画像形成装置
【課題】 記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う画像形成プロセスにおいて、電極間隔に対応する1画素分の画像(ドット)幅を調整することのできる画像形成装置の提供
【解決手段】 像担持体を挟んでトナー担持体と記録電極を対向する位置に設ける。トナー担持体の電位をVtとし、画像部を形成するための前記電極の電位がVp、非画像部を形成するため前記電極の電位がV0となるように電圧を印加するとき、画像情報に応じて、|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する。
【解決手段】 像担持体を挟んでトナー担持体と記録電極を対向する位置に設ける。トナー担持体の電位をVtとし、画像部を形成するための前記電極の電位がVp、非画像部を形成するため前記電極の電位がV0となるように電圧を印加するとき、画像情報に応じて、|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを記録材に担持して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やプリンタにおいては、一般的に帯電手段によって感光体の表面を一様帯電し、この一様帯電された感光体の表面にレーザー光あるいはLED光等の露光手段により感光体の表面に静電潜像を書き込む。静電潜像を形成した後に現像手段により現像して感光体表面に画像を形成する。
【0003】
一方で、装置を小型でシンプルに構成するために、記録材搬送方向に直行する方向(走査方向)に配列した複数の記録電極を用い、潜像形成と同時に現像を行う画像形成装置例が複数開示されている。
【0004】
例えば、(特許文献1)に代表されるように、針状電極を用いたマルチスタイラスプリンタでは多数の針状電極を配置した像形成電極と、円筒状の対向電極を所定の空隙を保ち対向配置し、この空隙に記録体を像形成電極に接して介在させる。この状態で像形成電極に画像信号に対応する電圧を印加し、空隙放電を発生させることでトナー像を形成する。
【0005】
また、(特許文献2)に代表される方式では、まず像担持体の内面に接触した複数の書込み電極により像担持体内面の書込層に電荷を付与させる。そして、導電性現像ローラが対向電極として機能し、像担持体表面の導電層に静電潜像が形成される。潜像形成と同時に現像ローラ上の現像剤で現像され、画像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−8544号公報
【特許文献2】特開2003−103824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う方式では、複数に分割された記録電極の間隔によって画像形成装置の走査方向の解像度が決まる。例えば600dpiの解像度を得るためには、電極間隔は42.3μmとなる。更なる高解像度化を望む為には、電極間隔を狭める必要があるが、微細加工技術による電極の高密度化には限界がある。したがって、電極間隔を小さくすることのみに頼った画像の高解像度化には限界がある。
【0008】
一方で、レーザー光やLED光の露光手段を用いて感光体の表面に静電潜像を書き込む従来方式の画像形成装置では、点灯パルスの変調や光量の調整によって、より高解像度の画像形成を行う場合が多い。すなわち、主走査方向あるいは副走査方向の1画素単位の画像(ドット)幅や長さを変化させるものである。これらの制御は、斜め線や曲線等で構成される画像を描画するときに階段状に表現されるギザギザ感を低減したい場合や、解像度以下の細線を忠実に再現したい場合などに利用される。画像形成装置が自動的に画像情報を判別して行う場合や、ユーザーが高解像度モード等を選択して行う場合がある。
【0009】
前述の記録電極を用いて画像形成を行う方式について考えてみる。電極に印加する電圧の制御により、1画素分の画像幅を調整しようと試みるも、空隙放電により電荷を付与するマルチスタイラス方式の場合、そもそも空隙のばらつきにより放電による電荷付与性が均一でないことから安定性に欠ける。
【0010】
また前述の特許文献2にあるような静電潜像を像担持体表面に形成する方式では、印加電圧の調整により付与される電荷量が異なるため、現像される現像剤量も変化する。よって、細線や微小ドットの再現性が乏しく鮮明に画像(ドット)形成を制御することが難しい。
【0011】
したがって、記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う画像形成プロセスにおいて、電極間隔に対応する1画素分の画像(ドット)幅を調整する方法は未だ開示されていない。
【0012】
そこで、本出願に係る発明の目的は、記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う画像形成プロセスにおいて、電極間隔に対応する解像度よりも高解像度な画像(ドット)を形成することのできる画像形成装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する為に、本発明による画像形成装置は、以下のような特徴を有する。トナーを担持するためのトナー担持体と、前記トナーによりトナー像が形成される像担持体と、前記像担持体を挟んで前記トナー担持体に対向する位置に設けられ、前記像担持体の幅方向に複数に分割された電極とを有し、画像情報に基づいて前記電極に電圧を印加することで、前記トナー担持体と前記像担持体との間をトナーが移動することによりにトナー像を形成する画像形成装置において、前記トナー担持体の電位をVtとし、画像部を形成するための前記電極の電位をVp、前記画像部を形成するための前記電極に隣接する非画像部を形成するため前記電極の電位をV0として、前記画像情報に応じて、|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成により、|Vp−Vt|で与えられる画像形成電位差と|Vt−V0|で与えられる非画像形成電位差の比に応じて、画像部を形成するための電界方向と非画像部を形成するための電界方向の変化点がシフトする。その結果、画像形成装置の解像度に応じた1画素分の画像(ドット)幅を広げたり狭くしたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に適用できる画像形成装置の概略構成図
【図2】実施例1における像形成電極の概略構成図
【図3】実施例1における像形成電極の概略構成図
【図4】実施例1における像形成電極を配置した画像形成部を拡大した概略構成図
【図5】トナーに働く力を表す概略モデル図
【図6】像形成電極に印加する電圧のタイミングチャート
【図7】実施例1におけるトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を表した概略図
【図8】実施例1におけるトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を拡大した概略図
【図9】実施例1におけるトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を拡大した概略図
【図10】実施例1における電極間スペースと電界変化点の位置を示す概略図
【図11】実施例1における1画素分の画像(ドット)を表す概略図
【図12】実施例1における印加電圧の制御範囲を説明する概略図
【図13】実施例1における効果を比較する概略図
【図14】実施例1におけるその他の適用例を表す像形成電極の概略構成図
【図15】実施例1におけるその他の適用例を表す像形成電極の概略構成図
【図16】実施例2における1画素分の画像(ドット)を表す概略図
【図17】実施例2における効果を説明する概略図
【図18】実施例3における1画素分の画像(ドット)を表す概略図
【図19】実施例3における効果を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施例>
以下、図面を用い本発明の第1の実施例を説明する。
【0017】
(1)画像形成装置
図1は本実施例に適用できる画像形成装置の概略構成図である。
図1において、画像形成装置1は、以下の構成を備える。トナーTを外周面に担持して搬送するトナー担持体としてのトナー担持ローラ2(トナー担持体)。トナーTの像が形成される像担持体3。電圧を印加されることで、像担持体3に画像情報に基づいたトナー像を形成するための像形成電極部4。像担持体3上のトナー像を紙等の記録材Pに転写する転写部材としての転写ローラ5。
【0018】
トナー担持ローラ2は矢印A方向に回転駆動し、外周面にトナーTを担持し画像形成部に搬送すると共に像形成電極部4に対する対向電極として機能する。導電性支持体21としてφ6の金属性芯金と、その周囲に弾性層22として導電性シリコーンゴム層が形成されている。さらにその表面に厚さ10μmのウレタン樹脂層がコーティングされている。外径φ11.5のローラである。
【0019】
トナーTは不図示のトナー容器から供給され、ブレード23により所定の電荷量に帯電されると共に、トナー担持ローラ外周面に所定の厚さに規制される。ブレードは金属薄板のバネ弾性を利用して接触される。本実施例においては厚さ0.1mmのSUS板とリン青銅板を用いた。
【0020】
トナーTは平均粒径6μm、固有抵抗1016Ω・cm程度の負の帯電極性を有する非磁性1成分トナーである。なお、トナー担持ローラ2の上のトナーの帯電極性を正規の帯電極性とする。本実施例では、負極性が正規の帯電極性である。
【0021】
また、トナー担持ローラ2の導電性支持体21には電源24が接続され、トナー担持ローラ2の電位を保持するため電圧印加もしくは接地する構成としている。
【0022】
3はトナー担持体上のトナーを転移させることでトナー像を形成する像担持体であり、所定の抵抗範囲に調整された導電性を有するエンドレスベルトである。矢印B方向に所定のプロセススピードで回転移動する。以後、矢印B方向を像担持体移動方向と呼ぶ、また像担持体移動方向と交差する方向(紙面垂直方向)は、像担持体幅方向と呼ぶことにする。本実施例における像担持体3は厚さ50μm、抵抗値108.5Ω・cmの単層のポリイミドフィルムである。
4は像担持体の幅方向に複数設けられた像形成電極部であり、面状電極105を等間隔で支持部材130に固定支持している。所定の圧力で像担持体3の内面に接触配置されている。
【0023】
また、面状電極105は像形成電極電圧制御部110に接続され、像形成電極電圧制御部110は画像情報に基づいて面状電極に印加する電圧の値を変更する制御を行う。面状電極の詳細については後述する。
【0024】
本実施例における画像形成は、トナー担持ローラ2上のトナーTを面状電極105に印加する電圧による電界により、トナー担持ローラ2と像担持体3との間で移動させることにより行う。像担持体3上のトナー像は、転写ローラ5によって紙等の記録材Pに転写される。所定のタイミングで記録材Pは、像担持体3と転写ローラ5間の転写部に搬送される。記録材Pが転写部にある時に、転写バイアス制御手段51により転写ローラ5に転写バイアスが印加され、像担持体3上のトナー像が記録材P上の所定の位置に転写される。
【0025】
(2)面状電極
図2は面状電極105の一部分を表した概略構成図であり、図2(a)は像担持体接触面から見た概略構成図、図2(b)は像担持体の幅方向の断面概略構成図である。
【0026】
図2(a)に示すように面状電極105は絶縁性の電極基材102と、電極基材102上に形成され像担持体と接触する複数の電極部101と、電極部101に接続された電極駆動部103で構成されている。電極部101は像担持体の幅方向に複数の電極が分割して形成される。各々の電極部の像担持体方向幅はWであり、像担持体移動方向に対し直線状に形成されている。
【0027】
