説明

画像形成装置

【課題】潜像に筋状のムラが発生することを回避することができる安価な画像形成装置を提供する。
【解決手段】各領域タイミングの期間は、パルス信号PLSの周期TPの複数倍を超える長さであり、パルス信号調整部13は、副走査方向に連続する複数の走査ラインLp,Lq,Lrにおいて、各領域タイミングTi,Tjに対するパルス信号PLSの相対的な位置関係が、互いに異なる位置関係になるようにパルス信号PLSのタイミングを調節すると共に、走査ライン毎に、デューティー比DTYを変化させるタイミングを互いに異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、当該画像形成装置における走査時の光量を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置に設けられた露光装置において、集光レンズやミラーを介したレーザー光を感光体の周面上に一定速度で走査させることによって、感光体の周面上に潜像を形成する技術が知られている。このとき、感光体の周面に到達するまでに通過する集光レンズに対するレーザー光の入射角や集光レンズの厚み等、光学素子の特性に起因して、レーザー光の光量が感光体の周面上の走査位置によって異なることが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、像担持体(感光体)の主走査ラインを複数領域に分割し、各領域に対応した光量補正データに基づき光源の出力光量を調整する装置であって、補正データ(補正値)を基に領域毎のパルス変調信号(パルス信号)のデューティ値(デューティー比)を変化させ、変化させたデューティ値に従って光量調整用のパルス変調信号を出力し、当該光量調整用のパルス変調信号をローパスフィルタ回路で平滑化したアナログ電圧(アナログ信号)を用いて出力光量を調整するときに、主走査ラインにおける各領域の分割位置を変更する技術が記載されている。これによって、主走査ラインにおける各領域の分割位置において、デューティ値の大きな変化に起因して光量調整用の信号レベルに大きな段差が発生することによって濃度ムラが発生しても、当該濃度ムラの発生位置を拡散し、目視した際にスジ上のムラとなって視覚的に認識(知覚)されることを低減している。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2には、PWM(Pulse Width Modulation)出力(パルス信号)を平滑化回路にて平滑して光量調整の信号とする技術が記載されている。当該技術では、ライン周期上に設けられた複数のポイントのうちの任意のポイントを選択後、当該ポイントに隣接するポイントにおけるPWM幅設定値の差分値と当該選択されたポイントから次のポイントまでの距離とに基づいて、1クロック毎にPWMデューティ(デューティー比)の変化量を算出し、これを用いて1クロック毎にPWM出力をわずかずつ変化させることによって、ある領域の境界における大幅な変化すなわち段差の発生をなくす技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−262344号公報
【特許文献2】特開2005−262509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術を適用した場合であっても、パルス信号をローパルフィルタで平滑化するときに、平滑が不十分なためにリップルが生じ、複数の走査ラインに渡って、各分割された領域内におけるリップルの発生位置が一致することによって、筋状のムラが発生する虞があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の技術を適用するには、1クロック毎にパルス信号のデューティー比を細かく調整可能な高価な回路を設ける必要が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コストが上昇する虞を低減しつつ、潜像に筋状のムラが発生する虞を低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、レーザー光の走査によって潜像が形成される周面を有する感光体と、アナログ信号に応じた光量のレーザー光を出力するレーザー出力部と、前記レーザー出力部から出力されたレーザー光によって前記感光体の周面を主走査方向に1ラインずつ走査する光源部と、前記感光体の周面を前記主走査方向に複数に分割するように設けられた複数の領域に対応付けて予め定められた補正値をそれぞれ記憶する補正値記憶部と、前記光源部による前記レーザー光の走査が前記各領域に対して行われるタイミングである各領域タイミングに対応して、前記各領域に対応して前記補正値記憶部により記憶されている補正値に基づいて前記アナログ信号を生成する光量調整部とを備え、前記光量調整部は、周期的にパルス信号を出力するパルス信号出力部と、前記各領域タイミングと対応して、前記各領域に対応する前記補正値に基づいて前記パルス信号のデューティー比を調整すると共に前記パルス信号のタイミングを調節するパルス信号調整部と、前記パルス信号出力部から出力されたパルス信号を平滑することによって、前記アナログ信号を生成する平滑部とを備え、前記各領域タイミングの期間は、前記パルス信号の周期の複数倍を超える長さであり、前記パルス信号調整部は、副走査方向に連続する複数の走査ラインにおいて、前記各領域タイミングに対する前記パルス信号の相対的な位置関係が、互いに異なる位置関係になるように前記パルス信号のタイミングを調節すると共に、前記走査ライン毎に、前記デューティー比を変化させるタイミングを互いに異ならせる。
【0010】
この構成によれば、副走査方向に連続する複数の走査ラインにおいて、各領域タイミングに対するパルス信号の相対的な位置関係及びパルス信号のデューティー比を変化させるタイミングをいずれも調整しない場合に比して、複数の走査ラインにおける各領域の境界において、補正値の差異に起因して生じるアナログ信号の段差の発生位置が異なる位置に散在するようになる。これによって、潜像における複数の走査ライン上の各領域の境界に筋状のムラが発生する虞を低減することができる。
【0011】
また、パルス信号の平滑が不十分なために生じるリップルのタイミングが、複数の走査ライン間で異なる位置になるので、リップルに起因して筋状のムラが生じる虞が低減される。
【0012】
