説明

画像形成装置

【課題】定着装置からの熱源の影響をプロセスステーション毎に考慮して、感光ドラムのVL変動を予測し、それに応じて画像形成制御を行い、常に安定した濃度の画像を得られる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体回転時間t1、感光体停止時間t2、雰囲気環境の温度Tc、雰囲気環境の絶対湿度W、定着装置からの熱源の影響をプロセスステーション毎に考慮して、VLアップとVLダウンによる変動をそれぞれ予測することで、適切な画像形成制御を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファックスなどの電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像を形成するカラー画像形成装置として、搬送ベルトに沿ってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の複数の異なる色の画像形成手段(プロセスステーション)を複数備え直列に配置したインライン方式がしられている。インライン方式では次のような転写方法がある。被転写材を搬送する搬送ベルトによって(搬送手段)被転写材を順次搬送して各色の像を順次転写する方法。または中間転写ベルト(中間転写手段)上に順次各色のトナー像を重ね合うように転写して最後に一括して転写材にトナー像を転写する方法である。転写後、定着装置によりトナー像を溶融固着させカラー画像を得る。インライン方式は、高速化の観点で優れた方式であり、現在のカラー画像形成装置の主流となっている。
【0003】
電子写真方式を利用した画像形成装置は、一般的に以下を備える。像担持体である感光体。感光体表面を帯電する帯電装置(コロナ帯電器、帯電ローラなど)。感光体上に静電潜像を形成する為の像露光装置。静電潜像を現像するための現像装置。トナー像を転写材に転写するための転写装置。感光体上の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置。感光体上の静電潜像を消去するための除電露光装置。更に転写材上のトナー像を定着するための定着装置。
【0004】
従来、電子写真を利用した画像形成装置では、一般に静電潜像上にトナー保持する感光体は、電荷発生層及び電荷輸送層で構成された感光層を有する。
【0005】
そして、プリント開始の信号により、感光体は一定方向に駆動されることで移動するようになっている。
【0006】
そして、感光体を帯電装置によりバイアス印加をすることにより、感光体表面を一定の電位まで帯電を行う(以下、帯電工程と呼ぶ)。
【0007】
このときの表面電位をVD電位と呼ぶ。さらに、コントローラからの信号に基づいて、オン/オフ制御されたレーザー光或いはLED光を感光体表面に照射する(以下、露光工程と呼ぶ)。感光体の光照射された位置は電位が低下することで、感光体表面には静電潜像が形成される。この光照射された部分の電位をVLと呼ぶ。
【0008】
そして、感光体に対向配置した、トナーが充填された現像装置に現像バイアスを印加し、所定の電荷を付与されたトナーを感光ドラム等の感光体である感光体上の静電潜像に移すことにより、静電潜像をトナー像とする(以下、現像工程と呼ぶ)。なお、現像バイアスをVdevと呼ぶ。
【0009】
そして、感光体に隣接して配置され、感光体と略同速度で順方向に移動する転写ローラ等の転写部材に、感光体上のトナーと逆極性のバイアスを印加する。その状態で感光体と転写部材との間に転写材を通過させることにより、感光上に担持されたトナーを転写材上に転写する(以下、転写工程と呼ぶ)。
【0010】
ところで、露光工程によって感光体中に残留電荷が発生し、画像形成中にVLが変動することがある。また、感光体は接触している帯電部材、露光部材、クリーニング部材等との摩擦や定着器等からの放熱による移動中の昇温により、VLが変動する場合もある。すなわち、画像形成に伴う感光体の露光工程や移動により、VdevとVLの差である現像コントラストが変動してしまうことになる。これは、感光体上のトナー乗り量の変化につながり、転写材上の画像濃度変動を招く。なお、現像コントラストはVcontと呼ぶ。
【0011】
これまで、画像濃度を安定させるために、感光体のVLをセンサにより検知して、その結果に応じて画像形成条件制御を行う画像形成装置がある(特許文献1参照)。しかしながら、センサの設置およびセンサを設置するスペースなどにより、コストアップや装置の大型化を招く問題があった。
【0012】
また、静電潜像形成前に行う、除電及び帯電を伴った感光体の回転の回数を、感光体近傍の温度及び湿度に応じて適宜選択することにより、同一画像を多数枚形成した際の画像濃度変動を抑える画像形成装置があった(特許文献2参照)。しかし、作像前の感光体の回転数を増加させることは、印刷スピードを落とし、画像形成装置の生産性を低下させる問題であった。
【0013】
上記のような問題を解決する方法として、感光体周辺の温度と感光体回転時間と感光体停止時間から感光体のVLを予測し、それに応じてプロセス制御を行う画像形成装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−181158号公報
【特許文献2】特開2005−300745号公報
【特許文献3】特開2002−258550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、本発明者による検討によると、画像形成に伴うVLの変動は雰囲気の絶対湿度依存性を有すること、およびVLの変動はVLの絶対値の上昇だけではなくVLの絶対値が減少する挙動も確認された。したがって、特許文献3で提案されている従来技術では、感光体周辺の雰囲気の絶対湿度を考慮していないことや、感光体回転時間とともにVLの上昇とVLの低下が両方起こりうることを想定していないために、VLの変動を精度よく予測することができなかった。そのため、適切な画像形成制御を行えず、安定した濃度の画像が得られない、という問題があった。以下、感光体回転時間とともにVLの絶対値を上昇させる方向に作用する現象を“VLアップ”と称し、感光体回転時間とともにVLの絶対値を低下させる方向に作用する現象を“VLダウン”と称する。
【0016】
図2に感光体の表面電位の概念図を示す。図2に示すようにVdevとVLの差である“Vdev−VL”がVcontとなる。このVcontが大きいほど、感光体上に現像されるトナー量が多くなるため画像濃度が高くなる。VLアップは、図2の矢印Aの方向(絶対値が高くなる方向)にVLが変動するため、Vcontが小さくなり画像濃度が低下してしまう現象である。一方、VLダウンは、図2の矢印Bの方向(絶対値が低くなる方向)にVLが変動するため、Vcontが大きくなり画像濃度が上昇してしまう現象である。
