc,Ukが配置されている。
図1において、K:黒の像保持体ユニットUkは、像保持体の一例としての感光体ドラムPkと、帯電器の一例としてのコロトロンCCkと、像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリーナCLkとを有する。そして、他の色Y,M,Cの像保持体ユニットUy,Um,Ucも、感光体ドラムPy,Pm,Pc、コロトロンCCy,CCm,CCc、感光体クリーナCLy,CLm,CLcを有する。
なお、実施例1では、使用頻度の高く表面の磨耗が多いK色の感光体ドラムPkは、他の色の感光体ドラムPy,Pm,Pcに比べて大径に構成され、高速回転対応および長寿命化がされている。
【0029】
感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkは、それぞれコロトロンCCy,CCm,CCc,CCkにより一様に帯電された後、前記潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの出力する潜像書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkにより、感光体ドラムPy〜Pkの表面に静電潜像が形成される。前記感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkの表面の静電潜像は、現像器Gy,Gm,Gc,Gkに設けられた現像部材の一例としての現像ロールR0により、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の各色の現像剤で可視像の一例としてのトナー像に現像される。
【0030】
感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面上のトナー像は、一次転写器の一例としての1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより、一次転写領域Q3において、中間転写体の一例であって、像保持体の一例としての中間転写ベルトB上に順次重ねて転写され、中間転写ベルトB上に多色画像、いわゆる、カラー画像が形成される。中間転写ベルトB上に形成されたカラー画像は、2次転写領域Q4に搬送される。
なお、黒画像データのみの場合はK:黒の感光体ドラムPkおよび現像器Gkのみが使用され、黒のトナー像のみが形成される。
1次転写後、感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkの表面に残留した残留トナーは感光体ドラム用のクリーナCLy,CLm,CLc,CLkによりクリーニングされる。
前記各像保持体ユニットUy,Um,Uc,Ukと現像装置の一例としての現像器Gy,Gm,Gc,Gkとにより、可視像形成部の一例としてのトナー像形成部材Uy+Gy,Um+Gm,Uc+Gc,Uk+Gkが構成されている。
【0031】
画像形成装置本体U3の上部には、補給装置の一例としてのトナーディスペンサーU3aが配置されており、トナーディスペンサーU3aには、現像剤の収容容器の一例としてのトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkが着脱可能に装着されている。画像形成に伴って現像器Gy〜Gkにおいてトナーが消費されると、各トナーカートリッジKy〜Kkから各現像器Gy〜Gkにトナーが供給される。
【0032】
前記感光体ドラムPy〜Pkの下方に配置された中間転写ベルトBは、中間転写体の駆動部材の一例としてのベルト駆動ロールRdと、張力付与部材の一例としてのテンションロールRtと、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRwと、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRfと、二次転写領域の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、により張架されている。そして、前記中間転写ベルトBは、ベルト駆動ロールRdの駆動により矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
