画像形成装置
【課題】感光ドラムと中間転写ベルトの周面速度差や、中間転写ベルトと二次転写ローラの周面速度差を適切に制御し、色ずれや画像不良の発生しにくい画像形成装置を提供する。
【解決手段】二次転写モータ駆動御部155は、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81とについて従動条件が満たされるように、二次転写モータ300を駆動する。従動条件が満たされれば、色ずれや画像不良の発生しにくい程度に、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81との周面速度差を適切に制御される。従動条件は、たとえば、TL≧Tmの場合にはTL−Tm≦uFが成立し、TL<Tmの場合には、Tm−TL<uFが成立することである。ここで、uは、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81の静摩擦係数である。Fは、中間転写ベルト51(二次転写対向ローラ55)と二次転写ローラ81の当接圧である。TLは、二次転写ローラ81の負荷トルクである。Tmは、二次転写モータ300の駆動トルクである。
【解決手段】二次転写モータ駆動御部155は、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81とについて従動条件が満たされるように、二次転写モータ300を駆動する。従動条件が満たされれば、色ずれや画像不良の発生しにくい程度に、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81との周面速度差を適切に制御される。従動条件は、たとえば、TL≧Tmの場合にはTL−Tm≦uFが成立し、TL<Tmの場合には、Tm−TL<uFが成立することである。ここで、uは、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81の静摩擦係数である。Fは、中間転写ベルト51(二次転写対向ローラ55)と二次転写ローラ81の当接圧である。TLは、二次転写ローラ81の負荷トルクである。Tmは、二次転写モータ300の駆動トルクである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色画像形成装置における画像こすれや色ずれ等の画像不良防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タンデム方式は、複数の画像形成ステーションを用いてそれぞれ色の異なるトナー像を並行して作成することで、ロータリ方式よりも画像形成速度を向上させた方式である。一方、タンデム方式は、複数の感光体及び複数の光学装置を用いるため、感光体及び光学装置の取りつけのばらつきやメカニカルな経時変化に応じた補正をしないと、色ずれや色ムラが発生し、品質の良い多色画像を得ることができない。
【0003】
特許文献1によれば、中間転写ベルト上に各色のトナーパッチを形成し、そのトナーパッチの位置をセンサで検出し、その検出結果より各色のトナー像の中間転写ベルトへの書き出しタイミングを変更して色ずれを抑制することが提案されている。ここで、トナーパッチとは色ずれ検知用の未定着トナー像のことである。
【0004】
ところで、タンデム方式は、複数の感光体を常に現像ローラに当接させておくと、現像ローラとの摺擦により感光体の表層が削れて、感光体の寿命を低下させてしまう。特許文献2によれば、一つの駆動源で複数のカムを回転させ、上流の感光体から下流の感光体へと現像状態に順次切り替えるとともに、上流の感光体から下流の感光体へと非現像状態に順次切り替えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2655603号公報
【特許文献2】特開2006−323235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の発明のように上流の感光体から下流の感光体へと現像状態に順次切り替えを行うと、色ずれを大きくさせてしまうことがある。これは、中間転写ベルト上のトナーパッチの位置をセンサで検出するときのベルトの周面速度と、画像形成時のベルトの周面速度が異なっていることが原因である。このような色ずれや画像不良が発生しないようにするためには、感光ドラムと中間転写ベルトの周面速度差や、中間転写ベルトと二次転写ローラの周面速度差を良好な画像形成が行えるように制御する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、感光ドラムと中間転写ベルトの周面速度差や、中間転写ベルトと二次転写ローラの周面速度差を適切に制御し、色ずれや画像不良の発生しにくい画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1回転体と、第1回転体と媒体(記録媒体やトナー)を介して間接的に当接するか、または、媒体を介さずに直接的に当接して回転する第2回転体と、第1回転体を駆動する第1駆動モータと、第2回転体を駆動する第2駆動モータと、第1駆動モータを制御して第1回転体を一定の回転数で回転させる第1制御手段と、第2駆動モータを制御する第2制御手段とを有し、第1回転体と第2回転体の静摩擦係数をuとし、第1回転体と第2回転体の当接圧をFとし、第2回転体の負荷トルクをTLとし、第2駆動モータの駆動トルクをTmとすると、第2制御手段は、TL≧Tmの場合は、TL−Tm≦uFが成立し、TL<Tmの場合は、Tm−TL<uFが成立するように第2駆動モータを制御することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、TL≧Tmの場合はTL−Tm≦uFが成立し、TL<Tmの場合はTm−TL<uFが成立するといった従動条件が満たされるように、第2制御手段が第2駆動モータを制御する。これにより、感光ドラムまたは中間転写ベルトなどの第1回転体と、中間転写ベルトや二次転写ローラなどの第2回転体の周面速度差が適切な値に維持されるため、色ずれや画像不良が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1及び2、3、4における画像形成装置を示す図
【図2】色ずれ及び画像不良の発生メカニズムを説明する図
【図3】実施例1及び2、3、4における画像形成装置の制御構成のブロック図
【図4】実施例1における駆動制御部のブロック図
【図5】実施例1における二次転写モータの駆動制御部のブロック図
【図6】実施例1における中間転写ベルトと二次転写ローラのトルクと摩擦力の説明図
【図7】実施例1におけるPWM値と二次転写ローラの回転数の関係を示した図
【図8】実施例2、3、4における二次転写ローラの回転検出を含んだ駆動制御部のブロック図
【図9】実施例2における中間転写ベルトと二次転写ローラの当接離間の説明図
【図10】実施例2における制御を説明するフローチャート
【図11】実施例3における制御を説明するフローチャート
【図12】実施例3における制御の具体例となる説明図
【図13】実施例4における制御を説明するフローチャート
【図14】実施例4における制御の具体例となる説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[実施例1]
第1実施例に係る画像形成装置について説明する。ここでは、画像形成装置の一例として、電子写真方式を採用した画像形成装置のうち中間転写ベルトを用いた4ドラム型の多色画像形成装置を図1に例示している。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応したプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKを備えている。プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、画像形成装置1の本体(以下、装置本体2という)に対して着脱自在である。なお、以下の説明において、サフィックスであるYMCKは4色に共通した事項を説明するときは省略される。装置本体2には、中間転写体(回転体)である中間転写ベルト51を有する中間転写ベルトユニット5や定着器7が設けられている。装置本体2は、中間転写ベルト51の周面にトナー像を形成する像形成手段として機能する。
【0014】
各プロセスカートリッジPにおいて、一次帯電器62は、感光ドラム61の外周表面上に配置され、感光ドラム61の表面を一様に帯電させる。現像器63は、レーザ露光器21からの露光により形成された感光ドラム61の表面上の各色の静電潜像を、対応する色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを用いて現像する。現像ローラ64は、現像器63ごと感光ドラム61から離間するとともに回転を停止することで、現像剤の劣化を防止する。このように現像ローラ64は現像器63ごと感光ドラム61に対して当接又は離間する。感光体クリーナ65は、トナー像の一次転写後に感光ドラム61の表面に付着している残りトナーを除去する。
【0015】
一次転写ローラ52は、感光ドラム61とともに中間転写ベルト51を挟持し、感光ドラム61とともに一次転写部を形成している。中間転写ベルト51は第1回転体の一例である。中間転写ベルトユニット5は、中間転写ベルト51、中間転写ベルト51を張架する駆動ローラ53、テンションローラ54、二次転写対向ローラ55を備えている。中間転写ベルトモータ200(図4)により駆動ローラ53が回転することで、中間転写ベルト51が回転する。テンションローラ54は、中間転写ベルト51の長さに応じて図1の水平方向に移動可能に構成されている。これにより、中間転写ベルト51のテンションが略一定に維持される。
【0016】
駆動ローラ53の近傍には、レジ検知センサ56とマークセンサ57が駆動ローラ53の長手方向の両端に設置されている。レジ検知センサ56は、中間転写ベルト51上のトナーパッチを検出する。マークセンサ57は、中間転写ベルト51の周面上に設けられた位置表示マークを検出する。なお、長手方向とは、ローラの軸線方向であり、中間転写ベルト51の搬送方向と直交する方向である。テンションローラ54の近傍には、中間転写ベルト51上の残トナーを回収し、回収した残トナーを潤滑剤として供給する機能を備えたベルトクリーナ58が設置されている。
【0017】
二次転写ローラ81は、中間転写ベルト51と記録媒体Qを介して間接的に当接するか、または、記録媒体Qを介さずに直接的に当接して回転する第2回転体の一例である。二次転写ローラ81は、二次転写対向ローラ55とともに中間転写ベルト51を挟んで配置されており、二次転写対向ローラ55とともに二次転写部を形成している。二次転写ローラ81は、転写搬送ユニット8によって保持されている。
【0018】
装置本体2の下部には、二次転写部に記録媒体Qを給紙および搬送する給送部3が配置されている。給送部3は、複数枚の記録媒体Qを収納したカセット31、記録媒体Qを搬送路へ給送する給送ローラ32、重送防止のリタードローラ対33、搬送ローラ対34、35、レジストローラ対36等を備えている。定着器7の下流側搬送路には記録媒体Qを排出するための排出ローラ対37、38、39が設けられている。
【0019】
図2(A)は全ての色において画像形成が行われていない状態を示す。図2(B)はイエローの画像形成が行われている状態を示す。図2(C)は全ての色において画像形成が行われている状態を示す。図2(D)はイエローの画像形成が終了した状態を示している。図2(A)ないし図2(D)を用いて、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速い場合の画像形成動作について説明する。
【0020】
図2(A)が示すように、全ての現像ローラ64が感光ドラム61と離間している状態で、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速い場合、中間転写ベルト51のY部は張った状態、つまり中間転写ベルト51のY部が伸びた状態となる。これは中間転写ベルト51と感光ドラム61はニップ部に圧力をかける。これは感光ドラム61から中間転写ベルト51にトナーを一次転写するためである。中間転写ベルト51のY部では、イエローの感光ドラム61Yが中間転写ベルト51を引っ張ることになり、中間転写ベルト51が伸びた状態となる。
【0021】
この状態で画像形成が開始される。図2(B)のように、イエローの現像ローラ64Yがイエローの感光ドラム61Yに当接し、かぶりトナーがイエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51のニップ形成する部分に到達する。トナーによってイエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51の動摩擦力が弱まると、イエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51の間でスリップが発生する。これにより中間転写ベルト51のY部は伸びた状態から縮もうとする。次に、マゼンタの感光ドラム61Mと中間転写ベルト51の間で、同様の現象が発生し、中間転写ベルト51のY部とM部が伸びた状態となる。シアンの感光ドラム61C、ブラックの感光ドラム61Kと中間転写ベルト51との間でも同様の現象が発生する。つまり全ての感光ドラム61に現像ローラ64が当接されるまでの間に、中間転写ベルト51の伸縮が数回発生する。
【0022】
図2(C)のように、全ての感光ドラム61に現像ローラ64が当接された状態においては、全ての中間転写ベルト51と感光ドラム61ニップを形成する部分にかぶりトナー存在する。かぶりトナーによって、全ての中間転写ベルト51と感光ドラム61は常にスリップしている。スリップしているため、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速くても、中間転写ベルト51の伸縮は発生しない。
【0023】
