説明

画像形成装置

【課題】1次転写ローラとして剛体のローラを使用した構造で、1次転写ローラの表面に付着した異物により生じる画像不良を低減する。
【解決手段】中間転写ベルト56を張架するアイドラローラ61に、このアイドラローラ61の表面を清掃する清掃部材67を設ける。また、アイドラローラ61の表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力よりも大きくなるように、アイドラローラ61の表面と中間転写ベルト56の内周面との関係を規制する。これにより、(b)に示す様に、飛散トナーと等の異物がアイドラローラ61の表面に転移し、清掃部材67により除去、回収される。この結果、1次転写ローラの表面と中間転写ベルト56の内周面との間で異物のかたまりが存在しにくくなり、画像不良の発生を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関し、特に、像担持体から中間転写ベルト又は記録材搬送ベルトに搬送される記録材にトナー像を転写する転写ローラが剛体である構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、像担持体に形成されたトナー像を、中間転写ベルト又は記録材搬送ベルトに搬送される記録材に転写するための転写ローラとして、金属ローラが広く使用されるようになってきた。金属ローラは、ローラそのものが導体であるために、環境変動や耐久変動による抵抗変動がない。このため、ゴム層を有する弾性ローラのようにATVC(Active Transfer Voltage Control)制御等の高圧制御をする必要がない。また、金属ローラそのものも低コストのため、よりシンプルな転写装置が構成できる。
【0003】
ところで、トナー像により画像形成を行う場合、トナーの飛散などにより転写ローラの表面が汚れる場合がある。そこで、転写ローラにクリーニングローラを接触させてクリーニングバイアスを印加することによって清掃する構造が知られている(特許文献1参照)。また、クリーニングローラを用いる代わりに、転写ローラとは逆極性のクリーニングバイアスを印加して汚れを感光体に戻す構造も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−272087号公報
【特許文献2】特開平5−11647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転写ローラとして金属ローラのような剛体のローラを使用した場合、ゴム層を有しないため、長期間の使用により、転写ローラ表面に飛散トナーなどの異物が付着して凝集する可能性がある。そして、このように転写ローラの表面でトナーなどの異物が凝集すると、転写ローラ表面と中間転写ベルト或いは記録材搬送ベルトとの接触面に局所的なギャップが生じたり、異物による局所的な抵抗変動が生じたりする。このように転写ローラとベルトとの間に局所的なギャップや抵抗変動が生じると、白抜け等の画像不良が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、上述の特許文献1、2に記載された構造のように、転写ローラに付着したトナーを静電的にクリーニングローラ或いは感光体に移動させることが考えられる。しかしながら、トナー飛散等により転写ローラに付着したトナーは、帯電極性が正規トナーと逆極性だったり、殆ど帯電していなかったりする。このため、トナーを全てクリーニングローラ或いは感光体に静電的に移動させることは難しく、十分な清掃効果が得られない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、転写ローラとして剛体のローラを使用した構造で、転写ローラの表面に付着した異物により生じる画像不良を低減すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トナー像を担持する像担持体と、外周面が前記像担持体と対向するように配置された、回転する無端状のベルトと、前記ベルトの内周面に接触するように配置され、転写バイアスが印加されることにより前記像担持体から前記ベルト又は前記ベルトにより搬送される記録材にトナー像を転写する剛体の転写ローラと、前記ベルトの内周面に接触するように配置され、前記ベルトを張架する張架ローラと、を備えた画像形成装置において、前記張架ローラの表面を清掃する清掃部材を有し、前記張架ローラの表面の静止摩擦力が前記ベルトの内周面の静止摩擦力よりも大きくなるように、前記張架ローラの表面と前記ベルトの内周面との関係を規制した、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、張架ローラ表面の方がベルトの内周面よりも静止摩擦力が大きいため、ベルト内周面に付着したトナーなどの異物は張架ローラ表面に転移し、清掃部材により清掃される。このため、ベルト内周面に異物が残りにくくなり、ベルト内周面と接触する転写ローラの表面に異物が付着しにくくなる。この結果、転写ローラの表面に付着した異物により生じる画像不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】感光ドラムに対する1次転写ローラの位置決め構成を示す斜視図。
【図3】第1の実施形態の1次転写部を示す模式図。
【図4】(a)は静止摩擦力が中間転写ベルトの内周面よりもアイドラローラの表面の方が小さい場合の、(b)は静止摩擦力が中間転写ベルトの内周面よりもアイドラローラの表面の方が大きい場合の、それぞれトナーの転移の状況を示す模式図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るステアリングローラの寄り制御を説明するための模式図。
【図6】寄り制御におけるステアリングローラの傾斜を説明するための模式図。
【図7】画像形成時と非画像形成時とのそれぞれにおける寄り制御の周期及び振幅を示す図。
【図8】第2の実施形態における寄り制御の流れを示すフローチャート。
【図9】非画像形成時の寄り制御における中間転写ベルトの動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4を用いて説明する。なお、各図面において同一の符号を付したものは、同一の構成又は作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0012】
