説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の製造コストの低廉化を図ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体(18)を有しており、その駆動によって像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部(16)と、ローラ間に掛け回され、その搬送面に記録材を載置して像担持体と転写ローラ(31)との間を走行しており、潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧印加によって、トナー像を記録材に直接的に転写する転写ベルト(50)と、搬送面に付着した残トナーを、静電気力を用いて回収するクリーニング手段(57)と、このクリーニング手段に対し、トナーとは逆極性の電圧であって転写ベルト全体の電位を像担持体よりも高める電圧を印加することにより、トナー像を記録材に直接的に転写させるとともに、残トナーを回収させるバイアス制御手段(39,92)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルトを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が像担持体(例えば感光体ドラム)を予め帯電し、露光器が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この感光体ドラムの表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、現像バイアス電圧を印加すると、予め電荷を帯びたトナーは静電潜像に付着し、トナー像が形成される。
【0003】
そして、用紙は、転写ニップ上流側に配置されたローラ対によって転写ニップまで搬送され、可視化されたトナー像が回転駆動する転写ベルト上の用紙に転写される。当該転写ベルトにはゴム製のベルトを用いる場合が多い。仮に樹脂製のベルトを用いた場合には、テンション機構を別途設けなければならず、また、駆動及び従動ローラ間のアライメント精度が同程度のときには、樹脂製のベルトに比べ、ゴム製のベルトは蛇行し難い等の利点があるからである。
【0004】
ここで、このトナー像が用紙に転写される際に、感光体ドラムから用紙に向けて移動するトナーは、転写ベルトの搬送面にも付着することがあり(例えば、紙間でのかぶりトナーやジャム時のトナー汚れ等)、この搬送面に付着した残トナーが用紙の裏汚れを起こす。そのため、この残トナーを搬送面から除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
詳しくは、上記ゴム製のベルトを用いる場合には、ブレードによる残トナーの掻き取りが非常に難しくなるため、バイアスクリーニングユニットが設置されており、静電潜像に付着するトナーとは逆極性のクリーニングバイアスを転写ベルトに付与すると、残トナーはバイアスクリーニングユニットに回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−49248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、画像形成装置の製造コストの低廉化を図れないという問題がある。
なぜならば、この技術では、トナー像を用紙に転写する際にも、静電潜像に付着するトナーとは逆極性の転写バイアスを転写ローラに印加しており、これでは、画像形成装置には、クリーニングバイアスを生成する高圧基板の他、転写バイアスを生成する他の高圧基板が必要になるからである。
【0008】
換言すれば、上記従来の技術では、転写バイアス及びクリーニングバイアスが同じ極性であるにも拘わらず、それぞれ独立の高圧基板を要しているため、製造コストを抑える点については依然として課題が残されている。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、画像形成装置の製造コストの低廉化を図ることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、像担持体を有しており、像担持体上の静電潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部と、ローラ間に掛け回されたベルト体であり、その搬送面に記録材を載置して像担持体と転写ローラとの間を走行しており、潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧印加によって、トナー像を記録材に直接的に転写する転写ベルトと、搬送面に付着した残トナーを、静電気力を用いて回収するクリーニング手段と、このクリーニング手段に対し、トナーとは逆極性の電圧であって転写ベルト全体の電位を像担持体よりも高める電圧を印加することにより、トナー像を記録材に直接的に転写させるとともに、残トナーを回収させるバイアス制御手段とを具備する。
【0010】
本発明は、記録材への転写に用いるバイアスと残トナーの回収に用いるバイアスとが同じ極性である点に着目したものである。