画像形成終了の際には、図2(D)が示すように、イエローの現像ローラ64Yがイエローの感光ドラム61Yと離間し、かぶりトナーが存在しない部分がイエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51のニップを形成する部分に到達する。これにより、イエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51の動摩擦力が強まる。さらに、イエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51がタックし始め、中間転写ベルト51のY部は張った状態となる。なお、M部、C部、K部には緩みが生じる。以後、マゼンタの感光ドラム61M、シアンの感光ドラム61C、ブラックの感光ドラム61Kと中間転写ベルト51との間でも同様の現象が発生する。つまり全ての感光ドラム61に現像ローラ64が離間されるまでの間に、中間転写ベルト51の伸縮が数回発生する。中間転写ベルト51の伸縮は、各色のトナー像の中間転写ベルト51上への転写位置に影響し、色ずれとなって多色画像に表れてくる。
【0024】
このように画像形成においては、順次、現像ローラ64が感光ドラム61に当接していく第一の状態、全ての現像ローラ64が感光ドラム61当接している第二の状態、順次、現像ローラ64が感光ドラム61と離間していく第三の状態が存在する。色ずれの補正は、中間転写ベルト51上に各色のトナーパッチを形成し、そのトナーパッチの位置をレジ検知センサ56で検出し、その検出結果より各色トナー像の中間転写ベルト51への書き出しタイミングを変更する処理である。一般に、この色ずれ補正は、全ての現像ローラ64が感光ドラム61当接している第二の状態で実施される。そのため、順次、現像ローラ64が感光ドラム61に当接していく第一の状態や、順次、現像ローラ64が感光ドラム61と離間していく第三の状態で発生する中間転写ベルト51の伸縮による色ずれを補正することはできない。さらにその伸縮量は中間転写ベルト51と感光ドラム61との周面速度差、摩擦係数、環境によって変化する。伸縮量の変化は、色ずれ量の変化をもたらす。
【0025】
一方、これとは逆に、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より遅い場合は、逆のメカニズムで色ずれが発生する。
【0026】
二次転写ローラ81の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速い場合について説明する。図2(A)のように、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップを形成する部分にトナーがない場合、中間転写ベルト51のT部は張った状態、すなわち中間転写ベルト51のT部が伸びた状態となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップを形成する部分に、中間転写ベルト51から記録媒体Qにトナーを二次転写するために圧力をかけているためである。よって中間転写ベルト51のT部では、二次転写ローラ81が中間転写ベルト51を引っ張るため、中間転写ベルト51が伸びた状態となる。
【0027】
この状態で画像形成が開始され、図2(C)のように、中間転写ベルト51上のトナー像が記録媒体Qとともに、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップを形成する部分に到達する。二次転写ローラ81と記録媒体Qは動摩擦力が強いため、記録媒体Qは二次転写ローラ81の周面速度で搬送される。しかし、記録媒体Qと中間転写ベルト51のニップ部にはトナー像があるため、記録媒体Qと中間転写ベルト51の動摩擦力が弱まり、記録媒体Qと中間転写ベルト51の間でスリップが発生する。その結果、中間転写ベルト51のT部は縮もうとする。このスリップにより記録媒体Q上のトナー像がこすられ画像不良が発生する。
【0028】
この現象においても、中間転写ベルト51と感光ドラム61との関係と同様に、二次転写ローラ81の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より遅い場合は、逆のメカニズムで画像不良が発生する。
【0029】
このような色ずれや画像不良が発生しないようにするためには、感光ドラム61、中間転写ベルト51、二次転写ローラ81の周面速度差を、良好な画像形成が行えるように制御する必要がある。
【0030】
図3を用いて、画像形成装置の制御構成について説明する。装置本体2は、装置本体2に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部ホスト機器10からジョブを受信する。また、装置本体2が備える原稿読み取り部18からのRGB画像信号を受信する。
【0031】
画像処理制御部11は、入力されたRGB画像信号をCMYK信号に変換し、階調補正や濃度補正を加えて露光信号を生成し、レーザ露光器21に供給する。画像形成制御部12は、以下に説明する画像形成動作を統括して制御する。また、画像形成制御部12は、レジ検知センサ56やマークセンサ57を用いて画像形成動作を補正する際にも装置本体2を制御する。
【0032】
画像形成制御部12において、CPU121は、画像形成制御部12による各種の処理を実行する。ROM122は、CPU121により実行されるプログラムや制御データなどを記憶している。RAM123はCPU121による制御処理時に各種データを記憶する。
【0033】
露光制御部13は、CPU121からの指示にしたがってレーザ露光器21を駆動したり、回転多面鏡を回転させるスキャナモータを駆動したり、レーザ光量の補正等を行ったりしている。高圧制御部14は、CPU121からの指示にしたがって感光ドラム61への帯電バイアスや、現像バイアス、中間転写ベルト51への一次転写バイアス、記録媒体Qへの二次転写バイアス、ベルトクリーナ用のベルトクリーニングバイアスを生成する。駆動制御部15は、CPU121からの指示にしたがって感光ドラム61や現像ローラ64、中間転写ベルト51の作像系モータの駆動、及び記録媒体Qを搬送する搬送モータの駆動を行う。定着制御部16はCPU121からの指示にしたがって定着器7の温度調整を行う。センサ制御部17はレジ検知センサ56を用いて中間転写ベルト51上のトナーパッチを検出したり、マークセンサ57を用いて中間転写ベルト51上に設けられた位置表示マークを検出したりする。
【0034】
当接離間部19は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51を当接および離間させる当接離間手段として機能する。当接離間部19は、CPU121からの指示にしたがって、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51を当接させたり離間させたりする。当接離間部19は、たとえば、二次転写離間モータと偏心カムを備え、二次転写離間モータを所定の方向に回転させることで、二次転写ローラ81を上下動させる。これにより、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接したり離間したりする。
【0035】
図4は駆動制御部15の詳細を示した図である。駆動制御部15の制御対象は数多くあるものの、ここでは本発明に関係する中間転写ベルトモータ200と二次転写モータ300の駆動制御に関わる部分について説明する。なお、本実施例では、同期式モータであるDCブラシレスモータを中間転写ベルトモータ200に採用している。また、非同期式モータであるDCブラシモータを二次転写モータ300に採用している。
【0036】
中間転写ベルトモータ200の駆動制御について説明する。中間転写ベルトモータ200は、中間転写ベルト51を駆動する第1駆動モータの一例である。CPU121内の回転数決定部124は、印刷設定に対応した回転数を決定し、回転数設定部152に設定する。たとえば、記録媒体の種類に応じてプロセススピードが変化するため、予め記録媒体の種類と回転数との関係を示す関数、テーブルまたはプログラムをROM122が記憶している。回転数決定部124は、印刷設定に含まれている記録媒体の種類に対応した回転数をテーブル等から決定する。
【0037】
中間転写ベルトモータ駆動制御部154は、中間転写ベルトモータ200を制御して中間転写ベルト51を一定の回転数で回転させる第1制御手段の一例である。中間転写ベルトモータ駆動制御部154は、回転数設定部152に設定された所定の回転数と、中間転写ベルトモータ200からの速度信号であるFGOUTを元に中間転写ベルトモータ200を制御する。具体的に、中間転写ベルトモータ駆動制御部154は、加速信号であるACC信号と減速信号であるDEC信号を用いて、中間転写ベルトモータ200の回転速度(回転数)が設定速度となるように制御する。
【0038】
二次転写モータ300について説明する。二次転写モータ300は、二次転写ローラ81を駆動する第2駆動モータの一例である。CPU121内のPWM値決定部125は、印刷設定に対応したPWM値を決定し、PWM値設定部153に設定する。印刷設定とPWM値との関係はROM122が記憶している。よって、PWM値決定部125はこれに基づいて印刷設定に対応したPWM値を決定する。
【0039】
二次転写モータ駆動制御部155は、二次転写モータ300を制御する第2制御手段の一例である。二次転写モータ駆動制御部155は、PWM値設定部153に設定されたPWM値に対応したPWM信号を出力する。二次転写モータ300の駆動については、図5を用いてさらに詳しく説明する。PWM値設定部153から出力されたPWM信号はトランジスタQ1、Q2によって+24Vに増幅される。増幅されたPWM信号が電界効果トランジスタ(FET) Q3をON/OFFすることで、二次転写モータ300に供給する電力量を制御する。すなわちPWM値を大きくする(Q3のON Dutyを大きくする)と二次転写モータ300へ供給される電力量は大きくなり、PWM値を小さくすると二次転写モータ300へ供給される電力量は小さくなる。なお、PWM信号の周波数が低すぎると二次転写モータ300の回転ムラやトルクムラが発生し、反対に周波数が高すぎるとノイズが大きくなる。そこで一般的に、PWM信号の周波数は数十KHz程度に設定されることが多い。
【0040】
図6は二次転写部における負荷トルク、駆動トルクおよび摩擦力の関係を示した図である。TL1は中間転写ベルト51の負荷トルクである。Tm1は中間転写ベルトモータ200が中間転写ベルト51に与える駆動トルクである。TL2は二次転写ローラ81の負荷トルクである。Tm2は二次転写モータ300が二次転写ローラ81に与える駆動トルクである。ここで中間転写ベルト51に与えられるトルクTm1は中間転写ベルト51の負荷トルクTL1に対して十分に大きく、かつ、Tm1>TL1+uFを満たすものとする。uは記録媒体Qとトナーが二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の間に存在するときの、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の静摩擦係数である。静摩擦係数uは、たとえば、0.15程度の値である。Fは二次転写対向ローラ55と二次転写ローラ81の当接圧力である。すなわち二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦力LはuFで表すことができる。二次転写ローラ81は中間転写ベルト51からL=uFのトルクを受けていることを意味する。
【0041】
図7は中間転写ベルト51が一定速度で駆動されている状態で、PWM値設定部153に設定されるPWM値を変化させたときの二次転写ローラ81の回転数を表した図である。
【0042】
a区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2よりも駆動トルクTm2が極めて小さく、二次転写ローラ81が全く回転していない。このときの二次転写ローラ81の駆動トルクTm2、中間転写ベルト51の負荷トルクTL2および摩擦力uFの関係は、
TL2−Tm2≫uF
となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51はスリップした状態であることを示している。
【0043】
b区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2よりも駆動トルクTm2が小さく、二次転写ローラ81は回転しているものの、目標回転数に達してしていない。このときの二次転写ローラ81の駆動トルクTm2、中間転写ベルト51の負荷トルクTL1および摩擦力uFの関係は、
TL2−Tm2>uF
となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51がスリップした状態にあることを示している。
【0044】
c区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2に対して与えられる駆動トルクTm2が適度な状態であり、二次転写ローラ81は目標回転数で回転している。このときの二次転写ローラ81の駆動トルクTm2、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2および摩擦力uFの関係は、
TL2≧Tm2の場合、TL2−Tm2≦uF
TL2<Tm2の場合、Tm2−TL2<uF
となる。これは中間転写ベルト51に二次転写ローラ81が従動している状態であることを示している。
【0045】
d区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2よりも駆動トルクTm2が大きく、二次転写ローラ81は回転しているものの、二次転写ローラ81の回転数が目標回転数を上回っている。このときの駆動トルクTm2、中間転写ベルト51の負荷トルクTL1および摩擦力uFの関係は、
Tm2−TL1>uF
となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51はスリップした状態であることを示している。
【0046】
よって、TL2≧Tm2の場合はTL2−Tm2≦uFが成り立ち、TL2<Tm2の場合はTm2−TL2<uFが成り立つように、二次転写ローラ81に与える駆動トルクTm2を設定することで、二次転写ローラ81が中間転写ベルト51に従動する。これを従動条件と呼ぶ。駆動トルクTm2は、PWM値を設定することで、適切な値に設定される。これは、PWM値が二次転写モータ300のトルクを決定するパラメータの1つだからである。このように、従動条件が満たされるように二次転写モータ300を駆動することで、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差を適切にできるため、色ずれや画像不良を軽減できる。
【0047】