前記ベルト駆動ロールRd、テンションロールRt、ウォーキングロールRw,アイドラロールRf、バックアップロールT2aにより、実施例1の中間転写体の支持部材の一例としてのベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2aが構成されている。また、前記中間転写ベルトBやベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2a、1次転写ロールT1y〜T1kにより、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが構成されている。なお、実施例1のベルトモジュールBMは、画像形成装置の本体U3に対して、着脱、交換が可能なユニットにより構成されている。
【0033】
前記バックアップロールT2aの下方には、転写搬送装置の一例としての2次転写ユニットUtが配置されている。2次転写ユニットUtは、2次転写部材の一例として、バックアップロールT2aに対向して配置された2次転写ロールT2bを有し、2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと対向する領域により2次転写領域Q4が構成されている。また、前記バックアップロールT2aには、電圧印加用の接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触しており、前記ロールT2a〜T2cにより2次転写器T2が構成されている。
前記コンタクトロールT2cには、コントローラCにより制御される電源回路Eから予め設定された時期に、トナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
【0034】
前記ベルトモジュールBM下方には用紙搬送路SH2が配置されている。前記給紙装置U2の給紙路SH1から給紙された記録用紙Sは、前記用紙搬送路SH2に搬送され、給紙時期の調節部材の一例としてのレジロールRrにより、トナー像が2次転写領域Q4に搬送されるのに時期を合わせて送り出され、媒体案内部材の一例としての転写前ガイドSG1に案内されて、2次転写領域Q4に搬送される。
前記中間転写ベルトB上のトナー像は、前記2次転写領域Q4を通過する際に、前記2次転写器T2により記録用紙Sに転写される。なお、カラー画像の場合は中間転写ベルトB表面に重ねて1次転写されたトナー像が一括して記録用紙Sに2次転写される。
【0035】
2次転写後の前記中間転写ベルトBは、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBにより清掃、すなわち、クリーニングされる。なお、前記2次転写ロールT2bは、中間転写ベルトBと離隔および接触可能に支持されている。
前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1k、中間転写ベルトB、二次転写器T2、ベルトクリーナCLB等により、感光体ドラムPy〜Pk表面の画像を記録用紙Sに転写する転写装置T1+B+T2+CLBが構成されている。
【0036】
トナー像が2次転写された前記記録用紙Sは、下流側の搬送装置の一例としての搬送ベルトBHにより、下流の用紙排出部U4内に配置された定着装置Fに搬送される。前記定着装置Fは、加熱定着部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧定着部材の一例としての加圧ロールFpとを有し、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する領域により定着領域Q5が形成されている。
前記記録用紙S上のトナー像は定着領域Q5を通過する際に定着装置Fにより加熱定着される。定着装置Fでトナー像が定着された記録用紙Sは、排出部の一例としての排出トレイTRhに排出される。
前記符号SH1、SH2等により用紙搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,Ra,Rr,SGr,BH等により用紙搬送装置SUが構成されている。
【0037】
(転写−定着間の搬送系の説明)
図2は実施例1の転写領域から定着領域における搬送系の要部説明図である。
図1、図2において、実施例1の2次転写ロールT2bの用紙搬送方向の下流側には、支持部材の一例としての転写ベルト支持ロール1が配置されており、2次転写ロールT2bと転写ベルト支持ロール1との間には、転写搬送部材の一例として、無端帯状の転写搬送ベルト2が張架された状態で支持されている。転写搬送ベルト2は、各ロールT2b,1の回転に伴って、転写領域Q4を通過した記録用紙Sを表面に保持して下流側に向けて搬送する。
