説明

画像形成装置

【課題】 フッ素を含有する非晶質カーボン等の表面保護層を有する感光体を備え,それを研磨する画像形成装置において,そのフッ素含有率が感光体の深さ方向に変化した場合であっても,形成される画像の濃度の変動が生じにくく,常に最適な濃度の画像が得られる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 フッ素を含有する非晶質カーボン(又は非晶質シリコンカーバイド)からなる表面保護層14を有する感光体1と,帯電装置21,露光装置22,現像装置23を備える作像部2と,感光体1の表面を研磨する研磨手段(摺擦ローラ52)とを備え,さらに感光体1の表面における摩擦抵抗あるいは硬度を検知する検知手段7と,検知された摩擦抵抗あるいは硬度に応じて,作像部2による画像形成の条件を,感光体1の表面のうち露光装置22により露光された部分と現像装置23との電位差がほぼ一定となるように変更させる制御手段7を備える画像形成装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,複写機,プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に関し,特に,非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドにフッ素が含有されてなる表面保護層を有する感光体を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,複写機,プリンタ,ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置は,ドラム状の感光体と,その周囲に帯電装置,露光装置,現像装置,転写装置,クリーニング装置,除電装置等を備えている。
その動作は,まず感光体が帯電装置によって帯電され,露光装置によって露光されることで感光体の表面に静電潜像が形成される。そして静電潜像が現像装置によってトナー像として感光体の表面に顕像化され(現像工程),このトナー像が転写装置にて用紙等の被転写材(2次転写方式の場合は転写ベルト等の中間転写体)に転写されて被転写材上に画像が形成される。上記した被転写材上への画像形成後,被転写材に転写されず感光体に残留するトナーはクリーニング装置(ブレードやローラ等)によって感光体から除去され,感光体は除電装置により除電される。
【0003】
従来,こうした画像形成装置において,感光体には非晶質シリコンが広く用いられているが,画像特性の長期にわたる安定性の向上や感光体の長寿命化を図るため,より硬度が高く耐摩耗性,耐刷性に優れる非晶質シリコンカーバイドや非晶質カーボンによって感光体の表面を保護する表面保護層が形成されたものが使用されてきている。
しかし,非晶質シリコンカーバイドや非晶質カーボンからなる表面保護層は,帯電工程で酸化したり,放電生成物(コロナ放電時に発生するオゾンや窒素酸化物等の活性物質及びそれらの反応生成物)が付着したりすると,高湿環境において酸化した部分や付着した放電生成物が水分を吸着して低抵抗層を形成し,潜像電荷が潜像方向に流れ画像がぼやけたり擦れたように流れたりする所謂「画像流れ」を発生しやすくなるといった問題があった。
この画像流れの原因となる感光体表面の水分の吸着は,感光体内部にヒータを配置し感光体を高温に保つことで防止できることが知られているが,これは感光体の表面へのトナーの固着,感光体の帯電能低下,画像形成装置の消費電力の増大等,別の問題が生じる。
そこで特許文献1では,非晶質シリコンカーバイドや非晶質カーボンにフッ素を含有させることにより感光体の表面の疎水性を高め,ヒータを設けることなく画像流れの防止を実現している。
しかしながら,特許文献1記載の感光体では,感光体の表面への放電生成物の付着や,感光体の表面の酸化等は防止していない。そのため,特許文献1記載のフッ素を含有する感光体も継続的な使用により放電生成物の付着や酸化が進むと,水分を吸着しやすくなり,画像流れを確実には防止できない。
一方,特許文献2では,感光体の表面を研磨して,感光体の表面に付着する放電生成物や感光体の表面の酸化した部分を除去し,画像流れを防止している。
上記した特許文献1及び2に開示された技術を組み合わせれば,感光体の表面の疎水性により水分が吸着しにくく,また感光体を研磨することにより水分を吸着しやすい放電生成物の感光体の表面への付着も防止できるので,より確実に画像流れを防止することはできると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−42551号公報
【特許文献2】特開2006−234894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,従来の表面保護層を有する感光体では,表面保護層の層厚さが薄くなるほど,その層厚さに比例して,感度(所定の露光量に対する感光体の表面電位の変化の割合)が高くなることが知られている。そのため,感光体を一定の割合で研磨する場合,常に最適な濃度の画像を得るために例えば露光量等を一定の割合で変化させる等,画像形成条件の変更が行われていた。
しかしながら,非晶質シリコンカーバイドや非晶質カーボンにフッ素を含有した表面保護層を有する感光体は,その製法のために,表面保護層の層厚さに対する感度の変化量の割合を均一にすること,別言すると,表面保護層の表面からの深さ方向におけるフッ素の含有率を均一にすることが極めて難しい。
