説明

画像形成装置

【課題】定着ローラーから発生するVOCを効率的に回収し、機内に残存させないことで、電気回路やリレー接点等に接触不良が発生するのを抑制するとともに、光学系の反射性能を良好に保つ。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置1は、用紙上にトナー画像を形成する画像形成部と、トナー画像を用紙に定着させるための定着ローラー27を有する定着装置23と、を備え、定着ローラー27の回転軸35を回転可能に支持し、定着ローラー27の端部29を覆い、通気口45が設けられたローラーキャップ37と、定着ローラー27の端部29とローラーキャップ37の間の空間38に通気口45を介して連通する排気通路51を形成する排気ダクト46と、空間38側から排気通路51側に向かう気流を発生させるファン52と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー画像を定着させる定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置においては、定着装置に設けられた定着ローラーにより用紙上のトナー画像を加熱及び加圧することで、トナー画像を用紙に定着させている。
【0003】
一方、上記のような画像形成装置を稼働させる際、種々の揮発性有機化合物(以下、「VOC」と称する。)が機内に発生し、機外に排出されることが知られている。特に、上記した定着装置の周辺は、画像形成装置の稼働に伴って高温となるため、シロキサンガスを含むVOCが多量に発生する。
【0004】
このような事態に対処するため、従来は、ファン等を用いて機外の空気を機内へ導入し、この導入された空気により定着装置を冷却することで、VOCの発生を抑制する場合が多かった。また、機内に設置されたシリコン吸着フィルターにより汚染物質の排出を低減させる方法(特許文献1参照)や、定着装置の周辺から揮発するVOCをファンで吸い込み、吸着剤等に吸着させる方法(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−166651号公報
【特許文献2】特開2005−338539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の方法はいずれも、前記した定着ローラーから発生するVOC(特にシロキサンガス)の吸引効果が不十分であり、VOCの一部が機内に残存してしまう。そして、この残存したVOCによって、電気回路やリレー接点などの表面が汚染されると、接触不良などの重大な問題が発生する虞がある。更には、機内の光学系のミラー等にVOCが付着し、光学系の反射性能にも影響を及ぼしかねない。従って、定着ローラーから発生するVOCを効率的に回収し、機内に残存させない技術が求められている。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、定着ローラーから発生するVOCを効率的に回収し、機内に残存させないことで、電気回路やリレー接点等に接触不良が発生するのを抑制するとともに、光学系の反射性能を良好に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定着装置は、用紙上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記トナー画像を前記用紙に定着させるための定着ローラーを有する定着装置と、を備えた画像形成装置であって、前記定着ローラーの回転軸を回転可能に支持し、前記定着ローラーの端部を覆い、通気口が設けられたローラーキャップと、前記定着ローラーの端部と前記ローラーキャップの間の空間に前記通気口を介して連通する排気通路を形成する排気ダクトと、前記空間側から前記排気通路側に向かう気流を発生させるファンと、を備えていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を採用することで、定着ローラーから発生するVOCを集中的且つ効率的に排気通路へと排出し、回収することが可能となる。これに伴って、定着ローラーから発生するVOCが機内に残存するのを抑制することが可能となり、機内に残存したVOCによって電気回路やリレー接点等に接触不良が発生するのを抑制するとともに、光学系の反射性能を良好に保つことが可能となる。
【0010】
前記ファンは、前記排気ダクトに設けられていても良い。
【0011】
このような構成を採用することで、排気ファンを定着ローラーの回転軸に設けるような場合と比較して、定着ローラーの回転軸の長さを短くすることが可能となる。そのため、定着ローラーの回転軸の長さにスペース上の制約があるような場合でも、本発明の構成を適用することが可能となる。
【0012】
前記ファンは、前記定着ローラーの回転軸に設けられていても良い。
【0013】
このような構成を採用することで、排気ダクトにファンを設置しなくても、定着ローラーの端部とローラーキャップの間の空間側から排気通路側に向かう気流を発生させることが可能となる。これに伴って、省スペース化及び省電力化を図ることが可能となる。
【0014】
前記ローラーキャップの内周部には、前記定着ローラーの回転軸との間に軸受け部材が介装され、前記ローラーキャップの外周部には、前記定着ローラーの回転軸の軸方向内側に向かってフランジ部が設けられ、該フランジ部と前記定着ローラーの端部の間に隙間が形成されていても良い。