また、デューティー比が変化するタイミングが走査ライン間で異なることによって、各走査ライン間で、主走査方向の同一タイミングにおけるデューティー比は、変化前後のデューティー比が混在するようになり、人の目では平均化されて変化が滑らかに見える。したがって、デューティー比の調節精度を高める必要がないので、高精度の回路を用いる必要がない。このため、コストが増大する虞を低減することができる。
【0013】
また、前記パルス信号調整部は、前記走査ライン毎に、前記各領域の境界におけるパルス信号のデューティー比を、前記境界の直前の領域に対応する補正値に対応するアナログ信号が得られるデューティー比から、前記境界の直後の領域に対応する補正値に対応するアナログ信号が得られるデューティー比へ向かって徐々に変化させることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数の走査ラインにおける各領域の境界において、補正値の差異に起因して生じるアナログ信号の段差が徐々に変化するようになる。このため、複数の走査ラインにおける各領域の境界において筋状のムラが発生する虞が低減される。
【0015】
また、前記パルス信号調整部は、前記複数の走査ラインのうち少なくとも一つよりも、前記パルス信号のタイミングが遅れた走査ラインを走査する場合において、前記各領域タイミングから次の領域タイミングに移行するとき、前記次の領域タイミングに対応する最初の前記パルス信号のデューティー比を、前記次の領域タイミングの一つ前の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比と等しい値に調整することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、パルス信号のタイミングが遅れた走査ラインを含む複数の走査ラインにおいて、各領域の境界に隣接する前後の領域のうち後の領域に対応する領域タイミングの最初のパルス信号のデューティー比が、当該隣接する前後の領域のうち前の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比と、当該隣接する前後の領域のうち後の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比とで混在するようになる。
【0017】
これによって、当該複数の走査ラインにおける各領域の境界において、複数の走査ラインに対応して生成されるアナログ信号のレベルの主走査方向に同一のタイミング同士の平均値が、徐々に変化するようになる。
【0018】
また、前記パルス信号調整部は、前記複数の走査ラインのうち少なくとも一つよりも、前記パルス信号のタイミングが進んだ走査ラインを走査する場合において、前記各領域タイミングから次の領域タイミングに移行するとき、前記次の領域タイミングの一つ前の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比を、前記次の領域タイミングに対応する最初の前記パルス信号のデューティー比と等しい値に調整することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、パルス信号のタイミングが進んだ走査ラインを含む複数の走査ラインにおいて、各領域の境界に隣接する前後の領域のうち前の領域に対応する領域タイミングの最後のパルス信号のデューティー比が、当該隣接する前後の領域のうち後の領域タイミングにおける最初のパルス信号のデューティー比と、当該隣接する前後の領域のうち前の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比とで混在するようになる。
【0020】
これによって、当該複数の走査ラインにおける各領域の境界において、複数の走査ラインに対応して生成されるアナログ信号のレベルの主走査方向に同一のタイミング同士の平均値が、徐々に変化するようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、潜像における複数の走査ライン上の各領域の境界に筋状のムラが発生する虞を低減することができる。また、パルス信号の平滑が不十分なために生じるリップルに起因して筋状のムラが生じる虞が低減される。また、コストが増大する虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例である複写機の概略構造図。
【図2】複写機の電気的構成の一例を示すブロック図。
【図3】光走査装置の構成の一例を説明するための説明図。
【図4】各領域と各領域タイミングと補正値記憶部に記憶されている補正値との関係の一例を示す説明図。
【図5】パルス信号調整部によってパルス信号のタイミング及びデューティー比を調整する制御方法の一例を示す説明図。
【図6】感光体ドラムを露光するレーザー光の光量を補正する制御の一例を示すフローチャート。
【図7】アナログ信号のリップルの一例を示す説明図。
【図8】パルス信号調整部によってパルス信号のタイミング及びデューティー比を調整する制御方法の図5とは別の一例を示す説明図。
【図9】パルス信号調整部によってパルス信号のタイミング及びデューティー比を調整する制御方法の図5及び図7とは別の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の一例である複写機の概略構造図である。図2は、図1に示す複写機1の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、複写機1は、本体部8と、本体部8の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部8の上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6と、本体部8の内部に配設された制御部10と、を備えている。
【0025】
複写機1のフロント部には、操作パネル部47が備えられている。操作パネル部47は、表示部473と、操作キー部476とを備えている。表示部473は、例えばタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等によって構成されている。操作キー部476は、例えばユーザーが印刷実行指示を入力するためのスタートキーや、印刷部数等を入力するためのテンキー等の各種キースイッチを備えている。
【0026】
原稿読取部5は、露光ランプ511及びCCD(Charge Coupled Device)512等(図2)からなるスキャナー部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52及び原稿読取スリット53と、を備えている。
【0027】