【0017】
以下、VLアップとVLダウンについて詳細に説明する。
【0018】
まず、VLアップで起こる現象についての説明を行う。L/L環境(低温低湿環境)、例えば15℃/10%RHの環境においては、数枚の連続画像形成であっても、図3(a)に示すような画像形成に伴うVLアップが起こる。また、本発明者による検討では、VLアップ現象において、絶対湿度が低い環境であるほど単位時間あたりのVLの上昇率が大きいことが確認されている。
【0019】
更に、VLアップは画像形成が行われる前に感光体が停止していた時間による影響を受け、この感光体停止時間が長いほど上昇量は大きくなる。例えば、感光体停止時間が長い場合には図3(a)に示すようにVLはV1まで上昇するが、感光体停止時間が短い場合には図3(b)に示すようにVLはV1より少ないV2までしか上昇しない。
【0020】
本発明者は、VLアップの現象は画像形成の際の感光体に対する露光により感光層内の残留電荷数が増加したことが主原因であると考えている。つまり、絶対湿度が低い環境においては、感光層中のいずれかの層の抵抗が高くなることで、電荷の移動や注入がスムーズに行われにくくなったことがVLアップの原因と考えた。このように絶対湿度が低い環境においては、画像形成を行うとともに抵抗が高い層に残留電荷の蓄積が生じるために、VLアップが起こる。画像形成の時間を感光体回転時間により推定することでもVLアップの量を予測することができる。
【0021】
画像形成により発生した残留電荷は、画像形成が終わり画像形成を停止することによりだんだんと感光層からアースへと抜けていく。さらに画像形成停止時間が長いほど、前の画像形成時に発生した残留電荷が少なくなり、次に画像形成を行った時に残留電荷が溜まりやすい状態となる。よって、画像形成停止時間が長いほど、次の画像形成を行った時に、VLアップの影響が顕著にでて、VLの上昇量が大きくなる。
【0022】
次に、VLダウンの現象についての説明を行う。連続画像形成がなされた場合に、図3(c)に示すように感光体回転時間とともにVLの低下が起こる。
【0023】
VLダウンによって低下したVLは、画像形成後に画像形成をしない時間、すなわち感光体停止時間が長いほど元のVLへと回復する傾向を示した。例えば、図3(c)において、直前の画像形成によるVLダウンによって直前の画像形成時のVLがV4まで低下した場合、次の画像形成時の初期のVLは、図3(d)に示すように感光体停止時間が長いほど元のVLであるV3に近い値を示した。
【0024】
本発明者はVLダウンについて、感光層内の残留電荷数が減少したことが主原因であると考えた。つまり、画像形成を行うと感光体の昇温が起き、感光層の抵抗が低下するため、感光層中にトラップされていた残留電荷が感光体の外に移動することが、VLダウンの原因と考えた。このように、感光体回転時間とともに感光体の昇温が起きて感光層の抵抗が低下し、トラップされていた残留電荷が減少するために、VLダウンが起きる。なお、感光体回転時間とともに感光体が昇温する原因としては、感光体との接触部材である現像部材、帯電部材、クリーニング部材等との摩擦や定着器等からの放熱であると考えられる。
【0025】
VLアップとVLダウンは、画像形成装置の置かれている雰囲気環境の温湿度に応じて、どちらか一方のみが起こることもあるし、同時に起こることもある。図3(e)に示すようにVLが一旦上昇してから、その後低下していく現象が起きることがある。また別の、ある環境においては、図3(f)に示すように、VLが一旦減少してから、その後上昇していく現象が起きることもある。
【0026】
以上で述べたように、VLの変動は、画像形成装置の設置されている環境の温度、または画像形成装置内の温度、または感光体周辺や感光体そのものの温度といった、温度による要因以外に、絶対湿度による要因もある。そのため、特許文献3で提案されているような従来技術では、絶対湿度に依存して起こるVLの変動を予測していないため、適切な画像形成制御を行うことができず、安定した濃度の画像を得られないという問題があった。
【0027】
また、特許文献3で提案されているような従来技術では、VLアップかVLダウンのどちらか一方が起こることを予測して画像形成制御を行う。そのため、VLアップとVLダウンが同時に起きる場合には適切な画像形成制御を行うことができず、安定した濃度の画像を得られないという問題があった。
【0028】
更に、本発明者の検討によると、上記インライン方式のカラー画像形成装置では、プロセスステーション毎のVL電位の変動量が異なる現象が確認された。具体的には、各プロセスステーションの感光体の膜厚や処方といった構成が同じにも関わらず、プロセスステーションが上流側になるにつれ、感光体の回転時間に伴い発生するVLダウン量が大きくなる現象が発生した。
【0029】
本発明者は、本現象に関して、定着装置から発生された熱が搬送ベルト或いは中間転写ベルト上にまず伝わり、そのベルトに伝わった熱がプロセスステーションに配置された感光ドラムへ伝わるものと推定した。このとき、搬送ベルト(中間転写ベルト)の移動方向上流側のプロセスステーションに配置された感光ドラムの方が熱が伝わりやすく、上流側ステーションでドラム昇温が発生しやすい状況になったと推定した。
【0030】
下流側のステーションになるにつれてVLダウン量が小さくなる理由は、上記ベルト上の熱が上流側の感光ドラムから順次奪われていく。そのため、下流側のステーションではベルト上の熱はほとんどなくなっているためドラム昇温の影響が小さいためと推定した。
【0031】
特許文献3で提案されているような従来技術では、このようなインラインカラー画像形成装置における、プロセスステーションが上流側になるにつれVLダウン量が大きくなることが考慮されていない。そのため、感光ドラムの回転時間に伴い、プロセスステーションによっては、安定した濃度の画像を得られないという問題があった。
【0032】
本発明は上記説明した従来技術の問題点を解決することを出発点としてなされたものである。その目的は、インラインカラー画像形成装置のプロセスステーションを考慮した画像形成制御を行うことにより、画像濃度が変動しない良好な画像をユーザーに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、以下の構成を有するものである。
【0034】
表面が回転可能な感光体と、前記感光体に画像を形成する画像形成手段を備える画像形成ステーションを複数備え、
前記感光体上に形成された現像剤像を中間転写手段又は搬送手段に搬送された被転写材に転写を行なう画像形成装置において、
