説明

画像形成装置

【課題】画像形成の生産性を低下させることなく、色ずれを高い精度で補正し、かつ小型化を実現可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 複数の発光素子が配列してなる発光素子アレイチップ52、発光素子アレイチップ52が複数実装された基板51、発光素子アレイチップ52の出射光束を結像するレンズアレイ54、及び基板51の周囲に形成されたハウジング部材50を少なくとも有し、被露光面11aを露光する光プリントヘッド13を複数備え、
光プリントヘッド13が配置される箇所のうち、環境温度が最も高温になる箇所に配置される光プリントヘッド13が、予め設定された最適ピント位置に対し、被露光面11aから光軸に沿って遠くなる位置に設置されることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体書込方式光学系を用い、複数色のトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置のカラー化が急速に進み、これらの機器に用いられる露光装置としての光プリントヘッドは、高速化のニーズから、複数の感光体に対して一度に複数の走査線を形成できるものが望まれている。このような光プリントヘッドを備え、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)に対応した四つの感光体を記録材搬送ベルトや中間転写体に沿って並べたタンデム型のカラー画像形成装置などが知られている。
【0003】
従来、タンデム型カラー画像形成装置は、ポリゴンミラーを25,000rpm以上の高速で高精度に回転させ、半導体レーザ等の光源から出射された光束を光走査することにより、高速かつ高画質な画像形成を実現してきた。しかしながら、ポリゴンミラーの高速回転により消費電力が増加し、その発熱が走査レンズなどの光学素子の特性の劣化を招いてレーザビームのスポット位置が変動する原因となったり、騒音を発生させたりする不具合があった。
【0004】
一方、ポリゴンミラーを高速回転するのではなく、発光素子アレイ(LEDA)とロッドレンズアレイを用いて光スポットを形成する固体書込方式の光プリントヘッドが知られている。
【0005】
光プリントヘッドは、1画素毎にひとつの発光部を有し、画像書込幅を包含するように長尺(光走査方式の主走査方向)全長に渡って発光部が均一に実装される。しかしながら、発光部を基板に実装する際にばらつきが生じることにより、所望の発光領域幅、すなわち全露光幅もばらつくという問題がある。
【0006】
また、タンデム型カラー画像形成装置においては、各々の感光体に近接するように光プリントヘッドが配置されるが、装置内のレイアウトによりそれぞれの感光体周辺の温度が異なり、光プリントヘッドの環境温度も異なることになる。
【0007】
製造時の全露光幅のばらつき量に加え、温度環境の差により実装基板の熱膨張量に差異が生じることにより、全露光幅のばらつきが拡大し、主走査方向の色ずれが拡大する恐れがある。
【0008】
この色ずれを補正するために、露光位置の補正処理を実行可能な画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、所定の画素ピッチp(μm)に応じて配列された複数のLED発光素子を熱膨張係数u(μm/℃)の支持体で支持したヘッド構造を有し、複数のLED発光素子を選択的に駆動して感光体ドラムの表面を露光するプリントヘッドと、感光体ドラムの表面をプリントヘッドで露光する際の露光位置を補正する位置補正部と、プリントヘッドの温度を測定する温度センサを含み、この温度センサの測定結果から求めたプリントヘッドの温度変化量がp/uのk倍(kはゼロを除く整数)以上となった場合に、位置補正部で露光位置の補正処理を実施するように制御する補正タイミング制御部を備える装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、温度変動による露光位置の位置補正は、所謂主走査方向のレジスト変動に対する効果を有するのみであり、光プリントヘッドの露光幅全体の温度変化による変動には対応できず、画像劣化を抑制できないという問題がある。
【0010】
