説明

画像形成装置

【課題】 第二の帯電部材から中間転写体に転移された吐き出しトナーの感光ドラムへの回収量を向上することを目的とする。
【解決手段】 第二の帯電部材から前記中間転写体に転移された吐き出しトナーが一次転写部を通過するタイミングで一次転写部に到達する像担持体の表面の電位は、クリーニング工程において第一の帯電部材に帯電された像担持体の表面の電位よりも、同極性で絶対値が小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中間転写体上に形成したトナー像を転写材に転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙等の転写材に多色画像(カラー画像)を形成する画像形成装置として、中間転写方式を用いた電子写真方式が知られている。中間転写方式は、トナー像を担持する像担持体から回転する中間転写体に複数色のトナーを一次転写することで、中間転写体上にカラートナー像を形成する。その後、中間転写体上に形成されたカラートナー像を転写材に二次転写することで、転写材に画像を形成する方式である。
【0003】
中間転写体上には、転写材に二次転写されず中間転写体上に残留する残留トナーがある。この残留トナーを除去するためのクリーニング方法が従来から提案されている。クリーニング方法の一例として、残留トナーを帯電部材によってトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電し、像担持体へ転移させるクリーニング方法が従来から提案されている。上記クリーニングでは、プリント枚数の増加に伴って帯電部材に残留トナーの一部が付着し、その結果、帯電部材のトナー帯電性能が低下する場合があった。そこで、特許文献1には、定期的に帯電部材に付着した残留トナーを中間転写体上に転移させる(吐き出す)方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−62085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、残留トナーを帯電する帯電部材に付着したトナーを中間転写体上に吐き出す場合、吐き出されたトナーを次の画像形成前に中間転写体から感光ドラムへ転移させる必要がある。吐き出されたトナーを中間転写体から感光ドラムへ十分に転移させることができないと、吐き出されたトナーが、転写材に転写されて画像不良となる恐れがあった。吐き出されたトナーの帯電極性は、不均一であることがあり、効率良く中間転写体から感光ドラムにトナーを転移させることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体を帯電するための第一の帯電部材と、移動可能な中間転写体と、一次転写部において前記像担持体から前記中間転写体へとトナー像を一次転写させる一次転写部材と、二次転写部において前記中間転写体から転写材へとトナー像を二次転写させる二次転写部材と、前記中間転写体の移動方向において前記一次転写部よりも上流側で、且つ、前記二次転写部よりも下流側で、前記二次転写部で転写材に転写されず前記中間転写体に残留した残留トナーを帯電する第二の帯電部材と、を有し、前記第二の帯電部材により残留トナーを帯電し、前記第一転写部において前記中間転写体から前記第一の帯電部材に帯電された前記像担持体へ前記残留トナーを転移する第一の工程と、前記第一の工程によって前記第二の帯電部材に付着したトナーを前記中間転写体に転移させる第二の工程と、を実行可能な画像形成装置において、前記第二の工程を実行して前記第二の帯電部材から前記中間転写体に転移されたトナーが前記一次転写部を通過するタイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体表面の電位は、前記第一の工程において前記第一の帯電部材に帯電された前記像担持体表面の電位よりも、同極性で絶対値が小さいことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
残留トナーを帯電する帯電部材から吐き出されたトナーの極性に合わせて、感光ドラム表面の電位を調整することで、吐き出されたトナーの感光ドラムへの転写効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1の吐き出しトナー回収時における露光のタイミングチャートである。
【図3】実施例2における画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図4】導電ブラシ23からの吐き出しトナー量を測定した結果のグラフである。