前記感光体が停止状態から移動を開始して経過した時間である感光体回転時間に関する情報と、前記感光体が移動状態から停止して経過した時間である感光体停止時間に関する情報とを計測する時間計測手段と、
画像形成装置の温湿度を検知する温湿度検知手段と、
前記感光体回転時間に関する情報と、前記感光体停止時間に関する情報と、前記温湿度に関する情報と、制御値と、に応じて、前記画像形成手段による画像形成条件を制御する制御手段とを備え、
前記制御値は、各画像形成ステーションごとに異なることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、インラインカラー画像形成装置のプロセスステーションを考慮した画像形成制御を行うことにより、画像濃度が変動しない良好な画像をユーザーに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るシステムブロック図である。
【図2】感光体の表面電位の概念を示す図である。
【図3】感光ドラム回転時間と感光ドラムの表面電位の関係を示す図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図5】本発明に係る感光ドラムの断面図である。
【図6】本発明に係るプロセス制御の概念図である。
【図7】本発明に係るVLアップテーブルの内容を示す図である。
【図8】本発明に係るVLダウンテーブルの内容を示す図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の動作を示すフローチャート図である。
【図10】L/L環境における、画像形成枚数に対する感光ドラムの表面電位と、本実施の形態における現像バイアスの推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0038】
(実施例1)
図5は、本実施の形態の画像形成装置の概略構成を示す。本実施の形態において、画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスによって記録媒体(転写材)、例えば、記録用紙、OHPシート或いは布などに画像形成するレーザービームプリンタとされる。
【0039】
本実施の形態の画像形成装置100は、像担持体である円筒状の感光ドラム1を有し、その軸を中心に図5の矢印Aの方向に回転可能に支持している。画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム1Yの表面は、ローラ状の帯電手段(帯電ローラ)2Yによって一様に負に帯電される。その後、露光手段である露光装置3Yが、画像情報に応じた光により感光ドラム1Yの表面を走査露光し、感光ドラム1Yの表面に静電潜像を形成する。感光ドラム1Y上に形成した潜像は、現像装置5YがYトナーを供給することで現像される。
【0040】
現像装置5Yでは、現像スリーブ6Yに現像バイアスを印加することで前記感光ドラム1Y上に書き込まれた潜像をYトナー層として形成する。Yトナー層は、転写ローラ7Yに転写バイアスを印加することで、給紙カセット11より給紙ローラ12を介して給紙される転写ベルト9上の転写材Pの表面に転写される。転写材Pに転写されずに感光ドラム1Yの表面上に残ったトナーは、クリーニングブレード16Yによって除去された後、廃トナー収容部8Yによって収容される。
【0041】
転写ベルト9aは4本のローラ10a、10b、10c、10dに掛け渡されており、図5の矢印Bの方向に回転し、表面に担持した転写材Pを画像形成ステーションSY〜SBkに順次搬送する。なお、本実施例では、転写材を担持搬送する搬送ベルトを例に説明するが、中間転写ベルト(中間転写手段)のようなものでも本願発明は適用されうる。
【0042】
上記の処理を他の色のステーションSC、SM、SBkでも行うことにより、転写材P上には各色のトナー層が重ね合わされてできるトナー像(現像剤像)が形成される。その後、転写ベルト9の下流側に配置されたローラ10bのさらに下流側に位置する定着装置14によって、転写材Pの表面に転写されたトナー像は溶融固着され、カラー画像形成装置100の外部に配置されたトレイ15に排出される。
【0043】
画像形成装置100には温湿度検知手段として温湿度センサ18が設けられており、画像形成装置100が使用されている雰囲気環境を検出する。検出した温度と湿度は、CPU22に出力される。CPU22は温湿度センサ18より入力された温度と湿度から雰囲気環境の絶対湿度を算出し、雰囲気環境の温度と絶対湿度の情報をそれぞれ0.1℃と0.1g/m3の単位で記憶手段20に保存する。なお、絶対湿度とは、雰囲気環境の単位体積あたりに含まれる水蒸気量(g)を表すものであり、単位はg/mである。温湿度センサ18が設けられる場所はこれに限定されるものではなく、感光ドラム1の周辺に設けてもよいし、それ以外の場所であっても構わない。感光ドラム1の周辺に温湿度センサ18を配置した場合においても、感光ドラム1の実際の温度と、温湿度センサ18が検出する温度にはズレが発生する。そのため、感光ドラム1の周辺に置かれた温湿度センサ18の温湿度情報のみで現像バイアスを切り替えることは、感光ドラムの回転時間に対して画像濃度は安定しない。そのため、本実施の形態で記載されているような温湿度センサ18の検出結果に加え、感光ドラム1の回転時間、停止時間を考慮して予測した制御の方が好ましい。
【0044】
また、本実施の形態においては、雰囲気環境の温度と絶対湿度の情報をそれぞれ0.1℃と0.1g/m3の単位で記憶手段20に保存するとしたが、特に限定されるものではなく、これら以外の単位であってもよい。なお、本実施例では、温度と相対湿度から絶対湿度を計算しているが、直接絶対湿度を測定することが可能であればそれでも問題ない。
【0045】
なお、本実施の形態では、一成分現像方式を用いているが、これに限らず二成分現像方式を用いたものであってもよい。また、本発明における現像手段は磁性現像剤及び非磁性現像剤のいずれを用いるものであってもよく、これらは特に限定されるものではない。また、本発明に用いられる現像剤も、電子写真法に用いられる公知のものを用いることができ、現像手段に合わせて適宜最適なものが選択される。なお、本実施の形態においては、現像剤として非磁性現像剤を用いている。
【0046】
次に、画像形成装置100の感光ドラム1について説明する。感光ドラム1の感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層に機能分離された積層型である。さらに、この積層型の感光層上に保護層として表面層を形成している。
【0047】
図5を用いて、感光ドラム1の感光層の層構成について説明する。
【0048】