ここでは、一例として、二次転写モータ300の制御方式としてPWM値による制御方式について説明したが、二次転写モータ300に印加する電圧を制御しても同様の効果が得られる。さらに、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の関係について説明したが、この関係は、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係についてもあてはまる。
【0048】
[実施例2]
実施例2では、TL2≧Tm2の場合はTL2−Tm2≦uF、TL2<Tm2の場合はTm2−TL2<uFの関係を満たす、二次転写ローラ81に与える駆動トルクTm2の具体的な設定方法、すなわちPWM値の設定方法について説明する。とりわけ、実施例2では、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81を離間させた状態で、CPU121が二次転写モータ300を駆動する。CPU121は、二次転写モータ300の回転数が所定値となったときに二次転写モータ300に印加されていた入力電圧またはPWM値をRAM123に保持しておいて、それを印刷時に読み出して使用する。
【0049】
図8は実施例2における駆動制御部15の詳細を示した図である。多くの部分は実施例1における駆動制御部15と同じであるため説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。回転数検出部151は、二次転写ローラ81の回転数を検出する回転数検出手段として機能する。回転数検出部151は、たとえば、フォトセンサとスリットが刻まれたコードホイールとから構成可能である。回転数検出部151は二次転写ローラ81の軸上に設置され、二次転写ローラ81の回転数に応じた速度パルスを出力する。二次転写ローラ81の回転数が高いと速度パルスの周波数が高くなり、二次転写ローラ81の回転数が低いと速度パルスの周波数が低くなる。この速度パルスはCPU121内のPWM値決定部125に入力される。なお、ここでは回転数検出部151の設置箇所を二次転写ローラ81の軸上としているが、二次転写モータ300の軸上や、二次転写ローラ81へ駆動伝達するギアの軸上でもよい。いずれの位置でも、二次転写ローラ81の回転数に比例したデータを測定できるからである。回転数検出部151は、速度パルスをPWM値決定部125に出力する。
【0050】
図9(A)および図9(B)を用いて二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の当接離間について説明を行う。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の当接離間は、二次転写ローラ81を上下動させることによって行われる。二次転写ローラ81を上下動は、たとえば、二次転写離間モータと偏心カムによって実現できる。
【0051】
図9(A)は二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接した状態であり、印刷時に用いられる状態である。図9(B)は二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が離間した状態を示している。離間状態は、画像形成装置1の電源をOFFにしているときや印刷待機時に用いられる状態である。これにより、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が駆動されていないときに、中間転写ベルト51や二次転写ローラ81の変形を軽減できる。
【0052】
図10を用いて、従動条件を満たすPWM値の設定方法について説明する。ここでは、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81は離間状態にあるものとする。なお、図10に示したフローチャートは、CPU121が実行する処理を示している。
【0053】
S101で、CPU121のPWM値決定部125は、PWM値設定部153に初期値を設定する。ここでは初期値として設計称呼値を用いるものとする。
【0054】
S102で、PWM値決定部125は、回転数検出部151が出力する速度パルスをカウントし、二次転写ローラ81の回転数Nを計測する。
【0055】
S103で、PWM値決定部125は、計測した回転数Nと設計称呼値の回転数Ntとを比較し、両者が等しいかどうかを判定する。N=Ntの場合は、S104に進む。
【0056】
S104で、PWM値決定部125は、そのときのPWM値をRAM123に格納し、本制御を終了する。一方、S103で判定結果がN≠Ntの場合は、S105に進む。
【0057】
S105で、PWM値決定部125は、回転数Nが設計称呼値Ntより小さいかどうかを判定する。N<Ntの場合、S106に進む。
【0058】
S106で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけインクリメントし、再度、S102からの処理を繰り返す。一方、S105での判定結果がN>Ntの場合は、S107に進む。
【0059】
S107で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけディクリメントし、再度、S102からの処理を繰り返す。
【0060】
S101におけるPWM値の初期値を設計称呼値としているが、前回のPWM値等であってもよい。またS103で二次転写ローラ81の回転数Nを設計称呼値の回転数Ntと比較する際に、Ntに所定の範囲を持たせたり、画像が最良となるように所定のオフセットを持たせたりしてもよい。前者の場合、Nt−Δ≦N≦Nt+Δであれば、S104に進む。後者の場合、Nt−Δ=Nであれば、S104に進む。
【0061】
ここで二次転写モータ300に投入される電力をP、二次転写モータの効率をη、とすると、P×η=Nt×Tm2の関係が成り立つ。さらに負荷トルクTL2の二次転写ローラ81は所定の回転数で駆動されているため、TL2=Tm2が成立する。
【0062】
次に二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接状態にあるときのTL2及びTm2の関係について説明する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差が無い場合、二次転写モータ300は、二次転写ローラ81の負荷のみを駆動すればよい。そのため、上述のTL2=Tm2が成立し、TL2−Tm2≦uFを確実に満たすことができる。
【0063】
二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差が有る場合について説明する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差は、一般に、駆動されるローラの径のバラつきや膨張率の違いによって発生する。周面速度差は、通常、±0.5%程度である。ここで二次転写ローラ81の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度よりも0.5%遅いものとする。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との間に周面速度差が無いときの二次転写ローラ81の回転数をNrとする。図10に示した設計称呼値の回転数Ntは、Nt=Nr×0.995と表すことができる。これをP×η=Nt×Tm2に代入すると、P×η=(0.995×Nr)×Tm2となる。この状態で二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接すると、二次転写ローラ81は回転数Nrで回転しようとする。図10に示した二次転写モータ駆動PWM値決定制御で決定されたPWM値で二次転写モータ300を駆動した場合、P×η=Nr×(0.995×Tm2)となる。これは、回転数Nrが変わると効率ηの変化するものの、回転数Nrの変化が極めて小さく、効率ηの変化も微小であるとすると、二次転写ローラ81に与えられるトルクTmが小さくなることを意味する。この式を従動条件の式に代入すると、
TL2−(0.995×Tm2)≦uF
TL2=Tm2なので、
TL2−(0.995×TL2)≦uF
すなわち、
0.005×TL2≦uF
の関係を満たせばよいことになる。そしてたとえば、ポリイミド製の中間転写ベルト51と二次転写ローラ81との摩擦係数uは、印刷時の状態である記録媒体Qとトナーが介在したときには、0.15程度となる。また二次転写対向ローラ55と二次転写ローラ81の当接圧力Fは0.4Nm程度である。さらに二次転写ローラ81の負荷トルクTL2は、クリーニング部材を設けた場合でも0.15Nm程度であるため、従動条件が満たされる。
【0064】
以上説明したように、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が離間した状態で二次転写モータ300を駆動し、二次転写ローラ81の回転数Nが設計称呼値NtとなるようにPWM値を変化させることで、従動条件を満たすPWM値が得られる。実施例2においても、二次転写モータ300の制御方式を印加電圧制御方式に置換してもよい。実施例1と同様に実施例2は、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係にも適用可能である。
【0065】
[実施例3]
実施例3は、実施例2とは異なり、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との当接点(ニップ部)に潤滑剤としてのトナーを供給し、二次転写ローラ81の速度変化を検出することで、従動条件を満たす駆動トルクTm2(PWM値)の設定方法について説明する。このように、実施例3では、トナー像がニップ部を通過する際の二次転写モータ300の回転数を回転数検出部151が検出する。さらに、二次転写モータ300の回転数が所定値となったときに二次転写モータ300に印加されていた入力電圧またはPWM値をCPU121がRAM123に保持しておいて印刷時に使用することを特徴とする。
【0066】
基本的な画像形成装置1の構成及び二次転写ローラ81の回転数検出部151の構成は、実施例1及び実施例2と同じであるため説明を省略する。よって、実施例3では、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51とのニップ部へのトナー供給について説明する。
【0067】
感光ドラム61へのトナー像の形成、中間転写ベルト51への一次転写については、実施例1にて説明した通常の画像形成方法と同じであるため説明を省略する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51とのニップ部にトナー像が無い場合は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦力uが高くなる。よって、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51に周面速度差が有ると、二次転写ローラ81の負荷が中間転写ベルト51に大きく作用する。たとえば、ブラックのプロセスカートリッジPKからトナー供給が行われたとする。ブラックトナーは、中間転写ベルト51上を搬送され、二次転写ローラ81とのニップ部に到達する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51とのニップ部にトナー像が有る場合は、トナー像が潤滑剤となって、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦力uが低下する。二次転写ローラ81に与えられる駆動トルクTm2が負荷トルクTL2と異なると、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81との間にスリップが発生する。スリップは二次転写ローラ81の速度変動を生じさせる。よって、ニップ部にトナー像が無い状態から有る状態へ移行する際に、二次転写ローラ81の速度変動が所定値以下となるように、PWM値決定部125は、二次転写ローラ81に与える駆動トルクTm2、すなわちPWM値をPWM値設定部153に設定すればよい。
【0068】
なお、ブラックのトナー像は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部において、二次転写ローラ81に与えられる駆動トルクTmが負荷トルクTL2と異なる場合、スリップが発生するほどの十分な大きさである必要がある。
【0069】
図11及び図12を用いて具体的に、TL2≧Tm2の場合は、TL2−Tm2≦uF、TL2<Tm2の場合は、Tm2−TL2<uFの関係を満たす、PWM値の設定方法について説明する。図11は二次転写モータ300を駆動するPWM値を決定するための制御フローである。
【0070】
S201で、PWM値決定部125は、PWM値設定部153に初期値を設定する。ここでは初期値として設計称呼値を用いるものとする。
【0071】
S202で、PWM値決定部125は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部にトナーが無いときの二次転写ローラ81の回転数Nを所定区間にわたって計測し、その平均値Naを算出する。
【0072】
S203で、PWM値決定部125は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部にトナー像が有るときの二次転写ローラ81の回転数Nを所定区間にわたって計測し、その平均値Nbを算出する。CPU121は、回転数Nを計測するのに先立って、画像形成装置1を制御してトナー像を中間転写ベルト51上に形成させる。
【0073】
S204で、PWM値決定部125は、トナー像がないときの回転数の平均値Naと、トナー像が有るときの回転数の平均値Nbとを比較し、両者が等しいかどうかを判定する。Na=Nbの場合、S205に進む。
【0074】
S205で、PWM値決定部125は、そのときのPWM値をRAM123に格納し、本制御を終了する。一方、S204の判定結果がNa≠Nbの場合は、S206に進む。
【0075】
S206で、PWM値決定部125は、トナー像が無いときの回転数の平均値Naが、トナー像が有るときの回転数の平均値Nbを超えているかどうかを判定する。Na>Nbの場合は、S207に進む。
【0076】
S207で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけインクリメントし、再度、S202から処理を繰り返す。一方、S206の判定結果がNa<Nbの場合は、S208に進む。
