説明

画像形成装置

【課題】正帯電単層型電子写真感光体と接触帯電方式の帯電装置とを備えた画像形成装置であって、感光体におけるキャリアトラップ、膜削れ、帯電ムラ等が抑制された画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】正帯電単層型電子写真感光体と、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、前記接触帯電部材は、ゴム硬度がAsker−C硬度で62〜81°である導電性のゴムからなる帯電ローラであり、前記接触帯電部材の帯電ローラのローラ表面粗度が、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で55〜130μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)で9〜19μmである、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電単層型電子写真感光体および接触帯電部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置において、環境配慮から、オゾンを大量に発生させるスコロトロン帯電方式(非接触方式)から接触帯電方式、例えば、ゴムローラを用いたローラ帯電が広く用いられている(例えば、特許文献1など参照)。感光体とローラ間の微小空隙における放電によって帯電するローラ帯電はオゾン量の低減を可能にしている。
【0003】
一方、電子写真方式の画像形成装置に備えられる電子写真感光体としては、無機感光体と有機感光体が用いられるが、有機感光体は、無機感光体と比較して、製造が容易であるとともに、感光層を構成する有機材料の選択肢が多様で構造設計の自由度が高いことが知られている。
【0004】
そのような有機感光体としては、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光体と、電荷発生剤と電荷輸送剤とが同一層に含有された感光層を備える単層型感光体が挙げられる。特に後者の単層型感光体では、表面近傍でキャリアが発生するため膜厚を厚くすることができることから長寿命化に適している(例えば、特許文献2など参照)。加えて、製造面からも、単層塗工であるため積層型に比べて容易かつ低コストである。
【0005】
したがって、単層型感光体とローラ帯電を組み合わせれば、より環境対応型の電子写真設計が可能となると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−303259号公報
【特許文献2】特開2002−72511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、帯電ローラ特有の問題として帯電ムラがある。これは、帯電ローラ表面の凹凸から局所的に放電することで発生する。このような帯電ムラは正帯電単層感光体で発生しやすい。この理由は今のところはっきりとわかっていないが、単層感光体は樹脂の中に電荷発生材料、電荷輸送材料、結着樹脂が同一層に含有されており、それぞれの材料に対して放電する電圧が異なるため、局所放電し帯電ムラが発生するのだと考えられている。
【0008】
帯電ムラの要因である局所放電を抑えるためには放電電圧を上げて多少放電しにくい部位からも放電を促す手段があるが、前述のとおり放電電圧(=感光体流れ込み電流)をあげることでも、感光体の膜削れが促進され、寿命が短くなってしまう。よって、帯電電圧を上げずに帯電ムラを抑える手段が求められている。
【0009】
また、電荷発生層と電荷輸送層が分離している積層型感光体に対して、単層型感光体は光導電層の主成分である樹脂材料に電荷発生材料や電荷輸送材料など多くの材料を配合されている。このような構成により単層型感光体で発生する光キャリアは各種材料存在中を通過することとなり、キャリアトラップされ易い傾向があると考えられる(図1)。そして、このキャリアトラップによる感光体特性の変化として帯電能(一定電流を流した時のドラムの帯電電位で示される)の低下がある。
【0010】
上記のように感光体の帯電能が低い場合は表面電位が低下してしまうため、所定の表面電位を得るためには帯電電流を増加させなくてはならない。しかし、帯電電流の増加は、放電の増加を意味し感光層の膜削れが増えるという弊害が生じる。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、感光層で起こるキャリアトラップ・膜削れ及び帯電ムラなどを発生させない、単層型感光体と帯電ローラを備えた環境対応型画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有する画像形成装置を用いることにより前記課題が解決することを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0013】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、正帯電単層型電子写真感光体と、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、前記接触帯電部材は、ゴム硬度がAsker−C硬度で62〜81°である導電性のゴムからなる帯電ローラであり、前記接触帯電部材の帯電ローラのローラ表面粗度が、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で55〜130μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)で9〜19μmであることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば帯電ムラが十分に抑制でき、ひいては感光層の膜削れの発生を抑制できると考えられる。さらに、感光体ドラムと帯電ローラのニップおよびその周辺で発生する近傍放電領域が拡大され、帯電性能が上がる。これにより、従来の帯電ローラでは抜けなかった感光層中のキャリアトラップが抜けやすくなり、感光体ドラムの特性の安定が図れ、表面電位が低下せず、膜削れも抑えることができる。
【0015】
さらに、前記画像形成装置において、前記正帯電単層型電子写真感光体が導電性基体と感光層とを備えており、前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であり、さらに前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%であることがより好ましい。このような構成によれば、感光体に負荷が大きくかかる接触帯電式システムにおいても、感光体の膜削れを抑制でき、より高耐久の画像形成装置を確実に得ることができる。
【0016】
