説明

画像形成装置

【課題】使用者固有の身体的特徴に対応した用紙収容部を選択することにより、使用者が安心して使用できることが考慮された画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は画像の印刷に用いる用紙Pを収容した複数の用紙収容部と、使用者固有の身体的特徴に係る使用者情報を取得するための入力部である操作パネル7やICカード読取部8と、身体的特徴の種類に対応して複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択するための選択基準情報を記憶した記憶部18と、入力部から取得した使用者情報と、記憶部18に記憶された選択基準情報とに基づいて複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定する制御部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置には画像形成に用いる用紙を収容した用紙収容部を複数備えているものがある。例えば、画像形成装置では500枚程度の用紙を収容可能な用紙収容部である給紙カセットが一般的に広く使用され、その給紙カセットを上下方向に複数段にして装置本体に搭載していることが多い。また、このような通常よく用いる給紙カセットに加えて、1500枚程度の比較的容量の大きい大容量給紙カセットを装置本体に搭載していることもある。さらに、画像形成装置はその大容量給紙カセットより用紙容量が大きい大容量給紙デッキを装置本体の外部側方に隣接して備えていることもある。
【0003】
一方、画像形成装置は本来健常者の使用を想定した構造で設計されている。例えば、画像形成の開始を指示するためのスタートボタンや各種情報を表示するための表示部などが配置された操作パネルも、同様の考えに基づいてその高さが決定されている。このような操作パネルは車椅子を使用する人や手足に不自由を抱える人、身長が低い人といったハンディキャップを持つ人が操作する場合、操作パネルの表示が見難い、ボタンが押し難いなどの問題が生じることがある。そこで近年、操作パネルを比較的低い位置に配置したり、ボタンを比較的大きくしたりする工夫が施された画像形成装置が提案されるようになってきた。
【0004】
また例えば、画像形成装置の用紙収容部についてもハンディキャップを持つ人が操作することを考慮して工夫が施された画像形成装置が提案されるようになってきた。その画像形成装置の一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置は利用者が障害者であると判断した場合、所定の給送経路からの用紙の給送を禁止するようにしている。これにより、障害者が利用する際にジャム処理の困難な状態が発生するのを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−29071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された画像形成装置は所定の給送経路、例えば本体側方に備えられた大容量給紙デッキからの用紙の給送を禁止するようにしているので、本体内の給紙カセットからの給紙に限定され、比較的早い段階で給紙カセットが空になる可能性がある。これにより、ハンディキャップを持つ人に対してジャム解除作業が生じることは回避できるものの、用紙補充作業を強いることになる虞がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、ハンディキャップ、すなわち使用者固有の身体的特徴に対応した用紙収容部を選択することにより、ジャム解除作業だけでなく用紙補充作業も発生することをできるだけ回避し、使用者が安心して使用できることが考慮された画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、画像の印刷に用いる用紙を収容した複数の用紙収容部と、使用者固有の身体的特徴に係る使用者情報を取得するための入力部と、前記身体的特徴の種類に対応して前記複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択するための選択基準情報を記憶した記憶部と、前記入力部から取得した前記使用者情報と、前記記憶部に記憶された前記選択基準情報とに基づいて前記複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定する制御部と、を備えることとした。
【0009】