【0077】
S208で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけディクリメントし、再度、S202から処理を繰り返す。
【0078】
なお、S201におけるPWM値の初期値を設計称呼値としているが、前回のPWM値等であってもよい。NaまたはNbに所定の範囲を持たせたり、画像が最良となるように所定のオフセットを持たせたりしてもよい。前者の場合、Na−Δ≦Nb≦Na+Δであれば、S205に進む。後者の場合、Na−Δ=Nbであれば、S205に進む。
【0079】
図12は図11の制御フローに基づき制御された場合の二次転写ローラ81の回転数を示している。図12を用いてさらに具体的に説明する。図12によれば、回転数の平均値Na(A0)は、PWM値=A0hのときの回転数の平均値Naである。回転数の平均値Nb(A0)は、PWM値=A0hのときの回転数の平均値Nbである。A0hを所定値だけインクリメントしたときのPWM値はA1hである。PWM値=A1hの場合、回転数の平均値はNa(A1)と、Nb(A1)である。図12によれば、NaとNbとの大小関係は、Na(A0)>Nb(A0)であり、Na(A1)>Nb(A1)である。よって、PWM値決定部125は、再度PWM値をインクリメントして、PWM値=A2hとする。PWM値=A2hの場合、二次転写ローラ81の回転数の平均値は、Na(A2)、Nb(A2)である。図12によれば、Na(A2)=Nb(A2)が成立しているため、PWM値決定部125は、PWM値=A2hをRAM123に格納し、通常の印刷時に使用するPWM値とする。なお、本実施例では、各PWM値において、ニップ部にトナー像が無いときの二次転写ローラ81の回転数の平均値Naと、トナー像が有るときの二次転写ローラ81の回転数の平均値Nbを比較している。しかし、トナー像が無いときの二次転写ローラ81の回転数の平均値Naをあらかじめ決められた固定値としてもよい。またプロセスカートリッジからのトナー像の供給は、ブラックのプロセスカートリッジPKに限られるものではない。たとえば、CPU121は、高圧制御部14を制御してベルトクリーナ58に逆バイアスを印加することで中間転写ベルト51へ廃トナーを吐き出してもよい。この廃トナーもブラックトナーと同様に潤滑剤として機能する。
【0080】
ここで、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との間に、記録媒体Q及びトナー像が無いときの摩擦係数をu1とする。記録媒体Q及びトナーが有るときの摩擦係数をu2とする。トナーのみが有るときの摩擦係数をu3とする。この場合、u1>u2>u3の関係がある。Na=Nbが成立するのは、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との間の摩擦係数がu3のときである。これは、二次転写ローラ81が中間転写ベルト51に従動していることを示している。すなわちTL2−Tm2≦u3Fもしくは、Tm2−TL2<u3Fが成立している。印刷状態で記録媒体Qとトナーが介在したときの、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦係数はu2である。さらにu2>u3の関係があることから、印刷時において二次転写ローラ81が中間転写ベルト51に従動する条件は、TL2−Tm2≦u2F、または、Tm2−TL2<u2Fである。
【0081】
以上説明したように、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部にトナー像が無いときの二次転写ローラ81の回転数と、トナー像が有るときの二次転写ローラ81の回転数との差をなくすことで、従動条件を満たすPWM値が決定される。ここで求められた二次転写モータ300のPWM値は、CPU121が定期的に更新してもよいし、不揮発メモリ等に記憶させておくことも可能である。二次転写モータ300の制御方式は、印加電圧制御方式であってもよい。また。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の関係について説明したが、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係についても、実施例3は適用可能である。
【0082】
[実施例4]
実施例4では、印刷中に二次転写ローラ81の負荷トルクTL2に変動が生じた場合の、二次転写モータ300を駆動するPWM値を補正する方法と、補正が有効でなかった場合の異常処理について説明する。負荷トルクTL2の変動は二次転写ローラ81の回転数Nに表れる。そこで、実施例4では、二次転写ローラ81の回転数Nを2つの閾値範囲と比較することで、補正が必要か否かと異常が発生しているか否かをCPU121が判定する。たとえば、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が予め定められた第1の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第1判定手段として機能する。さらに、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が第1の閾値範囲から外れると、二次転写モータ300の回転数が第1の閾値範囲に収まるまで二次転写モータ300に印加される入力電圧またはPWM値を補正する補正手段として機能する。また、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が予め定められた第2の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第2判定手段として機能する。さらに、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が第2の閾値範囲から外れると、報知手段を使用して異常の発生を報知する。
【0083】
図13はCPU121が実行する二次転写モータ駆動PWM値補正のフローチャートである。図14は図13の二次転写モータ駆動PWM値補正を詳しく説明するための具体例であって、二次転写ローラ81の回転数Nと各補正や異常検知の閾値を示している。図13、図14において、基準回転数Nfは二次転写ローラ81の称呼値となる回転数である。補正閾値ΔNcは二次転写ローラ81を駆動するPWM値の補正を実行するか否かを判定するための閾値である。補正閾値ΔNcは基準回転数Nfを中心として正負の値を持つ。Nf−ΔNcをPWM補正下限閾値と呼び、Nf+ΔNcをPWM補正上限閾値と呼ぶことにする。このように、第1の閾値範囲の中心値である基準回転数Nfは、CPU121が、二次転写モータ300の回転数が所定値となったときに二次転写モータ300に印加されていた入力電圧またはPWM値である。
【0084】
異常閾値ΔNdは二次転写ローラ81を駆動するPWM値の補正異常を検知するための閾値である。異常閾値ΔNdも基準回転数Nfを中心として、正負の値を持つ。Nf−ΔNdを回転数異常下限閾値と呼び、Nf+ΔNdを回転数異常上限閾値と呼ぶことにする。補正閾値ΔNcと異常閾値ΔNdには、ΔNc<ΔNdの関係が有る。異常閾値ΔNdは、PWM値の補正で対処できないほど異常な回転数Nを検出する閾値だからである。このように、第2の閾値範囲の中心値も基準回転数Nfである。
【0085】
次に図13に基づき二次転写モータ駆動PWM値補正について説明する。印刷が開始され、中間転写ベルトモータ200及び二次転写モータ300が一定の回転速度で安定した後に、二次転写モータ駆動PWM値補正が開始される。
【0086】
S301で、CPU121(PWM値決定部125)は、回転数検出部151を用いて検出した二次転写ローラ81の回転数Nが、PWM補正下限閾値(Nf−ΔNc)を超えているかどうかを判定する。N≦Nf−ΔNcが成立している場合はS302に進む。
【0087】
S302で、CPU121は、PWM値を所定値だけインクリメントし、S303へ移行する。一方、S301でN>Nf−ΔNcが成立している場合は、S302をスキップしてS303へ進む。具体的には図14に示したA区間でCPU121はPWM値をインクリメントし、それ以外の区間ではPWM値をそのままに維持する。
【0088】
S303で、CPU121は、二次転写ローラ81の回転数NがPWM補正上限閾値(Nf+ΔNc)を下回っているかどうかを判定する。N≧Nf+ΔNcが成立している場合、S304に進む。
【0089】
S304で、CPU121は、PWM値を所定値だけディクリメントし、S305へ移行する。一方、N<Nf+ΔNcが成立している場合は、S304をスキップして、S305へ進む。具体的には図14に示したC区間で、CPU121は、PWM値をディクリメントし、それ以外の区間では、PWM値をそのままに保持する。
【0090】
S305で、CPU121は、二次転写ローラ81の回転数Nが回転数異常下限閾値Nf−ΔNdを超えているかどうかを判定する。N>Nf−ΔNdが成立している場合はS306へ進む。N≦Nf−ΔNdが成立している場合は、S307に進む。図14に示したB区間で、CPU121は、S307で異常処理を実施し、それ以外の区間ではS306へ移行する。
【0091】
S306で、CPU121は、二次転写ローラ81の回転数Nが、回転異常上限閾値Nf+ΔNd未満であるかどうかを判定する。N<Nf+ΔNdが成立している場合はS308へ進む。N≧Nf+ΔNdが成立している場合は、S307に進む。
【0092】
S307で、CPU121は、異常処理を実行する。ここで異常処理とは、たとえば、画像形成装置1の上位装置(ホストコンピュータなど)への異常報告や、画像形成装置1の停止等のことであり、異常が発生したことを表示装置などでユーザに報知することも含まれる。たとえば、図14に示したD区間で、CPU121は、異常処理を実行し、他の区間ではそのままS308へ移行する。
【0093】
S308で、CPU121は、所定の補正終了条件が満たされたかどうかを判定する。補正終了条件が満たされていなければ、CPU121は、S301から処理を再度実行する。補正終了条件が満たされていれば、補正処理を終了する。補正終了条件は、たとえば、印刷ジョブが終了したことや、異常処理が発生したことである。
【0094】
なお本実施例では、基準回転数Nfを称呼値となる回転数としたが、二次転写ローラ81が正常に回転しているときの平均回転数を採用してもよい。さらに補正閾値ΔNcと異常閾値ΔNdを、上限の閾値と下限の閾値でそれぞれ共通の値としたが、上限と下限とでそれぞれ別の値であってもよい。
【0095】
以上説明したように、CPU121は、印刷中に二次転写ローラ81の負荷トルクTL2に変動が生じると二次転写ローラ81の回転数Nを基準回転数Nfに近づくように補正するため、負荷トルクTL2に変動が画像へ及ぼす影響を軽減できる。またCPU121は、表示装置を通じて操作者に画像形成の異常を報知するため、操作者は画像形成の異常を即座に把握できる。また、異常が発生したときはCPU121が露光制御部13、高圧制御部14、駆動制御部15および定着制御部16等に停止を指示するため、記録媒体Qやトナーの無駄な消費を抑制できる。
【0096】
実施例4では、二次転写モータ300をPWM値による制御方式で説明したものの、二次転写モータ300に印加する印加電圧を制御しても、同様の効果が得られる。さらに、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の関係について説明したが、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係についても、本発明を適用できる。異常報知手段として、表示装置について説明したが、異常を知らせる音響信号を出力する音響信号出力装置や異常を知らせる電子メールを送信する電子メール送信装置が代わりに採用されてもよい。いずれも操作者に異常の発生を報知できるからである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色画像形成装置における画像こすれや色ずれ等の画像不良防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タンデム方式は、複数の画像形成ステーションを用いてそれぞれ色の異なるトナー像を並行して作成することで、ロータリ方式よりも画像形成速度を向上させた方式である。一方、タンデム方式は、複数の感光体及び複数の光学装置を用いるため、感光体及び光学装置の取りつけのばらつきやメカニカルな経時変化に応じた補正をしないと、色ずれや色ムラが発生し、品質の良い多色画像を得ることができない。
【0003】
特許文献1によれば、中間転写ベルト上に各色のトナーパッチを形成し、そのトナーパッチの位置をセンサで検出し、その検出結果より各色のトナー像の中間転写ベルトへの書き出しタイミングを変更して色ずれを抑制することが提案されている。ここで、トナーパッチとは色ずれ検知用の未定着トナー像のことである。
【0004】
ところで、タンデム方式は、複数の感光体を常に現像ローラに当接させておくと、現像ローラとの摺擦により感光体の表層が削れて、感光体の寿命を低下させてしまう。特許文献2によれば、一つの駆動源で複数のカムを回転させ、上流の感光体から下流の感光体へと現像状態に順次切り替えるとともに、上流の感光体から下流の感光体へと非現像状態に順次切り替えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2655603号公報