また、前記画像形成装置において、前記帯電装置が、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、前記正帯電単層型電子写真感光体を前記像担持体として用いても、感光層の摩耗量をより少なくすることができる。具体的には、交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を、帯電ローラに印加した場合より、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加した場合のほうが、感光層の摩耗量を少なくすることができる。
【0018】
また、交流電圧を印加すると、帯電による像担持体の表面(周面)の電位を均一化することができる傾向があるが、上記画像形成装置では、非接触帯電方式ではなく、接触帯電方式の帯電装置を用いているので、直流電圧のみを印加しても、均一に帯電できると考えられる。
【0019】
よって、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加することによって、好適な画像を形成することができ、さらに、感光層の摩耗量を低減させることができると考えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、長寿命の正帯電単層感光体と、オゾン発生量を低減できる帯電ローラを備えた画像形成装置において、従来問題となっていた帯電ムラ、感光体の磨耗、膜削れ、キャリアトラップを抑えて、感光体の長寿命化を図ることができる。すなわち、本発明の画像形成装置は低オゾンでかつてないほど優れた耐久性を達成した装置であり、環境対応性および産業利用性の観点からもきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は単層感光体と積層感光体におけるキャリアトラップを示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図4】図4は試験例1における帯電能を示すグラフである。
【図5】図5は試験例1における表面電位を示すグラフである。
【図6】図6は試験例1における感光体ドラムの膜削れを示すグラフである。
【図7】図7は試験例2における、表面粗度(断面曲線凹凸の平均間隔(Sm))の差による帯電ムラを示すグラフである。
【図8】図8は試験例2における、表面粗度(十点平均粗さ(Rz))の差による帯電ムラを示すグラフである。
【図9】図9は試験例3における、感光体の膜削れ量と感光体に含有される結着樹脂の降伏点歪みの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、正帯電単層型電子写真感光体と、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された前記感光体の表面を露光して、前記感光体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、前記接触帯電部材が、少なくとも表面部が、ゴム硬度がAsker−C硬度で62〜81°である導電性のゴムからなり、ローラ表面粗度が、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で55〜130μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)で9〜19μmである帯電ローラであることを基本構成とする。
【0024】
(帯電装置)
本実施形態において用いられる帯電装置は、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する。このような接触帯電部材として、ゴム硬度がAsker−C硬度で62〜81°である導電性のゴムからなり、ローラ表面粗度が、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で55〜130μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)で9〜19μmである、接触方式の帯電ローラ(ゴムローラ)を用いる。この帯電ローラが感光体ドラムに接触したまま、感光体ドラムの回転に従属して回転し、感光体ドラムの周面(表面)を帯電させる。
【0025】
より具体的な帯電ローラの構成としては、特に限定はされないが、例えば、回転可能に軸支された芯金と、その表面部(すなわち前記芯金の上)に形成された導電性ゴム層と、前記芯金に電圧を印加する電圧印加手段とを備えたもの等が挙げられる。このような帯電ローラを備えた帯電装置は、前記電圧印加手段によって、前記芯金に電圧を印加することによって、前記導電性ゴム層を介して接触する感光体ドラムの表面を帯電させることができる。
【0026】
帯電ローラにおける前記導電性ゴム層の厚みとしては、特に限定はされないが、通常、0.5〜2.0mmであり、好ましくは1.0〜2.0mmである。
【0027】
本実施形態において帯電ローラに用いられ得る、ゴム硬度がAsker−C硬度で62〜81°である導電性のゴム材料としては、ゴム硬度が前記範囲である導電性ゴム材料であれば特に限定はされない。より好ましいゴム硬度の範囲は、65〜75°である。
ゴム硬度がAsker−C硬度で81°を超えると帯電ムラが発生しやすくなるとともに、感光体の削れが促進される。62°未満であると接触方式の帯電装置(帯電ローラ)として機能できる程度の均一帯電性が得られなくなる。なお、ゴム硬度は公知の方法によって測定することができ、具体的には、例えば後述の実施例において示したような方法を用いて測定することができる。
【0028】
具体的なゴム材料の例示としては、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム(NBR)、CRゴム等が挙げられる。中でも特に好ましく用いられる導電性ゴムとしては、耐オゾン性、低温特性、導電均一性(場所による抵抗の差が少ない)の観点から、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)等が挙げられる。
【0029】
このような帯電ローラを用いることにより、感光体ドラムと帯電ローラのニップおよびその周辺で発生する近傍放電領域が拡大され、帯電性能が上がる。これにより、従来の帯電ローラでは抜けなかった感光層中のキャリアトラップが抜けやすくなり、感光体ドラムの特性の安定が図れ、表面電位が低下せず、膜削れも抑えることができる。
【0030】