図2(b)に示すように各々の電極部101は電極基材102上に電極幅L、電極間スペースSで画像形成領域全域に形成されている。本実施例に用いた面状電極105はフレキシブルプリント基板である。電極基材102が厚さ25μmポリイミド樹脂であり、電極部101は厚さ10μmの銅電極で形成してある。電極幅Lが40μm、電極間隔Sが40μmとした。
【0028】
また、電極部101は電極駆動部103を介して像形成電極電圧制御部110に接続され、画像情報に基づいた電圧を所定のタイミングで各々の電極部101に印加し制御することにより画像形成を行う。
【0029】
図3は本発明の電極部の構成を示すブロック図である。
120は画像情報を入力するインターフェイス、121は画像情報のデータを受け取るデータ受信部、103は電極駆動部である。転送された画像情報を変換するシフトレジスタ106、シフトレジスタ106の出力状態を保持するラッチ107、ラッチ出力のデータに応じて、電極電源111から面状電極部の各電極に印加される出力を切り替えるゲート108で構成される。
【0030】
111は電極電源であり、ゲートを介して電極部101の各電極(101a、101b、101c・・・)に接続され画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を供給する。
112は制御部であり、データ受信部121、シフトレジスタ106、ラッチ107、ゲート108を制御し、I/F120から入力した画像情報に応じて電極部の各電極に印加する電圧を制御することで画像形成を行う。
【0031】
(3)画像形成部の詳細
図4は面状電極105を配置した画像形成部を拡大した概略構成図である。(トナー接触領域部Icの面状電極は略平面であるため概略構成図は平面で表している。)
図4において、Icはトナー接触領域であり、トナー担持ローラ2の上のトナーTと像担持体3とが接触する領域である。iuはトナー接触領域Icにおける像担持体移動方向Bの上流位置、idはトナー接触領域の下流位置である。
ie0は電極接触下流位置であり、像担持体3と接触する電極部101の像担持体移動方向における最下流位置である。Imdはトナー担持ローラと像担持体間のトナーの移動が行われるトナー移動領域(トナーが移動可能な領域)であり、トナー接触領域の下流位置idがImdの最上流位置となる。また、電極接触下流位置ie0は、トナー接触領域Icより像担持体移動方向の下流に配置している。
【0032】
本実施例の動作は、電極部101に電圧を印加することにより、像担持体3とトナー担持ローラ2との間の電界により、トナーをトナー担持ローラ2と像担持体間で移動させることにより行う。トナーの移動はトナー移動領域Imdで行われる。面状電極の配置位置における像担持体3とトナー担持ローラ2の間隔をトナー担持体間隔Igとすると、トナー担持体間隔Igの距離が狭いほどトナーに働く電界を強くすることができる。
【0033】
本発明においてはトナー接触領域Icを有する構成を用いることにより、トナー接触領域Icから徐々にトナー担持体間隔Igを広げる構成を実現し、電極接触下流位置ie0において、電極部101とトナー担持ローラ2を狭い間隔で構成することができる。
【0034】
以上の構成により、面状電極部101とトナー担持ローラ2との間の電界を強くすることができ、低い画像形成電圧でトナーを移動させることが可能となる。
【0035】
本実施例においてはトナー移動領域Imdにおいて、トナー担持ローラと像担持体間の空隙で放電が発生しない画像形成電圧と非画像形成電圧に設定している。
【0036】
本実施例の構成において、面状電極に印加する電圧を高くしていくと、パッシェンの法則に従い面状電極のトナー担持体間隔Igにおいて放電現象が発生する。トナー担持ローラ2上のトナーは所定の電荷量で負極性に帯電しているが、トナー担持体間隔Igで放電現象が発生すると、放電により極性反転した正極性のトナーが発生してしまう。極性が反転した正極性のトナーは、面状電極105の電界によりトナーの移動を制御することができず、良好な画像形成を行うことができない。したがって、トナー担持ローラ2と像担持体3の電位差を放電開始電圧以下となるように、面状電極105に印加する電圧を制御することにより画像形成を行うようにしている。言い換えると、放電開始電圧以下の印加電圧であっても、トナーに作用する電界を十分に働かせる必要がある。その為には、電極接触下流位置ie0におけるトナー担持体間隔Igを狭く設定することが重要であり、その手段として、トナー接触領域Icから徐々にトナー担持体間隔Igを広げる構成を実現することで達成している。
【0037】
(4)画像形成プロセスの詳細
(像担持体移動方向の画像形成プロセス)
像担持体移動方向の画像形成プロセスについて図6のモデル図を用いて説明する。
図5(a)、(b)はトナー移動領域Imd内のトナーに働く力を表し、図5(c)、(d)はトナー移動領域Imdより下流側におけるトナーに働く力を表す。トナー担持ローラ2との間の非静電的付着力を担持ローラ間付着力Fadとする。トナーTと像担持体3との間の非静電的付着力を像担持体間付着力Faiとする。電極部101とトナー担持ローラ間の電界によりトナーTに働く静電気力Feとする。
【0038】
<トナー移動領域Imd内のトナー>
図5(a)は電極部101に画像形成電圧Vpを印加したときのモデル図、図5(b)は非画像形成電圧V0を印加したときのモデル図である。トナーは、それまでの電極部に印加する電圧の状態により、トナー担持ローラ2に担持したトナーと、像担持体3に担持したトナーの両方の状態がある。
【0039】
図5(a)のように電極部101に画像形成電圧Vpを印加したとき、像担持体3とトナー担持ローラ2間の電界により、トナーには像担持体方向の静電気力が働く。次式(1)の条件を満たす電界を働かせることでトナーはトナー担持ローラから像担持体上に移動する。
Fe>Fad・・・式(1)
図5(b)のように電極部101に非画像形成電圧V0を印加したときは、トナーにはトナー担持体ローラ方向の静電気力が働く。次式(2)の条件を満たす電界を働かせることでトナーは像担持体からトナー担持ローラに移動し、像担持体上にトナー像は形成されない。
Fe>Fai・・・式(2)
【0040】
<トナー移動領域Imdより像担持体移動方向下流におけるトナー>
図5(c)はトナー移動領域Imdより像担持体移動方向下流において、電極部101に画像形成電圧Vpを印加したときのモデル図、図5(d)は非画像形成電圧V0を印加したときのモデル図である。いずれの場合も電極部101とトナー担持ローラ2間の間隔が広がるため電界による静電気力は弱く、式(3)の関係になりトナーを移動させることはできない。
Fe<Fad
Fe<Fai ・・・式(3)
よって、トナー移動領域Imdより像担持体移動方向下流におけるトナーは、電極接触下流位置ie0のトナーの担持状態を維持する。
【0041】
以上のように、トナー移動領域Imdにおけるトナーの移動は、トナーが電極接触下流位置ie0に位置したときの電圧により最終的に決定し、トナー像の形成か非画像部の形成が選択されることになる。詳細をわかりやすく以下に説明する。
【0042】
例えば図6に面状電極105に印加する電圧のタイミングチャートの一例を示す。面状電極105に非画像形成電圧V0を印加した状態から、時刻t1からt2までの時間T(s)において画像形成電圧Vpを印加し、その後に非画像形成電圧V0を印加した例である。
【0043】
図7(a)から(e)はトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を表した概略図である。
時刻t1において、それまで電極部101に非画像形成電圧V0が印加されている状態から画像形成電圧Vpの印加へと切り替わる。電極部101とトナー担持ローラ2との間の電界方向が変わるので、トナーに働く静電気力がトナー担持ローラ2への方向から、像担持体方向へと切り替わり、図7(a)のトナー状態が(b)の状態へと移動する。時刻t1までに電極接触下流位置ie0を通過したトナーは、電界の影響を受けないので、トナー担持ローラ上に担持される。電極接触下流位置ie0のトナーT1を先頭にそれより上流側のトナーが像担持体上に移動する。
【0044】
時刻t2において、時間T(s)のあいだ画像形成電圧Vpが印加された状態から非画像形成電圧V0への印加へ切り替わる。トナーに働く静電気力が像担持方向から、トナー担持ローラ方向へと切り替わり、図7(c)のトナー状態が(d)の状態へと移動する。時間T(s)のあいだに電極接触下流位置ie0を通過したトナーは、電界の影響を受けないので、像担持体上に保持されたまま、下流方向に移動する。電極接触下流位置ie0のトナーT2を先頭にそれより上流側のトナーがトナー担持ローラ2上に移動する。
【0045】
時刻t3においてはt2以降、非画像形成電圧V0が印加されたままである為、その間トナー移動領域Imdでのトナーの移動は行われず、トナー担持体上に保持されたまま電極接触下流位置ie0を通過する。時刻t1からt2までに像担持体上に形成されたトナー画像は、保持された状態を保ち、時刻t2→t3の時間分だけ下流方向に移動する(図7(e))。
【0046】
ここで、像担持体は矢印B方向にプロセス速度V(mm/s)で移動するために、像担持体上にX=V×T(mm)の幅の画像を形成することができる。
【0047】
(像担持体幅方向の画像形成プロセス)
次に像担持体幅方向の画像形成プロセスを説明する。
図8(a)は面状電極105のトナー移動領域Imdにおけるトナー担持ローラ2と像担持体3間のトナーの状態を拡大した概略図であり、像担持体の幅方向を部分的に表した図である。電極部101b、101dに画像形成電圧Vpを、電極部101a、101c、101eには非画像形成電圧V0を印加した時のトナー状態である。図8(b)はトナー担持ローラ2と像担持体3間のトナー担持ローラ表面の電界を表した概略図である。
【0048】
図8において、面状電極105の電極部101a〜101eは像担持体の幅方向に、画像形成装置の解像度に応じた幅と間隔で複数配置され、像担持体3に対し接触配置している。
【0049】
トナーT(Ta〜Te)は負極性に帯電している。電極部101a〜101eのそれぞれの電界に対応するトナーをTa〜Teとした。図8(b)の矢印の向き及び長さで電界の強さを表している。
【0050】
次に、画像形成装置の解像度に応じた1画素分の画像幅(ドット幅)を形成する際の、電極部101に印加する電圧について説明する。図8(a)では、電極部101b、101dに対応するトナーTbおよびTdで形成される画像が1画素分のドットとなり、電極部101a、101c、101eに対応する部分が1画素分のスペースとなる。トナー担持ローラ2はトナー担持ローラ電源24により0Vに保持される。画像情報に応じて画像形成領域の電極部には画像形成電圧Vpである+50Vを印加し、非画像領域の電極部には非画像形成電圧V0である−50Vが選択的に印加される。画像形成電圧Vpはトナー担持ローラ2の電位に対して電極部101がトナーの帯電極性と逆極性側になる電圧であり、非画像形成電圧V0はトナー担持ローラ2の電位に対してトナーの帯電極性と同極性側になる電圧である。
【0051】
図8(b)に示すように、画像形成電圧Vpを印加した電極部101bと101dの位置にあるトナーは、トナー担持体2方向の電界により、像担持体3方向の静電気力を受ける。
【0052】
非画像形成電圧V0を印加した電極部101aと101cと101eの位置にあるトナーは、像担持体3方向の電界により、トナー担持ローラ2方向の静電気力を受ける。このような電界から受ける静電気力の影響により、図8(a)のようにトナーの移動が行われる。また、画像形成電圧Vpを印加した電極部101bと非画像形成電圧V0を印加した電極部101aの間に位置するトナーは、各々の電極によって形成される電界に応じ、トナー担持ローラ2に担持した状態と像担持体3に担持した状態が選択される。その他の各電極間も同様である。