[画像形成装置]
まず、図1を用いて本発明の対象となる画像形成装置の概略構成について説明する。画像形成装置は、所謂タンデム型の中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdを有する。本実施形態の場合、これらの画像形成ステーションは、中間転写ベルト56の回転方向(矢印β方向)上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に配置されている。
【0013】
本実施の形態において、各画像形成ステーションは、矢印α方向に回転し、トナー像を担持する像担持体である感光ドラム50a、50b、50c、50dをそれぞれ有する。これら各感光ドラム50a、50b、50c、50dの周囲には、電子写真用デバイスが順次配設されている。即ち、感光ドラムの回転方向に、1次帯電器51a、51b、51c、51d、露光装置52a、52b、52c、52d、現像装置53a、53b、53c、53d、クリーニング装置55a、55b、55c、55dが配置されている。また、これら各感光ドラム50a、50b、50c、50dは、中間転写ベルト56の回転方向に並べて配置される。以下、各画像形成ステーションの基本的構成はほぼ同じであるため、必要に応じて添え字を省略して説明する。
【0014】
1次帯電器51は、感光ドラム50の表面を所定の電位に帯電させる。露光装置52は、所定の電位に帯電された感光ドラム50の表面を露光して、この表面に静電潜像を形成する。現像装置53は、各色成分トナーが収容されて感光ドラム50の表面に形成された静電潜像をトナーにより可視像化(トナー像と)する。感光ドラム50上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト56に順次1次転写される。クリーニング装置55は、感光ドラム50上の残留トナーを除去する。
【0015】
各感光ドラム50から中間転写ベルト56にトナー像を1次転写するために、感光ドラム50a、50b、50c、50dと中間転写ベルト56を介して対向するそれぞれの位置に1次転写ローラ54a、54b、54c、54dを配置している。これら各1次転写ローラ54は、外周面が中間転写ベルト56の内周面に接触するように配置されている。そして、所定の転写バイアスが印加されることにより、各画像形成ステーションにて感光ドラム50上に形成された各色成分のトナー像が、1次転写部T1a、T1b、T1c、T1dで順次中間転写ベルト56に1次転写される。
【0016】
中間転写ベルト56上に転写された重畳トナー像は、2次転写部T2で記録材Pに一括転写(2次転写)させる。2次転写部T2は、中間転写ベルト56のトナー像担持面側に配置される2次転写外ローラ64と、この2次転写外ローラ64と中間転写ベルト56を介して対向する2次転写内ローラ62によって構成される。そして、2次転写外ローラ64に所定の転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト56上に担持された重畳トナー像が記録材Pに転写される。
【0017】
なお、2次転写内ローラ62は、例えば、EPDMゴムからなり、ローラ径が20mm、ゴム厚0.5mmとなるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定される。一方、2次転写外ローラ64は、例えば、NBRゴムやEPDMゴム等からなる弾性層と芯金からなり、ローラ径が24mmになるように形成されている。2次転写外ローラ64には高圧電源が取り付けられており、印加バイアスは可変となっている。
【0018】
記録材Pは、記録材が収容された不図示のカセット或いはトレイから所定のタイミングでピックアップローラにより搬送される。ピックアップローラにて繰り出された記録材Pは、レジストローラ66により中間転写ベルト56に転写されたトナー像とタイミングを合わせて、2次転写部T2へ搬送される。
【0019】
記録材に転写されたトナー像は、定着装置Aで加熱、加圧されることにより記録材P上に定着される。2次転写後の中間転写ベルト56上の残留トナーや紙粉は、中間転写ベルト56の2次転写部T2の下流に配置された中間転写ベルトクリーニング装置65により除去される。これら各装置(各部)の動作は、制御部Cで制御される。
【0020】
ここで、本実施形態の中間転写体である中間転写ベルト56は、例えば、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂または各種ゴム等にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたものが用いられる。また、その体積抵抗率が10〜1013Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.04〜0.1mm程度のフィルム状の無端状のベルトで構成されている。また、その表面抵抗率は、10〜1014Ω/□とすることが好ましい。
【0021】
このように構成される中間転写ベルト56は、外周面が感光ドラム50と対向するように配置され、複数の張架ローラ60、61、62、63によって張架された状態で所定の速度で循環駆動(回転)されている。具体的には、2次転写内ローラを兼用する駆動ローラ62は、定速性に優れたモータにより駆動されて中間転写ベルト56を回転させる。また、アイドラローラ60、61は、各感光ドラム50の配列方向両側で中間転写ベルト56を支持する。これら各ローラ60、61、62、63は、中間転写ベルト56の内周面に接触するように配置される。また、これら各ローラ60、61、62、63は、金属ローラ、或いは、表面にゴム層を設けたローラである。
【0022】
また、テンションローラ63は、中間転写ベルト56に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト56の蛇行を防止する補正ローラとして機能する。なお、テンションローラ63に対するベルトテンションは3〜12kgf(≒30〜120N)程度になるように構成されている。