実施例1の転写搬送ベルト2は、一例として、厚さ0.5mmの絶縁性のクロロプレンゴムにより構成されている。また、実施例1では、2次転写ロールT2bは、直径が28mmのスポンジ状のロールにより構成されており、転写ベルト支持ロール1は、直径15mmのロールにより構成されている。なお、各部材の材料やサイズは、例示した材料や数値等に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
前記2次転写ロールT2bや転写ベルト支持ロール1、転写搬送ベルト2等により、実施例1の転写搬送装置T2b+1+2が構成されている。
【0038】
転写搬送ベルト2の下流側には、第1の媒体搬送部材の一例としての第1の吸着搬送部材6が配置されている。第1の吸着搬送部材6は、帯状部材の支持体の一例として、前後方向に延びる左右一対の第1のベルト支持ロール6a,6bと、吸着ベルト支持ロール6a,6b間に張架された帯状搬送部材の一例としての第1の吸着搬送ベルト6cと、を有する。前記吸着搬送ベルト6cには、複数の孔が形成されると共に、図示しない吸引装置の一例としてのファンが孔を通じて空気を吸引しており、吸着搬送ベルト6cの表面に記録用紙Sが吸着された状態で搬送される。なお、このような吸着搬送ベルト6cの構成は、例えば、特開2004−347880号公報等に記載されており、従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
前記第1の吸着搬送部材6の下流側には、用紙搬送方向に沿って、第2の媒体搬送部材の一例としての第2の吸着搬送部材7、第3の媒体搬送部材の一例としての第3の吸着搬送部材8、第4の媒体搬送部材の一例としての第4の吸着搬送部材9が配置されている。なお、第2の吸着搬送部材7〜第4の吸着搬送部材9は、第1の吸着搬送部材6と同様に構成されているため、詳細な説明は省略する。
前記各吸着搬送部材6〜9により、実施例1の下流側の搬送装置6〜9が構成されている。
【0040】
なお、実施例1では、転写搬送ベルト2による記録用紙Sの搬送速度V0と、第1の吸着搬送部材6による記録用紙Sの搬送速度V1と、第2の吸着搬送部材7による記録用紙Sの搬送速度V2と、第3の吸着搬送部材8による記録用紙Sの搬送速度V3と、第4の吸着搬送部材9による記録用紙Sの搬送速度V4と、定着装置Fによる記録用紙Sの搬送測度V5は、以下のように設定される。
実施例1では、記録用紙Sが普通紙等の場合には、一例として、以下の式(1)、(2)を満足するように設定される。
V1=V2=V3=V4=1.05×V0 …式(1)
V5=V0 …式(2)
したがって、普通紙等の場合には、転写搬送ベルト2と第1の吸着搬送部材6との間に速度差が5%発生し、記録用紙Sが下流側に引っ張られながら受け渡されるため、用紙の姿勢が安定し、後述するデタックソー13による除電も安定して行うことができる。
【0041】
記録用紙Sが厚紙等の定着性を向上させるために定着装置Fの搬送速度V5を低下させる必要がある場合には、一例として、以下の式(3)〜(5)を満足するように設定される。
V1≧V2≧V3≧V4≧V5 …式(3)
V1=1.05×V0 …式(4)
V5=0.5×V0 …式(5)
なお、各吸着搬送部材6〜9は、記録用紙Sが上流側から受け渡されると、下流側の吸着搬送部材7〜9に前端が差し掛かる前に、下流側の吸着搬送部材7〜9の搬送速度V2〜V4に減速される。例えば、第1の吸着搬送部材6と第2の吸着搬送部材7とに記録用紙Sが保持されると、第1の吸着搬送部材6と第2の吸着搬送部材7の搬送速度がV2から、第3の吸着搬送部材8の搬送速度V3まで減速された後、第3の吸着搬送部材8に受け渡される。したがって、吸着搬送部材6〜9の間で受け渡される際に、跨った記録用紙にたるみが生じないように設定されている。
【0042】
図3は実施例1の最上流の除電部材の要部説明図である。