そして、第1の発明によれば、転写ベルトは、記録材を静電吸着搬送するベルトであり、像担持体の静電潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を転写ベルト側に印加すると、トナー像が記録材に転写される。一方、像担持体から記録材に向けて移動するトナーは、この記録材の他、転写ベルトの搬送面にも付着し得るが、この搬送面に付着した残トナーは、像担持体の静電潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を転写ベルト側に印加すると、クリーニング手段に回収される。
【0011】
そして、本発明のバイアス制御手段は、記録材への転写の際に転写ローラのみに転写用のバイアスを付与するのではなく、転写ローラや転写ベルト走行用のローラを含む転写ベルト全体に、転写用のバイアスを兼ねた残トナー回収用のバイアスを付与している。
具体的には、バイアス制御手段は、クリーニング手段に対し、静電潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧であって、転写ベルト全体の電位が像担持体の電位よりも高くなる電圧を印加させる信号を出力している。
【0012】
これにより、クリーニング手段からの出力電流は、転写ベルトを経て記録材、次いで像担持体に流れ、クリーニング手段から像担持体までの間には、この像担持体に向けて次第に低くなる電圧の勾配が形成されるため、残トナーをクリーニング手段に回収できるし、トナー像も記録材に転写できる。
このように、記録材への転写に用いるバイアスがクリーニング手段から付与される結果、従来のような転写ローラに電圧を印加する高圧基板を省略でき、画像形成装置の製造コストの低廉化を図ることできる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の構成において、像担持体がアースされており、転写ローラや転写ベルト走行用のローラは、いずれもアース位置に対してフロート状態であることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、転写ローラや転写ベルト走行用のローラの総てをGNDに対してフロートの構成としており、よって、転写ベルト全体の電位がほぼ同一に形成され、残トナー回収及び記録材への転写を確実に実施できる。
【0014】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、バイアス制御手段は、クリーニング手段に対し、定電流制御によってトナーとは逆極性の電圧であって、転写ベルト全体の電位を像担持体よりも高める電圧を印加させることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、仮に定電圧制御では、転写ベルトの抵抗値が例えば製造時のばらつきや耐久時の劣化によって変化すると、記録材への転写や残トナーの回収のために必要な電流が得られなくなるという懸念があるが、定電流制御によってクリーニング手段からの出力電流を一定に制御すれば、像担持体に向けて次第に低くなる電圧の勾配を維持できるため、残トナー回収及び記録材への転写をより一層確実に実施できる。
【0015】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、記録材は下方から上方に向けて縦搬送されており、転写ベルトは、この下方側に配置された駆動ローラと、上方側に配置された従動ローラとの間にて傾斜して掛け回されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、記録材を縦搬送する際に転写ベルトを用いており、像担持体及び転写ローラだけで記録材を保持した場合に比して、記録材はより安定した姿勢で次の定着工程に向けて移動でき、画像形成装置の良好な稼動に寄与する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転写バイアスがクリーニング手段から付与されるため、転写バイアスを生成する専用の高圧基板を省略でき、画像形成装置の製造コストの低廉化を図ることができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】コントローラを含めた図1のプリンタの構成図である。
【図3】図1の転写ユニット周辺の説明図である。
【図4】図1の転写ユニットへの電圧印加の説明図である。
【図5】従来の転写ユニットへの電圧印加の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるモノクロ印刷用のプリンタ1の構造が概略的に示されている。図1に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は図1の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0019】
図1に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙(記録材)が積層された状態で収納されている。
【0020】