【0023】
また、本実施形態の場合、各1次転写ローラ54の中間転写ベルト56の回転方向下流側に配置されたアイドラローラ61の表面を清掃する清掃部材67を有する。清掃部材67は、アイドラローラ61の表面にクリーニングブレードを当接させて、アイドラローラ61の表面に付着したトナーなどの異物を除去、回収する。なお、清掃部材67は、クリーニングブレードによるもの以外に、清掃ブラシなどにより構成しても良い。清掃部材67としては、静電的に異物を除去する構成でも良いが、アイドラローラ61の表面に当接して、この表面に付着した異物を機械的に除去する構成が好ましい。
【0024】
また、各1次転写ローラ54は、剛体のローラであり、材質がSUMあるいはSUSの金属ローラで構成されている。そして、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっている。これにより、各々の感光ドラム50上のトナー像が中間転写ベルト56に順次、静電吸引され、中間転写ベルト56上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。なお、金属ローラはスラスト方向にストレートの形状であり、ローラ径は6〜10mm程度のもので構成されている。また、本実施形態の1次転写ローラ54の対象となる剛体のローラは、表面が金属面である金属ローラ以外に、例えば、金属ローラの表面に薄いゴム層を設けたもので、ほぼ剛体として扱えるものも含む。
【0025】
[1次転写部]
次に、本実施形態の1次転写部の構成について、図1に加えて図2及び図3を参照して説明する。本実施形態では、上述のように1次転写ローラ54として剛体のローラである金属ローラを使用している。このため、図1に示すように、各1次転写ローラ54は、それぞれ感光ドラム50に対して下流にずらして配置している。以下、具体的に説明する。
【0026】
まず、図2に示すように、1次転写ローラ54を回転自在に支持する軸受70を感光ドラム50の画像形成が行われない軸方向両端部へ突き当てる構成を採用することにより、感光ドラム50と1次転写ローラ54との表面間の距離を規制している。即ち、軸受70は、不図示の装置の固定の部分に感光ドラム50に対する遠近動自在に配置され、感光ドラム50に向けて付勢されている。また、軸受70は、中間転写ベルト56の幅方向に外れる位置で、1次転写ローラ54の回転軸70bの軸方向両端部を支持している。そして、軸受70が中間転写ベルト56を跨いで感光ドラム50の軸方向両端部外周面に当接することにより、1次転写ローラ54の位置決めを図っている。
【0027】
軸受70の感光ドラム50側の周縁部には、感光ドラム50の軸方向両端部外周面の外径と同じかこの外径よりも僅かに大きい曲率半径を有する切欠70aが形成されている。このため、この切欠70aが感光ドラム50の両端部外周面に当接することにより、軸受70の位置決めが安定して図られる。
【0028】
また、各1次転写ローラ54の各感光ドラム50に対する、中間転写ベルト56の回転方向に関する位置を、次のように規制している。まず、図3に示すように、それぞれ、対向する感光ドラム50の半径をR、1次転写ローラ54の半径をr、感光ドラム50と1次転写ローラ54との中心間距離をdとする。このときに、d>R+rとなるように、各1次転写ローラ54が各感光ドラム50に対して、それぞれ中間転写ベルト56の回転方向下流にずらして配置される。
【0029】
例えば、感光ドラム50と1次転写ローラ54との間の距離eを0.5〜1.5mmに設定する。また、1次転写ローラ54が感光ドラム50に対して下流にオフセットするオフセット量fを4〜10mmに設定する。このオフセット量fは、感光ドラム50の中心軸から中間転写ベルト56に引いた垂線と、中間転写ベルト56の回転方向に関する1次転写ローラ54の中心軸との距離である。
【0030】
[中間転写ベルトの内周面とアイドラローラの表面との静止摩擦力の関係]
次に、本実施形態における中間転写ベルト56の内周面(裏面)と、1次転写部T1の下流に配置されたアイドラローラ61の表面の静止摩擦力の関係について説明する。本実施形態では、張架ローラであるアイドラローラ61の表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力よりも大きくなるように、アイドラローラ61の表面と中間転写ベルト56の内周面との関係を規制している。即ち、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力をF1、アイドラローラ61の表面の静止摩擦力をF2と定義したとき、F1<F2となるようにしている。言い換えれば、中間転写ベルト56の内周面の静摩擦係数をμ1、アイドラローラ61の表面の静摩擦係数をμ2と定義したとき、μ1<μ2となるようにしている。
【0031】
このようにアイドラローラ61表面と中間転写ベルト56内周面との静止摩擦力の関係を規制するためには、コーティング処理を施したり、表面粗さを調整したりする。例えば、中間転写ベルト56の内周面はコーティング処理などを施して表面粗さを小さくする。一方、アイドラローラ61の表面は金属ローラであれば、中間転写ベルト56の内周面よりも表面粗さを大きくするように表面の加工を行う。また、表面にゴム層を設けて中間転写ベルト56の内周面よりも静止摩擦力が大きくなるようにすることもできる。
【0032】
アイドラローラ61表面と中間転写ベルト56内周面とは、静止摩擦力が上述のような関係になれば、コーティング処理や表面粗さの調整に限らず、それ以外の方法で処理や調整を行なうようにしても良い。なお、本実施形態における静止摩擦力(静摩擦係数)は、対象となる面の任意の複数点(例えば6点)の平均値とする。また、測定装置として、新東科学株式会社製:HEIDON トライボギア μs(ミューズ) TYPE:94iを使用して、静止摩擦力の関係を規制している。
【0033】