スキャナー部51は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部10へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動され、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを制御部10へ出力する。
【0028】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出する原稿搬送機構63と、を備えている。
【0029】
本体部8は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から用紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部40へ搬送する給紙ローラー412と、給紙カセット461から搬出されてきた用紙に画像を形成する画像形成部40と、画像が形成された用紙が排出される排出トレイ48と、装置全体の動作制御を司る制御部10と、を備えている。
【0030】
画像形成部40は、用紙搬送部41と、光走査装置42と、感光体ドラム(感光体)43と、現像部44と、転写部45と、定着部46と、を備えている。
【0031】
用紙搬送部41は、画像形成部40内の用紙搬送路中に設けられ、給紙ローラー412によって搬送されてきた用紙を感光体ドラム43に供給する搬送ローラー413や、用紙をスタックトレイ3まで搬送する搬送ローラー414や、用紙を排出トレイ48まで搬送する搬送ローラー415等を備えている。
【0032】
光走査装置42は、制御部10から出力された画像データに基づいてレーザー光を出力し、当該レーザー光によって感光体ドラム43を露光することで、感光体ドラム43上に静電潜像を形成する。
【0033】
現像部44は、感光体ドラム43上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。転写部45は、感光体ドラム43上のトナー像を用紙に転写する。定着部46は、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる。
【0034】
制御部10は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、画像処理等の所定の処理を高速処理可能に構成された専用ハードウェアであるASIC(Application Specific Integrated Circuits)、及び、これらの周辺回路等を備えている。
【0035】
図2に示すように、制御部10には、原稿読取部5、画像形成部40、及び操作パネル部47が接続されている。制御部10は、ROM等に記憶された制御プログラムをCPUによって実行することによって、装置内の各部の動作を制御し、原稿画像の複写を実行する。
【0036】
具体的には、制御部10は、原稿読取部5によって原稿から読み取られた画像データに応じたレーザー光の出力を光走査装置42に行わせることによって、感光体ドラム43上に潜像の形成を行わせた後、現像部44、転写部45、定着部46、及び用紙搬送部41を用いて用紙上に画像の形成を行わせる。
【0037】
以下では、制御部10によって行われる制御のうち、感光体ドラム43を露光するレーザー光の光量を補正する制御について説明する。当該レーザー光の光量を補正する制御に関連して、制御部10は、特に、画像信号出力部11、補正値記憶部12、及びパルス信号調整部13として機能する。尚、画像信号出力部11、補正値記憶部12、及びパルス信号調整部13の詳細については後述する。
【0038】
図3は、光走査装置42の構成の一例を説明するための説明図である。図3に示すように、光走査装置42は、光源部29と、光センサー21と、DA(デジタルアナログ)コンバーター22と、レーザー制御部23と、を備えている。
【0039】
光源部29は、レーザー光源91と、コリメータレンズ92と、プリズム93と、ポリゴンミラー94と、f−θレンズ95と、を備えている。
【0040】
レーザー光源91は、後述のレーザー制御部23から供給される電力に応じた光量のレーザー光を出力する。
【0041】
コリメータレンズ92は、レーザー光源91から出力されるレーザー光を集光する。プリズム93は、コリメータレンズ92を透過した光を平行光に変換し、ポリゴンミラー94に向けて放出する。
【0042】
ポリゴンミラー94は、入射光を感光体ドラム43に向けて反射させる反射面を複数有し、図略の駆動モーターの駆動力によって例えば図3の矢印方向に一定速度で回転する。
【0043】
f−θレンズ95は、ポリゴンミラー94により反射されたレーザー光を感光体ドラム43の周面上に所定の径を有するスポット状に結像し、感光体ドラム43の周面を、感光体ドラム43を回転可能に軸支する支持軸43aが延びる方向である主走査方向に等速度で走査させる。
【0044】
光センサー21は、画像の走査線における開始側の、感光体ドラム43の端部付近に設けられている。光センサー21は、レーザー光を受光すると、当該レーザー光を受光したことを示す検知信号BDを制御部10に向けて出力する。
【0045】
DAコンバーター22は、パルス信号出力部24と平滑部25とを備え、レーザー光の光量を補正するためのアナログ信号CVAをレーザー制御部23に向けて出力する。
【0046】
パルス信号出力部24は、後述のパルス信号調整部13から指示されたタイミングで、図略の基準発振器から発振される基準クロック信号を分周した予め定められた周期の、後述のパルス信号調整部13から指示入力されたデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期的に出力する。
【0047】
平滑部25は、パルス信号出力部24から出力されたパルス信号PLSをローパスフィルター等で平滑することによってアナログ信号CVAを生成し、当該生成したアナログ信号CVAをレーザー制御部23に向けて出力する。
【0048】
レーザー制御部23は、画像信号出力部11から出力された、感光体ドラム43の周面に形成する潜像に対応する画像データに応じた信号レベルの画像信号VSAが入力されると、当該画像信号VSAの信号レベルに応じた電力をレーザー光源91へ供給する。これによって、画像データに応じた光量のレーザー光をレーザー光源91に出力させる。また、レーザー制御部23は、DAコンバーター22から出力されたアナログ信号CVAに応じて、レーザー光源91への供給電力を調整することによって、レーザー光の光量を補正する。つまり、本発明に係るレーザー出力部の一例は、レーザー光源91とレーザー制御部23とを備えて構成されている。