本実施形態では、さらに、帯電ローラのローラ表面粗度が、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で55〜130μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)で9〜19μmである。このような構成によれば帯電ムラが十分に抑制でき、ひいては感光層の膜削れの発生を抑制できる。より好ましくは、本実施形態において用いられる帯電ローラの表面粗度は、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で70〜100μmでかつ十点平均粗さ(Rz)で10〜15μmであれば、製造上コントロールしやすく、また上記効果がより高く得られる。なお、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)および十点平均粗さ(Rz)は公知の方法によって測定することができ、具体的には、例えば後述の実施例において示したような方法を用いて測定することができる。
【0031】
また、前記電圧印加手段で印加する電圧は、直流電圧のみであることが好ましい。そうすることによって、後述の正帯電単層型電子写真感光体を用いても、感光層の摩耗量をより少なくすることができる。具体的には、交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を、帯電ローラに印加した場合より、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加した場合のほうが、感光層の摩耗量を少なくすることができる。
【0032】
また、交流電圧を印加すると、帯電による像担持体の表面(周面)の電位を均一化することができる傾向があるが、上記画像形成装置では、非接触帯電方式ではなく、接触帯電方式の帯電装置を用いているので、直流電圧のみを印加しても、均一に帯電できると考えられる。
【0033】
よって、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加することによって、好適な画像を形成することができ、さらに、感光層の摩耗量を低減させることができると考えられる。
【0034】
(感光体)
本実施形態において用いられる正帯電単層型電子写真感光体(以下、単に「感光体」や「単層型感光体」ともいう。)は、上述したような接触帯電方式の帯電装置を備えた画像形成装置に好適に適用されるものであれば、特に限定なく用いることができる。
【0035】
具体的には、例えば、図2に示すような、導電性基体12と感光層14とを備え、前記感光層14が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層である単層型感光体10であればよく、感光層及び導電性基体以外の層をさらに備えていてもよい。
【0036】
例えば、図2(a)に示すように、前記導電性基体12上に前記感光層14を直接備えていてもよいし、図2(b)に示すように、前記導電性基体12と前記感光層14との間に中間層16を備えていてもよい。また、図2(a)や図2(b)に示すように、前記感光層14が最外層となって露出していてもよいし、図2(c)に示すように、前記感光層14上に保護層18を備えていてもよい。
【0037】
また、前記単層型感光体10としては、上述したように、特に限定されないが、図2(b)に示すような、前記導電性基体12と前記感光層14との間に中間層16を備え、その中間層16が、前記導電性基体12の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗層であるものが好ましい。そうすることによって、感光体が耐久により薄膜化した場合に起こりうる帯電装置の帯電ローラからのリークの発生を抑制することができる。
【0038】
前記高抵抗層としては、前記導電性基体12の抵抗値よりも高い抵抗値を有し、前記リークの発生を抑制できるものであれば、特に限定されないが、例えば、アルマイト層、ヨウ化アルミニウム層、酸化スズ層、酸化インジウム層、及び酸化チタン層等が挙げられる。
【0039】
前記高抵抗層の層厚としては、前記高抵抗層の材質等によっても異なるが、例えば、1〜3μmであることが好ましい。
【0040】
好ましくは、感光層に含有される結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%(あるいは、感光体表層の降伏点歪みが5〜25%)である前記感光体を用いる。それにより、感光体の膜削れがより確実に抑えられるため、そのような感光体と上述したような帯電ローラを組み合わせることにより、いっそう高い耐久性を有する画像形成装置を確実に得ることができる。
【0041】
ここで、降伏点歪みについて説明する。サンプル材料の両端を2個のチャックで固定し、一方のチャックを一定速度で移動させることでサンプルを伸張させ、応力を検出し、応力と歪みの関係を曲線で示した場合、歪みと応力は比例関係にあるが、歪みが大きくなるにつれて粘性成分による緩和が生じ、応力の極大値をとる。この点を降伏点とする。そして、降伏点歪みとは、降伏点におけるサンプルの歪みの程度をあらわす値である。この降伏点歪みは、本実施形態においては公知の方法によって測定され得、例えば、後述の実施例において示すような粘弾性測定装置などを用いて測定することができる。
【0042】
以下に、本実施形態における正帯電単層型電子写真感光体の導電性基体および感光層について詳述する。
【0043】
[導電性基体]
前記導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆されたものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、前記導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、前記導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
【0044】
また、前記導電性基体の形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、シート状であっても、ドラム状であってもよい。すなわち、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよく、特に限定されない。
【0045】
[感光層]
本実施形態で用いられる感光層は、単層型の電子写真感光体の感光層として用いることができるものであり、この感光層には、上述したように、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が含有されている。また、感光層の層構造としては、具体的には、例えば、上述したような、図2に示す感光層の構造等が挙げられる。
【0046】
また、前記感光層に含有される、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂等は、特に限定されないが、例えば、以下に示すものを用いることができる。