【0053】
以上のように、像担持体の幅方向の画像形成が行われる。
本発明は、トナー担持ローラの電位を0Vとし、像形成電極にトナーと逆極性の電圧と同極性の電圧を印加することにより、トナー像形成を行ったがこれに限られるものではない。
【0054】
トナー担持ローラ2に電圧を印加する構成の場合は、トナー担持体ローラの電位に対して、正極性側の電位と負極性側の電位とを面状電極105に選択的に印加することで像形成することができる。
【0055】
(5)本実施例の画像形成プロセス
次に、本実施例の特徴となる画像形成プロセスの詳細について説明する。本実施例では隣り合う記録電極に印加する画像形成電圧Vpおよび、非画像形成電圧V0を変化させることにより、電極間スペースSに形成させる電界方向を制御し、より精細なドット形成を行うことを特徴とする。詳細を以下に説明する。
【0056】
トナー担持ローラ2の電位をVtとするとき、画像形成電圧Vpとの電位差|Vp−Vt|を画像形成電位差と呼ぶことにする。また、非画像形成電圧V0との電位差|Vt−V0|を非画像形成電位差と呼ぶことにする。
【0057】
画像形成電圧Vp=60V、非画像形成電圧V0=−30V、トナー担持ローラ電位Vt=0Vとした場合、画像形成電位差|Vp−Vt|=60V、非画像形成電位差|Vt−V0|=30Vとなる。このとき画像形成電位差と非画像形成電位差の比|Vp−Vt|:|Vt−V0|=60V:30V=2:1となる。
【0058】
図9(a)に上記電位差を与えた場合の電極周囲の電界の様子を示す。図9(b)には電界に応じて形成されるトナーの状態について概略的に示した。
図9(a)は電極部101a、101c、101eに非画像形成電圧のV0=−30Vを、電極部101b、101dには画像形成電圧のVp=60Vを印加した場合の電界を示す図である。なお、画像形成電圧Vpを印加した電極部101を画像形成電極、非画像形成電圧V0を印加した電極部101を非画像形成電極とする。トナー担持ローラ2に向かう電界と、像担持体3に向かう電界とが切り替わる変化点の位置を点線で示してある。なお、変化点とは、幅方向において電解の方向が切り替わる点である。その変化点の位置は電極間スペースSの中心から非画像形成電圧V0を印加した電極部101a、101c、101e寄りにシフトしている。図10に基づいて、電極部101aおよび101bと印加電圧に応じてシフトする変化点の位置について説明する。隣り合う電極間スペースをSとしたとき、電極部101a端部から変化点の位置Yまでの距離S0(以下、変化点距離)は、S0=S×|Vt−V0|/|Vp−V0|(=|Vt−V0|/(|Vp−Vt|+|Vt−V0|))となる。すなわち、変化点距離S0は、画像形成電位差|Vp−Vt|と非画像形成電位差|Vt−V0|の比に応じて変化する。これは次のように説明される。隣り合う電極に印加する電圧が、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0となる場合、トナー担持ローラ2の電位Vtに対するVpの電位とV0の電位は異極性になる。なお、Vtに対するVpの電位とV0の電位が異極性となるとは、(Vp−Vt)と(V0−Vt)とが一方がマイナス、もう一方がプラスとなるような関係を指す。この時、隣り合う電極間スペースSの間には、トナー担持ローラ2の電位Vtに対して同電位となる位置が存在するが、その位置は電位差|Vp−Vt|と|Vt−V0|の大きさに比例して移動する。すなわち、そのトナー担持ローラ2の電位Vtと同電位になる位置が変化点となり画像形成電極側にトナー担持ローラ2に向かう電界が形成され、変化点より非画像形成電極側に、像担持体3に向かう電界が形成されることになる。
【0059】
図9(a)に説明したような電位関係の場合、変化点距離はS0=S×(1/3)となり、S=40μmであるため、S0=13.33μmとなる。このような位置で電界の方向が変化点を持つと、図9(b)に示すように、画像形成電極部101b、101dによって形成されるトナー担持ローラ方向の電界に従って、負極性のトナーが像担持体方向に静電気力を受け、像担持体上へのトナーの移動が行われる。また、非画像形成電極部101a、101c、101eによって形成される像担持体方向の電界に従って、トナーがトナー担持ローラ方向に静電気力を受け、非画像部が形成される。その結果像担持体上に移動したトナーの幅方向の距離(ドット幅)は93.3μmとなり、トナー画像間のスペース幅は66.7μmとなる。これは、本実施例の画像形成装置の解像度に応じた一画素分の画像幅(ドット幅)である80μm、およびスペース幅80μmよりも、高解像度でドット幅およびスペース幅を形成できたことを示している。
【0060】
また、上記例ではVp=+60V、V0=−30Vとしてドット幅を大きくする調整を行った。例えば画像形成電圧をVp=+30V、非画像形成電圧をV0=−60Vとすれば、ドット幅が66.7μm、スペース幅が93.3μmとすることができ、ドット幅を小さくする制御を行うことも可能である。
【0061】
以下に、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を様々な設定で変化させた場合に得られる1画素分の画像幅について表1に示す。また表1の中で代表的な条件下で得られるドット画像(例1−1、例2−1〜2−4)について電極位置と対応させて図11に模式的に示す。ここでは、画像形成電極に対して両隣の電極に非画像形成電圧V0を印加する場合を想定して説明する。各条件において共通する設定は以下のとおりである。
像担持体移動速度 80mm/sec
電極幅L 40μm
電極間スペース幅S 40μm
画像形成電圧オンタイミング t1
画像形成電圧オフタイミング t2
画像形成電圧印加時間(t2−t1) 1.0msec
【0062】
【表1】
【0063】
Vt:トナー担持ローラ電位
Vp:画像形成電圧、|Vp−Vt|:画像形成電位差
V0:非画像形成電圧、|Vt−V0|:非画像形成電位差
表1において、例1−1が|Vp−Vt|と|Vt−V0|の値が等しい場合であり、すなわち画像形成装置の基本的な解像度に対応した電圧印加パターンである。例1−2や1−3に示す電圧設定は、VpあるいはV0のいずれか一方のみを変化させるだけで、|Vp−Vt|と|Vt−V0|の比を変化させるものである。したがって、画像(ドット)幅を大きく変化させたい場合は、VpあるいはV0のうち制御する方の電圧を大きく変化させる必要がある。ただし後述する理由によりV0を小さくしすぎるとカブリが発生したり、Vpを小さくしすぎると画像濃度が小さくなったりするため、鮮明な線やドットを再現できない。
【0064】
例2−1〜2−4は、VpとV0の両方を変化させた場合である。この場合は、VpおよびV0それぞれの変化量が小さくても、|Vp−Vt|と|Vp−Vt|の比を大きく出来る。よって、少ない電圧の変化量で画像(ドット)幅を大きく変化させたい場合に有効である。
【0065】
また例3−1〜3−3のようにトナー担持ローラに所定の電位Vtを与える方法でも、Vtに対する電位差を設けるようにVp、Vtを印加すれば、画像(ドット)幅の調整が可能である。この場合、例3−1や3−3のように、設定する電位がすべて同じ極性の電圧でコントロールできれば、電極に印加する電圧を制御する回路構成を簡略化出来る。
【0066】
以上説明したように、隣り合う電極の画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を表1に示す様々な設定に従って変化させることにより、いずれの場合も1画素分の画像(ドット)幅を太らせたり細くしたりすることが可能である。
【0067】
ここで、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0の制御可能な電圧域について述べておく。先に述べたように、本発明の画像形成プロセスにおいては、トナー担持ローラ2と像担持体3の電位差が放電開始電圧以下になるように、面状電極105に印加する電圧を制御している。したがって、画像形成電位差|Vp−Vt|や非画像形成電位差|Vt−V0|が空隙放電を発生させない電圧以下で制御する必要がある。また隣り合う電極間のリークを抑制できる電圧以下に制御することも必要である。
【0068】
また、1画素分の画像(ドット)幅をできるだけ狭くしたい場合に、画像形成電位差|Vp−Vt|の非画像形成電位差|Vt−V0|に対する比を小さくする為、画像形成電圧Vpを可能な限り低く設定すること考えてみる。画像形成電位差|Vp−Vt|を小さくすると、トナー移動領域Imdにおいてトナー担持ローラ2上のトナーを像担持体3に移動させるための十分な静電気力を与えることができなくなる。図12(a)に、本実施例の条件下で、画像形成電位差|Vp−Vt|を変化させたときの画像濃度について示したが、電位差が小さくなると画像濃度が低下していることがわかる。したがって本実施例の場合、画像形成電位差|Vp−Vt|としておよそ30V以上の電位差を設けるように画像形成電圧Vpを印加する必要がある。
【0069】
同様に、非画像形成電位差|Vt−V0|が小さくなると、トナー移動領域Imdで一旦像担持体上に移動したトナーをトナー担持ローラ2に戻すだけの十分な静電気力を与えることができず、非画像部のカブリを悪化させてしまう(図12(b)参照)。したがって、本実施例の場合、非画像形成電位差|Vt−V0|としておよそ20V以上の電位差を設けるように非画像形成電圧V0を印加する必要がある。
【0070】
なお、トナーの形状や帯電能力さらにトナー担持ローラの帯電特性や表面性、あるいは像担持体の表面特性によって、それぞれの間に働く非静電的付着力が異なる。よって、トナーを移動させるために必要となる静電気力は、画像形成装置の条件によって変化するものである。従って、画像濃度やカブリを満足するための画像形成電位差|Vp−Vt|や非画像形成電位差|Vt−V0|の限界値は、上述の値に限られるものではない。
【0071】
(6)本実施例の制御を適用した効果の比較
本実施例の制御を適用した場合の効果について図13に示した模式図を用いて説明する。ここでは像担持体幅方向に10画素分、像担持体移動方向に10画素分で構成される図13(a)に示す画像パターンを読み込んで、像担持体上に形成したトナー画像を比較する。図13(b)は、常に画像形成電極にはVp=50V、非画像形成電極にはV0=−50Vを印加した場合のトナー画像である。トナー担持ローラの電位はVt=0Vである。図13(c)が本実施例の制御を適用した場合のトナー画像である。図13(d)にはそれぞれの画素に対応する電極に印加した電圧の値を示している。本実施例の制御では、画像パターンからトナー像を形成するための画像情報を得た時に、画像パターンの輪郭部分に対応する画像部電極と非画像部電極の電位を可変に制御している。アンダーラインを付した電圧値が、本実施例の制御を適用した電極個所である。また、図13(b)、(c)における曲線は図13(a)の画像パターンの輪郭線である。
【0072】
図13より明らかなように、本実施例の制御を適用することにより、曲線で構成される画像パターンを描く際に表れる階段状の輪郭線が、従来例よりもスムーズに再現できていることがわかる。
【0073】
本実施例では、トナー像を形成するための画像情報を得た時に、当該画像情報に応じて|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する。ここで、トナー担持体の電位をVt、画像部を形成するための電極の電位をVp、画像部を形成するための電極に隣接する非画像部を形成するため電極の電位をV0としている。
【0074】
なお、本実施例の制御を行うか否かをユーザーが選べるようにしてもよい。例えば、図13(a)のような画像パターンを読み込んだ時に、600dpiの解像度をユーザーが選択すれば図13(b)のようなトナー像を形成し、1200dpiの解像度をユーザーが選択すれば図13(c)のようなトナー像を形成するようにしてもよい。