詳しく述べると,非晶質シリコンカーバイドや非晶質カーボンへのフッ素の添加は,まず非晶質シリコンカーバイド又は非晶質カーボンが層状に形成され,これにスパッタリングによりフッ素が照射されて含浸されることにより行われる。そして,この工程が複数回繰り返されて相当厚さ(深さ)の表面保護層が形成される。従って,表面保護層は,その表面からの深さによってフッ素含有率が不均一となっている。例えば,フッ素を含有する非晶質カーボン(CF層)のフッ素含有率は,表面からの深さ位置によって図4に示すように変化している。
そして,非晶質シリコンカーバイドや非晶質カーボンからなる表面保護層を有する感光体は,表面のフッ素の含有率が増せば増すほど,感度が低くなることが知られている(例えば図5参照)。
従って,感光体の感度は,既述のように表面保護層の層厚さが薄くなるほど,即ち表面からの深さ位置が深いほど高くなるが,その表面からの深さによってフッ素含有率が異なるので,その表面から深さ方向に均一な割合の変化量では変化しない(例えば図6参照)。 そのため,特許文献2のように感光体の表面を研磨手段により一定の割合で研磨すると,感光体の表面の感度が,その変化量を変動させながら変化する。
感度が変化すると,感光体の表面のうち所定の露光量で露光された部分(露光領域)の電位が変化する。すると,現像バイアス電圧が印加された現像ローラ等の現像手段と,感光体の露光領域との電位差が変化する。そして,現像手段による静電潜像の顕像化(現像工程)は,帯電したトナーが,上記の現像手段と露光領域との電位差によって,現像手段から感光体の表面に移動することでなされる。そのため,上記の現像手段と露光領域との電位差が変化すると,トナーの移動量が変動する,即ち形成される画像の濃度が変動するといった問題が生じる。
つまり,フッ素を含有する非晶質カーボン等の表面保護層を有する感光体を研磨する画像形成装置においては,感度の変化量,即ち現像手段と露光領域の電位差の変化量が一定の割合でないため,常に最適な濃度の画像を得ることが極めて難しい。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって,その目的とするところは,フッ素を含有する非晶質カーボン等の表面保護層を有する感光体を備え,それを研磨する画像形成装置において,そのフッ素含有率が感光体の深さ方向に変化した場合であっても,形成される画像の濃度の変動が生じにくく,常に最適な濃度の画像が得られる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は,非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドにフッ素が含有されてなる表面保護層を有する感光体と,少なくとも前記感光体の表面を一様に帯電させる帯電手段,帯電された前記感光体の表面にビーム光を走査させて静電潜像を形成する露光手段,前記静電潜像を現像剤で顕像化させる現像手段を有し,前記感光体の表面に画像を形成する作像部と,前記感光体の表面を研磨する研磨手段とを備えることを基本構成としている。
上記基本構成により,本発明では,まず表面保護層を形成する非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドにフッ素が含有されていることにより,感光体の表面の疎水性を高め,感光体の表面に付着する放電生成物等の水分吸着を抑制し,且つ研磨手段により感光体の表面を研磨することにより,感光体の表面に付着する放電生成物や感光体の表面の酸化された部分を除去して画像流れを防止している。
そして,前記感光体の表面における摩擦抵抗あるいは硬度を検知する検知手段と,前記検知手段によって検知されるあるいは硬度摩擦抵抗に応じて,前記作像部による前記感光体の表面への画像形成の条件を変更させる制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置として構成される。
非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドはフッ素が含有されていると,その含有率が高いほど表面の摩擦抵抗が小さく,硬度が低いことが知られ,これを表面保護層として備える感光体はフッ素の含有率が高いほど感度(所定の露光量に対する感光体の表面電位の変化の割合)が,低いことが知られている。
そのため,前記検知手段により感光体の表面の摩擦抵抗あるいは硬度を検知することにより,実質的には,感光体の表面の感度をも検知することになる。本発明では前記制御手段によって,前記検知手段で検知した摩擦抵抗あるいは硬度,即ち感光体の表面の感度に応じて,前記作像部による前記感光体の表面への画像形成の条件を変更させる。画像形成条件の変更は,感光体の表面のうちの露光装置により所定の露光量で露光された部分(露光領域)と,現像バイアス電圧が印加された現像手段との電位差をほぼ一定に保つようになされる。
これにより,前記研磨手段によって感光体の表面が研磨されて,感光体表面のフッ素含有率が変化したとしても,感度に応じて,露光領域と現像手段との電位差を一定に保つように条件が変更されて画像形成されるので,作像部によって形成される画像の濃度が変動しにくく,常に最適な濃度の画像が得られる。
具体的には,前記検知手段が,前記感光体の表面の摩擦抵抗が大きい時ほど大きくなる前記感光体の駆動トルクを測定することによって,前記感光体の表面の摩擦抵抗あるいは硬度を算出することが可能となる。