【0047】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、単層型の電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、下記式(1)又は式(2)で表されるX型フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピローラ顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
また、前記電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、前記各電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、前記各電荷発生剤のうち、特に半導体レーザ等の光源を使用したレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。また、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
【0051】
(電荷輸送剤)
電荷輸送剤としては、単層型の電子写真感光体の感光層に含まれる電荷輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。また、電荷輸送剤としては、一般的に、正孔輸送剤と電子輸送剤とが挙げられる。
【0052】
前記正孔輸送剤としては、単層型の電子写真感光体の感光層に含まれる正孔輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。この中でも、トリフェニルアミン系化合物が好ましく、下記式(3)〜(11)で表されるトリフェニルアミン系化合物がより好ましい。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
また、前記正孔輸送剤としては、前記例示した各正孔輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
また、前記電子輸送剤としては、単層型の電子写真感光体の感光層に含まれる電子輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノン誘導体、アゾキノン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体等のキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。この中でも、キノン誘導体が好ましく、下記式(12)〜(14)で表されるキノン誘導体がより好ましい。
【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
また、前記電子輸送剤としては、前記例示した各電子輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、単層型の電子写真感光体の結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。好ましくは、上述したように、降伏点歪みが9〜29%である結着樹脂を用いる。降伏点歪みがこの範囲内である結着樹脂を用いれば、感光体の膜削れはより抑制される。降伏点歪みが9%未満であると感光体の膜は削れやすくなり、また29%を超えると付着物による画像の不具合などが生じる。なお、この結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%の範囲であれば、感光体表層の降伏点歪みは5〜25%%程度の範囲となると考えられる。よって、感光体表層の降伏点歪みがその範囲となるように感光体を調製することによっても前記効果を得ることができると考えられるが、結着樹脂の降伏点歪みを上記範囲に調節する方が簡易であるため好ましい。
【0069】
降伏点歪みが9〜29%である結着樹脂としては、降伏点歪みが前記範囲内であればどのような樹脂を用いてもよいが、例えば、降伏点歪みが前記範囲である、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂などの樹脂を用いることができ、好ましくは、正孔輸送剤や電子輸送剤との相溶性などの観点からポリカーボネート樹脂などを用いる。
【0070】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、下記式(15)〜(17)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
式(17)中、「50」という数字は、共重合比50%で共重合されていることを示す。具体的には、式(17)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂は、式(15)で表される繰り返し単位と式(16)で表される繰り返し単位とが、共重合比50%で共重合されている樹脂である。
【0075】
また、ポリカーボネート樹脂における繰り返し単位数は、特に限定されないが、降伏点歪みが9〜29%となるような繰り返し単位数であることが好ましい。
【0076】
また、前記ポリカーボネート樹脂を結着樹脂として用いる場合、その粘度平均分子量が30000以上であることが好ましく、40000〜80000であることがより好ましく、45000〜75000であることがさらに好ましい。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が低すぎると、前記ポリカーボネート樹脂の耐摩耗性を高めるという効果を充分に発揮できず、感光層が摩耗しやすくなる傾向がある。また、前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が高すぎると、溶剤に溶解しにくくなって、感光層を形成するための塗布液等を調製しにくくなる等、好適な感光層を形成することが困難になり、付着物による画像不具合が生じる傾向がある。
【0077】
また、前記結着樹脂としては、前記ポリカーボネート樹脂からなることが好ましいが、前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、感光層の結着樹脂として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0078】
(添加剤)
前記感光体には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び結着樹脂以外の各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、具体的には、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0079】
[単層型感光体の製造方法]
次に、単層型感光体の製造方法について説明する。
【0080】