【特許文献2】特開2006−323235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の発明のように上流の感光体から下流の感光体へと現像状態に順次切り替えを行うと、色ずれを大きくさせてしまうことがある。これは、中間転写ベルト上のトナーパッチの位置をセンサで検出するときのベルトの周面速度と、画像形成時のベルトの周面速度が異なっていることが原因である。このような色ずれや画像不良が発生しないようにするためには、感光ドラムと中間転写ベルトの周面速度差や、中間転写ベルトと二次転写ローラの周面速度差を良好な画像形成が行えるように制御する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、感光ドラムと中間転写ベルトの周面速度差や、中間転写ベルトと二次転写ローラの周面速度差を適切に制御し、色ずれや画像不良の発生しにくい画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1回転体と、第1回転体と媒体(記録媒体やトナー)を介して間接的に当接するか、または、媒体を介さずに直接的に当接して回転する第2回転体と、第1回転体を駆動する第1駆動モータと、第2回転体を駆動する第2駆動モータと、第1駆動モータを制御して第1回転体を一定の回転数で回転させる第1制御手段と、第2駆動モータを制御する第2制御手段とを有し、第1回転体と第2回転体の静摩擦係数をuとし、第1回転体と第2回転体の当接圧をFとし、第2回転体の負荷トルクをTLとし、第2駆動モータの駆動トルクをTmとすると、第2制御手段は、TL≧Tmの場合は、TL−Tm≦uFが成立し、TL<Tmの場合は、Tm−TL<uFが成立するように第2駆動モータを制御することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、TL≧Tmの場合はTL−Tm≦uFが成立し、TL<Tmの場合はTm−TL<uFが成立するといった従動条件が満たされるように、第2制御手段が第2駆動モータを制御する。これにより、感光ドラムまたは中間転写ベルトなどの第1回転体と、中間転写ベルトや二次転写ローラなどの第2回転体の周面速度差が適切な値に維持されるため、色ずれや画像不良が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1及び2、3、4における画像形成装置を示す図
【図2】色ずれ及び画像不良の発生メカニズムを説明する図
【図3】実施例1及び2、3、4における画像形成装置の制御構成のブロック図
【図4】実施例1における駆動制御部のブロック図
【図5】実施例1における二次転写モータの駆動制御部のブロック図
【図6】実施例1における中間転写ベルトと二次転写ローラのトルクと摩擦力の説明図
【図7】実施例1におけるPWM値と二次転写ローラの回転数の関係を示した図
【図8】実施例2、3、4における二次転写ローラの回転検出を含んだ駆動制御部のブロック図
【図9】実施例2における中間転写ベルトと二次転写ローラの当接離間の説明図
【図10】実施例2における制御を説明するフローチャート
【図11】実施例3における制御を説明するフローチャート
【図12】実施例3における制御の具体例となる説明図
【図13】実施例4における制御を説明するフローチャート
【図14】実施例4における制御の具体例となる説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[実施例1]
第1実施例に係る画像形成装置について説明する。ここでは、画像形成装置の一例として、電子写真方式を採用した画像形成装置のうち中間転写ベルトを用いた4ドラム型の多色画像形成装置を図1に例示している。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応したプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKを備えている。プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、画像形成装置1の本体(以下、装置本体2という)に対して着脱自在である。なお、以下の説明において、サフィックスであるYMCKは4色に共通した事項を説明するときは省略される。装置本体2には、中間転写体(回転体)である中間転写ベルト51を有する中間転写ベルトユニット5や定着器7が設けられている。装置本体2は、中間転写ベルト51の周面にトナー像を形成する像形成手段として機能する。
【0014】
各プロセスカートリッジPにおいて、一次帯電器62は、感光ドラム61の外周表面上に配置され、感光ドラム61の表面を一様に帯電させる。現像器63は、レーザ露光器21からの露光により形成された感光ドラム61の表面上の各色の静電潜像を、対応する色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを用いて現像する。現像ローラ64は、現像器63ごと感光ドラム61から離間するとともに回転を停止することで、現像剤の劣化を防止する。このように現像ローラ64は現像器63ごと感光ドラム61に対して当接又は離間する。感光体クリーナ65は、トナー像の一次転写後に感光ドラム61の表面に付着している残りトナーを除去する。
【0015】
一次転写ローラ52は、感光ドラム61とともに中間転写ベルト51を挟持し、感光ドラム61とともに一次転写部を形成している。中間転写ベルト51は第1回転体の一例である。中間転写ベルトユニット5は、中間転写ベルト51、中間転写ベルト51を張架する駆動ローラ53、テンションローラ54、二次転写対向ローラ55を備えている。中間転写ベルトモータ200(図4)により駆動ローラ53が回転することで、中間転写ベルト51が回転する。テンションローラ54は、中間転写ベルト51の長さに応じて図1の水平方向に移動可能に構成されている。これにより、中間転写ベルト51のテンションが略一定に維持される。
【0016】
駆動ローラ53の近傍には、レジ検知センサ56とマークセンサ57が駆動ローラ53の長手方向の両端に設置されている。レジ検知センサ56は、中間転写ベルト51上のトナーパッチを検出する。マークセンサ57は、中間転写ベルト51の周面上に設けられた位置表示マークを検出する。なお、長手方向とは、ローラの軸線方向であり、中間転写ベルト51の搬送方向と直交する方向である。テンションローラ54の近傍には、中間転写ベルト51上の残トナーを回収し、回収した残トナーを潤滑剤として供給する機能を備えたベルトクリーナ58が設置されている。
【0017】
二次転写ローラ81は、中間転写ベルト51と記録媒体Qを介して間接的に当接するか、または、記録媒体Qを介さずに直接的に当接して回転する第2回転体の一例である。二次転写ローラ81は、二次転写対向ローラ55とともに中間転写ベルト51を挟んで配置されており、二次転写対向ローラ55とともに二次転写部を形成している。二次転写ローラ81は、転写搬送ユニット8によって保持されている。
【0018】
装置本体2の下部には、二次転写部に記録媒体Qを給紙および搬送する給送部3が配置されている。給送部3は、複数枚の記録媒体Qを収納したカセット31、記録媒体Qを搬送路へ給送する給送ローラ32、重送防止のリタードローラ対33、搬送ローラ対34、35、レジストローラ対36等を備えている。定着器7の下流側搬送路には記録媒体Qを排出するための排出ローラ対37、38、39が設けられている。
【0019】
図2(A)は全ての色において画像形成が行われていない状態を示す。図2(B)はイエローの画像形成が行われている状態を示す。図2(C)は全ての色において画像形成が行われている状態を示す。図2(D)はイエローの画像形成が終了した状態を示している。図2(A)ないし図2(D)を用いて、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速い場合の画像形成動作について説明する。
【0020】
図2(A)が示すように、全ての現像ローラ64が感光ドラム61と離間している状態で、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速い場合、中間転写ベルト51のY部は張った状態、つまり中間転写ベルト51のY部が伸びた状態となる。これは中間転写ベルト51と感光ドラム61はニップ部に圧力をかける。これは感光ドラム61から中間転写ベルト51にトナーを一次転写するためである。中間転写ベルト51のY部では、イエローの感光ドラム61Yが中間転写ベルト51を引っ張ることになり、中間転写ベルト51が伸びた状態となる。
【0021】
この状態で画像形成が開始される。図2(B)のように、イエローの現像ローラ64Yがイエローの感光ドラム61Yに当接し、かぶりトナーがイエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51のニップ形成する部分に到達する。トナーによってイエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51の動摩擦力が弱まると、イエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51の間でスリップが発生する。これにより中間転写ベルト51のY部は伸びた状態から縮もうとする。次に、マゼンタの感光ドラム61Mと中間転写ベルト51の間で、同様の現象が発生し、中間転写ベルト51のY部とM部が伸びた状態となる。シアンの感光ドラム61C、ブラックの感光ドラム61Kと中間転写ベルト51との間でも同様の現象が発生する。つまり全ての感光ドラム61に現像ローラ64が当接されるまでの間に、中間転写ベルト51の伸縮が数回発生する。
【0022】
図2(C)のように、全ての感光ドラム61に現像ローラ64が当接された状態においては、全ての中間転写ベルト51と感光ドラム61ニップを形成する部分にかぶりトナー存在する。かぶりトナーによって、全ての中間転写ベルト51と感光ドラム61は常にスリップしている。スリップしているため、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速くても、中間転写ベルト51の伸縮は発生しない。
【0023】
画像形成終了の際には、図2(D)が示すように、イエローの現像ローラ64Yがイエローの感光ドラム61Yと離間し、かぶりトナーが存在しない部分がイエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51のニップを形成する部分に到達する。これにより、イエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51の動摩擦力が強まる。さらに、イエローの感光ドラム61Yと中間転写ベルト51がタックし始め、中間転写ベルト51のY部は張った状態となる。なお、M部、C部、K部には緩みが生じる。以後、マゼンタの感光ドラム61M、シアンの感光ドラム61C、ブラックの感光ドラム61Kと中間転写ベルト51との間でも同様の現象が発生する。つまり全ての感光ドラム61に現像ローラ64が離間されるまでの間に、中間転写ベルト51の伸縮が数回発生する。中間転写ベルト51の伸縮は、各色のトナー像の中間転写ベルト51上への転写位置に影響し、色ずれとなって多色画像に表れてくる。
【0024】
このように画像形成においては、順次、現像ローラ64が感光ドラム61に当接していく第一の状態、全ての現像ローラ64が感光ドラム61当接している第二の状態、順次、現像ローラ64が感光ドラム61と離間していく第三の状態が存在する。色ずれの補正は、中間転写ベルト51上に各色のトナーパッチを形成し、そのトナーパッチの位置をレジ検知センサ56で検出し、その検出結果より各色トナー像の中間転写ベルト51への書き出しタイミングを変更する処理である。一般に、この色ずれ補正は、全ての現像ローラ64が感光ドラム61当接している第二の状態で実施される。そのため、順次、現像ローラ64が感光ドラム61に当接していく第一の状態や、順次、現像ローラ64が感光ドラム61と離間していく第三の状態で発生する中間転写ベルト51の伸縮による色ずれを補正することはできない。さらにその伸縮量は中間転写ベルト51と感光ドラム61との周面速度差、摩擦係数、環境によって変化する。伸縮量の変化は、色ずれ量の変化をもたらす。
【0025】
一方、これとは逆に、感光ドラム61の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より遅い場合は、逆のメカニズムで色ずれが発生する。
【0026】
二次転写ローラ81の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より速い場合について説明する。図2(A)のように、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップを形成する部分にトナーがない場合、中間転写ベルト51のT部は張った状態、すなわち中間転写ベルト51のT部が伸びた状態となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップを形成する部分に、中間転写ベルト51から記録媒体Qにトナーを二次転写するために圧力をかけているためである。よって中間転写ベルト51のT部では、二次転写ローラ81が中間転写ベルト51を引っ張るため、中間転写ベルト51が伸びた状態となる。
【0027】
この状態で画像形成が開始され、図2(C)のように、中間転写ベルト51上のトナー像が記録媒体Qとともに、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップを形成する部分に到達する。二次転写ローラ81と記録媒体Qは動摩擦力が強いため、記録媒体Qは二次転写ローラ81の周面速度で搬送される。しかし、記録媒体Qと中間転写ベルト51のニップ部にはトナー像があるため、記録媒体Qと中間転写ベルト51の動摩擦力が弱まり、記録媒体Qと中間転写ベルト51の間でスリップが発生する。その結果、中間転写ベルト51のT部は縮もうとする。このスリップにより記録媒体Q上のトナー像がこすられ画像不良が発生する。
【0028】
この現象においても、中間転写ベルト51と感光ドラム61との関係と同様に、二次転写ローラ81の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度より遅い場合は、逆のメカニズムで画像不良が発生する。
【0029】
このような色ずれや画像不良が発生しないようにするためには、感光ドラム61、中間転写ベルト51、二次転写ローラ81の周面速度差を、良好な画像形成が行えるように制御する必要がある。
【0030】
図3を用いて、画像形成装置の制御構成について説明する。装置本体2は、装置本体2に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部ホスト機器10からジョブを受信する。また、装置本体2が備える原稿読み取り部18からのRGB画像信号を受信する。
【0031】
画像処理制御部11は、入力されたRGB画像信号をCMYK信号に変換し、階調補正や濃度補正を加えて露光信号を生成し、レーザ露光器21に供給する。画像形成制御部12は、以下に説明する画像形成動作を統括して制御する。また、画像形成制御部12は、レジ検知センサ56やマークセンサ57を用いて画像形成動作を補正する際にも装置本体2を制御する。
【0032】