さらに、位置補正処理を実施する制御手段や、光プリントヘッドの温度を測定する温度センサを設けることは、装置の大型化や高コスト化の原因となり、さらに生産性の低下にもつながるおそれがある。
タンデム型カラー画像形成装置の一層の小型化の要求に対しては、感光体の小径化とともに、光プリントヘッドにも小型化(狭幅化)が必要となる。
【0011】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、画像形成の生産性を低下させることなく、色ずれを高い精度で補正し、かつ小型化を実現可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
複数の発光素子が配列してなる発光素子アレイチップ、前記発光素子アレイチップが複数実装された基板、前記発光素子アレイチップの出射光束を結像するレンズアレイ、及び前記基板の周囲に形成されたハウジング部材を少なくとも有し、被露光面を露光する光プリントヘッドを複数備える画像形成装置において、
前記光プリントヘッドが配置される箇所のうち、環境温度が最も高温になる箇所に配置される前記光プリントヘッドが、予め設定された最適ピント位置に対し、前記被露光面から光軸に沿って遠くなる位置に設置されることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像読取レンズによれば、画像形成の生産性を低下させることなく、色ずれを高い精度で補正し、かつ小型化を実現可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成装置の実施態様の一例を示す断面の模式図である。
【図2】本発明の画像形成装置の実施態様の他の例を示す断面の模式図である。
【図3】光プリントヘッドの実施態様の一例を説明するための(A)斜視図、(B)レンズアレイの模式図、及び(C)基板の模式図である。
【図4】光プリントヘッドの一例を示す断面図である。
【図5】デフォーカスに対するビームスポット径を示すグラフである。
【図6】光プリントヘッドの配置の一例を示す斜視図である。
【図7】光プリントヘッドの配置の一例を示す断面図である。
【図8】光プリントヘッドへのデータ伝送の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0016】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示した構成図である。
画像形成装置10は、イエロー(Y)用、マゼンタ(M)用、シアン(C)用、及びブラック(K)用の感光体11Y、11M、11C、11Kを並列に配置したタンデム型のカラー画像形成装置である。中間転写ベルト21には各色に対応した感光体11K,11M,11C,11Yが並列順に等間隔で配設されている。感光体11K,11M,11C,11Yは同一径に形成されたもので、その周囲には電子写真プロセスに従い各部材が順に配設されている。
【0017】
感光体11Yを例に説明すると、帯電器12Y、光プリントヘッド(露光装置)13Y、光プリントヘッド13Yから出射された画像データに基づく出射光LY、現像装置14Y、転写ローラ15Y、クリーニング手段16Yが順に配設されている。これら11〜16で構成される単位を画像形成ユニットという。他の感光体1M,1C,1Kについても同様である。
【0018】
本実施形態では、感光体11(11K,11M,11C,11Y)を各色毎に設定された被露光面とするものであり、各々に対して光プリントヘッド13(13K,13M,13C,13Y)から出射光L(LK、LM,LC、LY)が各々に対応するように設けられている。
なお、光プリントヘッド13は、感光体11との間隔を所望の長さにするため、調整可能な間隔調整部材を介し、感光体11の回転軸受保持部材等に接触させ固定されている。
【0019】
帯電器12Y(図1では帯電ローラを用いた方式を想定して示しているが、この態様に限定するものではない)により表面を均一に帯電された感光体11Yは、矢印の方向に回転することによって出射光LYを副走査し、感光体11Y上に静電潜像が形成される。