【0075】
(7)本実施例のその他の適用例
(電極の配置)
面状電極105の像担持体移動方向における配置について言及しておく。上述の画像形成プロセスより、面状電極105は少なくともその一部がトナー移動領域Imdに存在すれば良いと言うことは明らかである。本実施例ではImdは図4に示すように、トナー接触領域Icの下流端idから面状電極接触下流位置ie0までの距離で定義されている。例えば図14に示すように、電極下流端ie0が像担持体下流方向に延長して配置した場合は、トナー移動領域Imdが下流に延長される訳ではなく、iLで示すトナー移動限界位置をもってトナー移動領域Imdの下流端が決定される。トナー移動限界位置iLは、画像形成電圧Vpを印加したときに、トナーがトナー担持ローラ2から像担持体3に移動できる限界の位置である。トナー移動限界位置iLより下流に位置する電極部分(iL〜ie0)は、電圧が印加されてもトナー担持ローラ2と像担持体3間のトナーの移動に影響を及ぼすような静電気力を与えられない。したがって、トナー移動限界位置iLでの像担持体上のトナーの担持状態が維持される。
【0076】
このような電極配置により、像担持体幅方向に並ぶ各電極の下流端位置が製造上のばらつきによって異なる場合や、電極の配置がトナー担持ローラ2に対して傾くような場合においても、画像位置が各電極間でずれることが無い。
【0077】
また、図14に示すように、面状電極105の電極接触上流位置ieuがトナー接触領域Icの上流端iuより上流方向に位置しても問題は無い。最終的に像担持体上に維持される画像は、下流のトナー移動領域Imdでのトナーの移動によって形成される。このように電極を上流および下流に十分長く配置させることは、面状電極105の位置が像担持体移動方向に多少ずれた場合においても、下流トナー移動領域Imdを確実に形成できる利点がある。
【0078】
(電極のタイプ)
本実施例では、像形成電極部4として面状電極105を使用しているが、例えば図15に示すような、針状の電極部31をトナー接触領域Icより像担持体移動方向の下流位置に設けるような構成であっても良い。針状の電極部31は、像担持体3との接触面の先端が半球面である線形50〜100μm程度のリン青銅もしくはタングステンの電極である。絶縁性樹脂材料などの支持部材32によって保持され、像担持体幅方向に複数の針状電極を等間隔に配置させる構成である。このような構成では、針状電極位置ieにおいてトナー担持ローラ2と像担持体3間でトナーの移動が制御され画像形成が行われる。
【0079】
(電極の接触状態)
本実施例では、面状電極の電極部101と像担持体3の内面を接触させた構成である。例えば面状電極の長手に渡って絶縁材料より成る電極担持体間隔部材などを設けることによって、電極部101と像担持体内面がわずかの距離を保って隔てられていても良い。この場合の離間距離としては、20μm程度が望ましい。
【0080】
このような構成では、電極部と像担持体内面が接触する構成よりも、電極に印加する電圧を高くする必要があるが、一方で電極部と像担持体の摺動による電極部の磨耗を防止する等の利点がある。
【0081】
<実施例2>
本実施例に適用できる画像形成装置の構成および面状電極の構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。また実施例1との共通個所には同一符号を付する。
【0082】
実施例1では、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を変化させることにより、電界の変化点をシフトさせることで、像担持体幅方向の1画素分の画像(ドット)幅あるいはスペース幅を調整した。本実施例では、実施例1の制御にさらに像担持体移動方向の画像(ドット)長さを変化させる制御を組み合わせることにより、より精細な画像形成を行うことを特徴としている。
【0083】
既に実施例1で述べたように像担持体移動方向の画像形成は、図6に示す電極に印加する電圧のタイミングチャートに従うことにより、像担持体のプロセス速度をV(mm/s)とすると、X=V×T(mm)長さの画像を形成することが可能であることを説明した。
【0084】
したがって、電極への電圧印加時間T(s)を短くすることにより、像担持体移動方向の画像(ドット)長さを自在に調整することが可能となる。
【0085】
以下に、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を変化させると同時に、印加時間T(s)を変化させた場合に得られる画像パターンついて説明する。印加電圧VpおよびV0の値と印加時間T(s)、およびそれぞれの条件により得られる画像の幅と長さを表2に示す。またそれぞれの条件下で得られる画像について電極位置と対応させて図16に模式的に示した。ここでは、トナー担持ローラの電位はVt=0とし、画像形成電圧Vp、非画像形成電圧V0の両方を同時に変化させる場合についてのみ説明する。トナー担持ローラの電位Vtを変化させる場合や、VpもしくはV0のいずれか一方を変化させる場合については、実施例1と同様であるため省略する。各条件に共通する設定は以下の通りである。
像担持体移動速度 80mm/sec
トナー担持ローラ電位Vt 0V
電極幅L 40μm
電極間スペース幅S 40μm
画像形成電圧オンタイミング t1
画像形成電圧オフタイミング t2
電圧印加時間T t2−t1
【0086】
【表2】
【0087】
Vp:画像形成電圧、|Vp−Vt|:画像形成電位差
V0:非画像形成電圧、|Vt−V0|:非画像形成電位差
図16に示すように、隣り合う電極の画像形成電圧Vpと非画像形成電圧Vpを変化させると同時に、その印加時間T(s)を調整することにより、形成される1画素分の画像(ドット)幅と長さを同時に精細に制御できることが可能である。
【0088】
次に、実施例2の制御を適用した場合の効果について図17に示す模式図を用いて説明する。使用した画像パターンは実施例1の図13(a)と同様である。図17(a)が実施例2の制御を適用した例である。また、図17(b)には、図17(a)における太枠内の画像パターンを抜粋し、それぞれの電極に対して印加した電圧した電圧の値を示した。なお、図17(b)に示す制御は実施例2の一例を示すものであって、各電極の電圧印加パルスを更に短い周期で更新する等、制御方法はこれに限られるものではない。
【0089】
図17(a)と図13(b)の比較より、実施例2の制御に従って画像形成を行ったパターンは、曲線を描く際に表れる階段状の輪郭線が、実施例1よりもさらにスムーズに再現できていることがわかる。
【0090】
実施例2のように、画像情報に応じてさらに、電極に印加する電圧の印加時間を変更することで詳細な画像形成を行うことができる。
【0091】
<実施例3>
本実施例に適用できる画像形成装置の構成および面状電極の基本的な構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0092】
本実施例では、画像形成電極(Vp)の両隣に非画像形成電極(V0)が存在するような場合、すなわち1画素分の画像(ドット)を孤立に形成する際に、VpおよびV0を変化させることで、画像(ドット)の中心位置をシフトさせることを特徴としている。
【0093】
以下に、画像形成電圧Vpに対して、両隣の非画像形成電圧V0を変化させた場合に得られる画像パターンについて説明する。ここでは画像形成電圧Vpの両隣の非画像形成電圧をそれぞれV01およびV02と呼ぶことにする。印加電圧Vp、V01およびV02の値と、それらを変化させた時に得られる画像幅および1画素分にあたる画像(ドット)の中心位置について表3に示す。また、それぞれの条件下で得られる画像について電極位置と対応させて図18に模式的に示した。画像(ドット)の中心位置は画像形成電極(Vp)に対して紙面右側の電極(V02)側にシフトする量を+として表記する。また表3および図18には画像幅や中心位置を変化させない例として例1−1を併記してある。各条件に共通する設定は以下の通りである。
像担持体移動速度 80mm/sec
トナー担持ローラ電位Vt 0V
電極幅L 40μm
電極間スペース幅S 40μm
画像形成電圧オンタイミング t1
画像形成電圧オフタイミング t2
電圧印加時間(t2−t1) 1.0msec
【0094】
【表3】
【0095】
Vp:画像形成電圧,|Vp−Vt|:画像形成電位差
V01、V02:非画像形成電圧,|Vt−V01|、|Vt−V02|:非画像形成電位差
図18に示すように、画像形成電圧Vpの両隣に印加する非画像形成電圧V01 およびV02 を変化させることにより、画像(ドット)の中心位置をシフトさせることが可能となる。例8−1や例8−2では、画像幅を変化させずに中心位置のみシフトさせている。また、例8−3や例8−4に示すように、画像幅を変化させた上で中心位置をシフトさせることも可能である。
【0096】
次に、実施例3の制御を適用した場合の効果について図19に示す模式図を用いて説明する。図19(a)に示す画像は、約1画素分の幅で構成される斜線の画像データである。この画像データを用いて、像担持体上に形成したトナー画像を比較する。図19(b)は、常に画像形成電極にはVp=50V、非画像形成電極にはV0=−50Vを印加した場合のトナー画像である。1画素単位のドットは常に電極中心に形成されるので、斜線を再現する際には縦線を途中で階段状に繋ぎ合わせるような画像となる。図19(c)は本実施例の制御を適用した例である。また、その際の各電極に印加する画像形成電圧および非画像形成電圧を図19(d)示してある。図19(b)との比較で明らかなように、本実施例を適用することにより、斜線がよりスムーズに再現していることがわかる。
【符号の説明】
【0097】
1 画像形成装置
2 トナー担持ローラ
3 像担持体
4 電極部
31 針状電極
101 電極部
105 面状電極
110 電極電源制御部
Vt トナー担持ローラ電位
Vp 画像形成電圧
V0 非画像形成電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを記録材に担持して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やプリンタにおいては、一般的に帯電手段によって感光体の表面を一様帯電し、この一様帯電された感光体の表面にレーザー光あるいはLED光等の露光手段により感光体の表面に静電潜像を書き込む。静電潜像を形成した後に現像手段により現像して感光体表面に画像を形成する。
【0003】
一方で、装置を小型でシンプルに構成するために、記録材搬送方向に直行する方向(走査方向)に配列した複数の記録電極を用い、潜像形成と同時に現像を行う画像形成装置例が複数開示されている。
【0004】
例えば、(特許文献1)に代表されるように、針状電極を用いたマルチスタイラスプリンタでは多数の針状電極を配置した像形成電極と、円筒状の対向電極を所定の空隙を保ち対向配置し、この空隙に記録体を像形成電極に接して介在させる。この状態で像形成電極に画像信号に対応する電圧を印加し、空隙放電を発生させることでトナー像を形成する。
【0005】
また、(特許文献2)に代表される方式では、まず像担持体の内面に接触した複数の書込み電極により像担持体内面の書込層に電荷を付与させる。そして、導電性現像ローラが対向電極として機能し、像担持体表面の導電層に静電潜像が形成される。潜像形成と同時に現像ローラ上の現像剤で現像され、画像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−8544号公報