画像形成制御部12において、CPU121は、画像形成制御部12による各種の処理を実行する。ROM122は、CPU121により実行されるプログラムや制御データなどを記憶している。RAM123はCPU121による制御処理時に各種データを記憶する。
【0033】
露光制御部13は、CPU121からの指示にしたがってレーザ露光器21を駆動したり、回転多面鏡を回転させるスキャナモータを駆動したり、レーザ光量の補正等を行ったりしている。高圧制御部14は、CPU121からの指示にしたがって感光ドラム61への帯電バイアスや、現像バイアス、中間転写ベルト51への一次転写バイアス、記録媒体Qへの二次転写バイアス、ベルトクリーナ用のベルトクリーニングバイアスを生成する。駆動制御部15は、CPU121からの指示にしたがって感光ドラム61や現像ローラ64、中間転写ベルト51の作像系モータの駆動、及び記録媒体Qを搬送する搬送モータの駆動を行う。定着制御部16はCPU121からの指示にしたがって定着器7の温度調整を行う。センサ制御部17はレジ検知センサ56を用いて中間転写ベルト51上のトナーパッチを検出したり、マークセンサ57を用いて中間転写ベルト51上に設けられた位置表示マークを検出したりする。
【0034】
当接離間部19は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51を当接および離間させる当接離間手段として機能する。当接離間部19は、CPU121からの指示にしたがって、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51を当接させたり離間させたりする。当接離間部19は、たとえば、二次転写離間モータと偏心カムを備え、二次転写離間モータを所定の方向に回転させることで、二次転写ローラ81を上下動させる。これにより、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接したり離間したりする。
【0035】
図4は駆動制御部15の詳細を示した図である。駆動制御部15の制御対象は数多くあるものの、ここでは本発明に関係する中間転写ベルトモータ200と二次転写モータ300の駆動制御に関わる部分について説明する。なお、本実施例では、同期式モータであるDCブラシレスモータを中間転写ベルトモータ200に採用している。また、非同期式モータであるDCブラシモータを二次転写モータ300に採用している。
【0036】
中間転写ベルトモータ200の駆動制御について説明する。中間転写ベルトモータ200は、中間転写ベルト51を駆動する第1駆動モータの一例である。CPU121内の回転数決定部124は、印刷設定に対応した回転数を決定し、回転数設定部152に設定する。たとえば、記録媒体の種類に応じてプロセススピードが変化するため、予め記録媒体の種類と回転数との関係を示す関数、テーブルまたはプログラムをROM122が記憶している。回転数決定部124は、印刷設定に含まれている記録媒体の種類に対応した回転数をテーブル等から決定する。
【0037】
中間転写ベルトモータ駆動制御部154は、中間転写ベルトモータ200を制御して中間転写ベルト51を一定の回転数で回転させる第1制御手段の一例である。中間転写ベルトモータ駆動制御部154は、回転数設定部152に設定された所定の回転数と、中間転写ベルトモータ200からの速度信号であるFGOUTを元に中間転写ベルトモータ200を制御する。具体的に、中間転写ベルトモータ駆動制御部154は、加速信号であるACC信号と減速信号であるDEC信号を用いて、中間転写ベルトモータ200の回転速度(回転数)が設定速度となるように制御する。
【0038】
二次転写モータ300について説明する。二次転写モータ300は、二次転写ローラ81を駆動する第2駆動モータの一例である。CPU121内のPWM値決定部125は、印刷設定に対応したPWM値を決定し、PWM値設定部153に設定する。印刷設定とPWM値との関係はROM122が記憶している。よって、PWM値決定部125はこれに基づいて印刷設定に対応したPWM値を決定する。
【0039】
二次転写モータ駆動制御部155は、二次転写モータ300を制御する第2制御手段の一例である。二次転写モータ駆動制御部155は、PWM値設定部153に設定されたPWM値に対応したPWM信号を出力する。二次転写モータ300の駆動については、図5を用いてさらに詳しく説明する。PWM値設定部153から出力されたPWM信号はトランジスタQ1、Q2によって+24Vに増幅される。増幅されたPWM信号が電界効果トランジスタ(FET) Q3をON/OFFすることで、二次転写モータ300に供給する電力量を制御する。すなわちPWM値を大きくする(Q3のON Dutyを大きくする)と二次転写モータ300へ供給される電力量は大きくなり、PWM値を小さくすると二次転写モータ300へ供給される電力量は小さくなる。なお、PWM信号の周波数が低すぎると二次転写モータ300の回転ムラやトルクムラが発生し、反対に周波数が高すぎるとノイズが大きくなる。そこで一般的に、PWM信号の周波数は数十KHz程度に設定されることが多い。
【0040】
図6は二次転写部における負荷トルク、駆動トルクおよび摩擦力の関係を示した図である。TL1は中間転写ベルト51の負荷トルクである。Tm1は中間転写ベルトモータ200が中間転写ベルト51に与える駆動トルクである。TL2は二次転写ローラ81の負荷トルクである。Tm2は二次転写モータ300が二次転写ローラ81に与える駆動トルクである。ここで中間転写ベルト51に与えられるトルクTm1は中間転写ベルト51の負荷トルクTL1に対して十分に大きく、かつ、Tm1>TL1+uFを満たすものとする。uは記録媒体Qとトナーが二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の間に存在するときの、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の静摩擦係数である。静摩擦係数uは、たとえば、0.15程度の値である。Fは二次転写対向ローラ55と二次転写ローラ81の当接圧力である。すなわち二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦力LはuFで表すことができる。二次転写ローラ81は中間転写ベルト51からL=uFのトルクを受けていることを意味する。
【0041】
図7は中間転写ベルト51が一定速度で駆動されている状態で、PWM値設定部153に設定されるPWM値を変化させたときの二次転写ローラ81の回転数を表した図である。
【0042】
a区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2よりも駆動トルクTm2が極めて小さく、二次転写ローラ81が全く回転していない。このときの二次転写ローラ81の駆動トルクTm2、中間転写ベルト51の負荷トルクTL2および摩擦力uFの関係は、
TL2−Tm2≫uF
となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51はスリップした状態であることを示している。
【0043】
b区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2よりも駆動トルクTm2が小さく、二次転写ローラ81は回転しているものの、目標回転数に達してしていない。このときの二次転写ローラ81の駆動トルクTm2、中間転写ベルト51の負荷トルクTL1および摩擦力uFの関係は、
TL2−Tm2>uF
となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51がスリップした状態にあることを示している。
【0044】
c区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2に対して与えられる駆動トルクTm2が適度な状態であり、二次転写ローラ81は目標回転数で回転している。このときの二次転写ローラ81の駆動トルクTm2、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2および摩擦力uFの関係は、
TL2≧Tm2の場合、TL2−Tm2≦uF
TL2<Tm2の場合、Tm2−TL2<uF
となる。これは中間転写ベルト51に二次転写ローラ81が従動している状態であることを示している。
【0045】
d区間でのPWM値では、二次転写ローラ81の負荷トルクTL2よりも駆動トルクTm2が大きく、二次転写ローラ81は回転しているものの、二次転写ローラ81の回転数が目標回転数を上回っている。このときの駆動トルクTm2、中間転写ベルト51の負荷トルクTL1および摩擦力uFの関係は、
Tm2−TL1>uF
となる。これは二次転写ローラ81と中間転写ベルト51はスリップした状態であることを示している。
【0046】
よって、TL2≧Tm2の場合はTL2−Tm2≦uFが成り立ち、TL2<Tm2の場合はTm2−TL2<uFが成り立つように、二次転写ローラ81に与える駆動トルクTm2を設定することで、二次転写ローラ81が中間転写ベルト51に従動する。これを従動条件と呼ぶ。駆動トルクTm2は、PWM値を設定することで、適切な値に設定される。これは、PWM値が二次転写モータ300のトルクを決定するパラメータの1つだからである。このように、従動条件が満たされるように二次転写モータ300を駆動することで、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差を適切にできるため、色ずれや画像不良を軽減できる。
【0047】
ここでは、一例として、二次転写モータ300の制御方式としてPWM値による制御方式について説明したが、二次転写モータ300に印加する電圧を制御しても同様の効果が得られる。さらに、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の関係について説明したが、この関係は、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係についてもあてはまる。
【0048】
[実施例2]
実施例2では、TL2≧Tm2の場合はTL2−Tm2≦uF、TL2<Tm2の場合はTm2−TL2<uFの関係を満たす、二次転写ローラ81に与える駆動トルクTm2の具体的な設定方法、すなわちPWM値の設定方法について説明する。とりわけ、実施例2では、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81を離間させた状態で、CPU121が二次転写モータ300を駆動する。CPU121は、二次転写モータ300の回転数が所定値となったときに二次転写モータ300に印加されていた入力電圧またはPWM値をRAM123に保持しておいて、それを印刷時に読み出して使用する。
【0049】
図8は実施例2における駆動制御部15の詳細を示した図である。多くの部分は実施例1における駆動制御部15と同じであるため説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。回転数検出部151は、二次転写ローラ81の回転数を検出する回転数検出手段として機能する。回転数検出部151は、たとえば、フォトセンサとスリットが刻まれたコードホイールとから構成可能である。回転数検出部151は二次転写ローラ81の軸上に設置され、二次転写ローラ81の回転数に応じた速度パルスを出力する。二次転写ローラ81の回転数が高いと速度パルスの周波数が高くなり、二次転写ローラ81の回転数が低いと速度パルスの周波数が低くなる。この速度パルスはCPU121内のPWM値決定部125に入力される。なお、ここでは回転数検出部151の設置箇所を二次転写ローラ81の軸上としているが、二次転写モータ300の軸上や、二次転写ローラ81へ駆動伝達するギアの軸上でもよい。いずれの位置でも、二次転写ローラ81の回転数に比例したデータを測定できるからである。回転数検出部151は、速度パルスをPWM値決定部125に出力する。
【0050】
図9(A)および図9(B)を用いて二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の当接離間について説明を行う。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の当接離間は、二次転写ローラ81を上下動させることによって行われる。二次転写ローラ81を上下動は、たとえば、二次転写離間モータと偏心カムによって実現できる。
【0051】
図9(A)は二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接した状態であり、印刷時に用いられる状態である。図9(B)は二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が離間した状態を示している。離間状態は、画像形成装置1の電源をOFFにしているときや印刷待機時に用いられる状態である。これにより、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が駆動されていないときに、中間転写ベルト51や二次転写ローラ81の変形を軽減できる。
【0052】
図10を用いて、従動条件を満たすPWM値の設定方法について説明する。ここでは、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81は離間状態にあるものとする。なお、図10に示したフローチャートは、CPU121が実行する処理を示している。
【0053】
S101で、CPU121のPWM値決定部125は、PWM値設定部153に初期値を設定する。ここでは初期値として設計称呼値を用いるものとする。
【0054】
S102で、PWM値決定部125は、回転数検出部151が出力する速度パルスをカウントし、二次転写ローラ81の回転数Nを計測する。
【0055】
S103で、PWM値決定部125は、計測した回転数Nと設計称呼値の回転数Ntとを比較し、両者が等しいかどうかを判定する。N=Ntの場合は、S104に進む。
【0056】
S104で、PWM値決定部125は、そのときのPWM値をRAM123に格納し、本制御を終了する。一方、S103で判定結果がN≠Ntの場合は、S105に進む。
【0057】
S105で、PWM値決定部125は、回転数Nが設計称呼値Ntより小さいかどうかを判定する。N<Ntの場合、S106に進む。
【0058】