【0049】
以下では、画像信号出力部11、補正値記憶部12、及びパルス信号調整部13によって、感光体ドラム43を露光するレーザー光の光量を補正する制御について、図4及び図5を用いて詳述する。
【0050】
画像信号出力部11は、原稿読取部5から出力された画像データのうち、感光体ドラム43の周面に形成する潜像の画像データに応じた信号レベルの画像信号VSAをレーザー制御部23に向けて出力する。
【0051】
補正値記憶部12は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子を用いて構成されている。感光体ドラム43の周面上を走査するときのレーザー光の光量は、f−θレンズ95に対する入射角やf−θレンズ95の厚み等の光学特性に起因して、走査位置に応じて異なる光量となることが知られている。
【0052】
図4は、感光体ドラム43の周面におけるレーザー光の走査位置を分割して生成される各領域A1〜A9と、レーザー光を主走査方向に1ライン分走査する周期(ライン周期)において、レーザー光の走査が各領域A1〜A9に対して行われるタイミングである各領域タイミングT1〜T9と、補正値記憶部12に記憶されている補正値D1〜D9との関係の一例を示している。横軸は、感光体ドラム43の周面における主走査方向の走査位置を示し、縦軸は、各領域A1〜A9にそれぞれ対応付けられた補正値D1〜D9を示している。
【0053】
補正値記憶部12には、図4に示すように、感光体ドラム43の周面におけるレーザー光の走査位置を、主走査方向に並ぶ予め定められた数(図4においては、9)の領域A1〜A9に分割しておき、その分割した各領域A1〜A9に対応付けて、レーザー光の光量を補正するための予め定められた補正値D1〜D9がそれぞれ記憶されている。尚、各領域A1〜A9に対応付けられる補正値は、例えば複写機1の製品出荷前の試験運転等による、f−θレンズ95の光学特性の実測値に基づいて決定される。
【0054】
パルス信号調整部13は、レーザー光を主走査方向に1ライン分走査する周期(ライン周期)において、レーザー光の走査が各領域A1〜A9に対して行われるタイミングである領域タイミングT1〜T9と対応して、各領域A1〜A9に対応する補正値D1〜D9に基づいて、所定のパルス周期TPで周期的に出力されるパルス信号PLSのデューティー比DTYを調整すると共に、パルス信号PLSの出力タイミングを調節する。
【0055】
図5は、パルス信号調整部13によってパルス信号PLSのタイミング及びデューティー比DTYを調整する制御方法を説明するための説明図である。図5は、副走査方向に連続する複数の走査ラインLp,Lq,Lrをそれぞれ走査する場合において、領域タイミングTiから領域タイミングTjへと走査位置を移動させるときにおける、パルス信号PLSのデューティー比DTYの時系列変化を示している。
【0056】
例えば図5に示すように、パルス信号調整部13は、複数の走査ラインLp,Lq,Lrをそれぞれ走査するときのパルス信号PLSにおいて、各領域タイミングTi,Tjを走査するときのパルス信号PLSの相対的な位置関係が、互いに異なる位置関係になるようにパルス信号PLSのタイミングを調整する。
【0057】
尚、図5は、パルス信号調整部13によって指定されたデューティー比DTY、且つ、周期TPのパルス信号PLSが、パルス信号出力部24から出力されている様子を示している。各領域タイミングTi,Tjの期間は、例えば10マイクロ秒であるのに対して、パルス信号PLSの周期TPは例えば10ナノ秒〜100ナノ秒である。つまり、パルス信号PLSの周期TPは、各領域タイミングTi,Tjの期間に比して非常に短く、各領域タイミングTi,Tjの期間内でそれぞれ複数個のパルスが出力されている。
【0058】
図5では、パルス信号調整部13は、矢印Aに示すように、走査ラインLpにおけるパルス信号PLSの出力タイミングに比して、走査ラインLqのパルス信号PLSの出力タイミングを予め定められた時間だけ遅らせている。一方、パルス信号調整部13は、矢印Bに示すように、走査ラインLpにおけるパルス信号PLSの出力タイミングに比して、走査ラインLrのパルス信号PLSの出力タイミングを予め定められた時間だけ早めている。
【0059】
尚、パルス信号PLSの出力タイミングの調整方法は、これに限定する趣旨ではない。例えば、パルス信号PLSの出力タイミング(位置)をずらす時間(ずらし量)を、パルス信号PLSの周期TPよりも短い時間で、予め所定の設定数、例えば3つ定めておき、1番目の走査ラインは第一のずらし量、2番目の走査ラインは第二のずらし量、3番目の走査ラインは第三のずらし量、出力タイミングを遅らせ、4番目の走査ラインは再び第一のずらし量、5番目の走査ラインは第二のずらし量、6番目の走査ラインは第三のずらし量、出力タイミングを遅くする等してもよい。これにより、所定の設定数の走査ライン毎に、同一のずらし量が周期的に用いられるようにしてもよい。設定数は、3に限らず、2でもよく4以上であってもよい。
【0060】
また、パルス信号調整部13は、パルス信号PLSの出力タイミングを調整すると共に、走査ライン毎に、デューティー比DTYを変化させるタイミングが互いに異なるように調整する。
【0061】
具体的には、例えば図5に示すように、パルス信号調整部13は、走査ライン毎に、各領域の境界におけるパルス信号PLSのデューティー比DTYを、境界の直前の領域(領域タイミングTi)に対応する補正値に対応するアナログ信号VSAが得られるデューティー比DTYから、境界の直後の領域(領域タイミングTj)に対応する補正値に対応するアナログ信号VSAが得られるデューティー比DTYへ向かって徐々に変化させる。
【0062】
図5では、領域タイミングTiと領域タイミングTjとの境界について、領域タイミングTi(直前のタイミング)に対応する領域に対応付けて補正値記憶部12に記憶されている補正値に対応するアナログ信号VSAが得られるデューティー比DTYは、50%であり、領域タイミングTj(直後のタイミング)に対応する領域に対応付けて補正値記憶部12に記憶されている補正値に対応するアナログ信号VSAが得られるデューティー比DTYは、60%である例を示している。
【0063】