また、光プリントヘッド13Yによる出射光LYの照射位置よりも感光体11Yの回転方向下流側には、感光体11Yにトナーを供給する現像器14Yが配設され、イエローのトナーが供給される。現像器14Yから供給されたトナーは、静電潜像が形成された部分に付着し、トナー像が形成される。同様に感光体11M,11C,11Kには、それぞれM、C、Kの単色トナー像が形成される。
【0020】
各感光体11の現像器14の配設位置よりもさらに回転方向下流側には、中間転写ベルト21が配置されている。中間転写ベルト21は、両端にある複数のローラに巻付けられ、図示しないモータの駆動により矢印方向に移動搬送されるようになっている。中間転写ベルト21は各感光体11で現像された各々単色画像を順次重ねあわせて転写し、中間転写ベルト21上にカラー画像を形成するようになっている。
【0021】
転写ローラ15はバイアスを印加して、感光体11上のトナーを中間転写ベルト21に転写し、4色のトナー像が中間転写ベルト21上で重ね合わされる。
その後、2次転写ローラ23にバイアスを印加し、給紙トレイ25から搬送ベルト22により破線の矢印の方向に搬送された転写紙に4色のトナー像を一括して転写する。
カラー画像が形成された転写紙等の媒質は定着器24へ送られて定着処理された後、排紙される。
【0022】
画像形成装置10内部は、運転を続けることにより温度分布が生じる。運転開始直後(初期プリント時)には温度分布は少ないが、連続してプリントを行った場合、定着ユニット24が発熱する時間が増加することに伴い、経時的に定着ユニット24周囲の温度が上昇する。図1に示す実施態様では、4色の画像形成ユニットの並びは、中間転写ベルト21に対して上流から下流に向かってK,M,C,Yの順としており、Yの画像形成ユニットの温度が最も高く(例えば、光プリントヘッド13の配置箇所における環境温度の上昇が最大3〜5℃)、他のK,M,Cの画像形成ユニットの温度はほぼ同等(例えば、光プリントヘッド13の配置箇所における環境温度の上昇が0〜1℃)である。
【0023】
図2は、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示した構成図である。
画像形成装置10は、図1に示したイエロー(Y)用、マゼンタ(M)用、シアン(C)用、ブラック(K)用に加え、さらに透明色(T)用の感光体11Tを並列に配置したタンデム型のカラー画像形成装置である。透明トナーを使用することにより、形成される画像の光沢感を向上させることができる。画像形成方法としては、図1に示した画像形成装置による方法と同様である。
【0024】
図3(A)〜(C)、及び図4に光プリントヘッド13の一実施態様を示す。
図3(A)に示すように、光プリントヘッド13は、複数の発光素子(以下、「LED素子」、「発光部」ともいう。)が配列してなる発光素子アレイチップ(LEDA)52、発光素子アレイチップ52が複数実装された基板51、発光素子アレイチップ52の出射光束を結像するレンズアレイ(以下、「結像光学素子」ともいう。)54を有し、図4に示すように基板51の周囲にはハウジング部材50が形成されている。また、図3(C)に示すように、基板51には、発光素子アレイチップ52が感光体11の長手方向に沿うようにライン状に実装されており、さらに発光素子52aを駆動する駆動IC53も複数実装されている。
【0025】
LED素子52aは、所定の点あるいは所定の面から拡散光を放射するものであるため、感光体11の被露光面上に集光し、潜像を形成するためには、該拡散光を結像光学素子54により微少なスポットに結像する必要がある。結像光学素子54としては、例えば、マイクロレンズアレイや、屈折率分布型ロッドレンズアレイ等を用いることができる。
【0026】
図3(B)に示す結像光学素子54は、屈折率分布を有するロッドレンズ54aを束ねたガラス製のロッドレンズアレイの例を示したものである。ロッドレンズアレイ54は、ロッドレンズ54aを2列の千鳥配列状に束ねたものであり、半径方向に2次曲線分布状の屈折率分布を有する円柱状の屈折率分布型ロッドレンズの例として図示している。ロッドレンズ54aの隙間54bは、不透明樹脂が充填され硬化されており、ロッドレンズ54a間を漏れるフレア光を抑えている。ロッドレンズ54aの両側からレンズと同等の線膨張係数をもつガラスを分散させた樹脂製の部材54cでロッドレンズ54aを保持している。
【0027】
