説明

画像形成装置

【課題】転写材が像担持体と転写部材との接触領域を通過する際に転写材の搬送方向における後端部の縁に近い部分に発生する画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写材Pの、接触領域N2における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とした場合、接触領域N2を転写材Pの第1の領域が通過する際の、転写部材2の移動速度をVm、像担持体1の移動速度をWmとし、接触領域N2を転写材Pの第2の領域が通過する際の、転写部材2の移動速度をVt、像担持体1の移動速度をWtとすると、次の関係、Vt/Wt<Vm/Wmが成り立つ構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、記録用紙などの転写材の全周にわたり縁から内側に約5mm程度の余白をとって、転写材に画像を形成していた。しかしながら、昨今、画像形成装置に対するニーズが多様化する中、この余白を減少させるか又は無くすことのできる装置が望まれている。
【0003】
特許文献1、2には、転写材の全域に、所謂、縁無し画像を形成することのできる電子写真方式の画像形成装置が提案されている。
【0004】
例えば、中間転写体方式の画像形成装置の場合、中間転写体上に形成されたトナー像は、中間転写体と2次転写部材とで形成される転写ニップ(転写部、接触領域)において転写材へと転写される。そして、中間転写方式の画像形成装置において縁無し画像を形成する際には、中間転写体上のトナー像として、転写材の縁からはみ出す大きさのものを形成し、それを転写材上へ転写する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−005559号公報
【特許文献2】特開2004−045457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子写真方式の画像形成装置では、転写材の搬送方向における後端部(以下、単に「後端部」ともいう。)の縁に近い部分のトナー像が、転写ニップ内でダメージを受け、にじみ状の画像不良となることがある。この画像不良は、余白を有する画像を形成する際にも転写材の縁に近い部分に発生することがある。しかし、特に、縁無し画像を形成する場合にはトナー像が転写材の縁にまで及んで形成されるので、より顕著に発生し易い。この画像不良は、次のような現象によるものと考えられる。
【0007】
即ち、転写材の後端部は、転写ニップに進入する際に、転写ニップの近傍でガイド部材などによる支持を受けない自由端となる。従って、転写ニップの近傍で転写材の後端部の姿勢が不安定化し、当該後端部が転写ニップに進入する際に転写材に微小なシワが生じてしまうことがある。その結果、転写材の表面が転写ニップ内で中間転写体の表面と擦れ合い、トナー像が乱されることで、にじみ状の画像不良が発生する。この画像不良は、転写材上のトナー像の画質を低下させる原因となり得る。そして、この画像不良は、余白を有する画像を形成する場合は、当該画像不良の発生する可能性のある部分にトナー像が存在しないため、問題が顕在化し難い。しかし、縁無し画像を形成する場合は、当該画像不良の発生する可能性のある部分までトナー像が形成されるので、問題が顕著になり易い。
【0008】
従って、本発明の目的は、転写材が像担持体と転写部材との接触領域を通過する際に転写材の搬送方向における後端部の縁に近い部分に発生する画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する移動可能な像担持体と、前記像担持体に接触して移動可能な転写部材と、を有し、前記像担持体と前記転写部材とが接触する接触領域に転写材を通過させることにより前記像担持体から前記転写材にトナー像を転写する画像形成装置において、前記転写材の、前記接触領域における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とした場合、前記接触領域を前記転写材の前記第1の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVm、前記像担持体の移動速度をWmとし、前記接触領域を前記転写材の前記第2の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVt、前記像担持体の移動速度をWtとすると、次の関係、Vt/Wt<Vm/Wmが成り立つことを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
本発明の他の態様によれば、トナー像を担持する移動可能な像担持体と、前記像担持体に接触して移動可能な転写部材と、を有し、前記像担持体と前記転写部材とが接触する接触領域に転写材を通過させることにより前記像担持体から前記転写材にトナー像を転写する画像形成装置であって、前記転写材の第1面にトナー像を転写する第1の工程と、該第1の工程により前記第1面にトナー像が転写された前記転写材の第1面とは反対側の第2面にトナー像を転写する第2の工程とを行って、前記転写材の両面に画像を形成することが可能な画像形成装置において、前記転写材の、前記接触領域における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とした場合、前記第1の工程における、前記接触領域を前記転写材の前記第1の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVm1、前記像担持体の移動速度をWm1とし、前記接触領域を前記転写材の前記第2の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVt1、前記像担持体の移動速度をWt1とし、前記第2の工程における、前記接触領域を前記転写材の前記第1の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVm2、前記像担持体の移動速度をWm2とし、前記接触領域を前記転写材の前記第2の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVt2、前記像担持体の移動速度をWt2とすると、次の関係、Vt1/Wt1≦Vm1/Wm1、Vt2/Wt2<Vm2/Wm2、Vt2/Wt2<Vt1/Wt1が成り立つことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、転写材が像担持体と転写部材との接触領域を通過する際に転写材の搬送方向における後端部の縁に近い部分に発生する画像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例における2次転写ローラの概略断面図である。
【図3】本発明の一実施例における2次転写ニップの近傍をより詳しく示す断面図である。
【図4】2次転写ニップの近傍における転写材の後端部の挙動を説明するための模式図である。
【図5】2次転写ニップの近傍における転写材の後端部の波打ちの発生状態を説明するための模式図である。
【図6】にじみ状の画像不良を説明するための模式図である。
【図7】転写材の後端部に作用する摩擦力の概念を説明するための模式図である。
【図8】本発明の一実施例における2次転写ローラの速度変更タイミングを説明するためのタイミングチャート図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図10】2次転写ニップの近傍におけるカールを有する転写材の後端部の挙動を説明するための模式図である。
【図11】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図12】縁有り画像形成モードと縁無し画像形成モードを説明するための模式図である。
【図13】本発明を適用し得る他の画像形成装置の要部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0014】
実施例1
1.画像形成装置の全体構成及び動作
先ず、本実施例の画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置の概略断面を示す。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる中間転写方式を採用したタンデム型のレーザービームプリンターである。
【0015】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するためのものである。第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、中間転写体のトナー像担持面の移動方向に沿って最上流から最下流までこの順番で配置されている。
【0016】
尚、本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は共通する部分が多い。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
【0017】
画像形成部Sは、トナー像を担持する移動可能な像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム11を有する。感光ドラム11は、直径が30mmであり、アルミニウム製のシリンダー上に感光材料を塗布した層を有する。詳しくは後述するように、感光ドラム11は、矢印R1方向に、第1駆動系Iにより、所定のプロセススピード(周速度)(本実施例では117mm/秒)で回転駆動される。