前記単層型感光体は、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、前記結着樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を、塗布等によって、前記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、製造することができる。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。また、前記乾燥方法としては、例えば、80〜150℃で15〜120分間の条件で熱風乾燥する方法等が挙げられる。
【0081】
前記単層型感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記結着樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、前記電荷発生剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。また、前記電子輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。また、前記正孔輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量、すなわち、前記電荷輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。また、前記感光層に電子受容性化合物を含有させる場合は、前記電子受容性化合物の含有量が結着樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。
【0082】
また、前記単層型感光体の感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。
【0083】
また、前記塗布液に含有される溶剤としては、前記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、前記例示した溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
なお、感光層と導電性基板との間に、前記高抵抗層(中間層)を設ける場合の高抵抗層の作成方法としては、前記導電性基体上に前記高抵抗層を形成することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性基体がアルミニウム素管で、高抵抗層がアルマイト層である場合、アルミニウム素管に陽極酸化処理を施す方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、硫酸水溶液等を電解液として用いた陽極酸化処理等が挙げられる。その際、処理時間としては、例えば、0.5〜300分間程度であることが好ましい。また、電解液として硫酸水溶液を用いる場合、その濃度としては、例えば、0.1〜80質量%程度であることが好ましい。また、陽極酸化処理時の化成電圧としては、例えば、10〜200V程度であることが好ましい。
【0085】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であって、前記正帯電単層型電子写真感光体と、前記接触帯電方式の帯電装置とを備えたものであれば、特に限定されない。実施形態具体的な一例としては、例えば、以下に具体的に説明するような複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が挙げられる。
【0086】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の感光体と、各感光体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各感光体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラを備えた複数の現像装置とを備える。
【0087】
図3は、本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、前記画像形成装置1としては、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
【0088】
このカラープリンタ1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0089】
前記給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラ122、給紙ローラ123,124,125、及びレジストローラ126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラ122は、給紙カセット121の図3に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラ123,124,125は、ピックアップローラ122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラ126は、給紙ローラ123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0090】
また、給紙部2は、機器本体1aの図3に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラ127とをさらに備えている。このピックアップローラ127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラ127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラ123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラ126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0091】
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ32とを備えている。
【0092】
前記画像形成ユニット7は、上流側(図3では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム37の周囲には、帯電装置39、露光装置38、現像装置71、不図示のクリーニング装置及び除電手段としての除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、前記感光体ドラム37としては、前記電子写真感光体を用いる。
【0093】
帯電装置39は、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させる。なお、前記帯電装置39としては、上述したような接触帯電方式の帯電装置(帯電ローラ)を用いる。
【0094】
