説明

画像形成装置

【課題】感光体ドラムの周速度を安定して制御することにより、画像品質の向上及び生産性の向上を図ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】光導電性を有する感光体ドラムと、感光体ドラムの表面を一様に帯電させる帯電装置と、光照射により感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、感光体ドラムの表面にトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を転写体に転写する転写装置と、感光体ドラムの表面に摺接させた状態で配置される弾性体からなる摺擦部材と、摺擦部材と感光体ドラムとの摺接部位に振動を与える加振部と、を備える画像形成装置において、制御部が、感光体ドラムのトルクを検出し、この検出結果に応じて加振部を振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式の画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)は、帯電した感光体ドラムに対して、画像データに基づくレーザー光を照射(露光)することにより静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。そして、このトナー像を直接又は間接的に用紙に転写させた後、加熱、加圧して定着させることにより用紙に画像を形成する。
【0003】
また、画像形成装置は、感光体ドラムの表面に転写後に残存するトナー(転写残トナー)を除去して回収するクリーニング装置を備えている。クリーニング装置は、弾性体からなるクリーニングブレードを有し、このクリーニングブレードを感光体ドラムの表面に摺接させた状態で配置される。クリーニングブレードによって転写残トナーが掻き取られることにより、感光体ドラムの表面が清掃される。
【0004】
このとき、クリーニングブレードを摺接させた状態で感光体ドラムを回転させるため、感光体ドラムとクリーニングブレードとの摺接部位に摩擦力が発生し、感光体ドラムとクリーニングブレードが摩耗して劣化するという問題がある。そこで、摺接部位における摩擦力を低減するために、感光体ドラムの表面に潤滑剤を塗布するようにした画像形成装置が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−47782号公報
【特許文献2】特開2002−341694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に開示されているように、感光体ドラムの表面に潤滑剤を塗布することにより、感光体ドラムとクリーニングブレードとの摺接部位における摩擦力が低減されるので、摩耗による劣化が抑制される。しかしながら、連続する画像形成の初期段階において、感光体ドラムの周囲環境や画像形成条件によっては、駆動モーターの回転数、すなわち感光体ドラムの周速度が不安定になることが判明した。感光体ドラムの周速度が不安定になると、用紙に対して画像がずれて形成されるため、画像の品質が低下してしまう。
【0007】
感光体ドラムの周速度が不安定になるメカニズムは、以下のように考えられている。すなわち、画像形成装置において画像形成が開始されると、感光体ドラムはクリーニングブレードのエッジ部分で摺擦されながら回転する。このとき、摺接部位における摩擦力により、クリーニングブレードのエッジ部分は、感光体ドラムの回転方向に引きずられる(スティック運動、図1参照)。
そして、連続して画像形成が行われたときに、スティック運動によりクリーニングブレードの引きずられる量が徐々に増大し、これに伴い感光体ドラムに対するクリーニングブレードの摩擦力が徐々に増大する。その結果、感光体ドラムのトルクが上昇する。クリーニングブレードの引きずられる量はある時点で飽和し(クリーニングブレードの材質等により決まる)、それ以降、感光体ドラムのトルクは一定となる(図2参照)。
【0008】
一方、感光体ドラムのトルクが上昇しすぎて摺接部位に生じる摩擦力とクリーニングブレードの復元力の均衡が崩れると、クリーニングブレードのエッジ部分がスリップして、瞬間的に摩擦力が低下し、感光体ドラムのトルクも低下する(スリップ運動、図3参照)。すなわち、感光体ドラムの周速度が瞬間的に変動することとなる。このスティック・スリップ運動が繰り返されることにより、摺接部位は徐々に安定した状態(摺接部位に生じる摩擦力とクリーニングブレードの復元力の均衡が保持される状態)に収束する。しかし、摺接部位が安定した状態となるまでは、スティック・スリップ運動が繰り返されるため、感光体ドラムの周速度が不安定になる(図4参照)。
【0009】
特許文献1、2の技術を適用して、感光体ドラムの表面に潤滑剤を塗布することで、摺接部位を早期に安定した状態とすることはできるが、感光体ドラムの表面に潤滑剤が馴染むまではスティック・スリップ運動が繰り返され、やはり感光体ドラムの周速度が不安定になる。
そこで、従来の画像形成装置では、感光体ドラムのトルクを検出し、トルク異常が発生する前に(トルクが所定値TSとなった時点で)感光体ドラムを一旦停止させて意図的にスリップ運動を引き起こしてトルク変動を管理することで、感光体ドラムの周速度が所望の速度に制御されるようになっている(図5参照)。しかしながら、感光体ドラムを停止させている間は、画像形成が中断されることになるため、生産性が低下するという不具合がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、感光体ドラムの周速度を安定して制御することにより、画像品質の向上及び生産性の向上を図ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、光導電性を有する感光体ドラムと、
前記感光体ドラムの表面を一様に帯電させる帯電装置と、
光照射により前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記感光体ドラムの表面にトナーを付着させることにより前記静電潜像を可視化してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を転写体に転写する転写装置と、
