説明

画像形成装置

【課題】CPUの負荷が大きくなったときに、読取処理や印刷処理を一時停止させることなく、UIのレスポンス性の低下を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】MFP10は、原稿画像を光学的に読み取るスキャナユニット1と、画像データの印刷を行うプリンタユニット3と、スキャナユニット1による読取処理及び/又はプリンタユニット3による印刷処理に係る動作条件に従ってMFP10の動作を制御するCPU21と、読取処理及び/又は印刷処理を行うときのCPU21の使用率を監視するCPU使用率監視部21aと、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率が所定値以上の場合に、CPU使用率に応じて読取処理及び/又は印刷処理に係る動作条件を制限する動作条件制限部21bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、より詳細には、原稿画像を光学的に読み取る読取部と画像データの印刷を行う印刷部とを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MFP(Multi Function Peripheral:デジタル複合機)などの画像形成装置において、ユーザインタフェース(以下、UIともいう)となるタッチパネルを搭載した表示画面が大型化され、プレビュー機能など様々な機能がより使い易く、また、見易く改良されたものが製品化されている。このようにMFPを高機能化あるいは多機能化していくと、当然ながらMFPが備えるCPUへの負荷も大きくなる。
【0003】
CPUの処理能力が不足すると、MFPの動作が抑制され、例えば、プレビュー表示がスムーズに行なわれない、あるいは、スキャン性能が低下するなど、ユーザにストレスを与えることになる。このような場合、処理能力の高い高性能なCPUを搭載することで、負荷軽減を図ることはできるが、一般に、高性能なCPUは高価であるため、MFPのコストアップの要因となる。このため、ユーザにストレスを与えることなく、CPUを効率的に使用するための技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、CPUの負荷を監視し、クロックを可変する電子機器が記載されている。この電子機器によれば、クロック周波数をダイナミックに制御可能なVCXO回路と、クロックにより動作するCPU部と、動作するプログラムが格納されているプログラムメモリ部と、プログラムの進行状況を監視し、最適にクロックを制御するプログラム監視制御部とを備え、CPU部のソフトウェア負荷に応じてクロックをダイナミックに可変するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−39930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、MFPによりCPU負荷の大きなジョブを処理すると、CPU使用率が100%近くになってしまう場合がある。この場合、CPUがジョブ処理に占有されてしまうため、MFPのUIの動作にも影響が出てしまう。例えば、プレビュー表示が途中で停止したり、画面切替などの動作がぎくしゃくしたりするなど、UIのレスポンス性を低下させてしまうため、ユーザからすると直接目に触れる部分だけに大きなストレスがかかることになる。また、逆にUIの動作を優先させると、負荷の大きなジョブを処理する際に影響が出てしまい、例えば、プリンタによる印刷処理、あるいは、スキャナによる読取処理が一時的に停止するなどするため、この場合も、ユーザにストレスをかけることになる。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1に記載の技術は、CPUの負荷に応じてクロックをダイナミックに変化させるもので、当然ながらクロックの動作には制限がある。このため、クロックの制限を越えた場合には、読取処理や印刷処理を一時停止させることなく、UIのレスポンス性の低下を抑制することはできない。従って、特許文献1の技術は、上記のような課題を解決するものではない。
【0008】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、CPUの負荷が大きくなったときに、読取処理や印刷処理を一時停止させることなく、UIのレスポンス性の低下を抑制できる画像形成装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、原稿画像を光学的に読み取る読取部と、画像データの印刷を行う印刷部とを備えた画像形成装置であって、前記読取部による読取処理及び/又は前記印刷部による印刷処理に係る動作条件に従って前記画像形成装置の動作を制御するCPUと、前記読取処理及び/又は前記印刷処理を行うときの前記CPUの使用率を監視するCPU使用率監視部と、該CPU使用率監視部により監視されるCPU使用率が所定値以上の場合に、該CPU使用率に応じて前記読取処理及び/又は前記印刷処理に係る動作条件を制限する動作条件制限部とを備えたことを特徴としたものである。