露光装置38は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、帯電装置39によって均一に帯電された感光体ドラム37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピュータ(PC)から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、感光体ドラム37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像装置71は、静電潜像が形成された感光体ドラム37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電装置へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0095】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ33、従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36等の複数のローラに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム37と対向配置された1次転写ローラ36によって感光体ドラム37に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。駆動ローラ33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36は、回転自在に設けられ、駆動ローラ33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラ34,35,36は、駆動ローラ33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
【0096】
1次転写ローラ36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラ36との間で、駆動ローラ33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0097】
2次転写ローラ32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラ32とバックアップローラ35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0098】
前記定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
【0099】
そして、前記画像形成部3で2次転写ローラ32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンタ1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラ6が配設されている。
【0100】
排紙部5は、カラープリンタ1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0101】
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置では、帯電装置として前記帯電ローラが備えられており、また像担持体として前記感光体が備えられているので、接触方式の帯電装置および正帯電単層型電子写真感光体を組み合わせても好適な画像を形成することができ、さらに感光層の摩耗量が少ない等のきわめて耐久性の高い画像形成装置が得られる。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0103】
試験例1(帯電ローラの硬度):
[実施例1]
(感光体)
電荷発生剤(上記式(1)で表される無金属フタロシアニン)5質量部、正孔輸送剤(HTM−3、前記化学式(5))50質量部、電子輸送剤(ETM−2、前記化学式(13))35質量部、前記化学式(15)で表される結着樹脂(粘度平均分子量67000)100質量部をテトラヒドロフラン800質量部とともにボールミルにて50時間混合分散し、感光体塗布液を調整した。ついでこの塗布液を導電性基板上にディップコート法にて塗布し、その後100℃で40分間熱風乾燥し、膜厚30μmの感光体(直径30mm)を得た。
【0104】
(帯電装置)
エピクロルヒドリンゴムを主成分とするゴムで構成される、硬度:71°、直径12mm、導電性ゴム層の厚み:2mmである帯電ローラ(東海ゴム工業株式会社製)を用いた。
【0105】
前記感光体および前記帯電装置を京セラミタ株式会社製のFS−C5300DN(A4カラープリンター)に備えて画像形成装置の改造機を得た。なお、各帯電ローラのゴム硬度は、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)を、同社の定圧荷重器により帯電ローラに直接押圧し測定したものである。
【0106】
[比較例1]
帯電ローラとして硬度82°のエピクロリヒドリンゴム製の帯電ローラ(東海ゴム工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして画像形成装置を得た。
【0107】
[評価]
上記の画像形成装置を用いて、以下の評価試験を行った。
【0108】
(帯電能)
帯電ローラにTREK社製高圧電源 model 610Bを接続し、0〜2000Vの電圧を印加したときの感光体表面電位と帯電ローラに流れる電流(帯電電流)を測定した。感光体表面電位はTREK社製表面電位計 model 344により測定し、また電流はDC電源と帯電ローラの間に横河メータ&インスツルメンツ製小型携帯電流計2051型を直列に接続して計測した。なお、DC電源は定電圧制御とした。結果を図4に示す。
【0109】
(表面電位)
A4転写紙に印字率4%となる原稿を連続印字し、定期的に感光体の表面電位を測定した。このとき、初期の表面電位は約650Vとなるように帯電ローラに印加する電圧を調整し、その後は印加電圧を変更せず表面電位の変化を観察した。結果を図5に示す。
【0110】
(ドラム膜削れレート)
感光体を回転させるとともに一定の電流を帯電ローラに通電した状態で10時間後の膜削れ量を測定した。これを帯電ローラの電流値ごとに試験し、測定をおこなった。膜厚測定にはフィッシャーインストルメンツ製MMS3AM型を使用した。結果を図6に示す。
【0111】
試験例2(帯電ローラの表面粗度):
