説明

画像形成装置

【課題】本発明は、インクにおける粘度の変化に対応した記録ヘッドへのインクの送液が可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、インクを記録ヘッド22に送液するポンプ機構24と、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの停止時間を計時可能な時間検知部403と、インク温度検出部405と、計時された停止時間が第1時間以上である場合にはポンプ機構24に対して予備パージを実施させ第1送液制御部281と、ポンプ機構24にメインパージを実施させる第2送液制御部282であって、計時された停止時間と、検出されたインクの温度とに基づいて、メインパージにおける流速を設定する第2送液制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドのノズルからインクを噴射して、用紙等の記録媒体上に記録を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置としてのインクジェット記録装置は、インクを噴射する複数のインク噴射用ノズルを有するヘッドを備える。ヘッドには、インクタンクからインクが供給される。
インクジェット記録装置において、一般的に、インクタンクからヘッドにインクを供給するインク供給路にポンプ機構が設けられる。ポンプ機構において、例えば、インクに含まれる凝集物や、ノズル面に付着した粉塵等が原因でノズルからのインクの吐出状態が正常ではなくなる場合がある。このような場合、画像に白い筋状の空白(白筋)が発生する場合がある。この場合、インクジェット記録装置は、インクの吐出状態を正常な状態にもどすため、大量のインクをインク噴射用ノズルから噴射させてノズルの内部を洗浄するパージ動作を行う。パージ動作は、ポンプ機構によりインクタンクから大量のインクをヘッドに供給することにより行われる。
【0003】
しかし、温度によってインクの粘度が変化するため、低温のインクをポンプ機構によりインクタンクからヘッドに供給する場合、インクの圧力が過剰に上昇する場合がある。この場合、上昇した圧力により、インクの流路を構成する部材やポンプ機構を構成する部材が破損する場合があった。また、逆に、温度が高い場合にはインクの圧力が低くなるので、パージ動作において、所望の洗浄効果を得ることができない場合があった。
【0004】
これに対して、温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段の検知結果に基づき加圧ポンプの動作を変更する動作変更手段を備える記録装置(インクジェット記録装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−059461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された記録装置(インクジェット記録装置)は、インクの粘度が上昇する要素として温度以外の要素が検討されていない。このため、特許文献1に開示された記録装置(インクジェット記録装置)は、温度による粘度の変化だけでなく、ヘッドへのインクの送液が長時間行われないことで揮発成分が蒸発して粘度が上昇した場合等には、好適に対応できなかった。
【0007】
本発明は、インクにおける粘度の変化に対応した記録ヘッドへのインクの送液が可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インクを収容するインクタンクと、インクを吐出するためのノズルを有するヘッド部と、前記インクタンクに収容されるインクを前記ヘッド部に送液可能な送液路と、前記送液路を介して前記インクタンクに収容されたインクを前記ヘッド部に送液する送液部であって、所定流速でインクを前記ヘッド部に送液するメインパージと、前記メインパージよりも前に実施され前記所定流速以下の流速でインクを前記ヘッド部に送液する予備パージと、を実施可能な送液部と、前記ヘッド部に対するインクの送液状況を検知可能な送液状況検知部と、前記送液状況検知部における検知結果に基づいて、前記ヘッド部に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時可能な計時部と、前記ヘッド部に供給されるインクの温度を検出するインク温度検出部と、前記送液部に対して前記予備パージを実施させる第1送液制御部であって、前記計時部により計時された時間である停止時間が第1時間以上である場合には前記送液部に予備パージを実施させると共に、前記停止時間が前記第1時間未満である場合には前記送液部に予備パージを実施させない第1送液制御部と、前記送液部に対して前記メインパージを実施させる第2送液制御部であって、前記計時部により計時された停止時間と、前記インク温度検出部により検出されたインクの温度とに基づいて、前記所定流速を設定する第2送液制御部と、を備える画像形成装置に関する。
【0009】
また、前記停止時間が、前記第1時間以上である第1時間帯、前記第1時間よりも短い第2時間以上であって前記第1時間未満である第2時間帯、および、前記第2時間未満の第3時間帯のうちのいずれであるかを判定する時間判定部と、前記インク温度検出部により検出されたインクの温度が、第1温度以上である第1温度帯、前記第1温度よりも低い第2温度以上であって前記第1温度未満である第2温度帯、および、前記第2温度未満の第3温度帯のうちのいずれであるかを判定する温度判定部と、を備え、前記第2送液制御部は、前記各時間帯ごとに、前記インクの各温度帯に対応した流速を前記所定流速としてそれぞれ設定すると共に、前記各時間帯において、前記第1温度帯に対応する流速が前記第3温度帯に対応する流速以上となるよう前記所定流速を設定することが好ましい。
【0010】
また、前記第2送液制御部は、前記時間判定部により前記停止時間が前記第1時間帯と判定された場合において、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第1温度帯と判定されたときには前記所定流速を第1流速とし、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第2温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第1流速よりも遅い第2流速以上とし、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第3温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速とし、また、前記時間判定部により前記停止時間が前記第2時間帯と判定された場合において、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第1温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速とし、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第2温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速よりも遅い第3流速以上とし、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第3温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第3流速とし、また、前記時間判定部により前記停止時間が前記第3時間帯と判定された場合において、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第1温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第1流速とし、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第2温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第1流速よりも遅い第2流速以上とし、前記温度判定部により前記インクの温度が前記第3温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速とすることが好ましい。
【0011】
また、前記第2送液制御部は、前記流速に対応した流量を設定可能であり、前記第1流速に対応する流量が、前記第2流速に対応する流量以上となるよう流量を設定することが好ましい。
【0012】
また、前記第1送液制御部は、予備パージにおける前記各温度帯ごとの流量を互いに同じ流量に設定することが好ましい。
【0013】
また、動作部と、前記動作部に電力を供給可能なオン状態と電力を供給しないオフ状態とに状態切替可能に構成される主電源部と、前記主電源部が前記オフ状態から前記オン状態に状態切替された場合、前記計時部から計時結果情報を取得して判定を行うよう前記時間判定部を制御するパージタイミング管理部と、を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記送液部は、シリンジ部と、移動可能に前記シリンジ部に収容されるプランジャー部と、前記プランジャー部を移動させる移動機構と、を有することが好ましい。
【0015】
本発明は、インクを収容するインクタンクと、インクを吐出するためのノズルを有するヘッド部と、前記インクタンクに収容されるインクを前記ヘッド部に送液可能な送液路と、前記送液路を介して前記インクタンクに収容されたインクを前記ヘッド部に送液する送液部と、前記ヘッド部に対するインクの送液状況を検知可能な送液状況検知部と、前記送液状況検知部における検知結果に基づいて、前記ヘッド部に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時可能な計時部と、環境温度を検知する環境温度検知部と、環境湿度を検知する環境湿度検知部と、前記計時部により計時された時間である停止時間の値である停止時間値と、前記環境温度検知部により検知された環境温度の値である環境温度値と、前記環境湿度検知部により検知された環境湿度の値である環境湿度値とに基づいて、環境履歴指数を算出する環境履歴指数算出部と、前記環境履歴指数算出部により算出された環境履歴指数に基づいて、前記送液部を制御する送液制御部と、を備える画像形成装置に関する。
【0016】
また、前記環境履歴指数算出部は、前記環境温度検知部により検知された環境温度値と前記計時部により計時された停止時間値との積、及び/又は、所定値から前記環境湿度検知部により検知された環境湿度値を減じた値と前記計時部により計時された停止時間値との積に基づいて前記環境履歴指数を算出し、前記送液制御部は、前記環境履歴指数算出部により算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数よりも大きい場合、インクを前記ヘッド部に送液するよう前記送液部を制御することが好ましい。
【0017】
また、前記送液制御部は、前記環境履歴指数算出部により算出された環境履歴指数が大きいほど、遅い流速でインクを前記ヘッド部に送液するよう前記送液部を制御することが好ましい。
【0018】
また、前記環境履歴指数算出部は、前記環境温度検知部により検知された前記環境温度値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積と、前記環境湿度検知部により検知された前記環境湿度値の逆数の値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積とのうちの少なくとも一方に基づいて前記環境履歴指数を算出するように構成されることが好ましい。
【0019】
また、前記環境履歴指数算出部は、前記環境温度検知部により検知された前記環境温度値のべき乗の値に基づいて求まる値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積と、前記環境湿度検知部により検知された前記環境湿度値の逆数の値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積とのうちの少なくとも一方に基づいて前記環境履歴指数を算出するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インクにおける粘度の変化に対応した記録ヘッドへの送液が可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置1の概要を正面側から模式的に示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態のインクジェット記録装置1において、各記録ヘッド22に対応してキャップユニット50が装着された状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺部を示す平面図である。
