説明

画像形成装置

【課題】コンパクトかつ安価な装置構成で、大量印刷時における片面・両面印字何れの場合でも高速に画像を形成することのできる画像形成装置を実現し提供する。
【解決手段】第1のキャリッジ11は、給紙部7の給紙位置(給紙コロ3の配置位置)を基準として、上下方向(鉛直・高さ方向)Zでは第2のキャリッジ21よりも遠くの位置に、鉛直方向Zと直交する水平方向では第2のキャリッジ21よりも近い位置に配置されている。また、給紙部7が第1および第2のキャリッジ10、20よりも下方に配置され、排紙トレイ4が第2のキャリッジ21よりも上方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体(以下、「シート」という)搬送方向と直交する主走査方向に走査しながらシート上にインクを吐出することで画像を形成するキャリッジを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、シート搬送方向と直交する主走査方向に走査しながらシート上にインクを吐出することで画像を形成するキャリッジを備えた画像形成装置において、大量印刷の際の高速化のため、キャリッジを複数搭載し並列的に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、スペース効率およびスループットの向上と、ヘッド、タンクの交換なしに複数の印字モードである両面印字、重ね印字に対応し、構成をユーザが自由に組み換え、性能アップを行う目的で、以下の技術内容が開示されている。すなわち、
・複数の印字部と1つ以上の給紙部を有し、印字信号により、印字部と給紙部を選択して記録を行なう。
・印字部および給紙部が独立ユニット化され、相互に積層可能な構成を有する。
・紙搬送経路を切換える紙ガイドを有する。
・ユニットの装着状態を検出する検知手段を有する。
・複数の印字部により、連続印字、両面印字重ね印字を行なうことが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、画像形成部(印字部)が給紙部を基準として上下方向では異なる位置に、かつ、水平方向では同じ位置に配置してあるため、複数の画像形成部への用紙振り分けの際、搬送経路の分岐点から各画像形成部への搬送距離が大きく異なってしまい、印字スピードを最適に向上させられず、また、両面印刷時の排紙動作の際、片面印刷時と排紙位置が異なるか若しくはスイッチバック動作を要するため印字スピードが低下するという問題点がある。
つまり、上記特許文献1を含め今までの、キャリッジ(画像形成部)を複数搭載し、並列的に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置では、両面印刷時、第2面画像形成前に用紙反転経路でのスイッチバック等を要するため、片面印刷時と比較して処理速度が大きく落ちてしまい、また、複数の画像形成部と用紙反転部を搭載するため、装置サイズが拡大してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題・事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトかつ安価な装置構成で、大量印刷時における片面・両面印字何れの場合でも高速に画像を形成することのできる画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、本発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、シート搬送方向と直交する直交方向に走査しながら画像を形成するキャリッジが上下方向に2つ設けられ、シート給送部に接続され各キャリッジに対応したシート搬送経路を有する画像形成装置において、第1のキャリッジは、前記シート給送部を基準として、上下方向では第2のキャリッジよりも遠くの位置に、水平方向では第2のキャリッジよりも近い位置に配置されており、第1のキャリッジは、前記シート搬送方向の一方向のみに搬送されるシートに対して画像を形成し、第2のキャリッジは、前記シート搬送方向の双方向に搬送されるシートに対しても画像形成可能であり、片面印刷時には、各キャリッジが並列的に画像形成を行い、両面印刷時には、第1のキャリッジでシートの第1面に画像を形成後にシートを反転し、第2のキャリッジで前記片面印刷時とは逆方向に搬送される前記反転されたシートの第2面に対して画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記課題を解決して新規な画像形成装置を実現し提供することができる。すなわち、本発明によれば、上記構成により、コンパクトかつ安価な装置構成で、大量印刷時における片面・両面印字何れの場合でも高速に画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す画像形成装置全体の構成を説明する模式的な正面図である。