【0018】
感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の接触帯電部材である帯電ローラ12である。次に、露光手段としての露光装置(レーザービームスキャナ)13である。次に、現像手段としての現像装置14である。次に、1次転写手段としての1次転写部材である1次転写ローラ15である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ16である。
【0019】
又、各感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに対向するようにトナー像を担持する移動可能な像担持体としての無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト1が配置されている。中間転写ベルト1は、カーボン分散により電気抵抗が調整されたポリイミド樹脂製の単層シームレスの無端ベルトであり、厚さが75μm、周長が1000mmである。ここで、JIS−K6911に準拠し、電極とベルトの表面との良好な接触性を得るために、導電性ゴムを電極として使用した上で、超高抵抗計(アドバンテスト社製R8340)を用いて、中間転写ベルト1の体積抵抗率ρvを測定した。この方法により測定すると、100V印加時にρv=5×108Ωcmであった。
【0020】
中間転写ベルト1は、駆動ローラ1a、従動ローラ1b、及び2次転写前張架ローラ1cの3本のローラに張架されている。駆動ローラ1a、従動ローラ1b、及び2次転写前張架ローラ1cは、電気的に接地されている。駆動ローラ1aは、直径24mmのアルミニウム製の芯金と厚さ3mmのゴム層とを有する直径30mmのローラである。ゴム層のゴムとしては、エピクロルヒドリンゴムを用いた。又、このゴム層の電気抵抗を調整することで、ローラ抵抗値を106Ωとした。ここで、駆動ローラ1aの電気抵抗値は、測定対象のローラを直径30mmのアルミニウム製のシリンダーに当接させて、従動回転させながら、超高抵抗計(アドバンテスト社製R8340)を用いて測定した。測定条件は、印加電圧=100V、電圧印加時間=30秒、当接力=9.8N、回転周速=117mm/秒とした。従動ローラ1bは、アルミニウム製のローラであり、その直径は駆動ローラ1aと同じ30mmとした。2次転写前張架ローラ1cも、従動ローラ1bと同様に、アルミニウム製のローラであり、直径は14mmとした。
【0021】
又、中間転写ベルト1の裏面(内周面)側には、上記各1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kが配置されている。各1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kは、それぞれ中間転写ベルト1を介して各感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに押圧される。これにより、中間転写ベルト1と各感光ドラム11Y、11M、11C、11Kとが接触する1次転写ニップ(1次転写部、接触領域)N1Y、N1M、N1C、N1Kが形成される。又、中間転写ベルト1の表面(外周面)側には、駆動ローラ1aに対向する位置に、2次転写手段としてのローラ状の2次転写部材である2次転写ローラ2が配置されている。2次転写ローラ2は、中間転写ベルト1を介して駆動ローラ1aに押圧される。これにより、中間転写ベルト1と2次転写ローラ2とが接触する2次転写ニップ(2次転写部、接触領域)N2が形成される。詳しくは後述するように、中間転写ベルト1は、駆動ローラ1aが矢印R2方向に第1駆動系Iにより回転駆動されることで、矢印R3方向に所定のプロセススピード(周速度)(本実施例では117mm/秒)で回転駆動される。即ち、本実施例では、中間転写ベルト1と各感光ドラム11とは、1次転写部N1において同じ方向に同じプロセススピードで移動するように、同じ第1駆動系Iにより回転駆動される。
【0022】
図2は、2次転写ローラ2の概略断面を示す。2次転写ローラ2は、直径12mmの芯金2aの上に2層の層を有するローラである。2次転写ローラ2は、芯金2aの上に、直径が20mmになるように、弾性体として厚さ約4mmの発泡ヒドリンゴム(被覆層2b)が被覆されている。更に、その上に、カーボン分散により電気抵抗が調整された、厚さ50μmのポリイミド層(チューブ層2c)が設けられている。2次転写ローラ2の硬度は、500g荷重状態でのAsker−C硬度で35°であった。2次転写ローラ2は、Asker−C硬度が45°以下であることが好ましい。2次転写ローラ2の電気抵抗値は107Ωであった。2次転写ローラ2の電気抵抗値は、測定対象のローラを直径30mmのアルミニウム製のシリンダーに当接させて、従動回転させながら、超高抵抗計(アドバンテスト社製R8340)を用いて測定した。測定条件は、印加電圧=2kV、印加時間=30秒、当接圧=9.8N、回転周速=190mm/秒とした。詳しくは後述するように、2次転写ローラ2は、矢印R4方向に、第2駆動系IIにより回転駆動される。
【0023】
次に、フルカラー画像の形成時の画像形成動作について説明する。各感光ドラム11は、各帯電ローラ12により一様に帯電させられる。帯電した各感光ドラム11は、各スキャナー13からの、露光情報信号により変調されたレーザー光で露光される。これにより、各感光ドラム11上に各画像形成部Sに対応した色成分の画像情報信号に対応した静電潜像(静電像)が形成される。
【0024】
ここで、画像形成装置100に通信可能に接続されたホストコンピュータ(図示せず)から送られた画像情報信号は、画像形成装置100に設けられたコントローラ(図示せず)により、所望のサイズの画像が得られるように処理され、露光情報信号に変換される。レーザー光の強度及び照射スポット径は画像形成装置100の解像度及び所望の画像濃度によって適正に設定されている。各感光ドラム11上の静電潜像は、レーザー光が照射された部分は明部電位VL(約−150V)に変化し、レーザー光が照射されなかった部分は各帯電ローラ12によって帯電させられたときの暗部電位VD(約−650V)に保持されることで形成される。
【0025】
各感光ドラム11上に形成された静電潜像は、各感光ドラム11の回転により各現像装置14との対向部に到達する。そして、各感光ドラム11上の静電潜像は、各感光ドラム11の表面と同一極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが各現像装置14から供給されて、トナー像として現像される。本実施例では、現像装置14は、2成分現像方式を採用した現像装置である。即ち、現像装置14は、現像剤として主に非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とが混合された2成分現像剤を収容しており、2成分現像剤中のトナーを静電潜像に供給する。又、現像装置14は、現像剤を担持して感光ドラム11との対向部に搬送する現像剤担持体としての現像スリーブを有し、現像工程時に現像スリーブには所定の現像電圧が印加される。本実施例では、現像電圧は、直流電圧(DC成分)と交流電圧(AC成分)とを重畳した交番電圧であり、DC成分の電圧値は−400V、AC成分のピーク間電圧値は1.5kVpp、周波数は3kHz、波形は矩形波である。
【0026】
各感光ドラム11上に形成されたトナー像は、各1次転写ニップN1において、中間転写ベルト1に順次に転写(1次転写)される。このとき、中間転写ベルト1の裏面に接している1次転写ローラ15には、1次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の所定の1次転写電圧(本実施例では+400Vの定電圧制御)が印加される。これにより、中間転写ベルト1上に、4色のトナー像が重ね合わせて転写された多重トナー像が形成される。
【0027】
一方、転写材Pが、転写材カセット5から転写材供給手段としての供給ローラ6により1枚取り出されて2次転写ニップN2に搬送される。このとき、2次転写ローラ2には、2次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加される。これにより、中間転写ベルト1上のトナー像は、2次転写ニップN2において、中間転写ベルト1から転写材Pへと転写(2次転写)される。上記2次転写電圧は、画像形成装置100に設けられた温湿度センサ(図示せず)によって検知された画像形成装置100内の温湿度に応じて制御装置6が最適な値を決定する。具体的には、約2kVの電圧値が、2次転写電源により2次転写ローラ2に印加される。
【0028】
2次転写ニップN2を通過した、未定着トナー像を載せた転写材Pは、定着装置3に到達する。定着装置3は、熱源を備えた加熱ローラ31と、加熱ローラ31に圧接する加圧ローラ32とを有する。転写材Pは、定着装置3において加熱ローラ31と加圧ローラ32とに挟持されて搬送されることで加熱及び加圧される。これにより、転写材P上にトナー像が定着されて、フルカラー画像が得られる。加熱ローラ31は、第2駆動系IIにより回転駆動される。
【0029】
定着装置3から排出された転写材Pは、搬送手段としての排出ローラ対7により画像形成装置100の外に搬送される。
【0030】
尚、1次転写工程後の各感光ドラム11の表面に残ったトナー(1次転写残トナー)などの付着物は、各ドラムクリーナ16により除去される。これにより各感光ドラム11は清浄化されて、次回の画像形成工程に供される。ドラムクリーナ16は、回収容器と、クリーニング部材としてのウレタンゴムで作製された板状部材であるウレタンゴムブレード(クリーニングブレード)とを有する。そして、ドラムクリーナ16は、ウレタンゴムブレードによって感光ドラム11上の付着物を掻き取って回収容器に回収する。