【0010】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、該画像形成装置の処理内容とCPU使用率とを対応付けたCPU使用率テーブルを備え、前記CPU使用率監視部は、前記読取処理及び/又は前記印刷処理を行うときの前記画像形成装置の処理内容に基づいて、前記CPU使用率テーブルを参照し、前記処理内容に応じたCPU使用率を算出することを特徴としたものである。
【0011】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記CPUに接続されるバスと、前記読取処理及び/又は前記印刷処理を行うときの前記バスの帯域使用率を監視するバス帯域使用率監視部とを備え、前記動作条件制限部は、前記CPU使用率が前記所定値未満であり、且つ、前記バス帯域使用率監視部により監視されるバス帯域使用率が一定値以上の場合に、該バス帯域使用率に応じて前記読取処理及び/又は前記印刷処理に係る動作条件を制限することを特徴としたものである。
【0012】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記読取処理及び/又は前記印刷処理に係る動作条件の制限は、前記読取処理時の読取周期及び/又は前記印刷処理時の印刷周期をデフォルト値に対して長くすることであることを特徴としたものである。
【0013】
第5の技術手段は、第4の技術手段において、前記動作条件制限部は、前記読取周期を長くする場合、該読取周期を長くする量を、該読取周期のみを長くする場合と、該読取周期及び前記印刷周期の両方を長くする場合とで異ならせることを特徴としたものである。
【0014】
第6の技術手段は、第4の技術手段において、前記動作条件制限部は、前記印刷周期を長くする場合、該印刷周期を長くする量を、該印刷周期のみを長くする場合と、前記読取周期及び前記印刷周期の両方を長くする場合とで異ならせることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、読取処理及び/又は印刷処理を行うときのCPU使用率を監視し、そのCPU使用率が所定値(例えば50%)以上の場合に、CPU使用率に応じて読取処理及び/又は印刷処理に係る動作条件を制限するため、CPUの負荷が大きくなったときに、読取処理や印刷処理を一時停止させることなく、UIのレスポンス性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】MFPの処理内容とCPU使用率とを対応付けたCPU使用率テーブルの一例を示す図である。
【図3】本発明のMFPによるCPU負荷制御方法の一例を説明するためのフロー図である。
【図4】本発明のMFPによるCPU及びバスの負荷制御方法の一例を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の画像形成装置に係る好適な実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成例を示すブロック図で、図中、10は画像形成装置を示す。この画像形成装置10は、スキャナ、コピー、プリンタ、ファクシミリ機能等を備えたデジタル複合機(MFP)として構成される。画像形成装置10(以下、MFP10という)は、大きく分けて、スキャナユニット1、コントローラ2、及びプリンタユニット3を備える。コントローラ2は、シリアルライン4を介してスキャナユニット1及びプリンタユニット3に接続され、これらスキャナユニット1及びプリンタユニット3の動作を制御する。
【0019】
スキャナユニット1は、原稿画像を光学的に読み取る本発明の読取部に相当する。このスキャナユニット1は、ハードウェア(メカ部分)を制御するためのメカコントロール用CPU11と、スキャナユニット1の制御プログラムを格納した不揮発性メモリであるROM12と、制御プログラムの実行領域となる揮発性メモリであるRAM13と、CCD(Charge Coupled Device)等の原稿画像を読み取るための画像読み取りセンサ14と、画像読み取りセンサ14で原稿画像を読み取って入力した画像データを処理するデータ処理用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)15と、データ処理用ASIC15によるプログラムの実行領域となるRAM16と、を備える。