実験機として、実施例1同様の感光体、並びに硬度および表面粗度(断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)および十点平均粗さ(Rz))を以下の表1に示すように変更した帯電ローラ(エピクロルヒドリンゴム製、直径12mm、導電性ゴム層の厚み2mm、東海ゴム工業株式会社製)を備えた京セラミタ株式会社製のFS−C5300DN(A4カラープリンター)を画像形成装置の改造機として得た(断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)および十点平均粗さ(Rz)に応じてそれぞれ実施例2〜12および比較例2〜14とする)。
【0112】
なお、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)および十点平均粗さ(Rz)の測定は、(株)東京精密製 SURFCOM 1500DXを用いて測定をおこなった。なお、JIS B 0601−1994の規格に基づいて粗さの解析を行った。なお、実施例2〜6および比較例2〜8についてはRz値を10μmに固定し、実施例7〜12および比較例8〜15についてはSm値を100μmに固定して試験した。
【0113】
次に、前記画像形成装置(実施例2〜12および比較例2〜14)を用いて、帯電電圧1.2KVdc(表面電位400V)にて、20枚印字した場合の帯電ムラを画像にて確認した。また、試験室は10℃/15%RHの低湿環境とした(低温の方が帯電ムラが発生しやすいため)。帯電ムラがあった場合を×、帯電ムラが見られなかった場合を○として評価した。結果を表1、図7(断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)と硬度)および図8(十点平均粗さ(Rz)と硬度)に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
試験例3(感光体の降伏点歪み):
(感光体の製造法)
電荷発生剤(上記式(1)で表される無金属フタロシアニン)5質量部、正孔輸送剤(HTM−3、前記化学式(5))50質量部、電子輸送剤(ETM−2、前記化学式(13))35質量部、下記表2に示すそれぞれの結着樹脂100質量部をテトラヒドロフラン800質量部とともにボールミルにて50時間混合分散し、感光体塗布液を調整した。ついでこの塗布液を導電性基板上にディップコート法にて塗布し、その後100℃で40分間熱風乾燥し、膜厚30μmの感光体(直径30mm)を得た。
【0116】
なお、表2におけるそれぞれの結着樹脂は、以下の通りである:
「PC−Z」:前記化学式(15)で表される樹脂。
「PC−C」:前記化学式(16)で表される樹脂。
「PC−C/PC−Z」:前記化学式(17)で表される樹脂。
【0117】
(評価)
それぞれの感光体表層および結着樹脂の降伏点歪みを、粘弾性測定装置(TA Instruments社製、「DMA−Q800」)を用いて、下記評価条件で測定した。
・初期荷重:1N
・測定温度:30℃
・歪み速度:0.5%/分(サンプリング間隔:毎2秒)
【0118】
次に、京セラミタ製プリンタFS−1300Dに作製した感光体(含有する結着樹脂に応じてそれぞれ実施例13〜15および比較例15〜17)をそれぞれ装着し、5万枚の印字テストを行い、感光層の削れ量(μm)を評価した。また、画像評価により、付着物による不具合がないか評価した。
【0119】
以上の結果を表2にまとめ、また、感光体の膜削れ量と感光体に含有される結着樹脂の降伏点歪みの関係を図9に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
[考察]
図4〜6からわかるように、低硬度の帯電ローラを用いた方が、高硬度の帯電ローラを用いるよりも、帯電能において優れており(図4)、2万枚以上印字した後においても表面電位の低下が少なく(図5)、さらに感光体ドラムの膜削れが低減された(図6)。
【0122】
また、表1および図7と8からわかるように、低硬度の要件に加えて、帯電ローラの表面粗度が特定の範囲であれば、帯電ムラが起こらなかった(実施例2〜6および実施例7〜12)。一方、表面粗度が前記特定の範囲から外れると、帯電ムラが見られた(比較例2〜6および比較例8〜11、14、15)。ただし、表面粗度が特定の範囲であっても、帯電ローラの硬度が高いと帯電ムラが見られたため(比較例7、12および13)、帯電ローラの硬度は帯電ムラにも影響することもわかった。
【0123】
以上より、帯電ローラの硬度および表面粗度が、本発明の範囲内であれば、帯電能に優れ、感光体の膜削れ及び帯電ムラを抑制できることが明らかとなった。
【0124】
さらに、表2および図9からわかるように、降伏点歪みが9〜29%の範囲にある結着樹脂を含有する感光体(感光体表層の降伏点歪みは5〜25%の範囲)を用いることにより、感光体の膜削れがより抑制され、また付着物による画像の不具合も生じなかった。
【0125】
以上の結果より、本発明に係る画像形成装置であれば、正帯電単層感光体と接触方式の帯電装置を備えた画像形成装置が従来抱えていた諸問題を解決することができ、きわめて長寿命であり、かつ低オゾンで環境にも対応できる画像形成装置を得られることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0126】
10 単層型感光体
12 導電性基体
14 感光層
16 中間層
18 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正帯電単層型電子写真感光体と、
前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、
帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、
前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、
前記接触帯電部材は、ゴム硬度がAsker−C硬度で62〜81°である導電性のゴムからなる帯電ローラであり、
前記接触帯電部材の帯電ローラのローラ表面粗度が、断面曲線凹凸の平均間隔(Sm)で55〜130μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)で9〜19μmである、画像形成装置。
【請求項2】
前記正帯電単層型電子写真感光体が導電性基体と感光層とを備えており、
前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、
前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記帯電装置が前記帯電ローラに直流電圧のみを印加する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−14141(P2012−14141A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289757(P2010−289757)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】