この構成によれば、画像形成装置は使用者固有の身体的特徴の種類に対応して複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定する。したがって、画像形成装置はハンディキャップを持つ人に対して、例えば用紙ジャムが発生し難く、長期間用紙補充の必要がない用紙収容部の使用を優先させる。
【0010】
また、上記構成の画像形成装置において、前記選択基準情報は、前記複数の用紙収容部各々に対する給紙障害の発生し難さ及び操作の容易さをランク付けして数値化した用紙収容部データと、前記身体的特徴の種類に対応して前記用紙収容部の給紙障害の発生し難さ及び操作の容易さのうちいずれを重要視すべきかをランク付けして数値化した重要度データと、を含み、前記制御部は、前記入力部から取得した前記使用者情報と、前記用紙収容部データ及び前記重要度データとを用いて演算した演算結果に基づいて前記複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定することとした。
【0011】
この構成によれば、画像形成装置は入力部から取得した使用者情報に基づいて使用者の身体的特徴の種類に対応した重要度データを得る。そして、画像形成装置はこの重要度データと用紙収容部データとを用いた演算により、例えば用紙ジャムが発生し難く、長期間用紙補充の必要がない用紙収容部を選択して給紙先に設定する。したがって、身体的特徴や用紙収容部の種類が比較的多い場合でも、重要度データと用紙収容部データとを入力すれば演算により容易に給紙先としての用紙収容部が求められる。
【0012】
また、上記構成の画像形成装置において、前記選択基準情報の前記用紙収容部データは、給紙障害の発生し難さとしての給紙ジャムカウント部がカウントした前記用紙収容部ごとの給紙ジャムの累積回数に基づくジャム発生率の低さをランク付けして数値化したデータと、前記用紙収容部ごとに予め定められた用紙補充の容易さをランク付けして数値化したデータと、前記用紙収容部ごとに予め定められたジャム解除の容易さをランク付けして数値化したデータと、を含むこととした。
【0013】
この構成によれば、複数の用紙収容部がジャム発生率の低さ、用紙補充の容易さ、ジャム解除の容易さに基づいてランク付けされる。したがって、画像形成装置は身体的特徴の様々な種類に対応して好適な用紙収容部を選択して給紙先に設定する。
【0014】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記用紙収容部ごとの前記ジャム発生率の低さをランク付けして数値化したデータ、前記用紙収容部ごとに予め定められた前記用紙補充の容易さをランク付けして数値化したデータ、及び前記用紙収容部ごとに予め定められた前記ジャム解除の容易さをランク付けして数値化したデータと、それら各々に対応する使用者の前記重要度データとを掛けて合計することによって演算結果を求め、前記演算結果の合計値が最も大きい前記用紙収容部を給紙先と設定することとした。
【0015】
この構成によれば、比較的簡単な四則演算により給紙先としての用紙収容部が求められるので、給紙先の設定が迅速になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、ハンディキャップ、すなわち使用者固有の身体的特徴に対応した用紙収容部を選択することにより、ジャム解除作業だけでなく用紙補充作業も発生することをできるだけ回避し、使用者が安心して使用できることが考慮された画像形成装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】使用者情報に基づく用紙収容部の選択基準情報及び推奨用紙収容部の導出について示す説明図である。
【図4】使用者情報に基づく推奨給紙先の設定に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4に基づき説明する。
【0019】
最初に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図1〜図3を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は画像形成装置の構成を示すブロック図、図3は使用者情報に基づく用紙収容部の選択基準情報及び推奨用紙収容部の導出について示す説明図である。図1中の実線矢印は用紙の搬送経路及び搬送方向を示す。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の下部には給紙部30が配置されている。給紙部30は用紙収容部である通常の汎用給紙カセット31及び大容量給紙カセット32を備えている。汎用給紙カセット31は大容量給紙カセット32の下方に配置され、同容量のものが上下方向に2個並べられている。大容量給紙カセット32は汎用給紙カセット31の上方に配置され、同容量のものが水平方向に同じ高さで2個並べられている。