【図3】第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるインク供給部100の構成を模式的に示す概略構成図である。
【図4】第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるポンプ機構24の構成を説明する断面図である。
【図5】第1実施形態のインクジェット記録装置1における機能ブロック図である。
【図6A】メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶される予備パージ有無管理テーブル511である。
【図6B】メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶される予備パージ流速管理テーブル512である。
【図6C】メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶されるメインパージ流速管理テーブル513である。
【図6D】メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶されるモーター駆動情報管理テーブル514である。
【図7】第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるパージ動作を説明するフローチャートである。
【図8】第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにおける機能ブロック図である。
【図9】メモリー500A(送液制御情報記憶部510A)に記憶されるモーター駆動情報管理テーブル516である。
【図10】第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにおけるパージ動作を説明するフローチャートである。
【図11】温度および湿度と、蒸発速度との関係を示す表である。
【図12】温度と蒸発速度との関係を示すグラフである。
【図13】湿度と蒸発速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。図1及び図2により、本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置1(画像形成装置)における全体構造の概要を説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置1の概要を正面側から模式的に示す縦断面図である。図2は、第1実施形態のインクジェット記録装置1において、各記録ヘッド22に対応してキャップユニット50が装着された状態における記録部20及び搬送ユニット30の周辺部を示す平面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、第1実施形態のインクジェット記録装置1は、本体2内に、記録部20と、クリーニング部25と、搬送ユニット30と、インク供給部100と、搬送ユニット30を昇降させる昇降装置40と、キャップユニット50と、キャップユニット50を水平移動させる第1水平移動機構(図示せず)と、クリーニング部25を水平移動させる第2水平移動機構(図示せず)とを備える。第1実施形態のインクジェット記録装置1は、更に、給紙カセット3と、給紙ローラー4と、用紙搬送路5と、レジストローラー対6と、乾燥装置7と、排紙ローラー対8と、排紙口9と、排紙トレイ10と、を備える。上記の通り、第1実施形態のインクジェット記録装置1は、各種動作部を有する。
【0025】
図1及び図2に示すように、搬送ユニット30は、駆動ローラー32と、従動ローラー33と、駆動ローラー32及び従動ローラー33に掛け渡される搬送ベルト31と、搬送ベルト31のテンションを調整するテンションローラー34と、搬送ベルト31の搬送面の下側(記録部20とは反対側)に装備される空気吸引ユニット(図示せず)とを有する。搬送ベルト31及び空気吸引ユニットの上面には、それぞれ吸引用の貫通孔(図示せず)が多数設けられている。
【0026】
駆動ローラー32及び従動ローラー33が正面視で反時計方向に回転することにより、搬送ベルト31の上面部分で形成される搬送面31Aは、水平面(X−Y平面)内の用紙搬送方向Pの一方から他方に向けて水平移動される。つまり、搬送ベルト31の搬送面31A上においては、用紙搬送方向Pは、水平方向Xとほぼ一致する。空気吸引ユニットは、搬送ベルト31の搬送面31Aの下側(記録部20とは反対側)に配置され、搬送ベルト31の搬送面31Aに記録媒体としての用紙Tを吸着させる吸引力を作用させる。
搬送ベルト31としては、両端部を互いに重ね合わせて接合してエンドレス状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルト等を用いることができる。
【0027】
図2に示すように、所定の記録時には、記録媒体としての用紙Tは、搬送ベルト31の搬送面31A上に、用紙搬送方向Pの一方側から導入される。搬送面31Aには、空気吸引ユニット(図示せず)の動作に伴って、前記の吸引用の貫通孔(図示せず)を介して搬送ベルト31に作用する吸引力が生じている。搬送ベルト31の搬送面31A上に導入された用紙Tは、前記吸引力により搬送面31Aに吸着されて、用紙搬送方向Pの他方側に向けて搬送される。このように搬送ベルト31の搬送面31Aに吸着された状態で搬送される用紙Tに向けて、後述する記録部20の記録ヘッド22からインクが吐出されることにより、用紙Tに画像等が記録される(印刷される)。
【0028】
図1に示すように、給紙カセット3は、用紙Tを積層状態で収容するものであり、本体2の内部の下方における搬送ユニット30の用紙搬送方向Pの上流側に配置されている。給紙ローラー4は、給紙カセット3の上方に配置されている。この給紙ローラー4により、用紙Tは、図1における給紙カセット3の右上方に向けて送り出される。
【0029】
用紙搬送路5、レジストローラー対6、記録部20及び搬送ユニット30は、給紙カセット3の用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Tは、用紙搬送路5を通ってレジストローラー対6に到達する。レジストローラー対6は、用紙Tの斜め送りを矯正して用紙Tを再度送り出す。記録部20とレジストローラー対6との間の用紙搬送路5に設けられた用紙先端検出センサー(図示せず)により、用紙Tの先端部が検出される。その検出されたタイミングに基づいて、記録部20は、後述するようなインクの吐出動作を実行する。
【0030】
図1に示すように、乾燥装置7は、本体2の内部の上方における搬送ユニット30の用紙搬送方向Pの下流側に配置されている。乾燥装置7は、記録部20において吐出されるインクにより記録された後における用紙Tのインクを乾燥させる。
【0031】
排紙ローラー対8、排紙口9及び排紙トレイ10は、乾燥装置7の用紙搬送方向Pの下流側に、この順で配置されている。乾燥装置7によりインクの乾燥が終了した用紙Tは、排紙ローラー対8により用紙搬送方向Pの下流側に送られ、排紙口9を通して、本体2の外側に設けられた排紙トレイ10に送られて、本体2の外部に排出される。
【0032】
図1及び図2に示すように、記録部20は、4色に対応する記録ヘッド22(ヘッド部)を有する。4色に対応する記録ヘッド22とは、ブラック用の記録ヘッド22K、シアン用の記録ヘッド22C、マゼンタ用の記録ヘッド22M、イエロー用の記録ヘッド22Yである。これら4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、用紙搬送方向P(水平方向X)に直交する用紙幅方向Yに沿って長く延びている。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿って、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。
【0033】
4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、インク噴射用ノズルが形成されたノズル面221(図3参照)を有する。ノズル面221は、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの下面である。各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yにおけるノズル面221は、搬送ベルト31の搬送面31Aに対向する。4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、ノズル面221に形成されたインク噴射用ノズルから噴射されたインクにより用紙Tに画像を記録する。
【0034】
図1に示すように、インク供給部100は、4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yと、4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yと、を含む。
4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yは、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yそれぞれに対応して、搬送ユニット30の下方に配置されている。4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yは、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを収容する。4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容された各色のインクは、後述する4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yに供給される。4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿って、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。
【0035】
4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yは、4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yそれぞれに対応して、搬送ユニット30の上方に配置されている。4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yは、搬送ベルト31の用紙搬送方向Pに沿って、用紙搬送方向Pの上流側から下流側に向かって順に配列して配置されている。
4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yは、4つのインクタンク23K、23C、23M、23Yに収容された各色のインクを一旦収容する。そして、4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yに収容された各色のインクは、4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yから4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yへ供給される。
インク供給部100の詳細については後述する。
【0036】
なお、以下の説明において、特に特定する必要がある場合を除いて、4色の記録ヘッド22K、22C、22M、22Y、4つのインクタンク23K、23C、23M、23Y、及び4つのポンプ機構24K、24C、24M、24Yについては、それぞれの識別記号である「K」、「C」、「M」、「Y」を省略して、単に「記録ヘッド22」、「インクタンク23」及び「ポンプ機構24」と記載する。
【0037】
記録部20の各記録ヘッド22は、外部コンピューター(図示せず)から受信した画像データー情報(例えば、文字、図形、模様)に対応して、搬送ベルト31の搬送面31A上に載置された用紙Tに向かって4色のインクを吐出する。図2に示すように、各記録ヘッド22は、矩形板状の記録ヘッド支持部材21に支持されており、この記録ヘッド支持部材21と共に、本体2に固定されている。そして、搬送ベルト31の回転移動と共に、所定のタイミングで各記録ヘッド22から4色のインクが順次吐出される。これにより、用紙Tには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色のインクが重ね合わせられ、カラーインク画像が印刷される。
【0038】