【0015】
このような構成を採用することで、上記した隙間を介して、定着ローラーの端部とローラーキャップの間の空間に空気を導入することが可能となる。これに伴って、上記した空間への吸気口を別個に形成する必要が無くなり、製造工程の簡易化を図ることが可能となる。
【0016】
前記定着ローラーは、該定着ローラーの回転軸に周設されるシリコンゴム層と、該シリコンゴム層の外周面を被覆するチューブ層と、を備えていても良い。
【0017】
このように定着ローラーがシリコンゴム層を備えている場合には、シリコンゴム層から多量のシロキサンガスが発生するが、シリコンゴム層の外周面をチューブ層で被覆することで、シリコンゴム層の外周面からのシロキサンガスの排出を抑制し、シリコンゴム層の端面からシロキサンガスを排出させることが可能となる。これに伴って、定着ローラーの端部とローラーキャップの間の空間にシロキサンガスを集中的に排出させることが可能となり、シロキサンガスの回収効率を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、定着ローラーから発生するVOCを効率的に回収し、機内に残存させないことで、電気回路やリレー接点等に接触不良が発生するのを抑制するとともに、光学系の反射性能を良好に保つことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプリンターの概略を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプリンターにおいて、定着装置の周辺を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るプリンターにおいて、定着装置の周辺を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るプリンターにおいて、加圧ローラーを示す斜視図である。
【図5】比較例の定着装置の排気構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
まず、図1を用いて、電子写真方式のプリンター1の全体の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンター1の概略を示す説明図である。
【0021】
プリンター1は、箱型形状の画像形成装置本体2を備えている。画像形成装置本体2の上部には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器3が配置されている。露光器3は、レーザーダイオード4と、ポリゴンミラー5と、ポリゴンミラー5を駆動する駆動モーター6と、レンズ7と、折り返しミラー8と、を備えている。
【0022】
画像形成装置本体2の中央部には、画像形成部10が設けられている。画像形成部10の中央には、像担持体である感光体ドラム11が回転可能に設けられており、感光体ドラム11の周囲には、帯電器12と、現像器13と、転写帯電器14と、クリーニング装置15とが、感光体ドラム11の回転方向(図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0023】
画像形成装置本体2の下部には、一端(図面上は右端)から他端(図面上は左端)に向かって用紙の搬送経路16が設けられている。搬送経路16の上流端には、一部を画像形成装置本体2の外部に露出させるようにして給紙トレイ17が設けられ、給紙トレイ17の上面には給紙ローラー18が設けられている。搬送経路16の上流部には、上下一対のタイミングローラー20が設けられ、搬送経路16の中流部には、上記した転写帯電器14が設けられている。搬送経路16の下流部には、一対の搬送ローラー21に巻き掛けられた搬送ベルト22が回転可能に設けられ、搬送ベルト22の下流側には、定着装置23が設けられている。定着装置23の詳細については後述する。搬送経路16の下流端部には、排出部24が設けられ、排出部24の一側(図面上は左側)には、排紙トレイ25が画像形成装置本体2の側面に取り付けられている。
【0024】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0025】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置23の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0026】
まず、帯電器12によって感光体ドラム11の表面が帯電された後、露光器3からのレーザー光(図1の矢印P参照)により感光体ドラム11に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム11の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器13がトナーによりトナー画像に現像する。
【0027】
一方、給紙ローラー18によって給紙カセット17から取り出された用紙は、タイミングローラー20により搬送経路16に沿って転写帯電器14の上方に搬送され、転写帯電器14によって感光体ドラム11上のトナー画像が用紙に転写される。以上の動作により、用紙上にトナー画像が形成される。