この図1でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられており、用紙は、給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて縦搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0021】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び転写ユニット30が順番に配置されている。
画像形成部16には1個の感光体ドラム(像担持体)18が設けられ、この感光体ドラム18は回転自在に設置され、ドラムモータによって図1の反時計回りに駆動する。なお、本実施例の感光体ドラム18は、その表面に非晶質シリコン系の層を有したa−Siドラムである。
【0022】
図1でみて感光体ドラム18の左方には露光部15が備えられており、この露光部15からは、レーザ光が感光体ドラム18に向けて照射される。そして、図1に示されるように、感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、転写ユニット30の転写ローラ31やクリーニングユニット25がそれぞれ設けられている。
【0023】
本実施例の帯電器20は、図1でみて感光体ドラム18の左斜め上方に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラや、この帯電ローラの表面を研磨摺擦する摺擦ローラを有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。
現像器24は感光体ドラム18の左斜め下方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラを有する。この現像ローラは現像モータによって図1の時計回りに駆動する。
【0024】
また、露光部15と給紙カセット4との間にはブラック用のトナーコンテナ23が配設されている。
ここで、本実施例の転写ユニット30は、後述のように静電気力で用紙を吸着搬送する転写ベルト50を有し(図2,3)、当該転写ベルト50は感光体ドラム18の斜め下方に配置され、ベルトモータによって図1,3でみて時計回りに走行する。
【0025】
そして、転写ベルト50は、転写ローラ31を介して感光体ドラム18に対して右斜め下方から圧接可能に構成されている。これら転写ベルト50と感光体ドラム18とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。なお、本実施例の転写ローラ31は、金属シャフト(直径8mm程度)上にEPDMの発泡ゴムを形成した直径14mm程度の大きさで構成され、転写ベルト50の裏面を感光体ドラム18に向けて押圧している。
【0026】
また、用紙搬送方向でみて転写ユニット30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排出ローラ35が順番に配置されている(図1)。
本実施例では、転写ユニット30と手差しトレイ3との間に、この転写ユニット30とともに装置本体2に対して引き出し可能な搬送ユニット48を備え、この搬送ユニット48からみて装置本体2の前面側には両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
【0027】
上述した転写ベルト50には、ゴム製のシート材の両端部分を重ね合わせて接合したエンドレス形状のベルトや、継ぎ目を有しないシームレスのベルトが用いられており、図3に示されるように、下方のレジストローラ14側に配置された駆動ローラ52と上方の定着部32側に配置された従動ローラ54との間に平行掛けされ、傾斜した状態で時計回りに走行している。
【0028】
なお、ゴム製のシート材には例えばアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などを使用し、トナーの離型性を高めるべく、その表面にはフッ素系(例えばPTFE)のコーティングが施されている。
また、この転写ベルト50の摩擦帯電特性は、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性に対して逆極性の関係を有している。
【0029】
そして、後述の如く転写ベルト50と感光体ドラム18との間に、その静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加する。つまり、仮に本実施例で使用するトナーがプラス帯電性のトナーである場合には、転写ベルト50に当該トナーとは逆極性の電圧を印加すると、感光体ドラム18上のプラス帯電性のトナーは感光体ドラム18から離れ、基本的には転写ベルト50上の用紙に向かう。
【0030】
ここで、この転写ベルト50の搬送面には、この感光体ドラム18から離れたプラス帯電性のトナーや、感光体ドラム18の表面電位の上昇などで生じたマイナス帯電性のトナーが残トナーとして付着することがある。また、このプラス帯電性のトナーには、転写ベルト50の周回走行によって次第にチャージアップされた同じくプラス帯電性の残トナーも存在し得る。
【0031】
そこで、図3のバイアスクリーニングユニット(クリーニング手段)57が転写ベルト50の搬送面に残留した残トナーを除去している。