【図2】片面印刷時の搬送距離構成について説明する図1の要部を拡大して示す正面図である。
【図3】両面印刷時の搬送距離構成について説明する図2の要部を拡大して示す正面図である。
【図4】キャリッジの構成について説明する要部の簡略的な斜視図である。
【図5】図4のキャリッジを記録ヘッドのノズル面方向から見た要部の簡略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態におけるインクジェット方式の画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」という)全体の構成を説明する模式的な正面図である。
まず、図1を参照して、本実施形態の画像形成装置全体の構成を説明する。同図に示す画像形成装置は、シリアル型の画像形成装置であり、インクジェット方式で画像形成を行う2組の画像形成部である第1の画像形成部10(以下、単に「画像形成部10」ともいう)および第2の画像形成部20(以下、単に「画像形成部20」ともいう)と、シートとしての用紙2を第1の画像形成部10または第2の画像形成部20に給送・給紙する単一のシート給送部としての給紙部7と、画像形成・印字ないし印刷された用紙2を排出・排紙するシート排出部としての排紙部8とを有する。
【0010】
給紙部7は、第1の画像形成部10および第2の画像形成部20よりも装置本体の下方に配置されている。給紙部7は、用紙2を収容するシート収容手段としての給紙カセット1と、給紙カセット1の底部に配置され揺動昇降自在な底板(図示せず)上に積載された最上の用紙2に接触して給送するシート給送手段としての給紙コロ3と、給紙コロ3との協働作用により用紙2を1枚ずつ分離給送する分離パッド(図示せず)等の分離手段とを備えている。
【0011】
第1の画像形成部10は、走査・移動可能な第1のキャリッジ11(以下、単に「キャリッジ11」ともいう)と、キャリッジ11に搬送されてきた用紙2を案内する案内手段としての第1のプラテン12(以下、単に「プラテン12」ともいう)とを備えている。
第2の画像形成部20は、走査・移動可能な第2のキャリッジ21(以下、単に「キャリッジ21」ともいう)と、キャリッジ21に搬送されてきた用紙2を案内する案内手段としての第2のプラテン22(以下、単に「プラテン22」ともいう)とを備えている。
【0012】
図4および図5に示すように、装置本体には、横架した主ガイド部材であるガイドロッド14と、図示を省略した従ガイド部材であるガイドロッド(図示せず、図4のガイドロッド14の真上において第1のキャリッジ11を貫通して配設されている)とが取り付け・固定されている。これらのガイドロッド14等により、第1のキャリッジ11が主走査方向Y(図1では、図中紙面に対して直交する紙面手前側および紙面奥側の方向)に摺動自在に保持されている。主走査方向Yは、シート搬送方向と直交する直交方向としてのシート幅方向に相当する。第1のキャリッジ11は、図示しないタイミングベルトを介して主走査モータ(図示せず)に連結されており、同主走査モータによって主走査方向Yに往復移動・走査される。
なお、第2のキャリッジ21も、後述する記録ヘッドを含め第1のキャリッジ11と同様の構成であり、これを表わすために、図4および図5において、第1のキャリッジ11の符号の横に括弧を付して示すに留める。第1のキャリッジ11、第2のキャリッジ21は、それぞれ独立した別々の駆動手段としての主走査モータによって主走査方向Yに往復移動・走査される。
【0013】
第1のキャリッジ11には、図4および図5に示すように、インク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド41〜44が搭載されている。各記録ヘッド41〜44は、インク吐出孔であるノズル列が副走査方向Xに沿って2列ずつ配置され(41a,41b〜44a,44b)、各1列は同一のインクを鉛直下方向に吐出する。
カラー画像の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)4色のインクをそれぞれ2列のノズルから吐出し、その配列が主走査方向Yの中心に関して左右対称な構成となっている(例:41a=Y、41b=K、42a=C、42b=M、43a=M、43b=C、44a=K、44b=Y)。
【0014】
上記構成とすることで、第1(第2)のキャリッジ11(21)の走査方向および用紙搬送方向に関わらず色重ね順を一定にできるため、高速印刷が可能なキャリッジ双方向走査時の印字においても常に良好な画質を得ることができる。