【特許文献2】特開2003−103824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う方式では、複数に分割された記録電極の間隔によって画像形成装置の走査方向の解像度が決まる。例えば600dpiの解像度を得るためには、電極間隔は42.3μmとなる。更なる高解像度化を望む為には、電極間隔を狭める必要があるが、微細加工技術による電極の高密度化には限界がある。したがって、電極間隔を小さくすることのみに頼った画像の高解像度化には限界がある。
【0008】
一方で、レーザー光やLED光の露光手段を用いて感光体の表面に静電潜像を書き込む従来方式の画像形成装置では、点灯パルスの変調や光量の調整によって、より高解像度の画像形成を行う場合が多い。すなわち、主走査方向あるいは副走査方向の1画素単位の画像(ドット)幅や長さを変化させるものである。これらの制御は、斜め線や曲線等で構成される画像を描画するときに階段状に表現されるギザギザ感を低減したい場合や、解像度以下の細線を忠実に再現したい場合などに利用される。画像形成装置が自動的に画像情報を判別して行う場合や、ユーザーが高解像度モード等を選択して行う場合がある。
【0009】
前述の記録電極を用いて画像形成を行う方式について考えてみる。電極に印加する電圧の制御により、1画素分の画像幅を調整しようと試みるも、空隙放電により電荷を付与するマルチスタイラス方式の場合、そもそも空隙のばらつきにより放電による電荷付与性が均一でないことから安定性に欠ける。
【0010】
また前述の特許文献2にあるような静電潜像を像担持体表面に形成する方式では、印加電圧の調整により付与される電荷量が異なるため、現像される現像剤量も変化する。よって、細線や微小ドットの再現性が乏しく鮮明に画像(ドット)形成を制御することが難しい。
【0011】
したがって、記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う画像形成プロセスにおいて、電極間隔に対応する1画素分の画像(ドット)幅を調整する方法は未だ開示されていない。
【0012】
そこで、本出願に係る発明の目的は、記録電極を用いて潜像形成と同時に現像を行う画像形成プロセスにおいて、電極間隔に対応する解像度よりも高解像度な画像(ドット)を形成することのできる画像形成装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する為に、本発明による画像形成装置は、以下のような特徴を有する。トナーを担持するためのトナー担持体と、前記トナーによりトナー像が形成される像担持体と、前記像担持体を挟んで前記トナー担持体に対向する位置に設けられ、前記像担持体の幅方向に複数に分割された電極とを有し、画像情報に基づいて前記電極に電圧を印加することで、前記トナー担持体と前記像担持体との間をトナーが移動することによりにトナー像を形成する画像形成装置において、前記トナー担持体の電位をVtとし、画像部を形成するための前記電極の電位をVp、前記画像部を形成するための前記電極に隣接する非画像部を形成するため前記電極の電位をV0として、前記画像情報に応じて、|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成により、|Vp−Vt|で与えられる画像形成電位差と|Vt−V0|で与えられる非画像形成電位差の比に応じて、画像部を形成するための電界方向と非画像部を形成するための電界方向の変化点がシフトする。その結果、画像形成装置の解像度に応じた1画素分の画像(ドット)幅を広げたり狭くしたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に適用できる画像形成装置の概略構成図
【図2】実施例1における像形成電極の概略構成図
【図3】実施例1における像形成電極の概略構成図
【図4】実施例1における像形成電極を配置した画像形成部を拡大した概略構成図
【図5】トナーに働く力を表す概略モデル図
【図6】像形成電極に印加する電圧のタイミングチャート
【図7】実施例1におけるトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を表した概略図
【図8】実施例1におけるトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を拡大した概略図
【図9】実施例1におけるトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を拡大した概略図
【図10】実施例1における電極間スペースと電界変化点の位置を示す概略図
【図11】実施例1における1画素分の画像(ドット)を表す概略図
【図12】実施例1における印加電圧の制御範囲を説明する概略図
【図13】実施例1における効果を比較する概略図
【図14】実施例1におけるその他の適用例を表す像形成電極の概略構成図
【図15】実施例1におけるその他の適用例を表す像形成電極の概略構成図
【図16】実施例2における1画素分の画像(ドット)を表す概略図
【図17】実施例2における効果を説明する概略図
【図18】実施例3における1画素分の画像(ドット)を表す概略図
【図19】実施例3における効果を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施例>
以下、図面を用い本発明の第1の実施例を説明する。
【0017】
(1)画像形成装置
図1は本実施例に適用できる画像形成装置の概略構成図である。
図1において、画像形成装置1は、以下の構成を備える。トナーTを外周面に担持して搬送するトナー担持体としてのトナー担持ローラ2(トナー担持体)。トナーTの像が形成される像担持体3。電圧を印加されることで、像担持体3に画像情報に基づいたトナー像を形成するための像形成電極部4。像担持体3上のトナー像を紙等の記録材Pに転写する転写部材としての転写ローラ5。
【0018】
トナー担持ローラ2は矢印A方向に回転駆動し、外周面にトナーTを担持し画像形成部に搬送すると共に像形成電極部4に対する対向電極として機能する。導電性支持体21としてφ6の金属性芯金と、その周囲に弾性層22として導電性シリコーンゴム層が形成されている。さらにその表面に厚さ10μmのウレタン樹脂層がコーティングされている。外径φ11.5のローラである。
【0019】
トナーTは不図示のトナー容器から供給され、ブレード23により所定の電荷量に帯電されると共に、トナー担持ローラ外周面に所定の厚さに規制される。ブレードは金属薄板のバネ弾性を利用して接触される。本実施例においては厚さ0.1mmのSUS板とリン青銅板を用いた。
【0020】
トナーTは平均粒径6μm、固有抵抗1016Ω・cm程度の負の帯電極性を有する非磁性1成分トナーである。なお、トナー担持ローラ2の上のトナーの帯電極性を正規の帯電極性とする。本実施例では、負極性が正規の帯電極性である。
【0021】
また、トナー担持ローラ2の導電性支持体21には電源24が接続され、トナー担持ローラ2の電位を保持するため電圧印加もしくは接地する構成としている。
【0022】
3はトナー担持体上のトナーを転移させることでトナー像を形成する像担持体であり、所定の抵抗範囲に調整された導電性を有するエンドレスベルトである。矢印B方向に所定のプロセススピードで回転移動する。以後、矢印B方向を像担持体移動方向と呼ぶ、また像担持体移動方向と交差する方向(紙面垂直方向)は、像担持体幅方向と呼ぶことにする。本実施例における像担持体3は厚さ50μm、抵抗値108.5Ω・cmの単層のポリイミドフィルムである。
4は像担持体の幅方向に複数設けられた像形成電極部であり、面状電極105を等間隔で支持部材130に固定支持している。所定の圧力で像担持体3の内面に接触配置されている。
【0023】
また、面状電極105は像形成電極電圧制御部110に接続され、像形成電極電圧制御部110は画像情報に基づいて面状電極に印加する電圧の値を変更する制御を行う。面状電極の詳細については後述する。
【0024】
本実施例における画像形成は、トナー担持ローラ2上のトナーTを面状電極105に印加する電圧による電界により、トナー担持ローラ2と像担持体3との間で移動させることにより行う。像担持体3上のトナー像は、転写ローラ5によって紙等の記録材Pに転写される。所定のタイミングで記録材Pは、像担持体3と転写ローラ5間の転写部に搬送される。記録材Pが転写部にある時に、転写バイアス制御手段51により転写ローラ5に転写バイアスが印加され、像担持体3上のトナー像が記録材P上の所定の位置に転写される。
【0025】
(2)面状電極
図2は面状電極105の一部分を表した概略構成図であり、図2(a)は像担持体接触面から見た概略構成図、図2(b)は像担持体の幅方向の断面概略構成図である。
【0026】
図2(a)に示すように面状電極105は絶縁性の電極基材102と、電極基材102上に形成され像担持体と接触する複数の電極部101と、電極部101に接続された電極駆動部103で構成されている。電極部101は像担持体の幅方向に複数の電極が分割して形成される。各々の電極部の像担持体方向幅はWであり、像担持体移動方向に対し直線状に形成されている。
【0027】
図2(b)に示すように各々の電極部101は電極基材102上に電極幅L、電極間スペースSで画像形成領域全域に形成されている。本実施例に用いた面状電極105はフレキシブルプリント基板である。電極基材102が厚さ25μmポリイミド樹脂であり、電極部101は厚さ10μmの銅電極で形成してある。電極幅Lが40μm、電極間隔Sが40μmとした。
【0028】
また、電極部101は電極駆動部103を介して像形成電極電圧制御部110に接続され、画像情報に基づいた電圧を所定のタイミングで各々の電極部101に印加し制御することにより画像形成を行う。
【0029】
図3は本発明の電極部の構成を示すブロック図である。
120は画像情報を入力するインターフェイス、121は画像情報のデータを受け取るデータ受信部、103は電極駆動部である。転送された画像情報を変換するシフトレジスタ106、シフトレジスタ106の出力状態を保持するラッチ107、ラッチ出力のデータに応じて、電極電源111から面状電極部の各電極に印加される出力を切り替えるゲート108で構成される。
【0030】
111は電極電源であり、ゲートを介して電極部101の各電極(101a、101b、101c・・・)に接続され画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を供給する。
112は制御部であり、データ受信部121、シフトレジスタ106、ラッチ107、ゲート108を制御し、I/F120から入力した画像情報に応じて電極部の各電極に印加する電圧を制御することで画像形成を行う。
【0031】
(3)画像形成部の詳細
図4は面状電極105を配置した画像形成部を拡大した概略構成図である。(トナー接触領域部Icの面状電極は略平面であるため概略構成図は平面で表している。)
図4において、Icはトナー接触領域であり、トナー担持ローラ2の上のトナーTと像担持体3とが接触する領域である。iuはトナー接触領域Icにおける像担持体移動方向Bの上流位置、idはトナー接触領域の下流位置である。
ie0は電極接触下流位置であり、像担持体3と接触する電極部101の像担持体移動方向における最下流位置である。Imdはトナー担持ローラと像担持体間のトナーの移動が行われるトナー移動領域(トナーが移動可能な領域)であり、トナー接触領域の下流位置idがImdの最上流位置となる。また、電極接触下流位置ie0は、トナー接触領域Icより像担持体移動方向の下流に配置している。
【0032】
本実施例の動作は、電極部101に電圧を印加することにより、像担持体3とトナー担持ローラ2との間の電界により、トナーをトナー担持ローラ2と像担持体間で移動させることにより行う。トナーの移動はトナー移動領域Imdで行われる。面状電極の配置位置における像担持体3とトナー担持ローラ2の間隔をトナー担持体間隔Igとすると、トナー担持体間隔Igの距離が狭いほどトナーに働く電界を強くすることができる。