記録ヘッド22のインク吐出方式としては、例えば、ピエゾ素子(図示せず)を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体(図示せず)によって気泡を発生させ、圧力を掛けてインクを吐出するサーマルインクジェット方式等の各種吐出方式を採用することができる。
【0039】
図1に示すように、搬送ユニット30を昇降させる昇降装置40は、搬送ユニット30の下方に配置されている。昇降装置40は、搬送ユニット30を記録ヘッド22に対して、水平面(X−Y平面)に垂直な方向Z(以下「上下方向Z」ともいう)に昇降(移動)させるものである。この昇降装置40による搬送ユニット30の上下方向Zの移動により、搬送ベルト31の搬送面31Aは、記録ヘッド22のノズル面221(図3参照)に対して相対的に接近又は離間可能に構成されている。
【0040】
図1に示すように、昇降装置40は、搬送ベルト31の下方における用紙搬送方向Pの上流側及び下流側に配置された2つの偏心カム41を備える。偏心カム41は、搬送ユニット30の正面側及び背面側にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられる。偏心カム41の偏心周面は、搬送ユニット30の外底面に下方から接近する。図1に示すように、各偏心カム41は、用紙幅方向Yに延びる軸部42を備えると共に、回転軸線が偏在するカムで構成される。偏心カム41は、モーター(図示せず)を介して、軸部42を中心として回転される。偏心カム41は、その周縁部に、複数のベアリング43を備えている。ベアリング43の周面の一部は、偏心カム41の周面から外方に突出している。
【0041】
ベアリング43は、偏心カム41の回転軸線と平行な軸線を中心として回転自在となっている。ベアリング43は、偏心カム41の先端側から回転軸線側に向かって順次配置されている。通常の印刷状態においては、図1に示すように、軸部42から最も離れたベアリング43は、搬送ユニット30の外底面に下方から当接する。これにより、搬送ユニット30は、最高位置に上昇移動される。
【0042】
この状態から、用紙搬送方向Pの上流側の偏心カム41を正面視で反時計方向に回転させると共に、用紙搬送方向Pの下流側の偏心カム41を正面視で時計方向に回転させる。これにより、複数のベアリング43は、軸部42から最も離れたベアリング43から軸部42に最も近いベアリング43の順で、搬送ユニット30の外底面に順次当接する。そのため、搬送ユニット30を下降させることができる。複数のベアリング43は、偏心カム41の回転時において、周縁方向で隣り合う2個のベアリング43が同時に搬送ユニット30の外底面に当接する期間を有するような間隔に、配置されている。
【0043】
昇降装置40の偏心カム41を回転させて搬送ユニット30を下降させることにより、搬送ユニット30における搬送ベルト31の搬送面31Aは、記録ヘッド22に対して下方に離間される。
【0044】
図1に示すように、キャップユニット50は、記録部20の下方で且つ搬送ユニット30の上方(記録部20と搬送ユニット30との間)に配置可能に構成される。図2に示すように、キャップユニット50は、各記録ヘッド22に対応して設けられる複数のキャップケース52と、複数のキャップケース52を所定の位置関係に固定支持したキャップベース部材53とを備える。
【0045】
キャップユニット50は、記録部20と搬送ユニット30との間に配置された状態において、昇降装置40により搬送ユニット30の昇降に連動して昇降可能に構成される。昇降装置40の偏心カム41を回転させて搬送ユニット30を下降させることにより、キャップユニット50は、搬送ベルト31の搬送面31Aの下降に連動して、記録ヘッド22に対して下方に離間される。
【0046】
これにより、記録ヘッド22からキャップユニット50が離脱される。そして、キャップユニット50が記録ヘッド22から離脱された状態で、記録ヘッド22のノズル面221のインク噴射用ノズル(図示せず)からインクを噴射させることにより、ノズル内に残留する高い粘度のインクを吐出させてインク詰まりを解消するための吐出回復処理、すなわち、パージを実行することが可能である。
【0047】
一方、昇降装置40の偏心カム41を前述とは逆方向に回転させて搬送ユニット30を上昇させることにより、搬送ユニット30は、通常の記録位置(印刷位置)に戻される。
【0048】
ここで、キャップユニット50が記録部20と搬送ユニット30との間に配置された状態においては、記録ヘッド22のノズル面221(図3参照)には、キャップユニット50を装着することが可能となる。また、後述する第1水平移動機構(図示せず)によりキャップユニット50が記録部20と搬送ユニット30との間に配置されない状態においては、記録ヘッド22は、搬送ベルト31の搬送面31A上に載置された用紙Tに向けてインクを吐出することができる。
【0049】
キャップユニット50は、第1水平移動機構(図示せず)によってキャップベース部材53が水平方向に移動操作されることにより、用紙搬送方向P(図1参照)に水平移動可能に構成されている。
【0050】
キャップユニット50は、第1水平移動機構による移動操作により、キャップケース52が各記録ヘッド22に着脱可能な着脱位置、又は着脱位置から水平方向に離れた退避位置に切り替えられる。記録部20における記録動作時には、キャップユニット50は、退避位置に配置される。
【0051】
クリーニング部25は、キャップユニット50の下方で且つ搬送ユニット30の上方(キャップユニット50と搬送ユニット30との間)に配置可能に構成される。クリーニング部25は、キャップユニット50と同様に、キャップユニット50と搬送ユニット30との間に配置された状態において、昇降装置40により搬送ユニット30の昇降に連動して昇降可能に構成される。
【0052】
また、クリーニング部25は、第2水平移動機構(図示せず)により用紙搬送方向P(図1参照)に水平移動可能に構成される。クリーニング部25は、第2水平移動機構による移動操作により、各記録ヘッド22の下方に配置されて各記録ヘッド22をクリーニングすることが可能なワイプ位置、又はワイプ位置から水平方向に離れた退避位置に切り替えられる。記録部20における記録動作時や、キャップユニット50が記録ヘッド22のノズル面221(図3参照)に装着される場合には、クリーニング部25は、退避位置に配置される。
【0053】
以下、図3及び図4を参照して、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるインク供給部100のポンプ機構24に関連する構成について詳細に説明する。図3は、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるインク供給部100の構成を模式的に示す概略構成図である。図4は、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるポンプ機構24の構成を説明する断面図である。
【0054】
図3に示すように、インク供給部100は、インクタンク23と、ポンプ機構24と、インク供給路101と、第1開閉弁110と、第1逆止弁112と、第2逆止弁113と、印刷用ポンプ111と、を備える。インクタンク23は、記録ヘッド22に供給されるインクを収容する。
【0055】
インク供給路101は、インクタンク23に収容されるインクを記録ヘッド22へ供給(送液)する。インク供給路101は、パージ用インク供給路102と、バイパス供給路としての印刷用インク供給路105とを有する。
【0056】
パージ用インク供給路102(送液路)は、パージ動作時に用いられるインク供給路である。パージ用インク供給路102は、インクタンク23から記録ヘッド22に大量のインクを供給(送液)するための供給路である。パージ用インク供給路102(の途中)には、後述するポンプ機構24が設けられる。ここで、パージとは、インクタンク23から記録ヘッド22ヘインクを強制的に供給することにより、記録ヘッド22のノズルのインク詰まりを解消させる吐出回復処理である。
【0057】
パージ用インク供給路102は、インクタンク側供給路103と、記録ヘッド側供給路104とを有する。インクタンク側供給路103は、インクタンク23と後述するポンプ機構24(シリンダー240)とをつないでいる。インクタンク側供給路103は、インクタンク23に収容されるインクをポンプ機構24へ供給する。
【0058】
記録ヘッド側供給路104は、後述するポンプ機構24(シリンダー240)と記録ヘッド22とをつないでいる。記録ヘッド側供給路104は、ポンプ機構24(シリンダー240)に収容されるインクを記録ヘッド22へ供給する。
【0059】
印刷用インク供給路105は、インクタンク側供給路103と記録ヘッド側供給路104とをつないでいる。具体的には、印刷用インク供給路105は、インクタンク側供給路103の途中の位置aと記録ヘッド側供給路104の途中の位置bとをつないでいる。つまり、印刷用インク供給路105は、ポンプ機構24を介さずに、インクタンク23と記録ヘッド22をつないでいる。印刷用インク供給路105は、印刷時において、インクタンク23に収容されるインクを記録ヘッド22へ供給する。
パージ用インク供給路102(インクタンク側供給路103、記録ヘッド側供給路104)、及び印刷用インク供給路105は、本実施形態においては、筒状のチューブにより構成される。
【0060】
第1開閉弁110は、印刷用インク供給路105(の途中)に設けられる。第1開閉弁110は、印刷用インク供給路105を開放又は閉止可能に構成される。
第1開閉弁110が開放状態にある場合には、インクタンク23に収容されるインクは、印刷用インク供給路105を介して記録ヘッド22への流通が可能である。また、第1開閉弁110が閉止状態にある場合には、インクタンク23に収容されるインクは、印刷用インク供給路105を介して記録ヘッド22への流通が不能である。第1開閉弁110としては、例えば、電磁式の開閉弁又は電動式の開閉弁が用いられる。第1開閉弁110は、不図示の弁開閉駆動部により開放状態又は閉止状態に切り替えられる。
【0061】
印刷用ポンプ111は、印刷用インク供給路105の途中で且つ第1開閉弁110よりも上流側に設けられる。印刷用ポンプ111は、印刷時における第1開閉弁110が開放状態にある場合において、インクタンク23に収容されるインクを記録ヘッド22に供給する。
【0062】
第1逆止弁112は、インクタンク側供給路103の途中で且つ印刷用インク供給路105が接続される位置aよりも下流側に設けられる。第1逆止弁112は、インクの流れる方向を規制する。第1逆止弁112は、インクタンク23からポンプ機構24へ向かう方向(図3に示す矢印方向)へのインクの送液を許可し、これと反対方向へのインクの送液を禁止する。
【0063】
第2逆止弁113は、記録ヘッド側供給路104の途中で且つ印刷用インク供給路105が接続される位置bよりも上流側に設けられる。第2逆止弁113も同様に、インクの流れる方向を規制する。第2逆止弁113は、ポンプ機構24から記録ヘッド22へ向かう方向(図3に示す矢印方向)へのインクの送液を許可し、これと反対方向へのインクの送液を禁止する。
【0064】
図3に示すように、ポンプ機構24(送液部)は、パージ用インク供給路102(の途中)に設けられる。図4に示すように、ポンプ機構24は、シリンダー240(シリンジ部)と、ピストン250(プランジャー部)と、収容タンク260と、ピストン駆動部270(移動機構)と、を有して構成されるシリンジポンプである。
ポンプ機構24は、パージ用インク供給路102(送液路)を介して、インクタンク23に収容されるインクを記録ヘッド22へ供給(送液)する。
【0065】
シリンダー240は、上下方向Zに延びる筒状に形成される。シリンダー240の上部は、開口している。シリンダー240の下部には、インク吸入口部241及びインク吐出口部242が形成される。インク吸入口部241は、インクタンク側供給路103を介してインクタンク23に接続される。インク吐出口部242は、記録ヘッド側供給路104を介して記録ヘッド22に接続される。
【0066】
ピストン250は、シリンダー240の開口を塞ぐように外側面がシリンダー240の内周面に当接した状態で、シリンダー240の内部に配置される。ピストン250は、シリンダー240の内部に配置された状態で上下方向Zに往復運動可能である。ピストン250の上面には、シリンダー240の内部から上方に向けて延びるピストンロッド251が連結される。
【0067】
収容タンク260は、パージ用インク供給路102に送液されるインクを一旦収容する。収容タンク260は、シリンダー240とピストン250の内側面とにより形成される空間である。
【0068】
ピストン駆動部270は、ボールネジ機構271と、モーター278と、を有して構成される。
ボールネジ機構271は、ボールネジ軸部材272と、ボールナット部材273と、一対の支持部材274A、274Bと、を有する。
【0069】