【図5】実施例2の吐き出しトナー回収時における露光のタイミングチャートである。
【図6】帯電ローラ2の電圧を0Vにした場合の表面電位減衰時間を測定した結果のグラフである。
【図7】感光ドラム1の表面電位調整方法を選択するフローチャートである。
【図8】実施例3の吐き出しトナー回収時における帯電ローラ2への電圧印加のタイミングチャートである。
【図9】実施例4の帯電ローラ2への電圧印加、および、露光のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明を実施するための形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0010】
(実施例1)
図1は、実施例1に係る画像形成装置を示す概略構成図である。実施例1に係る画像形成装置は、中間転写方式を用いた電子写真方式である。図1の画像形成装置は、像担持体である感光ドラム1、第一の帯電部材である帯電ローラ2と、を有する。さらに、現像手段5、6、7、8と、現像手段を搭載する保持部材であるロータリー4と、移動可能な中間転写体である中間転写ベルト9と、一次転写部材である一次転写ローラ10と、を有する。さらに、中間転写ベルト9に当接離間可能な二次転写部材である二次転写ローラ11と、中間転写ベルト9に当接離間可能な導電ローラ22等を有している。導電ローラ22は、第2の帯電部材である。
【0011】
図1において、トナー像を担持する像担持体である感光ドラム1は、駆動手段(図示せず)によって矢印R1方向に回転している。感光ドラム1の表面は、高圧電源14(第一の電圧印加手段)によって約−1100Vの電圧が印加された帯電ローラ2によって一様に帯電される。高圧電源14は、帯電ローラ2に負極性の電圧を印加することが可能である。帯電ローラ2は、感光ドラムを帯電するための部材であり、第一の帯電部材とする。一様に帯電された感光ドラム1の表面には、露光手段3によって画像情報に従ったレーザ光が感光ドラム1上に照射され、潜像が形成される。さらに、感光ドラム1が矢印R1方向に進むと、現像器によって感光ドラム1に形成された潜像がトナー像として現像される。現像器は、イエロー色のトナーを現像するための現像手段5と、マゼンタ色のトナーを現像するための現像手段6と、シアン色のトナーを現像するための現像手段7と、ブラック色のトナーを現像手段8と、を有する。さらに、現像器は、各現像手段を保持するための保持部材であるロータリー4を有し、ロータリー4が回転することで各現像手段を感光ドラム1と対向する現像位置に移動させる。フルカラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に現像される。具体的には、ロータリー4を矢印R0方向に回転させることで、現像手段5、6、7、8を順次感光ドラム1との当接位置に移動させて各色を現像している。
【0012】
感光ドラム1の回転方向において、感光ドラムと現像手段の当接位置よりも下流側には、感光ドラム1と略等速度で回転する中間転写体である中間転写ベルト9が設けられている。
中間転写体である中間転写ベルト9は、表面抵抗率が約5.0×1010Ω/□、体積抵抗率が約2.0×1011Ω・cm、比誘電率が3、厚みが100μmから成る樹脂製の無端状ベルトである。感光ドラム1に接触しており不図示の駆動モータによってR4の向きに回転する駆動ローラ12により、中間転写ベルト9は、感光ドラム1と略同周速でR3方向に100mm/secの速さで回転される。中間転写ベルト9の表面抵抗は、三菱ケミカル株式会社製のハイレスタMP−CHT450で測定した。
【0013】
中間転写ベルト9を介して感光ドラム1と対向する位置に、一次転写手段として、一次転写ローラ10が配置されている。一次転写ローラ10は、中間転写ベルト9を介して感光ドラム1と、一次転写部を形成している。一次転写ローラ10に約+900Vの正極性の直流電圧を印加することで、感光ドラム1上に形成されたトナー像が中間転写ベルト9上に一次転写される。一次転写用の高圧電源16は、一次転写ローラに負極性又は正極性の電圧を印加する電圧印加手段である。
【0014】
具体的には、現像手段5によって感光ドラム1上に現像されたイエローのトナー像は、感光ドラム1から中間転写ベルト9に一次転写される。同様の工程を、マゼンタ色のトナー、シアン色のトナー、ブラック色のトナーも行うことで、中間転写ベルト9上に複数色のトナー像が形成される。
【0015】
中間転写ベルト9上に複数色のトナー像を形成する際、中間転写ベルトの外周面側に設けられた二次転写ローラ11、導電ローラ22は、中間転写ベルトに対して、離間している。これは、中間転写ベルト9上のトナー像に接触して画像を乱すことを避けるためである。導電ローラ11の位置は、中間転写ベルトの移動方向において二次転写部よりも下流側、且つ、一次転写部よりも上流側に設けられている。