【0033】
本発明においてはトナー接触領域Icを有する構成を用いることにより、トナー接触領域Icから徐々にトナー担持体間隔Igを広げる構成を実現し、電極接触下流位置ie0において、電極部101とトナー担持ローラ2を狭い間隔で構成することができる。
【0034】
以上の構成により、面状電極部101とトナー担持ローラ2との間の電界を強くすることができ、低い画像形成電圧でトナーを移動させることが可能となる。
【0035】
本実施例においてはトナー移動領域Imdにおいて、トナー担持ローラと像担持体間の空隙で放電が発生しない画像形成電圧と非画像形成電圧に設定している。
【0036】
本実施例の構成において、面状電極に印加する電圧を高くしていくと、パッシェンの法則に従い面状電極のトナー担持体間隔Igにおいて放電現象が発生する。トナー担持ローラ2上のトナーは所定の電荷量で負極性に帯電しているが、トナー担持体間隔Igで放電現象が発生すると、放電により極性反転した正極性のトナーが発生してしまう。極性が反転した正極性のトナーは、面状電極105の電界によりトナーの移動を制御することができず、良好な画像形成を行うことができない。したがって、トナー担持ローラ2と像担持体3の電位差を放電開始電圧以下となるように、面状電極105に印加する電圧を制御することにより画像形成を行うようにしている。言い換えると、放電開始電圧以下の印加電圧であっても、トナーに作用する電界を十分に働かせる必要がある。その為には、電極接触下流位置ie0におけるトナー担持体間隔Igを狭く設定することが重要であり、その手段として、トナー接触領域Icから徐々にトナー担持体間隔Igを広げる構成を実現することで達成している。
【0037】
(4)画像形成プロセスの詳細
(像担持体移動方向の画像形成プロセス)
像担持体移動方向の画像形成プロセスについて図6のモデル図を用いて説明する。
図5(a)、(b)はトナー移動領域Imd内のトナーに働く力を表し、図5(c)、(d)はトナー移動領域Imdより下流側におけるトナーに働く力を表す。トナー担持ローラ2との間の非静電的付着力を担持ローラ間付着力Fadとする。トナーTと像担持体3との間の非静電的付着力を像担持体間付着力Faiとする。電極部101とトナー担持ローラ間の電界によりトナーTに働く静電気力Feとする。
【0038】
<トナー移動領域Imd内のトナー>
図5(a)は電極部101に画像形成電圧Vpを印加したときのモデル図、図5(b)は非画像形成電圧V0を印加したときのモデル図である。トナーは、それまでの電極部に印加する電圧の状態により、トナー担持ローラ2に担持したトナーと、像担持体3に担持したトナーの両方の状態がある。
【0039】
図5(a)のように電極部101に画像形成電圧Vpを印加したとき、像担持体3とトナー担持ローラ2間の電界により、トナーには像担持体方向の静電気力が働く。次式(1)の条件を満たす電界を働かせることでトナーはトナー担持ローラから像担持体上に移動する。
Fe>Fad・・・式(1)
図5(b)のように電極部101に非画像形成電圧V0を印加したときは、トナーにはトナー担持体ローラ方向の静電気力が働く。次式(2)の条件を満たす電界を働かせることでトナーは像担持体からトナー担持ローラに移動し、像担持体上にトナー像は形成されない。
Fe>Fai・・・式(2)
【0040】
<トナー移動領域Imdより像担持体移動方向下流におけるトナー>
図5(c)はトナー移動領域Imdより像担持体移動方向下流において、電極部101に画像形成電圧Vpを印加したときのモデル図、図5(d)は非画像形成電圧V0を印加したときのモデル図である。いずれの場合も電極部101とトナー担持ローラ2間の間隔が広がるため電界による静電気力は弱く、式(3)の関係になりトナーを移動させることはできない。
Fe<Fad
Fe<Fai ・・・式(3)
よって、トナー移動領域Imdより像担持体移動方向下流におけるトナーは、電極接触下流位置ie0のトナーの担持状態を維持する。
【0041】
以上のように、トナー移動領域Imdにおけるトナーの移動は、トナーが電極接触下流位置ie0に位置したときの電圧により最終的に決定し、トナー像の形成か非画像部の形成が選択されることになる。詳細をわかりやすく以下に説明する。
【0042】
例えば図6に面状電極105に印加する電圧のタイミングチャートの一例を示す。面状電極105に非画像形成電圧V0を印加した状態から、時刻t1からt2までの時間T(s)において画像形成電圧Vpを印加し、その後に非画像形成電圧V0を印加した例である。
【0043】
図7(a)から(e)はトナー担持ローラと像担持体間のトナーの状態を表した概略図である。
時刻t1において、それまで電極部101に非画像形成電圧V0が印加されている状態から画像形成電圧Vpの印加へと切り替わる。電極部101とトナー担持ローラ2との間の電界方向が変わるので、トナーに働く静電気力がトナー担持ローラ2への方向から、像担持体方向へと切り替わり、図7(a)のトナー状態が(b)の状態へと移動する。時刻t1までに電極接触下流位置ie0を通過したトナーは、電界の影響を受けないので、トナー担持ローラ上に担持される。電極接触下流位置ie0のトナーT1を先頭にそれより上流側のトナーが像担持体上に移動する。
【0044】
時刻t2において、時間T(s)のあいだ画像形成電圧Vpが印加された状態から非画像形成電圧V0への印加へ切り替わる。トナーに働く静電気力が像担持方向から、トナー担持ローラ方向へと切り替わり、図7(c)のトナー状態が(d)の状態へと移動する。時間T(s)のあいだに電極接触下流位置ie0を通過したトナーは、電界の影響を受けないので、像担持体上に保持されたまま、下流方向に移動する。電極接触下流位置ie0のトナーT2を先頭にそれより上流側のトナーがトナー担持ローラ2上に移動する。
【0045】
時刻t3においてはt2以降、非画像形成電圧V0が印加されたままである為、その間トナー移動領域Imdでのトナーの移動は行われず、トナー担持体上に保持されたまま電極接触下流位置ie0を通過する。時刻t1からt2までに像担持体上に形成されたトナー画像は、保持された状態を保ち、時刻t2→t3の時間分だけ下流方向に移動する(図7(e))。
【0046】
ここで、像担持体は矢印B方向にプロセス速度V(mm/s)で移動するために、像担持体上にX=V×T(mm)の幅の画像を形成することができる。
【0047】
(像担持体幅方向の画像形成プロセス)
次に像担持体幅方向の画像形成プロセスを説明する。
図8(a)は面状電極105のトナー移動領域Imdにおけるトナー担持ローラ2と像担持体3間のトナーの状態を拡大した概略図であり、像担持体の幅方向を部分的に表した図である。電極部101b、101dに画像形成電圧Vpを、電極部101a、101c、101eには非画像形成電圧V0を印加した時のトナー状態である。図8(b)はトナー担持ローラ2と像担持体3間のトナー担持ローラ表面の電界を表した概略図である。
【0048】
図8において、面状電極105の電極部101a〜101eは像担持体の幅方向に、画像形成装置の解像度に応じた幅と間隔で複数配置され、像担持体3に対し接触配置している。
【0049】
トナーT(Ta〜Te)は負極性に帯電している。電極部101a〜101eのそれぞれの電界に対応するトナーをTa〜Teとした。図8(b)の矢印の向き及び長さで電界の強さを表している。
【0050】
次に、画像形成装置の解像度に応じた1画素分の画像幅(ドット幅)を形成する際の、電極部101に印加する電圧について説明する。図8(a)では、電極部101b、101dに対応するトナーTbおよびTdで形成される画像が1画素分のドットとなり、電極部101a、101c、101eに対応する部分が1画素分のスペースとなる。トナー担持ローラ2はトナー担持ローラ電源24により0Vに保持される。画像情報に応じて画像形成領域の電極部には画像形成電圧Vpである+50Vを印加し、非画像領域の電極部には非画像形成電圧V0である−50Vが選択的に印加される。画像形成電圧Vpはトナー担持ローラ2の電位に対して電極部101がトナーの帯電極性と逆極性側になる電圧であり、非画像形成電圧V0はトナー担持ローラ2の電位に対してトナーの帯電極性と同極性側になる電圧である。
【0051】
図8(b)に示すように、画像形成電圧Vpを印加した電極部101bと101dの位置にあるトナーは、トナー担持体2方向の電界により、像担持体3方向の静電気力を受ける。
【0052】
非画像形成電圧V0を印加した電極部101aと101cと101eの位置にあるトナーは、像担持体3方向の電界により、トナー担持ローラ2方向の静電気力を受ける。このような電界から受ける静電気力の影響により、図8(a)のようにトナーの移動が行われる。また、画像形成電圧Vpを印加した電極部101bと非画像形成電圧V0を印加した電極部101aの間に位置するトナーは、各々の電極によって形成される電界に応じ、トナー担持ローラ2に担持した状態と像担持体3に担持した状態が選択される。その他の各電極間も同様である。
【0053】
以上のように、像担持体の幅方向の画像形成が行われる。
本発明は、トナー担持ローラの電位を0Vとし、像形成電極にトナーと逆極性の電圧と同極性の電圧を印加することにより、トナー像形成を行ったがこれに限られるものではない。
【0054】
トナー担持ローラ2に電圧を印加する構成の場合は、トナー担持体ローラの電位に対して、正極性側の電位と負極性側の電位とを面状電極105に選択的に印加することで像形成することができる。
【0055】
(5)本実施例の画像形成プロセス
次に、本実施例の特徴となる画像形成プロセスの詳細について説明する。本実施例では隣り合う記録電極に印加する画像形成電圧Vpおよび、非画像形成電圧V0を変化させることにより、電極間スペースSに形成させる電界方向を制御し、より精細なドット形成を行うことを特徴とする。詳細を以下に説明する。
【0056】
トナー担持ローラ2の電位をVtとするとき、画像形成電圧Vpとの電位差|Vp−Vt|を画像形成電位差と呼ぶことにする。また、非画像形成電圧V0との電位差|Vt−V0|を非画像形成電位差と呼ぶことにする。
【0057】
画像形成電圧Vp=60V、非画像形成電圧V0=−30V、トナー担持ローラ電位Vt=0Vとした場合、画像形成電位差|Vp−Vt|=60V、非画像形成電位差|Vt−V0|=30Vとなる。このとき画像形成電位差と非画像形成電位差の比|Vp−Vt|:|Vt−V0|=60V:30V=2:1となる。
【0058】
図9(a)に上記電位差を与えた場合の電極周囲の電界の様子を示す。図9(b)には電界に応じて形成されるトナーの状態について概略的に示した。
図9(a)は電極部101a、101c、101eに非画像形成電圧のV0=−30Vを、電極部101b、101dには画像形成電圧のVp=60Vを印加した場合の電界を示す図である。なお、画像形成電圧Vpを印加した電極部101を画像形成電極、非画像形成電圧V0を印加した電極部101を非画像形成電極とする。トナー担持ローラ2に向かう電界と、像担持体3に向かう電界とが切り替わる変化点の位置を点線で示してある。なお、変化点とは、幅方向において電解の方向が切り替わる点である。その変化点の位置は電極間スペースSの中心から非画像形成電圧V0を印加した電極部101a、101c、101e寄りにシフトしている。図10に基づいて、電極部101aおよび101bと印加電圧に応じてシフトする変化点の位置について説明する。隣り合う電極間スペースをSとしたとき、電極部101a端部から変化点の位置Yまでの距離S0(以下、変化点距離)は、S0=S×|Vt−V0|/|Vp−V0|(=|Vt−V0|/(|Vp−Vt|+|Vt−V0|))となる。すなわち、変化点距離S0は、画像形成電位差|Vp−Vt|と非画像形成電位差|Vt−V0|の比に応じて変化する。これは次のように説明される。隣り合う電極に印加する電圧が、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0となる場合、トナー担持ローラ2の電位Vtに対するVpの電位とV0の電位は異極性になる。なお、Vtに対するVpの電位とV0の電位が異極性となるとは、(Vp−Vt)と(V0−Vt)とが一方がマイナス、もう一方がプラスとなるような関係を指す。この時、隣り合う電極間スペースSの間には、トナー担持ローラ2の電位Vtに対して同電位となる位置が存在するが、その位置は電位差|Vp−Vt|と|Vt−V0|の大きさに比例して移動する。すなわち、そのトナー担持ローラ2の電位Vtと同電位になる位置が変化点となり画像形成電極側にトナー担持ローラ2に向かう電界が形成され、変化点より非画像形成電極側に、像担持体3に向かう電界が形成されることになる。
