説明

画像形成装置

【課題】記録媒体へ吐出された液滴を速やかに乾燥させる。
【解決手段】記録媒体に液滴を吐出して描画する液滴吐出ヘッドと、記録媒体を保持して液滴吐出ヘッドの吐出領域へ搬送するテーブルと、記録媒体を保持する前のテーブルを加熱する加熱手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備える画像記録装置は、液滴吐出ヘッドの吐出領域へ記録媒体を搬送しながら、入力された印刷情報に含まれる吐出パターンに応じて液滴吐出ヘッドの各ノズルから記録媒体に向かってインク液滴を吐出することによって、記録媒体上に画像を記録するものである。
【0003】
このような画像記録装置は、低騒音性にすぐれ、ランニングコストも安く、多種多様な記録媒体に記録可能で、様々な分野で広く利用されている。また、近年では、画像記録装置の高画質化や高速記録化が進んで、記録媒体上の液滴の未乾燥が発生し易くなり、記録媒体を未乾燥状態で搬送・集積した場合、記録媒体上の液滴が搬送部材や他の記録媒体に付着し傷や裏移り等の画像欠陥が生じ得る。このため、ヒータ等の加熱手段を用いて液滴を速やかに乾燥させる必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、周回軌道に沿って搬送される複数のテーブルに保持された記録媒体に向けて熱風を吹き付け、記録媒体上の液滴を乾燥させる乾燥手段を備えた画像形成装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、搬送手段を第1の搬送ユニットと第2の搬送ユニットに分け、この第2搬送ユニットを第1の搬送ユニットよりも用紙搬送方向上流側に設け、印刷が施される前の記録媒体を搬送する第2の搬送ユニットを加熱手段で加熱する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−279900号公報
【特許文献2】特開2010−94919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、液滴吐出ヘッドよりも下流側で少し離れた位置に乾燥手段が配置されるため、記録媒体に液滴が吐出された後乾燥手段による乾燥開始までに時間を要する。このため、液滴中の水分が記録媒体に滲み込み、乾燥能力が低下する。
【0008】
特許文献2の構成では、第2の搬送ユニットで記録媒体を搬送している間に第2の搬送ユニットを加熱して記録媒体を加熱しても、加熱後第1の搬送ユニットで搬送している間に記録媒体の温度が低下するため、特許文献1と同様に乾燥手段での乾燥能力が低下する。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、記録媒体へ吐出された液滴を速やかに乾燥させる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に係る画像形成装置は、記録媒体に液滴を吐出して描画する液滴吐出ヘッドと、前記記録媒体を保持して前記液滴吐出ヘッドの吐出領域へ搬送するテーブルと、前記記録媒体を保持する前の前記テーブルを加熱する加熱手段と、を有する。
【0011】
この構成によれば、記録媒体を保持する前のテーブルを加熱するので、加熱後に記録媒体をテーブルで保持して液滴吐出ヘッドの吐出領域へ搬送すると、その搬送中にテーブルを介して記録媒体が温められる。そして、記録媒体が温められた状態で、液滴吐出ヘッドにより記録媒体に液滴を吐出して描画すると、記録媒体が冷めずに、記録媒体へ吐出された液滴を速やかに乾燥させることができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る画像形成装置では、第1態様において、前記加熱手段は、前記テーブルを前記テーブルの外側から加熱するヒータである。
【0013】
この構成によれば、ヒータによりテーブルの記録媒体接触面を加熱でき、加熱されたテーブルの熱を確実に記録媒体に伝達できる。
【0014】
本発明の第3態様に係る画像形成装置では、第2態様において、前記テーブルは、前記液滴吐出ヘッドの下方を移動する無端状搬送機構の外面に設けられている。
【0015】
この構成によれば、無端状搬送機構で、テーブルを液滴吐出ヘッドの下方を周回させることで、記録媒体の搬送方向上流側及び下流側(横方向)に装置が拡張しない。
【0016】
本発明の第4態様に係る画像形成装置では、第3態様において、前記ヒータは、前記無端状搬送機構を挟んで前記液滴吐出ヘッドと反対側に設けられている。
【0017】