【0016】
二次転写ローラ11及び導電ローラ22は、ブラックの一次転写を実行中、画像先端が二次転写ローラ11に到達する直前に、駆動ローラ12上に張架された中間転写ベルト9の外周面に当接する。その際、二次転写ローラ11及び導電ローラ22には、それぞれ約+2500Vの正極性の直流電圧が印加される。二次転写ローラ11の当接後、転写材Pが給紙ローラによって搬送され、中間転写ベルト9と二次転写ローラ11が当接する二次転写部に所定のタイミングで供給される。二次転写ローラ11には、約+2500Vの直流電圧を印加することで中間転写ベルト9から転写材Pに多色トナー像が二次転写される。また、導電ローラ22には、約+2500Vの直流電圧を印加することで二次転写されずに中間転写ベルト9上に残留したトナー(以下二次転写残留トナーと表現する。)を正極性に帯電する。即ち、導電ローラ22は、二次転写残留トナーを帯電するための部材であり、第二の帯電部材とする。また、導電ローラ22には、正極性の電圧、負極性の電圧のどちらの極性の電圧を出力する第二の電圧印加手段である高圧電源18が接続されている。転写材Pが二次転写部を通過したあと、二次転写ローラ11と導電ローラ22に直流電圧を印加することを停止し、停止後に二次転写ローラ11と導電ローラ22は離間される。
【0017】
本画像形成装置は、二次転写残留トナーをクリーニングするための第一の工程を実行可能である。第一の工程である二次転写残留トナーのクリーニング工程について説明する。二次転写残留トナーは、主に負極性に帯電された状態である。二次転写残留トナーは、導電ローラ22に約2500Vの正極性の直流電圧を印加することによって発生する放電電流によって正極性に帯電され、一次転写部において次の画像のイエローが一次転写されると同時に感光ドラム1へ転移される。この時、高圧電源14によって約−1100Vの電圧が印加された帯電ローラ2によって、感光ドラムの表面電位は一様に帯電されており、約−550Vである。また、一次転写ローラ10に約+900Vの電圧が印加されている。感光ドラムの表面電位は、尚、次の画像のイエローが一次転写を行わず、二次転写残留トナーの感光ドラム1への転移だけを行っても良い。
【0018】
最終的には感光ドラム1に付着したトナーを除去するためのクリーニング手段15に回収される。また、二次転写残留トナーをイエロートナー像の一次転写時に感光ドラム1に戻す際は、感光ドラム上の露光されない部分(暗部)と、露光される画像部(明部)の双方に転移される。
【0019】
上述したように、二次転写残留トナーのクリーニング工程においても、一次転写ローラ10には、高圧電源16によって約900Vの正極性の直流電圧を印加しており、高圧電源14によって帯電ローラ2には約−1100Vを印加している。このため、二次転写残留トナーのクリーニング工程中は、感光ドラム1の画像部の表面電位は連続プリントにおいて画像形成開始から終了まで、非画像露光部電位が約−550Vに保たれている。
【0020】
二次転写ニップ部を通過した転写材Pは、定着装置(図示せず)へ搬送され、定着装置でトナー像が定着され、画像形成物(プリント、コピー)として排出搬送される。画像形成を連続して行う場合、ブラックの一次転写終了後すぐ次の画像のイエローが一次転写され、上記画像形成プロセスが繰り返される。
【0021】
主に負極性に帯電したトナーから成る二次転写残留トナーは、導電ローラ22に正極性の直流電圧を印加することによって正極性に帯電される。しかしながら、一部のトナーは極性が反転せず負極性のままであるため、約+2500Vの電圧が印加される導電ローラ22には、二次転写残留トナーの一部が付着する。導電ローラ22に付着するトナー量が増えると、導電ローラ22のトナー帯電性能が低下する。トナー帯電性能が低下したため、十分に正極性に帯電されなかった二次転写残留トナーは、感光ドラム1に回収されず、次の画像形成時に転写材に転写されて画像不良となる場合がある。
【0022】
以上の理由により、画像形成が終了後、導電ローラ22に付着したトナーを再度中間転写ベルト9上に転移させて、導電ローラ22のトナー帯電性能を改善する必要がある。以下、画像形成終了後に導電ローラ22に付着したトナーを中間転写ベルト9上に転移させ、さらに感光ドラム1に転写して最終的に感光ドラム1上のクリーニング手段15によって回収する工程を後回転工程とする。後回転工程は、1枚のプリント毎に実行しても良く、連続するプリントにおいては、所定のタイミングで実行しても良い。本実施例では、連続してプリントする場合は、最後のプリントが終わったタイミングで後回転工程を実行している。