【0007】
前記制御手段は,作像部による感光体の表面への画像形成の条件のうち,例えば前記露光手段によって感光体の表面に走査されるビーム光の露光量を変化させるものとすることができる。露光量とは露光手段に備わる光源から出射されるビーム光の照度と照射時間の積であり,この照度と照射時間の少なくとも一方が変化させられて露光量が変更される。
感度に応じて露光量を変化させることにより,感光体の表面のうち露光された部分(露光領域)の電位をほぼ一定とすることができ,露光領域と現像手段との電位差をほぼ一定に保つことが可能となる。
また,前記制御手段は,作像部による感光体の表面への画像形成の条件のうち,前記帯電手段に印加される帯電バイアス電圧と前記現像手段に印加される現像バイアス電圧の少なくとも一方を変化させるものとすることもできる。
帯電手段に印加される帯電バイアス電圧を変化させると,感度が変化しても露光領域の電位をほぼ一定とすることができ,露光領域と現像手段との電位差をほぼ一定に保つことが可能となる。現像手段に印加される現像バイアス電圧を変化させると,現像手段の電位を変化させることができるので,露光領域の電位が変化しても,露光領域と現像手段との電位差をほぼ一定に保つことが可能となる。
なお,前記研磨手段の具体例としては,前記感光体から被転写材にトナー像を転写した後,前記感光体に残留するトナーを除去するために,前記感光体に当接される摺擦ローラが挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では,まず表面保護層を形成する非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドにフッ素が含有されていることにより,感光体の表面の疎水性を高め,感光体の表面に付着する放電生成物等の水分吸着を抑制し,且つ研磨手段により感光体の表面を研磨することにより,感光体の表面に付着する放電生成物や感光体の表面の酸化された部分を除去して画像流れを防止している。
さらに検知手段により感光体の表面の摩擦抵抗あるいは硬度を検知するが,非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドはフッ素が含有されていると,その含有率が高いほど表面の摩擦抵抗が小さく,硬度が低いことが知られ,これを表面保護層として備える感光体はフッ素の含有率が高いほど感度(所定の露光量に対する感光体の表面電位の変化の割合)が,低いことが知られている。
そのため,前記検知手段により感光体の表面の摩擦抵抗あるいは硬度を検知することにより,実質的には,感光体の表面の感度をも検知することになる。本発明では前記制御手段によって,前記検知手段で検知した摩擦抵抗あるいは硬度,即ち感光体の表面の感度に応じて前記作像部による前記感光体の表面への画像形成の条件を変更させる。画像形成条件の変更は,感光体の表面のうちの露光装置により露光された部分(露光領域)と,現像バイアス電圧が印加された現像手段との電位差を一定に保つようになされる。
これにより,前記研磨手段によって感光体の表面が研磨されて,感光体表面のフッ素含有率が変化したとしても,感度に応じて,露光領域と現像手段との電位差を一定に保つように条件が変更されて画像形成されるので,作像部によって形成される画像の濃度が変動しにくく,常に最適な濃度の画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る画像形成装置の画像形成部を模式的に示す概略図。
【図2】本発明に係る画像形成装置の感光体の表面近傍を示す部分拡大断面図。
【図3】本発明に係る画像形成装置における主要構成の関係を示すブロック図。
【図4】フッ素を含有するアモルファスカーボンの表面からの深さ位置とその深さ位置におけるフッ素含有率の関係を示すグラフ。
【図5】フッ素を含有するアモルファスカーボンのフッ素含有率と感度の関係を示すグラフ。
【図6】フッ素を含有するアモルファスカーボンの表面からの深さ位置とその深さ位置における感度の関係を示すグラフ。
【図7】フッ素を含有するアモルファスカーボンのフッ素含有率と硬度の関係を示すグラフ。
【図8】フッ素を含有するアモルファスカーボンの表面からの深さ位置とその深さ位置における硬度の関係を示すグラフ。
【図9】フッ素を含有するアモルファスカーボンのフッ素含有率と表面摩擦抵抗μの関係を示すグラフ。
【図10】フッ素を含有するアモルファスカーボンの表面摩擦抵抗μと感光体駆動トルクの関係を示すグラフ。
【図11】本発明に係る画像形成装置の制御手段によって実行される画像形成条件の変更の手順の一例を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず,図1を用いて本発明に係る画像形成装置の画像形成部について概略を説明する。なお,本発明は,電子写真方式の画像形成装置であればプリンタ,複写機,ファクシミリ装置等の各種装置に適用することができるが,本実施形態ではモノクロのプリンタXを一例に説明する。
本実施形態に係るプリンタXは,基本構成として給紙部(不図示),画像形成部100,定着部(不図示),排紙部(不図示)等を備える。給紙部より供給された用紙やOHPフィルム等の被転写材(以下,単に用紙Pと称す)に画像形成部100にてトナー画像が形成される。このトナー画像が定着部にて加熱,加圧されて用紙Pに定着され,トナーが定着された用紙Pは排紙部へ排出される。なお,本発明は画像形成部100に係るものであり,他の構成は本発明と直接の関係がないので詳しい説明を省略する。