【0020】
コントローラ2は、スキャナユニット1及びプリンタユニット3とシリアルライン4を介して接続されMFP10の動作を制御するCPU21と、MFP10全体の制御プログラムを格納したROM22と、スキャナユニット1から入力される読取画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理用ASIC23と、HDD(ハードディスクドライブ)25及びメモリカード26を接続しこれらの入出力を制御する制御チップ24と、画像データ等を記録するためのHDD25及びメモリカード26と、制御プログラムの実行領域となるRAM27と、プリンタユニット3に出力する画像印刷データを生成するための印刷画像生成用ASIC28と、LAN等のネットワークを制御するためのLAN制御用IC29と、これら各部を接続するバス30と、を備える。
【0021】
プリンタユニット3は、画像データの印刷を行う本発明の印刷部に相当する。このプリンタユニット3は、ハードウェア(メカ部分)を制御するためのメカコントロール用CPU31と、印刷エンジン35内のモータの駆動制御を行うためのモータ制御用ASIC32と、プリンタユニット3の制御プログラムを格納したROM33と、制御プログラムの実行領域となるRAM34と、LSU(Laser Scanning Unit)などの印刷を行うハードウェアで構成されコントローラ2から入力される画像印刷データに基づいて印刷を行う印刷エンジン35と、を備える。
【0022】
本発明の主たる特徴部分は、CPUの負荷が大きくなったときに、読取処理や印刷処理を一時停止させることなく、UIのレスポンス性の低下を抑制することにある。このための構成として、MFP10は、スキャナユニット1による読取処理及び/又はプリンタユニット3による印刷処理に係る動作条件に従ってMFP10の動作を制御するCPU21と、読取処理及び/又は印刷処理を行うときのCPU21の使用率を監視するCPU使用率監視部21aと、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率が所定値以上の場合に、CPU使用率に応じて読取処理及び/又は印刷処理に係る動作条件を制限する動作条件制限部21bとを備える。以下、CPU使用率とは、CPU21の使用率のことをいうものとする。
【0023】
また、MFP10は、CPU21に接続されるバス30と、読取処理及び/又は印刷処理を行うときのバス30の帯域使用率を監視するバス帯域使用率監視部21cとを備える。動作条件制限部21bは、CPU使用率が所定値未満であり、且つ、バス帯域使用率監視部21cにより監視されるバス帯域使用率が一定値以上の場合に、バス帯域使用率に応じて読取処理及び/又は印刷処理に係る動作条件を制限するようにしてもよい。
【0024】
なお、CPU使用率監視部21a、動作条件制限部21b、及びバス帯域使用率監視部21cは、CPU21の機能の一部として実現可能であり、これらCPU使用率監視部21a、動作条件制限部21b、及びバス帯域使用率監視部21cを実行するためのプログラムをROM22あるいはHDD25に格納しておく。そして、CPU21は、プログラムの実行時に、ROM22あるいはHDD25からプログラムを読み出して、RAM27に展開して実行することができる。
【0025】
図2は、MFP10の処理内容とCPU使用率とを対応付けたCPU使用率テーブルの一例を示す図である。このCPU使用率テーブルは、ROM22に格納されており、CPU使用率監視部21aにより適宜参照される。プレビューとは、ファイリングデータを画像処理して操作画面上に表示する処理で、CPU使用率が40%程度となる。また、UIアニメーションとは、操作の際にアニメーション表示する処理で、CPU使用率が40%程度となる。また、ラスタデータ変換処理とは、プリントデータをラスタデータに変換する処理で、CPU使用率が40%程度となる。また、簡易編集処理とは、操作画面上でプレビューデータを編集する処理で、CPU使用率が40%程度となる。これらの処理は比較的CPU使用率が高く、CPU負荷が大きい処理と言える。
【0026】
また、ファイリングデータ検索処理とは、ユーザにより指定される検索条件に従ってファイリングデータを検索する処理で、CPU使用率が20%程度となる。また、ファイリングデータ再印刷処理とは、ファイリングデータを再印刷する際に画像処理を行う処理で、CPU使用率が20%程度となる。また、コピー処理とは、原稿画像の読取処理を行い、画像処理しながら印刷処理を行う処理で、CPU使用率が30%程度となる。また、スキャン処理とは、原稿画像の読取処理を行い、画像処理を行うが印刷はしない処理で、CPU使用率が20%程度となる。これらの処理はCPU負荷が中程度の処理と言える。