本実施例のバイアスクリーニングユニット57は、クリーニングローラ58、ブレード59や高圧基板である図2,4のクリーニングローラ駆動部(バイアス制御手段)39、及びクリーニング補助部60などから構成される。
【0032】
クリーニングローラ58は、転写ベルト50の走行方向で見て従動ローラ54の下流側近傍に配置され(図3)、用紙を載置する搬送面に付着した残トナーを静電気力によって回収して搬送面から除去する。
具体的には、クリーニングローラ58は、金属製(例えばSUS430)で形成されており、転写ベルト50の幅方向に延びて回転可能に構成されている。また、クリーニングローラ58は、この転写ベルト50よりも大きな速度(線速比:例えば1.2〜2.0)で図3の反時計回りに回転し、転写ベルト50の搬送面にトレール方向で当接する。
【0033】
ブレード59はウレタン製であり、転写ベルト50の幅方向に延び、その搬送面とは反対側にてクリーニングローラ58にカウンタ方向で当接する。
また、これらクリーニングローラ58と転写ベルト50との間には、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧が、上記クリーニングローラ駆動部39から印加されるので、転写ベルト50の搬送面からクリーニングローラ58に向かう電界が生じている。
【0034】
これにより、転写ベルト50の搬送面に付着したプラス帯電性のトナーは搬送面から回収され、クリーニングローラ58に付着する。このクリーニングローラ58に付着した残トナーはブレード59で掻き取られ、回収容器に集められる。
一方、クリーニング補助部60は、転写ベルト50の走行方向でみて駆動ローラ52の上流側近傍に配置されており、転写ベルト50の幅方向に延びて回転可能に構成される。
【0035】
このクリーニング補助部60は、その摩擦帯電特性が正規の帯電トナーとは逆極性(本実施例ではマイナス帯電性)の関係を有したブラシで構成される。そして、転写ベルト50と同じ速度(線速比:1.0)にて図3の時計回りに回転し、この転写ベルト50の搬送面にカウンタ方向で当接する。
これにより、搬送面に付着したマイナス帯電性のトナーは、クリーニングローラ58を通過しても、クリーニング補助部60で掻き乱されてプラス帯電性のトナーに総て整えられる。
【0036】
この整えられたプラス帯電性のトナーが付着したままの搬送面は、レジストローラ14の近傍にて用紙を載置し、感光体ドラム18に向かう。
次いで、転写ベルト50に上記トナーとは逆極性の電圧を印加すると、感光体ドラム18上のプラス帯電性のトナーは感光体ドラム18から離れて用紙に向かうが、転写ベルト50の搬送面に付着していたプラス帯電性のトナーは用紙の裏面に向かわず、この搬送面に付着し続ける。
【0037】
そして、バイアスクリーニングユニット57によれば、上記高圧基板であるクリーニングローラ駆動部39によって搬送面からクリーニングローラ58に向かう電界が生じているため、この搬送面に付着し続けたプラス帯電性のトナーを搬送面から回収でき、その後の搬送面には残トナーが蓄積し難くなる。
なお、図3の参照符号55は支持台であり、この支持台55には転写ベルト50上のトナーを検知可能な濃度センサが設置されている。
【0038】
ところで、本実施例では、感光体ドラム18のトナー像を用紙に転写するにあたり、転写ローラ31に電圧を印加するのではなく、駆動ローラ52や従動ローラ54をも含む転写ベルト50全体に電圧を印加している。
詳しくは、上述したクリーニングローラ駆動部39がクリーニングローラ58に付与したバイアスによって、このクリーニングローラ58からの出力電流は転写ベルト50、用紙、そして、感光体ドラム18の順に流れており、転写ベルト50上のプラス帯電性のトナーをその搬送面から回収するのみならず、感光体ドラム18上のプラス帯電性のトナーも用紙に向かわせている。
【0039】
より具体的には、本実施例の転写ベルト50は、その体積抵抗値が6乗〜9乗Ω・cmに設定され、一般の静電吸着ベルトの体積抵抗値10乗〜11乗Ω・cmよりも若干下げられている。
また、図4に示される如く、転写ローラ31の他、駆動ローラ52や従動ローラ54も接地されておらず、接地された感光体ドラム18に対してフロート状態で構成されている。なお、これら駆動ローラ52、従動ローラ54や転写ローラ31は転写ベルト50と導通される。
【0040】
そして、図2のクリーニングバイアス制御部(バイアス制御手段)92は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に転写する場合には、バイアスクリーニングユニット57が転写ベルト50全体の電位を感光体ドラム18の電位よりも高くするためのクリーニングバイアスの付与信号を、クリーニングローラ駆動部39に出力する。
【0041】
また、本実施例のクリーニングバイアス制御部92は、クリーニングローラ58に印加する電圧を定電流制御によって設定している。
これらの結果、残トナーを回収するクリーニングローラ58に対し、例えば約2kVの電圧(マイナス)を印加すると、転写ベルト50全体には例えば約1kVの電圧(マイナス)が印加され、この転写ベルト50の電位は、クリーニングローラ58の電位よりは低いが、感光体ドラム18の電位(0kV)よりは高くなり、感光体ドラム18上のプラス帯電性のトナーも用紙に静電転写することができる。