プリンタXの画像形成部100は,回転駆動されるドラム状の感光体1と,帯電装置21(帯電手段),レーザビーム光Lによって感光体1を露光する露光装置22(露光手段,図1では不図示),現像ローラを備える現像装置23(現像手段)とからなり感光体1の表面に画像を形成する作像部2と,転写ローラを備える転写装置3と,除電ランプ4と,クリーニング装置5とを備える。転写装置3は,トナーの帯電極性とは逆極性を示すバイアス電圧を印加する電源(不図示)を備える。クリーニング装置5は感光体1に当接固定され感光体1の表面のトナーを掻き取るクリーニングブレード51と,感光体1に当接され補助的クリーニング手段として用いられる摺擦ローラ52とを備える。
帯電装置21は,帯電ローラによって感光体1の表面を所定の極性,電位に一様に帯電させるものであるが,これに限定されるものではない。
露光装置22は,レーザビーム光Lを出射する光源と,光源より出射されたレーザビーム光を感光体1の主走査方向(回転軸方向)に走査させる光学系とを有する光走査装置であればよく,特には限定されないが,光源の照度を調整できるものであることが好ましい。
現像装置23は,一成分現像方式のものや二成分現像方式のもの等,特には限定されない。
摺擦ローラ52の材質は特に限定されないが,例えばエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)の発泡体等が挙げられる。
【0011】
このプリンタXによる画像形成動作は,従来の画像形成装置と特に変わるところはなく,感光体1の表面が帯電装置21によって一様に帯電され,露光装置の発するレーザビーム光Lが感光体1の表面に走査されて静電潜像を形成し,現像装置23から供給される現像剤(トナー)によって静電潜像が顕像化されて感光体1の表面にトナー像が形成される。この時,トナーは現像装置23と感光体1の表面の電位差によって現像装置23から感光体1の表面へ移動する。
その後,転写装置3に前記バイアス電圧が印加されることで,前記トナー像が用紙Pに転写される。トナー像が用紙Pに転写された後,感光体1の表面に残留する未転写トナーは,摺擦ローラ52及びクリーニングブレード51によって除去され,感光体1の表面は除電ランプ4によって除電される。
また,クリーニング装置5はスクレーパ53や回収スパイラル54等を備えている。クリーニングブレード51で掻き取られたトナーや摺擦ローラ52に付着されスクレーパ53でクリーニング装置5内に掻き落とされたトナーは,回収スパイラル54によって搬送されて回収タンク(不図示)に回収される。
なお,言うまでもないが上記した画像形成部100を1つのユニットとし,ブラック,イエロー,シアン,マゼンダの各色トナー用のユニットを備え,各色トナーを用紙Pに積層すればカラープリンタ等のフルカラー画像を形成可能な画像形成装置とすることができる。
また,感光体1から用紙Pにトナーを直接転写せず,一旦,中間転写ベルト等の中間転写体を介して用紙Pに転写する2次転写方式の画像形成装置としても良い。
【0012】
本実施形態において感光体1は,図2に示すようにアルミニウム等の導電性基材11上に,アモルファスシリコンに硼素等を含有してなる電荷注入阻止層12,アモルファスシリコンからなる光導電層13,アモルファスカーボン(非晶質カーボン)からなる表面保護層14が順次積層されたアモルファスシリコン感光体である。そして,表面保護層14を形成するアモルファスカーボンにはフッ素が含有されている。
このアモルファスカーボンで形成された表面保護層14を有することにより,感光体1の表面の耐摩耗性や耐刷性を向上させている。
そして,アモルファスカーボンにフッ素が含有されていることにより,感光体1の表面の疎水性を高め,感光体1の表面に付着する放電生成物等への水分吸着を抑制し,画像流れによる画質低下を防止している。
なお,感光体1は,これに限定されず,表面保護層14がアモルファスシリコンカーバイド(非晶質シリコンカーバイド)にフッ素を含有したもので形成されていてもよく,また前記表面保護層14を有すれば有機感光体であっても良い。
さらに,感光体1の表面は,研磨手段としての摺擦ローラ52が感光体1に接触して回転することにより研磨される。
即ち,フッ素の含有された感光体1の表面も継続的使用により,放電生成物の付着や酸化等が進むと,画像流れが起こりうるが,上記のように摺擦ローラ52により研磨することで,感光体1の表面に付着する放電生成物や感光体1の表面の酸化された部分が除去され,画像流れが防止される。
上記したように,表面保護層14がフッ素を含有したアモルファスカーボンで形成されており,さらにその表面を摺擦ローラ52で研磨することにより,画像流れの原因となる「放電生成物の付着物等の水分吸着」と「放電生成物等の付着」の両方を防止して,より確実に画像流れを防止している。
【0013】
摺擦ローラ52による感光体1の表面の研磨は,例えば,既述のように転写されずに感光体1の表面に残留し,摺擦ローラ52に付着されて回収されるトナーを利用して行われる。具体的には,このトナーには酸化チタン等の研磨作用を有する微粒子が外添材として添加されており,これが摺擦ローラ52に担持されて砥粒となり感光体1と摺擦ローラ52のニップ部分を通過することにより,感光体1の表面が研磨される。このように摺擦ローラ52を研磨手段として兼用すると,装置自体の小型化や構造の簡単化に貢献することができる。