【0015】
また、第1のキャリッジ11は、記録ヘッド41〜44のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク(図示せず)を搭載している。このヘッドタンクには、図示しないカートリッジ装填部に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジから、供給ポンプユニット(図示せず)によって各色の供給チューブを介して、各色の記録液であるインクが補充供給されるようになっている。
【0016】
図1に示すように、第1のキャリッジ11および第1のプラテン12を備えた第1の画像形成部10と、第2のキャリッジ21および第2のプラテン22を備えた第2の画像形成部20との2組の画像形成部10,20が、上下方向に2つ、すなわち上下2段に配置され、上方に配置された第1のキャリッジ11の印字開始位置は下方に配置された第2のキャリッジ21の印字開始位置よりも給紙方向寄りに位置している。
換言すれば、第1のキャリッジ11は、給紙部7の給紙位置(給紙コロ3の配置位置)を基準として、上下方向(鉛直・高さ方向)Zでは第2のキャリッジ21よりも遠くの位置に、鉛直方向Zと直交する水平方向では第2のキャリッジ21よりも近い位置に配置されている。
【0017】
シート搬送経路である用紙搬送経路としては、給紙部7から給紙される用紙を第1および第2の画像形成部10,20に共通する搬送経路として設けられた共通搬送経路100と、共通搬送経路100からそれぞれ分岐して、第1のキャリッジ11に用紙を搬送するために設けられた第1のシート搬送経路としての第1の搬送経路103および第2のキャリッジ21に用紙を搬送するために設けられた第2のシート搬送経路としての第2の搬送経路104とを有する。なお、各用紙搬送経路は、図示を省略したガイド部材等により搬送路を画定して形成されていることは無論である。
【0018】
共通搬送経路100には、シート搬送手段としての搬送ローラ対5aおよび搬送ローラ対5bが配設されている。第1の搬送経路103には、シート搬送手段としての搬送ローラ対7と、第1のキャリッジ11を挟んでその上流近傍および下流近傍に配置されたシート搬送手段としての第1の搬送ローラ対15および搬送ローラ対16とが配設されている。
第2の搬送経路104には、シート搬送手段としての搬送ローラ対8と、第2のキャリッジ21を挟んでその上流近傍および下流近傍に配置されたシート搬送手段としての第2の搬送ローラ対25および搬送ローラ対19bとが配設されている。第2の搬送ローラ対25および搬送ローラ対19bは、正逆転可能に構成されている。これら以外の上記各搬送ローラ対および排紙ローラ対18、30は一方向のみに回転可能に構成されている。
【0019】
共通搬送経路100の分岐部には、実線で示すA位置と破線で示すB位置との間で揺動可能な分岐爪とも呼ばれる第1の搬送方向切換手段31が配置されている。第1の搬送方向切換手段31は、後述する第2の搬送方向切換手段32等を含め、用紙搬送経路を切り換える手段でもあり、例えば図示しない駆動源・駆動手段としてのソレノイドおよび付勢手段としてのバネ(引張バネや圧縮バネ)とを備えた周知の組み合わせによって駆動される。
【0020】
第1の搬送経路103における搬送ローラ対16の下流側には、シート搬送手段としての搬送ローラ対17が配置され、その最下流側には第1のシート排出手段としての第1の排紙ローラ対18が配置されている。
第2の搬送経路104における搬送ローラ対19bの下流側には、シート搬送手段としての搬送ローラ対29が配置され、その最下流側には第2のシート排出手段としての第2の排紙ローラ対30が配置されている。
【0021】
第1のキャリッジ11における第1の搬送経路103の下流に配置された搬送ローラ対17には、第2のキャリッジ21の第2の搬送経路104の下流に配置された搬送ローラ対19bに接続されるシート反転経路としての反転経路101が接続・配設されている。反転経路101では、第1のキャリッジ11で印刷された片面印刷済みの用紙の表裏を反転するが、片面印刷済みの用紙の先端と後端とを入れ替えるスイッチバック動作は行わないようになっている。反転経路101には、シート搬送手段としての搬送ローラ対19aが配置されている。
第1の搬送経路103と反転経路101との分岐部には、実線で示すa位置と破線で示すb位置との間で揺動可能な第2の搬送方向切換手段32が配置されている。
【0022】