【0031】
又、2次転写工程後の中間転写ベルト1の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーナ4により除去される。ベルトクリーナ4は、回収容器と、クリーニング部材としてのウレタンゴムで作製された板状部材であるウレタンゴムブレード(クリーニングブレード)とを有する。そして、ベルトクリーナ4は、ウレタンゴムブレードによって中間転写ベルト1上の付着物を掻き取って回収容器に回収する。
【0032】
又、二次転写ローラ2上に付着したトナーなどの付着物は、2次転写部材クリーニング手段としての2次転写ローラクリーナ21により除去される。2次転写ローラクリーナ21は、回収容器と、クリーニング部材としてのウレタンゴムで作製された板状部材であるウレタンゴムブレード(クリーニングブレード)とを有する。そして、2次転写ローラクリーナ21は、ウレタンゴムブレードによって2次転写ローラ2上の付着物を掻き取って回収容器に回収する。これにより、2次転写ローラ2の1周後に転写材Pの裏面へトナーが付着することを防止することができる。
【0033】
ここで、第1駆動系Iは駆動源としての第1駆動モータ81により駆動され、第1駆動モータ81の回転速度は制御装置8により制御される。又、第2駆動系IIは駆動源としての第2駆動モータ82により駆動され、第2駆動モータ82の回転速度は制御装置8により制御される。即ち、中間転写ベルト1を駆動している第1駆動モータ81と、2次転写ローラ2を駆動している第2駆動モータ82とは、制御装置8によって、その回転速度を独立に制御される。尚、第1、第2の駆動系I、IIは、それぞれギアやカップリングなどの駆動伝達部材を有して構成されている。
【0034】
2.2次転写部
次に、2次転写部N2における転写材Pの搬送状態について説明する。図3は、2次転写ニップN2の近傍の断面をより詳しく示す。
【0035】
転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流側には、2次転写ニップN2に搬送する転写材Pを案内するガイド部材としての転写前ガイド17が配置されている。転写前ガイド17は、2次転写ニップN2において中間転写ベルト1側を向く転写材Pの表面側に配置される第1のガイド部材17aと、2次転写ニップN2において2次転写ローラ2側を向く転写材Pの裏面側に配置される第2のガイド部材17bとを有する。そして、転写材Pは、第1のガイド部材17aと第2のガイド部材17bとの間において、移動軌跡を規制されつつ搬送されて、2次転写ニップN2に導かれる。
【0036】
本実施例では、2次転写ニップN2は、第1の領域αと第2の領域βとで構成される。転写材Pの搬送方向において、第1の領域αが上流側、第2の領域βが下流側に位置し、これら第1の領域αと第2の領域βとは連続している。第1の領域αの長さは約1.5mm、第2の領域βの長さは約1mmである。つまり、2次転写ニップN2の長さは合計約2.5mmである。又、転写材Pの搬送方向における転写前ガイド17の下流側端部(以下、単に「下流側端部」ともいう。)の縁から2次転写ニップN2の第1の領域αの入り口までの距離は10mmである。尚、上記長さ又は距離は、転写材Pの通常の移動軌跡に沿って測った長さ又は距離である。
【0037】
転写材カセット5から供給ローラ6により取り出されて搬送されてきた転写材Pは、転写前ガイド17に案内されて、その搬送方向における先端部(以下、単に「先端部」ともいう。)が2次転写ニップN2の第1の領域αに導入される。そして、転写材Pは、第1の領域αにおいて中間転写ベルト1に対して充分な密着性を保ちつつ、第2の領域βに搬送される。
【0038】
更に説明すると、2次転写ローラ2の芯金2a(図2)には、給電バネを介して2次転写電源(図示せず)から約2kVの2次転写電圧が印加される。2次転写ローラ2に対向する駆動ローラ1aは、その芯金(図示せず)が電気的に接地されている。これにより、2次転写ローラ2に2次転写電圧が印加されると、2次転写ローラ2と駆動ローラ1aとの間に転写電界が形成される。この転写電界は、本実施例では、主として第2の領域βに形成される。
【0039】
本実施例では、2次転写ローラ2は、駆動ローラ1aに対して、中間転写ベルト1の移動方向において上流側にオフセットして配置されている。更に、2次転写ローラ2及び駆動ローラ1aよりも中間転写ベルト1の移動方向において上流側に2次転写前張架ローラ1cが配置されている。これらのローラ2、1a、1cの配置によって、第1の領域αと第2の領域βとが形成される。第2の領域βは、駆動ローラ1aと2次転写ローラ2とが、それぞれ中間転写ベルト1の表裏に接触している領域である。第1の領域αは、第2の領域βよりも中間転写ベルト1の移動方向において上流側から、中間転写ベルト1と2次転写ローラ2とによって転写材Pを挟持して搬送するニップ領域(接触領域)である。この第1の領域αが第2の領域βの前に設けられていることにより、第1の領域αにおいて中間転写ベルト1と転写材Pとが密着し、その密着している状態で転写材Pは第2の領域βに至るので、「トナーの飛び散り」及び「放電による転写抜け」が抑制される。
【0040】
仮に、転写材Pの先端部と中間転写ベルト1との間に充分な密着性が得られないまま、転写材Pが2次転写ニップN2に導入されると、「トナーの飛び散り」や「放電による転写抜け」が生ずることになる。
【0041】
「トナーの飛び散り」とは、転写材P上に形成されるトナー像の、イメージ部分(トナーが存在する部分)のトナーが広がる現象である。例えば、文字などの線図が滲んだような画像になる現象である。この「トナーの飛び散り」のメカニズムは次のようなものであると考えられる。即ち、転写材Pの先端部と中間転写ベルト1との間に十分な密着性が得られないまま、転写材Pが2次転写ニップN2に導入されると、転写材Pと中間転写ベルト1との間に空隙がある状態で転写材Pと中間転写ベルト1との間に転写電界が生じることになる。トナーは、転写電界に従って中間転写ベルト1から転写材Pに移動しようとするので、中間転写ベルト1と転写材Pとの間に空隙があると、トナーは、その空隙を、即ち、トナーにとって長い距離を移動することになり、トナーの移動が不安定になる。又、トナーは一定の電荷を有し、トナー同士で静電的に反発する傾向がある。従って、中間転写ベルト1と転写材Pとの間に空隙があることにより、中間転写ベルト1から転写材Pへと転写される過程でトナーが広がる現象が生じることになる。この現象が「トナーの飛び散り」に繋がる。
【0042】
「放電による転写抜け」とは、放電による画像欠損であり、所謂、放電模様を伴うことが多い。特に、ハーフトーン画像上では、その模様が現れ易い。「放電による転写抜け」のメカニズムは次のようなものであると考えられる。即ち、中間転写ベルト1と転写材Pとが密着せずに2次転写ニップN2に進入すると、中間転写ベルト1と転写材Pとの間の空隙に転写電界が生ずる。この空隙における転写電界がパッシェン則を超えると、該空隙において放電が発生し、該空隙の付近にあるトナーには帯電極性が反転するものがでてくる。負極性に帯電しているトナーの極性は反転して正極性となる。帯電極性が反転したトナーは、2次転写工程において本来移動する方向と逆行することになり、転写材Pへ到着しなくなる。そして、中間転写ベルト1から転写材Pへとトナーが移動しない部分は、トナー像が抜けた状態になる。これが「放電による転写抜け」の発生するメカニズムである。
【0043】
3.2次転写駆動制御
次に、本実施例における中間転写ベルト1と2次転写ローラ2の移動速度の制御(以下「2次転写駆動制御」という。)について説明する。
【0044】
3−1.概要
上述のように、中間転写ベルト1は第1駆動モータ81によって回転駆動され、その回転速度(移動速度、周速度)は、予め設定された値に基づいて制御装置8によって制御される。又、2次転写ローラ2は第2駆動モータ82によって回転駆動され、その回転速度(移動速度、周速度)は、予め設定された値に基づいて制御装置8によって制御される。
【0045】
画像形成動作中における、転写材Pの先端部が2次転写ニップN2に進入するタイミングから、転写材Pの搬送方向における中央部領域(以下、単に「中央部領域」ともいう。)が2次転写ニップN2を通過しているタイミングにかけての期間を第1の期間とする。この第1の期間では、2次転写ニップN2における2次転写ローラ2の移動速度が、2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度と略等しくなるように設定される。これにより、2次転写ニップN2における転写材Pの移動速度は、2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度及び2次転写ローラ2の移動速度のそれぞれと略等しくなる。つまり、2次転写ニップN2における各部材の移動速度の関係は、次のようになる。
中間転写ベルト≒転写材≒2次転写ローラ
【0046】
一方、画像形成動作中における、転写材Pの後端部が2次転写ニップN2に進入(到達)するタイミング付近の期間を第2の期間とする。この第2の期間では、2次転写ニップN2における2次転写ローラ2の移動速度が、2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくなるように設定される。つまり、2次転写ニップN2における各部材の移動速度の関係は、次のようになる。
中間転写ベルト>転写材>2次転写ローラ