前記感光体ドラムの表面に摺接させた状態で配置される弾性体からなる摺擦部材と、
前記摺擦部材と前記感光体ドラムとの摺接部位に振動を与える加振部と、
前記感光体ドラムのトルクを検出し、この検出結果に応じて前記加振部を振動させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感光体ドラムのトルクに応じて感光体ドラムと摺擦部材との摺接部位に振動が与えられ、トルク異常が発生する前にスリップ状態を引き起こすことができるので、感光体ドラムの周速度が安定して制御される。また、感光体ドラムの周速度を安定して制御するために、感光体ドラムを停止させる必要もない。したがって、本発明によれば、画像品質の向上及び生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】クリーニングブレードのスティック運動を示す図である。
【図2】感光体ドラムのトルク上昇を示す図である。
【図3】クリーニングブレードのスリップ運動を示す図である。
【図4】感光体ドラムでトルク異常が発生するときのトルク変動を示す図である。
【図5】感光体ドラムを一旦停止させてトルクを制御したときの感光体ドラムのトルク変動を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図7】実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
【図8】クリーニング装置の要部構成及び加振部の配置を示す図である。
【図9】感光体ドラムの内部における加振部の配置を示す図である。
【図10】加振制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】加振制御処理を行ったときのモーター電流値の変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図6は本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図で、図7は実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
図6、7に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写体に転写(一次転写)し、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0015】
図6、7に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着部60、及び制御部70を備えている。
【0016】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73等を備えている。CPU71は、ROM72から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM73に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部82に格納されている各種データが参照される。記憶部82は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)や、ハードディスクドライブで構成される。
また、制御部70は、通信部81を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部70は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙に画像を形成させる。通信部81は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0017】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置(スキャナー)12等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0018】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部70から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部70に出力する。
【0019】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザ設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備えている。画像処理部30は、制御部70の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正等の各種補正処理、及び圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0020】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、及び中間転写ユニット42等を備えている。
【0021】
Y成分、M成分、C成分、K成分の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明を簡略化するため、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、Kを添えて示すこととする。図6では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0022】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びクリーニング装置100等を備えている。
【0023】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。