また、第2のキャリッジ21における第2の搬送経路104の上流に配置された第2の搬送ローラ対25には、第2のキャリッジ21で印刷された両面印刷済みの用紙の表裏を反転するシート反転経路としての反転経路102が接続されている。反転経路102では、第2のキャリッジ21で印刷された両面印刷済みの用紙の表裏を反転するが、両面印刷済みの用紙の先端と後端とを入れ替えるスイッチバック動作は行わないようになっている。反転経路102には、上流側から下流側に順に、シート搬送手段としての搬送ローラ対26、27、28が配設されている。
第2の搬送経路104と反転経路102との分岐部には、三角形状の案内部材33が配設されている。案内部材33の形状を工夫することにより、第2の搬送経路104を通る用紙の第2のキャリッジ21への案内と、第2のキャリッジ21で印刷された両面印刷済みの用紙の反転経路102への案内とを行うことができる。それ故に、第1および第2の搬送方向切換手段31、32のように揺動可能に構成することは必ずしも必要ではないが、用紙搬送方向・搬送経路の切換えの確実化を図るために揺動可能に構成しても良いことは無論である。
【0023】
第1のキャリッジ11近傍の第1の搬送経路103上には、搬送されてくる用紙の先端を検知する第1のシート検知手段としての第1の用紙検知センサ13が配設されている。同様に、第2のキャリッジ21近傍の第2の搬送経路104上には、搬送されてくる用紙の先端を検知する第2のシート検知手段としての第2の用紙検知センサ23が配設されている。
また、第2のキャリッジ21近傍には第2の用紙検知センサ23とは副走査方向逆側に第3のシート検知手段としての第3の用紙検知センサ24が配置されており、第2のキャリッジ21および第2のプラテン22を備えた第2の画像形成部20では、用紙搬送方向の両方向に対して用紙の先端を検知できる構成となっている。
【0024】
排紙部8は、上下方向Zに2段に配設された排紙ローラ対18および排紙ローラ対30と、片面または両面印刷済みの用紙を排出・積載する積載手段としての単一の排紙トレイ4とを備えている。
【0025】
次に、多枚数の用紙に片面印字を行う場合の動作を説明する。片面印字の場合、初期状態として第2の搬送方向切換手段32はa側へ切換えられている位置状態にある。装置下部に配置された給紙カセット1に収納された用紙2は、給紙コロ3および図示しない分離パッドの協働作用により1枚ずつに分離されて、共通搬送経路100に給送・給紙される。給紙された用紙は第1の搬送方向切換手段31のA位置およびB位置の切換えにより、それぞれの画像形成部10,20に選択的に搬送される。第1の画像形成部10に用紙が搬送される場合には、第1の搬送方向切換手段31のA位置への切換え揺動動作により、第1の搬送経路103に搬送経路・搬送方向が切り換えられ、第2の画像形成部20に用紙が搬送される場合には、第1の搬送方向切換手段31のB位置への切換え揺動動作により、第2の搬送経路104に搬送経路・搬送方向が切り換えられる。
【0026】
第1の画像形成部10に搬送された用紙は、第1のキャリッジ11近傍に配置された第1の用紙検知センサ13によりその用紙の先端が検知されることで、記録ヘッド41〜44を備えた第1のキャリッジ11により画像形成が開始され、画像形成された用紙は第1の搬送経路103下流側に搬送され、第1の排紙ローラ対18によって排紙トレイ4に排出される。
同様に、第2の画像形成部20に搬送された用紙は、第2のキャリッジ21近傍に配置された第2の用紙検知センサ23によりその用紙の先端が検知されることで、記録ヘッド41〜44を備えた第2のキャリッジ21により画像形成が開始され、画像形成された用紙は搬送ローラ対19bの正転搬送を介して第2の搬送経路104下流側に搬送され、第2の排紙ローラ対30によって排紙トレイ4に排出される。
【0027】
多枚数片面印字の場合、上述したように給紙カセット1から給紙される用紙2を、第1の搬送方向切換手段31により第1のキャリッジ11方向と第2のキャリッジ21方向とに交互に搬送することで、並列・並行的に画像形成を行うことができ、短時間で印字処理を完了させることが可能である。
【0028】
次に、多枚数の用紙に両面印字を行う場合の動作を説明する。両面印字の場合、第1の搬送方向切換手段32はA側に、第2の搬送方向切換手段32はb側に切換えた位置状態とし、片面印字の場合と同様に第1のキャリッジ11による用紙の第1面に画像形成後、反転経路101にて第1面画像形成済みの用紙を反転し、搬送ローラ対19bの逆転搬送を介して搬送されてきた第1面画像形成済みの用紙の先端を第3の用紙検知センサ24で検知し、第2のキャリッジ21および第2のプラテン22を備えた第2の画像形成部20にて第1面画像形成済みの用紙の第2面上への画像形成を行う。その後、第2面画像形成済みの用紙は案内部材33による案内動作を介して、反転経路102にて再度反転され、第2の排紙ローラ対30によって排紙トレイ4に用紙が排紙される。
【0029】