【0021】
これらの給紙カセット31、32はその内部に印刷前のカットペーパーなどの用紙Pを積載して収容している。例えば、汎用給紙カセット31は500枚程度の用紙Pを収容でき、大容量給紙カセット32は1500枚程度の用紙Pを収容できる。用紙Pは図1において給紙カセット31、32の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット31、32は本体2の正面側から水平に引き出すことが可能である。給紙カセット31、32に用紙Pを補充するとき、用紙Pは引き出した給紙カセット31、32の上面方向から内部に積載される。
【0022】
また、本体2の外部右側方には本体2に隣接して他の用紙収容部である給紙デッキ33が備えられている。給紙デッキ33は、例えば4000枚程度の用紙Pを収容できる。給紙デッキ33は本体2内に用紙Pを供給できるように本体2の右側面に接続されている。用紙Pは図1において給紙デッキ33の左方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙デッキ33に用紙Pを補充するとき、用紙Pは蓋33aを開放して現れる開口を通して上面方向から内部に積載される。
【0023】
また、本体2の右側面であって給紙デッキ33の上方の箇所には手差し給紙トレイ34が備えられている。手差し給紙トレイ34には汎用給紙カセット31や大容量給紙カセット32、給紙デッキ33に入っていないサイズの用紙や厚紙、OHPシート、封筒、ハガキのように屈曲した搬送経路を通過するのが困難なもの、1枚ずつ手で送り込みたいものが載置される。
【0024】
また、画像形成装置1はその内部に垂直搬送部3を備えている。垂直搬送部3は2種類の給紙カセット31、32に関して言えばその給紙方向である右方に位置し、給紙デッキ33や手差し給紙トレイ34に関して言えばその左方に位置する。給紙カセット31、32及び給紙デッキ33から送り出された用紙Pは垂直搬送部3により本体2の側面に沿って垂直上方に、手差し給紙トレイ34から送り出された用紙Pは略水平左方に転写部4まで搬送される。2個の大容量給紙カセット32のうち、左側の大容量給紙カセット32から送り出された用紙Pは右側の大容量給紙カセット32のすぐ上方を略水平に右方に送られた後、本体2の側面に沿って垂直搬送部3により垂直上方に搬送される。
【0025】
一方、画像形成装置1の本体2の上面には原稿搬送装置5が、その下方の本体2内には画像読取部6が搭載されている。ユーザが原稿の複写を行う場合には文字や図形、模様などの画像が描かれた原稿を原稿搬送装置5に積載したり、画像読取部6上面の図示しないコンタクトガラス上に載置したりする。原稿搬送装置5では1枚ずつ分離して原稿が送り出され、画像読取部6によってその画像が読み取られる。コンタクトガラス上の原稿に対しては画像読取部6内で光を走査させることによって画像が読み取られる。
【0026】
原稿画像の読み取りや印刷の開始は本体2の上部であって画像読取部6の正面側に備えられた操作パネル7を用いて実行される。操作パネル7は表示部7aと、設定部7bと、スタートボタン7cとを備えている。表示部7aは液晶パネルなどで構成され、例えばユーザによる印刷に使用する用紙の種類やサイズ、部数、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件設定などを受け付けたり、解像度、濃度、色情報などといった画像データの情報や画像処理条件を表示したりする一方、注意事項やエラーメッセージなどをユーザに対して指示する報知部として機能する。設定部7bは画像処理条件や画像データの保存先などをユーザが設定することができる一方、使用者固有の使用者情報を入力するための入力部として機能する。スタートボタン7cは原稿画像の読み取りや印刷の開始を受け付けるためのボタンである。
【0027】
操作パネル7の右方であって本体2の右側面上端の箇所にはICカード読取部8が備えられている。ICカード読取部8は使用者が所有するICカードをその上面にかざす若しくは接触させることによりカードに記憶された使用者情報などを取得するための入力部として機能する。なお、使用者情報には、例えば使用者の認証番号や身体的特徴などが含まれている。
【0028】
原稿の画像データの情報は後述する制御部15等を経由して画像処理が施された後、画像読取部6の下方に配置された露光部9に送られる。露光部9により、画像データに基づいて制御されたレーザ光が画像形成部10に向かって照射される。