なお,本実施形態では,摺擦ローラ52が研磨手段として兼用し,トナーの外添剤を砥粒として使用して研磨しているが,これに限定されるものではない。例えば,摺擦ローラ52そのものが研磨作用を有する材質や表面形状ものとしても良いし,摺擦ローラ52とは別に研磨ブレードや研磨ローラ等の研磨手段を設けてもよい。また,この場合の研磨ブレードはクリーニングブレード51と兼用してもよい。
【0014】
この実施形態に係るプリンタXは,図3に示すように,感光体1の表面に画像を形成する作像部2に,帯電装置21,露光装置22,現像装置23とを備え,感光体1の表面の摩擦抵抗あるいは硬度を検知する検知手段6と,帯電装置21,露光装置22,現像装置23による画像形成の条件を変更させる制御手段7を備える。
制御手段7は,検知手段6によって検知された感光体1の表面の摩擦抵抗あるいは硬度に応じて前記画像形成条件を変更する。詳しくは,感光体1の表面のうちの露光装置22により露光された部分(以下,露光領域と称す)と,現像バイアス電圧が印加された現像装置23との電位差をほぼ一定に保つように変更する。画像形成条件の具体例については後述する。
【0015】
ここで,表面保護層14を形成するフッ素を含有するアモルファスカーボン(以下,CF層と称す)について図4〜7を用いて説明する。
まず,CF層の製法について述べると,アモルファスカーボンへのフッ素の添加は,薄層として形成されたアモルファスカーボン上にスパッタリングやCVD法等の薄膜製造技術によってフッ素が照射されて含浸されることにより行われる。この薄層の形成とフッ素の添加が複数回繰り返し行われて積層され,相当深さのCF層が形成される。従って,CF層はその表面からの深さによってフッ素の含有率が異なる。具体的には薄層が形成される毎にフッ素が照射されて含浸されるので,そのフッ素含有率は,図4に示すようにフッ素が照射された深さ位置毎に急激に高くなり,フッ素が照射された位置から,その前にフッ素が照射された深さ位置までは,徐々に低くなるような変化を深さ方向に繰り返す。図4では,ほぼ340Å毎にフッ素が照射され,CF層の表面においてもフッ素が照射されている。
アモルファスカーボンはフッ素を含有することにより,これを表面保護層14とする感光体1の感度(所定の露光量で露光された場合の感光体の表面電位の変化の割合)を低下させることが知られている。
図5は,フッ素含有率と,所定の電位V0に帯電されたCF層が所定の露光量で露光された後の電位VPとの関係を示すグラフである。感度は,所定の露光量に対する電位の変化の割合であるので,図5において示されるV0とVPの差が,そのフッ素含有率における感光体1の感度を示すことになる。図5に示すように,フッ素の含有率が増せば増すほどCF層を有する感光体1の感度は低くなる。
また,CF層の層厚さが薄くなるほど,即ち表面からの深さ位置が深いほど感光体1の感度が高くなることも知られている。 これらより,CF層の露光された後の電位VPは,図6に示すように,フッ素が照射された深さ位置(例えば340Åの位置)から,その前にフッ素が照射された深さ位置(例えば680Åの位置)までで,その変化量の割合を徐々に小さくしながら低下し,フッ素が照射された位置で変化量の割合を急激に大きくするという変化を繰り返す。つまり,CF層を有する感光体1の感度は,フッ素が照射された深さ位置から,その前にフッ素が照射された深さ位置までで,その変化量の割合を徐々に小さくしながら高くなり,フッ素が照射された位置で変化量の割合を急激に大きくするように繰り返し変化する。
このような現象は一定しているので,事前にサンプルを検出しておくことにより,CF層のフッ素含有率が分かれば,その部分における感光体1の感度の変化の割合が分かり,更にCF層の大凡の層厚さ(深さ方向位置)が分かれば,その部分での感光体1の感度がわかる。
ここで,アモルファスカーボンはフッ素を含有することにより硬度が低下することが知られている。図7に示すように,フッ素の含有率が増せば増すほどCF層の硬度は低下する。つまりCF層の硬度の変化は,フッ素が照射された深さ位置毎に急激に低くなり,フッ素が照射された位置から,その前にフッ素が照射された深さ位置までは,徐々に高くなるように繰り返される(図8参照)。
また,CF層は,フッ素含有率が高いもの程その表面の摩擦抵抗μが小さいことが知られている(図9)。つまり,CF層は,フッ素含有率が高ければ,その表面の摩擦抵抗μは小さく,硬度は低くなり,フッ素含有率が低ければ,表面の摩擦抵抗μは大きく,硬度は高くなる。従って,CF層表面の摩擦抵抗μあるいは硬度を測定すると,その部分におけるフッ素含有率が測定される。
本実施形態の表面保護層14は,上記のCF層により構成されており,既述のように感光体1の表面は,摺擦ローラ52によって研磨されるので,感光体1の表面の感度は研磨される毎に変化する。ここで,摺擦ローラ52の感光体1への押圧力等の研磨条件を一定なものとすれば,研磨時間から研磨量が推定でき,CF層の大凡の層厚さ(深さ方向位置)が分かる。これと上記で測定されたフッ素含有率とから,その部分における感光体1の感度がわかる。
つまり,CF層表面の摩擦抵抗μあるいは硬度を測定することにより,実質的には感光体1の感度をも測定することとなる。
