説明

画像形成装置

【課題】 ウェアレベリングにより書き込み先が平均化される、フラッシュメモリで構成された半導体ストレージにおいて、データの完全消去はシステムのパフォーマンスの低下とストレージの書き換え寿命を短縮化してしまう。
【解決手段】 画像形成装置の半導体ストレージにおいて、完全消去モードが有効になった場合はジョブのセキュリティレベルによって画像処理のパスを動的に切り替えてストレージのスプールを使用しないパスで処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ディスク(以下、SSD)を搭載した画像形成装置のストレージ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置内にHDDが搭載され、プログラムを格納すると共に画像データの保存、編集などを実現するストレージ機能を実現している。
【0003】
近年、大容量化と低価格化が進んでモバイルPCを中心に急速に普及が進んでいるSSDはHDDと比べて高速なランダムアクセスが可能、低消費電力、高い耐衝撃性、軽量、省スペースといった点に特長がある。特にシステム起動時においてHDDで必要なスピンアップ等の初期動作が必要無い為、高速なデータ転送と相まって起動時間の短縮化には非常に効果があり、更に衝撃により破損しやすいディスクの駆動部分が存在しないため耐衝撃性も耐熱性も優れている事から、画像形成装置のストレージデバイスとしても注目されている。
【0004】
ただし、SSDに搭載されている記憶デバイスであるフラッシュメモリには書き込み可能回数に上限がある(SLCで約10万回、MLCで約1万回)。更に、プロセスの微細化によりフラッシュメモリは将来的に現在の書き換え可能回数から減少する傾向にある。
【0005】
これに対して、SSDに搭載されているフラッシュメモリコントローラは同じ領域への書き込み頻度が集中しないように書き込み先を平均化させてストレージデバイスの寿命を延伸化させるウェアレベリングという技術を用いて前記問題に対応している。
【0006】
データのセキュリティー確保やプライバシー保護への要求は非常に高く、画像形成装置においてもストレージに記録されたスプールデータや保存データを完全に消去可能である事が求められている。ハードディスク(以下、HDD)に関しては残留磁気を除去する目的のため消去対象データの保管されている領域に対してダミーデータを複数回上書きすることでデータの完全消去を行っている(特許文献参照)。
【0007】
しかしSSDにおいてはHDDとは異なり1回の書き換えでデータは完全に消去可能であるが、前記ウェアレベリングにより通常のライトコマンドでは消去対象データを直接書き換えられないため完全消去に対応した特別なライトコマンドを使用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-153516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フラッシュメモリはデバイスの特性上、データの消去単位はブロック単位でしか行えない。従って上述した従来の技術では完全消去対応のライトコマンドを使用すると、書き込むデータがSSDに搭載されるフラッシュメモリのブロックサイズより小さい場合はデータ消去におけるオーバヘッドによりパフォーマンスが低下するという課題がある。
【0010】
また消去対象データの容量分だけダミーデータを書き込まねばならないため、その書き込み処理分システムパフォーマンスが低下し、書き換え寿命も消費されるという課題がある。
【0011】
更に製品寿命を満たすためにダミーデータの書き込みで消費される分だけSSDのサイズを大きくする必要があるためコストアップとなるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために本発明の画像形成装置は、
半導体ストレージにおいて、ジョブ処理に半導体ストレージをスプール領域として用いる第一の処理手段と、スプール領域を使わずにメインメモリをバッファとして順次処理を行う第二の処理手段と、ジョブのセキュリティレベルの判別手段を備える画像処理装置において、ジョブのセキュリティレベルが高いジョブを処理する時は第二の処理手段にて行う事を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
半導体ストレージに消去対象データをスプールしないことから、完全消去処理そのものを省略できる。従って、完全消去に伴うダミーデータの書き込みを行わない事から半導体ストレージの寿命の延伸化とシステムパフォーマンス低下の抑制を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の制御部の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコントローラ制御部400の構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の操作部800の構成を表す図である。
【図4】画像形成装置のプリンタドライバの設定画面の構成を表す図である。
【図5】画像形成装置がジョブのセキュリティレベルによってスプール先を動的に切り替えるフローを示すフローチャートである。
【図6】図5のフローにおけるスプールモード切り替え条件にジョブのデータサイズが追加されたフローを示すフローチャートである。
【図7】図5のフローにおけるスプールモード切り替え条件にジョブの設定内容が追加されたフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