S106で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけインクリメントし、再度、S102からの処理を繰り返す。一方、S105での判定結果がN>Ntの場合は、S107に進む。
【0059】
S107で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけディクリメントし、再度、S102からの処理を繰り返す。
【0060】
S101におけるPWM値の初期値を設計称呼値としているが、前回のPWM値等であってもよい。またS103で二次転写ローラ81の回転数Nを設計称呼値の回転数Ntと比較する際に、Ntに所定の範囲を持たせたり、画像が最良となるように所定のオフセットを持たせたりしてもよい。前者の場合、Nt−Δ≦N≦Nt+Δであれば、S104に進む。後者の場合、Nt−Δ=Nであれば、S104に進む。
【0061】
ここで二次転写モータ300に投入される電力をP、二次転写モータの効率をη、とすると、P×η=Nt×Tm2の関係が成り立つ。さらに負荷トルクTL2の二次転写ローラ81は所定の回転数で駆動されているため、TL2=Tm2が成立する。
【0062】
次に二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接状態にあるときのTL2及びTm2の関係について説明する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差が無い場合、二次転写モータ300は、二次転写ローラ81の負荷のみを駆動すればよい。そのため、上述のTL2=Tm2が成立し、TL2−Tm2≦uFを確実に満たすことができる。
【0063】
二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差が有る場合について説明する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の周面速度差は、一般に、駆動されるローラの径のバラつきや膨張率の違いによって発生する。周面速度差は、通常、±0.5%程度である。ここで二次転写ローラ81の周面速度が中間転写ベルト51の周面速度よりも0.5%遅いものとする。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との間に周面速度差が無いときの二次転写ローラ81の回転数をNrとする。図10に示した設計称呼値の回転数Ntは、Nt=Nr×0.995と表すことができる。これをP×η=Nt×Tm2に代入すると、P×η=(0.995×Nr)×Tm2となる。この状態で二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が当接すると、二次転写ローラ81は回転数Nrで回転しようとする。図10に示した二次転写モータ駆動PWM値決定制御で決定されたPWM値で二次転写モータ300を駆動した場合、P×η=Nr×(0.995×Tm2)となる。これは、回転数Nrが変わると効率ηの変化するものの、回転数Nrの変化が極めて小さく、効率ηの変化も微小であるとすると、二次転写ローラ81に与えられるトルクTmが小さくなることを意味する。この式を従動条件の式に代入すると、
TL2−(0.995×Tm2)≦uF
TL2=Tm2なので、
TL2−(0.995×TL2)≦uF
すなわち、
0.005×TL2≦uF
の関係を満たせばよいことになる。そしてたとえば、ポリイミド製の中間転写ベルト51と二次転写ローラ81との摩擦係数uは、印刷時の状態である記録媒体Qとトナーが介在したときには、0.15程度となる。また二次転写対向ローラ55と二次転写ローラ81の当接圧力Fは0.4Nm程度である。さらに二次転写ローラ81の負荷トルクTL2は、クリーニング部材を設けた場合でも0.15Nm程度であるため、従動条件が満たされる。
【0064】
以上説明したように、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51が離間した状態で二次転写モータ300を駆動し、二次転写ローラ81の回転数Nが設計称呼値NtとなるようにPWM値を変化させることで、従動条件を満たすPWM値が得られる。実施例2においても、二次転写モータ300の制御方式を印加電圧制御方式に置換してもよい。実施例1と同様に実施例2は、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係にも適用可能である。
【0065】
[実施例3]
実施例3は、実施例2とは異なり、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との当接点(ニップ部)に潤滑剤としてのトナーを供給し、二次転写ローラ81の速度変化を検出することで、従動条件を満たす駆動トルクTm2(PWM値)の設定方法について説明する。このように、実施例3では、トナー像がニップ部を通過する際の二次転写モータ300の回転数を回転数検出部151が検出する。さらに、二次転写モータ300の回転数が所定値となったときに二次転写モータ300に印加されていた入力電圧またはPWM値をCPU121がRAM123に保持しておいて印刷時に使用することを特徴とする。
【0066】
基本的な画像形成装置1の構成及び二次転写ローラ81の回転数検出部151の構成は、実施例1及び実施例2と同じであるため説明を省略する。よって、実施例3では、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51とのニップ部へのトナー供給について説明する。
【0067】
感光ドラム61へのトナー像の形成、中間転写ベルト51への一次転写については、実施例1にて説明した通常の画像形成方法と同じであるため説明を省略する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51とのニップ部にトナー像が無い場合は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦力uが高くなる。よって、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51に周面速度差が有ると、二次転写ローラ81の負荷が中間転写ベルト51に大きく作用する。たとえば、ブラックのプロセスカートリッジPKからトナー供給が行われたとする。ブラックトナーは、中間転写ベルト51上を搬送され、二次転写ローラ81とのニップ部に到達する。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51とのニップ部にトナー像が有る場合は、トナー像が潤滑剤となって、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦力uが低下する。二次転写ローラ81に与えられる駆動トルクTm2が負荷トルクTL2と異なると、中間転写ベルト51と二次転写ローラ81との間にスリップが発生する。スリップは二次転写ローラ81の速度変動を生じさせる。よって、ニップ部にトナー像が無い状態から有る状態へ移行する際に、二次転写ローラ81の速度変動が所定値以下となるように、PWM値決定部125は、二次転写ローラ81に与える駆動トルクTm2、すなわちPWM値をPWM値設定部153に設定すればよい。
【0068】
なお、ブラックのトナー像は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部において、二次転写ローラ81に与えられる駆動トルクTmが負荷トルクTL2と異なる場合、スリップが発生するほどの十分な大きさである必要がある。
【0069】
図11及び図12を用いて具体的に、TL2≧Tm2の場合は、TL2−Tm2≦uF、TL2<Tm2の場合は、Tm2−TL2<uFの関係を満たす、PWM値の設定方法について説明する。図11は二次転写モータ300を駆動するPWM値を決定するための制御フローである。
【0070】
S201で、PWM値決定部125は、PWM値設定部153に初期値を設定する。ここでは初期値として設計称呼値を用いるものとする。
【0071】
S202で、PWM値決定部125は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部にトナーが無いときの二次転写ローラ81の回転数Nを所定区間にわたって計測し、その平均値Naを算出する。
【0072】
S203で、PWM値決定部125は、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部にトナー像が有るときの二次転写ローラ81の回転数Nを所定区間にわたって計測し、その平均値Nbを算出する。CPU121は、回転数Nを計測するのに先立って、画像形成装置1を制御してトナー像を中間転写ベルト51上に形成させる。
【0073】
S204で、PWM値決定部125は、トナー像がないときの回転数の平均値Naと、トナー像が有るときの回転数の平均値Nbとを比較し、両者が等しいかどうかを判定する。Na=Nbの場合、S205に進む。
【0074】
S205で、PWM値決定部125は、そのときのPWM値をRAM123に格納し、本制御を終了する。一方、S204の判定結果がNa≠Nbの場合は、S206に進む。
【0075】
S206で、PWM値決定部125は、トナー像が無いときの回転数の平均値Naが、トナー像が有るときの回転数の平均値Nbを超えているかどうかを判定する。Na>Nbの場合は、S207に進む。
【0076】
S207で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけインクリメントし、再度、S202から処理を繰り返す。一方、S206の判定結果がNa<Nbの場合は、S208に進む。
【0077】
S208で、PWM値決定部125は、PWM値を所定値だけディクリメントし、再度、S202から処理を繰り返す。
【0078】
なお、S201におけるPWM値の初期値を設計称呼値としているが、前回のPWM値等であってもよい。NaまたはNbに所定の範囲を持たせたり、画像が最良となるように所定のオフセットを持たせたりしてもよい。前者の場合、Na−Δ≦Nb≦Na+Δであれば、S205に進む。後者の場合、Na−Δ=Nbであれば、S205に進む。
【0079】
図12は図11の制御フローに基づき制御された場合の二次転写ローラ81の回転数を示している。図12を用いてさらに具体的に説明する。図12によれば、回転数の平均値Na(A0)は、PWM値=A0hのときの回転数の平均値Naである。回転数の平均値Nb(A0)は、PWM値=A0hのときの回転数の平均値Nbである。A0hを所定値だけインクリメントしたときのPWM値はA1hである。PWM値=A1hの場合、回転数の平均値はNa(A1)と、Nb(A1)である。図12によれば、NaとNbとの大小関係は、Na(A0)>Nb(A0)であり、Na(A1)>Nb(A1)である。よって、PWM値決定部125は、再度PWM値をインクリメントして、PWM値=A2hとする。PWM値=A2hの場合、二次転写ローラ81の回転数の平均値は、Na(A2)、Nb(A2)である。図12によれば、Na(A2)=Nb(A2)が成立しているため、PWM値決定部125は、PWM値=A2hをRAM123に格納し、通常の印刷時に使用するPWM値とする。なお、本実施例では、各PWM値において、ニップ部にトナー像が無いときの二次転写ローラ81の回転数の平均値Naと、トナー像が有るときの二次転写ローラ81の回転数の平均値Nbを比較している。しかし、トナー像が無いときの二次転写ローラ81の回転数の平均値Naをあらかじめ決められた固定値としてもよい。またプロセスカートリッジからのトナー像の供給は、ブラックのプロセスカートリッジPKに限られるものではない。たとえば、CPU121は、高圧制御部14を制御してベルトクリーナ58に逆バイアスを印加することで中間転写ベルト51へ廃トナーを吐き出してもよい。この廃トナーもブラックトナーと同様に潤滑剤として機能する。
【0080】
ここで、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との間に、記録媒体Q及びトナー像が無いときの摩擦係数をu1とする。記録媒体Q及びトナーが有るときの摩擦係数をu2とする。トナーのみが有るときの摩擦係数をu3とする。この場合、u1>u2>u3の関係がある。Na=Nbが成立するのは、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51との間の摩擦係数がu3のときである。これは、二次転写ローラ81が中間転写ベルト51に従動していることを示している。すなわちTL2−Tm2≦u3Fもしくは、Tm2−TL2<u3Fが成立している。印刷状態で記録媒体Qとトナーが介在したときの、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の摩擦係数はu2である。さらにu2>u3の関係があることから、印刷時において二次転写ローラ81が中間転写ベルト51に従動する条件は、TL2−Tm2≦u2F、または、Tm2−TL2<u2Fである。
【0081】
以上説明したように、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51のニップ部にトナー像が無いときの二次転写ローラ81の回転数と、トナー像が有るときの二次転写ローラ81の回転数との差をなくすことで、従動条件を満たすPWM値が決定される。ここで求められた二次転写モータ300のPWM値は、CPU121が定期的に更新してもよいし、不揮発メモリ等に記憶させておくことも可能である。二次転写モータ300の制御方式は、印加電圧制御方式であってもよい。また。二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の関係について説明したが、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係についても、実施例3は適用可能である。
【0082】
[実施例4]