パルス信号調整部13は、走査ラインLpを走査するときのパルス信号PLSにおいて、補正値に基づいて定められた、領域タイミングTiに対応する領域における最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYである50%を、例えば3%増加させて53%に変更する。また、パルス信号調整部13は、補正値に基づいて定められた、領域タイミングTjに対応する領域における最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYである60%を、例えば3%減少させて57%に変更する。
【0064】
同様にして、パルス信号調整部13は、走査ラインLq,Lrを走査するときのパルス信号PLSにおいても、補正値に基づいて定められた、領域タイミングTiに対応する領域における最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYである50%を53%に変更し、補正値に基づいて定められた、領域タイミングTjに対応する領域における最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYである60%を57%に変更する。
【0065】
つまり、パルス信号調整部13は、全ての走査ラインLp,Lq,Lrを走査するときに、領域タイミングTiに対応する領域における最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYを53%に変更し、領域タイミングTjに対応する領域における最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYを57%に変更しているが、当該変更と共に、複数の走査ラインLp,Lq,Lrを走査するときのパルス信号PLSの出力タイミングを調整することによって、走査ライン毎に、デューティー比DTYを変化させるタイミングが互いに異なるように調整する。
【0066】
これによって、各領域タイミングTi,Tjの期間におけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比DTYの平均値は、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSが、周期TPの1周期分以上設けられ、50%、53%、57%、60%と徐々に変化するようになる。そして、当該調整されたパルス信号PLSが平滑部25に入力されることによって、走査ラインLp、Lq、Lrをそれぞれ走査するときのアナログ信号CVAのレベルの主走査方向に同一のタイミング同士の平均値が、領域タイミングTiに対応する領域と領域タイミングTjに対応する領域の境界において、デューティー比の変化と同様に、徐々に変化するようになる。これによって、人の目では、その境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見える。
【0067】
つまり、本発明に係る光量調整部の一例は、パルス信号調整部13と、パルス信号出力部24と、平滑部25と、を備えて構成されている。
【0068】
図6は、感光体ドラム43を露光するレーザー光の光量を補正する制御の一例を示すフローチャートである。以下では、図6を用いて、感光体ドラム43を露光するレーザー光の光量を補正する制御の流れについて説明する。
【0069】
ユーザーによる操作パネル部47の操作等によって複写機能の実行指示が入力され、制御部10によって、原稿読取部5から出力された画像データに従って画像形成部40による画像の形成動作が開始されると(S1)、レーザー制御部23は、予め定められた光量のレーザー光をレーザー光源91によって出力させる(S2)。
【0070】
そして、制御部10によって光センサー21から出力された検知信号BDが受信されると(S3;YES)、パルス信号調整部13は、当該走査対象の走査ラインにおけるパルス信号PLSの出力タイミングを調整する指示を示す制御信号をパルス信号出力部24に入力する(S4)。
【0071】
次に、パルス信号調整部13は、各領域に対応付けられた補正値を補正値記憶部12から取得し(S5)、各領域タイミングTi,Tjの期間において、最初と最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYを、ステップS5で取得した補正値に対応するデューティー比DTYから所定量増減する等して、直前の領域タイミングTiに対応する領域に対応付けられた補正値に対応するアナログ信号VSAが得られるデューティー比DTYから、直後の領域タイミングTjに対応する領域に対応する補正値に対応するアナログ信号VSAが得られるデューティー比DTYへ向かって徐々に変化させるように、デューティー比DTYを調整する指示を示す制御信号をパルス信号出力部24に入力する(S6)。
【0072】
そして、パルス信号出力部24は、ステップS4及びステップS6でパルス信号調整部13から入力された制御信号が示す指示に従って、指示されたタイミングで、指示されたデューティー比DTYのパルス信号PLSを平滑部25に向けて出力する(S7)。そして、平滑部25は、パルス信号出力部24から入力されたパルス信号PLSを平滑してアナログ信号CVAをレーザー制御部23に向けて出力する(S8)。
【0073】
レーザー制御部23は、画像信号出力部11から出力された、原稿読取部5から出力された画像データのうち、感光体ドラム43の周面において各領域に形成する画像データに応じた信号レベルの画像信号VSAを、当該各領域に対応する領域タイミングの期間中に、ステップS8で入力されたアナログ信号CVAの信号レベルに応じて補正し、レーザー光源91から当該補正した信号レベルに応じた光量のレーザー光を出力させる(S9)。
【0074】
そして、制御部10は、全ライン分のレーザー光の走査が完了したか否かを判定し(S10)、全ライン分の走査が完了していないと判定した場合には(S10;NO)、次の走査ラインの走査を行わせるべく、感光体ドラム43を所定回転角度だけ回転駆動させて、ステップS2に移行する。
【0075】
一方、制御部10は、ステップS10において、全ライン分のレーザー光の走査が完了したと判定した場合には(S10;YES)、光源部29による感光体ドラム43の露光を終了するとともに、感光体ドラム43を露光するレーザー光の光量の補正の制御を終了する。
【0076】
図7(a)及び図7(b)は、複数の走査ラインLp,Lq,Lrをそれぞれ走査するときの各領域タイミングの期間における、パルス信号PLSとそのパルス信号PLSが平滑されたアナログ信号CVAに生じるリップルの一例を示している。図7(a)及び図7(b)において、破線部はパルス信号PLSを示し、実線部は、パルス信号PLSを平滑したアナログ信号CVAを示している。
【0077】