【0029】
垂直搬送部3の用紙搬送方向下流側であって露光部9の下方には画像形成部10及び転写部4が備えられている。画像形成部10では露光部9によって照射されたレーザ光により原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。画像形成部10で形成されたトナー像は垂直搬送部3によって同期をとって送られてきた印刷前の用紙Pに転写部4にて転写される。
【0030】
転写部4の左方であって用紙搬送方向下流には定着部11が備えられている。転写部4にて未定着トナー像を担持した用紙Pは定着部11へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0031】
定着部11の下流側であって本体2の左側面近傍には用紙案内部12が備えられている。定着部11から排出された用紙Pは両面印刷を行わない場合、用紙案内部12から画像形成装置1の左側面外部の箇所に設けられた用紙排出トレイ13に排出される。
【0032】
画像形成部10から用紙案内部12にかけての部分の下方であって給紙部30の上方には両面印刷を行うための用紙反転部14が備えられている。両面印刷を行う場合には第一面の印刷が終了して定着部11から排出された用紙Pが用紙案内部12を通って用紙反転部14へと送られる。用紙反転部14へ送られた用紙Pは続いて第二面の印刷のために搬送方向が切り替えられ、本体2の右側に向かって送られて再度垂直搬送部3を経て転写部4へと送られる。
【0033】
また、画像形成装置1は装置全体の動作制御のため、図2に示すようにその本体2内にCPU16やその他の図示しない電子部品で構成された制御部15を備えている。制御部15は中央演算処理装置であるCPU16と画像処理部17とを利用し、記憶部18などに記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像読取部6、露光部9、画像形成部10、定着部11などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作を実現する。
【0034】
また、第1の画像形成装置1はその装置各部に用紙検知センサ19や給紙位置センサ20などといった各種センサを備えている。各種センサは装置内の各部におけるジャムを起こした用紙等の障害物の有無、適正な給紙位置における用紙の有無などを電気信号として出力する。制御部15は各種センサの出力信号に基づいて画像形成装置1自身のエラーを検知する。
【0035】
用紙検知センサ19は用紙Pの到達や通過を検知するために、例えば本体2内のレジストローラ対(図示せず)の手前や給紙カセット31、32及び給紙デッキ33及び手差し給紙トレイ34の下流側、定着部11の上流側及び下流側等に設けられている。また、給紙カセット31、32及び給紙デッキ33及び手差し給紙トレイ34の用紙束の上方には用紙束が持ち上げられてその最上層が適正な給紙位置に到達したか否かを検知するための給紙位置センサ20が設けられている。
【0036】
用紙検知センサ19及び給紙位置センサ20は、例えば透過型の光センサと用紙Pに接触するとともにセンサの光を遮蔽する回動板とを用いて構成される。そして、用紙検知センサ19及び給紙位置センサ20は用紙Pの有無によって回動板が動いて光センサの出力信号の高低が切り替わる。制御部15は用紙検知センサ19及び給紙位置センサ20の出力を受け、装置内における給紙状況、用紙搬送状況を把握する。
【0037】
例えば、制御部15はある用紙検知センサ19が用紙Pの到達を検知すべき時間から許容時間が経過しても用紙Pの到達を検知しない場合、用紙ジャム発生として異常を検知する。同様に、制御部15は給紙位置センサ20が給紙カセット31等の内部で持ち上げられた用紙Pの給紙位置への到達を検知すべき時間から許容時間が経過しても用紙Pの到達を検知しない場合、給紙の異常を検知する。なお、制御部15はこれらセンサ自体の異常も検知している。
【0038】
そして、汎用給紙カセット31、大容量給紙カセット32及び給紙デッキ33からの給紙に関して、制御部15は給紙ジャムカウント部21を備えている。給紙ジャムカウント部21はそれら用紙収容部から給紙するときに発生した給紙ジャムの回数をカウントし、給紙ジャムの累積回数を記憶部18に記憶させている。さらに、制御部15は給紙ジャムの累積回数に基づいて汎用給紙カセット31、大容量給紙カセット32及び給紙デッキ33各々に対するジャム発生率を導出して記憶部18に記憶させている。ジャム発生率は、例えば給紙を試みた総数に対する発生した給紙ジャムの回数で求められる。