また、本実施形態の場合、中間転写ベルト56の内周面と各1次転写ローラ54の表面との静止摩擦力との関係も、次のように規制している。即ち、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力が1次転写ローラ54の表面の静止摩擦力よりも大きくなるように、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との関係を規制している。言い換えれば、1次転写ローラ54の表面の静摩擦係数が中間転写ベルト56の内周面の静摩擦係数よりも大きくなるようにしている。このように関係を規制するための方法や測定方法は、上述のアイドラローラ61表面と中間転写ベルト56内周面との関係の場合と同じである。
【0034】
[異物の転移について]
本実施形態の場合、上述のように、アイドラローラ61の表面と中間転写ベルト56の内周面との関係、更には、1次転写ローラ54の表面と中間転写ベルト56の内周面との関係をそれぞれ規制することにより、次のように異物が転移する。即ち、飛散トナーなどの異物が中間転写ベルト56の内周面に付着すると、この異物はアイドラローラ61まで運ばれて、このアイドラローラ61の表面に転移する。また、1次転写ローラ54の表面に付着した飛散トナーなどの異物は、中間転写ベルト56の内周面に転移する。この異物の転移する機構について説明する。
【0035】
まず、中間転写ベルト56の内周面に付着した飛散トナーなどの異物がアイドラローラ61の表面に転移、回収される機構について、図4を用いて説明する。図4(a)(b)は、中間転写ベルト56と1次転写部直後のアイドラローラ61との関係を示したものである。このうちの図4(a)は、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力よりも、アイドラローラ61の表面の静止摩擦力が小さい場合を示している。図4(b)は、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力よりも、アイドラローラ61の表面の静止摩擦力が大きい場合を示している。
【0036】
中間転写ベルト56の内周面には、画像形成装置の使用に伴い(経時で)、現像装置53などから飛散したトナーなどの異物が付着する場合がある。ここで、トナー1つ1つは微小粒子のため、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に局所的なギャップが生じるなどして、転写不良の原因となるような縦すじを形成することはない。
【0037】
但し、図4(a)に示すように、アイドラローラ61表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56内周面の静止摩擦力よりも小さいと、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間でトナーなどの異物の凝集固着物が搬送され易くなる。具体的には、アイドラローラ61表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56内周面の静止摩擦力よりも小さいと、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物がアイドラローラ61の表面に転移しにくい。また、仮に転移したとしても、アイドラローラ61が回転するに連れてローラ表面から取れてしまうおそれがある。即ち、中間転写ベルト56の内周面の表面の方が異物を留めておく力が大きいため、アイドラローラ61と中間転写ベルト56との間の異物は、中間転写ベルト56側に留まってしまう。
【0038】
この結果、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物は、回収されることなくこの内周面に付着したまま、より下流側に配置されたローラまで搬送される。そして、トナー等の異物が、中間転写ベルト56の内周面或いは1次転写ローラ54の表面で凝集固着物に成長すると、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に局所的なギャップが生じるなどして画像不良が発生する。
【0039】
これに対して、図4(b)に示すように、アイドラローラ61表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56内周面の静止摩擦力よりも大きいと、アイドラローラ61の回転に連れて中間転写ベルト56の内周面に付着した異物がローラ表面に移り易い。即ち、アイドラローラ61の表面の方が異物を留めておく力が大きいため、アイドラローラ61と中間転写ベルト56との間の異物は、アイドラローラ61側に留まってしまう。このため、中間転写ベルト56の内周面の異物は、アイドラローラ61の表面に転移し易い。
【0040】
このように、アイドラローラ61表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56内周面の静止摩擦力よりも大きくすることにより、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物をアイドラローラ61の表面に転移させることができる。このため、中間転写ベルト56の内周面に付着した飛散トナーなどの異物が連れまわり続けて、2次転写内ローラ62、テンションローラ63、1次転写ローラ54の位置へ搬送される可能性が低減される。
【0041】
同様に、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力を1次転写ローラ54の表面の静止摩擦力よりも大きくしているため、1次転写ローラ54の表面に付着した飛散トナーなどの異物は、中間転写ベルト56の内周面に転移する。或いは、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物が1次転写ローラ54の表面に転移しにくい。即ち、中間転写ベルト56の内周面の方が異物を留めておく力が大きいため、1次転写ローラ54と中間転写ベルト56との間の異物は、中間転写ベルト56側に留まってしまう。このため、1次転写ローラ54の表面に付着した異物は中間転写ベルト56の内周面に転移し易く、中間転写ベルト56の内周面の異物は1次転写ローラ54の表面に転移しにくい。
【0042】