電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダ(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダ(例えばポリカーボネート樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0024】
図2に示すように、画像形成装置1では、制御部70が感光体ドラム413を回転させる駆動モーター413aに供給される駆動電流(モーター電流値)を制御することで、感光体ドラム413が一定の周速度で回転するようになっている。したがって、感光体ドラム413のトルクが上昇すると、モーター電流値が上昇することとなる。つまり、モーター電流値を検出することで、感光体ドラム413のトルクを検出することができる(トルク検出部413b)。
【0025】
画像形成ユニット41において、帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されるので、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。そして、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えば、小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容しており、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、クリーニング装置100によって除去される。クリーニング装置100の詳細な説明については後述する。
【0026】
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、二次転写ローラー423、駆動ローラー424、従動ローラー425、及びクリーニング装置426等を備えている。
【0027】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、駆動ローラー424及び従動ローラー425に張架される。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次重ねて一次転写される。そして、中間転写ベルト421が二次転写ローラー423によって用紙Sに圧接されると、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像が用紙Sに二次転写される。
二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、クリーニング装置426によって除去される。
【0028】
定着部60は、用紙Sを狭持して搬送するためのニップ部を形成する加圧部、トナー像が転写された用紙Sに接触して定着温度で加熱する加熱部等を備えている。定着部60には、公知の技術を適用することができる。定着部60は、搬送されてきた用紙Sをニップ部で加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。
【0029】
搬送部50は、給紙装置51、搬送機構52、及び排紙装置53等を備えている。給紙装置51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、用紙の坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)Sが予め設定された種類ごとに収容される。
【0030】
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、レジストローラー52a等の複数の搬送ローラーを備えた搬送機構52により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー53aを備えた排紙装置53により機外に排紙される。
【0031】
このように、画像形成装置1は、光導電性を有する感光体ドラム413と、感光体ドラム413の表面を一様に帯電させる帯電装置414と、光照射により感光体ドラム413の表面に静電潜像を形成する露光装置411と、感光体ドラム413の表面にトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する現像装置412と、トナー像を中間転写ベルト421や用紙S等の転写体に転写する中間転写ユニット42(転写装置)とを備えている。
【0032】
図8は、クリーニング装置の要部構成を示す図である。図8に示すように、クリーニング装置100は、クリーニングブレード101、トナー回収スクリュー102、潤滑剤塗布ブラシ103、固形潤滑剤104、付勢部材105、及び均しブレード106等を備えている。これらの部材101〜106は、クリーニング装置100の枠体となる収容ケース107に適当な方法により取り付けられている。
【0033】
クリーニングブレード101は、ウレタンゴム等を平板状に成形した弾性部材であり、感光体ドラム413の軸方向(主走査方向)の幅とほぼ同等の幅を有する。クリーニングブレード101は、感光体ドラム413に対してカウンター方向(感光体ドラム413が回転するときエッジ部分が突っ張ることとなる方向)から所定の当接角(例えば22°)及び侵入量で摺接するように配置される。
画像形成時には、感光体ドラム413が回転することに伴い、クリーニングブレード101によって感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーが掻き取られる。
【0034】
トナー回収スクリュー102は、クリーニングブレード101で掻き取られた転写残トナーを回収して、廃トナー回収容器(図示略)に搬送する。
【0035】
潤滑剤塗布ブラシ103は、例えばポリエステル等の繊維が植設された基布を芯金に巻き付けたローラー状のブラシであり、感光体ドラム413の軸方向の幅とほぼ同等の幅を有する。潤滑剤塗布ブラシ103は、感光体ドラム413の表面に接触するように配置され、感光体ドラム413の回転とは反対向きに回転する。
【0036】
固形潤滑剤104は、潤滑剤を固形化したもの(例えば鉛筆硬度:F〜HB相当)で、付勢部材105に接続されたホルダー(図示略)に固定される。潤滑剤としては、例えばステアリン酸亜鉛(ZnSt)が適用される。