【0047】
このような制御により、転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良の発生を抑制することができる。
【0048】
3−2.メカニズム
次に、本実施例の2次転写駆動制御によって転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良の発生を抑制できるメカニズムについて説明する。
【0049】
図3に示すように、上記第1の期間では、転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流側において、転写材Pの一部が転写前ガイド17による支持を受ける。これにより、転写材Pは転写前ガイド17に案内されて、2次転写ニップN2の第1の領域αに安定して導かれる。
【0050】
これに対し、図4は、上記第2の期間における2次転写ニップN2の近傍の断面をより詳しく示したものである。上記第2の期間では、転写材Pの後端部の縁が転写前ガイド17の下流側端部の位置を既に通過しており、転写材Pは転写前ガイド17による支持を受けなくなっている。即ち、転写材Pの後端部は、転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流側において、転写前ガイド17による規制力の働かない自由端となる。そのため、転写材Pの後端部は、2次転写ニップN2に接近するに従って、若干のばたつきが生じて(例えば図4中の矢印X方向)、波打ちなどが発生した、やや不安定な姿勢で2次転写ニップN2に進入することになる。
【0051】
図5は、転写材Pの後端部が2次転写ニップN2に進入する直前の2次転写ニップN2の近傍を模式的に示す。図5には、転写材Pの後端部に波打ちが生じている様子が模式的に示されている。
【0052】
仮に、本実施例の2次転写駆動制御が行われず、上記第1の期間と同様に、上記第2の期間においても、2次転写ローラ2の移動速度が中間転写ベルト1の移動速度と略等しくなるように設定されている場合を考える。この場合、2次転写ニップN2に進入する転写材Pの後端部の縁の付近に、局所的に微小なシワが生じる。即ち、上述のように転写材Pの後端部の姿勢が不安定になるため、転写材Pの後端部は一様にきれいな姿勢で2次転写ニップN2に進入しない。そのため、2次転写ニップN2に進入する直前の波打ちが発生した形状などが、2次転写ニップN2に進入した後にも履歴として残存し、微小なシワを発生させる。そして、2次転写ニップN2内では、シワの形状に応じて転写材Pと中間転写ベルト1とが擦れ合う。その結果、2次転写ニップN2を通過した後の転写材P上のトナー像には、図6に示すように、にじみ状の画像不良が出現する。このにじみ状の画像不良は、転写材P上の所定位置に転写されるべきトナー像が位置をずらされて転写されたために、転写材Pの後端部の一部の領域においてトナー像がにじんでいるように見える現象である。画像パターンとしては、ハーフトーン画像や横線パターンなどで、このにじみ状の画像不良の発生が目立ち易い。
【0053】
一方、本実施例の2次転写駆動制御では、上記第2の期間において、2次転写ニップN2における2次転写ローラ2の移動速度が2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくなるよう設定される。このとき、図7に示すように、2次転写ニップN2内では、転写材Pの中間転写ベルト1と2次転写ローラ2とで挟持された部分に、中間転写ベルト1の表面から受ける摩擦力F1と、2次転写ローラ2の表面から受ける摩擦力F2とが作用する。ここで、上述のように、2次転写ニップN2における各部材の移動速度の関係は、次のようになっている。
中間転写ベルト>転写材>2次転写ローラ
【0054】
従って、上記摩擦力F1は転写材Pに対して前向き(搬送方向下流向き)の力であり、上記摩擦力F2は転写材Pに対して後ろ向き(搬送方向上流向き)の力である。
【0055】
これらの力が組み合わさることで、転写材Pの後端部において、転写材Pを前後方向(搬送方向の上下流方向)に引き伸ばす力が生まれる。この力によって、2次転写ニップN2内で転写材Pの後端部に生じる可能性のあるシワが引き伸ばされる。即ち、この力によって、当該シワが、転写材Pの後端部方向、又は転写材Pの後端部における左右端部(搬送方向と直交する方向の端部)方向に逃がされる。これにより、にじみ状の画像不良の発生が抑制される。
【0056】
尚、2次転写ローラ2の移動速度を中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくする制御は、上記第2の期間に限定して実施するのが望ましい。当該制御は、転写材Pの後端部が2次転写ニップN2に進入するタイミング付近以外のタイミング、即ち、上記第1の期間では実施しないことが望ましい。これは、2次転写ニップN2内で上記シワが発生し得るのは、転写材Pの後端部に限られるためである。又、上記第1の期間に2次転写ローラ2の移動速度を中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくする制御を実施すると、次のような弊害が生じることがあるからである。即ち、上記第1の期間において、2次転写ローラ2の移動速度を中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくする制御を長期にわたり実施すると、転写材Pの移動速度と中間転写ベルト1の移動速度との間に定常的な差異が生まれる。これにより、転写材P上におけるトナー像の倍率が狙いに対して変化したり、転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の下流側での転写材Pの搬送性が乱れて転写材Pと搬送路パスとが接触することによる画像不良が現われたりする。従って、第1の期間、即ち、転写材Pの先端部から中央部領域にかけては、中間転写ベルト1の移動速度と2次転写ローラ2の移動速度とを略等速に維持することが望ましい。
【0057】
本実施例では、転写材Pの後端部の縁から転写材Pの先端部側に20mmの位置が2次転写ニップN2の第1の領域αに進入するタイミングで、2次転写ローラ2の移動速度の低下を開始する。そして、転写材Pの後端部の縁から転写材Pの先端部側に10mmの位置が2次転写ニップN2の第1の領域αに進入するタイミングまでに、2次転写ローラ2の所望の移動速度への低下を終える。それ以降は、転写材Pの後端部の縁が2次転写ニップN2の第2の領域βを完全に通過し終わるまで、同速度が維持される。
【0058】
3−3.速度変更タイミングと設定値
各感光ドラム11及び中間転写ベルト1を駆動する第1駆動系Iは第1駆動モータ81により駆動される。又、2次転写ローラ2及び加熱ローラ31を駆動する第2駆動系IIは第2駆動モータ82により駆動される。そして、各駆動モータ81、82は、制御装置8によりその回転速度を独立に制御される。本実施例では、回転速度を変更可能とするために、各駆動モータ81、82としてパルスモータを使用し、制御装置8からの駆動パルスを変化させることにより回転速度を変更できるようにした。
【0059】
図8は、転写材Pが2次転写ニップN2へ進入して排出されるまでの、2次転写ニップNにおける2次転写ローラ2の移動速度の変化を示す。横軸は、時間である。縦軸は、2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度に対する、2次転写ニップN2における2次転写ローラ2の移動速度の比の百分率表示(以下、単に「移動速度比」という。)である。移動速度比が100%の場合、2次転写ローラ2の移動速度と中間転写ベルト1の移動速度とは等しい。移動速度比が100%よりも小さい場合、2次転写ローラ2の移動速度は中間転写ベルト1の移動速度よりも遅い。移動速度比が100%よりも大きい場合、2次転写ローラ2の移動速度は中間転写ベルト1よりも速い。通常、中間転写ベルト1の移動速度は、画像形成動作を通して一定の速度とされる。そして、移動速度比の変更は、2次転写ローラ2の移動速度の変更により行われる。
【0060】
ここで、2次転写ニップN2を転写材Pの先端部から中央部領域にかけての領域が通過する時間帯(第1の期間)における、2次転写ローラ2の移動速度と中間転写ベルト1の移動速度を、それぞれVm、Wmとする。第1の期間では、移動速度比Vm/Wmは100%とされる。
【0061】
又、2次転写ニップN2を転写材Pの後端部が通過する時間帯(第2の期間)における、2次転写ローラ2の移動速度と中間転写ベルト1の移動速度を、それぞれVt、Wtとする。第2の期間では、制御装置8により2次転写ローラ2の移動速度が小さくされ、移動速度比Vt/Wtは99.7%とされる。
【0062】
更に説明すると、図8において、「T1」は、転写材Pの後端部の縁が、転写前ガイド17の下流側端部の位置に対し、転写材Pの搬送方向に沿って約10mm上流に位置するタイミングである。又、「T2」は、転写材Pの後端部の縁が、転写前ガイド17の下流側端部の位置を通過し終わるタイミングである。又、「T3」は、転写材Pの後端部の縁が、2次転写ニップN2に進入するタイミングである。又、「T4」は、転写材Pの後端部の縁が、2次転写ニップN2を通過し終わるタイミングである。又、「T5」は、転写材Pの後端部の縁が、2次転写ニップN2に対し、転写材Pの搬送方向に沿って約5mm下流に位置するタイミングである。又、「T6」は、転写材Pの後端部の縁が、「T5」における位置に対し、転写材Pの搬送方向に沿って更に約5mm下流に位置するタイミングである。
【0063】