したがって、1次転写ローラ54の表面に付着した異物は中間転写ベルト56の内周面に転移され、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物は1次転写ローラ54の表面に転移されることなく、アイドラローラ61まで搬送される。そして、上述のようにアイドラローラ61の表面に転移される。
【0043】
アイドラローラ61の表面に転移した異物は、上述の清掃部材67により除去、回収される。即ち、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物は、アイドラローラ61の表面に転移し、清掃部材67により回収される。この結果、トナー等の異物が、中間転写ベルト56の内周面或いは1次転写ローラ54の表面で凝集固着物に成長することを低減できる。
【0044】
このように本実施形態によれば、アイドラローラ61の表面の方が中間転写ベルト56の内周面よりも静止摩擦力が大きいため、中間転写ベルト56の内周面に付着したトナーなどの異物はアイドラローラ61の表面に転移する。そして、清掃部材67により清掃される。このため、中間転写ベルト56の内周面に異物が残りにくくなり、中間転写ベルト56の内周面と接触する1次転写ローラ54の表面に異物が付着しにくくなる。この結果、1次転写ローラ54の表面に付着した異物により生じる画像不良を低減できる。
【0045】
また、本実施形態の場合、現像装置53からのトナー飛散の影響を最も受け易く、中間転写ベルト56の巻き付き角度が大きなローラである1次転写部下流のアイドラローラ61に対して、上述のように静止摩擦力の関係を規制している。このため、より効率良く飛散トナーなどの異物を回収でき、画像不良の発生をより低減し易い。
【0046】
更に、本実施形態の場合、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力を1次転写ローラ54の表面の静止摩擦力よりも大きくしているため、1次転写ローラ54の表面に付着した飛散トナーなどの異物は、中間転写ベルト56の内周面に転移する。或いは、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物が1次転写ローラ54の表面に転移しにくい。このため、アイドラローラ61により異物の回収をより効率良く行えると共に、1次転写ローラ54の表面で凝集固着物が成長しにくくなる。この結果、画像不良の発生をより低減できる。
【0047】
表1に、それぞれ静摩擦係数の異なるアイドラローラ61と中間転写ベルト56との組み合わせによる経時での飛散トナーの回収状況を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、アイドラローラ61の表面の静摩擦係数μ2と中間転写ベルト56の内周面の静摩擦係数μ1との間に、μ1<μ2の関係が成り立てば、経時による飛散トナーの回収に有利であることが分かる。
【0050】
なお、本実施形態の場合、アイドラローラ61の表面と中間転写ベルト56の内周面との静止摩擦力の関係を規制したが、その他の張架ローラの表面を同様に規制し、この張架ローラに清掃部材を設けるようにしても良い。例えば、アイドラローラ60の表面と中間転写ベルト56の内周面との関係を上述のように規制し、このアイドラローラ60に清掃部材を設ける。なお、この場合、図示よりもアイドラローラ60の直径を大きくするなどして、中間転写ベルト56の巻き付き角度を確保することが好ましい。
【0051】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図5ないし図9を用いて説明する。本実施形態の場合、中間転写ベルト56の回転方向に交差する方向である幅方向の寄り制御(蛇行補正制御)を行う寄り制御手段である寄り制御装置80を有する。この寄り制御装置80は、中間転写ベルト56の内周面に接触するように配置され、中間転写ベルト56を張架するステアリングローラ61aを有する。本実施形態では、1次転写部T1および2次転写部T2間(図1参照)に位置する張架ローラをステアリングローラ61aとしている。
【0052】
そして、ステアリングローラ61aの中間転写ベルト56の回転方向に交差する方向である幅方向に対する傾斜角度を変えることにより、中間転写ベルト56の幅方向の寄り制御を行っている。以下、この制御に関して説明する。
【0053】
[中間転写ベルトの寄り制御に関する説明]
寄り制御装置80は、図5に示す様に、上述のステアリングローラ61a、制御部81、揺動モータ82、端部検知センサ83、84を有する。ステアリングローラ61aは、図6に示す様に、一端部(図6の右端部)を支点として、同図の矢印方向に揺動可能に支持されている。この揺動方向は、図5に示す様に、中間転写ベルト56の各感光ドラム50(図1参照)と対向する面と略平行な方向である。なお、ステアリングローラ61aの揺動支点は、中央部としても良い。
【0054】
制御部81は、揺動モータ82を制御することによりステアリングローラ61aを傾斜させて、中間転写ベルト56を幅方向に位置決めする寄り制御を実行する。揺動モータ82は、制御部81の指令により、ステアリングローラ61aの他端部(図5の上端部、図6の左端部)との間に設けたカム機構のカムを回転させる。これにより、このステアリングローラ61aの他端部を移動させて、上述のようにステアリングローラ61aを揺動させる。
【0055】
ステアリングローラ61aの他端部は、ばねなどの付勢手段によりカム側に付勢されている。即ち、カムの位相によってステアリングローラ61aの他端部をモータから離れる方向に移動させ、このカムの位相を変えることによりステアリングローラ61aの他端部が付勢手段の付勢力によりモータ側に移動する。なお、このように揺動モータ82により駆動する機構は、カム機構以外に、ボールねじ機構など他の機構であっても良い。
【0056】
端部検知センサ83、84は、中間転写ベルト56の正常な寄り制御範囲の限界位置に配置され、限界位置に接近する中間転写ベルト56の縁に接触して、中間転写ベルト56の幅方向の位置に応じた複数段階の出力を発生する。即ち、中間転写ベルト56の幅方向両側に、それぞれ端部検知センサ83、84を配置し、中間転写ベルト56の幅方向端部が何れかのセンサに接触することにより、図5の鎖線の矢印で示す様に制御部81に信号を出力する。
【0057】