ボールネジ軸部材272は、上下方向Zに延びるように形成される。ボールネジ軸部材272は、外周面に雄ネジを有する。一対の支持部材274A、274Bは、ボールネジ軸部材272を上端側及び下端側で回転可能に支持する。
【0070】
ボールナット部材273は、内周面に雌ネジを有する。ボールナット部材273の雌ネジには、複数個のボール(不図示)を介してボールネジ軸部材272が螺合される。
【0071】
ボールナット部材273の端部は、ピストンロッド251の上端部に連結される。ボールナット部材273は、ピストンロッド251に連結される。そのため、雌ネジに螺合されるボールネジ軸部材272が回転した場合においても、ボールナット部材273の回転は規制される。これにより、ボールナット部材273は、ボールネジ軸部材272が回転することで、ボールネジ軸部材272の軸方向(上下方向Z)に往復運動する。
【0072】
モーター278は、ボールネジ軸部材272の上端部にカップリング275を介して接続される。モーター278は、カップリング275を介してボールネジ軸部材272を回転駆動可能に構成される。モーター278が回転することにより、ボールネジ軸部材272に螺合されるボールナット部材273は、ボールネジ軸部材272の軸方向(上下方向Z)に往復運動される。
【0073】
例えば、ボールナット部材273は、モーター278が負回転(例えば、上方から見た場合に反時計方向の回転)した場合に、上下方向Zにおける下方向に移動する。また、ボールナット部材273は、モーター278が正回転(例えば、上方から見た場合に時計方向の回転)した場合に、上下方向Zにおける上方向に移動する。
【0074】
ボールナット部材273が上下方向Zに往復運動することにより、ピストン250は、ボールナット部材273に連結されたピストンロッド251を介して上下方向Zに往復運動される。ピストン駆動部270は、収容タンク260の内部を加圧又は減圧する。
【0075】
ピストン駆動部270は、ピストン250が上下方向Zにおける上方向に移動することにより収容タンク260に収容されるインクを減圧する。また、ピストン駆動部270は、ピストン250が上下方向Zにおける下方向に移動することにより収容タンク260に収容されるインクを加圧する。
【0076】
つまり、ポンプ機構24は、ピストン駆動部270がピストン250を上下方向Zにおける上方向に移動させることにより、インクをインク吸入口部241から収容タンク260内に吸引させる。
そして、ポンプ機構24は、ピストン駆動部270がピストン250を上下方向Zにおける下方向に移動させることにより、インクをインク吐出口部242から記録ヘッド側供給路104に送り出す。つまり、ポンプ機構24は、ピストン駆動部270がピストン250を上下方向Zにおける下方向に移動させることにより、インクを記録ヘッド側供給路104を介して記録ヘッド22に送り出す。
【0077】
ここで、ポンプ機構24において、ピストン駆動部270がピストン250における上下方向Zの下方向への移動速度を調整することで、記録ヘッド22へのインクの流速を調整することができる。同様に、ポンプ機構24において、ピストン駆動部270がピストン250における上下方向Zの下方向への移動量(移動速度と移動時間)を調整することで、記録ヘッド22へのインクの供給量(送液量)を調整することができる。ここで、ピストン駆動部270(モーター278)は、後述する送液制御部280により制御される。
【0078】
続けて、図5から図6Dにより、第1実施形態のインクジェット記録装置1における機能部の構成について説明する。図5は、第1実施形態のインクジェット記録装置1における機能ブロック図である。図6Aは、メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶される予備パージ有無管理テーブル511である。図6Bは、メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶される予備パージ流速管理テーブル512である。図6Cは、メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶されるメインパージ流速管理テーブル513である。図6Dは、メモリー500(送液制御情報記憶部510)に記憶されるモーター駆動情報管理テーブル514である。
【0079】
図5に示すように、インクジェット記録装置1は、上述したポンプ機構24と、タイマー310と、インク温度センサー320と、主電源部330と、CPU400と、メモリー500とを有する。
【0080】
ポンプ機構24における構成等は、上述の通りである。ポンプ機構24は、送液制御部280により制御される。具体的には、ポンプ機構24のモーター278は、送液制御部280により制御される。
【0081】
モーター278は、所定流速でインクを記録ヘッド22に送液するメインパージと、メインパージよりも前に実施され所定流速以下の流速で記録ヘッド22に送液する予備パージと、を実施可能に構成される。モーター278は、送液制御部280からの指示に基づいて、メインパージを実施する。また、モーター278は、送液制御部280からの指示に基づいて、予備パージ及びメインパージを実施する。
【0082】
モーター278は、送液制御部280により、回転駆動状態又は停止状態に状態を切替されると共に、回転駆動状態においては回転数や回転時間を制御される。モーター278は、上述の通り、送液制御部280により、回転数が制御される。モーター278は、送液制御部280により、記録ヘッド22へ送液するインクの流速を調整するために、回転数を制御される。
また、モーター278は、上述の通り、送液制御部280により、回転時間を制御される。モーター278は、送液制御部280により、記録ヘッド22へ送液するインクの量を調整するために、回転時間を制御される。モーター278は、送液制御部280により、後述する送液制御情報記憶部510(モーター駆動情報管理テーブル514)に記憶されるモーター駆動情報に基づいて、回転数や回転時間を制御される。
【0083】
タイマー310は、時間情報を出力する。タイマー310は、CPU400に時間情報を出力する。タイマー310は、時間検知部403に時間情報を出力する。本実施形態において、タイマー310は、時間検知部403とともに計時部を構成する。
【0084】
インク温度センサー320は、記録ヘッド22に供給されるインクの温度情報を取得すると共に、CPU400に出力する。インク温度センサー320は、記録ヘッド22に供給されるインクの温度情報を、後述するインク温度検出部405に出力する。本実施形態において、インク温度センサー320は、インク温度検出部405とともにインク温度検知部を構成する。
【0085】
主電源部330は、動作部に電力を供給可能なオン状態と、電力を供給しないオフ状態とに状態切替可能に構成される。ここで、主電源部330がオフ状態であっても、タイマー310等に対しては待機電力が供給される。また、主電源部330がオフ状態においては、インクが記録ヘッド22に供給されることがない。
【0086】
CPU400は、パージタイミング管理部401と、送液状況検知部402と、時間検知部403と、時間判定部404と、インク温度検出部405と、インク温度判定部406と、送液制御部280と、を含む。
【0087】
パージタイミング管理部401は、所定のタイミングで後述する時間検知部403から計時結果情報を取得して判定を行うよう時間判定部404を制御する。パージタイミング管理部401は、例えば、主電源部330がオフ状態からオン状態に状態を切替された場合、後述する時間検知部403から計時結果情報を取得して判定を行うよう時間判定部404を制御する。また、パージタイミング管理部401は、例えば、所定時間間隔ごとに、時間判定部404に判定を行わせる。また、パージタイミング管理部401は、例えば、ユーザーからの指示を受け付ける受付部(不図示)においてパージ動作開始指示を受け付けた場合、時間判定部404に判定を行わせる。
【0088】
送液状況検知部402は、記録ヘッド22に対するインクの送液状況を検知可能に構成される。送液状況検知部402は、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されたときに所定の信号を時間判定部404に出力する。送液状況検知部402は、モーター278の駆動状況を監視して送液状況を検知してもよく、あるいは、記録ヘッド側供給路104におけるインクの流れを検知して送液状況を検知してもよい。
【0089】
時間検知部403は、送液状況検知部402における検知結果に基づいて、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの停止時間を計時可能に構成される。具体的には、時間検知部403は、タイマー310からの時間情報と、送液状況検知部402における検知結果とに基づいて、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時する。時間検知部403は、記録ヘッド22にインクが送液されない状態における時間を計時する。時間検知部403は、当該計時した停止時間の情報を、後述する送液制御部280に出力する。本実施形態において、時間検知部403は、タイマー310とともに計時部を構成する。
【0090】
時間判定部404は、時間検知部403により計時された停止時間が第1時間(例えば、24hr)以上であるかを判定する。時間判定部404は、時間検知部403から記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間(計時時間)の情報である停止時間の情報を取得すると共に、取得した停止時間の情報により示される停止時間が第1時間以上であるかを判定する。時間判定部404は、判定結果を送液制御部280(第1送液制御部281)に出力する。
【0091】
また、時間判定部404は、時間検知部403により計時された停止時間が、第1時間以上である第1時間帯、第1時間よりも短い第2時間(例えば、1hr)以上であって第1時間未満である第2時間帯、第2時間未満の第3時間帯のうちのいずれであるかを判定する(第1時間>第2時間、第1時間帯>第2時間帯>第3時間帯)。時間判定部404は、判定結果を送液制御部280(第2送液制御部282)に出力する。
【0092】
インク温度検出部405は、インク温度センサー320からの温度情報に基づいて、記録ヘッド22に送液されたインクの温度を検出する。インク温度検出部405は、検出した温度に関する温度情報をインク温度判定部406に出力する。
【0093】
インク温度判定部406は、インク温度検出部405により検出されたインクの温度が、第1温度以上である第1温度帯、第1温度よりも低い第2温度以上であって第1温度未満である第2温度帯、および、第2温度未満の第3温度帯のうちのいずれであるかを判定する(第1温度>第2温度、第1温度帯>第2温度帯>第3温度帯)。インク温度判定部406は、判定結果を送液制御部280に出力する。
【0094】
送液制御部280は、第1送液制御部281と、第2送液制御部282と、を含む。第1送液制御部281は、ポンプ機構24(送液部)に対して予備パージを実施させる。第1送液制御部281は、時間検知部403により計時された停止時間が第1時間以上である場合には、ポンプ機構24に予備パージを実施させると共に、停止時間が第1時間未満である場合にはポンプ機構24に予備パージを実施させない(図6A参照)。ここで、本実施形態において、第1送液制御部281は、予備パージにおける各温度帯ごとの流速を互いに同じ流速に設定する(図6B参照)。
【0095】
第2送液制御部282は、ポンプ機構24(送液部)に対してメインパージを実施させる。第2送液制御部282は、予備パージが実施される場合、予備パージ実施後にポンプ機構24(送液部)に対してメインパージを実施させる。第2送液制御部282は、予備パージが実施されない場合、所定のタイミングでポンプ機構24(送液部)に対してメインパージを実施させる。
【0096】
第2送液制御部282は、時間検知部403により計時された停止時間と、インク温度検出部405により検出されたインクの温度とに基づいて、メインパージにおけるインクの流速である所定流速を設定する。具体的には、第2送液制御部282は、各時間帯ごとに、インクの各温度帯に対応した流速を所定流速としてそれぞれ設定する(図6C参照)。第2送液制御部282は、各時間帯において、第1温度帯に対応する流速が第3温度帯に対応する流速よりも速くなるよう所定流速を設定する。
【0097】