図8に示す各タイミングの関係から明らかなように、2次転写ローラ2の移動速度は転写材Pの後端部の縁が2次転写ニップN2に進入し始める前に小さくされ、移動速度比Vt/Wtは99.7%とされる。この移動速度比は、転写材Pの後端部の縁が転写前ガイド17を通過し終わって、転写材Pの後端部が自由端となり、該後端部が転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流近傍から2次転写ニップN2の内部にある間常に維持される。
【0064】
ところで、転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良は、転写部の構成にもよるが、通常、転写材Pの後端部の縁から先端部側に約5mm程度の領域内で発生することが多い。つまり、この画像不良は、例えば転写材Pの全周にわたる縁から内側に約5mm程度の余白を設けて画像を形成する場合よりも、更に転写材Pの縁に近い部分まで画像を形成する場合、又は転写材Pの縁にまで及ぶ画像を形成する場合に、最も発生が目立ち易い。そのため、本実施例の2次転写駆動制御は、このような条件の画像を形成する場合に最も有効である。
【0065】
更に説明すると、例えば、画像形成装置100は、画像形成モードとして、少なくとも次の2種類の画像形成モードを有していてよい。
【0066】
一つは、転写材Pの画像転写面上において、転写材Pの先端部、後端部、左端部及び右端部のそれぞれから内側に、画像を形成することのできない所定の領域(余白)が設定された、所謂、「縁有り画像」を形成する縁有り画像形成モードである。このモードでは、2次転写ニップN2を通過する転写材Pの移動方向及びそれに直交する方向における各端部よりも転写材Pの内側に収まるように中間転写ベルト1上にトナー像が形成される。
【0067】
もう一つは、転写材Pの画像転写面上において、転写材Pの移動方向の先端部から後端部、及び左端部から右端部の全域に、所謂、「縁無し画像」を形成することのできる縁無し画像形成モードである。尚、縁無し画像は、一般に、転写材Pの画像転写面上において、転写材Pの移動方向の先端部、後端部、左端部、及び右端部に関して余白が無い画像である。しかし、縁無し画像として、このうち少なくとも後端部を含む1つ以上の端部の余白が無い画像も形成することができる。このモードでは、2次転写ニップN2を通過する転写材Pの上記各端部のうち少なくとも後端部を含む1つ以上の端部よりも転写材Pの外側にはみ出すように中間転写ベルト1上にトナー像が形成される。
【0068】
図12(a)は縁有り画像を、図12(b)は縁無し画像を模式的に示している。縁有り画像形成時には、中間転写ベルト1上には、転写材P内に収まる大きさのトナー像が形成される。従って、転写材P上では、転写材Pの画像転写面を移動方向前方を上にして見たとき、上余白(mh)、下余白(mb)、左余白(ml)、右余白(mr)の各周辺マージンが存在する。一方、縁無し画像形成時には、中間転写ベルト1上に転写材Pからはみ出す大きさのトナー像が形成される。従って、転写材P上では、トナー像が縁にまで達しており、周辺マージンが無くなる。尚、図12(b)には、上記上余白、下余白、左余白、右余白の全てが無い状態を図示するが、これらの余白のうち少なくとも下余白を含む1つ以上の余白がゼロとされた縁無し画像を形成することもできる。より具体的には、使用者が縁無し画像形成を選択した場合、例えばホストコンピュータ上の画像ファイルに対して、制御装置8は、選択されている転写材Pのサイズに対して縁無し画像となるように画像をリサイズすることができる。そして、典型的には、リサイズ後のトナー像のサイズを縦Iv、横Ihとし、転写材Pのサイズを縦Pv、横Phとしたとき、トナー像と転写材Pのサイズの関係はPv<Iv、Ph<Ihとなるように設定される。
【0069】
そして、制御装置8が、縁無し画像形成モードが選択された場合に本実施例の2次転写駆動制御を行い、縁有り画像形成モードが選択された場合には通常の2次転写駆動制御を行うようにすることができる。通常の2次転写駆動制御では、典型的には、前述の第2の期間において2次転写ローラ2の移動速度を変化させず、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtは100%とされる。
【0070】
或いは、画像形成装置100は、余白の大きさを任意に変更できるようになっていてもよい。そして、制御装置8が、少なくとも転写材Pの後端部の余白として、所定値(例えば、5mm)よりも小さい値が選択された場合に本実施例の2次転写駆動制御を行い、当該所定値以上であれば通常の2次転写駆動制御を行うようにすることができる。通常の2次転写駆動制御では、典型的には、前述の第2の期間において2次転写ローラ2の移動速度を変化させず、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtは100%とされる。勿論、いずれの大きさの余白が選択された場合にも本実施例の2次転写駆動制御を行うようにしてもよい。
【0071】
尚、本実施例における前述の第2の期間における移動速度比(Vt/Wt=99.7%)は、本実施例の画像形成装置100において転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良を良好に抑制することができる最適値として設定されている。実際には、本実施例の画像形成装置100では、99.6%≦Vt/Wt≦99.8%の範囲内の移動速度比により、当該画像不良の抑制が可能であった。本実施例では、特に、当該範囲内の中心値である99.7%を制御用の設定として用いた。これに対して、移動速度比が大き過ぎると(例えば、99.8%<Vt/Wt<100%)、シワの発生を完全に抑えられず軽微なにじみ状の画像不良が発生してしまうことがある。逆に、小さ過ぎると(例えば、Vt/Wt<99.6%)、2次転写ニップN2内における摩擦力が過剰に増大し、転写材Pの後端部のトナー像が強く摺擦されることによる画像不良が発生することがある。
【0072】
又、本実施例における前述の移動速度比の変更を行う上記タイミングも、本実施例の画像形成装置100における最適タイミングとされている。移動速度比の変更を行うタイミングが早過ぎると、転写材P上におけるトナー像の倍率の変化や転写材Pの搬送の乱れなどが発生してしまうことがある。逆に、前述の移動速度比の変更を行うタイミングが遅すぎると、にじみ状の画像不良を抑制する効果が低下することがある。
【0073】
但し、上記移動速度比や移動速度比の変更を行うタイミングは、本発明に従う制御を実施する画像形成装置毎に、転写部の構成やプロセススピードなどの条件に応じて、最適に設定されるべきものである。
【0074】
又、本実施例における前述の第2の期間における移動速度比(Vt/Wt=99.7%)は、転写材Pとして次のものを使用した際に発生する転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良を、最も効果的に抑制することのできる設定値である。即ち、HP Multi Purpose Media紙(普通紙、LTRサイズ、坪量75g/m3)である。他の種類の転写材Pが使用された場合は、厚さ、コシ、表面性などの特性が転写材Pの種類毎に異なるため、転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流側での転写材Pの後端部の姿勢も変化することがある。従って、転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良を抑制するための最適な速度設定も転写材Pの種類毎に変化する場合が考えられる。このような場合には、各転写材Pに関する画像不良を効果的に抑制するために、次のような2次転写駆動制御を行うことができる。即ち、画像形成動作の開始前に、例えばホストコンピュータ(プリンタドライバ)上での操作や画像形成装置100の操作部における操作により入力された転写材Pの種類の情報を制御装置8が受信する。そして、制御装置8が、その情報に基づき、予め記憶された転写材Pの種類毎の最適な移動速度比Vt/Wtの設定から対応するものを選択し、これを用いて2次転写駆動制御を実施する。
【0075】
又、所望により前述の第1の期間における移動速度比Vm/Wmは100%より小さくされてもよい(例えば、99.8%<Vm/Wm<100%)。この第1の期間における移動速度比Vm/Wmは、前述のようなトナー像の倍率の変化や転写材Pの搬送の乱れが発生しない程度である必要がある。この場合も、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtは、転写材Pの後端部の縁の近くにおけるにじみ状の画像不良を抑制できるように、前述の第1の期間における移動速度比Vm/Wmよりも小さくされる。
【0076】
以上のように、本実施例の2次転写駆動制御では、中間転写ベルト1の移動速度に対する2次転写ローラ2の移動速度の比は、次のように設定される。即ち、転写材Pの、2次転写ニップN2における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とする。第1の領域は、前述の第1の期間において2次転写ニップN2を通過する転写材Pの領域であり、第2の領域は、前述の第2の期間において2次転写ニップN2を通過する転写材Pの領域である。又、2次転写ニップN2を転写材Pの第1の領域が通過する際の、2次転写ローラ2の移動速度をVm、中間転写ベルト1の移動速度をWmとする。又、2次転写ニップN2を転写材Pの第2の領域が通過する際の、2次転写ローラ2の移動速度をVt、中間転写ベルト1の移動速度をWtとする。このとき、本実施例の2次転写駆動制御では、次の関係、