図1は画像形成装置の制御部の全体構成を示すブロック図である。画像形成装置全体を制御するコントローラ制御部400を中心に構成されている。
【0018】
コントローラ制御部400は、操作部800や外部コンピュータ453からの指示に基づいて原稿搬送装置100を制御する原稿搬送装置制御部101、イメージリーダ200を制御するイメージリーダ制御部201と通信し、入力される原稿の画像データを取得する。また、プリンタ部300を制御するプリンタ制御部301と通信を行い、画像データをシートに印刷する。折り装置500を制御する折り装置制御部501、フィニッシャ600を制御するフィニッシャ制御部601と通信を行い、印刷されたシートにステイプルやパンチ穴といった所望の出力を実現する。
【0019】
外部I/F451は外部コンピュータ453と接続するインターフェース4である。例えばネットワークやUSBなどの外部バス452で接続し外部コンピュータ453からのプリントデータを画像に展開して出力するほか、後述する半導体ストレージ413(以下、SSD)及びハードディスク407(以下、HDD)内の画像データを外部コンピュータ453に送信することを行う。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係るコントローラ制御部400の構成を示すブロック図である。
【0021】
コントローラ制御部400はCPU−A401およびCPU−B408の2つのCPUで構成され、それぞれオペレーティングシステム(以下、OS)で制御される。CPU−A401側には、バスブリッジ404が接続され、バスブリッジ404を介して、CPU−A401とCPU−B408間の通信を行う。また、バスブリッジ404はCPU−A401の初期起動プログラムを格納しているROM−A402、CPU−A401の制御データを一時的に保持する。また、制御に伴う演算の作業領域として用いられるRAM−A403とストレージ機器を制御するストレージ制御部412が接続されている。
【0022】
SSD413には、CPU−A401およびCPU−B408の2つのOSを含むメインプログラムを格納する。また、オプション設定となっているHDD407が接続されない場合には、イメージリーダや外部I/F451より取得した画像データや操作部800で画像を編集した時の格納先、そしてアプリケーションプログラムやユーザープリファレンスデータ等の全てのデータの格納先として使用される。本実施例ではFLASH DISKを想定している。
【0023】
オプションストレージであるHDD407が接続された場合には、SSD414の代わりにイメージリーダや外部I/F451より取得した画像データや操作部800で画像を編集した時の保存用やアプリケーションプログラムの格納先として使用される。また、アプリケーションプログラムやユーザープリファレンスデータの格納先としても使用される。HDD407には、CPU−A401およびCPU−B408からアクセスができるように構成されている。
【0024】
また、ネットワークやUSBインターフェースを制御する外部I/F制御部405、操作部800を制御する操作部制御部406が接続されている。
【0025】
CPU−B408側には、CPU−B408の初期起動プログラムを格納しているROM−B409、CPU−B408の制御データを一時的に保持し、制御に伴う演算の作業領域として用いられるRAM−B410が接続されている。原稿搬送装置制御部101、イメージリーダ制御部201、プリンタ制御部301折り装置制御部501、フィニッシャ制御部601と接続され制御を司るデバイス制御部411を有する。
【0026】
図3は画像形成装置の操作部800の構成を表す図である。LCD表示部900は、LCD上にタッチパネルシートが貼られており、システムの操作画面を表示するとともに、表示してあるキーが押されるとその位置情報をコントローラ制御部400に伝える。テンキー801はコピー枚数など、数字の入力時に使用する。スタートキー802は、ユーザ所望の条件を設定した後、複写動作、原稿の読取り動作を開始する時などに用いる。セキュアキー804はユーザがジョブのセキュリティレベルを設定するためのものある。このキーはセキュアが有効時には点灯し、無効時には消灯する。セキュアキーが有効時にジョブが投入されると、そのジョブはセキュアレベル高に設定されてジョブの実行後にそのデータは画像形成装置のストレージから完全に消去される。
【0027】
また、805はガイドキーであり、キーの機能が解らないとき押すとそのキーの説明が表示される。806はコピーモードキーであり、複写を行うときに押す。807はファクスキーであり、ファクスに関する設定を行うときに押す。808はファイルキーであり、ファイルデータを出力したいときに押す。809はプリンタキーであり、コンピュータ等の外部装置からのプリント出力に関する設定などを行うときに使用する。
【0028】
図4は画像形成装置のプリンタドライバの設定画面の構成を表す図である。
【0029】
1001はプリンタを選択部であり、プルダウンボタン「黒塗り三角形にて示すボタン」を押す事で前記プリンタドライバがインストールされている外部コンピュータ453に登録されているプリンタがリストアップされる。1002はプリンタの詳細設定画面を呼び出すためのボタンである。1003はページ設定部であり、「全ページ」,「領域指定」,「任意ページ」の中から印刷するページを選択する。1004は部数の設定部であり印刷する部数等を設定する。1005の「Data Security」は操作部800におけるセキュアキー804と同じく、ここにチェックを入れて印刷を実行すると、そのジョブはそのジョブはセキュアレベル高に設定されてジョブの実行後にそのデータは画像形成装置のストレージから完全に消去される。