この構成によれば、ヒータが無端状搬送機構を挟んで配置されているため、熱の影響で液滴吐出ヘッドが吐出不良を起こすことが少なくなる。また、ヒータを追加しても、横方向に装置が大型化することを防止できる。
【0018】
本発明の第5態様に係る画像形成装置では、第1態様において、前記加熱手段は、前記テーブルに備えられ発熱する発熱部材である。
【0019】
この構成によれば、発熱部材の発熱によりテーブルを直接加熱することで、ピンポイントで効率の良い加熱が可能となる。
【0020】
本発明の第6態様に係る画像形成装置では、第1態様〜第5態様の何れか1態様において、前記記録媒体が供給される前の前記テーブル表面の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出結果に基づき、前記加熱手段の加熱温度を制御する温度制御手段と、を有する。
【0021】
この構成によれば、例えば、温度検出手段の検出結果に基づき温度制御手段によって、印刷の種類等によって必要以上に加熱手段がテーブルを加熱することを防止するように、加熱手段の加熱温度を制御することができ、省エネになる。また、必要以上に加熱手段がテーブルを加熱することを防止することで、液滴吐出ヘッドへの熱の伝達を抑制し、液滴吐出ヘッドの乾燥による目詰まりや液滴の低粘度化を回避できる。
【0022】
本発明の第7態様に係る画像形成装置では、第1態様〜第6態様の何れか1態様において、加熱された前記テーブルに前記記録媒体を供給する供給手段と、前記液滴吐出ヘッドよりも前記テーブルの移動方向下流側で且つ前記加熱手段よりも前記テーブルの移動方向上流側に設けられ、描画された前記記録媒体が前記テーブルから排出される排出手段と、を有する。
【0023】
この構成によれば、排出手段は、液滴吐出ヘッドよりもテーブルの移動方向下流側で且つ加熱手段よりもテーブルの移動方向上流側に設けられている。すなわち、加熱手段は、排出手段よりも、テーブルの移動方向下流側に設けられている。ここで、排出手段よりも、テーブルの移動方向下流側は、テーブルが移動する経路にあって記録媒体が移動する経路以外の経路となり、加熱手段は、この記録媒体が移動する経路以外の経路でテーブルを加熱することになる。記録媒体が移動する経路付近には、記録媒体の給紙や排紙のためのローラやセンサ群等を配置しなければならないが、記録媒体が移動する経路以外の経路には、上記のようなローラやセンサ群は一般的に配置しないため、加熱手段用のスペースを別個に確保する必要がなく、装置の特に横方向の大型化を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、記録媒体へ吐出された液滴を速やかに乾燥させる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示す画像形成装置の画像記録部及び当該画像記録部の上方を取り除いて示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の概略を示す側面図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0027】
−画像形成装置の構成−
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置10の概略を示す側面図である。また、図2は、図1に示す画像形成装置10の画像記録部18及び当該画像記録部18の上方を取り除いて示す斜視図である。
【0028】
なお、図1及び図2では、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。また、図2においては、説明の都合上、カバー部材24を破線で示している。
【0029】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置10は、平面状の主面(表面)を有する複数(ここでは10個)のテーブル12を所定の間隔を設けつつ周回軌道に沿って移動させるテーブル移動機構14と、印刷用紙Pをテーブル12に供給する給紙部16と、移動するテーブル12の表面に保持された印刷用紙Pに画像を記録する画像記録部18と、画像が記録された印刷用紙Pを排紙する排紙部20と、後述する本発明の第1実施形態に係るヒータ22と、から主に構成される。また、各テーブル12の間には、それらのテーブル12で形成される間隙範囲の全体を覆うように、カバー部材24がそれぞれ連結されている。
【0030】
このような構成を備えた画像形成装置10では、まず給紙部16から送り出された印刷用紙Pがテーブル12上に供給される。印刷用紙Pが供給される段階のテーブル12は、テーブル移動機構14に含まれる無端状搬送機構26の駆動力によって移動している。そして、印刷用紙Pを搭載したテーブル12の走行経路(周回軌道の往路)中には、画像記録のための特定区間(「画像記録区間」又は「吐出領域」とも称する。)が設定されている。