図1〜図3において、前記転写搬送ベルト2と最上流の第1の吸着搬送部材6との間には、案内部材の一例として、転写後シュート11が配置されている。転写後シュート11は、第1の案内部材の一例として、転写ベルト支持ロール1の右斜め下方に配置され且つ前後方向に延びる板状の上流ガイド部12を有する。上流ガイド12部の上端には、第1の案内面の一例として、右斜め下方に傾斜する上流ガイド面12aを有する。図3において、転写搬送ベルト2で送られる記録用紙Sの前端が第1の吸着搬送ベルト6cに接触する位置を通過する転写ベルト支持ロール1の接線である図3の破線で示す仮想線L1に対して、実施例1の上流ガイド面12aの上端は、下方に配置されており、転写搬送ベルト2から送り出された記録用紙Sの前端が上流ガイド部12に引っ掛かって詰まらないように設定されている。また、仮想線L1よりも下方に上流ガイド面12aが配置されているため、記録用紙Sの搬送方向の前端から後部に渡って、上流ガイド面12aは記録用紙Sに接触しない状態となり、記録用紙Sの後端が転写搬送ベルト2を通過すると、記録用紙Sの後端部を案内する。
【0043】
図4は実施例1の転写搬送部材の下流側に隣接して配置された除電部材の説明図である。
前記上流ガイド部12の右側面12bには、除電部材の一例としてのデタックソー13が支持されている。実施例1のデタックソー13は、前後方向に延びる板状の部材の上端に鋸歯状の尖端部が形成された形状に形成されており、導電性の金属製の材料により構成されている。実施例1のデタックソー13は、図示しない電気的な接続経路を介して、接地、すなわちアースされている。
また、実施例1のデタックソー13は、上端が、上流ガイド部12の右側面12bの上端に対して0.1mm低い位置に配置されており、上方を通過する記録用紙Sに対して、非接触の状態が保持されると共に、記録用紙Sが鋸歯状の尖端部に引っ掛かって詰まることが低減されている。したがって、デタックソー13の上端の位置は、上流ガイド部12の右側面12bの上端に対して、同一または低い位置に配置することが好ましく、前述した数値に限定されない。
【0044】
さらに、前記デタックソー13の上端は、仮想線L1に対して、アースしている場合には0.1mm〜5mm下方の位置に配置することが好ましく、除電用の電圧が印加される場合には0.1〜7mm下方の位置に配置することが好ましい。デタックソー13の上端と仮想線L1との間隔が下限を下回る、すなわち、デタックソー13の上端と仮想線L1とが近づきすぎると、用紙の引っかかりが発生し、上限を超える、すなわち、デタックソー13の上端と仮想線L1とが離れすぎると用紙の除電量が不足して所望の効果が得られない。
また、デタックソー13の上端の用紙搬送方向に対する位置は、転写搬送ベルト2の外表面に対して、2mm〜4mmの間隔をあけて配置することが好ましい。間隔が狭すぎるとデタックソー13と転写搬送ベルト2との間でリークが発生する問題または転写搬送ベルトと上流ガイド部12の左側面が部品ばらつきによっては接触してしまう問題がある。一方、間隔を広くして、姿勢が安定した後の記録用紙Sにデタックソー13が対向することが好ましいが、間隔を広げすぎると、記録用紙Sがデタックソー13に到達する前に上流ガイド部12などの他の部材によって像乱れを発生させてしまう恐れがあるため、広げすぎないことが好ましい。
【0045】
前記デタックソー13の右側には、第2の案内部材の一例として、前後方向に延びる板状の下流ガイド部14が配置されている。下流ガイド部14の上端には、第2の案内面の一例として、右斜め下方に傾斜する下流ガイド面14aが形成されている。実施例1の下流ガイド面14aの上端である左上の上流端は、上流ガイド面12aよりも下方に配置されており、上流ガイド面12aに対して、段差を持って配置されている。また、下流ガイド面14aの下端である右下の下流端は、下流側の第1の吸着搬送ベルト6cの上面よりも上方に配置されている。
したがって、実施例1の転写後シュート11では、転写搬送ベルト2から送り出された記録用紙Sの後端は、上流ガイド面12aの高さから第1の吸着搬送部材6に直接落下せず、下流ガイド面14aで一度案内される。したがって、記録用紙Sの後端の急落下が低減されて、落下時の衝撃で未定着のトナー像が乱れる画質劣化が低減されつつ、デタックソー13の上端が可能な限り記録用紙Sに非接触且つ接近して除電効率が高まるように配置されている。
【0046】
図5は実施例1の吸着搬送ベルトどうしの間に配置された除電部材の説明図である。