Vt/Wt<Vm/Wm
が成り立つように設定される。特に、本実施例では、2次転写ローラ2の移動速度を低下させる構成とすることで、次の関係、
Vt<Vm
が成り立つように設定される。又、本実施例では、Vm=Wmとされる。又、転写材Pの上記第2の領域の上記所定の範囲は、転写材Pの後端部の縁が、転写材Pの搬送方向において転写前ガイド17の下流側端部の位置を通過し終わるときに、該第2の領域が2次転写ニップN2に到達しているように設定される。
【0077】
以上、本実施例では、転写材Pの先端部から中央部領域にかけては、2次転写ローラ2の移動速度が中間転写ベルト1の移動速度と略等速となるよう制御される。一方で、転写材Pの後端部では、2次転写ローラ2の移動速度が中間転写ベルト1の移動速度よりも低くなるよう制御される。これにより、2次転写ニップN2内で転写材Pの後端部に生じ得るシワを引き伸ばす効果が得られ、にじみ状の画像不良の発生が良好に抑制される。
【0078】
実施例2
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0079】
図9は、本実施例の画像形成装置100の概略断面を示す。本実施例の画像形成装置100は、転写材Pの第1面(表面)に画像を形成した後に、自動的にその転写材Pの第2面(裏面)に画像形成する両面画像形成モードを実行可能である。そのために、本実施例の画像形成装置100は、自動両面画像形成機構50を有する。つまり、本実施例の画像形成装置100では、自動両面画像形成機構50は、反転が可能な搬送手段としての排出ローラ対7、並びに、搬送経路切り替え手段としてのフラップ51、両面搬送路52及び両面搬送手段としての両面搬送ローラ対53などで構成される。
【0080】
両面画像形成モードにおいて第2面に画像を形成する場合の転写材Pの搬送方法を説明する。先ず、第1面に画像が形成されて定着装置3から排出された転写材Pは、フラッパ51が排出ローラ対7への搬送経路を開放する位置とされた状態で、その後端部がフラッパ51を通過するまで排出ローラ対7により画像形成装置100の外部に排出される。そして、転写材Pの後端部がフラッパ51を通過すると、該フラッパ51が両面搬送路52への搬送経路を開放する位置にされると共に、転写材Pの後端部を挟持している排出ローラ対7が反転して、当該後端部を先頭にして転写材Pは両面搬送路52に導入される。その後、転写材Pは、両面搬送ローラ対53によって、第2面が2次転写ニップN2において中間転写ベルト1側を向いた状態で、再び2次転写ニップN2へと供給され、第2面に画像が形成される。
【0081】
尚、第1面に画像を形成する際の2次転写ニップN2における転写材Pの搬送方向の先端部は、当該転写材Pの第2面に画像を形成する際には2次転写ニップN2において転写材Pの搬送方向の後端部になる。
【0082】
本実施例においても、画像形成動作中に、前述の第1の期間では、2次転写ニップN2における2次転写ローラ2の移動速度が、2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度と略等しくなるように設定される。又、前述の第2の期間では、2次転写ニップN2における2次転写ローラ2の移動速度が、2次転写ニップN2における中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくなるように設定される。
【0083】
本実施例において、転写材Pが2次転写ニップN2へ進入して排出されるまでの2次転写ローラ2の速度変化は、実施例1における図8に示したものと同様である。
【0084】
ここで、第1面に対する画像形成動作中については、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtの設定は、実施例1と同様にVt/Wt=99.7%とされる。一方、第2面に対する画像形成動作中については、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtの設定は、第1面に対する画像形成動作中の値よりも更に小さくされ、Vt/Wt=99.5%とされる。
【0085】
これにより、第2面に対する画像形成動作中の転写材Pの後端部の縁に近い部分に発生し得るにじみ状の画像不良についても、第1面に対する画像形成動作中と同様に抑制することができる。実際には、本実施例の画像形成装置100では、第2面に対する画像形成動作中について、99.4%≦Vt/Wt≦99.6%の範囲内の移動速度比により、当該画像不良の抑制が可能であった。本実施例では、特に、当該範囲内の中心値である99.5%を制御用の設定として用いた。
【0086】
次に、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtを、第1面に対する画像形成時よりも第2面に対する画像形成時において、より小さな値とすることが好ましい理由について説明する。
【0087】
図10は、第2面に対する画像形成動作中の、転写材Pの後端部が2次転写ニップN2に進入するタイミング付近における、2次転写ニップN2の近傍の様子を示す。このとき、転写材Pの後端部は、転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流側において自由端となり、ばたつきや波打ち(例えば、図10中の矢印X方向)を生じ易い状態となる。
【0088】
第1面に対する画像形成を終え、第2面に対する画像形成に供される転写材Pは、第1面に対する画像形成動作の際にカールが形成されている。この転写材Pのカールは、一般的に定着装置3により形成される。典型的には、第1面の画像形成後に、第1面の非画像形成面、即ち、第2面側に丸まった状態(第1面側が凸、第2面側が凹となるように湾曲した状態)となる。又、第1面に対する画像形成時の転写材Pの先端部の縁の付近、つまり第2面に対する画像形成時の転写材Pの後端部の縁の付近には、局所的に強いカールが生じた状態、つまりクリンプ状態が発生していることが多い。
【0089】
従って、第2面に対する画像形成時に2次転写ニップN2に進入する前の転写材Pの後端部は、図10に示すように中間転写ベルト1側にカールした状態(2次転写ローラ2側が凸、中間転写ベルト1側が凹となるよう湾曲した状態)となっている。そのため、第1面に対する画像形成時よりも、更に不安定な姿勢で転写材Pの後端部が2次転写ニップN2に進入することになる。これにより、2次転写ニップN2内では、より大きなシワが生じ得る状態となる。
【0090】
このような理由から、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtの設定は、第2面に対する画像形成時において、第1面に対する画像形成時よりも、より小さい値とすることが好ましい。これにより、2次転写ニップN2において、転写材Pの後端部に対して、中間転写ベルト1及び2次転写ローラ2からより大きな摩擦力を作用させ、シワの発生を抑えることで、にじみ状の画像不良の発生を抑制することができる。
【0091】
尚、第1面に対する画像形成時にも、第2面に対する画像形成時と同じ移動速度比Vt/Wtの設定を使用すると、2次転写ニップN2内における摩擦力が過剰に増大し、転写材Pの後端部のトナー像が強く摺擦されることによる画像不良が発生することがある。これに対して、第2面に対する画像形成時に第1面に対する画像形成時よりも小さな移動速度比Vt/Wtを使用しても、上記画像不良が発生しない。これは、第1面に対する画像形成時には過剰となる摩擦力が、第2面に対する画像形成時には上記カールに起因して発生するシワを引き伸ばすために有効に作用するだけで、それに加えてトナー像を摺擦するまでには至らないからである。
【0092】
又、所望により、より転写材Pの後端部の縁に近い部分のにじみ状の画像不良が発生し易い第2面に対する画像形成時にのみ、本実施例の2次転写駆動制御を実行してもよい。
【0093】
以上のように、本実施例の画像形成装置100は、転写材Pの第1面にトナー像を転写する第1の工程と、該第1の工程により第1面にトナー像が転写された転写材Pの第1面とは反対側の第2面にトナー像を転写する第2の工程とを行うことが可能である。これにより、転写材Pの両面に画像を形成することが可能である。そして、本実施例の2次転写駆動制御では、中間転写ベルト1の移動速度に対する2次転写ローラ2の移動速度の比は、次のように設定される。即ち、転写材Pの、2次転写ニップN2における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とする。第1の領域は、前述の第1の期間において2次転写ニップN2を通過する転写材Pの領域であり、第2の領域は、前述の第2の期間において2次転写ニップN2を通過する転写材Pの領域である。又、第1の工程における、2次転写ニップN2を転写材Pの第1の領域が通過する際の、2次転写ローラ2の移動速度をVm1、中間転写ベルト1の移動速度をWm1とする。又、第1の工程における、2次転写ニップN2を転写材Pの第2の領域が通過する際の、2次転写ローラ2の移動速度をVt1、中間転写ベルト1の移動速度をWt1とする。同様に、第2の工程における、2次転写ニップN2を転写材Pの第1の領域が通過する際の、2次転写ローラ2の移動速度をVm2、中間転写ベルト1の移動速度をWm2とする。又、第2の工程における、2次転写ニップN2を転写材Pの第2の領域が通過する際の、2次転写ローラ2の移動速度をVt2、中間転写ベルト1の移動速度をWt2とする。このとき、本実施例の2次転写駆動制御では、次の関係、
Vt1/Wt1≦Vm1/Wm1
Vt2/Wt2<Vm2/Wm2
Vt2/Wt2<Vt1/Wt1