中間転写ベルト56の寄り制御では、端部検知センサ83、84の出力に基づいてステアリングローラ61aの角度が調整される。即ち、制御部81は、端部検知センサ83、84の出力を検知して、中間転写ベルト56の幅方向の位置と移動方向とを識別し、図5の鎖線の矢印で示す様に揺動モータ82に指令を送り、ステアリングローラ61aの角度を変化させる。ステアリングローラ61aは、幅方向の正常な往復移動範囲(蛇行制御範囲)から逸脱しかかった中間転写ベルト56の移動方向を反転させて、幅方向の中心側へ向かって誘導する。
【0058】
例えば、図5の下側の端部検知センサ84が中間転写ベルト56の端部を検知すると、制御部81は揺動モータ82を作動させてステアリングローラ61aの他端部を図5のA方向に動かす。すると、中間転写ベルト56が図5のB方向へ移動して端部検知センサ84が中間転写ベルト56の端部を検知しなくなる。その後、端部検知センサ83が中間転写ベルト56を検知すると、制御部81は揺動モータ82を作動させてステアリングローラ61aの他端部をA方向と逆方向に動かす。すると、中間転写ベルト56がB方向と逆方向へ移動して端部検知センサ83が中間転写ベルト56を検知しなくなる。
【0059】
制御部81は、このような中間転写ベルト56の寄り制御を繰り返すことで、幅方向(ステアリングローラ61aの軸方向)へ移動自在な中間転写ベルト56を、正常な寄り制御範囲で位置決めし、安定して循環させる。
【0060】
なお、図5、図6ではステアリングローラ61aの傾斜量、中間転写ベルト56の幅方向の移動余地を誇張して記載している。実際の中間転写ベルト56の寄り制御における制御範囲は、基準位置に対して±1.0mm程度の範囲であって、揺動モータ82によるステアリングローラ61aの傾斜調整量は±0.5mm程度に過ぎない。また、端部検知センサ83、84の出力に基づいて中間転写ベルト56の幅方向の移動の反転が識別されると、制御部81はステアリングローラ61aの傾斜量を減らして反転後の幅方向の移動速度の上昇を抑制する。このため、実際の中間転写ベルト56は、例えば、10秒〜30秒の周期で2mmの振幅をゆっくりと幅方向に往復しており、10枚程度の画像形成期間中であれば幅方向のほぼ一定位置に停止しているとみなせる。
【0061】
本実施形態の場合、画像形成時には、上述のような寄り制御を行い、前回転時などの非画像形成時には、画像形成時よりも寄り制御の周期が短くなるように制御している。また、非画像形成時に、画像形成時よりも寄り制御の振幅が大きくなるようにしている。即ち、非画像形成時において、中間転写ベルト56の寄り制御における振幅、周期を切り替えることによって、大きい振幅、且つ、短い周期で中間転写ベルト56を幅方向へ往復運動させている。以下、具体的に説明する。
【0062】
[非画像形成時における中間転写ベルトの動作に関する説明]
本実施形態では、図7に示すように、前回転、後回転等の非画像形成時において、ステアリングローラ61aを上述した通常の寄り制御時(例えば画像形成時)の寄り制御よりも、振幅を大きくし、且つ、周期を短くしている。振幅の大きさは、画像形成時よりも大きければ良いが、寄り制御に支障が生じる程大きくし過ぎないようにする。一方、周期は、例えば、振幅方向に1秒〜2秒の短い周期で中間転写ベルト56を往復運動させるようにする。
【0063】
このような振幅及び周期を画像形成時に対して切り替えて実行する寄り制御は、非画像形成時の期間全体で行っても良いし、一部で行っても良い。図7では、非画像形成時の前半で行うようにしている。その後に行う画像形成時での通常の寄り制御を安定させるためには、非画像形成時の途中で通常の寄り制御に切り替える方が好ましい。即ち、非画像形成時の後側の期間では、通常の寄り制御を実行することが好ましい。
【0064】
また、画像形成時に対して振幅及び周期を切り替えて行う寄り制御の時間は、非画像形成時の動作時間、画像形成枚数、前回転や後回転などの動作を行うタイミングなどを考慮して変更するようにしても良い。例えば、前回転時よりも後回転時の方が、ベルトやローラなどに飛散トナーなどの異物が多く付着している可能性が高いので、後回転時の方を振幅及び周期を切り替えて寄り制御を行う時間を長くする。また、前回の振幅及び周期を切り替えて行った寄り制御からの画像形成枚数が多い場合の方が、ベルトやローラなどに飛散トナーなどの異物が多く付着している可能性が高いので、画像形成枚数が多いほど振幅及び周期を切り替えて寄り制御を行う時間を長くする。
【0065】
更に、このような振幅、周期を切り替える制御は、非画像形成時毎に行っても良いし、ある程度間隔をあけて行うようにしても良い。実行する頻度は、例えば、画像形成装置内に設けた温度、湿度を検知する環境センサにより検知した湿度が低くなるほど多くすることが好ましい。なお、非画像形成時に行う調整で、仮に、1次転写ローラに電圧を印加する場合、この電圧印加が終了した後に、上述の制御を実行する。
【0066】
なお、非画像形成時とは、電源投入時やスリープ状態からの復帰時などに各部のウォームアップ動作を行う前回転時、画像形成終了後に例えば感光ドラムの清掃などを行う後回転時以外で画像形成を行っていない時でも良い。例えば、画像形成途中に、一旦、画像形成動作を停止して各部の調整を行う場合があるが、このような場合を非画像形成時として、上述のような制御を実行するようにしても良い。
【0067】
上述の制御の流れの1例を図8により説明する。まず、印刷ジョブが操作パネル上、またはネットワーク上から投入されると(S1)、画像形成装置の動作が開始し、前回転が開始される(S2)。ここで、制御部81はステアリングローラの振幅、周期を図7の非画像形成時の設定に切り替える(S3)。この切り替え期間中は中間転写ベルト56が通常の寄り制御よりも短い周期で幅方向に往復運動を繰り返す。この動作の終了後、制御部81はステアリングローラ61aの振幅、周期を通常(画像形成時)の寄り制御の設定値へ戻し、中間転写ベルト56の通常の寄り制御を開始する(S4)。その後、各画像ステーションの画像を中間転写ベルト56上で重ねるためのタイミング調整や、画像の濃度調整などのためのレジ検、パッチ検等の各種制御が実施され(S5)、画像形成動作が開始される(S6)。画像形成動作が終了すると、後回転が開始され(S7)、前回転時と同様に、制御部81がステアリングローラ61aの振幅、周期を切り替える(S8)。この動作の終了後、制御部81はステアリングローラ61aの振幅、周期を通常の寄り制御の設定値へ戻す(S9)。その後、各種制御が実施されてから(S10)、画像形成装置の動作が停止する(S11)。