【0023】
導電部材である導電ローラ22に付着したトナーは、主に負極性に帯電しているため、導電ローラ22に負極性の電圧を印加することで、導電ローラ22に付着したトナーを中間転写ベルト9上に吐き出すこと(転移させること)が可能となる。この、導電ローラ22から中間転写ベルト9にトナーを吐き出す工程を、第一の工程によって第二の帯電部材に付着したトナーを中間転写体に転移させる第二の工程とする。本実施例では、導電ローラ22に直流電圧を印加する高圧電源(第二の電圧印加手段)18は、導電ローラ22に、正極性の直流電圧と、負極性の直流電圧の両方を印加することが可能である。本実施例では、導電ローラ22に約−1000Vの電圧を印加することで付着トナーを中間転写ベルトに再転移させる。本実施例の負極性の電圧印加時間は、導電ローラ1周分である。導電ローラ22は円周が約30mmで中間転写ベルト9の回転に対して、従動回転するため導電ローラ22が1周するのに要する時間は約300msecである。また、高圧電源18は、負極性の電圧印加の立ち上がり時間として約100msecを要するため、本実施例では約−1000Vの印加時間を約400msecとする。
【0024】
以下、導電ローラ22から中間転写ベルト9上に再転移されたトナーを吐き出しトナーと表現する。吐き出しトナーは中間転写ベルト9上でも主に負極性から成るため、吐き出されたトナーが感光ドラム1を通過する際に、一次転写ローラ10に負極性の電圧を印加することで、感光ドラム1に転移できる。ここでは、一次転写ローラ10に約−1000Vの電圧を印加した。
【0025】
また、吐き出しトナーの一部は、感光ドラム1に回収されず、中間転写ベルト9上に残留することが想定される。(以下、吐き出し残留トナーと表現する。)そのため、トナー吐き出し後に、導電ローラ22に再び約+2500Vの正極性の電圧を印加して、中間転写ベルト9上の吐き出し残留トナーを正極性に帯電する。正極性に帯電された吐き出し残留トナーは一次転写ローラ10に約+900Vの電圧を印加し、約−1100Vの電圧が印加された帯電ローラによって帯電された感光ドラム1に回収される。以上が、本実施例の後回転工程の内容である。
【0026】
後回転工程では、吐き出し残留トナーを導電ローラ22によって正極性に帯電するする工程がある。この工程では、吐き出し残留トナーの一部が導電ローラ22に再付着する可能性がある。後回転工程の終了時には、極力、導電ローラ22にトナーが付着していない状態にさせることが望ましい。導電ローラ22にトナーが付着していない状態にさせるために、後回転工程での吐き出し残留トナーの導電ローラ22に対する再付着を抑制する必要がある。
【0027】
本実施例では、吐き出し残留トナーの導電ローラ22に対する再付着を抑制するために、吐き出しトナーの感光ドラム1への回収量を多くする。具体的には、吐き出しトナーが一次転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて、露光手段3によって、感光ドラム1の表面を露光する。感光ドラム1の表面電位は露光を行うことで瞬時に、トナーの正規の帯電極性と同極性で絶対値が小さい約−100Vまで電位が減衰する。一次転写ローラ10に約−1000Vの電圧が印加されており、さらに感光ドラム1の表面を露光しているので、一次転写ニップ部における中間転写ベルト9の表面と感光ドラム1表面の電位差は、約800Vとなる。
【0028】
約−1100Vの電圧が印加された帯電ローラによって帯電された感光ドラム1の表面電位は―550Vである。よって、露光手段3が露光しない場合の一次転写ニップ部における中間転写ベルト9の表面と感光ドラム1表面の電位差は、約350Vとなる。本実施例では、露光手段3が露光することで約800Vと大きな電位差を形成することが可能になる。その結果、吐き出しトナーは電界の作用を受け易くなり、吐き出しトナーの感光ドラム1に対する回収量を多くすることが可能である。
【0029】
図2は、導電ローラ22、一次転写ローラ10への電圧印加、および露光のタイミングチャートである。ここで、感光体ドラム1上の露光手段3によって露光される位置である露光部3aと一次転写ニップ部との間の距離をL3(mm)とする。さらに、導電ローラ22が当接する位置から一次転写ニップ部との間の距離をL1(mm)とする。さらに、中間転写ベルト9の回転速度と感光ドラム1の回転速度をPs(mm/sec)とする。
【0030】