が成り立つように設定される。特に、本実施例では、2次転写ローラ2の移動速度を低下させる構成とすることで、次の関係、
Vt1≦Vm1
Vt2<Vm2
Vt2<Vt1
が成り立つように設定される。又、本実施例では、Vm1=Wm1=Vm2=Wm2とされる。又、転写材Pの上記第2の領域の上記所定の範囲は、転写材Pの搬送方向において転写前ガイド17の下流側端部の位置を、転写材Pの後端部の縁が通過し終わるときに、該第2の領域が2次転写ニップN2に到達しているように設定される。
【0094】
以上、本実施例では、画像形成装置100が両面画像形成機能を有する場合に、前述の第2の期間における移動速度Vt/Wtを、第1面に対する画像形成時よりも、第2面に対する画像形成時において低く設定する。これにより、第1面に対する画像形成時、第2面に対する画像形成時の両方において、2次転写ニップN2内で転写材Pの後端部に生じ得るシワを引き伸ばす効果が得られ、にじみ状の画像不良の発生が良好に抑制される。
【0095】
尚、実施例1で説明したのと同様に、第1面又は第2面の少なくとも一方に、縁無し画像或いは所定値より小さい余白の画像を形成する場合にのみ、少なくともその一方の面への画像形成時に本実施例の2次転写駆動制御を実行してもよい。
【0096】
実施例3
次に、本発明に係る更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の構成及び動作は、実施例1の画像形成装置と共通する部分が多い。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0097】
図11は、本実施例の画像形成装置100の概略断面を示す。本実施例の画像形成装置100は、2次転写手段として、実施例1の画像形成装置100における2次転写ローラ2に代えて、2次転写ユニット9を有する。
【0098】
2次転写ユニット9は、ベルト状の2次転写部材としての2次転写ベルト91、2次転写ローラ92、2次転写ベルト駆動ローラ93、2次転写ベルトクリーナ94、2次転写テンションローラ95、アイドルローラ96、及びベルト案内部材97などで構成される。
【0099】
2次転写ベルト91は、中間転写ベルト1と同様、カーボン分散により電気抵抗が調整されたポリイミド樹脂製の単層シームレスの無端ベルトであり、厚さが60μm、周長が180mmである。ここで、JIS−K6911に準拠し、電極とベルトの表面との良好な接触性を得るために、導電性ゴムを電極として使用した上で、超高抵抗計(アドバンテスト社製R8340)を用いて、2次転写ベルト91の体積抵抗率ρvを測定した。この方法により測定すると、250V印加時にρv=1013Ωcmであった。
【0100】
2次転写ベルト91は、2次転写ベルト駆動ローラ93、2次転写テンションローラ95、アイドルローラ96に張架されている。2次転写ベルト駆動ローラ93は、芯金に、カーボンブラックにより電気抵抗が調整されたEPDMゴムを被覆して形成されている。2次転写テンションローラ95は、アルミニウム製の中空管であり、回転軸線方向の両端の軸受部が付勢手段としてのバネで付勢されており、2次転写ベルト91に適当な張力を与えている。アイドルローラ96は、ステンレス製のローラであり、2次転写ベルト91に従動回転する。
【0101】
2次転写ローラ92は、直径6mmの芯金の上に弾性体層を有するローラである。2次転写ローラ92は、中間転写ベルト1及び2次転写ベルト91を介して中間転写ベルト1の駆動ローラ1aに押圧され、2次転写ベルト91と中間転写ベルト1とが接触する2次転写ニップ(2次転写部、接触領域)が形成されている。2次転写ローラ92は、芯金上に、直径が14mmになるように、弾性体として厚さ約4mmの発泡ヒドリンゴム(被覆層)が被覆されている。2次転写ローラ92の硬度は、500g荷重状態でのAsker−C硬度で40°であった。2次転写ローラ92の電気抵抗値は107Ωであった。2次転写ローラ92の電気抵抗値の測定方法は、実施例1における2次転写ローラ2の電気抵抗値の測定方法と同じである。
【0102】
2次転写ベルト91の裏面(内周面)側に固定配置されたベルト案内部材97は、2次転写ベルト91の裏面に接して、その部分の2次転写ベルト91を2次転写ベルト91の表面側へ突出させている。ベルト案内部材97は、2次転写ベルト91の裏面に接触する側の表面がフッ化化合物でコートされているか又は当該表面に高分子ポリエチレンのシートが貼り付けられた、板状の硬質樹脂部材である。
【0103】
2次転写ベルトクリーナ94は、2次転写ベルト91に付着したトナーなどの付着物を除去する。2次転写ベルトクリーナ94は、回収容器と、クリーニング部材としてのウレタンゴムで作製された板状部材であるウレタンゴムブレード(クリーニングブレード)とを有する。そして、2次転写ベルトクリーナ94は、ウレタンゴムブレードによって2次転写ベルト91上の付着物を掻き取って回収容器に回収する。
【0104】
2次転写ベルト駆動ローラ93、2次転写テンションローラ95、及びアイドルローラ96は、電気的に接地されている。又、2次転写ローラ92には、2次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加される。これにより、中間転写ベルト1上のトナー像は、2次転写ニップN2において、中間転写ベルト1から転写材Pへと転写(2次転写)される。上記2次転写電圧は、画像形成装置100に設けられた温湿度センサ(図示せず)によって検知された画像形成装置100内の温湿度に応じて制御装置6が最適な値を決定する。具体的には、約2kVの電圧値が、2次転写電源により2次転写ローラ92に印加される。
【0105】
本実施例の画像形成装置100では、転写材Pが2次転写ニップN2に進入する際、転写材Pは、先ず2次転写ベルト91と中間転写ベルト1との間に挟持され、中間転写ベルト1と転写材Pとが密着した状態となる。続いて、転写材Pは、2次転写ベルト91及び中間転写ベルト1が2次転写ローラ92と駆動ローラ1aとで挟持され、転写電界が形成された領域に至る。従って、実施例1の画像形成装置100における2次転写ニップN2の構成と同様に、本実施例の画像形成装置100の2次転写ニップN2の構成によっても、「トナーの飛び散り」及び「放電による転写抜け」が抑制される。尚、本実施例の画像形成装置100における2次転写ニップN2の長さは約8mmである。
【0106】
2次転写ベルト91は、2次転写ベルト駆動ローラ93が矢印R5方向に第2駆動系IIにより回転駆動されることで、矢印R4方向に回転駆動される。第2駆動系IIは駆動源としての第2駆動モータ82により駆動され、第2駆動モータ82の回転速度は制御装置8により制御される。
【0107】
このように2次転写ベルト91を使用する画像形成装置100においても、2次転写ニップN2内に進入した転写材Pの後端部の縁の付近に微小なシワが生じ、にじみ状の画像不良が生じる恐れがある。これを抑制するため、本実施例の画像形成装置100においても、実施例1と同様の2次転写駆動制御を実施する。
【0108】
つまり、画像形成動作中に、前述の第1の期間では、2次転写ニップN2における2次転写ベルト91の移動速度が、2次転写ニップNにおける中間転写ベルト1の移動速度と略等しくなるように設定される。又、前述の第2の期間では、2次転写ニップN2における2次転写ベルト91の移動速度が中間転写ベルト1の移動速度よりも小さくなるように設定される。
【0109】
本実施例において、転写材Pが2次転写ニップN2へ進入して排出されるまでの2次転写ベルト91の速度変化は、実施例1における図8に示したものと同様である。
【0110】
但し、本実施例では、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtの設定値は、Vt/Wt=99.4%とされる。これは、実施例1の画像形成装置100における値Vt/Wt=99.7%に比べて、より小さい値である。実際には、本実施例の画像形成装置100では、99.3%≦Vt/Wt≦99.5%の範囲内の移動速度比により、転写材Pの後端部の縁に近い部分におけるにじみ状の画像不良の抑制が可能であった。本実施例では、特に、当該範囲内の中心値である99.4%を制御用の設定として用いた。これにより、実施例1の画像形成装置100と同様に、転写材Pの後端部の縁に近い部分に発生し得るにじみ状の画像不良を抑制することができる。
【0111】
次に、本実施例における前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtが、実施例1におけるものよりも小さな値とされる理由について説明する。
【0112】
上述のように、本実施例の画像形成装置100においても、実施例1の画像形成装置100と同様に、転写材Pの後端部は、転写材Pの搬送方向における2次転写ニップN2の上流側において自由端となり、ばたつきや波打ちを生じ易い。しかし、本実施例の画像形成装置100では、2次転写ニップN2の長さが、実施例1の画像形成装置100よりも長い。従って、2次転写ニップN2内に進入した転写材Pの後端部の縁の付近に生じ得るシワが2次転写ニップN2内で増幅され、より顕著なにじみ状の画像不良となり易い。
【0113】
このような理由から、本実施例の画像形成装置100では、前述の第2の期間における移動速度比Vt/Wtの設定値は、実施例1の画像形成装置100におけるものに比べて、より小さい値とされる。これにより、2次転写ニップN2において、転写材Pの後端部に対して、中間転写ベルト1及び2次転写ベルト91からより大きな摩擦力を作用させ、シワの発生を抑えることで、にじみ状の画像不良の発生を抑制することができる。