【0031】
テーブル12の搬送は、この画像記録区間に進入する段階で、無端状搬送機構26とテーブル12との係合が解除されて、無端状搬送機構26による駆動からリニアモータ機構28による駆動へと切り替わる。この画像記録区間においては、リニアモータ機構28を用いてテーブル12を走行させつつ、画像記録部18によりテーブル12上の印刷用紙Pへの画像の記録が実行される。そしてテーブル12がさらに走行して画像記録区間を離脱する段階で、テーブル12の搬送がリニアモータ機構28による駆動から無端状搬送機構26による駆動へと切り替わり、その後にテーブル12上の印刷用紙Pが排紙部20に排出される。
【0032】
すなわち、この装置においては、無端状搬送機構26とテーブル12との連結を解くことができるように構成し、リニアモータ機構28による画像記録区間での精密なテーブル12の搬送が、無端状搬送機構26による他のテーブル12の駆動とは実質的に独立して実行できるように構成されている。このようにして、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置10では、高速な画像の記録を高精度に実行することが可能となっている。
【0033】
−テーブル移動機構14−
テーブル移動機構14は、無端状搬送機構26により複数(ここでは、10個)のテーブル12を周回軌道に沿って高速で移動させる。この周回軌道は、上側の往路と下側の復路との直線部分が、両端の略円弧部分でつながった軌道である。また、画像の記録時には、これらのテーブル12を無端状搬送機構26から切り離して、リニアモータ機構28により精度よく一方向に移動させる。なお、テーブル12は、無端状の形状を有するレール30により案内されて、所定の周回軌道に沿って移動可能となっている。
【0034】
無端状搬送機構26は、回転可能な一対のスプロケット32を備えている。一対のスプロケット32は、無端状搬送機構26におけるローラ部材を構成している。このスプロケット32には、チェーン34が巻回されている。
【0035】
このチェーン34は、無端状搬送機構26の索体を構成し、レール30の形状と対応する形状を有している。また、チェーン34は、二対のスプロケット36,38の作用により、途中でその配置の高さ位置が変更されている。すなわち、チェーン34は、テーブル12が画像記録部18と対向する位置において、その位置が相対的に低くなり、その両端側(+X側および−X側)部分においては、位置が相対的に高くなっている。
【0036】
また、一方(図1では+X側)のスプロケット32の側方には、スプロケット40が付設されており、このスプロケット40と、モータの駆動により回転する駆動スプロケット42と、従動スプロケット44とは、チェーン46により連結されている。つまり、チェーン34は、駆動スプロケット42の駆動によって、一対のスプロケット32に巻回された状態で回動する。
【0037】
−リニアモータ機構28−
リニアモータ機構28は、画像形成装置10の下部に配設されている。このリニアモータ機構28では、テーブル12の移動方向に配設された不図示のリニアモータの固定子を磁極変化させることによって、テーブル12と連結可能な不図示のリニアモータの可動子をテーブル12の移動方向およびその逆方向(X軸方向)へ所望の速度で移動させることができる。
【0038】
チェーン34とテーブル12とは、画像の記録前にチェーン34の位置が低くなり、その連結状態が一旦解除され、画像の記録後にチェーン34の位置が高くなり再び連結状態となる。一方、リニアモータ機構28の可動子とテーブル12とは、画像の記録前には開放状態から連結状態となり、画像の記録後には、連結状態から開放状態となる。
【0039】
なお、テーブル12の走行経路の下方には、吸着ファン48が付設されている。また、図示を省略するが、テーブル12は、中空状の構造を有しており、図2に示すように、テーブル12の表面には、テーブル12の中空部と連通する吸着孔60が形成されている。そして、この吸着孔60を介して吸着ファン48から排気を行うことにより、テーブル12の表面に供給された印刷用紙Pをテーブル12上に吸着保持することが可能となっている。
【0040】
−カバー部材24−
カバー部材24は、複数のテーブル12の各テーブル12間の位置に配置されており、各テーブル12間を連結して覆う。カバー部材24は、例えばステンレス材などの液密材料からなる複数の板状部材により構成される。