詳細には、図6Cに示すように、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第1時間帯と判定された場合であって、インク温度判定部406によりインクの温度が第1温度帯と判定された場合には、所定流速を第1流速とする。また、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第1時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406により前記インクの温度が第2温度帯と判定されたときには所定流速を第1流速よりも遅い第2流速以上とする。また、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第1時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第3温度帯と判定されたときには所定流速を第2流速とする。
【0098】
第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第2時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第1温度帯と判定されたときには所定流速を第2流速とする。また、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第2時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第2温度帯と判定されたときには所定流速を第2流速よりも遅い第3流速以上とする。また、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第2時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第3温度帯と判定されたときには所定流速を第3流速とする。
【0099】
第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第3時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第1温度帯と判定されたときには所定流速を第1流速とする。また、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第3時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第2温度帯と判定されたときには所定流速を第1流速よりも遅い第2流速以上とする。また、第2送液制御部282は、時間判定部404により停止時間が第2時間帯と判定された場合において、インク温度判定部406によりインクの温度が第3温度帯と判定されたときには所定流速を第2流速とする。
【0100】
ここで、本実施形態において、所定流速は、平均流速である。
上記では、図6Cに示すように、停止時間が第2時間帯であると判断された場合、停止時間が第3時間帯であると判断された場合に比べ、所定流速は遅くなるように設定される場合を例示したが、停止時間が第2時間帯であると判断された場合の流速と、停止時間が第3時間帯であると判断された場合の流速とが逆の関係になるように設定されてもよい。例えば、停止時間が第2時間帯であると判断された場合に、インクの温度が第1、第2および第3温度帯であると判断されたときに、所定流速が、それぞれ、第1流速、第2流速以上第1流速未満、および第2流速となるように設定され、一方、停止時間が第3時間帯であると判断された場合に、インクの温度が第1、第2および第3温度帯であると判断されたときに、所定流速が、それぞれ、第2流速、第3流速以上第2流速未満、および第3流速となるように設定されてもよい。例えば、第2時間が比較的短く設定され、第2時間帯においても、インクの粘度の上昇が大きくない場合には、このように、第2時間帯において流速を大きく設定しても、インク流路やポンプ機構を構成する部材の破損等が生じることを抑制できる。なお、このとき、第2時間帯および第3時間帯における流速をほぼ同じ大きさとなるように設定してもよい。
【0101】
第2送液制御部282は、ポンプ機構24に対して、連続的又は間欠的に送液させると共に、メインパージにおいて平均流速が所定流速となる範囲で流速を可変可能に構成される。例えば、第2送液制御部282は、メインパージにおける初期段階においては流速を遅くし、途中から流速を速くするよう、ポンプ機構24を制御することができる。この場合、記録ヘッド22のダンパー効果(急激な圧力上昇を吸収する効果)が生じた後に強い圧力を記録ヘッド2に伝えることができる。
【0102】
また、例えば、第2送液制御部282は、メインパージにおける初期段階において流速を速くし、途中から流速を遅くするよう、ポンプ機構24を制御することができる。この場合、記録ヘッド22において、インクが強い圧力となる状態を長い時間保持できる。
【0103】
また、例えば、第2送液制御部282は、インクを間欠的に送液するよう、ポンプ機構24を制御できる。また、例えば、第2送液制御部282は、インクを間欠的に送液すると共に、流速を段々と遅くするよう、ポンプ機構24を制御できる。この場合、記録ヘッド22において、不吐出の発生を抑えつつ、好適なパージを行うことができる。更に、第2送液制御部282は、インクを間欠的に送液すると共に、最初の送液において、上述のように流速を変えることも可能である。
【0104】
また、第2送液制御部282は、流速に対応した流量を設定可能である。本実施形態において、第2送液制御部282は、第1流速に対応する流量が、第2流速に対応する流量以上となるよう流量を設定する。
【0105】
上述のように、送液制御部280(第1送液制御部281及び第2送液制御部282)は、後述するメモリー500の送液制御情報記憶部510(予備パージ有無管理テーブル511、予備パージ流速管理テーブル512、メインパージ流速管理テーブル513)を参照して、予備パージの有無を判定し、予備パージの流速を設定し、メインパージの流速を設定する。
【0106】
そして、送液制御部280(第1送液制御部281及び第2送液制御部282)は、後述するメモリー500の送液制御情報記憶部510(モーター駆動情報管理テーブル514)を参照して、ポンプ機構24(モーター278)を制御する。
【0107】
送液制御部280(第1送液制御部281及び第2送液制御部282)は、上記により設定した流速で、設定した流量となるまでインクを送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。具体的には、第1送液制御部281及び第2送液制御部282は、流速ごとに設定されたモーター回転数(rpm)で駆動時間(s)だけ回転駆動させるようモーター278を制御する(図6D参照)。
【0108】
例えば、図6Dに示すように、所定流速が第1流速となるように設定される場合、モーター回転数A(rpm)で駆動時間a(s)となるように、流速が第2流速となるように設定される場合、モーター回転数B(rpm)で駆動時間b(s)となるように、および、流速が第3流速となるように設定される場合、モーター回転数C(rpm)で駆動時間c(s)となるように、それぞれ制御され、このとき、例えば、モーター回転数についてはA>B>C、駆動時間についてはa>b>cとなるように制御される。また、所定流速が第1流速よりも遅い第2流速以上となるように設定される場合、モーター回転数は、A(rpm)よりも小さくB(rpm)以上で、駆動時間は、a(s)よりも小さくb(s)以上となるように設定されてもよい。同様に、所定流速が第2流速よりも遅い第3流速以上となるように設定される場合、モーター回転数は、B(rpm)よりも小さくC(rpm)以上で、駆動時間は、b(s)よりも小さくc(s)以上となるように設定されてもよい。
【0109】
また、第1流速、第2流速、および第3流速にそれぞれ対応する目標圧力が、例えば、第1流速に対応する目標圧力>第2流速に対応する目標圧力>第3流速に対応する目標圧力という関係となるように、各流速が設定されてもよい。例えば、第1流速に対応する目標圧力、第2流速に対応する目標圧力、および第3流速に対応する目標圧力が、それぞれ、120kPa、90kPa、および30kPaとなるように流速が設定される。
【0110】
メモリー500は、送液制御情報記憶部510を含む。送液制御情報記憶部510は、予備パージ有無管理テーブル511と、予備パージ流速管理テーブル512と、メインパージ流速管理テーブル513と、モーター駆動情報管理テーブル514とを含む。
【0111】
図6Aに示すように、予備パージ有無管理テーブル511は、各時間帯ごとに設定された予備パージの有無に関する情報を格納する。予備パージ有無管理テーブル511は、第1送液制御部281により参照される。本実施形態において、予備パージ有無管理テーブル511は、停止時間が第1時間以上(第1時間帯)の場合には予備パージ有り、停止時間が第1時間未満(第2時間帯及び第3時間帯)の場合には予備パージ無し、という情報を格納する。
【0112】
図6Bに示すように、予備パージ流速管理テーブル512は、各時間帯ごとに設定された予備パージにおけるインクの流速に関する情報を格納する。予備パージ流速管理テーブル512は、第1送液制御部281により参照される。本実施形態において、予備パージ流速管理テーブル512は、停止時間が第1時間以上(第1時間帯)の場合にのみ予備パージにおける流速が設定されており、いずれの温度帯でも第3流速(低速)に設定されているという情報を格納する。
【0113】
図6Cに示すように、メインパージ流速管理テーブル513は、各時間帯と、各温度帯との組み合わせごとに設定されたインクの流速に関する情報を格納する。メインパージ流速管理テーブル513は、第2送液制御部282により参照される。本実施形態において、メインパージ流速管理テーブル513は、時間検知部403により計時された停止時間情報と、インク温度検出部405により検出されたインクの温度情報とに基づいて設定される流速の情報を格納する。
【0114】
図6Dに示すように、モーター駆動情報管理テーブル514は、各流速ごとに設定されるモーター回転数(rpm)の情報、駆動時間(s)の情報及び流量(ml)の情報を格納する。モーター駆動情報管理テーブル514は、第1送液制御部281及び第2送液制御部282により参照される。本実施形態において、モーター駆動情報管理テーブル514は、各流速となるようなモーター回転数(rpm)の情報、及び設定された流量(ml)になるような駆動時間(s)の情報を格納する。
【0115】
ここで、上述の時間として、例えば、第1時間を168時間(1週間)、第2時間を24時間(1日)とした場合を例示できる。この場合、第1時間帯は168時間(1週間)以上であり、第2時間帯は24時間(1日)以上168時間(1週間)未満であり、第3時間帯は24時間(1日)未満である。
ここで、更に細やかな対応を目指す場合、上記時間帯数を増やすことができる。例えば、第3時間を1時間とし、新たな第4時間帯を1時間以上24時間(1日)未満とすることができる。この場合、第4時間帯において設定されたメインパージにおける流速は、第3時間帯において設定された流速以下に設定される。また、各時間帯における時間の幅を狭くして、時間帯数を増やすことも可能である。この場合、当然に、流速も更に多段的に設定されてもよい。
【0116】
また、上述の温度として、例えば、第1温度を28℃、第2温度を18℃とした場合を例示できる。この場合、第1温度帯は28℃以上であり、第2温度帯は18℃以上28℃未満であり、第3温度帯は18℃未満である。ここで、更に細やかな対応を目指す場合、上記温度帯数を増やすことができる。例えば、各温度帯における温度の幅を狭くして、温度帯数を増やすことができる。
また、インクにとって通常使用される温度の範囲外において、温度帯を設定してもよい。例えば、高温度帯(例えば、32.5℃以上)を設定してもよい。高温度帯では、他の温度帯に比べてインクの揮発成分が多く蒸発するため、予備パージやメインパージの条件が他の温度帯とくらべて大きく異なる(予備パージの時間が長い、予備パージの流量が多い等)ように設定されていてもよい。逆に、低温度帯(例えば、10℃未満)を設定してもよい。低温度帯では、他の温度帯に比べてインクの粘度が高くなっているため、予備パージやメインパージの条件が他の温度帯とくらべて大きく異なる(流速が遅くなる)ように設定されていてもよい。
【0117】
また、上述の流速として、例えば、第1流速を4ml/s、第2流速を2から3ml/s、第3流速を1ml/sとした場合を例示できる。
また、上記の流量として、第1流速における流量x、第2流速における流量y、および第3流速における流量zとすると、例えば、x>y>zという関係が成り立つように設定される。例えば、第1流速における流量xを4ml、第2流速における流量yを2ml、第3流速における流量zを0.5mlとした場合を例示できる。更には、上記流量として、例えば、第1流速における流量x、第2流速における流量y、第3流速における流量zのいずれもが同じとなるように設定される。例えば、第1流速における流量x、第2流速における流量y、第3流速における流量zのいずれもが2mlとした場合を例示できる。
【0118】