感光体の支持体となる導電性を有するAl基体1aの上に、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層1bを設けている。更に下引き層1bの上には、アルミ基体1aから注入された正電荷が感光ドラム1の表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たす、中抵抗の正電荷注入防止層1cを設けている。
【0049】
その上に電荷発生物質を含有する電荷発生層1dを設けており、電荷発生層1dは、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0050】
電荷発生層1dの上には、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層1eを設けている。電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0051】
電荷輸送層1eの上には表面層として表面保護層1fを設けている。表面保護層1fは、硬化性フェノール樹脂を溶剤等で溶解又は希釈して得た塗工液を感光層上に塗工して成形し、これによって塗工後に重合反応が起きて硬化層が形成される。
【0052】
次に、本実施の形態における、画像形成装置100の画像濃度制御方法について述べる。
【0053】
画像濃度制御の一部は、各色の最大濃度を一定に保つ事(以下Dmax制御と称す)と、ハーフトーンの階調特性を画像信号に対してリニアに保つこと(以下Dhalf制御と称す)によって行っている。
【0054】
Dmax制御は、各色の最大濃度が感光ドラム1の膜厚や雰囲気環境に影響されるため、所望の最大濃度が得られるように環境検知の結果及びCRGタグ情報から帯電バイアスや現像バイアスなどの画像形成条件を設定する。
【0055】
一方、Dhalf制御は、電子写真特有の非線形的な入出力特性(γ特性)によって、入力画像信号に対して出力濃度がずれて自然な画像が形成できない事を防止するため、γ特性を打ち消して入出力特性をリニアに保つような画像処理を行う。入力画像信号が異なる複数のトナーパッチを光学センサで検知して、入力画像信号と濃度の関係を得る。その関係から入力画像信号に対して所望の濃度が出るよう、画像形成装置に入力する画像信号を変換する。このDhalf制御はDmax制御により帯電バイアスや現像バイアスなどの画像形成条件を決定した後に行う。
【0056】
VLの変動によって出力画像の濃度が感光体回転時間とともに変化する場合、Dmax制御とDhalf制御を頻繁に、例えば5枚の印刷枚数ごとに行うことで、色味変動を抑制することは可能である。しかし、Dmax制御とDhalf制御を頻繁に行うことは印刷スピードを大幅に落とし、画像形成装置の生産性を著しく低下させるため現実的ではない。そのため、本実施の形態では、Dmax制御とDhalf制御は1000枚の印刷枚数につき1度しか行っていない。なお、本実施の形態におけるDmax制御とDhalf制御は1000枚の印刷枚数につき1度のタイミングとしたが、これに限定されるものではなく、別のタイミングであっても構わないし、Dhalf制御を全く行わない構成であってもよい。また、印刷枚数ではなくトナー消費量などを基準としてDmax制御とDhalf制御を行うタイミングを決めてもよい。
【0057】
本実施の形態では、Dmax制御とDhalf制御は1000枚の印刷枚数につき1度しか行っていないため、その間にVLが大幅に変動してしまう。そのため、画像濃度制御をDmax制御とDhalf制御のみで行うと、安定した画像濃度が得られない。そこで、本実施の形態では、Dmax制御やDhalf制御以外の画像濃度制御を行なっている。即ち、感光体回転時間や感光体停止時間、温湿度から、VLの変動を予測することでDmax制御によって決められた帯電バイアス若しくは現像バイアス(Vdev)を現像コントラスト(Vcont)が一定になるように逐次補正する画像形成制御を行う。
【0058】
図1は、本実施の形態における画像形成制御のシステムブロック図である。なお、記憶手段20、CPU22、読み取り手段21、書き込み手段26は、図4に示すように画像形成装置100のエンジン制御部17に設けられている。なお、記憶手段20は、周知の電子的なメモリを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。本実施の形態では、記憶手段20として不揮発性のEEPROMを使用した。
【0059】
CPU22は以下を備えている。VLの変動を予測する計算手段25。計算手段25によってVLの変動を予測した結果に基づいて画像形成条件の制御を行う制御手段23。感光体回転時間や感光体停止時間の計測が可能な時間計測手段であるタイマー24。
【0060】
タイマー24は、感光ドラム1が駆動している間は感光体回転時間のカウントを1秒単位で行い、感光ドラム1の駆動が停止している間は感光体停止時間のカウントを1秒単位で行う。なお、本実施の形態においてはタイマー24のカウントを1秒単位としたが、特に限定されるものではなく、1秒以外の単位であってもよい。タイマー24によって計測した感光体回転時間と感光体停止時間は書き込み手段26を介して記憶手段20に記憶される。なお、本実施の形態においては、感光体回転時間と感光体停止時間の計測をどちらもタイマー24によって行ったが、感光体回転時間と感光体停止時間の計測を2つのタイマーがそれぞれ独立して行う構成であってもよい。
【0061】
画像形成装置100には、記憶手段20に記憶された情報を読み取るための読み取り手段21が設けられている。読み取り手段21は、記憶手段20から読み取った情報をCPU22へ送る。CPU22内にある計算手段25はこれらの情報に基づいて、後述する方法でVLの変動を予測する。制御手段23は、計算手段25で予測した結果に基づき、画像形成プロセスを制御するための情報を画像形成手段に送る。
【0062】
次に本実施の形態の画像形成装置100における画像形成制御について説明する。VLアップやVLダウンが生じる場合において画像濃度を安定させるためには、感光体回転時間に対する感光ドラム1のVLの変動を補正するような画像形成制御を行うことが必要である。このような画像形成制御のためには、前述したように現像バイアスの制御、帯電バイアスの制御を行うことが挙げられる。例えばVLダウンが生じる場合には、そのVLダウン分の帯電バイアスの絶対値を増加させるように作用する補正量(第1の補正量)を計算手段で計算する。VLアップが生じる場合には、そのVLアップ分の帯電バイアスの絶対値を減少させるように作用する補正量(第2の補正量)を計算手段で計算する。また、例えばVLダウンが生じる場合には、そのVLダウン分の現像バイアスの絶対値を減少させるように作用する補正量(第3の補正量)を計算手段で計算する。VLアップが生じる場合には、そのVLアップ分の現像バイアスの絶対値を増加させるように作用する補正量(第4の補正量)を計算手段で計算する。本実施の形態では現像装置5の現像バイアス制御を例として説明する。