【0059】
図9(a)に説明したような電位関係の場合、変化点距離はS0=S×(1/3)となり、S=40μmであるため、S0=13.33μmとなる。このような位置で電界の方向が変化点を持つと、図9(b)に示すように、画像形成電極部101b、101dによって形成されるトナー担持ローラ方向の電界に従って、負極性のトナーが像担持体方向に静電気力を受け、像担持体上へのトナーの移動が行われる。また、非画像形成電極部101a、101c、101eによって形成される像担持体方向の電界に従って、トナーがトナー担持ローラ方向に静電気力を受け、非画像部が形成される。その結果像担持体上に移動したトナーの幅方向の距離(ドット幅)は93.3μmとなり、トナー画像間のスペース幅は66.7μmとなる。これは、本実施例の画像形成装置の解像度に応じた一画素分の画像幅(ドット幅)である80μm、およびスペース幅80μmよりも、高解像度でドット幅およびスペース幅を形成できたことを示している。
【0060】
また、上記例ではVp=+60V、V0=−30Vとしてドット幅を大きくする調整を行った。例えば画像形成電圧をVp=+30V、非画像形成電圧をV0=−60Vとすれば、ドット幅が66.7μm、スペース幅が93.3μmとすることができ、ドット幅を小さくする制御を行うことも可能である。
【0061】
以下に、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を様々な設定で変化させた場合に得られる1画素分の画像幅について表1に示す。また表1の中で代表的な条件下で得られるドット画像(例1−1、例2−1〜2−4)について電極位置と対応させて図11に模式的に示す。ここでは、画像形成電極に対して両隣の電極に非画像形成電圧V0を印加する場合を想定して説明する。各条件において共通する設定は以下のとおりである。
像担持体移動速度 80mm/sec
電極幅L 40μm
電極間スペース幅S 40μm
画像形成電圧オンタイミング t1
画像形成電圧オフタイミング t2
画像形成電圧印加時間(t2−t1) 1.0msec
【0062】
【表1】
【0063】
Vt:トナー担持ローラ電位
Vp:画像形成電圧、|Vp−Vt|:画像形成電位差
V0:非画像形成電圧、|Vt−V0|:非画像形成電位差
表1において、例1−1が|Vp−Vt|と|Vt−V0|の値が等しい場合であり、すなわち画像形成装置の基本的な解像度に対応した電圧印加パターンである。例1−2や1−3に示す電圧設定は、VpあるいはV0のいずれか一方のみを変化させるだけで、|Vp−Vt|と|Vt−V0|の比を変化させるものである。したがって、画像(ドット)幅を大きく変化させたい場合は、VpあるいはV0のうち制御する方の電圧を大きく変化させる必要がある。ただし後述する理由によりV0を小さくしすぎるとカブリが発生したり、Vpを小さくしすぎると画像濃度が小さくなったりするため、鮮明な線やドットを再現できない。
【0064】
例2−1〜2−4は、VpとV0の両方を変化させた場合である。この場合は、VpおよびV0それぞれの変化量が小さくても、|Vp−Vt|と|Vp−Vt|の比を大きく出来る。よって、少ない電圧の変化量で画像(ドット)幅を大きく変化させたい場合に有効である。
【0065】
また例3−1〜3−3のようにトナー担持ローラに所定の電位Vtを与える方法でも、Vtに対する電位差を設けるようにVp、Vtを印加すれば、画像(ドット)幅の調整が可能である。この場合、例3−1や3−3のように、設定する電位がすべて同じ極性の電圧でコントロールできれば、電極に印加する電圧を制御する回路構成を簡略化出来る。
【0066】
以上説明したように、隣り合う電極の画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を表1に示す様々な設定に従って変化させることにより、いずれの場合も1画素分の画像(ドット)幅を太らせたり細くしたりすることが可能である。
【0067】
ここで、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0の制御可能な電圧域について述べておく。先に述べたように、本発明の画像形成プロセスにおいては、トナー担持ローラ2と像担持体3の電位差が放電開始電圧以下になるように、面状電極105に印加する電圧を制御している。したがって、画像形成電位差|Vp−Vt|や非画像形成電位差|Vt−V0|が空隙放電を発生させない電圧以下で制御する必要がある。また隣り合う電極間のリークを抑制できる電圧以下に制御することも必要である。
【0068】
また、1画素分の画像(ドット)幅をできるだけ狭くしたい場合に、画像形成電位差|Vp−Vt|の非画像形成電位差|Vt−V0|に対する比を小さくする為、画像形成電圧Vpを可能な限り低く設定すること考えてみる。画像形成電位差|Vp−Vt|を小さくすると、トナー移動領域Imdにおいてトナー担持ローラ2上のトナーを像担持体3に移動させるための十分な静電気力を与えることができなくなる。図12(a)に、本実施例の条件下で、画像形成電位差|Vp−Vt|を変化させたときの画像濃度について示したが、電位差が小さくなると画像濃度が低下していることがわかる。したがって本実施例の場合、画像形成電位差|Vp−Vt|としておよそ30V以上の電位差を設けるように画像形成電圧Vpを印加する必要がある。
【0069】
同様に、非画像形成電位差|Vt−V0|が小さくなると、トナー移動領域Imdで一旦像担持体上に移動したトナーをトナー担持ローラ2に戻すだけの十分な静電気力を与えることができず、非画像部のカブリを悪化させてしまう(図12(b)参照)。したがって、本実施例の場合、非画像形成電位差|Vt−V0|としておよそ20V以上の電位差を設けるように非画像形成電圧V0を印加する必要がある。
【0070】
なお、トナーの形状や帯電能力さらにトナー担持ローラの帯電特性や表面性、あるいは像担持体の表面特性によって、それぞれの間に働く非静電的付着力が異なる。よって、トナーを移動させるために必要となる静電気力は、画像形成装置の条件によって変化するものである。従って、画像濃度やカブリを満足するための画像形成電位差|Vp−Vt|や非画像形成電位差|Vt−V0|の限界値は、上述の値に限られるものではない。
【0071】
(6)本実施例の制御を適用した効果の比較
本実施例の制御を適用した場合の効果について図13に示した模式図を用いて説明する。ここでは像担持体幅方向に10画素分、像担持体移動方向に10画素分で構成される図13(a)に示す画像パターンを読み込んで、像担持体上に形成したトナー画像を比較する。図13(b)は、常に画像形成電極にはVp=50V、非画像形成電極にはV0=−50Vを印加した場合のトナー画像である。トナー担持ローラの電位はVt=0Vである。図13(c)が本実施例の制御を適用した場合のトナー画像である。図13(d)にはそれぞれの画素に対応する電極に印加した電圧の値を示している。本実施例の制御では、画像パターンからトナー像を形成するための画像情報を得た時に、画像パターンの輪郭部分に対応する画像部電極と非画像部電極の電位を可変に制御している。アンダーラインを付した電圧値が、本実施例の制御を適用した電極個所である。また、図13(b)、(c)における曲線は図13(a)の画像パターンの輪郭線である。
【0072】
図13より明らかなように、本実施例の制御を適用することにより、曲線で構成される画像パターンを描く際に表れる階段状の輪郭線が、従来例よりもスムーズに再現できていることがわかる。
【0073】
本実施例では、トナー像を形成するための画像情報を得た時に、当該画像情報に応じて|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する。ここで、トナー担持体の電位をVt、画像部を形成するための電極の電位をVp、画像部を形成するための電極に隣接する非画像部を形成するため電極の電位をV0としている。
【0074】
なお、本実施例の制御を行うか否かをユーザーが選べるようにしてもよい。例えば、図13(a)のような画像パターンを読み込んだ時に、600dpiの解像度をユーザーが選択すれば図13(b)のようなトナー像を形成し、1200dpiの解像度をユーザーが選択すれば図13(c)のようなトナー像を形成するようにしてもよい。
【0075】
(7)本実施例のその他の適用例
(電極の配置)
面状電極105の像担持体移動方向における配置について言及しておく。上述の画像形成プロセスより、面状電極105は少なくともその一部がトナー移動領域Imdに存在すれば良いと言うことは明らかである。本実施例ではImdは図4に示すように、トナー接触領域Icの下流端idから面状電極接触下流位置ie0までの距離で定義されている。例えば図14に示すように、電極下流端ie0が像担持体下流方向に延長して配置した場合は、トナー移動領域Imdが下流に延長される訳ではなく、iLで示すトナー移動限界位置をもってトナー移動領域Imdの下流端が決定される。トナー移動限界位置iLは、画像形成電圧Vpを印加したときに、トナーがトナー担持ローラ2から像担持体3に移動できる限界の位置である。トナー移動限界位置iLより下流に位置する電極部分(iL〜ie0)は、電圧が印加されてもトナー担持ローラ2と像担持体3間のトナーの移動に影響を及ぼすような静電気力を与えられない。したがって、トナー移動限界位置iLでの像担持体上のトナーの担持状態が維持される。
【0076】
このような電極配置により、像担持体幅方向に並ぶ各電極の下流端位置が製造上のばらつきによって異なる場合や、電極の配置がトナー担持ローラ2に対して傾くような場合においても、画像位置が各電極間でずれることが無い。
【0077】
また、図14に示すように、面状電極105の電極接触上流位置ieuがトナー接触領域Icの上流端iuより上流方向に位置しても問題は無い。最終的に像担持体上に維持される画像は、下流のトナー移動領域Imdでのトナーの移動によって形成される。このように電極を上流および下流に十分長く配置させることは、面状電極105の位置が像担持体移動方向に多少ずれた場合においても、下流トナー移動領域Imdを確実に形成できる利点がある。
【0078】
(電極のタイプ)
本実施例では、像形成電極部4として面状電極105を使用しているが、例えば図15に示すような、針状の電極部31をトナー接触領域Icより像担持体移動方向の下流位置に設けるような構成であっても良い。針状の電極部31は、像担持体3との接触面の先端が半球面である線形50〜100μm程度のリン青銅もしくはタングステンの電極である。絶縁性樹脂材料などの支持部材32によって保持され、像担持体幅方向に複数の針状電極を等間隔に配置させる構成である。このような構成では、針状電極位置ieにおいてトナー担持ローラ2と像担持体3間でトナーの移動が制御され画像形成が行われる。
【0079】
(電極の接触状態)