付勢部材105は、例えば圧縮スプリングで構成され、固形潤滑剤104を潤滑剤塗布ブラシ103に向けて所定の押圧荷重(例えば1.2〜2.6N)で押圧する。これにより、固形潤滑剤104は、潤滑剤塗布ブラシ103と接触した状態で保持される。
【0037】
均しブレード106は、クリーニングブレード101と同様の構成を有する。均しブレード106は、感光体ドラム413に対してトレーリング方向(感光体ドラム413が回転するときにエッジ部分が引きずられることとなる方向)から所定の当接角(例えば50°)及び侵入量で摺接するように配置される。
【0038】
画像形成時には、潤滑剤塗布ブラシ103が回転することにより固形潤滑剤104の表面から潤滑剤が削り取られ、この削り取られた潤滑剤が感光体ドラム413との接触部位において感光体ドラム413の表面に塗布される。そして、均しブレード106により均されて、均一な厚さの潤滑膜が形成される。
【0039】
さらに、画像形成装置1は、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1に振動を与える加振部110を備えている。加振部110は、例えば電圧を印加することで伸縮する圧電素子を2枚の電極で狭持した圧電型振動子(例えば水晶振動子)で構成される。加振部110は、交流電圧が印加されたときに、所定の周波数で発振する。加振部110として圧電型振動子を適用することで、大きな設置スペースは必要なく、所望の部位に容易に振動を与えることができる。
【0040】
図8、9に示すように、加振部110は、感光体ドラム413の内側(アルミ素管の内部)に、感光体ドラム413の軸方向に沿って複数個配置される。これにより、感光体ドラム413の内側から感光体ドラム413を振動させたときに、摺接部位P1に効率よく一様に振動を与えることができる。
【0041】
加振部110を振動させるための加振制御処理は、制御部70によって行われる。具体的には、制御部70は、感光体ドラム413においてトルク異常が発生しないように、感光体ドラム413のトルクに応じて加振部110を振動させる。これにより、感光体ドラム413においてトルク異常が発生する前に、意図的にクリーニングブレード101のスリップ運動を引き起こすことができる。したがって、感光体ドラム413の周速度が不安定となり、画像品質が低下するのを防止できる。
【0042】
ここで、感光体ドラム413においてトルク異常が発生するか否かは、感光体ドラム413のトルク上昇率(単位時間当たりのトルク上昇量)に基づいて精度良く判定することができる。かかる手法は、本発明者等の鋭意検討により発案されたものである。
また、感光体ドラム413のトルクは、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター413aのモーター電流値に比例するので、感光体ドラム413のトルク上昇率の代わりに、モーター電流値の上昇率を利用することもできる。この場合、感光体ドラム413のトルクを直接検出しないので、トルクを検出するための構成要素を新たに設ける必要はない。
【0043】
以下の画像形成条件で画像を形成する際の、モーター電流値の上昇率(感光体ドラム413のトルク上昇率)に対するトルク異常の発生有無を表1に示す。トルク異常の発生有無は、モーター電流値の実測値により判断している。
<画像形成条件>
感光体ドラム413の周速度(ラインスピード):400mm/sec
プリントスピード:80ppm(Page per Minute)
用紙サイズ:A4横
連続して画像形成する際の画像形成間隔:84mm
形成される画像のカバレッジ:12%
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、上述した画像形成条件で画像を形成する場合には、電流上昇率が0.4A/min以上であるときに、感光体ドラム413においてトルク異常が発生する。したがって、電流上昇率が0.4A/min以上であった場合に、加振部110を振動させることで、ドラムを一旦停止させることなく、トルク異常が発生するのを回避することができる。
【0046】
これにより、感光体ドラム413のトルクを直接検出してトルク異常が発生するか否かを判定するよりも、早期にトルク異常が発生するか否かを判定することができる。したがって、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1が安定した状態(摺接部位P1に生じる摩擦力とクリーニングブレードの復元力の均衡が保持される状態)となるために必要なスティック・スリップ運動が短時間で繰り返されることとなり、感光体ドラム413の周速度が不安定になるかもしれないという危惧が早期に払拭される。そして、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1の状態が安定した後は、感光体ドラム413のトルクを監視する必要がなくなるので、制御部70の処理負担も軽減される。
【0047】
また、制御部70は、加振部110による発振周波数を、摺接部位P1に振動を与える前の感光体ドラム413のトルク上昇率(電流上昇率)に応じて設定する。加振部110による発振周波数、及び摺接部位P1に振動を与える前の感光体ドラム413のトルク上昇率によって、振動を与えた後の感光体ドラム413のトルク上昇率を低下させる効果が異なるためである。
例えば、予め実験等により、トルク上昇率と発振周波数の関係を取得し、トルク上昇率に対する発振周波数のテーブルを記憶部82に記憶しておけばよい。制御部70は、このテーブルを参照することで、トルク上昇率に応じた発振周波数を容易に設定できる。
【0048】
以下の画像形成条件で画像を形成する際の、加振部110の発振周波数に対する感光体ドラム413の電流上昇率の変化を表2に示す。表2には、摺接部位P1に振動を与える前の感光体ドラム413のトルク上昇率が約0.4A/minであった場合について示している。また、摺接部位P1に振動を与える時間は、非画像形成時間に相当する210msecである。
<画像形成条件>
感光体ドラム413の周速度(ラインスピード):400mm/sec