【0063】
図6は本実施の形態における、画像形成制御の概念図である。本実施の形態においては、計算手段25は、VLアップによる変動量であるΔUをt1、t2、W、Tcの4つのパラメータより計算し、VLダウンによる変動量であるΔDをt1、t2、W、Tcの4つのパラメータより計算している。なお、ΔUは0若しくは負の値であり、ΔDは0若しくは正の値である。
t1は、感光ドラムの回転時間である。t2は、感光ドラムの停止時間である。環境温度Tc、絶対湿度Wは、画像形成装置の電源がONとなったときの温湿度センサ18が読み取った値を記憶手段20へ保存した値である。
【0064】
本実施例では、1つの画像形成(画像形成ジョブの一単位)の開始時にt1=0として情報をリセットしている。したがって、感光体回転時間t1は、画像形成開始から制御装置による画像形成条件の制御実行までの感光体回転時間に該当する。即ち、t1は、感光体が停止状態から移動を開始して経過した時間である感光体回転時間に関する情報である。また、1つの画像形成(画像形成ジョブの一単位)の終了時にt2=0として情報をリセットしている。したがって、感光体停止時間t2は、前の画像形成終了の時から次の画像形成開始までの感光体回転停止時間に該当する。即ち、t2は、感光体が移動状態から停止して経過した時間である感光体停止時間に関する情報である。
【0065】
詳細は後述するが、本実施例では、ΔUを計算する際は、t1とt2から求められる実質的な感光ドラム回転時間t1upと、Wと、TcとからΔUを計算する。同様に、ΔDを計算する際は、t1とt2から求められる実質的な感光ドラム回転時間t1dwと、Wと、TcとからΔUを計算する。
【0066】
実質的な感光体回転時間は、VLアップカウント用(以下t1upと称する)とVLダウンカウント用(以下t1dwと称する)でそれぞれ独立のパラメータとして設ける構成とした。以下、t1up、t1dwとある場合は、実質的な感光体回転時間を示すものとする。
【0067】
計算手段25はVLの変動を予測し、制御手段はこの予測結果に基づいて、Vcontが一定になるように現像装置5に印加する現像バイアスを制御する。
【0068】
VLの変動を予測するためには、VLアップによる変動とVLダウンによる変動を両方予測する必要がある。計算手段25は、VLアップによる変動量とVLダウンによる変動量をそれぞれ計算することによりVLの変動を予測する。また、計算手段25は、VLアップによる変動量であるΔUをt1、t2、W、Tcの4つのパラメータより計算し、VLダウンによる変動量であるΔDをt1、t2、W、Tcの4つのパラメータより計算する。
【0069】
次に、計算手段25がVLの変動を計算する方法について詳しく説明する。VLの変動に関する特性は記憶手段20の中に保存されているテーブル(制御値)に与えられており、計算手段25はこのテーブルを参照することによってVLの変動を計算する。
【0070】
以下、VLアップによる変動とVLダウンによる変動の計算方法についてそれぞれ述べる。
【0071】
まず、VLアップによる変動の計算方法について述べる。VLアップによる変動は、図1に示すように、記憶手段20の中に保存されている各プロセスステーションに対応したVLアップテーブル(制御値)を参照することで行われる。例えば、最上流ステーションである第1ステーションの場合はVLアップテーブル27aを参照し、最下流ステーションである第4ステーションの場合は、VLアップテーブル27dを参照する。
【0072】
以下、VLアップの計算方法の説明を最上流ステーションである第1ステーションの場合を例にとり、説明を行う。その他の第2〜第4ステーションに関しては、参照するテーブルが27b〜27dと異なるだけであり、VLアップ量の計算方法は第1ステーションと同様である。
【0073】
VLアップテーブルは図7に示すように、テーブルAとテーブルB、テーブルCから成り、これらのテーブルに基づいて感光体回転時間に対するVLアップによる変動量の計算を行う。テーブルAは、感光体の実質回転時間(以下t1up称する)に対するVLの変動量を示したものである。テーブルBは、雰囲気環境の温度Tcと絶対湿度Wに基づいて選択される係数が、4×4のマトリクスとして示されている。t1upの詳細は後述する。
【0074】
また、テーブルCは感光体停止時間t2に基づいて選択される係数を示している。例えばt2=200(S)であれば、λ=0となる。これは感光体停止時間が増加するほど、感光ドラムの残留電荷の影響が元に戻ることを意味している。感光体回転時間に対するVLアップによる変動量の計算は、テーブルAに、テーブルBから選択された係数を乗じることによって行われる。なお、図8で示したテーブルAはテーブルの形にはなっていないが、実際には、このグラフがテーブルの形としてテーブルAには記載されている。
【0075】
前述したように、VLアップによる変動量ΔUは、t1up(t1、t2から求められる)、W、Tcの3つのパラメータから計算される。この理由について説明をする。
【0076】
テーブルAから解かるように、感光体回転時間t1が大きくなると、変動量ΔUも大きくなる。例えば、テーブルAでは、感光体回転時間t1が30(s)より大きくなると、変動量ΔUは10.5(V)でほぼ飽和することになる。しかしながら、t1のカウントを開始する時点において、すでに感光体が10(s)回転しておりΔUが6になってる状態であるならば、感光体回転時間t1が20(s)を経過した時点で、変動量ΔUは10.5Vに飽和することになる。このように、単純に感光体回転時間t1に基づいて計算を行なってもΔUを適当に求めることができない。そこで、t1をカウントし始める時の感光体の状態を加味した、実質的な感光体回転時間t1upを用いてΔUを計算する。
【0077】
本実施例では、画像形成ジョブの一単位の開始時にt1=0として情報をリセットしてカウントをし始める。そこで、t1をカウントし始めた時の、感光体の状態を加味することにしている。具体的には、Vupendとλから、感光体のVLアップの変動量の状態(VLup)を求める。Vupendは、今回の画像形成ジョブの一つ前の画像形成ジョブ終了時のΔUの値である。λは、一つ前の画像形成ジョブが終了してから今回の画像形成ジョブが始まるまでの感光体停止時間t2から求められる補正係数である。
VLupは次式で示される。
VLup=λ×Vupend
【0078】