【0041】
本第1実施形態に係る画像形成装置10では、各テーブル12間の距離は、テーブル12が水平方向に移動する間では、ほぼ一定である。しかし、テーブル12が方向転換する間(垂直方向に移動する間)では、当該距離が一時的に長くなったり、短くなったりする。カバー部材24は、この変化するテーブル12間の距離に応じて、移動方向の長さ幅を2倍以上に変化(伸縮)させることができるように構成されている。
【0042】
−給紙部16−
給紙部16は、主にストッカー部70と供給部72とで構成される。ストッカー部70は、印刷用紙Pを備蓄する機能を有しており、所定の給紙機構によって備蓄した印刷用紙Pを1枚ずつ供給部72のコンベア74上に搬送する。
【0043】
供給部72は、ストッカー部70から供給された印刷用紙Pを、図1中−X方向へ順次送り搬送されるテーブル12上に1枚ずつ供給する。なお、詳細は省略するが、供給部72は、印刷用紙Pをコンベア74により搬送し、テーブル12の移動方向の前方端に設けられた図示しないテーブル爪まで印刷用紙Pが到達すると、所定のカム機構によりテーブル爪が閉じてテーブル12に対して固定される。
【0044】
なお、リニアモータ機構28の駆動によりテーブル12がさらに−X方向へ移動すると、テーブル12上の印刷用紙Pは、図示しないスクイジローラによりテーブル12に圧着されるとともに、テーブル12の下方に設けられた吸着ファン48の作用により吸着される。この状態で、印刷用紙Pは、画像記録部18の領域に搬送される。
【0045】
−画像記録部18−
画像記録部18は、前処理剤塗布ヘッド76と、4個のインクジェットヘッド78と、スキャナ80とを主に備える。画像記録部18は、テーブル移動機構14により一方向に走行移動するテーブル12の上面に吸着保持させた印刷用紙Pに対し、インクジェット方式で画像を記録する。
【0046】
前処理剤塗布ヘッド76は、インクジェットヘッド78により画像を記録する前に、あらかじめ印刷用紙Pに透明な所定の前処理剤を塗布する。
【0047】
インクジェットヘッド78は、ブラック(K)インクを吐出するインクジェットヘッド78Kと、シアン(C)インクを吐出するインクジェットヘッド78Cと、マゼンダ(M)インクを吐出するインクジェットヘッド78Mと、イエロー(Y)インクを吐出するインクジェットヘッド78Yと、で構成される。これらのインクジェットヘッド78は、横方向に移動するテーブル12の上方にそれぞれ配設される。なお、インクジェットヘッド78は、テーブル12の移動方向と直交する方向(図1中、Y軸方向)に列設された多数のインクジェットノズルを備え、これらのインクジェットノズルから印刷用紙P上にインクを吐出して、画像を記録する。
【0048】
スキャナ80は、ライン状のCCDカメラを備え、記録された画像全体(またはその一部)を撮像する。撮像して得た画像データは、図示しないコンピュータなどからなる制御部に送られ、パッチの濃度測定などが実行される。
【0049】
−排紙部20−
排紙部20は、所定の挟持機構により挟持されて搬送される印刷用紙Pをその外周部に巻回してテーブル12から分離する排紙胴82を備える。さらに、排紙部20は、排紙胴82から受け取った画像記録済みの印刷用紙Pを、ストッカー部に搬送する第1コンベア84および第2コンベア86と、排紙胴82から受け取った印刷用紙Pを、排紙テーブルに搬送する第3コンベア88および第4コンベア90と、搬送路の切替機構92とを備える。
【0050】
図1及び図2に示すように、排紙胴82は、円筒形の一部から構成され、軸94を中心に回転する。テーブル12の前方端が、排紙胴82の下方の位置まで移動すると、テーブル12の移動と同期して排紙胴82が回転し、図示しないリンク機構により、排紙胴82の挟持機構にて印刷用紙Pが挟持される。これにより、排紙胴82に印刷用紙Pが巻回され、テーブル12から印刷用紙Pが分離される。
【0051】
なお、吸着ファン48による排気量は、テーブル12が排紙部20付近に配置されたときには小さくなるように設定されている。このため、印刷用紙Pの先端をテーブル12から剥離するときには、吸着孔60による印刷用紙Pの吸着保持力が、適切に弱められるよう構成されている。
【0052】
第1コンベア84は、一対の軸に巻回された複数のベルトを備える。この第1コンベア84では、排紙胴82搬送された印刷用紙Pがベルト上に載置されて搬送される。第1コンベア84におけるベルトの傾斜部分と対向する位置には、第1コンベア84により搬送される印刷用紙Pに向けて空気を吹き付けるファンが配置されており、印刷用紙Pを第1コンベア84のベルトにより確実に搬送することができる。