図2において、各吸着搬送部材6〜9どうしの間には、それぞれ、搬送部材間の案内部材の一例としてのベルト間ガイド16が配置されている。図2、図5において、実施例1のベルト間ガイド16は、前後方向に延びる板状に形成されており、上面には、案内面の一例として、記録用紙Sの下面を案内するガイド面16aが形成されている。また、ガイド面16aの上流側には、上流側に行くに連れて下方に傾斜して、上流側から搬送されてくる記録用紙Sが引っ掛かったり詰まったりしないようにガイドする上流ガイド面16bが形成されている。
【0047】
前記ベルト間ガイド16の下面には、第2の除電部材の一例として、刷毛状の除電ブラシ17が配置されている。前記除電ブラシ17は、基部の一例として、前記ベルト間ガイド16に支持される板部17aと、除電部材の本体の一例として、板部17aに支持された複数の毛により構成されたブラシ本体17bとを有する。
実施例1の板部17aおよびブラシ本体17bは、共に導電性の材料により構成されており、板部17aは接地されている。また、実施例1のブラシ本体17bは、ベルト間ガイド16の下流端よりも下流側に突出して配置されており、ベルト間ガイド16のガイド面16aを案内されながら搬送される記録用紙Sに対して、非接触且つ近接した状態で配置される。
【0048】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の画像形成装置Uでは、感光体ドラムPy〜Pkで形成されたトナー像は、中間転写ベルトBを介して、2次転写領域Q4において、記録用紙Sに転写される。未定着のトナー像が転写された記録用紙Sは、転写搬送ベルト2の表面に保持されて下流側に向けて搬送される。
したがって、実施例1の転写搬送ベルト2では、直径の異なる2つのロールT2b,1に張架されていて、各ロールT2b,1に巻き付く際の転写搬送ベルトBが曲率が異なっており、転写搬送ベルト2を使用せず、2次転写ロールT2bのみで2次転写および搬送を行う構成に比べて、曲率差を利用して記録用紙Sが剥離しやすくなっている。また、転写搬送ベルト2を使用せず、2次転写ロールT2bのみで2次転写および搬送を行う構成に比べて、転写搬送ベルト2に面で保持される実施例1の構成では、用紙走行性が安定しやすくなっている。
【0049】
記録用紙Sは、2次転写領域Q4を通過する際に、トナー像を転写する2次転写電圧を受け、電荷を帯びた状態となる上に、記録用紙Sが転写搬送ベルト2から剥離する際に、剥離帯電が発生して、記録用紙Sの帯電電荷が上昇する。
特に、実施例1では、転写搬送ベルト2の搬送速度V0に対して、下流側の第1の吸着搬送ベルト6cの搬送速度V1の方が高速に設定されており、第1の吸着搬送ベルト6cに記録用紙Sの前端が吸着されて、搬送速度V1で記録用紙Sが搬送され始めると、高速の記録用紙Sと低速の転写搬送ベルト2との間で摺擦が発生する。したがって、記録用紙Sが摩擦帯電して、帯電電荷が上昇する。
【0050】
図6は転写搬送ベルトにおける剥離放電の説明図であり、図6Aはテンションラインの説明図、図6Bは剥離放電の説明図である。
また、図6において、転写搬送ベルト2のような無端帯状の部材が、2次転写ロールT2bと転写ベルト支持ロール1の間に張架された状態で回転する場合、転写搬送ベルト2が各ロールT2b、1に巻き付く際のベルトの内表面と外表面との経路差や、ロール間の平行度のずれ等に伴って、転写搬送ベルト2に波打ち状のシワ、いわゆるテンションライン21が発生することがある。特に、画像形成装置Uが小型化されて、転写搬送ベルト2として、周長の短い弾性ベルトを使用した場合に、顕著に発生しやすくなる。
テンションライン21が発生した状態では、図6Bに示すように記録用紙Sと転写搬送ベルト2の表面との間に微小な隙間22が発生する。そして、微小な隙間22では帯電した記録用紙Sと転写搬送ベルト2との間の距離が短く、放電が発生しやすくなっている。特に、前記微小な隙間22は、記録用紙Sの幅方向に対して、ばらついた状態で発生し、記録用紙Sにおいて、放電が発生する場所にムラが発生しやすくなっている。
【0051】
図7は実施例1の画質劣化の説明図である。
特許文献1〜3記載の従来の画像形成装置のように、転写搬送ベルト2と第1の吸着搬送ベルト6cとの間に除電部材が配置されていない構成では、記録用紙Sが第1の吸着搬送ベルト6cに着地する際に、図7に示すように、電界が乱れてしまい、未定着のトナー像26、特に、上層の吸着力の弱いトナー27が飛び散ってしまい、像乱れや白筋等の画質劣化が生じる恐れがある。特に、記録用紙Sの前端において、トナー27の飛び散りが発生すると、余白部分がトナーで汚れてしまい、画質劣化が目立ちやすい問題もある。さらに、テンションライン21での放電に伴って、電荷の分布にムラが発生している場合、いわゆるハーフトーンの画像等では、白筋が目立ちやすくなる。