感光体1の表面の感度が変化すると,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差が変化して,現像装置23から感光体1の表面へのトナーの移動量が変動する,即ち形成される画像の濃度が変動するが,制御手段7は,既述のように検知手段6によって検知された感光体1の表面の摩擦抵抗あるいは硬度に応じて,すなわち変化する感度に応じて,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差をほぼ一定に保つように画像形成の条件を変更することで,形成される画像の濃度の変動を抑制している。
【0016】
検知手段6は,その一例として,感光体1の駆動トルクを測定することにより,感光体1の表面の摩擦抵抗μあるいは硬度を算出するものであることが好ましい。駆動トルクの測定は画像形成動作中に行うことができるので,プリンタXをたびたび停止させて稼動効率を低下させることなく摩擦抵抗μを検知できるからである。
感光体1の駆動トルクの測定に用いられる測定機器としては,感光体1の駆動モータの電流値を計測する電流計等が挙げられる。感光体1の表面の摩擦抵抗μが大きくなると感光体1と,これに接触するクリーニングブレード51等の部材との抵抗が増すため,駆動トルクが大きくなり駆動モータに流れる電流値が大きくなる。この摩擦抵抗μと電流値の関係を実験等により予め図10に示すように求めておくことで,感光体を駆動するモータの駆動電流を検出することで,摩擦抵抗μを算出することができる。
また,感光体1の表面の硬度は摩擦抵抗μの変化と共に変化するので,硬度と駆動トルクの関係を予め求めておけば,感光体を駆動するモータの駆動電流を検出することで,感光体1の表面の硬度を算出することができる。
なお,検知手段6は,これに限定されるものではなく,感光体1の表面の摩擦抵抗μあるいは硬度を検知できるものであればよい。
制御手段7は,CPUやROM,RAM,HDD等,プリンタXを統括的に制御するものに格納された制御プログラムやシーケンス制御回路等である。
【0017】
以下,図11のフローチャートに従って,プリンタXにおける制御手段7によって実行される画像形成条件の変更の手順の一例について説明する。ここに,図11に示すS1,S2,…は処理手順(ステップ)番号を表している。
制御手段7によって変更される画像形成条件としては,露光装置22から感光体1に走査されるレーザビーム光L(図1参照)の露光量E,帯電装置21に印加される帯電バイアス電圧VC,現像装置23に印加される現像バイアス電圧VD等が挙げられる。ここでは,露光量Eと,帯電バイアス電圧VCを変化させて行われる画像形成条件の変更を例に説明する。
なお,感光体1には,図4,6に示すように,ほぼ340Å毎にフッ素が照射され,CF層の表面においてもフッ素が照射されて製造されたものを用いている。
【0018】
(ステップS1)
初めに,通常の画像形成動作が行われる。この時の画像形成条件は,予め設定されHDD(不図示)に設定値として記憶された露光量E0,帯電バイアス電圧VC0である。
ここで,プリンタXの画像形成動作中において,摺擦ローラ52は,感光体1に所定の力で押圧され,図1に示すように感光体1の回転と逆方向(当接する部分が同じ向き)に,感光体1の周速度より速い一定の周速度で回転しており,感光体1の表面をクリーニングすると共に研磨する。
なお,摺擦ローラ52の回転方向は,感光体1の回転と同方向(当接する部分が逆向き)であってもよいが,逆方向である方が,摺擦負荷及びその変動の影響を受け難く,回転むらや回転位置ずれによって画像が縞状に現れるジッタ等を生じにくく好ましい。また,摺擦ローラ52の周速度は感光体1の周速度と同速でなければ感光体1の周速度より遅い速度であってもよい。要するに相対的な周速度に差があることによって,両者の接触部に摩擦状態が生じることが必要である。摺擦ローラ52が所定の力で押圧され,一定の周速度で回転しているので,研磨時間(画像形成動作時間)によって,感光体1の大凡の研磨量,即ち表面保護層14の層厚さが分かる。
この時,検知手段6により感光体1の駆動トルクTが検知される。
ステップS1の画像形成動作が実行されると処理はステップS2に移行する。
摺擦ローラ52により感光体1の表面が研磨されると,既述の通り感光体1の感度は,図6に示すように,その変化量の割合を徐々に小さくしながら高くなり,フッ素が照射された位置で変化量の割合を急激に大きくするように繰り返し変化する。ステップS2以降では,この感度変化に応じて画像形成条件の変更が行われる。
【0019】
(ステップS2)
ステップS2では,検知手段6により検知された画像形成動作時での感光体1の駆動トルクが予め定めた所定値T1以上かどうかが判断される。
ここで,所定値T1は,例えば図4におけるフッ素含有率18%程度の時の駆動トルクである。即ち,CF層深さ方向位置100Å,440Å,780Åでの駆動トルクである。
駆動トルクTが所定値T1以上の場合(ステップS2のYes側),処理はステップS3へ移行する。
駆動トルクTが所定値T1未満の場合(ステップS2のNo側),処理はステップS4へ移行する。
【0020】
(ステップS3)
ステップS3では,検知手段6により検知された画像形成動作時での感光体1の駆動トルクTが更に予め定めた所定値T2以上かどうかが判断される(T1<T2)。
ここで,所定値T2は,例えば図4におけるフッ素含有率10%程度の時の駆動トルクである。即ち,CF層深さ方向位置200Å,540Å,880Åでの駆動トルクである。
駆動トルクTが所定値T2未満の場合(T1≦T<T2,ステップS3のNo側),処理はステップS6へ移行する。