【0114】
以上、本実施例によれば、中間転写ベルト1と2次転写ベルト91とで形成される2次転写ニップN2内で転写材Pを安定に保持、搬送することができる。これにより、例えば、縁無し画像形成モードにおいて縁にまで及ぶトナー画像を印字する際にも、転写材Pを取り囲む周囲4辺の裁断面に対するトナーの付着を最小限に抑制することができる。
【0115】
そして、このような画像形成装置100においても、実施例1と同様の2次転写駆動制御を行うことにより、転写材Pの後端部で発生し得るにじみ状の画像不良の発生が良好に抑制される。
【0116】
尚、実施例2の画像形成装置100の2次転写手段として本実施例にて説明した2次転写ユニット9を用いることもできる。この場合、上述と同様の理由により、転写材Pの第1面に対する画像形成時における前述の第2の期間での移動速度比Vt/Wtの設定は、実施例2におけるものよりも小さくすることが好ましい。又、転写材Pの第2面に対する画像形成時における前述の第2の期間での移動速度比Vt/Wtの設定も、実施例2におけるものよりも小さいことが好ましい。
【0117】
又、実施例1で説明したのと同様に、縁無し画像或いは所定値より小さい余白の画像を形成する場合にのみ、本実施例の2次転写駆動制御を実行してもよい。
【0118】
他の実施例
以上本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0119】
例えば、上記各実施例では、2次転写部材を駆動する第2駆動系IIの駆動モータ82の回転速度を変更したが、これに限定されるものではない。本発明の効果を得るには、中間転写ベルトの表面の移動速度に対する2次転写部材の表面の移動速度の比が変更可能になっていればよい。従って、中間転写ベルトを駆動する第1駆動系Iの駆動モータ81の回転速度を制御しても良い。即ち、中間転写ベルトの速度を早くしてもよい。この場合も、中間転写ベルトの表面の移動速度に対する2次転写部材の表面の移動速度の比の好ましい範囲は、上記各実施例にて説明したものと同じとすることができる。但し、中間転写ベルトの移動速度を速くするには、中間転写ベルトや感光ドラムの摺擦による摩耗を抑制するなどのために、全ての感光ドラムと中間転写ベルトの移動速度を速くすることが望まれることがある。そのため、構成の簡易化などの観点からは、第2の駆動系IIの駆動モータ82の回転速度を制御して、2次転写部材の移動速度を遅くすることがより好ましい。
【0120】
又、本発明は、中間転写ベルトを用いた画像形成装置に適用する場合に限定されるものではない。転写部に供給される転写材に像担持体からトナー像を転写する動作を行う電子写真方式の画像形成装置であれば、当該転写部について、本発明に従う制御を実施することができる。例えば、中間転写ドラム方式、静電転写体方式、多重現像方式などを採用した画像形成装置に適用することが可能であり、同様の効果が得られる。又、像担持体としての感光ドラムから直接トナー像を転写材に転写する単色画像形成装置にも本発明を適用することが可能であり、同様の効果が得られる。
【0121】
例えば、図13(a)は、像担持体としての感光ドラム11から転写材Pに直接トナー像を転写する画像形成装置の一例の要部の概略断面を示す。この画像形成装置では、感光ドラム11と転写部材である転写ローラ61とが接触する転写ニップ(転写部、接触領域)Nに転写材Pが供給され、転写ローラ61に転写バイアスが印加されることにより、感光ドラム11上のトナー像が転写材Pに転写される。又、図13(b)は、像担持体としての感光ドラム11から転写材Pに直接トナー像を転写する画像形成装置の他の例の要部の概略断面を示す。この画像形成装置では、支持ローラ73、74に張架された転写部材としての無端ベルト状の転写ベルト71が感光ドラム11に接触して転写ニップ(転写部、接触領域)Nが形成されている。転写ベルト71の裏面(内周面)側には転写ローラ72が配置され、感光ドラム11と転写ローラ72とで転写ベルト71を挟持している。転写材Pは、転写ベルト71上に担持されて転写ニップNに供給され、転写ローラ72に転写バイアスが印加されることにより、感光ドラム11上のトナー像が転写材Pに転写される。尚、図13(a)、(b)において、図1の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能、構成を有する要素には同一符号を付している。このような画像形成装置においても、転写材Pの搬送方向において転写ニップNの上流側で、転写材Pの後端部が転写前ガイド17による支持を受けずに自由端となることなどにより、転写材Pの後端部の縁の近くにおけるにじみ状の画像不良が発生することがある。従って、このような画像形成装置においても、転写ニップNについて、上記実施例と同様に本発明に従って感光ドラム11の移動速度に対する転写ローラ61又は転写ベルト71の移動速度の比を制御することにより、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0122】
1 中間転写ベルト
2 2次転写ローラ
8 制御装置
91 2次転写ベルト
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する移動可能な像担持体と、前記像担持体に接触して移動可能な転写部材と、を有し、前記像担持体と前記転写部材とが接触する接触領域に転写材を通過させることにより前記像担持体から前記転写材にトナー像を転写する画像形成装置において、
前記転写材の、前記接触領域における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とした場合、
前記接触領域を前記転写材の前記第1の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVm、前記像担持体の移動速度をWmとし、前記接触領域を前記転写材の前記第2の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVt、前記像担持体の移動速度をWtとすると、次の関係、
Vt/Wt<Vm/Wm
が成り立つことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
次の関係、
Vt<Vm
が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を担持する移動可能な像担持体と、前記像担持体に接触して移動可能な転写部材と、を有し、前記像担持体と前記転写部材とが接触する接触領域に転写材を通過させることにより前記像担持体から前記転写材にトナー像を転写する画像形成装置であって、前記転写材の第1面にトナー像を転写する第1の工程と、該第1の工程により前記第1面にトナー像が転写された前記転写材の第1面とは反対側の第2面にトナー像を転写する第2の工程とを行って、前記転写材の両面に画像を形成することが可能な画像形成装置において、
前記転写材の、前記接触領域における搬送方向の後端部の縁から先端部側に所定の範囲を第2の領域、該第2の領域よりも先端部側の領域を第1の領域とした場合、
前記第1の工程における、前記接触領域を前記転写材の前記第1の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVm1、前記像担持体の移動速度をWm1とし、前記接触領域を前記転写材の前記第2の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVt1、前記像担持体の移動速度をWt1とし、
前記第2の工程における、前記接触領域を前記転写材の前記第1の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVm2、前記像担持体の移動速度をWm2とし、前記接触領域を前記転写材の前記第2の領域が通過する際の、前記転写部材の移動速度をVt2、前記像担持体の移動速度をWt2とすると、次の関係、
Vt1/Wt1≦Vm1/Wm1
Vt2/Wt2<Vm2/Wm2
Vt2/Wt2<Vt1/Wt1
が成り立つことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
次の関係、
Vt1≦Vm1
Vt2<Vm2
Vt2<Vt1
が成り立つことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写材の前記第2の領域の前記所定の範囲は、前記転写材の搬送方向において前記接触領域の上流側で前記転写材を案内するガイド部材の下流側端部の位置を、前記転写材の前記後端部の縁が通過し終わるときに、前記第2の領域が前記接触領域に到達しているように設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写部材は、ローラ状の部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写部材は、ベルト状の部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
少なくとも前記転写材の前記接触領域における搬送方向の後端部の縁にまで及ぶトナー像を形成することが可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−32659(P2012−32659A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173071(P2010−173071)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】