【0053】
第2コンベア86は、第1コンベア84により搬送された印刷用紙Pをその上方から吸着保持して搬送するためのものであり、一対の軸に巻回された複数(例えば4本)のベルトを備える。
【0054】
なお、第2コンベア86は、チャンバーにベルトが巻回された構造を有する。当該チャンバーの下面を構成する平板には、多数のスリットが形成されている。また、ベルトにも多数の孔部が形成されており、当該孔部とスリットとが互いに対応する位置にある。したがって、ベルトに挟まれたチャンバー内を減圧することにより、スリットおよび孔部を介して、印刷用紙Pを上方から吸着搬送することができる。
【0055】
印刷用紙Pの先端が第2コンベア86における搬送方向の下流側に到達したタイミングでベルトに挟まれたチャンバー内の減圧を停止することにより、印刷用紙Pの吸着保持が解除される。そして、この領域において、印刷用紙Pは、その搬送方向と直交する方向(Y軸方向)の中央部付近に向けて空気吹き付け管から空気が吹き付けられる。これにより、印刷用紙Pは、その中央部を中心に二つ折り状態になってストッカー部(図示せず)に落下する。
【0056】
第3コンベア88は、一対の軸に巻回された複数のベルトを備える。この第3コンベア88においては、第1コンベア84のベルト上に載置されて搬送され、後述の搬送路の切替機構92により第3コンベア88側に変向された印刷用紙Pが、ベルト上に載置されて搬送される。第3コンベア88におけるベルトと対向する上方の位置には、第3コンベア88により搬送される印刷用紙Pに向けて空気を吹き付けるファンが配設されており、印刷用紙Pを第3コンベア88のベルトによって確実に搬送することができる。
【0057】
第4コンベア90は、一対の軸に巻回された複数のベルトを備える。この第4コンベア90においては、第3コンベア88のベルト上に載置されて搬送された印刷用紙Pが、ベルト上に載置されて搬送される。第4コンベア90におけるベルトと対向する上方の位置には、第4コンベア90により搬送される印刷用紙Pに向けて空気を吹き付けるファンが配設されており、印刷用紙Pを第4コンベア90のベルトによって、確実に搬送することができる。
【0058】
切替機構92は、所定の軸を中心に揺動する案内板96を備え、案内板96が、上側の位置に配置された場合、第1コンベア84のベルトにより搬送される印刷用紙Pは、第2コンベア86に搬送される。一方、案内板96が下側の位置に配置された場合、第1コンベア84のベルトにより搬送される印刷用紙Pは、第3コンベア88に搬送される。
【0059】
以上のような構成において、テーブル12上の印刷用紙Pは、排紙胴82の作用によりテーブル12から分離され、排紙胴82の外周部に巻回されて第1コンベア84に搬送される。そして、この印刷用紙Pは、第1コンベア84の上部に載置されて搬送された後、第2コンベア86でその上面より吸着保持されて搬送される。そして、当該印刷用紙Pは、ストッカー部の上方でその吸着保持が解除されるとともに、その搬送方向と直交する方向の中央部付近に向けて空気吹き付け管から空気を吹き付けられる。これにより、印刷用紙Pは、その中央部を中心に二つ折り状態になってストッカー部に落下し回収される。
【0060】
また、印刷が終了した印刷用紙Pを目視で確認する場合には、第1コンベア84上に配置された切替機構92により、第1コンベア84により搬送されている印刷用紙Pを第3コンベア88方向に案内する。この印刷用紙Pは、第3コンベア88および第4コンベア90の上部に載置されて搬送された後、排紙テーブル98上に排出される。
【0061】
−ヒータ22−
ヒータ22は、排紙部20よりも、テーブル12の移動方向下流側で、無端状搬送機構を含むテーブル移動機構14を挟んでインクジェットヘッド78と反対側(−Z軸方向)に設けられており、印刷用紙Pを保持する前のテーブル12を当該テーブル12の外側から(−Z軸方向からZ軸方向に向かって)加熱するものである。
【0062】
−作用−
以上のような構成を備えた画像形成装置10において、各テーブル12を均等に加熱するために、適宜、テーブル移動機構14によりテーブル12を移動し、テーブルが移動している間ヒータ22もオン状態となっており、テーブル12を常に加熱している。これにより、印刷用紙Pを保持する前のテーブル12が加熱される。
【0063】
そして、印刷ジョブが開始されると、印刷用紙Pは、給紙部16からテーブル移動機構14に給紙された後、当該テーブル移動機構14によりインクジェットヘッド78の画像記録区間(吐出領域)へ横方向(−X軸方向)に搬送される。そして、印刷用紙Pは、画像記録区間(吐出領域)を通過する際に、インクジェットヘッド78によりその上面(記録面)にインクが吐出されて画像が記録される。インクが着滴した記録済の印刷用紙Pは、排紙胴82の作用によりテーブル12から分離され、排紙部20に排出される。