【0039】
汎用給紙カセット31、大容量給紙カセット32及び給紙デッキ33の各用紙収容部に対するジャム発生率は給紙する際に利用すべき用紙収容部を推奨給紙先として制御部15が導出するときに用いる選択基準情報に利用されている。選択基準情報とは制御部15が使用者固有の身体的特徴の種類に対応して複数の用収容部のうち一の用紙収容部を選択するために用いられるデータであって、記憶部18に記憶されている。
【0040】
なお、以下の説明では上下2段に並べられた汎用給紙カセット31各々がいずれも同じ条件の用紙収容部であるとし、特に個別に限定することなく取り扱っている。同様に、左右2列に並べられた大容量給紙カセット32についても各々がいずれも同じ条件の用紙収容部であるとし、特に個別に限定することなく取り扱っている。
【0041】
選択基準情報は、複数の用紙収容部各々に対する給紙障害の発生し難さ及び操作の容易さをランク付けして数値化した用紙収容部データと、身体的特徴の種類に対応して用紙収容部の給紙障害の発生し難さ及び操作の容易さのうちいずれを重要視すべきかをランク付けして数値化した重要度データとを含んでいる。
【0042】
さらに、選択基準情報の用紙収容部データは、給紙障害の発生し難さとしての給紙ジャムカウント部21がカウントした給紙ジャムの累積回数に基づくジャム発生率の低さをランク付けして数値化したデータと、用紙収容部ごとに予め定められた用紙補充の容易さをランク付けして数値化したデータと、用紙収容部ごとに予め定められたジャム解除の容易さをランク付けして数値化したデータと、を含んでいる。
【0043】
例えば図3に示すように選択基準情報の一例として、汎用給紙カセット31(図3中の「汎用」欄)、大容量給紙カセット32(同「大容量」欄)及び給紙デッキ33(同「デッキ」欄)についての用紙収容部データが記憶部18に記憶されている。
【0044】
図3によれば、給紙時のジャム発生率の低さをランク付けして数値化したデータは、例えば本実施形態の画像形成装置1では汎用給紙カセット31が「3」であって最もジャム発生率が低く、続いて大容量給紙カセット32、給紙デッキ33の順にジャム発生率が高くなっている。なお、ジャム発生率は数値が大きいほど発生率が低いことを示している。
【0045】
また例えば、用紙収容部ごとに予め定められた用紙補充の容易さをランク付けして数値化したデータは汎用給紙カセット31及び給紙デッキ33が「2」であって用紙補充が比較的容易であり、大容量給紙カセット32よりも容易であると設定されている。なお、用紙補充の容易さは数値が大きいほど容易であることを示している。
【0046】
また例えば、用紙収容部ごとに予め定められたジャム解除の容易さをランク付けして数値化したデータは大容量給紙カセット32及び給紙デッキ33が「3」であってジャム解除が比較的容易であり、汎用給紙カセット31よりも容易であると設定されている。なお、ジャム解除の容易さは数値が大きいほど容易であることを示している。
【0047】
そして、重要度データとしては、例えば視覚にハンディキャップを持つ人(図3中の「視覚ハンデ者」欄)と車椅子使用者(同「車椅子使用者」欄)のデータが記憶部18に記憶されている。
【0048】
例えば、視覚にハンディキャップを持つ人の重要度データはジャム発生率の低さに「3」が設定されて最も重要視すべきであるとみなされ、続いてジャム解除の容易さ、用紙補充の容易さの順となっている。
【0049】
また例えば、車椅子使用者の重要度データはジャム解除の容易さに「3」が設定されて最も重要視すべきであるとみなされ、続いてジャム発生率の低さ、用紙補充の容易さの順となっている。
【0050】
そして、制御部15はICカード読取部8や操作パネル7といった入力部から取得した身体的特徴を含んだ使用者情報と、用紙収容部データ及び重要度データとを用いて演算した演算結果に基づいて複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定する。この演算方法としては、例えば用紙収容部ごとのジャム発生率の低さ、用紙補充の容易さ及びジャム解除の容易さを各々ランク付けして数値化したデータとそれらに対応する使用者の重要度データとを掛けて合計することよって演算結果を求める。制御部15は演算結果の合計値がより大きい用紙収容部を推奨給紙先として設定する。
【0051】