続けて、図7により、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるパージ動作を説明する。図7は、第1実施形態のインクジェット記録装置1におけるパージ動作を説明するフローチャートである。
【0119】
図7に示すように、ステップST101において、ユーザーは、主電源部330をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、主電源部330は、電力を各動作部に供給可能な状態となる。
【0120】
次いで、ステップST102において、パージタイミング管理部401は、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時するよう時間検知部403に指示する。そして、時間検知部403は、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時する。
【0121】
続けて、ステップST103において、インク温度検出部405は、記録ヘッド22に送液されるインクの温度を検出する。そして、インク温度検出部405は、検出結果をインク温度判定部406に出力する。
【0122】
続けて、ステップST104において、インク温度判定部406は、検出された温度が第1温度帯、第2温度帯及び第3温度帯のうちのいずれの温度帯であるかを判定する。
【0123】
続けて、第1送液制御部281は、時間検知部403により計時された停止時間が第1時間以上であるか否かを判定する。第1送液制御部281は、停止時間が第1時間以上であると判定した場合(ST105、YES)、処理をステップST106に進める。第1送液制御部281は、停止時間が第1時間未満であると判定した場合(ST105、NO)、処理をステップST107に進める。
【0124】
続けて、ステップST106において、第1送液制御部281は、送液制御情報記憶部510を参照して、予備パージにおける流速を設定する。本実施形態において、第1送液制御部281は、予備パージにおける流速を第3流速に設定する(図6B参照)。
【0125】
続けて、ステップST107において、時間判定部404は、検知された停止時間が第1時間帯、第2時間帯及び第3時間帯のいずれであるかを判定する。
【0126】
続けて、ステップST108において、第2送液制御部282は、判定された時間帯と、判定された温度帯とに基づいて、メインパージの流速を設定する(図6C参照)。
【0127】
続けて、ステップST109において、予備パージがある場合、第1送液制御部281は、送液制御情報記憶部510を参照して、ポンプ機構24に対して予備パージを実施させるよう制御する(図6D参照)。本実施形態において、第1送液制御部281は、ポンプ機構24を構成するモーター278に対して、モーター回転数C(rpm)で駆動時間c(s)だけ駆動するよう指示する。
【0128】
続けて、ステップST110において、第2送液制御部282は、送液制御情報記憶部510を参照して、ポンプ機構24に対してメインパージを実施させるよう制御する(図6D参照)。第2送液制御部282は、ポンプ機構24を構成するモーター278に対して、設定した流速に対応して設定されたモーター回転数(rpm)で同様に設定された駆動時間(s)だけ駆動するよう指示する。
【0129】
例えば、設定された流速が第1流速である場合、第2送液制御部282は、モーター回転数Aで駆動時間a(s)だけ駆動するように指示する。同様に、設定された流速が第2流速である場合、第2送液制御部282は、モーター回転数Bで駆動時間b(s)だけ駆動するように指示する。設定された流速が第1流速よりも遅く第2流速以上である場合、第2送液制御部282は、Aよりも小さくB以上のモーター回転数で、a(s)よりも小さくb(s)以上の駆動時間だけ駆動する。設定された流速が第2流速よりも遅く第3流速以上である場合、第2送液制御部282は、Bよりも小さくC以上のモーター回転数で、b(s)よりも小さくc(s)以上の駆動時間だけ駆動するように指示する。
そして、メインパージ終了後、インクジェット記録装置1における一連のパージ動作が終了する。
【0130】
ここで、パージにおける各要素の動作は以下の通りである。インクジェット記録装置1は、印刷用ポンプ111の作動を停止状態で維持すると共に、第1開閉弁110を閉止する(閉止状態を維持する)。これにより、印刷用インク供給路105は、インクが流通されない状態となる。次いで、インクジェット記録装置1は、パージ動作(インクタンク23から記録ヘッド22へインクを強制的に供給する動作)を開始する。
詳細には、ピストン駆動部270は、モーター278を負回転方向(例えば、上方から見た場合に反時計方向)に回転するように駆動することにより、ボールネジ軸部材272を回転させる。そして、ボールナット部材273を第1速度で加圧方向(上下方向Zにおける下方向)に移動させる。これにより、ボールナット部材273は、ピストンロッド251を介してピストン250を加圧方向に第1速度で移動させる。
これにより、収容タンク260に収容されるインクは、インク吐出口部242から記録ヘッド側供給路104へ送り出され、記録ヘッド22へ供給される。そして、記録ヘッド22に供給される大量のインクは、ノズルから噴射される。このように、ノズルの詰まりを解消する等のパージ処理が行われる。
【0131】
本実施形態によれば、インクにおける粘度の変化に対応した記録ヘッドへのインクの送液が可能なインクジェット記録装置1を提供することができる。本実施形態によれば、インクにおける温度による粘度の変化と、蒸発による粘度上昇とに対応して、ヘッド部へのインクの送液を制御可能なインクジェット記録装置1を提供することができる。
【0132】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間である停止時間と、インク温度とを指標として、記録ヘッド22に送液するインクの流速を変更する。これにより、本実施形態のインクジェット記録装置1は、パージ動作において、送液する際におけるインクの流速を適正に変更することができる。これにより、本実施形態のインクジェット記録装置1は、記録ヘッド22に送液するインクの圧力が過剰に上昇することを抑制できる。
【0133】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、計時された停止時間が第1時間以上である場合、自動的に予備パージを実施するよう構成される。これにより、本実施形態のインクジェット記録装置1は、最初に粘度が上昇してしまったインクをノズルから押し出し、その後に温度等を考慮した適正なパージを行うことができる。また、これにより、本実施形態のインクジェット記録装置1は、インクを送液する際に、急激な圧力の上昇による破損等の不具合を回避すると共に、パージ効果を好適に得ることができる。また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、長時間使用しない期間があっても、インクの粘度の変化による影響でダメージを受けることを抑制できる。
【0134】
次に、図8から図10により、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにおける機能ブロック図である。図9は、メモリー500A(送液制御情報記憶部510A)に記憶されるモーター駆動情報管理テーブル516である。図10は、第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにおけるパージ動作を説明するフローチャートである。
【0135】
第2実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第2実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜援用される。
【0136】
図8に示すように、インクジェット記録装置1Aは、上述したポンプ機構24と、タイマー310と、環境温度センサー325と、環境湿度センサー326と、主電源部330と、CPU400Aと、メモリー500Aとを有する。
【0137】
環境温度センサー325は、環境温度に関する温度情報を取得する。環境温度センサー325は、例えば、本体2の裏側に取り付けられる。環境温度センサー325は、本体2の周囲の環境温度に関する温度情報を取得すると共に、取得した温度情報を後述する環境温度検出部411に出力する。本実施形態において、環境温度センサー325は、環境温度検出部411とともに環境温度検知部を構成する。
【0138】
環境湿度センサー326は、環境湿度に関する湿度情報を取得する。環境湿度センサー326は、例えば、環境温度センサー325と並んで配置される。環境湿度センサー326は、本体2の周囲の環境湿度に関する湿度情報を取得すると共に、取得した湿度情報を後述する環境湿度検出部412に出力する。本実施形態において、環境湿度センサー326は、環境湿度検出部412とともに環境湿度検知部を構成する。
【0139】
CPU400Aは、パージタイミング管理部401と、送液状況検知部402と、時間検知部403と、時間判定部404と、環境温度検出部411と、環境湿度検出部412と、環境履歴指数算出部413と、環境履歴指数判定部414と、送液制御部280Aと、を含む。
【0140】
環境温度検出部411は、環境温度センサー325からの環境温度情報に基づいて、環境温度を検出する。環境温度検出部411は、検出した温度に関する温度情報を環境履歴指数算出部413に出力する。
【0141】
環境湿度検出部412は、環境湿度センサー326からの環境湿度情報に基づいて、環境湿度を検出する。環境湿度検出部412は、検出した湿度に関する湿度情報を環境履歴指数算出部413に出力する。
【0142】
環境履歴指数算出部413は、時間検知部403により計時された停止時間の値である停止時間値と、環境温度検出部411により検出(検知)された環境温度の値である環境温度値と、環境湿度検出部412により検出(検知)された環境湿度の値である環境湿度値とに基づいて、環境履歴指数を算出する。環境履歴指数が大きいほど、インクに含まれる溶剤等が蒸発してインクの粘度が高くなる。
【0143】
環境履歴指数算出部413は、例えば、検出(検知)された環境温度値と計時された停止時間値との積、及び/又は、所定値から検出(検知)された環境湿度値を減じた値と計時された停止時間値との積に基づいて環境履歴指数を算出する。
【0144】
環境履歴指数算出部413は、例えば、検出(検知)された環境温度のうち所定温度を超えた部分と、計時された停止時間値との積、及び/又は、検出(検知)された環境湿度のうち所定湿度を下回った部分と、計時された停止時間値との積に基づいて環境履歴指数を算出する。
【0145】
例えば、検知された環境温度のうち所定温度を超えた部分と、計時された停止時間値との積(第1の積)と、検知された環境湿度のうち所定湿度を下回った部分と、計時された停止時間値との積(第2の積)との和(第1の積と第2の積との和)により、環境履歴指数を算出してもよい。あるいは、検知された環境温度のうち所定温度を超えた部分と、計時された停止時間値との積(第1の積)と、検知された環境湿度のうち所定湿度を下回った部分と、計時された停止時間値との積(第2の積)との積(第1の積と第2の積との積)により、環境履歴指数を算出してもよい。
【0146】
環境履歴指数判定部414は、環境履歴指数算出部413により算出された環境履歴指数が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、環境履歴指数判定部414は、算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上であるか、第2環境履歴指数K2以上であるか、第3環境履歴指数K3以上であるか、等を判定する(図9参照)。なお、本実施形態においては、第1環境履歴指数K1<第2環境履歴指数K2<第3環境履歴指数K3となるように設定されている。
【0147】
送液制御部280Aは、環境履歴指数算出部413により算出された環境履歴指数に基づいて、ポンプ機構24(モーター278)を制御する。送液制御部280Aは、環境履歴指数算出部413により算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上の場合、後述するメモリー500Aの送液制御情報記憶部510A(モーター駆動情報管理テーブル516)に基づいて、インクをヘッド部に送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。
【0148】