図3(C)に示す基板51上には、発光素子アレイチップ52が書込幅に対応して数十〜数百個程度実装されている。各発光素子アレイチップ52内には、LED素子52aが間隔Piで数十〜数百個程度配列されている。主走査方向に隣り合う発光素子アレイチップ52は、その端部に位置するLED素子52aの隣接間隔Ptが所定の間隔(例えば、Piと同じ値)になるように配置され実装される。
【0028】
なお、発光素子アレイチップ52の幅(主走査方向の長さ)は、ウェハからの採り個数が最大となるように生産上設定される定型幅となる。
例えば、600dpi、A4幅(210mm)では、LED素子52aの全数として42.3μm(=Pi=Pt)間隔で4,960個配列する必要があり、LED素子52aが100個からなる発光素子アレイチップ52の場合、50個実装されることになる。
同様に1200dpi、A3幅(297mm)では、LED素子52aの全数として14,000個程度配列する必要があり、LED素子52aが100個からなる発光素子アレイチップ52の場合、140個実装されることになる。
【0029】
また、駆動トランジスタが集積化された駆動IC53は、点灯させるLED素子52aと駆動トランジスタとが1対1で対応するため、LED素子52aに応じた所望の個数が実装される。
【0030】
図3(C)に示す基板51の例では、主にガラスエポキシからなるプリント基板に複数のLED素子52aが配列してなる発光素子アレイチップ52が画素密度に合致するように所望の間隔で実装されている。具体的には、600dpiの場合、発光素子アレイチップ52内のLED素子52aの間隔Piと、主走査方向に隣接する発光素子アレイチップ52のLED素子52aの間隔Ptがともに42.3μmとなっている。なお、1200dpiでは21.2μmとなる。
【0031】
図3(C)中に示す光プリントヘッド13の全露光幅をDは、主走査方向のレジスト調整幅や、発光素子アレイチップ52の取付誤差のマージン分を考慮して、画像書込幅Wよりも広く設定されている。例えば、A4サイズでは、画像書込幅W=297mmに対し、全露光幅Dは5mm以上広く設定され、302mm以上とされる。なお、発光素子アレイチップ52の幅が定型幅であることから、302mm以上で該定型幅の整数倍の値となる。
【0032】
光プリントヘッド13の主走査方向の露光幅Dは、LED素子52aの配列間隔Pi及びPtの誤差に起因する差異を有する。
配列間隔の誤差とは、具体的には、製造時に発生する光源配列誤差であって、製造時に各々ウェハ内の素子分割精度と実装装置の精度によるものである。
製造時の光源配列誤差のある初期状態(以降「初期」という)の間隔のばらつきは、装置の温度上昇に伴う熱膨張によって変化量が加算されるので、初期のばらつき量と光プリントヘッド13が配置される環境温度により、主走査方向の全露光幅Dが大きく異なり、色ずれ等の画像劣化を生じる原因となる。特に、色ずれは、発光位置の変化量が問題となるため、熱膨張による変化の累積による全露光幅Dの温度変化量の最大値を極力小さくする必要がある。
【0033】
図4の断面図に示すように、発光素子アレイチップ52が実装された基板51の周囲にはハウジング部材50が形成され、発光素子アレイチップ52とロッドレンズアレイ54とが所望の配置(位置及び向き)となるように該ハウジング部材50に包囲され固定されている。ここでいう包囲とは、基板51の少なくとも3方向(図の下側、左側、右側)を囲み、基板51の実装部品の上端がハウジング上端よりも低い位置となるよう配置された状態をいう。
【0034】
ハウジング部材50の内部に基板51が収納されることにより、耐ノイズ性が向上する。具体的には、ハウジング部材50を、導電性を有する材質としたり、導電性の表面処理加工を施すことにより、ハウジング部材50の外部からの電気的な外乱ノイズ(例えば、装置内で隣接する帯電器12からの高電圧ノイズ)を遮蔽することができる。
【0035】
装置の温度上昇により、ハウジング部材50にも熱膨張が生じる。基板51とロッドレンズアレイ54とを所望の位置に保持するハウジング部材50が熱膨張することにより、図4中Aで示す基板51とロッドレンズアレイ54との距離が広がる。そして、共役関係にあることから、ロッドレンズアレイ54と感光体11の結像面との間Bにおいてピント位置のずれが発生する。ピント位置のずれにより、集光ビームが劣化して所望のプロファイルが得られず、画像のドット形成に劣化が生じる。