【0052】
これらに対して、実施例1の画像形成装置Uでは、転写搬送ベルト2と第1の吸着搬送ベルト6cとの間に、デタックソー13が配置されており、転写搬送ベルト2で剥離帯電が発生した後、第1の吸着搬送ベルト6cに着地する前に、除電が行われる。したがって、除電部材を配置しない従来の構成に比べて、トナー27の飛び散りが発生しにくく、画質劣化が低減されている。
特に、実施例1のデタックソー13は、非接触状態で、避雷針のように記録用紙Sとの間で放電させることで除電を行っており、高速で記録用紙Sが通過する場合でも、導電性の除電部材を記録用紙Sに接触させて除電させる場合に比べて、除電効率が高くなっている。
【0053】
また、実施例1の画像形成装置Uでは、転写搬送ベルト2の下流側に配置された各吸着搬送装置6〜9において、各吸着搬送ベルト6c〜9cから記録用紙Sが離れる際にも、剥離帯電が発生する。
これらに対して、実施例1では、各吸着搬送ベルト6c〜9cの間に、除電ブラシ17が配置されており、記録用紙Sの除電が逐次行われ、未定着のトナーが飛び散って画質が低下することが低減されている。
【0054】
特に、実施例1では、吸着搬送装置6〜9において、記録用紙Sとして厚紙等が使用される場合に、搬送速度V1〜V4が順次遅くなるように設定されており、記録用紙Sの搬送速度が、2次転写領域Q4に対して定着領域Q5で低下する構成となっている。
ここで、前述のように、下流側の吸着搬送部材6〜9に受け渡される前に、記録用紙Sを保持した吸着搬送部材6〜9が減速され、跨った記録用紙にたるみが生じないように設定されているが、個体差や僅かなタイミングのずれが発生すると、速度差による摩擦帯電が生じてしまうことがある。これによって、吸着搬送ベルト間の受け渡し時に、記録用紙の帯電による画像の乱れが発生しやすくなってしまう。これは下流の吸着搬送ベルト7〜9にいくほど記録用紙Sが摩擦帯電を受ける機会が増えるため、画像乱れも発生しやすくなる。
これに対して、実施例1では、各吸着搬送ベルト6c〜9cの間に、除電ブラシ17が配置されており、記録用紙Sの除電が逐次行われ、未定着のトナーが飛び散って画質が低下することが低減されている。
【0055】
(実験例)
図8は実施例1の実験結果の説明図であり、縦軸に用紙帯電量を取り、横軸に測定された位置を取ったグラフである。
次に、実施例1の構成を使用して、記録用紙Sの除電に関する実験を行った。実験は、富士ゼロックス株式会社製のDocuColor 8000AP Digital Pressを改造して行い、温度10℃、湿度15%RHの静電気の発生しやすい低温低湿環境において行った。記録用紙Sとして、A3サイズの富士ゼロックス社製J紙、用紙坪量82g/mを使用し、画像として階調パターンを10枚印刷した。そして、記録用紙Sが10枚走行した場合において、デタックソー13や各除電ブラシ17への流入電流を微少電流計:ケースレーインスツルメンツ株式会社製エレクトロメータで測定した。実験結果を図8に示す
【0056】
(実験結果)
図8において、デタックソー13で除電前の状態では、用紙帯電量Qが17.5[μC]であったのが、デタックソー13の通過で、13[μC]に低下、除電され、各除電ブラシ17の通過に伴って、順に、11[μC]、10[μC]、9[μC]に帯電量Qが低下している。
ここで、実験例の第1の吸着搬送ベルト6cに着地する際に、用紙帯電量Qが10〜14[μC]の範囲内では画質劣化が発生せず、14[μC]よりも大きい場合には前述の飛び散りが発生すると共に、10[μC]未満の場合には記録用紙Sの除電しすぎでトナーを吸着する電荷が不足して、像乱れが発生した。同様に、各第2〜第4の吸着搬送ベルト7c〜9cでは、帯電量Qが12[μC]、12[μC]、10[μC]より大きい場合に画質劣化が発生した。
これに応じて、実験例では、4つの除電部材の中で最上流に除電性能が高いデタックソー13が配置され、下流側にデタックソー13よりも除電性能が低い除電ブラシ17が配置され、画質劣化の発生が抑制されている。すなわち、最上流に配置された接地されたデタックソー13が、除電不足および過剰な除電を低減しており、下流側の除電ブラシ17が、下流側の吸着搬送ベルト7c〜9cにおける除電不足を低減して、像乱れを低減している。また、実験例では、接地された除電部材13,17を使用しており、電圧を印加する構成に比べて、構成が簡素化され、費用が節減されている。