【0042】
なお、このクリーニングバイアス制御部92は、クリーニングローラ58への電圧印加のタイミングが用紙への転写タイミングよりもやや早くなるように、クリーニングバイアスの付与信号をクリーニングローラ駆動部39に出力している。 一方、用紙を定着部32に向けて送出して静電吸着しない場合には、当該クリーニングバイアス制御部92はクリーニングローラ58への電圧印加を一旦停止する。トナーのチャージアップを避けるためである。なお、転写ベルト50が1周したときに転写・清掃時とは逆のバイアスを付与しても良い。
【0043】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙は搬送ローラ10からレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて転写ユニット30へと送出する。
【0044】
一方、図2の入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、コントローラ90ではレーザ光の照射などを制御する。
詳しくは、感光体ドラム18の表面を除電した後、帯電器20が感光体ドラム18の表面を帯電する。
【0045】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光を照射すると、感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、この静電潜像からブラック用のトナー像が形成される。
このトナー像は転写ベルト50で搬送される用紙に転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナー等はクリーニングユニット25で除去され、また、転写ベルト50の搬送面に付着した残トナー等はバイアスクリーニングユニット57で除去される。
【0046】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。
【0047】
つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、転写ユニット30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
以上のように、本実施例によれば、転写ベルト50は、用紙を静電吸着搬送するベルトであり、感光体ドラム18への巻きつきを容易に防止できるため、用紙の分離性が向上するし、また、次の定着に至るまで吸着させたまま搬送できることから、高速機等の性能安定化に寄与する。
【0048】
ここで、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーとは逆極性の転写バイアスを転写ベルト50側に付与すると、トナー像が用紙に転写される。一方、感光体ドラム18から用紙に向けて移動するトナーは、この用紙の他、転写ベルト50の搬送面にも付着し得るが、この搬送面に付着した残トナーは、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーとは逆極性のクリーニングバイアスを転写ベルト50側に付与すると、バイアスクリーニングユニット57に回収される。
【0049】
そして、本実施例のクリーニングバイアス制御部92は、用紙への転写の際に転写ローラ31のみに転写バイアスを付与するのではなく、転写ローラ31や駆動ローラ52及び従動ローラ54を含む転写ベルト50全体に、転写バイアスを兼ねたクリーニングバイアスを付与している。
具体的には、クリーニングバイアス制御部92は、バイアスクリーニングユニット57に対し、静電潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧であって、転写ベルト50全体の電位が感光体ドラム18の電位よりも高くなる電圧を印加させる信号をクリーニングローラ駆動部39に出力している。
【0050】
これにより、クリーニングローラ58からの出力電流は、転写ベルト50を経て用紙、次いで感光体ドラム18に流れ、バイアスクリーニングユニット57から感光体ドラム18までの間には、この感光体ドラム18に向けて次第に低くなる電圧の勾配が形成されるため、残トナーをバイアスクリーニングユニット57に回収できて用紙の裏汚れを防止できるし、トナー像も用紙に転写できる。
【0051】
そして、従来のような転写ローラ31のみに電圧を印加する高圧基板を省略できる。
この点について詳述する。理解を容易にすべく同等の機能を奏する構成は同一の符号を付すと、図5には従来の転写ユニット30が示されており、当該構成の場合には、高圧基板38が、転写ローラ31と感光体ドラム18との間に、その静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加すると、感光体ドラム18上のトナーは感光体ドラム18から離れ、転写ベルト50上の用紙に向かう。
【0052】
一方、この図5では、感光体ドラム18の他、駆動ローラ52や従動ローラ54も接地され、高圧基板39が、クリーニングローラ58と駆動ローラ52や従動ローラ54との間に、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加しており、転写ベルト50の搬送面に残留した残トナーをクリーニングローラ58に回収している。