【0036】
図5に、1200dpiの光プリントヘッド13におけるデフォーカスに対するビーム径の変化を示す。
光プリントヘッド13が最適ピント位置(ベストピント位置)であるデフォーカス0の位置にあるとき、ビーム径は30μmである。デフォーカスすることによりビーム径が拡大し、デフォーカス+50μmまたは−50μmを超えると、レンズ特性の劣化によりサイドローブが大きくなリ(メインローブのビーム径を破線で示す)、画像のドット再現性が悪くなる。このため、光プリントヘッド13は、熱膨張による変位を考慮するなどして、矢印で示すデフォーカス+50μmから−50μmの範囲内となるように配置される必要がある。なお、デフォーカスの「+」は感光体へ近づく方向、「−」は感光体から遠ざかる方向を示している。
【0037】
本発明の画像形成装置の光プリントヘッド13は、配置される箇所のうち、環境温度が最も高温になる箇所に配置される光プリントヘッド13が、予め設定された最適ピント位置に対し、感光体11の被露光面から光軸に沿って遠くなる位置に設置される。
感光体11の被露光面から光軸に沿って遠くなる位置に設置するとは、図4の矢印Cの方向へシフトさせて配置することであり、図5に示すデフォーカスの「−」方向へシフトさせて配置することである。
【0038】
配置される箇所のうち環境温度が最も高温になる箇所に配置される光プリントヘッド13を、予め設定された最適ピント位置に対し、感光体11の被露光面から光軸に沿って遠くなる位置に設置する方法としては、例えば、光プリントヘッド13を固定する際に、シム(金属製の薄板)等を用いて感光体11の被露光面から光軸に沿って遠ざける方法が挙げられる。これにより、温度上昇によるピント位置のずれの発生を防止して、集光ビームの劣化、画像のドット形成の劣化を抑制することができる。
【0039】
図6及び図7に、光プリントヘッド13の配置図を示す。
図6に示すように、光プリントヘッド13を保持する位置決め部(図7に示す)と、感光体11の回転中心を軸受保持する支持部とを有する側面板17a,17bが両側面(前後)に配置され、光プリントヘッド13は、側面板17に両端を支持される。
図7は側面板(前)17a側から見た図である。図7に示すように、光プリントヘッド13はピント方向位置決め部31と副走査方向位置決め部32に保持され、板バネ等の手段により作用されるピント方向からの押圧力31a、副走査方向の押圧力32aを受け、感光体11の表面に対し所定の位置に当接固定される。
【0040】
一方、色ずれを高い精度で補正するためには、発光位置の変化量が問題となるため、熱膨張による変化の累積による全露光幅Dの温度変化量の最大値を極力小さくする必要がある。
そこで、本発明の画像形成装置の光プリントヘッド13は、複数の光プリントヘッド13のうち、主走査方向の露光幅である全露光幅Dが最も小さい光プリントヘッド13が、環境温度が最も高温になる箇所に配置される。
全露光幅Dが最も小さい光プリントヘッド13が、環境温度が最も高温になる箇所に配置されることにより、経時の温度変化における画像劣化(色ずれ)の少ないカラー画像形成装置を実現できる。
ここで、全露光幅Dの温度変化量は、プリント基板51の熱膨張係数が発光素子アレイチップ52の熱膨張係数よりも数倍高いので、実質的には主走査方向の複数の発光素子アレイチップ52の間隔、すなわち図3(C)に示したPtの変化の累積による膨張変化量が支配的となる。
【0041】
なお、間隔Piは、発光素子アレイチップ52のベース部材の熱膨張係数(例えば、Si:0.3×10−5/℃や、AlGaAs:0.6×10−5/℃)に従い膨張し、間隔Ptは、プリント基板51の熱膨張係数(例えば、FR−4:2.5×10−5/℃や、CEM−3:1.3×10−5/℃)に従い膨張する。
【0042】
そこで、本発明の画像形成装置おける光プリントヘッド13は、複数の光プリントヘッド13のうち、初期の全露光幅Dが最大である光プリントヘッドの全露光幅をDmax、初期の全露光幅Dが最小である光プリントヘッドの全露光幅をDminとするとき、下記式(1)を満足するように配置される。
Dmax−Dmin≦W×α×tp ・・・式(1)
ただし、Wは画像書込幅、αは基板の長尺方向の熱膨張係数、tpは光プリントヘッドが配置された複数の箇所における環境温度の差異の最大値を表わす。