【0057】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H09)を下記に例示する。
(H01)前記各実施例において、画像形成装置の一例として複写機Uを例示したが、これに限定されず、プリンタ、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、多色の画像形成装置に限定されず、単色の画像形成装置にも適用可能である。
(H02)前記実施例において、像保持体の一例であって、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBを備える構成を例示したが、これに限定されず、中間転写ドラム等の中間転写体を有する構成としたり、中間転写体が設けられておらず、像保持体の一例としての感光体ドラムから直接記録用紙に転写する構成にも適用可能である。
【0058】
(H03)前記実施例において、下流側の搬送装置の一例として、吸着搬送装置6〜9は4つ設ける構成を例示したが、これに限定されず、3つ以下や5つ以上とすることも可能である。
(H04)前記実施例において、下流側の搬送装置の一例として、記録用紙Sを吸着して搬送する構成を例示したが、これに限定されず、吸着する構成を省略することも可能である。
(H05)前記実施例において、転写搬送ベルト2や吸着搬送ベルト6c〜9cの搬送速度V0〜V4は実施例に例示した関係に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
【0059】
(H06)前記実施例において、除電部材の一例としてのデタックソー13や除電ブラシ17を、接地する構成を例示したが、これに限定されず、除電用の電圧を印加する構成として除電部材の除電能力を向上または制限するようにして除電性能を制御したり、コンデンサと同様の結合状態、いわゆるフローティング状態とする等の構成を採用することも可能である。したがって、例えば、電圧を印加した除電ブラシを採用し、実施例1のデタックソー13と同様の除電性能を有する状態として、デタックソー13に替えて除電ブラシを使用する等の変更も可能である。
(H07)前記実施例において、除電部材として、鋸歯状のデタックソー13や刷毛状の除電ブラシを例示したが、これに限定されず、例えば、櫛歯状や導電性不織布等、除電可能な任意の構成を採用可能である。
【0060】
(H08)前記実施例において、転写後シュート11の形状や位置等は、実施例に例示した構成に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。特に、上流ガイド部12と下流ガイド部14とで段差を設けることが望ましいが、段差を省略することも可能である。
(H09)前記実施例において、転写搬送ベルト2および吸着搬送ベルト6c〜9cの間の全てに除電部材13,17を配置する構成が望ましいが、これに限定されず、除電部材を配置しなくても画質低下が発生しない場合には、除電部材13,17を省略することが可能である。例えば、第1の吸着搬送ベルト6cと第2の吸着搬送ベルト7cとの間に除電ブラシ17を配置し、第2の吸着搬送ベルト7cと第3の吸着搬送ベルト8cとの間には除電ブラシ17を配置せず、第3の吸着搬送ベルト8cと第4の吸着搬送ベルト9cとの間には除電ブラシ17を配置するといった構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…支持部材、
2…転写搬送部材、
6〜9…下流側の搬送装置、
6c,7c,8c,9c…帯状搬送部材、
12…第1の案内部材、
12a…第1の案内面、
13,17…除電部材、
14…第2の案内部材、
14a…第2の案内面、
17…第2の除電部材、
B…像保持体、
F…定着装置、
Q4…転写領域、
S…媒体、
T2b…転写部材、
T2b+1+2…転写搬送装置、
U…画像形成装置、
V0,V1,V2,V3,V4…搬送速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に媒体に転写される可視像を保持する像保持体と、