また、図7(a)は、副走査方向に連続する複数の走査ラインLp,Lq,Lrにおいてパルス信号PLSの相対的な位置関係を調整しない場合のアナログ信号CVAのリップルの発生位置と、平滑部25によるパルス信号PLSの平滑度合いを変更した場合のリップルの大きさの変化を示している。図7(a)において、一点鎖線部は、実線部よりも平滑度合いを強くした場合のアナログ信号CVAを示している。
【0078】
一方、図7(b)は、副走査方向に連続する複数の走査ラインLp,Lq,Lrにおいてパルス信号PLSの相対的な位置関係を異ならせた場合のアナログ信号CVAのリップルの発生位置を図7(b)の上部に示している。図7(b)の下部は、図7(a)の上部に示したアナログ信号CVAを人の目で見たときの様子を示している。
【0079】
例えば、図7(a)に示すように、アナログ信号CVAのリップルは、平滑部25によるパルス信号PLSの平滑が不十分であるために生じる。しかし、一点鎖線部に示すように、平滑度合いを強くしてリップルの大きさを低減すると、本来想定していた実線部に示すアナログ信号CVAの信号レベルからかけ離れる(補正の応答性が悪化する)虞がある。
【0080】
しかし、第一実施形態の構成によれば、図7(b)に示すように、パルス信号PLSの平滑が不十分なために生じるリップルの発生タイミングが、複数の走査ラインLp,Lq,Lr間で異なる位置になるので、リップルが主走査方向の同一位置に発生することによって筋状のムラが生じる虞が低減される。
【0081】
また、例えば、図5において矢印A及び矢印Bで示すように、パルス信号PLSの位置が走査ライン間で異ならされているので、図5において矢印C及び矢印Dで示すように、領域タイミングTiと領域タイミングTjの境界において、デューティー比DTYが変化するタイミングが走査ライン間でずれる。これによって、パルス信号PLSを平滑して得られるアナログ信号CVAが不連続に変化する位置も走査ライン間でずれることとなり、当該アナログ信号CVAの不連続な変化が走査ライン間で主走査方向の同一位置に発生することによって筋状のムラが発生する虞が、低減される。
【0082】
また、デューティー比DTYが変化するタイミングが走査ライン間で異なることによって、各走査ライン間で、主走査方向の同一タイミングにおけるデューティー比DTYは、変化前後のデューティー比DTYが混在するようになり、人の目では平均化されて変化が滑らかに見える。したがって、デューティー比DTYの調節精度を高める必要がないので、高精度の回路を用いる必要がない。このため、コストが増大する虞を低減することができる。
【0083】
尚、パルス信号調整部13が、パルス信号PLSの出力タイミングを調整すると共に、走査ライン毎に、デューティー比DTYを変化させるタイミングが互いに異なるように調整する方法は、上記図5に示した具体例に限定する趣旨ではない。
【0084】
例えば、2つの走査ラインLp,Lqを走査するときの、領域タイミングTiに対応する領域におけるパルス信号PLSのデューティー比DTYを、50%、50%、50%、51%、50%、50%、50%、51%・・・となるように、4回に1回デューティー比を変化させることを繰り返すように構成した場合、パルス信号PLSのデューティー比DTYの平均値は、50.25%であり、4回に1回の電圧変動が発生することになる。
【0085】
この場合に、パルス信号調整部13は、例えば、走査ラインLpを走査するときは、領域タイミングTiに対応する領域におけるパルス信号PLSのデューティー比DTYを、50%、50%、50%、50%、50%、50%、50%、50%、50%・・・として、デューティー比DTYを変化させるタイミングを設けないようにし、走査ラインLqを走査するときは、領域タイミングTiに対応する領域におけるパルス信号PLSのデューティー比DTYを、50%、51%、50%、51%、50%、51%、50%、51%、50%・・・と、2回に1回デューティー比DTYを変更するように構成してもよい。
【0086】
つまり、デューティー比を51%に変化させるタイミングを、ある走査ラインでは0回に、別の走査ラインでは、2回に1回の繰り返しとなるようにして、走査ライン毎に、デューティー比DTYを変化させるタイミングが互いに異なるように構成してもよい。
【0087】
この場合、走査ラインLpを走査するときは、パルス信号PLSのデューティー比DTYの平均値は、50%であり、走査ラインLqを走査するときは、パルス信号PLSのデューティー比DTYの平均値は、50.5%となる。しかし、当該走査ラインLp,Lrを人の目で見た場合には、平均化されて、デューティー比DTY50.25%で調整されたように見える。
【0088】
また、走査ラインLqを走査するときにおいて、電圧変動は、4回に1回発生していたのが、2回に1回発生するように発生頻度が変更され、つまり、電圧変動の周波数が2倍に高められる。このため、平滑部25において、パルス信号PLSをローパスフィルター等で平滑するときの平滑度合いを変更しなくても、フィルターによる減衰率を大きくすることができ、平滑部25における平滑化の効果を高めることができる。これによって、リップルを小さくし、筋状のムラが発生する虞を低減することができる。
【0089】
[第二実施形態]
以下の第二実施形態の説明では、第一実施形態とは異なる部分についてのみ詳述し、第一実施形態と同じ部分については説明を省略する。
【0090】
第二実施形態の構成では、パルス信号調整部13は、複数の走査ラインのうち少なくとも一つよりも、パルス信号PLSのタイミングが遅れた走査ラインを走査する場合において、各領域タイミングから次の領域タイミングに移行するときは、次の領域タイミングに対応する最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYを、次の領域タイミングの一つ前の領域タイミングにおける最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYと等しい値に調整する。
【0091】
具体的には、例えば、図8において矢印Aで示すように、パルス信号調整部13は、走査ラインLqを走査する場合に、パルス信号の出力タイミングを走査ラインLpに対して遅らせる。また、パルス信号調整部13は、矢印Bで示すように、領域タイミングTiの次の領域タイミングTjに対応する走査ラインLqの最初のパルス信号PLSのデューティー比を、領域タイミングTjの一つ前の領域タイミングTiにおける最後のパルス信号PLSのデューティー比と等しい50%に調整する。これによって、例えばデューティー比を60%に変化させるタイミング等、デューティー比DTYを変化させるタイミングが走査ライン毎に互いに異なるように調整される。