プリントスピード:80ppm(Page per Minute)
用紙サイズ:A4横
連続して画像形成する際の画像形成間隔:84mm
形成される画像のカバレッジ:12%
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示すように、摺接部位P1に有効な周波数で振動を与えることで、明らかに電流上昇率は低減される。すなわち、摺接部位P1に有効な周波数で振動を与えることで、トルク異常が発生しなくなる程度に、電流上昇率を低下させることができる。
特に、摺接部位P1に振動を与える前の電流上昇率が0.4A/min程度である場合には、加振部110による発振周波数を2kHz以上とすることで、振動後の電流上昇率を10%以上低減することができる。また、電流上昇率の低減効果は、加振部110の発振周波数が10kHz以上の領域で飽和しており、上昇率の低減効果は望めない。これより、摺接部位P1に振動を与える前の電流上昇率が0.4A/min程度である場合には、加振部110の発振周波数を2〜10kHzに設定するのが望ましい。
【0051】
図10は、加振制御処理の一例を示すフローチャートである。図10に示す加振制御処理は、画像形成装置1で画像形成が開始されることに伴い、CPU71がROM72に格納されている所定のプログラムを実行することにより実現される。この加振制御処理により、加振部110が制御される。
【0052】
ステップS101において、制御部70は、画像形成が開始されてから、又は前回のモーター電流値の検出時から所定時間が経過したか判定する。そして、制御部70は、所定時間が経過したと判定した場合にはステップS102の処理に移行し、所定時間が経過していないと判定した場合には所定時間が経過するまで待機する。
【0053】
ステップS102において、制御部70は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター413aのモーター電流値を検出する。
【0054】
ステップS103において、制御部70は、電流上昇率(単位時間当たりの電流上昇、A/min)を算出する。電流上昇率は、前回のモーター電流値(初期値は0)と今回のモーター電流値を比較し、その差分から容易に算出できる。
【0055】
ステップS104において、制御部70は、ステップS103で算出された電流上昇率が所定値以上であるか否かを判定する。すなわち、制御部70は、電流上昇率に基づいて、感光体ドラム413においてトルク異常が発生するか否かを判定する。トルク異常が発生するか否かを判定するための所定値は、予め実験的に求められ、記憶部82に格納されているものとする。
そして、制御部70は、電流上昇率が所定値以上である(トルク異常が発生する)と判定した場合にはステップS105の処理に移行し、電流上昇率が所定値未満である(トルク異常は発生しない)と判定した場合にはステップS107の処理に移行する。
【0056】
ステップS105において、制御部70は、摺接部位P1を通過する感光体ドラム413の領域が非画像形成領域であるか否かを判定する。そして、制御部70は、非画像形成領域であると判定した場合にはステップS106の処理に移行し、非画像形成領域でないと判定した場合には非画像形成領域となるまで待機する。摺接部位P1に振動を与えてスリップ運動を生じさせると、クリーニング性が一瞬低下する。そのため、感光体ドラム413の非画像形成領域、すなわち転写残トナーのない領域が摺接部位P1を通過するときに、加振部110を振動させる。なお、クリーニング部位における振動が一次転写工程に影響することが懸念されるが、軽微であるため問題はない。
【0057】
ステップS106において、制御部70は、加振部110に電圧を印加して所定の発振周波数で振動させる。このときの加振時間は、感光体ドラム413の非画像形成領域が通過する期間内とする。例えば、感光体ドラム413の周速(ラインスピード)が400mm/secで、画像形成領域の間隔が84mmの場合、加振時間は210msec以内(例えば200msec)に設定される。また、加振部110の発振周波数は、摺接部位P1に振動を与える前の電流上昇率(感光体ドラム413のトルク上昇率)に応じて設定される。
【0058】
ステップS107において、制御部70は、一連の画像形成が終了したか否かを判定する。そして、制御部70は、一連の画像形成が終了したと判定した場合には処理を終了し、終了していないと判定した場合にはステップS101に移行する。
【0059】
なお、ステップS104において電流上昇率が所定値未満であると判定した場合には、感光体ドラム413のトルク異常が発生する可能性は極めて低く、その後に加振部110の加振制御を行う必要はないので、その時点で処理を終了してもよい。
ただし、モーター電流値が収束した後も、画像形成処理が長時間行われる間にモーター電流値が突発的に上昇することも考えられる。そのため、本実施の形態では、電流上昇率が所定値未満となった後もモーター電流値の変動を監視するようにしている。この場合、検出されたモーター電流値が、トルク異常が発生することとなるモーター電流値近辺まで上昇したときに、加振部110を振動させることで、トルク異常が発生するのを回避できる。
【0060】
図11は、加振制御処理を行ったときのモーター電流値の変動を示す図である。図11では、1分間隔でモーター電流値を検出して電流上昇率ΔI/Δtを算出し、この値を用いてトルク異常が発生するか否かを判定している。
図11に示すように、電流上昇率が所定値以上である場合(図11では画像形成開始直後の2分間)は、加振部110を振動させることにより、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1に振動が与えられる。これにより、強制的にスリップ運動が引き起こされるため、瞬間的にモーター電流値は低下する。その後、再びモーター電流値(感光体ドラム413のトルク)は上昇するが、スティック・スリップ運動が繰り返されるに伴い電流上昇率は小さくなり、摺接部位P1は徐々に安定した状態に収束する(電流上昇率がほぼ0に収束する)。
【0061】