【0064】
以上、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置10によれば、印刷用紙Pを保持する前のテーブル12を加熱するので、加熱後に印刷用紙Pをテーブル12で保持して前記インクジェットヘッド78の吐出領域へ搬送すると、その搬送中にテーブル12を介して印刷用紙Pが温められる。そして、印刷用紙Pが温められた状態で、インクジェットヘッド78により印刷用紙Pにインクを吐出して描画すると、記録媒体が冷めずに、印刷用紙Pへ吐出されたインクを速やかに乾燥させることができる。
【0065】
また、ヒータ22は、テーブル12を当該テーブル12の外側から加熱するので、テーブル12の記録媒体接触面を加熱でき、加熱されたテーブル12の熱を確実に印刷用紙Pに伝達できる。
また、テーブル12は、インクジェットヘッド78の下方を移動する無端状搬送機構26の外面に設けられているので、無端状搬送機構26でテーブル12をインクジェットヘッド78の下方を周回させることで、印刷用紙Pの搬送方向上流側及び下流側(横方向;具体的に−X軸及び+X軸方向)に装置が拡張しない。
また、ヒータ22は、無端状搬送機構26を挟んでインクジェットヘッド78と反対側に設けられているので、熱の影響でインクジェットヘッド78が吐出不良を起こすことが少なくなる。また、ヒータ22を追加しても、横方向に装置10が大型化することを防止できる。
【0066】
また、排紙部20は、インクジェットヘッド78よりもテーブル12の移動方向下流側(−X軸方向)で且つヒータ22よりもテーブル12の移動方向上流側(+Z軸方向)に設けられている。すなわち、ヒータ22は、排紙部20よりも、テーブル12の移動方向下流側(−Z軸方向)に設けられている。ここで、排紙部20よりも、テーブル12の移動方向下流側は、テーブル12が移動する経路にあって印刷用紙Pが移動する経路以外の経路となり、ヒータ22は、この印刷用紙Pが移動する経路以外の経路でテーブル12を加熱することになる。印刷用紙Pが移動する経路付近には、印刷用紙Pの給紙や排紙のためのローラ(例えば排紙胴82)やスキャナ80、センサ群等を配置しなければならないが、印刷用紙Pが移動する経路以外の経路には、上記のようなローラやセンサ群は一般的に配置しないため、ヒータ22用のスペースを別個に確保する必要がなく、装置10の特に横方向の大型化を抑制できる。
【0067】
また、例えば特許文献1等の従来の構成では、印刷用紙P上に吐出されたインクが蒸発することにより、印刷用紙Pの温度が低下する。この温度の低下により乾燥手段による記録媒体の乾燥能力が低下し、排紙にて集積する際に傷や裏移り等の欠陥が生じ得るという問題があった。さらに、同じ画像パターンを連続で記録した場合、印刷用紙P上に温度が高い部分と低い部分の温度勾配が生じ、それによって乾燥能力が変化し、画像ムラとなるという問題があった。さらにまた、搬送手段が長時間停止した場合、外気が入りやすい給紙部、排紙部に近い搬送手段は温度が低下するが、記録媒体に近い中間部の搬送手段は温度が低下しにくく、結果搬送手段の場所によって温度が異なる状態になり、記録媒体毎に乾燥状態が異なることで色味が安定しない状態となるという問題があった。
【0068】
これに対し、本発明の第1実施形態の構成によれば、印刷用紙Pを搬送するテーブル12を介して印刷用紙Pを温めるので、インクが蒸発しても印刷用紙Pの温度低下を抑制できる。また、テーブル12に接触して記録媒体全体を温めることになるので、印刷用紙Pの乾燥状態(温度分布)を均一にできる。また、テーブル移動機構14によりテーブル12を適宜移動しながら、テーブル12を常に加熱しているので、搬送手段(テーブル12)の場所によって温度が異なる状態となることを抑制できる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置について具体的に説明する。
【0070】
図3は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100の概略を示す側面図である。画像形成装置100は、第1実施形態に係る画像形成装置10の構成と同じ構成有し、さらに、温度センサ102と、温度制御部104と、が追加されている。
【0071】
温度センサ102は、ヒータ22と給紙部16の間のテーブル12の移動経路付近に設けられており、印刷用紙Pが供給される前のテーブル表面の温度を常時検出している。