駆動トルクTが所定値T2以上の場合(ステップS3のYes側),ステップS1の処理に戻る,或いは処理が終了する。
【0021】
ステップS3において駆動トルクTが所定値T2以上であるということは,感光体1の表面の摩擦係数μはかなり大きく,フッ素含有率はかなり低い(10%以下)ということである。すなわち,フッ素の照射された深さ位置(0,340Å,680Å)から所定の深さ(200Å)以上,感光体1が研磨されたということでもあり,この部分での感度の変化量は図6に示すように極めて小さく,感度は感光体1が研磨されてもほとんど変化しない。
従って,ステップS3において駆動トルクTが所定値T2以上である場合,画像形成条件(露光量,帯電バイアス電圧)が変更されることなく,ステップS1の処理に戻り,次の画像形成動作が行われる。なお,複数枚の画像形成動作のうち最後の1枚,又は1枚のみの画像形成動作の場合は,そのまま処理が終了する。
【0022】
(ステップS4)
ステップS2において,駆動トルクTが所定値T1未満であるということは,感光体1の表面の摩擦係数μは小さく,フッ素含有率が高いということである。すなわち,感光体1が,フッ素の照射された深さ位置(0,340Å,680Å)から,まだあまり研磨されていないということでもあり,この部分での感度の変化量は図6に示すように大きく,研磨される毎に感度が急激に高くなる変化を示す。
ステップS4では,露光装置22の露光量Eが設定値E0から(E0−ΔE)へ変更されると共に,帯電装置21に印加される帯電バイアス電圧VCが設定値VC0から(VC0+ΔVC)へ変更される。
露光量Eを小さくすることにより,感度が高くなった場合に,露光後の露光領域の表面電位VP(図5参照)が下がりすぎてしまうことを防止できる。そのため,感度が高くなる前と後で,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差の変化を小さくすることができるので,形成される画像の濃度が変動しにくい。なお露光量Eは,露光装置22から感光体1に走査されるレーザビーム光L(図1参照)の照度と照射時間の積であり,照度と照射時間の少なくとも何れかが変化されて変更される。
また,帯電バイアス電圧VCを大きくすることにより,露光前の感光体1の表面電位V0(図5参照)を上げることができる。そのため,感度が高くなった場合に,露光後の露光領域の表面電位VP(図5参照)が下がりすぎてしまうことを防止でき,感度が高くなる前と後で,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差の変化を小さくすることができるので,形成される画像の濃度が変動しにくい。
露光量Eと帯電バイアス電圧VCとの両方が変更されることにより,感度の変化量が大きく,感度が急激に高くなる変化を示す深さ位置においても,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差を,感度が高くなる前と後で,ほぼ一定にすることができるので,形成される画像濃度の変動を防止できる。
ステップS5では,変更された露光量E及び帯電バイアス電圧VCが新たな画像形成条件の設定値E0,VC0として設定され,不図示のHDDに記憶されたE0,VC0が更新される。
ステップS5で,画像形成条件の設定値E0,VC0が更新されると,ステップS1の処理に戻り,新たな画像形成条件の設定値E0,VC0で次の画像形成動作が行われる。なお,複数枚の画像形成動作のうち最後の1枚,又は1枚のみの画像形成動作の場合は,新たな画像形成条件の設定値E0,VC0がHDD(不図示)に記憶された状態で処理が終了する。
【0023】
(ステップS6)
駆動トルクTが所定値T2未満で且つ所定値T1以上であるということは,感光体1の表面の摩擦係数μは大きくなってきており,フッ素含有率が低下してきている(18%以下)ということである。すなわち,フッ素の照射された深さ位置(0,340Å,680Å)から所定の深さ(100Å)以上,感光体1が研磨されたということでもあり,この部分での感度の変化量は図6に示すように小さく,研磨される毎に感度が緩やかに高くなる変化を示す。
ステップS6では,露光装置22の露光量Eのみが設定値E0から(E0−ΔE)へ変更される。
感光体1の感度の変化量が小さくなっているので,露光量Eのみが変更されるだけで,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差を,感度が高くなる前と後で,ほぼ一定にすることができるので,形成される画像の濃度の変動を防止できる。
なお,露光量Eに代えて,帯電装置21に印加される帯電バイアス電圧VCのみが(VC+ΔVC)へ変更されるようにしてもよい。
ステップS7では,変更された露光量Eが新たな画像形成条件の設定値E0として設定され,不図示のHDDに記憶されたE0が更新される。
ステップS7で,画像形成条件の設定値E0が更新されると,ステップS1の処理に戻り,新たな画像形成条件の設定値E0,VC0で次の画像形成動作が行われる。なお,複数枚の画像形成動作のうち最後の1枚,又は1枚のみの画像形成動作の場合は,新たな画像形成条件の設定値E0,VC0がHDD(不図示)に記憶された状態で処理が終了する。
【0024】
以上,説明したように,本実施形態では画像形成動作毎に感光体1の駆動トルクTを検知し,検知した駆動トルクTに応じて設定された画像形成条件で次の画像形成動作が行われる。