【0068】
このように、ステアリングローラ61aの寄り制御の振幅及び周期を、画像形成時に対して変化させることにより、図9に示すように、中間転写ベルト56と1次転写ローラ54とが中間転写ベルト56の幅方向に短い周期で相対移動する。そして、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に中間転写ベルト56の幅方向のせん断力が働く。
【0069】
これにより、中間転写ベルト56の内周面に付着して連れまわった状態で1次転写部まで搬送された飛散トナーなどの異物のかたまりが、このせん断力によりほぐされる。そして、1次転写ローラ54の表面或いは中間転写ベルト56の内周面で、全体に広がるように異物が分布するようになり、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に異物のかたまりが存在しにくくなる。この結果、これら両面の間で局所的なギャップが生じたり、抵抗変動が生じたりしにくくなり、画像不良の発生を低減できる。
【0070】
なお、非画像形成時に、ステアリングローラ61aの寄り制御の周期を画像形成時よりも短くし、振幅をそのままとしても良い。この場合も、上述の場合と同様に、中間転写ベルト56と1次転写ローラ54とが中間転写ベルト56の幅方向に短い周期で相対移動して、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に幅方向のせん断力が働く。そして、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に異物のかたまりが存在しにくくなる。但し、上述のように振幅も大きくすれば、異物のかたまりをより広い範囲に広げることができるため、中間転写ベルト56の内周面と1次転写ローラ54の表面との間に異物のかたまりが、より存在しにくくなる。
【0071】
[中間転写ベルトの内周面とステアリングローラの表面との静止摩擦力の関係]
また、本実施形態の場合、中間転写ベルト56の内周面とステアリングローラ61aの表面との静止摩擦力の関係を、次にように規制している。即ち、ステアリングローラ61aの表面の静止摩擦力が中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力よりも大きくなるように、ステアリングローラ61aの表面と中間転写ベルト56の内周面との関係を規制している。
【0072】
また、前述の図1と同様に、ステアリングローラ61aの表面を清掃するステアリングローラ清掃部材を配置している。ステアリングローラ清掃部材は、図1の清掃部材67と同じである。但し、ステアリングローラ61aの回転軸に固定支持されることにより、ステアリングローラ61aの傾斜にクリーニングブレードが追従できるようにしている。
【0073】
このように、ステアリングローラ61aの表面の静止摩擦力を中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力よりも大きくすることにより、中間転写ベルト56の内周面に付着した飛散トナーなどの異物は、ステアリングローラ61aの表面に転移する。或いは、ステアリングローラ61aの表面に付着した異物が中間転写ベルト56の内周面に転移しにくい。即ち、ステアリングローラ61aの表面の方が異物を留めておく力が大きいため、ステアリングローラ61aと中間転写ベルト56との間の異物は、ステアリングローラ61a側に留まってしまう。このため、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物はステアリングローラ61aの表面に転移し易く、ステアリングローラ61aの表面の異物は中間転写ベルト56の内周面に転移しにくい。
【0074】
したがって、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物はステアリングローラ61aの表面に転移され、ステアリングローラ清掃部材により除去回収される。即ち、本実施形態では、ステアリングローラ61aが第1の実施形態のアイドラローラ61と同様の機能を有するようにしている。
【0075】
なお、本実施形態の場合も、上述の第1の実施形態と同様に、中間転写ベルト56の内周面の静止摩擦力が1次転写ローラ54の表面の静止摩擦力よりも大きくなるようにすることが好ましい。これにより、1次転写ローラ54の表面に付着した異物は中間転写ベルト56の内周面に転移し、且つ、中間転写ベルト56の内周面に付着した異物は1次転写ローラ54の表面に転移されることなく、ステアリングローラ61aまで搬送される。そして、上述のようにステアリングローラ61aの表面に転移され、ステアリングローラ清掃部材により除去、回収される。この結果、トナー等の異物が、中間転写ベルト56の内周面或いは1次転写ローラ54の表面で凝集固着物に成長することを低減できる。
【0076】
本実施形態によれば、上述のように、非画像形成時に、ステアリングローラ61aの寄り制御の振幅、周期を切り替えているため、1次転写ローラ54の表面と中間転写ベルト56の内周面との間で異物のかたまりが存在しにくくなる。また、ステアリングローラ61aの表面、中間転写ベルト56の内周面、1次転写ローラ54の表面のそれぞれの静止摩擦力の関係を上述のように規制しているため、異物をステアリングローラ61aの表面に集めることができる。そして、ステアリングローラ清掃部材によりこの異物を除去、回収できる。この結果、1次転写ローラ54の表面と中間転写ベルト56の内周面との間で局所的なギャップが生じたり、抵抗変動が生じたりしにくくなり、画像不良の発生を低減できる。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0077】
<他の実施形態>