【0028】
トナー画像が形成された用紙は、搬送経路16を下流側へと搬送されて定着装置23に進入し、この定着装置23において用紙にトナー画像が定着される。トナー画像が定着された用紙は、排出部24から排紙トレイ25に排出される。なお、感光体ドラム11上に残留したトナーは、クリーニング装置15によって回収される。
【0029】
次に、定着装置23の周辺について、主に図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るプリンターにおいて、定着装置の周辺を示す断面図である。
【0030】
定着装置23は、加熱ローラー26と、加熱ローラー26の下方に配置される定着ローラーとしての加圧ローラー27と、を備えている。
【0031】
加熱ローラー26は、アルミニウムや鉄等の金属から成る円筒状の芯金28と、この芯金28を被覆し、フッ素系樹脂から成るプライマー層30と、このプライマー層30を被覆し、シリコンゴム、フッ素系樹脂フィルム又はチューブから成る表面層31と、を備えている。芯金28内には、ハロゲンヒーター32が設けられており、このハロゲンヒーター32によって加熱ローラー26が加熱されるようになっている。加熱ローラー26は、駆動モーター(図示せず)と接続されており、駆動モーターの駆動に伴って所定の方向(図1の矢印Y参照)に回転するように構成されている。
【0032】
加圧ローラー27は、シリコンゴム層33と、シリコンゴム層33の外周面を被覆し、PFA等のフッ素系樹脂から成るチューブ層34と、を備えている。シリコンゴム層33は、加圧ローラー27の回転軸35(以下、単に「回転軸35」と称する。)に周設されており、回転軸35と加圧ローラー27が回転一体となっている。回転軸35は、加圧ローラー27よりも軸方向の長さが長くなるように形成されており、回転軸35の軸方向両端部は、加圧ローラー27から露出している。
【0033】
加圧ローラー27は、付勢手段(図示せず)の付勢力によって加熱ローラー26に圧接しており、加熱ローラー26と加圧ローラー27の間には、定着ニップ36が形成されている。加圧ローラー27は、加熱ローラー26の回転に伴って加熱ローラー26とは逆方向に従動回転するようになっている(図1の矢印Z参照)。
【0034】
加圧ローラー27の長手方向の両端部29(以下、「加圧ローラー27の両端部29」と略称する。)は、ローラーキャップ37により覆われている。ローラーキャップ37は、画像形成装置本体2又は定着装置23の外枠(図示せず)に固定されている。即ち、ローラーキャップ37は回転不能である。ローラーキャップ37と加圧ローラー27の両端部29の間には空間38が形成されている。
【0035】
ローラーキャップ37の内周部には、回転軸35の軸方向外側(加圧ローラー27の長手方向外側)に向かって環状突部40が形成されている。ローラーキャップ37の内周部には軸穴41が形成されており、軸穴41には、回転軸35の軸方向両端部が貫挿されている。ローラーキャップ37の内周部には、軸穴41に貫挿されている部分の回転軸35との間に軸受け部材としてのベアリング42が介装されている。つまり、ベアリング42を介して、ローラーキャップ37に回転軸35が回転可能に支持されている。
【0036】
ローラーキャップ37の外周部には、回転軸35の軸方向内側(加圧ローラー27の長手方向内側)に向かってフランジ部43が形成されている。フランジ部43と加圧ローラー27の両端部29の間には円環状の隙間44が形成されており、この隙間44を介して、空間38の内外が連通するように構成されている。ローラーキャップ37の下部には、通気口45が水平方向に穿設されている。
【0037】
ローラーキャップ37には、排気ダクト46が取り付けられている。この排気ダクト46は、ローラーキャップ37に対して着脱可能で有っても良いし、着脱不能で有っても良い。排気ダクト46は、一対の分岐ダクト47と、分岐ダクト47に接続される主ダクト48と、を備えている。
【0038】
各分岐ダクト47の一端部(上流端部)は、通気口45の周囲においてローラーキャップ37の外側面50に接合されており、これにより、各分岐ダクト47の管内空間が、通気口45を介して空間38と連通している。各分岐ダクト47の他端部(下流端部)は、主ダクト48の一端部(上流端部)と接続されており、これにより、各分岐ダクト47の管内空間と主ダクト48の管内空間が連通している。本実施形態では、各分岐ダクト47の管内空間と主ダクト48の管内空間により、排気通路51が形成されている。
【0039】
主ダクト48は、各分岐ダクト47よりも径大に形成されている。そのため、主ダクト48の管内空間の内径は、各分岐ダクト47の管内空間の内径よりも大きくなっている。主ダクト48内には、吸引ファン52が設けられ、吸引ファン52の一側(下流側)には、吸着材担持部材である活性炭フィルター53が設けられている。主ダクト48の他端部(下流端部)は、画像形成装置本体2の外部と連通している。
【0040】
上記の如く構成されたものにおいて、画像形成動作時には、ハロゲンヒーター32により加熱ローラー26を加熱するとともに、駆動モーター(図示せず)により加熱ローラー26を一方向(図1の矢印Y参照)に回転させ、この加熱ローラー26に圧接する加圧ローラー27を加熱ローラー26とは逆方向(図1の矢印Z参照)に従動回転させる。これにより、用紙上に形成されているトナー画像を定着ニップ36で加熱及び加圧し、用紙に定着させることが可能となる。