上記式(1)を満足することにより、初期及び経時の温度変化における画像劣化(色ずれ)のないカラー画像形成装置を実現できる。
【0043】
図1に示すタンデム型カラー画像形成装置の例により説明する。
定着ユニット24周囲の温度が上昇することにより、Yの画像形成ユニットの温度が最も高く、他のK,M,Cの画像形成ユニットの温度はほぼ同等であって、温度差が5℃(K,M,Cの画像形成ユニットに対し、Yの画像形成ユニットが5℃高温)とする。
主走査1200dpi(Pi=21.2μm)、発光素子アレイチップ52の定型幅5.4mm(=256素子×21.2μm)、画像書込幅W=300mm、全露光幅D=307.8mm(57チップ分)、基板51(材質CEM−3)の熱膨張係数α=1.3×10−5/℃であるとき、式(1)は、
Dmax−Dmin≦19.5μm
となる。
すなわち、4つの光プリントヘッド13の初期のばらつき差を最大でも19.5μm以内に抑える。
さらに、初期の全露光幅Dmax=307.8195mmのとき、Dmin=307.8000〜307.8195mmの光プリントヘッド13をカラー画像形成装置10の製造組立前に予め選択しておき、全露光幅が最小Dminとなる光プリントヘッド13を、環境温度が最も高温になる箇所として定着ユニット24に一番近い箇所に選択的に配置する。
【0044】
なお、上記式(1)の右辺が20μm以下となることが好ましい。20μm超えると、主走査方向の色ずれとして視覚認知できることがある。
初期はチップ配列数が多いほどばらつき累積量が大きくなり、上記のような57チップ有する全露光幅307.8μmに対して、ばらつき量は最大±250μmほど発生する。このばらつき量を選択せずにランダムに使用してしまうと、色ずれが生じる。
【0045】
なお、環境温度の上昇により最も変化量の大きくなる位置に配置される画像形成ユニットは、最も視覚認知し難い色の画像形成ユニットであることが好ましい。
図1に示す画像形成装置においては、4色中で最も視覚認知し難いのはイエローであるため、イエローのトナーによる画像を形成する画像形成ユニットに対応する光プリントヘッド13が、環境温度が最も高温になる箇所、すなわち定着装置24に最も近接した位置に配置されることが好ましい。
また、透明トナーを使用して光沢感を向上させるため、透明色Tを追加して5色とした図2に示す画像形成装置においては、透明色のトナーによる画像を形成する画像形成ユニットに対応する前記光プリントヘッドが、環境温度が最も高温になる箇所に配置されることが好ましい。
このように、タンデムを構成している色成分の中で最も視覚認知し難い色の画像形成ユニットを環境温度が最も高温になる箇所に配置することにより、経時の温度変化における画像劣化が生じたとしても認知しにくいカラー画像形成装置を実現できる。
さらに、タンデムを構成している色成分の中で最も視覚認知し難い色の画像形成ユニットに全露光幅Dが最も小さい光プリントヘッド13を配置することにより、画像劣化が生じたとしても、より認知しにくいカラー画像形成装置を実現できる。
【0046】
図8に、光プリントヘッド13へのデータ伝送の一例を示す。
図8に示すように、画像書込ASIC63は、画像形成装置10内のメイン制御ASIC(図示せず)から画像データが送られてくると、光プリントヘッド13内のLED素子52aへの発光パターンに則してデータ並び替えを行い、必要に応じて発光部のレジスト補正や曲がり、傾き補正したデータに加工して光プリントヘッド13側へ伝送する。
光プリントヘッド13内には駆動IC53、発光素子アレイチップ52のほかに、データ保持IC55が実装されている。データ保持IC55は、画像書込ASIC63から伝送されてきたデータを、感光体11の回転速度に合わせて1ライン分毎に画像パターンにあわせて発光できるように、1ライン分の全データを一端保持する。保持されたデータを書込む発光タイミング信号に従い、LED素子52aは発光する。
【0047】
例えば、600dpi、A4幅(210mm)では、LED素子52aの全数4960個に対し、駆動IC53から発光素子アレイチップ52への伝送路の線数は同数の4960本となり、データ保持IC55から出力される駆動IC53へも同数の4960本である。