このVLupの値を、テーブルAを用いて感光体回転時間t1に換算したものを、t1up_lkとする。t1up_lkは、t1のカウントを開始し始めた時に、既にどの程度感光体が回転しているのと同じ状態なのかを表している。ΔUを求める際には、t1up_lkとt1とを加算して実質的な感光体回転時間とすることで、適当なΔUを求めることができる。
【0079】
感光ドラム1が駆動中におけるVLアップの計算方法を説明する。画像形成時のVLアップによる変動量ΔUは、感光体回転時間t1upとテーブルAから算出される。ここで、先に説明したように、実質的な感光ドラム1の回転時間であるt1upに関しては、数式1で示すような関係がある。つまり、今回の画像形成ジョブで感光ドラム1が回転開始してからの経過時間t1と、今回の画像形成ジョブが開始された時の感光体の状態を表すt1up_lkの合計値となっている。
t1up=t1+t1up_lk・・・数式1
t1・・・今回の画像形成ジョブで感光ドラム1が回転開始してからの経過時間
t1up_lk・・・今回の画像形成ジョブが開始された時の感光体のVLアップ量をテーブルAにより時間に逆換算した値
【0080】
テーブルAから算出されたVLアップ量に、図7(b)で示すテーブルBにて、雰囲気環境の温度Tcと絶対湿度Wに基づいて選択される係数を掛ける事によって、制御手段23で制御するVLアップ量ΔUを決定する。
【0081】
また、画像形成ジョブが終了し感光ドラム1が停止した時に、計算手段25は感光ドラム1停止時のVLアップ量であるVupendを記憶手段に保存し、タイマー24にて感光体停止時間t2のカウントを開始する。そして、今回の画像形成ジョブから次の画像形成ジョブまでの感光体停止時間t2の値に応じて、図7(c)で示すテーブルCによりVupendに掛ける係数λが選択される。次の画像形成ジョブが開始される時には、これらVupendとλから数式2によりVLupを求める。
VLup=λ×Vupend・・・数式2
今回の画像形成ジョブが開始された時の感光体のVLアップ量であるVLupは数式2で示される。数式1にて説明したt1up_lkはこのVLup量をテーブルAにより時間に逆換算したものである。
【0082】
なお、本実施の形態では、VLアップ量はプロセスステーションにより差が見られなかったため、VLアップテーブルは全て同一の値とした。しかし、プロセスステーションによりVLアップ量が異なる場合は、テーブルの値を異なる値としても良い。
【0083】
次に、VLダウンによる変動の計算方法について述べる。VLダウンによる変動は、図1に示すように、記憶手段20の中に保存されている各プロセスステーションに対応したVLダウンテーブルを参照することで行われる。VLアップテーブルの場合と同様に、最上流ステーションである第1ステーションの場合はVLダウンテーブル28aを参照し、最下流ステーションである第4ステーションの場合は、VLダウンテーブル28dを参照する。
【0084】
以下、VLダウンの計算方法の説明を、VLアップの計算方法と同様に、最上流ステーションである第1ステーションの場合を例にとり、説明を行う。
【0085】
VLダウンテーブルは図8に示すように、テーブルDとテーブルE、テーブルFから成り、これらのテーブルに基づいて感光体回転時間に対するVLダウンによる変動量の計算を行う。テーブルDは、感光体の実質回転時間(以下t1dw称する)に対するVLの変動量を示したものである。テーブルEは、雰囲気環境の温度Tcと絶対湿度Wに基づいて選択される係数が、4×4のマトリクスとして示されている。t1dwの詳細は後述する。
【0086】
また、テーブルFは感光体停止時間t2に基づいて選択される係数を示している。これは感光体停止時間が増加するほど、感光ドラムの昇温具合が元に戻る(すなわち、雰囲気温度に近づく)ことを意味している。感光体回転時間に対するVLダウンによる変動量の計算は、テーブルDに、テーブルEから選択された係数を乗じることによって行われる。なお、図8はテーブルの形にはなっていないが、実際には、このグラフがテーブルの形としてテーブルDには記載されている。
【0087】
前述したように、VLダウンによる変動量ΔDは、t1、t2、W、Tcの4つのパラメータから計算される。まず、感光ドラム1が駆動中におけるVLダウンの計算方法を説明する。
【0088】
画像形成時のVLダウンによる変動量ΔDは、感光体回転時間t1dwとテーブルAから算出される。ここで、実質的な感光ドラム1の回転時間であるt1dwに関しては、数式3で示すような関係がある。つまり、今回の画像形成ジョブで感光ドラム1が回転開始してからの経過時間t1と、今回の画像形成ジョブが開始された時の感光体の状態を表すt1up_lkの合計値となっている。
t1dw = t1 + t1dw_lk ・・・ 数式3
t1・・・今回の画像形成ジョブで感光ドラム1が回転開始してからの経過時間t1dw_lk・・・今回の画像形成ジョブが開始された時の感光体のVLダウン量をプリントモードに対応したテーブルDにより時間に逆換算した値
【0089】
テーブルDから算出されたVLダウン量に、図8(b)で示すテーブルEにて、雰囲気環境の温度Tcと絶対湿度Wに基づいて選択される係数を掛ける事によって、制御手段23で制御するVLダウン量ΔDを決定する。
【0090】
また、画像形成ジョブが終了し感光ドラム1が停止した時に、計算手段25は感光ドラム1停止時のVLダウン量であるVdwendを記憶手段に保存し、タイマー24にて感光体停止時間t2のカウントを開始する。そして、今回の画像形成ジョブから次の画像形成ジョブまでの感光体停止時間t2の値に応じて、図7(c)で示すテーブルFによりVdwendに掛ける係数bが選択される。次の画像形成ジョブが開始される時には、これらVdwendとλから数式4によりVLdwを求める。
VLdw=b×Vdwend・・・数式4
【0091】
感光ドラム1が回転直後のVLダウン量であるVLdwは数式4で示され、数式3にて説明したt1dw_lkはこのVLdw量をプリントモードに対応したテーブルDにより時間に逆換算したものである。
【0092】
以上の方法により、計算手段25は、VLアップテーブルを用いてVLアップ27aによる変動量を計算し、VLダウンテーブル28aを用いてVLダウンによる変動量を計算する。制御手段23は、これらの計算結果の情報に基づき現像装置5に現像バイアス制御のための情報を画像形成手段に送る。本実施の形態においては、現像コントラスト(Vcont)が一定になるように現像バイアスを制御している。
【0093】
次に、図9のフローチャートを参照して、本実施の形態の画像形成制御の流れを説明する。
【0094】
画像形成開始が指示されると、ステップ1で感光体回転時間t1が0として記憶手段20に保存され、ステップ2にて、タイマー24は1秒単位で時間をカウントし始める。その後ステップ3では、読み取り手段21によって記憶手段20より、環境温度Tc、絶対湿度W、画像形成開始時VLアップ量VLup、画像形成開始時VLダウン量VLdwが読み取られる。なお、このとき、読み取られる環境温度Tc、絶対湿度Wは、画像形成装置の電源がONとなったときの温湿度センサ18が読み取った値を記憶装置20へ保存した値である。