【0053】
すなわち、図5の構造によれば、転写バイアスを付与する高圧基板38と、クリーニングバイアスを付与する高圧基板39との2個の高圧基板が必要になってしまう。
しかしながら、上述した図4に示される本実施例の構造によれば、転写ベルト50の抵抗値の設定などと相俟って、用紙への転写バイアスがバイアスクリーニングユニット57から付与される。
【0054】
この結果、転写ベルト50にクリーニングバイアスを付与する高圧基板であるクリーニングローラ駆動部39だけを有していれば、図4の高圧基板38を省略でき、プリンタ1の製造コストの低廉化を図ることできる。
また、転写ローラ31や駆動及び従動ローラ52,54の総てをGNDに対してフロートの構成としており、よって、転写ベルト50全体の電位がほぼ同一に形成され、残トナー回収及び用紙への転写を確実に実施できる。
【0055】
さらに、仮に定電圧制御では、転写ベルト50の抵抗値が例えば製造時のばらつきや耐久時の劣化によって変化すると、用紙への転写や残トナーの回収のために必要な電流が得られなくなるという懸念がある。しかし、定電流制御によってクリーニングローラ58からの出力電流を一定に制御すれば、感光体ドラム18に向けて次第に低くなる電圧の勾配を維持できるため、残トナー回収及び用紙への転写をより一層確実に実施できる。
【0056】
さらにまた、用紙を縦搬送する際に転写ベルト50を用いており、感光体ドラム18及び転写ローラ31だけで用紙を保持した場合に比して、用紙はより安定した姿勢で次の定着部32に向けて移動でき、プリンタ1の良好な稼動に寄与する。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0057】
例えば、上述の実施例では、プラス帯電性のトナーを正規の帯電トナーとして説明したが、本発明はマイナス帯電のトナーを正規の帯電トナーする場合にも適用可能である。
また、上記実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
【0058】
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、画像形成装置の製造コストの低廉化を図ることができるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0059】
1 プリンタ(画像形成装置)
16 画像形成部
18 感光体ドラム(像担持体)
30 転写ユニット
31 転写ローラ
39 クリーニングローラ駆動部(バイアス制御手段)
50 転写ベルト
52 駆動ローラ
54 従動ローラ
57 バイアスクリーニングユニット(クリーニング手段)
90 コントローラ
92 クリーニングバイアス制御部(バイアス制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を有しており、前記像担持体上の静電潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部と、
ローラ間に掛け回されたベルト体であり、その搬送面に記録材を載置して前記像担持体と転写ローラとの間を走行しており、前記潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧印加によって、前記トナー像を前記記録材に直接的に転写する転写ベルトと、
前記搬送面に付着した残トナーを、静電気力を用いて回収するクリーニング手段と、
このクリーニング手段に対し、前記トナーとは逆極性の電圧であって前記転写ベルト全体の電位を前記像担持体よりも高める電圧を印加することにより、前記トナー像を前記記録材に直接的に転写させるとともに、前記残トナーを回収させるバイアス制御手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記像担持体はアースされており、前記転写ローラや前記転写ベルト走行用のローラは、いずれもアース位置に対してフロート状態であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記バイアス制御手段は、前記クリーニング手段に対し、定電流制御によって前記トナーとは逆極性の電圧であって、前記転写ベルト全体の電位を前記像担持体よりも高める電圧を印加させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記記録材は下方から上方に向けて縦搬送されており、前記転写ベルトは、前記下方側に配置された駆動ローラと、前記上方側に配置された従動ローラとの間にて傾斜して掛け回されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98364(P2012−98364A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243931(P2010−243931)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】