【0030】
本発明を適用した、ジョブのセキュリティレベルによるスプール先の動的切り替え制御
について詳しく説明する。
【0031】
図5は画像形成装置がジョブのセキュリティレベルによってスプール先を動的に切り替えるフローを示すフローチャートである。
【0032】
S101でCPU−A401が、ジョブが投入されたことを確認すると、画像形成装置が不要データの完全消去モードに設定されているかを確認する(S102)。完全消去モードが設定されている場合にはジョブのセキュリティレベルを確認する(S103)。
【0033】
前述の通り、操作部800のセキュアキー804が有効化された場合、またはプリンタドライバ1000の1005の「Data Security」がチェックされた場合にセキュリティレベルは高に設定される。セキュリティレベルが高に設定されると、そのジョブデータは完全消去対象となるため、ストレージ・スプールを行わないで、RAM−A402及びRAM−B410をバッファとして順次処理を行うスプールレスモードにてジョブを処理する(S105)。S102において完全消去モードに設定されていない場合と、S104にてジョブのセキュリティレベルが高で無かった場合は、ストレージ・スプールを行うスプールモードにてジョブを処理する(S106)。
【0034】
図6は図5のフローにおけるスプールモード切り替え条件にジョブのデータサイズが追加されたフローを示すフローチャートである。
【0035】
S201からS204までは図5のS101からS104までの処理と同様である。
【0036】
S204にてジョブが完全消去対象であると判断された場合は、S205にてジョブのデータ容量の確認を行う。S206にてジョブのデータ容量が所定容量以下の場合は、スプールレスモードにてジョブを実行する(S207)。ここでいう所定容量とはSSD413に搭載されるフラッシュメモリ1003のブロックサイズの容量である。S206で所定容量を上回ると判断された場合は、SSD413のデータ書き込み処理を完全消去モード対応の書き込み処理に変更する(S209)。これにより、ストレージ・スプールを行っても不要データの完全消去が可能となる。S210にてスプールモードにてジョブを実行し、ジョブデータ容量と同容量領分だけダミーデータをSSD413に上書きする事でデータ消去処理を行う(S211)。S202において完全消去モードに設定されていない場合と、S204にてジョブのセキュリティレベルが高で無かった場合は、ストレージ・スプールを行うスプールモードにてジョブを処理する(S208)。
【0037】
図7は図5のフローにおけるスプールモード切り替え条件にジョブの設定内容が追加されたフローを示すフローチャートである。
【0038】
S301からS304までは図5のS101からS104までの処理と同様である。
【0039】
S304にてジョブが完全消去対象であると判断された場合は、S305にてジョブのデ設定内容の確認を行う。S306にてジョブ設定がソート等のスプール無しで実行可能である場合は、スプールレスモードにてジョブを実行する(S307)。S306でソート機能等のようにスプール無しではジョブ実行が出来ない設定がされている場合は、SSD413のデータ書き込み処理を完全消去モード対応の書き込み処理に変更する(S309)。これにより、ストレージ・スプールを行っても不要データの完全消去が可能となる。S310にてスプールモードにてジョブを実行し、ジョブデータ容量と同容量領分だけダミーデータをSSD413に上書きする事でデータ消去処理を行う(S311)。S302において完全消去モードに設定されていない場合と、S304にてジョブのセキュリティレベルが高で無かった場合は、ストレージ・スプールを行うスプールモードにてジョブを処理する(S308)。
【符号の説明】
【0040】
400 コントローラ制御部
401 CPU−A
402 ROM−A
403 RAM−A
404 バスブリッジ
407 HDD
408 CPU−B
409 ROM−B
410 RAM−B
411 デバイス制御部
412 ストレージ制御部
413 SSD(FLASH DISK)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュメモリで構成された半導体ストレージにおいて、ジョブ処理に前記半導体ストレージをスプール領域として用いる第一の処理手段と、スプール領域を使わずにメインメモリをバッファとして順次処理を行う第二の処理手段と、ジョブのセキュリティレベルの判別手段を備える画像処理装置において、ジョブのセキュリティレベルが高いジョブを処理する時は第二の処理手段にて行う事を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
第二の処理手段でジョブを実行する条件にジョブのデータサイズが所定容量を下回る事を付加した事を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
ジョブのセキュリティレベルが高い場合でもジョブの処理条件がスプールを必要とする場合は第一の処理手段で行う事を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−191370(P2012−191370A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52312(P2011−52312)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】