本実施例では、面状電極の電極部101と像担持体3の内面を接触させた構成である。例えば面状電極の長手に渡って絶縁材料より成る電極担持体間隔部材などを設けることによって、電極部101と像担持体内面がわずかの距離を保って隔てられていても良い。この場合の離間距離としては、20μm程度が望ましい。
【0080】
このような構成では、電極部と像担持体内面が接触する構成よりも、電極に印加する電圧を高くする必要があるが、一方で電極部と像担持体の摺動による電極部の磨耗を防止する等の利点がある。
【0081】
<実施例2>
本実施例に適用できる画像形成装置の構成および面状電極の構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。また実施例1との共通個所には同一符号を付する。
【0082】
実施例1では、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を変化させることにより、電界の変化点をシフトさせることで、像担持体幅方向の1画素分の画像(ドット)幅あるいはスペース幅を調整した。本実施例では、実施例1の制御にさらに像担持体移動方向の画像(ドット)長さを変化させる制御を組み合わせることにより、より精細な画像形成を行うことを特徴としている。
【0083】
既に実施例1で述べたように像担持体移動方向の画像形成は、図6に示す電極に印加する電圧のタイミングチャートに従うことにより、像担持体のプロセス速度をV(mm/s)とすると、X=V×T(mm)長さの画像を形成することが可能であることを説明した。
【0084】
したがって、電極への電圧印加時間T(s)を短くすることにより、像担持体移動方向の画像(ドット)長さを自在に調整することが可能となる。
【0085】
以下に、画像形成電圧Vpと非画像形成電圧V0を変化させると同時に、印加時間T(s)を変化させた場合に得られる画像パターンついて説明する。印加電圧VpおよびV0の値と印加時間T(s)、およびそれぞれの条件により得られる画像の幅と長さを表2に示す。またそれぞれの条件下で得られる画像について電極位置と対応させて図16に模式的に示した。ここでは、トナー担持ローラの電位はVt=0とし、画像形成電圧Vp、非画像形成電圧V0の両方を同時に変化させる場合についてのみ説明する。トナー担持ローラの電位Vtを変化させる場合や、VpもしくはV0のいずれか一方を変化させる場合については、実施例1と同様であるため省略する。各条件に共通する設定は以下の通りである。
像担持体移動速度 80mm/sec
トナー担持ローラ電位Vt 0V
電極幅L 40μm
電極間スペース幅S 40μm
画像形成電圧オンタイミング t1
画像形成電圧オフタイミング t2
電圧印加時間T t2−t1
【0086】
【表2】
【0087】
Vp:画像形成電圧、|Vp−Vt|:画像形成電位差
V0:非画像形成電圧、|Vt−V0|:非画像形成電位差
図16に示すように、隣り合う電極の画像形成電圧Vpと非画像形成電圧Vpを変化させると同時に、その印加時間T(s)を調整することにより、形成される1画素分の画像(ドット)幅と長さを同時に精細に制御できることが可能である。
【0088】
次に、実施例2の制御を適用した場合の効果について図17に示す模式図を用いて説明する。使用した画像パターンは実施例1の図13(a)と同様である。図17(a)が実施例2の制御を適用した例である。また、図17(b)には、図17(a)における太枠内の画像パターンを抜粋し、それぞれの電極に対して印加した電圧した電圧の値を示した。なお、図17(b)に示す制御は実施例2の一例を示すものであって、各電極の電圧印加パルスを更に短い周期で更新する等、制御方法はこれに限られるものではない。
【0089】
図17(a)と図13(b)の比較より、実施例2の制御に従って画像形成を行ったパターンは、曲線を描く際に表れる階段状の輪郭線が、実施例1よりもさらにスムーズに再現できていることがわかる。
【0090】
実施例2のように、画像情報に応じてさらに、電極に印加する電圧の印加時間を変更することで詳細な画像形成を行うことができる。
【0091】
<実施例3>
本実施例に適用できる画像形成装置の構成および面状電極の基本的な構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0092】
本実施例では、画像形成電極(Vp)の両隣に非画像形成電極(V0)が存在するような場合、すなわち1画素分の画像(ドット)を孤立に形成する際に、VpおよびV0を変化させることで、画像(ドット)の中心位置をシフトさせることを特徴としている。
【0093】
以下に、画像形成電圧Vpに対して、両隣の非画像形成電圧V0を変化させた場合に得られる画像パターンについて説明する。ここでは画像形成電圧Vpの両隣の非画像形成電圧をそれぞれV01およびV02と呼ぶことにする。印加電圧Vp、V01およびV02の値と、それらを変化させた時に得られる画像幅および1画素分にあたる画像(ドット)の中心位置について表3に示す。また、それぞれの条件下で得られる画像について電極位置と対応させて図18に模式的に示した。画像(ドット)の中心位置は画像形成電極(Vp)に対して紙面右側の電極(V02)側にシフトする量を+として表記する。また表3および図18には画像幅や中心位置を変化させない例として例1−1を併記してある。各条件に共通する設定は以下の通りである。
像担持体移動速度 80mm/sec
トナー担持ローラ電位Vt 0V
電極幅L 40μm
電極間スペース幅S 40μm
画像形成電圧オンタイミング t1
画像形成電圧オフタイミング t2
電圧印加時間(t2−t1) 1.0msec
【0094】
【表3】
【0095】
Vp:画像形成電圧,|Vp−Vt|:画像形成電位差
V01、V02:非画像形成電圧,|Vt−V01|、|Vt−V02|:非画像形成電位差
図18に示すように、画像形成電圧Vpの両隣に印加する非画像形成電圧V01 およびV02 を変化させることにより、画像(ドット)の中心位置をシフトさせることが可能となる。例8−1や例8−2では、画像幅を変化させずに中心位置のみシフトさせている。また、例8−3や例8−4に示すように、画像幅を変化させた上で中心位置をシフトさせることも可能である。
【0096】
次に、実施例3の制御を適用した場合の効果について図19に示す模式図を用いて説明する。図19(a)に示す画像は、約1画素分の幅で構成される斜線の画像データである。この画像データを用いて、像担持体上に形成したトナー画像を比較する。図19(b)は、常に画像形成電極にはVp=50V、非画像形成電極にはV0=−50Vを印加した場合のトナー画像である。1画素単位のドットは常に電極中心に形成されるので、斜線を再現する際には縦線を途中で階段状に繋ぎ合わせるような画像となる。図19(c)は本実施例の制御を適用した例である。また、その際の各電極に印加する画像形成電圧および非画像形成電圧を図19(d)示してある。図19(b)との比較で明らかなように、本実施例を適用することにより、斜線がよりスムーズに再現していることがわかる。
【符号の説明】
【0097】
1 画像形成装置
2 トナー担持ローラ
3 像担持体
4 電極部
31 針状電極
101 電極部
105 面状電極
110 電極電源制御部
Vt トナー担持ローラ電位
Vp 画像形成電圧
V0 非画像形成電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを担持するためのトナー担持体と、
前記トナーによりトナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体を挟んで前記トナー担持体に対向する位置に設けられ、複数に分割された電極部とを有し、
画像情報に基づいて前記電極部に電圧を印加することで、前記トナー担持体と前記像担持体との間をトナーが移動することによりトナー像を形成し、
前記トナー担持体の電位をVtとし、画像部を形成するための前記電極部の電位をVp、前記画像部を形成するための前記電極部に隣接する非画像部を形成するため前記電極部の電位をV0として、
前記画像情報に応じて、|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する制御部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像部を形成するための前記電極部の両側に隣接するように非画像部を形成するため電極部が存在する場合において、
非画像部を形成するため前記電極部の一方の電位をV01、
非画像部を形成するため前記電極部の他方の電位をV02として、
前記画像情報に応じて、|Vt−V01|と|Vt−V02|の値が異なるように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部において電位差を可変とする制御を行う際、前記画像情報に応じて電圧の印加時間を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー担持体と前記像担持体は接触配置して、トナー接触領域を形成し、
前記トナーが移動するトナー移動領域は、前記トナー接触領域よりも前記像担持体の移動方向の下流側に存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電極部と前記像担持体とは、接触して設けられていることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項1】
トナーを担持するためのトナー担持体と、
前記トナーによりトナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体を挟んで前記トナー担持体に対向する位置に設けられ、複数に分割された電極部とを有し、
画像情報に基づいて前記電極部に電圧を印加することで、前記トナー担持体と前記像担持体との間をトナーが移動することによりトナー像を形成し、
前記トナー担持体の電位をVtとし、画像部を形成するための前記電極部の電位をVp、前記画像部を形成するための前記電極部に隣接する非画像部を形成するため前記電極部の電位をV0として、
前記画像情報に応じて、|Vp−Vt|、または|Vt−V0|のうち、少なくとも一方の電位差を可変に制御する制御部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像部を形成するための前記電極部の両側に隣接するように非画像部を形成するため電極部が存在する場合において、
非画像部を形成するため前記電極部の一方の電位をV01、
非画像部を形成するため前記電極部の他方の電位をV02として、
前記画像情報に応じて、|Vt−V01|と|Vt−V02|の値が異なるように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部において電位差を可変とする制御を行う際、前記画像情報に応じて電圧の印加時間を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー担持体と前記像担持体は接触配置して、トナー接触領域を形成し、
前記トナーが移動するトナー移動領域は、前記トナー接触領域よりも前記像担持体の移動方向の下流側に存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電極部と前記像担持体とは、接触して設けられていることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−136013(P2012−136013A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247813(P2011−247813)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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