【0072】
温度制御部104は、温度センサ102及びヒータ22に電気的に結合されており、温度センサ102の検出結果に基づき、ヒータ22の加熱温度を制御している。
【0073】
この構成によれば、例えば、温度センサ102の検出結果に基づき温度制御部104によって、印刷の種類等によって必要以上にヒータ22がテーブル12を加熱することを防止するように、ヒータ22の加熱温度を低めに制御することができ、省エネになる。また、必要以上にヒータ22がテーブル12を加熱することを防止することで、インクジェットヘッド78への熱の伝達を抑制し、インクジェットヘッド78の乾燥による目詰まりやインクの低粘度化を回避できる。
逆に、温度センサ102の検出温度が低すぎる場合、温度制御部104がヒータ22の加熱温度を高めに制御することができ、乾燥能力の低下を抑制できる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置について具体的に説明する。
【0075】
図4は、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置200の概略を示す側面図である。画像形成装置200は、ヒータ22を除き、第1実施形態に係る画像形成装置10の構成と同じ構成有している。
【0076】
画像形成装置200では、ヒータ22の代わりに、各テーブル12に発熱部材202が設けられている。具体的には、導電性の発熱部材202はテーブル12の内側に設けられ、図示しない電磁誘導コイルを発熱部材202に対向するように配置し、この電磁誘導コイルへ電流を流す。これにより、発熱部材202が発熱して、テーブル12の裏面から印刷用紙Pの接触面を加熱する。加熱のタイミングは、常時でもよいが、インクジェットヘッド78に熱が伝達することを回避するため、テーブル12のうち、吐出領域に搬送された記録媒体Pを保持したテーブル12は加熱しないようにすることが好ましい。
なお、電磁誘導によりテーブル12を加熱するようにしたが、テーブル12にヒータを配置し、テーブル12とチェーン34又はプロケット32との電気的接触によりヒータに電力を供給するようにしてもよいし、ヒータ自身に内部電力を備えていてもよい。
【0077】
以上、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置200の構成によれば、第1実施形態と同じ効果を有する他、発熱部材202の発熱によりテーブル12を直接加熱することで、ピンポイントで効率の良い加熱が可能となる。
【0078】
(変形例)
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わせて実施可能である。また、以下の変形例同士を、適宜、組み合わせてもよい。
【0079】
例えば、無端状搬送機構として、上記実施形態では、無端状のチェーン34である場合を説明したが、無端状のベルトであってもよい。
【0080】
また、ヒータ22は常にオン状態となっている場合を説明したが、印刷ジョブが開始された直後で印刷用紙Pをテーブルが保持する前までにヒータ22をオフ状態からオン状態にすることもできる。
【0081】
また、上記実施形態では、片面印刷のみ可能な画像形成装置の構成を説明したが、両面印刷が可能な画像形成装置の構成においても、ヒータ22は、記印刷用紙Pを保持する前のテーブル12を加熱することができる。
【0082】
また、排紙部20は、インクジェットヘッド78よりもテーブル12の移動方向下流側で且つヒータ22よりもテーブル12の移動方向上流側に設ける場合を説明したが、インクジェットヘッド78及びヒータ22よりもテーブル12の移動方向下流側で、例えば、給紙部16の真下に設けるようにしてもよい。この場合、排紙部20まで搬送される間に印刷用紙Pが加熱され得るが、ヒータ22が常時オン状態となっているため、記印刷用紙Pを保持する前のテーブル12も加熱することができる。ただし、印刷用紙Pを通過する経路にヒータ22を配置することになるため、画像形成装置の大型化の抑制の面では上記実施形態を採用すること方が好ましい。
【0083】
また、第2実施形態では、温度センサ102をヒータ22と給紙部16の間のテーブル12の移動経路付近に設ける場合を説明したが、テーブル12の移動経路付近であれば、他の箇所に設けてもよい。ただし、温度センサ102をヒータ22と給紙部16の間の経路の方が、加熱直後のテーブル12の温度を検出できるため、温度制御部104の温度制御を正確にするという観点から、好ましい。
【0084】