帯電ローラ2で電位を調整された感光ドラム1の表面が一次転写ニップ部に到達するまでにL3/Psだけ時間がかかる。このため、L1/Ps ≧ L3/Psの場合は、遅くとも導電ローラ22からトナーが吐き出されてからL1/Ps − L3/Ps後までに、露光手段3により露光を行えばよい。また、L1/Ps ≦ L3/Psである場合には、遅くとも導電ローラ22からトナーが吐き出されるL3/Ps − L1/Psより前に露光手段3により露光を行えばよい。
【0031】
このように、本実施例では、吐き出しトナー回収時に感光ドラム1表面の露光を行い、約−100Vとなった感光ドラム1表面の一次転写ニップ部への到達タイミングが、吐き出しトナーの一次転写ニップ部への到達タイミングに同期する。その結果、より多くの吐き出しトナーを感光ドラム1に回収することが可能である。
【0032】
(実施例2)
図3は、本実施例における画像形成装置を示す概略構成図である。実施例1との違いは、帯電部材として導電ローラ22の代わりに導電ブラシ23を使用している点であり、その他の構成は実施例1と同等である。導電ブラシ23は支持部材に固定されており、ブラシ部分が中間転写ベルトに対して周速差を持って摺擦している。
【0033】
導電ブラシ23は、繊維径が約20μmの導電ナイロン繊維からなるブラシであり、1mm辺り約120本の密度で織られている。尚、導電ブラシ23に正極性、負極性の電圧を印加するための高圧電源19を備えており、高圧電源19は、−2000V〜+4000Vの範囲で電圧の印加が可能である。
【0034】
導電ブラシ23は、実施例1の導電ローラ22と比べて、二次転写残トナーに接触した際に二次転写残留トナーを均一な層にならすことが可能である。しかしながら、導電ブラシ23は、実施例1の導電ローラ22と比べてより多くの二次転写残留トナーを溜め込むため、導電ブラシ23に負極性の電圧を1度印加するだけでは、導電ローラ22に対して、十分にトナーを吐き出すことができない。このような場合には、負極性の電圧を複数回印加することが必要となる。さらに、導電ブラシ23に付着している二次転写残留トナーは、大部分が負極性のトナーから成っているが、負極性トナーに引き付けられて一部正極性のトナーも含まれている。
【0035】
このため、本実施例ではより多く導電ブラシ23からトナーを吐き出すために、導電ブラシ23に負極性と正極性の電圧を交互に印加している。図4は、導電ブラシ23に負極性の電圧を印加した時の時間に対する吐き出しトナー量の光学濃度を測定した結果である。導電ブラシ23に約−1000Vの電圧を500msecずつ、3回印加した場合の吐き出しトナーの量を確認した。導電ブラシ23から吐き出されるトナーの量は、電圧を印加した瞬間が最も多い。さらに、時間の経過とともに急激に吐き出し量は減少することが明らかになり、250msec程度の電圧印加時間で吐き出し量は飽和することが明らかになった。また、一度電圧の印加を止めて、再度印加すると、トナーの吐き出し量は再び増加することが分かった。尚、この傾向は正極性の電圧を印加した場合も同様であった。
【0036】
そこで、本実施例では、トナー吐き出しのために、導電ブラシ23への電圧印加を−1000V、+1000Vの順にそれぞれ250msecずつ交互に、合計3回ずつ印加することにした。このようにして吐き出されたトナーは、正負交互の極性を有している。具体的には、導電ブラシ23に−1000Vを印加した場合は、吐き出されたトナーの極性は主に負極性のトナーである。導電ブラシ23に+1000Vを印加した場合は、吐き出されたトナーの極性は主に正極性のトナーである。
【0037】
さらに、吐き出しトナーを感光ドラム1に回収するためには、吐き出しトナーの極性に合わせて感光ドラム1の表面電位を調整する必要がある。このため、本実施例では一次転写ニップ部へ到達した吐き出しトナーの極性に合わせて、露光手段の露光タイミングを切り替えた。すなわち、負極性の吐き出しトナーを回収するのに対応したドラム面に対しては、露光面を対応させる。正極性の吐き出しトナーを回収するのに対応したドラム面に対しては非露光面を対応させた。また、トナーの極性に応じて、一次転写ローラ10への印加電圧も約−1000V、+1000Vと正負交互に印加している。
【0038】
図5は、導電ブラシ23、一次転写ローラ10への電圧印加および露光のタイミングチャートである。L1/Ps ≧ L3/Psの場合は、導電ブラシ23から最初の負極性トナーが吐き出されてからL1/Ps − L3/Ps後を起点として、250msecの間露光を行う。以降それぞれ250msecずつ、露光のオフオンを交互に切り替える。切り替える回数は露光のオンとオフがそれぞれ3回ずつとなる。
【0039】
また、L1/Ps ≦ L3/Psである場合には、導電ブラシ23からトナーが吐き出されるL3/Ps − L1/Ps前を起点として、250msecの間露光を行い、以降それぞれ250msecずつ、露光のオフオンを交互に切り替える。