【0041】
一方で、上記のように加熱ローラー26を加熱すると、この加熱ローラー26に圧接する加圧ローラー27も加熱される。このように加圧ローラー27が加熱されると、加圧ローラー27のシリコンゴム層33からシロキサンガスが多量に発生する。このシロキサンガスは、シリコンゴム層33の両端面から空間38内に排出され、空間38内に充満する(図2の矢印A参照)。
【0042】
この空間38内に充満したシロキサンガスを回収するには、吸引ファン52を稼働させ、空間38側から排気通路51側に向かう気流を発生させる。これに伴って、シロキサンガスを含む空気が、通気口45を介して空間38から分岐ダクト47の管内空間へと流入し(図2の矢印B参照)、分岐ダクト47の管内空間から主ダクト48の管内空間に流入する(図2の矢印C参照)。この主ダクト48の管内空間に流入した空気は、吸引ファン52を通過した後、活性炭フィルター53を通過する。これに伴って、空気中に含まれるシロキサンガスが活性炭フィルター53に吸着され、空気が浄化される。この浄化された空気は、主ダクト48の他端部(下流端部)から画像形成装置本体2の外部へと排出される。
【0043】
以上のように、本実施形態では、加圧ローラー27のシリコンゴム層33から発生するシロキサンガスを、ローラーキャップ37を用いて拡散を抑制しつつ、吸引ファン52を用いて集中的且つ効率的に排気通路51へと回収し、機外へと排出している。これに伴って、加圧ローラー27のシリコンゴム層33から発生するシロキサンガスが機内に残存するのを抑制することが可能となり、機内に残存したシロキサンガスによって電気回路やリレー接点等に接触不良が発生するのを抑制するとともに、光学系の反射性能を良好に保つことが可能となる。
【0044】
また、吸引ファン52を主ダクト48内に設けているため、回転軸35にファンを設けるような場合と比較して、回転軸35の長さを短くすることが可能となる。そのため、回転軸35の長さにスペース上の制約があるような場合でも、本発明の構成を適用することが可能となる。
【0045】
また、ローラーキャップ37のフランジ部43と加圧ローラー27の両端部29の間には隙間44が形成されており、この隙間44を介して、空間38に空気を導入することが可能となる。これに伴って、空間38への吸気口を別個に形成する必要が無くなり、製造工程の簡易化を図ることが可能となる。
【0046】
また、主ダクト48内には活性炭フィルター53が設置されており、この活性炭フィルター53によって空気中のシロキサンガスを低減させてから、空気を画像形成装置本体2の外部に排出している。そのため、シロキサンガスの機外への排出量を低減させることが可能となり、シロキサンガスによって機外の環境が汚染されるのを防止することが可能となる。
【0047】
また、前述の如く加圧ローラー27のシリコンゴム層33からは多量のシロキサンガスが発生するが、シリコンゴム層33の外周面をチューブ層34で被覆することで、シリコンゴム層33の外周面からのシロキサンガスの排出を抑制し、シリコンゴム層33の端面からシロキサンガスを排出させることが可能となる(図2の矢印A参照)。これに伴って、空間38にシロキサンガスを集中的に排出させることが可能となり、シロキサンガスの回収効率を高めることが可能となる。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、図3及び図4を用いて、本発明の第2の実施形態に係る定着装置23について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るプリンターにおいて、定着装置の周辺を示す断面図である。図4は、本発明の第2の実施形態に係るプリンターにおいて、加圧ローラーを示す斜視図である。
【0049】
図3に示されるように、定着装置23は、加熱ローラー26と、加熱ローラー26の下方に配置される定着ローラーとしての加圧ローラー27と、を備えている。加熱ローラー26及び加圧ローラー27の構成は、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0050】
加圧ローラー27が周設される回転軸35の軸方向両側部には、空間38内に位置するように送風ファン55が固定されている。この送風ファン55は、図4に示されるように、回転軸35の外周面に固定される円筒状の支持部56と、この支持部56の外周面に固定されて放射状に延びる4枚の羽根57と、を備えている。各羽根57は、加圧ローラー27のシリコンゴム層33の端面に対して傾斜するとともに、弧状に湾曲している。
【0051】
図3に示されるように、加圧ローラー27の両端部29は、ローラーキャップ37により覆われている。ローラーキャップ37の構成は、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0052】
各ローラーキャップ37には、それぞれ排気ダクト46が取り付けられている。各排気ダクト46の一端部(上流端部)は、通気口45の周囲においてローラーキャップ37の外面50に接合されており、これにより、各排気ダクト46の管内空間によって構成される排気通路51が、通気口45を介して空間38と連通している。各排気ダクト46内には、吸着材担持部材である活性炭フィルター53が設けられている。なお、各排気ダクト46内に、ファンは設けられていない。各排気ダクト46の他端部(下流端部)は、画像形成装置本体2の外部と連通している。