本実施形態によれば、第1に、第1のキャリッジ11は、給紙部7の給紙位置を基準として上下方向(鉛直・高さ方向)Zでは第2のキャリッジ21よりも遠くの位置に、水平方向では第2のキャリッジ21よりも近い位置に配置されており、第1のキャリッジ11は、用紙搬送方向である副走査方向Xの一方向のみに搬送される用紙に対して画像を形成し、第2のキャリッジ21は、副走査方向Xの双方向に搬送される用紙に対しても画像形成可能であり、片面印刷時には、各キャリッジ11,21が並列的に(並行して)画像形成を行い、両面印刷時には、第1のキャリッジ11で用紙の第1面に画像を形成後にその画像形成済みの用紙を反転し、スイッチバック動作を行うことなく、第2のキャリッジ21で片面印刷時とは副走査方向Xの逆方向に搬送される反転された用紙の第2面に対して画像を形成するという構成・動作により、コンパクトかつ安価な装置構成で、大量印刷時における片面・両面印字何れの場合でも高速に画像を形成することができる。
第2に、上記構成・動作により、第2の画像形成部20における先行する用紙の第2面の画像形成中に、第1の画像形成部10において後行する用紙の第1面にも同時に画像形成を行えるため、短時間で印字処理を完了させることができる。
【0030】
図2を参照して、図1に示した実施形態のさらに具体的な構成例について説明する(請求項2、3)。図2は、片面印刷(片面印字)時の搬送距離構成について説明する拡大図であり、省略されている部分は図1と同様である。
図2において、共通搬送経路100の分岐点105から第1の搬送経路103における第1のキャリッジ11の印字開始位置までの搬送距離L1と、分岐点105から第2の搬送経路104における第2のキャリッジ21の印字開始位置までの搬送距離L2とが、本画像形成装置で使用可能な最大用紙長以上に設定されている。
【0031】
本画像形成装置で使用可能な用紙サイズの用紙搬送方向の長さが、例えば、A4横:210mm、A4縦:297mm、A3縦:420mmである場合、本画像形成装置で使用可能な最大用紙長は、A3縦:420mmに設定される。すなわち、L1、L2≧420mmに設定される。この際、L1、L2=420mmに設定したとき、最もコンパクトかつ安価な装置構成の効果を得られる。
【0032】
本例によれば、上記した実施形態の基本的な効果に加えて、上記構成とすることにより、片面多枚数印字の場合、先行する用紙を第1のキャリッジ11方向に搬送した後、後行する用紙を第2のキャリッジ21方向に搬送する際に、先行する用紙の後端部と後行する用紙の先端部がバッティング・干渉することなく、かつ、搬送距離を最小にすることができるため、より効率的に印字を実施することができる。
また、排紙トレイ4は、第2のキャリッジ21より上方に配置されている構成であり、各キャリッジ11、21からの印字終了後の搬送距離も十分に設けられるため、複数のキャリッジで画像形成を実施しても頁順の狂いは発生しない。
【0033】
図3を参照して、図2に示した構成例のさらに具体的な構成例について説明する(請求項4)。図3は、両面印刷(両面印字)も考慮した搬送距離構成について説明する拡大図であり、省略されている部分は図1および図2と同様である。
図3において、第1のキャリッジ11の印字終了位置から反転経路101を経由して第2のキャリッジ21の印字開始位置までの用紙搬送距離L3が、本画像形成装置で使用可能な最大用紙長以上に設定されている。
【0034】
図2で説明したと同様に本画像形成装置で使用可能な用紙サイズの用紙搬送方向の長さが、例えば、A4横:210mm、A4縦:297mm、A3縦:420mmである場合、本画像形成装置で使用可能な最大用紙長は、A3縦:420mmに設定される。すなわち、L1、L2≧420mmに設定される。この際、L1、L2=420mmに設定したとき、最もコンパクトかつ安価な装置構成の効果を得られる。
【0035】
本例によれば、上記した実施形態の基本的な効果および図2で説明した効果に加えて、上記構成とすることにより、両面多枚数印字の場合も、先行する用紙に第1のキャリッジ11にて用紙の第1面に印字後、第2のキャリッジ21にて反転された用紙の第2面への印字開始と同時に、次の用紙に対して第1のキャリッジ11にて用紙の第1面への印字を開始することができるため、効率的に印字を実施することができる。
【0036】
本発明に係る画像形成装置は、上記実施形態におけるインクジェット方式の画像形成装置に限らず、例えば、プリンタ、プロッタ、ワープロ、ファクシミリ、複写機等またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等においてインクジェット記録装置を含む画像形成装置にも適用可能である。