【0092】
この構成によれば、走査ラインLpと走査ラインLqを走査するときにおけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比の平均値を、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期TPの1周期分以上設けて、50%、55%、60%と徐々に変化させることができる。これによって、人の目では、領域タイミングTi,Tjの境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見えるようになる。
【0093】
反対に、パルス信号調整部13は、複数の走査ラインのうち少なくとも一つよりも、パルス信号PLSのタイミングが進んだ走査ラインを走査する場合において、各領域タイミングから次の領域タイミングに移行するとき、次の領域タイミングの一つ前の領域タイミングにおける最後のパルス信号PLSのデューティー比を、次の領域タイミングに対応する最初のパルス信号PLSのデューティー比と等しい値に調整するように構成してもよい。
【0094】
具体的には、例えば、図8において矢印Cで示すように、パルス信号調整部13は、走査ラインLrを走査する場合に、パルス信号の出力タイミングを走査ラインLpに対して早める。また、パルス信号調整部13は、矢印Dで示すように、領域タイミングTiにおける走査ラインLrの最後のパルス信号PLSのデューティー比を、次の領域タイミングTjに対応する最初のパルス信号PLSのデューティー比と等しい60%に調整する。これによって、例えばデューティー比を60%に変化させるタイミング等、デューティー比DTYを変化させるタイミングが走査ライン毎に互いに異なるように調整される。
【0095】
この構成によれば、走査ラインLpと走査ラインLrを走査するときにおけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比の平均値を、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期TPの1周期分以上設けて、50%、55%、60%と徐々に変化させることができる。これによって、人の目では、領域タイミングTi,Tjの境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見えるようになる。
【0096】
また、第二実施形態における上記2つの調整方法を組み合わせて、図8に示すように、パルス信号PLSのタイミングの基準となる走査ラインLpと、パルス信号PLSのタイミングが遅れた走査ラインLqと、パルス信号PLSのタイミングが進んだ走査ラインLrとを含むように、パルス信号PLSの出力タイミングを調整した場合も、当該3つの走査ラインを走査するときにおけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比の平均値を、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期TPの1周期分以上設けて、50%、54.3%、56.7%、60%と徐々に変化させることができる。これによって、人の目では、領域タイミングTi,Tjの境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見えるようになる。
【0097】
[第三実施形態]
以下の第三実施形態の説明では、第一実施形態及び第二実施形態とは異なる部分についてのみ詳述し、第一実施形態及び第二実施形態と同じ部分については説明を省略する。
【0098】
第三実施形態の構成では、パルス信号調整部13は、第一実施形態及び第二実施形態におけるパルス信号PLSのデューティー比DTYの調整を組み合わせて行う。
【0099】
具体的には、例えば、図9に示すように、パルス信号調整部13は、走査ラインLpにおいて、補正値に基づいて定められた、領域タイミングTiに対応する領域における最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYである50%を、例えば3%増加させて53%に変更する。また、パルス信号調整部13は、その後、補正値に基づいて定められた、領域タイミングTjに対応する領域における走査ラインLpの最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYである60%を、例えば3%減少させて57%に変更する。
【0100】
そして、パルス信号調整部13は、図9において矢印Aで示すように、走査ラインLqを走査する場合に、パルス信号の出力タイミングを走査ラインLpに対して遅らせる。また、パルス信号調整部13は、矢印Bで示すように、領域タイミングTiの次の領域タイミングTjに対応する走査ラインLqの最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYを、領域タイミングTjの一つ前の領域タイミングTiにおける最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYと等しい53%に調整する。
【0101】
反対に、パルス信号調整部13は、図9において矢印Cで示すように、走査ラインLrを走査する場合に、パルス信号の出力タイミングを走査ラインLpに対して早める。また、パルス信号調整部13は、矢印Dで示すように、領域タイミングTiにおける走査ラインLrの最後のパルス信号PLSのデューティー比DTYを、次の領域タイミングTjに対応する最初のパルス信号PLSのデューティー比DTYと等しい57%に調整する。
【0102】
つまり、この構成によれば、パルス信号PLSのタイミングの基準となる走査ラインLpと、パルス信号PLSのタイミングが遅れた走査ラインLqと、を含むように、パルス信号PLSの出力タイミングを調整した場合には、走査ラインLpと走査ラインLqを走査するときにおけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比DTYの平均値を、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期TPの1周期分以上設けて、50%、53%、55%、60%と徐々に変化させることができる。これによって、人の目では、領域タイミングTi,Tjの境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見えるようになる。