【0053】
上記の如く構成されたものにおいて、画像形成動作時には、第1の実施形態と同様に、ハロゲンヒーター32によって加熱ローラー26が加熱され、この加熱ローラー26に圧接する加圧ローラー27も加熱される。このように加圧ローラー27が加熱されると、加圧ローラー27のシリコンゴム層33からシロキサンガスが多量に発生する。このシロキサンガスは、シリコンゴム層33の両端面から排出されて、空間38内に充満する(図3の矢印E参照)。
【0054】
また、上記画像形成動作時には、駆動モーター(図示せず)により加熱ローラー26を一方向に回転させ、この加熱ローラー26に圧接する加圧ローラー27を加熱ローラー26とは逆方向に従動回転させる。このように加圧ローラー27が回転すると、これに伴って、回転軸35及びこの回転軸35に固定された送風ファン55が一体に回転し、空間38側から排気通路51側に向かう気流が発生する。これに伴って、シロキサンガスを含む空気が、通気口45を介して空間38から排気通路51へと流入し(図3の矢印F参照)、活性炭フィルター53を通過する。このように空気が活性炭フィルター53を通過すると、空気中に含まれるシロキサンガスが活性炭フィルター53に吸着され、空気が浄化される。この浄化された空気は、各排気ダクト46の他端部(下流端部)から外部へと排出される(図3の矢印G参照)。
【0055】
本実施形態では、回転軸35に送風ファン55を固定しており、加圧ローラー27の回転に連動して回転軸35及び送風ファン55が回転するように構成されている。そのため、排気ダクト46内にファンを設置しなくても、空間38側から排気通路51側に向かう気流を発生させることが可能となる。これに伴って、省スペース化及び省電力化を図ることが可能となる。
【0056】
<比較実験>
上記した本発明の効果を確認するため、実機レベルで実験を行った。
【0057】
本発明の実施例1として、第1の実施形態の定着装置23と同様の構成を備えた定着装置23を京セラミタ製複合機(KM−C3232E)に取り付けた。このプリンターをSUS製チャンバー(容積5m)内に設置し、15m/hの換気を1時間行った。この換気の後、各種用紙を用いて10分間連続的に印刷を行い、この印刷中の10分間及び印刷後の約20分間の間に機内から発生する揮発性物質を、Tenax管(Tenax:登録商標)を用いて100ml/minでサンプリングした。そして、サンプリング後の揮発性物質を加熱脱着し、GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析計)を用いて分析した。この分析値を、トルエン換算にて簡易的に定量化し、チャンバー内におけるシロキサンガスの発生濃度(μg/m)を算出した。
【0058】
本発明の実施例2として、第2の実施形態の定着装置23と同様の構成を備えた定着装置23を京セラミタ製複合機(KM−C3232E)に取り付けた。そして、上記実施例1と同様の実験を行った。
【0059】
本発明に対する比較例1として、図5に示されるような定着装置61を京セラミタ製複合機(KM−C3232E)に取り付けた。そして、上記実施例1及び実施例2と同様の実験を行った。
【0060】
比較例1の定着装置61には、実施例1、実施例2と同様の構成を備えた加熱ローラー62及び加圧ローラー63を設置した。加圧ローラー63の両端部は、ローラーキャップで覆うことなく露出させ、ベアリング(図示せず)のみによって定着装置61の外枠に支持されるようにした。画像形成装置本体65には、定着装置61の上方を覆うようにして一端部(上流端部)が開口されたダクト66を設けた。ダクト66内には排気ファン67を設け、排気ファン67の一側(下流側)には、活性炭フィルター68を設けた。排気ファン67の他端部(下流端部)は画像形成装置本体65の外部と連通させた。
【0061】
上記実験の実験結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示されるように、本発明の構成を適用した実施例1、実施例2では、比較例1と比較して、チャンバー内におけるシロキサンガスの発生濃度を1/3未満に低減させることができた。このことから、本発明の構成を用いることで、定着装置から発生するシロキサンガスの吸引効果を高められることが実証された。
【0064】
第1、第2の実施形態では、ローラーキャップ37の内周部に環状突部40を形成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、ローラーキャップ37の内周部に環状突部40を形成せずに、ローラーキャップ37の外面50を平坦面としても良い。
【0065】
第1、第2の実施形態では、吸着材担持部材として活性炭フィルター53を用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、活性炭フィルター53以外の吸着材担持部材を用いても良い。
【0066】