【0040】
尚、一次転写ローラ10への電圧印加は、導電ブラシ23からトナーが吐き出されてL1/P2後を起点として250msecずつ交互に約−1000Vと約+1000Vの電圧を切り替えればよい。
【0041】
以上により、導電ブラシ23から負極性と正極性の極性に帯電した吐き出しトナーを吐き出した場合でも、一次転写ニップ部で中間転写ベルトから感光ドラム1に効率良く転移させることが可能になる。
【0042】
(実施例3)
本実施例では、露光手段3の消耗や吐き出しトナー量を鑑みて、感光ドラム1の表面電位の調整方法を選択する方法について説明する。本実施例における画像形成装置は、実施例2における画像形成装置と同様である。また、トナー吐き出し工程も実施例2と同様、導電ブラシ23への電圧印加を−1000V、+1000Vの順にそれぞれ250msecずつ交互に、合計3回ずつ印加した。
【0043】
実施例1では、吐き出しトナーの回収量を向上するために感光ドラム1表面に対して露光を行ったが、後回転工程の度に露光を行うと、露光手段を使用する回数が増えてしまう。一方で、感光ドラム1表面の電位を調整する方法としては露光の他に、像担持体用帯電部材である帯電ローラ2への印加電圧を調整する方法もある。
【0044】
図6は、帯電ローラ2への印加電圧を0Vにした時の、現像手段5、6、7、8が感光ドラム1に当接する位置における感光ドラム1の表面の電位減衰時間を測定した結果である。本測定は、一次転写ローラ10への電圧印加を約0Vとして行った。図6に示すように、帯電ローラ2への印加電圧を0Vにしてから感光ドラム1の表面電位が0V付近まで減衰するまで約2分以上を要する。しかしながら、図6に示すように、感光ドラム1の表面電位は、帯電ローラ2への印加電圧を0Vにしてから比較的短い時間で−300V程度まで減衰する傾向にある。感光ドラム1の表面電位が0V側に減衰すると、帯電ローラ2に約−1100Vの電圧を印加した場合にくらべて、一次転写ニップ部での電位差が大きくなるため感光ドラム1への吐き出しトナーの回収量が多くなる。
【0045】
また、文字画像のようにトナー印字率の小さい画像をプリントする場合は、二次転写残留トナー量も少ない。よって、クリーニング工程で導電ブラシ23に付着するトナー量が少なく、その為、吐き出しトナー量も少ない。このような場合には、帯電ローラ2への印加電圧を0Vにすることによっても吐き出しトナーを十分感光ドラム1に回収できる場合が多い。そこで、本実施例では、吐き出しトナー量によって、露光手段によって感光ドラムの表面に対して露光するか、帯電ローラ2への印加電圧を0Vにするか、を選択した。具体的には、吐き出しトナー量が多い条件として、トナー印字率が大きいか、連続プリント枚数が多い場合は露光を行った。また、吐き出しトナー量が少ない条件として、トナー印字率が小さく、かつ、連続プリント枚数が少ない場合は、帯電ローラ2への印加電圧を0Vにした。
【0046】
図7は、選択プロセスのフローチャートである。ここで、印字率をn%と定義する。印字率は、1色ベタ画像を100%と定義する。また、連続プリント枚数をm枚と定義する。印字率が所定の値以下であり、かつ、連続プリント枚数が所定の枚数以下である場合は、帯電ローラ2への電圧を約0Vとし、上記条件でない場合は露光を行うようにした。本実施例では、印字率n%を7%以上を所定値以上とし、さらに、連続プリント枚数(所定枚数)mを2枚とした。印字率やプリント枚数の設定は、画像形成装置のスペックに応じたユーザーの実使用状況を考慮して設定すればよい。
【0047】
以上、本実施例では、感光ドラム1の表面電位の調整方法をトナー印字率と連続プリント枚数によって選択することが可能である。吐き出しトナーが多量であると想定される場合は露光によって効率良く感光ドラム1に回収を行う。一方で吐き出しトナーが少量であると想定される場合は帯電ローラ2への印加電圧を0Vとすることによって感光ドラム1の表面電位を調整することで、吐き出しトナーを確実に感光ドラム1に回収しつつ露光手段3の消耗を抑制する。
【0048】
尚、実施例2のように、導電ブラシ23への電圧印加を−1000V、+1000Vの順にそれぞれ250msecずつ交互に、合計3回ずつ印加して、中間転写ベルト上に負極性と正極性のトナーを吐き出しても良い。この場合でも、吐き出しトナーを帯電ローラ2への印加電圧を変更することで、感光ドラム1に吐き出しトナーを確実に回収することが可能である。
【0049】