【0027】
また、プリント処理とは、読取処理、画像処理済みの画像データを印刷する処理で、CPU使用率が10%程度となる。また、Webアクセス応答とは、インターネットのWebサイトへのアクセスを行う処理で、CPU使用率が10%程度となる。また、その他とは、上述の各処理以外の処理で、CPU使用率が10%程度となる。これらの処理は比較的CPU使用率が低く、CPU負荷が小さい処理と言える。
【0028】
CPU使用率監視部21aは、スキャン処理及び/又はプリント処理を行うときのMFP10の処理内容に基づいて、図2のCPU使用率テーブルを参照し、処理内容に応じたCPU使用率を算出する。例えば、スキャン処理単独ではCPU使用率が20%となり、プリント処理単独ではCPU使用率が10%となり、スキャン処理及びプリント処理を合わせたコピー処理ではCPU使用率が30%となる。この際、プレビュー表示など他の処理を行っている場合には、その分のCPU使用率を加算すればよい。例えば、CPU使用率40%のプレビュー表示中に、CPU使用率10%のプリント処理を行う場合には、CPU使用率が50%と算出される。
【0029】
動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21aにより監視(算出)されるCPU使用率が所定値(例えば、50%)以上の場合に、CPU使用率に応じてスキャン処理及び/又はプリント処理に係る動作条件を制限する。これによりCPU負荷を低減させることができる。動作条件の制限方法としては、例えば、スキャン処理時の読取周期及び/又はプリント処理時の印刷周期を、それぞれのデフォルト値(デフォルト周期)に対して長くすることが考えられる。ここでいう読取周期とは、原稿を読み取る際の各ページ間(紙間)の処理待ち時間(インターバル)を意味し、印刷周期とは、画像データを記録用紙に印刷する際の各ページ間(紙間)の処理待ち時間(インターバル)を意味する。これらの周期を長くすることで、CPU21に入力されるデータあるいはCPU21から出力されるデータの間隔をあけることができるため、CPU21の負荷を分散させ、CPU使用率を下げることができる。
【0030】
具体的には、CPU使用率と読取周期とを対応付けた読取周期テーブルをROM22に格納しておく。例えば、CPU使用率を、50%以上60%未満、60%以上70%未満、70%以上80%未満、80%以上90%未満、90%以上100%以下の5段階に分け、各段階に応じた読取周期A、B,C,D,E(A>B>C>D>Eの順で、Aが最も長い周期となる)を割り当てておく。そして、動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率に基づいて、この読取周期テーブルを参照し、CPU使用率に応じた読取周期を特定することができる。例えば、CPU使用率が65%であれば、読取周期“D”と特定される。
【0031】
上記において、CPU使用率と読取周期との対応関係は、実測に基づいて予め決めておくことができる。具体的には、上記の各段階のCPU使用率を、所定のCPU使用率(例えば、40%)まで低減しようとした場合、このために必要な読取周期を各段階について実測しておくことが考えられる。
【0032】
また、印刷周期の場合も、上記の読取周期と同様であるが、CPU使用率と印刷周期とを対応付けた印刷周期テーブルをROM22に格納しておく。そして、動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率に基づいて、この印刷周期テーブルを参照し、CPU使用率に応じた印刷周期を特定することができる。なお、読取周期と印刷周期には、それぞれ異なるデフォルト値が設定されており、CPU使用率が所定値未満である場合には、動作制限することなく、デフォルト値で動作するように構成されている。
【0033】
また、スキャン処理及びプリント処理を合わせたコピー処理を行う場合、読取周期と印刷周期の両方を長くしてもよい。この場合も上記と同様に、CPU使用率と、読取周期及び印刷周期とを対応付けた読取周期・印刷周期テーブルをROM22に格納しておく。そして、動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21bにより監視されるCPU使用率に基づいて、この読取周期・印刷周期テーブルを参照し、CPU使用率に応じた読取周期、印刷周期を特定することができる。
【0034】