送液制御部280Aは、環境履歴指数算出部413により算出された環境履歴指数が大きいほど、速い流速でインクを記録ヘッド22に送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。また、送液制御部280Aは、例えば、環境履歴指数算出部413により算出された環境履歴指数が大きい場合に、予備パージを実施させた後にメインパージを実施させるように、ポンプ機構24(モーター278)を制御してもよい。具体的には、送液制御部280Aは、算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上第2環境履歴指数K2未満であると判定された場合、インクを記録ヘッド22に第1流速でd秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。
また、送液制御部280Aは、算出された環境履歴指数が第2環境履歴指数K2以上第3環境履歴指数K3未満であると判定された場合、インクを記録ヘッド22に第2流速でe秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。また、送液制御部280Aは、算出された環境履歴指数が第3環境履歴指数K3以上であると判定された場合、インクを記録ヘッド22に第3流速でf1秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御すると共に、続けてインクを記録ヘッド22に第2流速でf2秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。
【0149】
メモリー500Aは、送液制御情報記憶部510Aを含む。送液制御情報記憶部510Aは、モーター駆動情報管理テーブル516を含む。図9に示すように、モーター駆動情報管理テーブル516は、算出された環境履歴指数に対応するモーター回転数、駆動時間等のモーター駆動情報を含む。
【0150】
本実施形態において、モーター駆動情報管理テーブル516に含まれる情報は以下の通りである。算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上第2環境履歴指数K2未満である場合、モーター回転数はD(rpm)であり、モーター駆動時間(送液時間)はd(s)である。この場合におけるインクの流速は第1流速で、目標圧力はP1である。算出された環境履歴指数が第2環境履歴指数K2以上第3環境履歴指数K3未満である場合、モーター回転数はE(rpm)であり、モーター駆動時間(送液時間)はe(s)である。この場合におけるインクの流速は第2流速で、目標圧力はP1である。
算出された環境履歴指数が第3環境履歴指数K3以上である場合、モーター回転数はF(rpm)→E(rpm)であり、モーター駆動時間(送液時間)はf1(s)→f2(s)である。この場合におけるインクの流速は第3流速→第2流速で、目標圧力はP2→P1である。
ここで、各モーター回転数は、D(rpm)>E(rpm)>F(rpm)を満たす。また、各駆動時間は、d(s)>e(s)>f(s)を満たす。また、各流速は、上述の通り、第1流速>第2流速>第3流速を満たす。また、各目標圧力は、P1>P2を満たす。
【0151】
続けて、図10により、第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにおけるパージ動作を説明する。図10は、第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにおけるパージ動作を説明するフローチャートである。
【0152】
図10に示すように、ステップST201において、ユーザーは、主電源部330をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、主電源部330は、電力を各動作部に供給可能な状態となる。
【0153】
次いで、ステップST202において、パージタイミング管理部401は、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時するよう時間検知部403に指示する。そして、時間検知部403は、記録ヘッド22に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時する。
【0154】
続けて、ステップST203において、環境温度検出部411は、環境温度を検出する。
また、ステップST204において、環境湿度検出部412は、環境湿度を検出する。
そして、ステップST205において、環境履歴指数算出部413は、停止時間値と、環境温度値と、環境湿度値とに基づいて、環境履歴指数を算出する。
【0155】
続けて、ステップST206において、環境履歴指数判定部414は、算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上であるか否かを判定する。
環境履歴指数判定部414により、算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上であると判定された場合(ST206、YES)、CPU400Aは、処理をステップST207に進める。
また、環境履歴指数判定部414により、算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1未満であると判定された場合(ST206、NO)、CPU400Aは、処理を終了させる。この場合、パージ動作は行われない。
【0156】
続けて、ステップST207において、環境履歴指数判定部414は、算出された環境履歴指数が、第2環境履歴指数K2以上であるか否か、第3環境履歴指数K3以上であるか否かを判定する。言い換えると、環境履歴指数判定部414は、算出された環境履歴指数が、第1環境履歴指数K1以上第2環境履歴指数K2未満であるか(A)、第2環境履歴指数K2以上第3環境履歴指数K3未満であるか(B)、第3環境履歴指数K3以上であるか(C)を判定する。
【0157】
環境履歴指数判定部414により、算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数K1以上第2環境履歴指数K2未満であると判定された場合(ST207、A)、CPU400Aは、処理をステップST208に進める。
また、環境履歴指数判定部414により、算出された環境履歴指数が第2環境履歴指数K2以上第3環境履歴指数K3未満であると判定された場合(ST207、B)、CPU400Aは、処理をステップST209に進める。
また、環境履歴指数判定部414により、算出された環境履歴指数が第3環境履歴指数K3以上であると判定された場合(ST207、C)、CPU400Aは、処理をステップST210に進める。
【0158】
続けて、ステップST208において、送液制御部280Aは、インクを記録ヘッド22に第1流速でd秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。
【0159】
続けて、ステップST209において、送液制御部280Aは、インクを記録ヘッド22に第2流速でe秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。
【0160】
続けて、ステップST210において、送液制御部280Aは、インクを記録ヘッド22に第3流速でf1秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御すると共に、連続してインクを記録ヘッド22に第2流速でf2秒間送液するようポンプ機構24(モーター278)を制御する。
【0161】
上述したように、図10に示すフローチャートを参照して説明した画像形成装置においては、環境履歴指数が第1環境履歴指数未満、第1環境履歴指数以上第2環境履歴指数未満、第2環境履歴指数以上第3環境履歴指数未満、および第3環境履歴指数以上の、4つの値域のうちのいずれであるかを判断する場合を例に説明したが、これに制限されない。さらに細やかな対応を行う場合には、環境履歴指数の大きさにより異なる所定流速を設定するための値域をさらに多段階にしてもよい。
【0162】
例えば、上記の画像形成装置において、第3環境履歴指数K3より大きい第4環境履歴指数K4をさらに設定してもよい。環境履歴指数が第4環境履歴指数K4以上である場合には、環境履歴指数が第4環境履歴指数K4未満である場合に比べ、インクの粘度がさらに上昇している可能性があるので、例えば、第3流速でf1秒間以上送液することにより、予備パージを行った後、第2流速で送液するように、画像形成装置が構成されていてもよい。また、例えば、あらかじめ第3流速よりも遅い速度となるように送液した後、第3流速以上で送液するように、画像形成装置が構成されていてもよい。第4環境履歴指数K4以外にも、環境履歴指数の大きさにより所定流速を設定するための値域をさらに多くの段階に設定してもよい。また、この値域を、例えば2段階に設定し、画像形成装置の構成を簡略化してもよい。
【0163】
本実施形態のインクジェット記録装置1Aは、第1実施形態におけるインクジェット記録装置1における効果と同様の効果を奏する。また、本実施形態によれば、インクジェット記録装置1Aは、インクが記録ヘッド22に送液されていない時間(停止時間)と、環境温度と環境湿度とにより算出される環境履歴指数とに基づいて、記録ヘッド22に送液するインクの流速を変更する。これにより、インクジェット記録装置1Aは、環境条件によるインク粘度の変化に対応して、ヘッド部へのインクの送液を制御可能である。
【0164】
上記の実施形態においては、環境温度値および環境湿度値に基づいて環境履歴指数を算出する場合を例に説明したが、環境履歴指数は、例えば、環境温度値および環境湿度値のいずれか一方に基づいて算出されてもよい。例えば、環境履歴指数は、環境温度値に基づいて算出されてもよい。また、環境履歴指数は、環境湿度値に基づいて算出されてもよい。
【0165】
また、上記の実施形態においては、環境履歴指数として、検知された環境温度のうち所定温度を超えた部分と、計時された停止時間値との積、及び/又は、検知された環境湿度のうち所定湿度を下回った部分と、計時された停止時間値との積に基づいて環境履歴指数を算出する場合を例示したが、環境履歴指数は、例えば温度および湿度と蒸発速度との関係の観点から、以下の方法により算出してもよい。
温度および湿度と蒸発速度との関係を調べたところ、以下のような一定の関係があることから、この関係に基づき、環境履歴指数を算出することができる。
【0166】
図11は、温度および湿度と、蒸発速度との関係を示す表である。図11に示すように、温度を10℃、20℃、30℃、および40℃の4通り、湿度を20%、40%、60%、80%、および100%の5通りとして、蒸発速度L(kg/h)を以下の式(1)により算出した。
L=C(Pw−Pa)A (1)
L(kg/h):単位時間あたりの蒸発水量(蒸発速度)
C:蒸発係数、0.0152v+0.0178
v(m/s):水面上の風速
Pw:水温と等しい温度の空気の飽和水蒸気圧
Pa:空気の飽和水蒸気圧
A(m^2):水面の面積
なお、t(℃)における飽和水蒸気圧E(t)(hPa)は、下記式(2)により算出した。
E(t)=6.11×10^(7.5t/(t+237.3) (2)
水面上の風速v=1.0(m/s)とし、水面の面積A=1.0m^2とした。また、PaはPwと環境湿度との積とした。
【0167】
図12は、上記のように求めた温度と蒸発速度との関係を示すグラフである。また、図13は、湿度と蒸発速度との関係を示すグラフである。図12においては、図11に示す湿度が20%Rh、40%Rh、60%Rh、80%Rh、および100%Rhで一定としたときの、温度に対する蒸発速度の変化を、湿度ごとに示している。図13においては、図11に示す温度が10℃、20℃、30℃、および40℃で一定としたときの、湿度に対する蒸発速度の変化を、温度ごとに示している。図12から、湿度を一定とした場合、温度が高くなるほど蒸発速度が増加することがわかる。一方、図13から、温度を一定とした場合、湿度が高くなるほど蒸発速度は減少することがわかる。この関係を考慮して、環境履歴指数を、例えば、温度(環境温度値)と停止時間との積、および湿度(環境湿度値)の逆数の値と停止時間との積とに基づいて算出してもよい。
【0168】
また、図12に示すように、環境湿度を一定とした場合、温度が高くなるに従って蒸発速度が指数関数的に増大している。このことから、温度に対応する値として、温度のべき乗に基づく値と停止時間との積の値を用いてもよい。例えば、図12のグラフから、温度と蒸発速度との関係式を2次近似で表すことができる。温度に対応する値として、この2次の関係式を用いて算出した値を用いてもよい。この場合、環境履歴指数を、温度の2次の値(すなわち、温度の2乗の値)に基づき求めた値と停止時間との積の値と、湿度(環境湿度値)の逆数の値と停止時間との積とに基づいて算出してもよい。なお、図12のグラフから、関係式を指数近似により求め、環境履歴指数を算出してもよい。また、より簡単に、関係式を1次近似により求めてもよい。
【0169】
図12においては、例えば、湿度が20%のグラフは、2次近似により、蒸発速度L(kg/h)=0.0007×t^2+0.1761と表される。また、指数近似により、L=0.0985e^0.0597t、1次近似により、0.029×t−0.1838と表される。この関係式を利用して、例えば、温度変化に対応する蒸発速度の変化を、環境履歴指数の算出に用いてもよい。