上述の各実施形態は、適宜組み合わせて実施可能である。例えば、ステアリングローラの寄り制御を第2の実施形態のように実施すると共に、ステアリングローラとは別の張架ローラの表面の静止摩擦力を中間転写ベルトの内周面の静止摩擦力よりも大きくし、この張架ローラに清掃部材を設けても良い。
【0078】
また、上述の各実施形態では、タンデム型の構造について説明したが、複数色の現像装置を回転体に支持し、1個の感光ドラムに対して、順次トナー像を形成する、所謂1ドラム型の画像形成装置にも、本発明は適用可能である。更に、複数色のトナーを用いた画像形成装置以外に、単色のトナーを用いた画像形成装置にも適用可能である。
【0079】
また、上述の各実施形態では、中間転写ベルトを使用した中間転写方式に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、感光ドラムから記録材に直接転写するための記録材搬送ベルトを備えた直接転写方式にも適用できる。即ち、中間転写ベルトを記録材搬送ベルトに置き換えて、同様に実施することができる。
【0080】
例えば、像担持体である感光ドラムに対向する無端状のベルトである記録材搬送ベルトを対向して配置する。この記録材搬送ベルトは、上述の各実施形態のように、複数の張架ローラにより張架され回転駆動する。このような構成で、張架ローラのうちの何れかのローラの表面の静止摩擦力を、記録材搬送ベルトの内周面の静止摩擦力よりも大きくし、このローラに清掃部材を設ける。或いは、記録材搬送ベルトの寄り制御を行うためのステアリングローラの寄り制御の周期を、非画像形成時で画像形成時よりも短くする。また、ステアリングローラの寄り制御の振幅を、非画像形成時で画像形成時よりも大きくする。更に、感光ドラムから記録材搬送ベルトにより搬送された記録材にトナー像を転写するための転写ローラの表面の静止摩擦力を、記録材搬送ベルトの内周面の静止摩擦力よりも小さくする。
【符号の説明】
【0081】
50a、50b、50c、50d・・・感光ドラム(像担持体)、54a、54b、54c、54d・・・1次転写ローラ(転写ローラ)、56・・・中間転写ベルト、61・・・アイドラローラ(張架ローラ)、61a・・・ステアリングローラ(張架ローラ)、67・・・清掃部材(ステアリングローラ清掃部材)、80・・・寄り制御装置(寄り制御手段)、81・・・制御部、82・・・揺動モータ、83、84・・・端部検知センサ、P・・・記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
外周面が前記像担持体と対向するように配置された、回転する無端状のベルトと、
前記ベルトの内周面に接触するように配置され、転写バイアスが印加されることにより前記像担持体から前記ベルト又は前記ベルトにより搬送される記録材にトナー像を転写する剛体の転写ローラと、
前記ベルトの内周面に接触するように配置され、前記ベルトを張架する張架ローラと、を備えた画像形成装置において、
前記張架ローラの表面を清掃する清掃部材を有し、
前記張架ローラの表面の静止摩擦力が前記ベルトの内周面の静止摩擦力よりも大きくなるように、前記張架ローラの表面と前記ベルトの内周面との関係を規制した、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルトの内周面の静止摩擦力が前記転写ローラの表面の静止摩擦力よりも大きくなるように、前記ベルトの内周面と前記転写ローラの表面との関係を規制した、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルトの回転方向に交差する方向である幅方向の寄り制御を行う寄り制御手段を有し、
前記寄り制御手段は、非画像形成時に、画像形成時よりも寄り制御の周期が短くなるように制御する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記寄り制御手段は、非画像形成時に、画像形成時よりも寄り制御の振幅が大きくなるように制御する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体と、
外周面が前記像担持体と対向するように配置された、回転する無端状のベルトと、
前記ベルトの内周面に接触するように配置され、転写バイアスが印加されることにより前記像担持体から前記ベルト又は前記ベルトにより搬送される記録材にトナー像を転写する剛体の転写ローラと、
前記ベルトの回転方向に交差する方向である幅方向の寄り制御を行う寄り制御手段と、を備えた画像形成装置において、
前記寄り制御手段は、非画像形成時に、画像形成時よりも寄り制御の周期が短くなるように制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記寄り制御手段は、非画像形成時に、画像形成時よりも寄り制御の振幅が大きくなるように制御する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記寄り制御手段は、前記ベルトの内周面に接触するように配置され、前記ベルトを張架するステアリングローラを有し、前記ステアリングローラの前記ベルトの回転方向に交差する方向である幅方向に対する傾斜角度を変えることにより、前記ベルトの幅方向の寄り制御を行い、
前記ステアリングローラの表面を清掃するステアリングローラ清掃部材を有し、
前記ステアリングローラの表面の静止摩擦力が前記ベルトの内周面の静止摩擦力よりも大きくなるように、前記ステアリングローラの表面と前記ベルトの内周面との関係を規制した、
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写ローラは、前記像担持体の半径をR、前記転写ローラの半径をr、前記像担持体と前記転写ローラとの中心間距離をdとしたとき、d>R+rとなるように、前記像担持体に対して前記ベルトの回転方向下流にずらして配置されている、
ことを特徴とする、請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37203(P2013−37203A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173527(P2011−173527)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】