この本数のデータを伝送するために、デジタル化(例えば8bit)低減しているが、伝送路の線数は、8bitのパラレルでデータ線8本、クロック線1本、発光タイミング信号線1本で合計10本となる。
【0048】
基板51のLED素子実装面と反対側の面(裏面)に実装されたコネクタ61(61a,61b)に、伝送ケーブル62が挿入嵌合される。
伝送ケーブル62は、FFC(Flexible Flat Cable)またはFPC(Flexible Printed Circuits)のフラットケーブルからなり、全周にわたってシールド部材で包囲されている。このシールド部材により、画像データが高速で伝送される際に放出される電磁波をシールド部材内に閉じ込め放射電磁界を低減することができる。さらに、伝送ケーブル外から侵入する電磁波を遮断することができるので、伝送データの劣化もなくデータ品質が維持される。
【符号の説明】
【0049】
10 画像形成装置
11 感光体
12 帯電器
13 光プリントヘッド
14 現像器
15 転写ローラ
16 クリーニング手段
21 中間転写ベルト
22 搬送ベルト
23 2次転写ローラ
24 定着ユニット
25 給紙トレイ
50 ハウジング
51 基板
52 発光素子アレイチップ
52a 発光素子(LED素子)
53 駆動IC
54 レンズアレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2007−296819号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が配列してなる発光素子アレイチップ、前記発光素子アレイチップが複数実装された基板、前記発光素子アレイチップの出射光束を結像するレンズアレイ、及び前記基板の周囲に形成されたハウジング部材を少なくとも有し、被露光面を露光する光プリントヘッドを複数備える画像形成装置において、
前記光プリントヘッドが配置される箇所のうち、環境温度が最も高温になる箇所に配置される前記光プリントヘッドが、予め設定された最適ピント位置に対し、前記被露光面から光軸に沿って遠くなる位置に設置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数の前記光プリントヘッドの主走査方向の露光幅が、前記発光素子の配列間隔の誤差に起因する差異を有し、
複数の前記光プリントヘッドのうち、主走査方向の露光幅が最も小さい前記光プリントヘッドが、環境温度が最も高温になる箇所に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
複数の前記光プリントヘッドのうち、主走査方向の露光幅の最大値をDmax、最小値をDminとするとき、下記式(1)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
Dmax−Dmin≦W×α×tp ・・・式(1)
ただし、Wは画像書き込み幅、αは前記基板の長尺方向の熱膨張係数、tpは前記光プリントヘッドが配置された箇所の環境温度の差異の最大値をそれぞれ表わす。
【請求項4】
複数の前記光プリントヘッドが配置される箇所のうち、環境温度が最も高温になる箇所が、定着ユニットに最も近接した箇所であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
ブラック、マゼンタ、シアン、及びイエローのトナーによる画像を形成する各色の画像形成ユニットを備え、
前記イエローのトナーによる画像を形成する画像形成ユニットに対応する前記光プリントヘッドが、環境温度が最も高温になる箇所に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
透明トナーによる画像を形成する画像形成ユニットを備え、
前記透明トナーによる画像を形成する画像形成ユニットに対応する前記光プリントヘッドが、環境温度が最も高温になる箇所に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59943(P2013−59943A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200777(P2011−200777)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】