また、シートとしては、用紙2に限らず、使用可能な薄紙から厚紙等まで、インクジェット方式で画像形成可能な全てのシートを含むものである。
さらに、コンパクトかつ安価な装置構成という効果をそれ程望まなくても良いのであれば、主走査方向に移動可能なキャリッジを備えたシリアル型の画像形成装置に限らず、例えば主走査方向に移動不能に構成されたライン型のインクジェット方式の画像形成装置にも適用ないし準用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 給紙カセット(シート収容手段)
2 用紙(シート、被記録媒体ないし記録媒体)
3 給紙コロ(シート給送手段)
4 排紙トレイ(積載手段)
7 給紙部(シート給送部)
8 排紙部(シート排出部)
10 第1の画像形成部
11 第1のキャリッジ
12 第1のプラテン
13 第1の用紙検知センサ(第1のシート検知手段)
15 第1の搬送ローラ対
18 第1の排紙ローラ対
20 第2の画像形成部
21 第2のキャリッジ
22 第2のプラテン
23 第2の用紙検知センサ(第2のシート検知手段)
24 第3の用紙検知センサ(第3のシート検知手段)
25 第2の搬送ローラ対
30 第2の排紙ローラ対
31 第1の搬送方向切換手段
32 第2の搬送方向切換手段
33 案内部材
41,42,43,44 記録ヘッド
100 共通搬送経路
101 反転経路(シート反転経路)
102 反転経路(シート反転経路)
103 第1の搬送経路(第1のシート搬送経路)
104 第2の搬送経路(第2のシート搬送経路)
105 分岐点
L1、L2、L3 用紙搬送距離(シート搬送距離)
X 副走査方向(シート搬送方向の一方向)
Y 主走査方向(直交方向、シート幅方向)
Z 高さ方向・鉛直方向(上下方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2003−305893号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、シート搬送方向と直交する直交方向に走査しながら画像を形成するキャリッジが上下方向に2つ設けられ、シート給送部に接続され各キャリッジに対応したシート搬送経路を有する画像形成装置において、
第1のキャリッジは、前記シート給送部を基準として、上下方向では第2のキャリッジよりも遠くの位置に、水平方向では第2のキャリッジよりも近い位置に配置されており、
第1のキャリッジは、前記シート搬送方向の一方向のみに搬送されるシートに対して画像を形成し、
第2のキャリッジは、前記シート搬送方向の双方向に搬送されるシートに対しても画像形成可能であり、
片面印刷時には、各キャリッジが並列的に画像形成を行い、両面印刷時には、第1のキャリッジでシートの第1面に画像を形成後にシートを反転し、第2のキャリッジで前記片面印刷時とは逆方向に搬送される前記反転されたシートの第2面に対して画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記シート給送部が、第1および第2のキャリッジよりも下方に配置され、排出されるシートの積載手段が、第2のキャリッジよりも上方に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記シート給送部に接続された共通搬送経路と、該共通搬送経路からそれぞれ分岐して、第1のキャリッジにシートを搬送するために設けられた第1のシート搬送経路および第2のキャリッジにシートを搬送するために設けられた第2のシート搬送経路とを有し、
前記共通搬送経路の分岐点から第1のシート搬送経路における第1のキャリッジの印字開始位置までのシート搬送距離と、前記分岐点から第2のシート搬送経路における第2のキャリッジの印字開始位置までのシート搬送距離とが、前記画像形成装置で使用可能な最大シート長以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の画像形成装置において、
第1のキャリッジの前記シート搬送経路の下流には、第2のキャリッジの前記シート搬送経路の下流に接続されるシート反転経路が配設されており、
第1のキャリッジの印字終了位置から前記シート反転経路を経由して第2のキャリッジの印字開始位置までのシート搬送距離が、前記画像形成装置で使用可能な最大シート長以上であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240343(P2012−240343A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114099(P2011−114099)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】