【0095】
ステップ4では、計算手段25は、各プロセスステーション毎に、前述した方法により、環境温度Tc、環境絶対湿度W、画像形成開始時VLアップ量VLup、感光体回転時間t1からVLアップによる変動量ΔUを計算する。
【0096】
ステップ5では、計算手段25は、各プロセスステーション毎に、前述した方法により、環境温度Tc、環境絶対湿度W、画像形成開始時VLダウン量VLdw、感光体回転時間t1からVLダウンによる変動量ΔDを計算する。
【0097】
ステップ6では、計算手段25は、ステップ5とステップ6で計算したVLアップによる変動量ΔUとVLダウンによる変動量ΔDから、VLの変動量を”ΔU+ΔD”として計算する。制御手段23はこの計算結果を元に、Vcontが一定になるように現像装置5に印加する現像バイアスを制御する。
【0098】
ステップ7では、CPU22は画像形成が終了するか否かを判断する。画像形成が続行される場合(ステップ7、No)は、ステップ8にてタイマー24は感光体回転時間t1のカウントを1秒増やし、ステップ3からステップ6の動作を画像形成が終了されるまで繰り返す。ステップ7で画像形成が終了される場合(ステップ7、YES)は、画像形成停止時の計算へと移行する。
【0099】
ステップ9では、CPU22は画像形成終了時のVLup量であるVupend、及びVLdw量であるVdwendを記憶手段20に保存する。
【0100】
ステップ10では、感光体停止時間t2が0として記憶手段20に保存され、ステップ11にて、タイマー24は1秒単位で時間をカウントし始める。
【0101】
ステップ12では、CPU22は画像形成が開始されるか否かを判断する。画像形成が停止のままである場合は(ステップ12、No)、ステップ13にて感光体停止時間t2のカウントを1秒増やし、画像形成が開始されるまでステップ12からステップ13を繰り返す。画像形成が開始される場合(ステップ12、Yes)は、ステップ14にて感光体停止時間t2に応じて、感光ドラム1停止時のVLアップ量、VLダウン量を前述した数式2及び数式4に基づき算出する。そして、記憶手段20に保存を行い、その後ステップ1からの画像形成時の計算へと移行する。
【0102】
次に本実施の形態によって得られる効果について、本実施の形態のプロセス制御を行った場合と、行わなかった場合(比較例)を比較して説明する。ここで、比較例については、本実施の形態のプロセス制御を全く行わない、すなわち現像バイアスは固定値であるものとした。なお、従来例の画像形成装置は、上述の画像形成制御を行わない以外は、本実施の形態の画像形成装置100と同一構成であった。
【0103】
図10には、L/L(15℃10%RH、絶対湿度1.06g/m)の環境下における、現像バイアスVdevの推移を示す。比較例、本実施の形態ともに、Dmax制御とDhalf制御を行った後、500枚まで連続で画像形成を行った場合のる第1ステーションと第4ステーションのものである。また、このときの画像形成開始前の感光体停止時間t2は12000秒であった。
【0104】
最上流ステーションである第1ステーションでは、プリント開始から25〜50枚付近は3〜4V程度VLアップする。その後VLダウンが発生し、500枚プリント時にはプリント開始時に対して22VのVLダウンが発生する。
【0105】
その一方、最下流ステーションである第4ステーションでは、プリント開始から25〜50枚付近は第1ステーションと同様に3〜4V程度のVLアップが発生する。その後は、VLダウンの影響は第1ステーションと比較して小さいため、500枚プリント時にはプリント開始時に対して11V程度のVLダウンとなっている。
【0106】
本実施の形態において、第1ステーション及び第4ステーションの感光ドラムに印加される現像バイアスは、上述したようなそれぞれのVLの変動に対して適切な現像バイアスを選択している。その結果、Vcontは一定に保たれているため、500枚プリントを実行した場合における画像濃度変動は小さくなっている。
【0107】
一方、比較例のように現像バイアスを可変としない場合は第1ステーションでは最大で22V、第4ステーションでは最大で11VのVcontの変動が発生した。その結果、画像濃度の変動は、第1ステーション、第4ステーション共に発生したが、第1ステーションの方が、第4ステーションと比較してより画像濃度が濃くなるという画像濃度変動が発生した。
【0108】
本実施の形態においては、感光ドラム1の表面電位としてVLの変動を予測した結果に基づいて現像バイアスの制御を行ったが、ハーフトーン画像部の電位変動を予測した結果に基づいて現像バイアスの制御を行ってもよい。
【0109】
本実施の形態においては、1秒単位で現像バイアスの制御を行ったが、別の単位で現像バイアスの制御を行ってもよい。例えば、0.5秒単位で現像バイアスの制御を行ってもよいし、1ページ単位で現像バイアスの制御を行ってもよい。
【0110】
本実施の形態では、VLの変動を予測した結果に基づいて、Vcontを一定にするための画像形成制御として現像バイアスの制御を行ったが、帯電バイアスの制御を行ってもよい。つまり、現像バイアスを一定にしたまま、VLの変動を予測した結果に基づいて帯電バイアスを逐次変更することによってVcontを一定にする。そのためには、帯電バイアスと予測されたVLの関係を示したテーブルを記憶手段20に保存しておき、VLが常に一定になるように帯電バイアスを制御すればよい。例えば、ΔUとΔDの影響から、VLがアップするような場合は、帯電バイアスを低くし、VLがダウンするような場合は帯電バイアスを高く設定する。以上の方法によって、画像形成制御として帯電バイアスの制御を行った場合においても、常に安定した濃度の画像を得ることができる。また、VLの変動を予測した結果に基づいて、帯電バイアスと現像バイアスの両方の制御を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
100 画像形成装置
1Y、1M、1C、1K 感光ドラム
2Y、2M、2C、2K 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K 露光装置
5Y、5M、5C、5K 現像装置
6Y、6M、6C、6K 現像スリーブ
7Y、7M、7C、7K 転写ローラ
8Y、8M、8C、8K 廃トナー収容部
9 転写ベルト
11 給紙カセット
13 レジローラ
14 定着装置
16 クリーニングブレード
17 エンジン制御部
18 温湿度センサ