また、インクジェットヘッド78がCMYKの標準色(4色)の構成である場合を説明したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定されない。
【0085】
また、第1、第2実施形態で加熱手段は、ヒータ22である場合を説明したが、加熱方法、伝熱方法はこの限りではなく、伝熱方法は、伝導伝熱、対流伝熱、放射伝熱いずれでもよく、また、発熱方式は電磁誘導加熱、放射加熱、抵抗加熱等いずれでもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、リニアモータ機構28によって、テーブル12を搬送した状態で、印刷用紙Pに画像記録を行うとしているが、リニアモータ機構28の代わりに、ボールネジを利用した直動機構を設けることによって、テーブル12の搬送を行う構成としてもよい。
【0087】
なお、本願において、「画像記録装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラス
チック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意
味し、また、「画像記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与する
ことだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒
体に着弾させること)をも意味する。また、「液滴」とは、インクと称されるものに限
るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0088】
また、「記録媒体」は、印刷用紙Pに限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものも含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 画像形成装置
12 テーブル
16 給紙部(給紙手段)
20 排紙部(排出手段)
22 ヒータ(加熱手段)
26 無端状搬送機構
28 リニアモータ機構
78 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
100 画像形成装置
102 温度センサ(温度検出手段)
104 温度制御部(温度制御手段)
200 画像形成装置
P 印刷用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を吐出して描画する液滴吐出ヘッドと、
前記記録媒体を保持して前記液滴吐出ヘッドの吐出領域へ搬送するテーブルと、
前記記録媒体を保持する前の前記テーブルを加熱する加熱手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記テーブルを前記テーブルの外側から加熱するヒータである、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記テーブルは、前記液滴吐出ヘッドの下方を移動する無端状搬送機構の外面に設けられている、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記無端状搬送機構を挟んで前記液滴吐出ヘッドと反対側に設けられている、
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記テーブルに備えられ発熱する発熱部材である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録媒体が供給される前の前記テーブル表面の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出結果に基づき、前記加熱手段の加熱温度を制御する温度制御手段と、
を有する請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
加熱された前記テーブルに前記記録媒体を供給する供給手段と、
前記液滴吐出ヘッドよりも前記テーブルの移動方向下流側で且つ前記加熱手段よりも前記テーブルの移動方向上流側に設けられ、描画された前記記録媒体が前記テーブルから排出される排出手段と、
を有する請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196789(P2012−196789A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60873(P2011−60873)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】