これにより,感光体1が研磨され,フッ素含有率が徐々に低下して感光体1の感度の変化量が小さくなった場合と,感光体1がフッ素含有率の高い位置まで研磨されて感度の変化量が急激に大きくなった場合の何れの場合でも,感光体1の露光領域と現像装置23との電位差を,感度が高くなる前と後で,ほぼ一定にすることができる。そのため,形成される画像の濃度の変動を防止できる。
【0025】
なお,本実施形態では,露光量E及び帯電バイアス電圧VCが変更されるプリンタXを例に説明したが,露光量E又は帯電バイアス電圧VCに代えて,或いは,これらと併せて現像装置23に印加される現像バイアス電圧VDを変更させてもよい。現像バイアス電圧VDを変更させると,現像装置23の電位を変化させることができるので,感度が高くなる前と後で,感光体1の感度が高くなることによって露光後の表面電位VPが変化した露光領域と現像装置23の電位差の変化を小さくすることができる。
また,本実施形態では,画像形成条件を変更する判断基準となる駆動トルクT(摩擦抵抗μ)の所定値はT1,T2の2段階に設定されているが,これに限定されるものではない。例えば,所定値をT1,T2,T3,T4,・・・と細かく設定して,制御手段7によって変更される露光量Eや帯電バイアス電圧VC等の画像形成条件の変化量ΔEやΔVCを,ΔE1,ΔE2,・・・,やΔVC1,ΔVC2,・・・,等のように段階的に変更させると,感度が変化した時の感光体1の露光領域と現像装置23との電位差を,より一定に近く保つことができ,形成される画像の濃度が変動しにくい。
また更に,本実施形態では,画像形成条件の変化量ΔEやΔVCを定数としているが,これらをΔE=Eh*td,ΔVC=VCh*tdのように感光体1の研磨時間tdによって変化する変数としてもよい。ここで,Eh,VChは,単位研磨時間に対して露光量E,帯電バイアス電圧VCをどの程度補正するかの補正係数である。これら補正係数Eh或いはVChを,検知した駆動トルクTに応じて変化させ,これらにその時点での研磨時間tdを乗じたものを画像形成条件の変化量ΔE,ΔVCとすることにより,感度が変化した時の感光体1の露光領域と現像装置23との電位差を,より一層一定に近く保つことができる。
また,制御手段7がアナログ信号を用いて露光装置22の光源の照度等を連続的に変化させて画像形成条件を変更させるもの等であってもよい。
【0026】
また,本実施形態では,通常の画像形成動作時において,感光体1の表面が研磨されながら検知手段6によって駆動トルクTが検知されているが,これに限定されるものではない。
例えば,画像形成動作中には感光体1は研磨されず,所定枚数処理後や所定稼働時間経過後の非画像形成時に感光体1が研磨される,いわゆるリフレッシュ工程を備える画像形成装置とし,このリフレッシュ工程後に駆動トルクTが検知手段6によって検知されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
100 画像形成部
1 感光体
14 表面保護層
2 作像部
21 帯電装置
22 露光装置
23 現像装置
52 摺擦ローラ
6 検知手段
7 制御手段
X プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質カーボン又は非晶質シリコンカーバイドにフッ素が含有されてなる表面保護層を有する感光体と,
少なくとも前記感光体の表面を一様に帯電させる帯電手段,帯電された前記感光体の表面にビーム光を走査させて静電潜像を形成する露光手段,前記静電潜像を現像剤で顕像化させる現像手段を有し,前記感光体の表面に画像を形成する作像部と,
前記感光体の表面を研磨する研磨手段とを備える画像形成装置であって,
前記感光体の表面における摩擦抵抗あるいは硬度を検知する検知手段と,
前記検知手段によって検知される摩擦抵抗あるいは硬度に応じて,前記作像部による前記感光体の表面への画像形成の条件を変更させる制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検知手段が,前記感光体の駆動トルクを測定することによって,前記感光体の表面の摩擦抵抗あるいは硬度を算出するものである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段が,前記露光手段によって前記感光体の表面に走査される前記ビーム光の露光量を変化させるものである請求項1又は2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段が,前記帯電手段に印加される帯電バイアス電圧及び/又は前記現像手段に印加される現像バイアス電圧を変化させるものである請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記研磨手段が,前記感光体から被転写材にトナー像を転写した後,前記感光体に残留するトナーを除去するために,前記感光体に当接される摺擦ローラである請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−13795(P2012−13795A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148088(P2010−148088)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】