ここで、読取周期を長くする場合、読取周期を長くする量を、読取周期のみを長くするスキャン処理の場合と、読取周期及び印刷周期の両方を長くするコピー処理の場合とで異ならせるようにしてもよい。また、同様に、印刷周期を長くする場合、印刷周期を長くする量を、印刷周期のみを長くするプリント処理の場合と、読取周期及び印刷周期の両方を長くするコピー処理の場合とで異ならせるようにしてもよい。
【0035】
上記において、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率(例えば50%)を、所定のCPU使用率(例えば40%)に低減しようとした場合に、読取周期及び印刷周期の両方を長くする場合と、読取周期を単独で長くする場合とでは、両方を長くするときの読取周期のほうが、単独で長くするときの読取周期よりも、その変化量を小さくできると考えられる。従って、読取周期について、読取周期及び印刷周期の両方を長くするときの変化量を、読取周期のみを長くするときの変化量よりも小さくする。また、印刷周期についても同様に、読取周期及び印刷周期の両方を長くする場合と、印刷周期を単独で長くする場合とでは、両方を長くするときの印刷周期のほうが、単独で長くするときの印刷周期よりも、その変化量を小さくできると考えられる。従って、印刷周期について、読取周期及び印刷周期の両方を長くするときの変化量を、印刷周期のみを長くするときの変化量よりも小さくする。このように、周期の変化量を小さくすることにより、CPU負荷を下げつつ、各処理を迅速に行うことができる。
【0036】
また、動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率が所定値未満であり、且つ、バス帯域使用率監視部21cにより監視されるバス帯域使用率が一定値以上の場合に、バス帯域使用率に応じて読取処理及び/又は印刷処理に係る動作条件を制限するようにしてもよい。これは、CPU負荷に余裕があっても、バス帯域に余裕がない場合には、データを流すことができず、MFP10の処理が滞る場合が想定されるためである。そこで、バス30のバス帯域使用率の推移を監視・算出し、このバス帯域使用率が一定値以上の場合に、バス帯域使用率に応じて読取処理及び/又は印刷処理に係る動作を制限する。このときの動作制限の方法は、CPUの場合と同様に、読取処理時の読取周期及び/又は印刷処理時の印刷周期をデフォルト値に対して長くすることが考えられる。
【0037】
上記において、バス帯域使用率と読取周期及び/又は印刷周期との対応関係は、実測に基づいて予め決めておくことができる。具体的には、上記の各段階のバス帯域使用率を、所定のバス帯域使用率(例えば、50%)まで低減しようとした場合、このために必要な読取周期及び/又は印刷周期を各段階について実測しておくことが考えられる。
【0038】
なお、上記のように読取周期あるいは印刷周期を長くして、ページ間のインターバルを空けた場合でも、単位時間当たりに転送されるデータ量は変わらないため、バス負荷を十分に下げることができないということも考えられる。このような場合には、読取処理であれば、実際のページ読取速度を変える、あるいは、印刷処理であれば、実際のページ印刷速度を変えるなどの方法を用いて、単位時間当たりのデータ転送量を減らすようにしてもよい。
【0039】
図3は、本発明のMFP10によるCPU負荷制御方法の一例を説明するためのフロー図である。本例では、図1のMFP10の構成及び図2のCPU使用率テーブルに基づいて説明する。まず、CPU使用率監視部21aは、各種処理を受け付けたときのCPU21の処理内容を特定する(ステップS1)。このCPU21の処理内容は、例えば、スキャン処理を受け付けたときに、そのときに実行中の他の処理、例えば、プレビュー処理などがある場合には、スキャン処理とプレビュー処理が特定される。これは、スキャン処理に限らず、プリント処理、コピー処理を受け付けた場合でも同様である。
【0040】
そして、CPU使用率監視部21aは、上記で特定したCPU処理内容に基づいて、図2のCPU使用率テーブルを参照し、CPU21の処理内容に応じたCPU使用率を算出する(ステップS2)。例えば、CPU使用率20%のスキャン処理と、CPU使用率40%のプレビュー処理であれば、これらが加算され、CPU使用率は60%と算出される。同様に、CPU使用率10%のプリント処理と、CPU使用率40%のプレビュー処理であれば、これらが加算され、CPU使用率は50%と算出される。また、CPU使用率30%のコピー処理と、CPU使用率40%のプレビュー処理であれば、これらが加算され、CPU使用率は70%と算出される。
【0041】