20 記憶手段
21 読み取り手段
22 CPU
23 制御手段
24 タイマー
25 計算手段
26 書き込み手段
27a〜d 第1〜第4ステーションに対応したVLアップテーブル
28a〜d 第1〜第4ステーションに対応したVLダウンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が回転可能な感光体と、前記感光体に画像を形成する画像形成手段を備える画像形成ステーションを複数そなえ、
前記感光体の上に形成された現像剤像を中間転写手段又は搬送手段に搬送された転写材に転写を行なう画像形成装置において、
前記感光体が停止状態から移動を開始して経過した時間である感光体回転時間に関する情報と、前記感光体が移動状態から停止して経過した時間である感光体停止時間に関する情報とを計測する時間計測手段と、
画像形成装置の温湿度を検知する温湿度検知手段と、
前記感光体回転時間に関する情報と、前記感光体停止時間に関する情報と、前記温湿度に関する情報と、制御値と、に応じて、前記画像形成手段による画像形成条件を制御する制御手段とを備え、
前記制御値は、各画像形成ステーションごとに異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段は、
前記感光体の表面を帯電する帯電装置、
前記感光体に露光することにより静電潜像を形成する露光装置、
前記静電潜像に現像剤を供給して現像剤像とする現像装置を備えることを特徴とする、請求項1の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、温度と相対湿度から絶対湿度を算出し、
前記制御手段は、温度と、絶対湿度と、前記感光体回転時間と前記感光体停止時間に応じて前記画像形成条件を変更することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成条件は、帯電装置に印加する帯電バイアス、現像装置に印加する現像バイアスの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記温湿度、前記感光体回転時間、前記感光体停止時間の条件が同じ場合、中間転写手段又は搬送手段の移動方向の上流に配置された前記画像形成ステーションは、前記制御手段は、帯電装置に印加する帯電バイアスの絶対値を、下流側に配置された前記画像形成ステーションにおける帯電装置に印加する帯電バイアスの絶対値よりも、大きくすることを特徴とする請求項1乃至4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記温湿度、前記感光体回転時間、前記感光体停止時間の条件が同じ場合、中間転写手段又は搬送手段の移動方向の上流に配置された前記画像形成ステーションは、前記制御手段は、前記現像装置に印加する現像バイアスの絶対値を、下流側に配置された前記画像形成ステーションにおける現像装置に印加する現像バイアスの絶対値よりも、小さくすることを特徴とする請求項1乃至4記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、帯電バイアスの絶対値を増加させるように作用する第1の補正量と、帯電バイアスの絶対値を減少させるように作用する第2の補正量と、を計算する第1の計算手段を備え、
前記第1の補正量と、前記第2の補正量と、に応じて帯電バイアスを制御することを特徴とする、請求項4記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、現像バイアスの絶対値を減少させるように作用する第3の補正量と、現像バイアスの絶対値を増加させるように作用する第4の補正量と、を計算する第2の計算手段を備え、
前記第3の補正量と、前記第4の補正量と、に応じて、現像バイアスを制御することを特徴とする、請求項4記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1の計算手段は、前記感光体回転時間が増加するほど帯電バイアスの絶対値を増加させるように前記第1の補正量を計算し、前記感光体停止時間が増加するほど帯電バイアスの絶対値を減少させるように前記第1の補正量を計算することを特徴とする、請求項7記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1の計算手段は、前記感光体回転時間が増加するほど帯電バイアスの絶対値を減少させるように前記第2の補正量を計算し、前記感光体停止時間が増加するほど帯電バイアスの絶対値を増加させるように前記第2の補正量を計算することを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第2の計算手段は、前記感光体回転時間が増加するほど現像バイアスの絶対値を減少させるように前記第3の補正量を計算し、前記感光体停止時間が増加するほど現像バイアスの絶対値を増加させるように前記第3の補正量を計算することを特徴とする、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第2の計算手段は、前記感光体回転時間が増加するほど現像バイアスの絶対値を増加させるように前記第4の補正量を計算し、前記感光体停止時間が増加するほど現像バイアスの絶対値を減少させるように前記第4の補正量を計算することを特徴とする、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第1の計算手段は、中間転写手段又は搬送手段の移動方向の上流の画像形成ステーションにおける前記第1の補正量を、下流側の画像形成ステーションにおける前記第1の補正量よりも帯電バイアスの絶対値を増加させるよう計算することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記第2の計算手段は、中間転写手段又は搬送手段の移動方向の上流の画像形成ステーションにおける前記第3の補正量を、下流側の画像形成ステーションにおける前記第3の補正量よりも現像バイアスの絶対値を減少させるよう計算することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−65035(P2013−65035A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264146(P2012−264146)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2008−138051(P2008−138051)の分割
【原出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】