これにより、例えば図3の演算の一例としての演算結果に示したように、視覚にハンディキャップを持つ人の場合は汎用給紙カセット31及び大容量給紙カセット32が「13」であり、給紙デッキ33より数値が高くなっている。汎用給紙カセット31と大容量給紙カセット32とは同じ数値であるが、視覚にハンディキャップを持つ人はジャム発生率の低さが最も重要視される。したがって、制御部15は視覚にハンディキャップを持つ人に対してジャム発生率がより低い汎用給紙カセット31を推奨給紙先として設定する。
【0052】
また例えば、車椅子使用者の場合は大容量給紙カセット32が「14」であり、他の用紙収容部より数値が高くなっている。したがって、制御部15は車椅子使用者に対して大容量給紙カセット32を推奨給紙先として設定する。
【0053】
なお、使用者の身体的特徴の種類に対応して複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択するための選択基準情報は上記用紙収容部データや重要度データに限定されるわけではなく、他の条件を加えたり、他の条件に変更したりしても良い。また、上記用紙収容部データや重要度データに用いた用紙収容部やハンディキャップの種類や設定された数値は上記種別や数値に限定されるわけではなく、他の種別や数値に変更しても構わない。さらに、重要度データは上記のようにハンディキャップの種類ごとに設定しても良いし、ハンディキャップの種類に関係なく使用者ごとに個別に設定しても良い。
【0054】
続いて、使用者情報に基づく推奨給紙先の設定に係る動作について、図4に示すフローに沿って説明する。図4は使用者情報に基づく推奨給紙先の設定に係る動作を示すフローチャートである。
【0055】
画像形成装置1が、例えばICカードによるログインを受け付けたとき(図4のスタート)、制御部15はICカード読取部8にICカードを読み取らせてカードに記憶された使用者情報などを取得する(図4のステップ#101)。なお、使用者情報は操作パネル7からの手入力により取得する場合もある。
【0056】
そして、制御部15は給紙する際に利用すべき用紙収容部を推奨給紙先として導出して選択、設定するために記憶部18から選択基準情報の用紙収容部データと重要度データとを取得する(ステップ#102)。なお、重要度データはステップ#101でICカードから取得した使用者情報のうち身体的特徴の種類に対応したデータを取得する。
【0057】
次に、制御部15は推奨給紙先を導出するために、使用者情報と用紙収容部データ及び重要度データとを用いた演算を実行する(ステップ#103)。演算方法としては、例えば用紙収容部ごとのジャム発生率の低さ、用紙補充の容易さ及びジャム解除の容易さの数値データとそれらに対応する使用者の重要度データとを掛けて合計することよって結果を得る。
【0058】
制御部15は演算結果に基づいて複数の用紙収容部、すなわち汎用給紙カセット31、大容量給紙カセット32及び給紙デッキ33のうち1箇所の用紙収容部を選択して給紙先に設定する(ステップ#104)。このとき、制御部15は演算結果の合計値がより大きい用紙収容部を推奨給紙先として設定する。そして、制御部15は設定した給紙先を操作パネル7の表示部7aを用いて使用者に報知し(ステップ#105)、使用者情報に基づく推奨給紙先の設定に係る動作フローを終了する(図4のエンド)。
【0059】
上記のように、画像形成装置1は使用者固有の身体的特徴の種類に対応して複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定する。したがって、画像形成装置1は、例えば視覚にハンディキャップを持つ人に対して用紙ジャムがより発生し難い汎用給紙カセット31を推奨給紙先として設定してその使用を優先させる。
【0060】
また、画像形成装置1はICカード読取部8などの入力部から取得した使用者情報に基づいて使用者の身体的特徴の種類に対応した重要度データを得る。そして、画像形成装置1はこの重要度データと用紙収容部データとを用いた演算により、例えば用紙ジャムが発生し難い用紙収容部を選択して給紙先に設定する。したがって、身体的特徴や用紙収容部の種類が比較的多い場合でも、重要度データと用紙収容部データとを入力すれば演算により容易に給紙先としての用紙収容部を求めることが可能である。さらに、比較的簡単な四則演算により給紙先としての用紙収容部が求められるので、迅速に給紙先の設定を行うことが可能になる。
【0061】
また、複数の用紙収容部がジャム発生率の低さ、用紙補充の容易さ、ジャム解除の容易さに基づいてランク付けされる。したがって、画像形成装置1は身体的特徴の様々な種類に対応して好適な用紙収容部を選択して給紙先に設定することが可能である。
【0062】