次に、動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率が所定値(ここでは50%)以上か否かを判定し(ステップS3)、CPU使用率が50%以上であると判定した場合(YESの場合)、実行中の処理を判定し、判定の結果、スキャナユニット1での読取のみ実行中である場合(読取のみ実行中の場合)、ステップS2で算出したCPU使用率に基づいて、ROM22内の読取周期テーブル(図示)を参照し、CPU使用率に応じた読取周期を特定する。そして、CPU21は、特定した読取周期で動作するように、スキャナユニット1を制御する(ステップS4)。
【0042】
また、プリンタユニット3での印刷のみ実行中である場合(印刷のみ実行中の場合)、ステップS2で算出したCPU使用率に基づいて、ROM22内の印刷周期テーブル(図示)を参照し、CPU使用率に応じた印刷周期を特定する。そして、CPU21は、特定した印刷周期で動作するように、プリンタユニット3を制御する(ステップS5)。また、スキャナユニット1での読取及びプリンタユニット3での印刷の両方が実行中である場合(読取・印刷両方実行中の場合)、ステップS2で算出したCPU使用率に基づいて、ROM22内の読取・印刷周期テーブル(図示)を参照し、CPU使用率に応じた読取周期、印刷周期を特定する。そして、CPU21は、特定した読取周期、印刷周期で動作するように、スキャナユニット1、プリンタユニット3をそれぞれ制御する(ステップS6)。
【0043】
そして、動作条件制限部21bは、ステップS3において、CPU使用率が50%未満であると判定した場合(NOの場合)、読取周期又は印刷周期が変更されている場合には元(デフォルト値)に戻し(ステップS7)、そのまま終了する。
【0044】
図4は、本発明のMFP10によるCPU及びバスの負荷制御方法の一例を説明するためのフロー図である。本例では、図1のMFP10の構成及び図2のCPU使用率テーブルに基づいて説明するが、バス帯域使用率監視部21cで監視されるバス帯域使用率も考慮して、負荷制御を行うものとする。まず、CPU使用率監視部21aは、各種処理を受け付けたときのCPU21の処理内容を特定する(ステップS11)。このCPU21の処理内容は、例えば、スキャン処理を受け付けたときに、そのときに実行中の他の処理、例えば、プレビュー処理などがある場合には、スキャン処理とプレビュー処理が特定される。これは、スキャン処理に限らず、プリント処理、コピー処理を受け付けた場合でも同様である。
【0045】
そして、CPU使用率監視部21aは、上記で特定したCPU処理内容に基づいて、図2のCPU使用率テーブルを参照し、CPU21の処理内容に応じたCPU使用率を算出し、さらに、バス帯域使用率監視部21cは、バス30のバス帯域使用率を算出する(ステップS12)。
【0046】
次に、動作条件制限部21bは、CPU使用率監視部21aにより監視されるCPU使用率が所定値(ここでは50%)以上か否かを判定し(ステップS13)、CPU使用率が50%以上であると判定した場合(YESの場合)、実行中の処理を判定し、判定の結果、図3のフローと同様に、スキャナユニット1での読取のみ実行中である場合(読取のみ実行中の場合)、ステップS12で算出したCPU使用率に応じた読取周期を特定する。そして、CPU21は、特定した読取周期で動作するように、スキャナユニット1を制御する(ステップS15)。
【0047】
また、プリンタユニット3での印刷のみ実行中である場合(印刷のみ実行中の場合)、ステップS12で算出したCPU使用率に応じた印刷周期を特定する。そして、CPU21は、特定した印刷周期で動作するように、プリンタユニット3を制御する(ステップS16)。また、スキャナユニット1での読取及びプリンタユニット3での印刷の両方が実行中である場合(読取・印刷両方実行中の場合)、ステップS12で算出したCPU使用率に応じた読取周期、印刷周期を特定する。そして、CPU21は、特定した読取周期、印刷周期で動作するように、スキャナユニット1、プリンタユニット3をそれぞれ制御する(ステップS17)。
【0048】
また、ステップS13において、CPU使用率が50%未満であると判定した場合(NOの場合)、動作条件制限部21bは、バス帯域使用率監視部21cにより監視されるバス帯域使用率が一定値(ここでは70%)以上か否かを判定し(ステップS14)、バス帯域使用率が70%以上であると判定した場合(YESの場合)、実行中の処理を判定し、判定の結果、スキャナユニット1での読取のみ実行中である場合(読取のみ実行中の場合)、ステップS12で算出したバス帯域使用率に応じた読取周期を特定する。そして、CPU21は、特定した読取周期で動作するように、スキャナユニット1を制御する(ステップS15)。
【0049】
ここで、バス帯域使用率に応じた読取周期を特定する際には、図3に示したような、CPU使用率と読取周期を対応付けたテーブルではなく、バス帯域使用率と読取周期を対応付けたテーブルを用いるものとする。以下、印刷周期の場合、読取周期及び印刷周期の場合も同様にそれぞれのテーブルを用いるものとする。