なお、図11では、摺接部位P1に対して加振部110による振動を2回与えた後に、モーター電流値は安定しているが、振動を与える回数についてはこれに限られない。すなわち、振動後の電流上昇率が、トルク異常が発生するか否かを判定するための所定値より小さくなるまで、振動が与えられ、スティック・スリップ運動が繰り返される。
これに対して、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1に振動を与えない場合は、モーター電流値は上昇し続け、トルク異常が発生する。
【0062】
このように、画像形成部1においては、制御部70が、感光体ドラム413のトルクを検出し、より具体的には感光体ドラム413のトルク上昇率(モーター電流値の上昇率)を検出し、この検出結果に応じて加振部110を振動させる。
これにより、感光体ドラム413のトルクに応じて感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1に一時的に振動が与えられ、トルク異常が発生する前にスリップ状態を引き起こすことができるので、感光体ドラム413の周速度が安定して制御される。したがって、画像品質の向上を図ることができる。
また、感光体ドラム413の周速度を安定して制御するために、従来のように感光体ドラム413を停止させる必要もないので、生産性が低下することもない。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0064】
例えば、実施の形態では加振部110に圧電型振動子を適用したが、その他の振動手段を適用してもよい。
【0065】
また、加振部110をクリーニングブレード101に当接させて配置し、クリーニングブレード101を振動させることにより摺接部位P1に振動を与えるようにしてもよい。ただし、クリーニングブレード101は弾性部材であるために振動が効率よく摺接部位P1に伝達されない虞があるので、実施の形態のように感光体ドラム413の内側に加振部110を配置するのが望ましい。
【0066】
また、実施形態では、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との摺接部位P1を振動させるようにしているが、感光体ドラム413と均しブレード106との摺接部位P2を感光体ドラム413のトルク(トルク上昇率、駆動モーター413aの電流上昇率)に応じて振動させるようにしてもよい。特に、均しブレード106がカウンター方向から感光体ドラム413に当接される場合に有効である。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
41 画像形成ユニット
42 中間転写ユニット
50 搬送部
51 給紙装置
52 搬送機構
53 排紙装置
60 定着部
70 制御部
81 通信部
82 記憶部
100 クリーニング装置
110 加振部(圧電型振動子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導電性を有する感光体ドラムと、
前記感光体ドラムの表面を一様に帯電させる帯電装置と、
光照射により前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記感光体ドラムの表面にトナーを付着させることにより前記静電潜像を可視化してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を転写体に転写する転写装置と、
前記感光体ドラムの表面に摺接させた状態で配置される弾性体からなる摺擦部材と、
前記摺擦部材と前記感光体ドラムとの摺接部位に振動を与える加振部と、
前記感光体ドラムのトルクを検出し、この検出結果に応じて前記加振部を振動させる制御部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加振部が、電圧を印加することにより発振する圧電型振動子であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加振部が、前記感光体ドラムの内部に配置され、前記摺接部位を前記感光体ドラムの内側から振動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加振部が、前記感光体ドラムの軸方向に複数配置されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
連続して画像を形成する場合、前記感光体ドラムの非画像形成領域が前記摺接部位を通過するときに、前記制御部が前記加振部を振動させることを特徴とすることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記感光体ドラムのトルクの上昇率に基づいて、前記加振部を振動させるか否かを判定することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記感光体ドラムを回転させる駆動モーターのモーター電流値の上昇率を前記トルクの上昇率として、前記加振部を振動させるか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記加振部による発振周波数を、前記摺接部位に振動を与える前の前記トルクの上昇率に応じて設定することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記摺擦部材が、前記感光体ドラムの表面に残存する転写残トナーを除去するクリーニングブレードであることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記摺擦部材が、前記感光体ドラムの表面に塗布された潤滑剤を均一にする均しブレードであることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−255912(P2012−255912A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128962(P2011−128962)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】