上記実施形態の構成によれば、ハンディキャップ、すなわち使用者固有の身体的特徴に対応した用紙収容部を選択することにより、ジャム解除作業だけでなく用紙補充作業も発生することをできるだけ回避し、使用者が安心して使用できることが考慮された画像形成装置1を提供することが可能である。
【0063】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0064】
例えば、上記実施形態では、複数の用紙収容部として汎用給紙カセット31、大容量給紙カセット32及び給紙デッキ33を例として掲げて説明したが、用紙収容部はこれらに限定されるわけではなく、他の用紙収容部を給紙先として設定しても良い。また、さらに詳細に、上下2段に並べられた汎用給紙カセット31と、左右2列に並べられた大容量給紙カセット32とを各々個別に給紙先として設定できるようにしても構わない。
【0065】
また、本発明の上記実施形態では、画像形成装置1としてブラックトナーのみを使用したモノクロ印刷用の画像形成装置を例に掲げて説明したが、発明の適用対象となる画像形成装置はこのような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを備え、複数色を重ね合わせて画像形成することが可能なタンデム方式、或いはロータリー方式のカラー印刷用画像形成装置などであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置全般において利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置
7 操作パネル
7b 設定部(入力部)
8 ICカード読取部(入力部)
15 制御部
18 記憶部
21 給紙ジャムカウント部
30 給紙部
31 汎用給紙カセット(用紙収容部)
32 大容量給紙カセット(用紙収容部)
33 給紙デッキ(用紙収容部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の印刷に用いる用紙を収容した複数の用紙収容部と、
使用者固有の身体的特徴に係る使用者情報を取得するための入力部と、
前記身体的特徴の種類に対応して前記複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択するための選択基準情報を記憶した記憶部と、
前記入力部から取得した前記使用者情報と、前記記憶部に記憶された前記選択基準情報とに基づいて前記複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記選択基準情報は、前記複数の用紙収容部各々に対する給紙障害の発生し難さ及び操作の容易さをランク付けして数値化した用紙収容部データと、前記身体的特徴の種類に対応して前記用紙収容部の給紙障害の発生し難さ及び操作の容易さのうちいずれを重要視すべきかをランク付けして数値化した重要度データと、を含み、
前記制御部は、前記入力部から取得した前記使用者情報と、前記用紙収容部データ及び前記重要度データとを用いて演算した演算結果に基づいて前記複数の用紙収容部のうち一の用紙収容部を選択して給紙先に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記選択基準情報の前記用紙収容部データは、給紙障害の発生し難さとしての給紙ジャムカウント部がカウントした前記用紙収容部ごとの給紙ジャムの累積回数に基づくジャム発生率の低さをランク付けして数値化したデータと、前記用紙収容部ごとに予め定められた用紙補充の容易さをランク付けして数値化したデータと、前記用紙収容部ごとに予め定められたジャム解除の容易さをランク付けして数値化したデータと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記用紙収容部ごとの前記ジャム発生率の低さをランク付けして数値化したデータ、前記用紙収容部ごとに予め定められた前記用紙補充の容易さをランク付けして数値化したデータ、及び前記用紙収容部ごとに予め定められた前記ジャム解除の容易さをランク付けして数値化したデータと、それら各々に対応する使用者の前記重要度データとを掛けて合計することによって演算結果を求め、前記演算結果の合計値が最も大きい前記用紙収容部を給紙先と設定することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−155174(P2012−155174A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14886(P2011−14886)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】