具体的には、中間転写ベルト上の負極性の吐き出しトナーが一次転写ニップ部に到達するタイミングに同期して、0Vの印加電圧によって帯電された感光ドラム1の領域が一次転写ニップ部に到達すればよい。さらに、中間転写ベルト上の正極性の吐き出しトナーが一次転写ニップ部に到達するタイミングに同期して、−1100Vの印加電圧によって帯電された感光ドラム1の領域が一次転写ニップ部に到達すればよい。
【0050】
(実施例4)
本実施例では、実施例1で記述したように露光を行うと同時に、帯電ローラ2への印加電圧を0Vとした。実施例1で記述したように、帯電ローラ2に約−1100Vを印加した状態で、露光を行うと感光ドラム1表面の電位瞬時に約−100Vになる。これに対して、帯電ローラ2への印加電圧を0Vとして、予め感光ドラム1表面の電位を減衰させた状態で露光を行うことで、感光ドラム1表面の電位は約−100Vよりさらに大きくなる。その結果、吐き出しトナーの回収量も向上する。本実施例での吐き出し工程は、実施例2と同様、導電ブラシ23に約−1000Vと約+1000Vを250msecずつ交互に3回ずつ印加した。図10は、露光、および、帯電ローラ2の印加電圧のタイミングチャートである。実施例2の場合と同様、吐き出しトナーの一次転写部への到達タイミングに合わせて露光と帯電ローラ2への印加電圧のタイミングをそれぞれ調整すればよい。
【0051】
以上、本実施例では、露光を行うと同時に、帯電ローラ2への印加電圧を0Vとすることで感光ドラム1表面の電位を調整し、より吐き出しトナーの回収量を向上することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 感光ドラム
2 第一の帯電部材
10 第一の転写部材
11 第二の転写部材
14 第一の電圧印加手段
18 第二の電圧印加手段
22、23 第二の帯電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体を帯電するための第一の帯電部材と、移動可能な中間転写体と、一次転写部において前記像担持体から前記中間転写体へとトナー像を一次転写させる一次転写部材と、二次転写部において前記中間転写体から転写材へとトナー像を二次転写させる二次転写部材と、前記中間転写体の移動方向において前記一次転写部よりも上流側で、且つ、前記二次転写部よりも下流側で、前記二次転写部で転写材に転写されず前記中間転写体に残留した残留トナーを帯電する第二の帯電部材と、を有し、前記第二の帯電部材により残留トナーを帯電し、前記第一次転写部において前記中間転写体から前記第一の帯電部材に帯電された前記像担持体へ前記残留トナーを転移する第一の工程と、前記第一の工程によって前記第二の帯電部材に付着したトナーを前記中間転写体に転移させる第二の工程と、を実行可能な画像形成装置において、
前記第二の工程を実行して前記第二の帯電部材から前記中間転写体に転移されたトナーが前記一次転写部を通過するタイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は、前記第一の工程において前記第一の帯電部材に帯電された前記像担持体の表面の電位よりも、同極性で絶対値が小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第一の帯電部材にトナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記第二の帯電部材に正極性又は負極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、を有し、
前記第二の工程において、前記第二の電圧印加手段から負極性の電圧を前記第二の帯電部材に印加することで、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に負極性のトナーを転移させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第二の工程における前記タイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は、前記露光手段によって露光されることで、前記第一の工程における前記像担持体の表面の電位よりも絶対値が小さいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置
【請求項4】
前記第一の帯電部材にトナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記第二の帯電部材に正極性又は負極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、を有し、