【0170】
図12に示すように、湿度が低いほど温度変化に対し、蒸発速度は大きく変化する。例えば、湿度が20%である場合には、湿度が40、60、および80%である場合に比べ、温度変化に対し、蒸発速度が大きく変化する。このことから、温度と蒸発速度との関係式を用いて環境履歴指数を算出する場合には、湿度が低い条件での関係式を用いることが好ましい。例えば、図12においては、湿度が20%の条件の関係式を用いることが好ましい。湿度が低い条件での関係式を用いることにより、より確実にパージを行うことができ、上述したインク流路やポンプ機構の構成部材の破損等を抑制することができるという利点がある。
【0171】
また、環境履歴指数を、例えば、温度変化に対応する値と停止時間との積、および湿度変化に対応する値の逆数の値と停止時間との積に基づいて算出してもよい。また、例えば、検知された温度から所定温度を減じた値と停止時間との積、および所定湿度から検知された湿度を減じた値の逆数の値と停止時間との積に基づいて、環境履歴指数を算出してもよい。このとき、2つの積の和を環境履歴指数としてもよい。また、2つの積同士の積を環境履歴指数としてもよい。さらに、2つの積のうち、いずれか一方に基づいて環境履歴指数を算出してもよい。
上記のように、蒸発速度という観点から環境履歴指数を算出することにより、温度および/または湿度の変化の、蒸発速度に対する影響を考慮して、流速を制御することができる。
【0172】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、本実施形態において、画像形成装置として、カラーのインクジェット記録装置(プリンター)について説明しているが、これに限定されず、画像形成装置(インクジェット記録装置)は、モノクロプリンター、モノクロコピー機、カラーコピー機、ファクシミリ又はこれらの複合機等であってもよい。
【0173】
また、記録媒体は、用紙Tに制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。
【0174】
また、送液制御部は、モーターを時間(s)で管理しているが、これに限定されず、例えば、パルス数で管理してもよい。
【0175】
また、第1流速、第2流速及び第3流速は、インクジェット記録装置1において許容される最大圧力や流路における抵抗に応じて設定される。
【符号の説明】
【0176】
1……インクジェット記録装置、22……記録ヘッド(ヘッド部)、23……インクタンク、24……ポンプ機構(送液部)、101……インク供給路、102……パージ用インク供給路(送液路)、240……シリンダー(シリンジ部)、250……ピストン(プランジャー部)、260……収容タンク、270……ピストン駆動部、280……送液制御部、281……第1送液制御部、282……第2送液制御部、402……送液状況検知部、403……時間検知部、404……時間判定部、405……インク温度検出部、406……インク温度判定部、510……送液制御情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインクタンクと、
インクを吐出するためのノズルを有するヘッド部と、
前記インクタンクに収容されるインクを前記ヘッド部に送液可能な送液路と、
前記送液路を介して前記インクタンクに収容されたインクを前記ヘッド部に送液する送液部であって、所定流速でインクを前記ヘッド部に送液するメインパージと、前記メインパージよりも前に実施され前記所定流速以下の流速でインクを前記ヘッド部に送液する予備パージと、を実施可能な送液部と、
前記ヘッド部に対するインクの送液状況を検知可能な送液状況検知部と、
前記送液状況検知部における検知結果に基づいて、前記ヘッド部に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時可能な計時部と、
前記ヘッド部に供給されるインクの温度を検出するインク温度検出部と、
前記送液部に対して前記予備パージを実施させる第1送液制御部であって、前記計時部により計時された時間である停止時間が第1時間以上である場合には前記送液部に予備パージを実施させると共に、前記停止時間が前記第1時間未満である場合には前記送液部に予備パージを実施させない第1送液制御部と、
前記送液部に対して前記メインパージを実施させる第2送液制御部であって、前記計時部により計時された停止時間と、前記インク温度検出部により検出されたインクの温度とに基づいて、前記所定流速を設定する第2送液制御部と、を備える
画像形成装置。
【請求項2】
前記停止時間が、
前記第1時間以上である第1時間帯、
前記第1時間よりも短い第2時間以上であって前記第1時間未満である第2時間帯、および、
前記第2時間未満の第3時間帯のうちのいずれであるかを判定する時間判定部と、
前記インク温度検出部により検出されたインクの温度が、
第1温度以上である第1温度帯、
前記第1温度よりも低い第2温度以上であって前記第1温度未満である第2温度帯、および、
前記第2温度未満の第3温度帯のうちのいずれであるかを判定する温度判定部と、を備え、
前記第2送液制御部は、
前記各時間帯ごとに、前記インクの各温度帯に対応した流速を前記所定流速としてそれぞれ設定すると共に、
前記各時間帯において、前記第1温度帯に対応する流速が前記第3温度帯に対応する流速以上となるよう前記所定流速を設定する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2送液制御部は、
前記時間判定部により前記停止時間が前記第1時間帯と判定された場合において、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第1温度帯と判定されたときには前記所定流速を第1流速とし、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第2温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第1流速よりも遅い第2流速以上とし、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第3温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速とし、
また、前記時間判定部により前記停止時間が前記第2時間帯と判定された場合において、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第1温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速とし、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第2温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速よりも遅い第3流速以上とし、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第3温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第3流速とし、
また、前記時間判定部により前記停止時間が前記第3時間帯と判定された場合において、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第1温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第1流速とし、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第2温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第1流速よりも遅い第2流速以上とし、
前記温度判定部により前記インクの温度が前記第3温度帯と判定されたときには前記所定流速を前記第2流速とする
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2送液制御部は、前記流速に対応した流量を設定可能であり、前記第1流速に対応する流量が、前記第2流速に対応する流量以上となるよう流量を設定する
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1送液制御部は、予備パージにおける前記各温度帯ごとの流量を互いに同じ流量に設定する
請求項2から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
動作部と、
前記動作部に電力を供給可能なオン状態と電力を供給しないオフ状態とに状態切替可能に構成される主電源部と、
前記主電源部が前記オフ状態から前記オン状態に状態切替された場合、前記計時部から計時結果情報を取得して判定を行うよう前記時間判定部を制御するパージタイミング管理部と、を備える
請求項2から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記送液部は、
シリンジ部と、
移動可能に前記シリンジ部に収容されるプランジャー部と、
前記プランジャー部を移動させる移動機構と、を有する
請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
インクを収容するインクタンクと、
インクを吐出するためのノズルを有するヘッド部と、
前記インクタンクに収容されるインクを前記ヘッド部に送液可能な送液路と、
前記送液路を介して前記インクタンクに収容されたインクを前記ヘッド部に送液する送液部と、
前記ヘッド部に対するインクの送液状況を検知可能な送液状況検知部と、
前記送液状況検知部における検知結果に基づいて、前記ヘッド部に対するインクの送液が停止されてからの時間を計時可能な計時部と、
環境温度を検知する環境温度検知部と、
環境湿度を検知する環境湿度検知部と、
前記計時部により計時された時間である停止時間の値である停止時間値と、前記環境温度検知部により検知された環境温度の値である環境温度値と、前記環境湿度検知部により検知された環境湿度の値である環境湿度値とに基づいて、環境履歴指数を算出する環境履歴指数算出部と、
前記環境履歴指数算出部により算出された環境履歴指数に基づいて、前記送液部を制御する送液制御部と、を備える
画像形成装置。
【請求項9】
前記環境履歴指数算出部は、
前記環境温度検知部により検知された環境温度値と前記計時部により計時された停止時間値との積、及び/又は、所定値から前記環境湿度検知部により検知された環境湿度値を減じた値と前記計時部により計時された停止時間値との積に基づいて前記環境履歴指数を算出し、
前記送液制御部は、
前記環境履歴指数算出部により算出された環境履歴指数が第1環境履歴指数よりも大きい場合、インクを前記ヘッド部に送液するよう前記送液部を制御する
請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記送液制御部は、
前記環境履歴指数算出部により算出された環境履歴指数が大きいほど、遅い流速でインクを前記ヘッド部に送液するよう前記送液部を制御する
請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記環境履歴指数算出部は、
前記環境温度検知部により検知された前記環境温度値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積と、前記環境湿度検知部により検知された前記環境湿度値の逆数の値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積とのうちの少なくとも一方に基づいて前記環境履歴指数を算出するように構成される
請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記環境履歴指数算出部は、
前記環境温度検知部により検知された前記環境温度値のべき乗の値に基づいて求まる値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積と、前記環境湿度検知部により検知された前記環境湿度値の逆数の値と前記計時部により計時された前記停止時間値との積とのうちの少なくとも一方に基づいて前記環境履歴指数を算出するように構成される
請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−32001(P2013−32001A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144476(P2012−144476)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】