【0103】
また、この構成によれば、パルス信号PLSのタイミングの基準となる走査ラインLpと、パルス信号PLSのタイミングが進んだ走査ラインLrとを含むように、パルス信号PLSの出力タイミングを調整した場合には、走査ラインLpと走査ラインLrを走査するときにおけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比DTYの平均値を、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期TPの1周期分以上設けて、50%、55%、57%、60%と徐々に変化させることができる。これによって、人の目では、領域タイミングTi,Tjの境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見えるようになる。
【0104】
また、この構成によれば、パルス信号PLSのタイミングの基準となる走査ラインLpと、パルス信号PLSのタイミングが遅れた走査ラインLqと、パルス信号PLSのタイミングが進んだ走査ラインLrとを含むように、パルス信号PLSの出力タイミングを調整した場合も、当該3つの走査ラインを走査するときにおけるパルス信号PLSの周期TP毎のデューティー比DTYの平均値を、領域タイミングTi,Tjの境界の前後で、隣接する領域タイミングTi,Tjのそれぞれに対応するデューティー比DTYの中間値のデューティー比DTYのパルス信号PLSを周期TPの1周期分以上設けて、50%、54.3%、55.7%、60%と徐々に変化させることができる。これによって、人の目では、領域タイミングTi,Tjの境界における濃度変化が平均化されて滑らかに変化したように見えるようになる。
【0105】
尚、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明に係る画像形成装置を複写機1に適用する例について説明したが、これに限らず、本発明に係る画像形成装置を、カラー画像形成用のカラープリンターや、スキャナー装置、ファクシミリ装置、プリンター装置及びコピー装置に適用してもよい。
【0106】
また、上記実施形態において図1乃至図9に示した構成及び数値例は単なる一例に過ぎず、本発明を当該実施形態に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0107】
1 複写機(画像形成装置)
10 制御部
12 補正値記憶部
13 パルス信号調整部(光量調整部)
23 レーザー制御部(レーザー出力部)
24 パルス信号出力部(光量調整部)
25 平滑部(光量調整部)
29 光源部
42 光走査装置
43 感光体ドラム(感光体)
91 レーザー光源(レーザー出力部)
A1〜A9 領域
D1〜D9 補正値
DTY デューティー比
CVA アナログ信号
Lp,Lq,Lr 走査ライン
PLS パルス信号
TP パルス信号の周期
T1〜T9 各領域タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光の走査によって潜像が形成される周面を有する感光体と、
アナログ信号に応じた光量のレーザー光を出力するレーザー出力部と、
前記レーザー出力部から出力されたレーザー光によって前記感光体の周面を主走査方向に1ラインずつ走査する光源部と、
前記感光体の周面を前記主走査方向に複数に分割するように設けられた複数の領域に対応付けて予め定められた補正値をそれぞれ記憶する補正値記憶部と、
前記光源部による前記レーザー光の走査が前記各領域に対して行われるタイミングである各領域タイミングに対応して、前記各領域に対応して前記補正値記憶部により記憶されている補正値に基づいて前記アナログ信号を生成する光量調整部とを備え、
前記光量調整部は、
周期的にパルス信号を出力するパルス信号出力部と、
前記各領域タイミングと対応して、前記各領域に対応する前記補正値に基づいて前記パルス信号のデューティー比を調整すると共に前記パルス信号のタイミングを調節するパルス信号調整部と、
前記パルス信号出力部から出力されたパルス信号を平滑することによって、前記アナログ信号を生成する平滑部とを備え、
前記各領域タイミングの期間は、前記パルス信号の周期の複数倍を超える長さであり、
前記パルス信号調整部は、
副走査方向に連続する複数の走査ラインにおいて、前記各領域タイミングに対する前記パルス信号の相対的な位置関係が、互いに異なる位置関係になるように前記パルス信号のタイミングを調節すると共に、前記走査ライン毎に、前記デューティー比を変化させるタイミングを互いに異ならせる画像形成装置。
【請求項2】
前記パルス信号調整部は、
前記走査ライン毎に、前記各領域の境界におけるパルス信号のデューティー比を、前記境界の直前の領域に対応する補正値に対応するアナログ信号が得られるデューティー比から、前記境界の直後の領域に対応する補正値に対応するアナログ信号が得られるデューティー比へ向かって徐々に変化させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記パルス信号調整部は、
前記複数の走査ラインのうち少なくとも一つよりも、前記パルス信号のタイミングが遅れた走査ラインを走査する場合において、前記各領域タイミングから次の領域タイミングに移行するとき、前記次の領域タイミングに対応する最初の前記パルス信号のデューティ比を、前記次の領域タイミングの一つ前の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比と等しい値に調整する請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記パルス信号調整部は、
前記複数の走査ラインのうち少なくとも一つよりも、前記パルス信号のタイミングが進んだ走査ラインを走査する場合において、前記各領域タイミングから次の領域タイミングに移行するとき、前記次の領域タイミングの一つ前の領域タイミングにおける最後のパルス信号のデューティー比を、前記次の領域タイミングに対応する最初の前記パルス信号のデューティー比と等しい値に調整する請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111893(P2013−111893A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261469(P2011−261469)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】