第1、第2の実施形態では、本発明に係る排気ダクト46を単独で使用する場合を例に説明したが、他の異なる実施形態では、本発明に係る排気ダクト46と定着装置23の上方を覆うようにして設けられる排気ダクト(上記実験の比較例1参照)を、組み合わせて使用しても良い。この場合には、加圧ローラー27から発生するVOC(特にシロキサンガス)を本発明に係る排気ダクト46によって集中的且つ効率的に回収しつつ、定着装置23をカバーする樹脂製の部品から発生するVOCやトナーの揮発に伴って発生するVOCを、定着装置23の上方を覆う排気ダクトによって回収することが可能となる。
【0067】
第1、第2の実施形態では、加圧ローラー27から発生するシロキサンガスを回収するための専用の排気ダクト46を設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、他の目的で設置されたダクト(例えば、ポリゴンミラー5の冷却用に設置されたダクト)を、加圧ローラー27から発生するシロキサンガスを回収するための排気ダクト46として兼用しても良い。
【0068】
第1の実施形態では、吸引ファン52が設置される主ダクト48を各ローラーキャップ37に接合される分岐ダクト47に接続したが、他の異なる実施形態では、各ローラーキャップ37に対して別々の排気ダクト46を接続し、各排気ダクト46に吸引ファン52を設置しても良い。第2の実施形態では、各ローラーキャップ37に対して別々の排気ダクト46を接続し、各排気ダクト46に活性炭フィルター53を設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、活性炭フィルター53が設置される主ダクトを各ローラーキャップ37に接合される分岐ダクトに接続しても良い。
【0069】
第1、第2の実施形態では、加熱ローラー26及び加圧ローラー27を用いて定着ニップ36を形成したが、他の異なる実施形態では、複数のローラーに巻き掛けられたベルト状の部材を用いて定着ニップ36を形成しても良い。
【0070】
第1、第2の実施形態では、加圧ローラー27に対して本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では加熱ローラー26に対して本発明の構成を適用しても良い。また、上記の如くベルト状の部材を用いて定着ニップ36を形成する場合には、このベルト状の部材が巻き掛けられるローラーに本発明の構成を適用しても良い。即ち、「定着ローラー」には、定着装置23内に設置されるあらゆるローラー状の部材が含まれる。
【0071】
第1、第2の実施形態では、加熱ローラー26を加熱する手段としてハロゲンヒーター32を用いたが、他の異なる実施形態では、例えばIH定着ユニット等の他の加熱手段を用いて加熱ローラー26を加熱しても良い。
【0072】
第1、第2の実施形態では、プリンター1(例えば、モノクロプリンター)に本発明を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、カラープリンター、複写機、デジタル複合機、ファクシミリ等の他の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 プリンター(画像形成装置)
10 画像形成部
23 定着装置
27 加圧ローラー(定着ローラー)
29 端部
33 シリコンゴム層
34 チューブ層
35 回転軸
37 ローラーキャップ
38 空間
42 ベアリング(軸受け部材)
43 フランジ部
44 隙間
45 通気口
46 排気ダクト
51 排気通路
52 吸引ファン(ファン)
55 送風ファン(ファン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記トナー画像を前記用紙に定着させるための定着ローラーを有する定着装置と、を備えた画像形成装置であって、
前記定着ローラーの回転軸を回転可能に支持し、前記定着ローラーの端部を覆い、通気口が設けられたローラーキャップと、
前記定着ローラーの端部と前記ローラーキャップの間の空間に前記通気口を介して連通する排気通路を形成する排気ダクトと、
前記空間側から前記排気通路側に向かう気流を発生させるファンと、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ファンは、前記排気ダクトに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ファンは、前記定着ローラーの回転軸に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ローラーキャップの内周部には、前記定着ローラーの回転軸との間に軸受け部材が介装され、
前記ローラーキャップの外周部には、前記定着ローラーの回転軸の軸方向内側に向かってフランジ部が設けられ、該フランジ部と前記定着ローラーの端部の間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着ローラーは、
該定着ローラーの回転軸に周設されるシリコンゴム層と、
該シリコンゴム層を被覆するチューブ層と、を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15628(P2013−15628A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147368(P2011−147368)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】