前記像保持体に対向して配置されて前記像保持体と対向する転写領域を通過する媒体に前記像保持体の可視像を転写する転写部材と、前記転写部材に対して前記媒体の搬送方向の下流側に配置された支持部材と、前記転写部材と前記支持部材との間に張架されて表面に前記媒体を保持して媒体搬送方向の下流側に搬送する無端帯状の転写搬送部材と、を有する転写搬送装置と、
前記転写搬送部材に対して前記媒体の搬送方向の下流側に配置されて、未定着の可視像が転写された媒体を表面に保持して下流側に搬送する無端状の帯状搬送部材を有する下流側の搬送装置と、
前記転写搬送部材と前記帯状搬送部材との間に配置されて、通過する媒体の除電を行う除電部材と、
前記下流側の搬送装置に対して前記媒体の搬送方向の下流側に配置されて、前記媒体表面の未定着の可視像を定着させる定着装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
通過する媒体に対して非接触の状態で配置された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
先端が前記媒体に対向して配置された鋸歯形状の前記除電部材、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数の導電性の毛を有する刷毛状の前記除電部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
接地された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記媒体を除電させる除電用の電圧が印加された前記除電部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記除電部材の上端よりも上方に配置された第1の案内面を有し、前記除電部材と前記転写搬送部材との間に配置されて、前記転写搬送部材から送られた媒体の下面を案内可能な第1の案内部材と、
前記第1の案内面よりも下方且つ前記帯状搬送部材の上流端の高さよりも下方に配置された第2の案内面を有し、前記除電部材と前記帯状搬送部材との間に配置されて、媒体の下面を案内可能な第2の案内部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記除電部材の前記媒体側の先端が、前記第1の案内面と同一または媒体から離れる側の位置に配置されたことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記転写搬送装置と前記下流側の搬送装置との間に跨った媒体の位置に対して、前記除電部材の前記媒体側の先端および前記第1の案内面が、同一または離れた位置に配置されたことを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記転写搬送部材が媒体を搬送する速度に比べて、媒体の搬送速度が高速に設定された前記帯状搬送部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記媒体の搬送方向に沿って配置された複数の前記帯状搬送部材を有する前記下流側の搬送装置と、
前記複数の帯状搬送部材どうしの間に配置されて、通過する媒体の除電を行う第2の除電部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記複数の帯状搬送部材の中で、媒体搬送方向の最上流に配置された帯状搬送部材の媒体の搬送速度が、前記転写搬送部材の媒体の搬送速度以上に設定され、且つ、
前記複数の帯状搬送部材の中で、媒体搬送方向の最下流に配置された帯状搬送部材の媒体の搬送速度が、前記転写搬送部材の媒体の搬送速度以下に設定された
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記複数の帯状搬送部材の中で媒体搬送方向の最上流に配置された帯状搬送部材と、前記転写搬送部材と、の間に配置され、先端が前記媒体に対向して配置された鋸歯形状の前記除電部材と、
前記複数の帯状搬送部材どうしの間に配置され、複数の導電性の毛を有する刷毛状の前記第2の除電部材と、
を備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−128368(P2012−128368A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282241(P2010−282241)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】