【0050】
また、プリンタユニット3での印刷のみ実行中である場合(印刷のみ実行中の場合)、ステップS12で算出したバス帯域使用率に応じた印刷周期を特定する。そして、CPU21は、特定した印刷周期で動作するように、プリンタユニット3を制御する(ステップS16)。また、スキャナユニット1での読取及びプリンタユニット3での印刷の両方が実行中である場合(読取・印刷両方実行中の場合)、ステップS12で算出したバス帯域使用率に応じた読取周期、印刷周期を特定する。そして、CPU21は、特定した読取周期、印刷周期で動作するように、スキャナユニット1、プリンタユニット3をそれぞれ制御する(ステップS17)。
【0051】
そして、動作条件制限部21bは、ステップS14において、バス帯域使用率が70%未満であると判定した場合(NOの場合)、読取周期又は印刷周期が変更されている場合には元(デフォルト値)に戻し(ステップS18)、そのまま終了する。
【符号の説明】
【0052】
1…スキャナユニット、2…コントローラ、3…プリンタユニット、4…シリアルライン、10…画像形成装置(MFP)、11,31…メカコントロール用CPU、12,22,33…ROM、13,16,27,34…RAM、14…画像読み取りセンサ、15…データ処理用ASIC、21…CPU、21a…CPU使用率監視部、21b…動作条件制限部、21c…バス帯域使用率監視部、23…画像処理用ASIC、24…制御チップ、25…HDD、26…メモリカード、28…印刷画像生成用ASIC、29…LAN制御用IC、30…バス、32…モータ制御用ASIC、35…印刷エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を光学的に読み取る読取部と、画像データの印刷を行う印刷部とを備えた画像形成装置であって、
前記読取部による読取処理及び/又は前記印刷部による印刷処理に係る動作条件に従って前記画像形成装置の動作を制御するCPUと、前記読取処理及び/又は前記印刷処理を行うときの前記CPUの使用率を監視するCPU使用率監視部と、該CPU使用率監視部により監視されるCPU使用率が所定値以上の場合に、該CPU使用率に応じて前記読取処理及び/又は前記印刷処理に係る動作条件を制限する動作条件制限部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、該画像形成装置の処理内容とCPU使用率とを対応付けたCPU使用率テーブルを備え、前記CPU使用率監視部は、前記読取処理及び/又は前記印刷処理を行うときの前記画像形成装置の処理内容に基づいて、前記CPU使用率テーブルを参照し、前記処理内容に応じたCPU使用率を算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記CPUに接続されるバスと、前記読取処理及び/又は前記印刷処理を行うときの前記バスの帯域使用率を監視するバス帯域使用率監視部とを備え、前記動作条件制限部は、前記CPU使用率が前記所定値未満であり、且つ、前記バス帯域使用率監視部により監視されるバス帯域使用率が一定値以上の場合に、該バス帯域使用率に応じて前記読取処理及び/又は前記印刷処理に係る動作条件を制限することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記読取処理及び/又は前記印刷処理に係る動作条件の制限は、前記読取処理時の読取周期及び/又は前記印刷処理時の印刷周期をデフォルト値に対して長くすることであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、前記動作条件制限部は、前記読取周期を長くする場合、該読取周期を長くする量を、該読取周期のみを長く場合と、該読取周期及び前記印刷周期の両方を長くする場合とで異ならせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像形成装置において、前記動作条件制限部は、前記印刷周期を長くする場合、該印刷周期を長くする量を、該印刷周期のみを長くする場合と、前記読取周期及び前記印刷周期の両方を長くする場合とで異ならせることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175490(P2012−175490A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36678(P2011−36678)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】