前記第二の工程において、前記第二の電圧印加手段から負極性の電圧と正極性の電圧を交互に前記第二の帯電部材に印加することで、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に負極性のトナーと正極性のトナーを交互に転移させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第二の工程において、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に転移された負極性のトナーが前記一次転写部を通過するタイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は前記露光手段によって露光されており、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に転移された正極性のトナーが前記一次転写部を通過するタイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は前記露光手段によって露光されていないことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第二の帯電部材は、導電ブラシであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第二の工程における前記タイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は、前記第一の帯電手段によって帯電される量が前記第一の工程において前記像担持体の表面を帯電する量よりも小さいことで、前記第一の工程における前記像担持体の表面の電位よりも絶対値が小さいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置
【請求項8】
前記第一の帯電部材にトナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記第二の帯電部材に正極性又は負極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、を有し、
前記第二の工程において、前記第二の電圧印加手段から負極性の電圧と正極性の電圧を交互に前記第二の帯電部材に印加することで、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に負極性のトナーと正極性のトナーを交互に転移させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第二の工程において、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に転移された負極性のトナーが前記一次転写部を通過するタイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は、前記第一の帯電手段によって帯電される量が前記第一の工程において前記像担持体の表面を帯電する量よりも小さく、前記第二の帯電部材から前記中間転写体に転移された正極性のトナーが前記一次転写部を通過するタイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は前記第一の帯電手段によって帯電される量が前記第一の工程において前記像担持体の表面を帯電する量と同じであることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第二の工程における前記タイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位を、前記第一の工程における前記像担持体の表面の電位よりも絶対値よりも小さくする手段を、前記露光手段で行う場合は、前記第一の工程の前の画像形成の印字率が所定の値以上の値であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記印字率が所定の値より小さく、且つ、画像形成する枚数が所定枚数より少ない場合は、前記第二の工程における前記タイミングで前記一次転写部に到達する前記像担持体の表面の電位は、前記第一の帯電手段によって前記第一の工程における前記像担持体の表面の電位よりも絶対値よりも小さくすることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−98352(P2012−98352A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243804(P2010−243804)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】