実施例4では、印刷中に二次転写ローラ81の負荷トルクTL2に変動が生じた場合の、二次転写モータ300を駆動するPWM値を補正する方法と、補正が有効でなかった場合の異常処理について説明する。負荷トルクTL2の変動は二次転写ローラ81の回転数Nに表れる。そこで、実施例4では、二次転写ローラ81の回転数Nを2つの閾値範囲と比較することで、補正が必要か否かと異常が発生しているか否かをCPU121が判定する。たとえば、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が予め定められた第1の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第1判定手段として機能する。さらに、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が第1の閾値範囲から外れると、二次転写モータ300の回転数が第1の閾値範囲に収まるまで二次転写モータ300に印加される入力電圧またはPWM値を補正する補正手段として機能する。また、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が予め定められた第2の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第2判定手段として機能する。さらに、CPU121は、二次転写モータ300の回転数が第2の閾値範囲から外れると、報知手段を使用して異常の発生を報知する。
【0083】
図13はCPU121が実行する二次転写モータ駆動PWM値補正のフローチャートである。図14は図13の二次転写モータ駆動PWM値補正を詳しく説明するための具体例であって、二次転写ローラ81の回転数Nと各補正や異常検知の閾値を示している。図13、図14において、基準回転数Nfは二次転写ローラ81の称呼値となる回転数である。補正閾値ΔNcは二次転写ローラ81を駆動するPWM値の補正を実行するか否かを判定するための閾値である。補正閾値ΔNcは基準回転数Nfを中心として正負の値を持つ。Nf−ΔNcをPWM補正下限閾値と呼び、Nf+ΔNcをPWM補正上限閾値と呼ぶことにする。このように、第1の閾値範囲の中心値である基準回転数Nfは、CPU121が、二次転写モータ300の回転数が所定値となったときに二次転写モータ300に印加されていた入力電圧またはPWM値である。
【0084】
異常閾値ΔNdは二次転写ローラ81を駆動するPWM値の補正異常を検知するための閾値である。異常閾値ΔNdも基準回転数Nfを中心として、正負の値を持つ。Nf−ΔNdを回転数異常下限閾値と呼び、Nf+ΔNdを回転数異常上限閾値と呼ぶことにする。補正閾値ΔNcと異常閾値ΔNdには、ΔNc<ΔNdの関係が有る。異常閾値ΔNdは、PWM値の補正で対処できないほど異常な回転数Nを検出する閾値だからである。このように、第2の閾値範囲の中心値も基準回転数Nfである。
【0085】
次に図13に基づき二次転写モータ駆動PWM値補正について説明する。印刷が開始され、中間転写ベルトモータ200及び二次転写モータ300が一定の回転速度で安定した後に、二次転写モータ駆動PWM値補正が開始される。
【0086】
S301で、CPU121(PWM値決定部125)は、回転数検出部151を用いて検出した二次転写ローラ81の回転数Nが、PWM補正下限閾値(Nf−ΔNc)を超えているかどうかを判定する。N≦Nf−ΔNcが成立している場合はS302に進む。
【0087】
S302で、CPU121は、PWM値を所定値だけインクリメントし、S303へ移行する。一方、S301でN>Nf−ΔNcが成立している場合は、S302をスキップしてS303へ進む。具体的には図14に示したA区間でCPU121はPWM値をインクリメントし、それ以外の区間ではPWM値をそのままに維持する。
【0088】
S303で、CPU121は、二次転写ローラ81の回転数NがPWM補正上限閾値(Nf+ΔNc)を下回っているかどうかを判定する。N≧Nf+ΔNcが成立している場合、S304に進む。
【0089】
S304で、CPU121は、PWM値を所定値だけディクリメントし、S305へ移行する。一方、N<Nf+ΔNcが成立している場合は、S304をスキップして、S305へ進む。具体的には図14に示したC区間で、CPU121は、PWM値をディクリメントし、それ以外の区間では、PWM値をそのままに保持する。
【0090】
S305で、CPU121は、二次転写ローラ81の回転数Nが回転数異常下限閾値Nf−ΔNdを超えているかどうかを判定する。N>Nf−ΔNdが成立している場合はS306へ進む。N≦Nf−ΔNdが成立している場合は、S307に進む。図14に示したB区間で、CPU121は、S307で異常処理を実施し、それ以外の区間ではS306へ移行する。
【0091】
S306で、CPU121は、二次転写ローラ81の回転数Nが、回転異常上限閾値Nf+ΔNd未満であるかどうかを判定する。N<Nf+ΔNdが成立している場合はS308へ進む。N≧Nf+ΔNdが成立している場合は、S307に進む。
【0092】
S307で、CPU121は、異常処理を実行する。ここで異常処理とは、たとえば、画像形成装置1の上位装置(ホストコンピュータなど)への異常報告や、画像形成装置1の停止等のことであり、異常が発生したことを表示装置などでユーザに報知することも含まれる。たとえば、図14に示したD区間で、CPU121は、異常処理を実行し、他の区間ではそのままS308へ移行する。
【0093】
S308で、CPU121は、所定の補正終了条件が満たされたかどうかを判定する。補正終了条件が満たされていなければ、CPU121は、S301から処理を再度実行する。補正終了条件が満たされていれば、補正処理を終了する。補正終了条件は、たとえば、印刷ジョブが終了したことや、異常処理が発生したことである。
【0094】
なお本実施例では、基準回転数Nfを称呼値となる回転数としたが、二次転写ローラ81が正常に回転しているときの平均回転数を採用してもよい。さらに補正閾値ΔNcと異常閾値ΔNdを、上限の閾値と下限の閾値でそれぞれ共通の値としたが、上限と下限とでそれぞれ別の値であってもよい。
【0095】
以上説明したように、CPU121は、印刷中に二次転写ローラ81の負荷トルクTL2に変動が生じると二次転写ローラ81の回転数Nを基準回転数Nfに近づくように補正するため、負荷トルクTL2に変動が画像へ及ぼす影響を軽減できる。またCPU121は、表示装置を通じて操作者に画像形成の異常を報知するため、操作者は画像形成の異常を即座に把握できる。また、異常が発生したときはCPU121が露光制御部13、高圧制御部14、駆動制御部15および定着制御部16等に停止を指示するため、記録媒体Qやトナーの無駄な消費を抑制できる。
【0096】
実施例4では、二次転写モータ300をPWM値による制御方式で説明したものの、二次転写モータ300に印加する印加電圧を制御しても、同様の効果が得られる。さらに、二次転写ローラ81と中間転写ベルト51の関係について説明したが、二次転写ベルトと中間転写ベルトの関係、感光ドラム61と中間転写ベルト51の関係についても、本発明を適用できる。異常報知手段として、表示装置について説明したが、異常を知らせる音響信号を出力する音響信号出力装置や異常を知らせる電子メールを送信する電子メール送信装置が代わりに採用されてもよい。いずれも操作者に異常の発生を報知できるからである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体と媒体を介して間接的に当接するか、または、前記媒体を介さずに直接的に当接して回転する第2回転体と、
前記第1回転体を駆動する第1駆動モータと、
前記第2回転体を駆動する第2駆動モータと、
前記第1駆動モータを制御して前記第1回転体を一定の回転数で回転させる第1制御手段と、
前記第2駆動モータを制御する第2制御手段と
を有し、
前記第1回転体と前記第2回転体の静摩擦係数をuとし、
前記第1回転体と前記第2回転体の当接圧をFとし、
前記第2回転体の負荷トルクをTLとし、
前記第2駆動モータの駆動トルクをTmとすると、
前記第2制御手段は、
TL≧Tmの場合は、
TL−Tm≦uFが成立し、
TL<Tmの場合は、
Tm−TL<uFが成立するように前記第2駆動モータを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1回転体と前記第2回転体を当接および離間させる当接離間手段と、
前記第2駆動モータの回転数を検出する回転数検出手段と
をさらに有し、
前記当接離間手段が前記第1回転体と前記第2回転体を離間させた状態で、前記第2制御手段は、前記第2駆動モータを駆動し、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値を保持しておいて印刷時に使用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2駆動モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記第1回転体の周面にトナー像を形成する像形成手段と
をさらに有し、
前記像形成手段が前記第1回転体の周面にトナー像を形成し、かつ、前記トナー像が前記第1回転体と前記第2回転体との当接点を通過する際の前記第2駆動モータの回転数を前記回転数検出手段が検出し、前記第2制御手段は、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値を保持しておいて印刷時に使用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2駆動モータの回転数が予め定められた第1の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第1判定手段と、
前記第2駆動モータの回転数が前記第1の閾値範囲から外れると、前記第2駆動モータの回転数が前記第1の閾値範囲に収まるまで前記第2駆動モータに印加される入力電圧またはPWM値を補正する補正手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の閾値範囲の中心値は、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2制御手段が保持した前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2駆動モータの回転数が予め定められた第2の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第2判定手段と、
前記第2駆動モータの回転数が前記第2の閾値範囲から外れると、異常の発生を報知する報知手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の閾値範囲の中心値は、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2制御手段が保持した前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体と媒体を介して間接的に当接するか、または、前記媒体を介さずに直接的に当接して回転する第2回転体と、
前記第1回転体を駆動する第1駆動モータと、
前記第2回転体を駆動する第2駆動モータと、
前記第1駆動モータを制御して前記第1回転体を一定の回転数で回転させる第1制御手段と、
前記第2駆動モータを制御する第2制御手段と
を有し、
前記第1回転体と前記第2回転体の静摩擦係数をuとし、
前記第1回転体と前記第2回転体の当接圧をFとし、
前記第2回転体の負荷トルクをTLとし、
前記第2駆動モータの駆動トルクをTmとすると、
前記第2制御手段は、
TL≧Tmの場合は、
TL−Tm≦uFが成立し、
TL<Tmの場合は、
Tm−TL<uFが成立するように前記第2駆動モータを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1回転体と前記第2回転体を当接および離間させる当接離間手段と、
前記第2駆動モータの回転数を検出する回転数検出手段と
をさらに有し、
前記当接離間手段が前記第1回転体と前記第2回転体を離間させた状態で、前記第2制御手段は、前記第2駆動モータを駆動し、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値を保持しておいて印刷時に使用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2駆動モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記第1回転体の周面にトナー像を形成する像形成手段と
をさらに有し、
前記像形成手段が前記第1回転体の周面にトナー像を形成し、かつ、前記トナー像が前記第1回転体と前記第2回転体との当接点を通過する際の前記第2駆動モータの回転数を前記回転数検出手段が検出し、前記第2制御手段は、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値を保持しておいて印刷時に使用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2駆動モータの回転数が予め定められた第1の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第1判定手段と、
前記第2駆動モータの回転数が前記第1の閾値範囲から外れると、前記第2駆動モータの回転数が前記第1の閾値範囲に収まるまで前記第2駆動モータに印加される入力電圧またはPWM値を補正する補正手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の閾値範囲の中心値は、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2制御手段が保持した前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2駆動モータの回転数が予め定められた第2の閾値範囲から外れたかどうかを判定する第2判定手段と、
前記第2駆動モータの回転数が前記第2の閾値範囲から外れると、異常の発生を報知する報知手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の閾値範囲の中心値は、前記第2駆動モータの回転数が所定値となったときに前記第2制御手段が保持した前記第2駆動モータに印加されていた入力電圧またはPWM値であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−76948(P2013−76948A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218317(P2011−218317)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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