説明

画像形成装置

【課題】画素電極に対する画像信号に基づく潜像の形成に要する処理時間を短縮する。
【解決手段】像保持体1上に画素電極3単位の潜像を形成する潜像形成手段4を備え、潜像形成手段4は、像保持体1の行方向に並ぶ画素電極3群に対し、像保持体1の回転方向での潜像形成の処理順を指定する指定信号及び画像信号に基づく潜像形成信号を生成する信号生成手段5と、画素電極3群を指定対象とする指定線Lgと、潜像形成信号を供給する信号線Lsと、各画素電極3に対応し、指定線Lg及び信号線Lsに接続されると共に指定信号及び潜像形成信号に基づいて切り替え動作し、切り替え動作に係る通電経路中に光電変換部7を有する切替器6と、当該画素電極3群への潜像形成処理時又はその前に、処理対象である画素電極3群に対応する切替器6群の光電変換部7に光を照射し、潜像形成処理時における切替器6の切り替え動作時間を短縮する光照射手段9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる画像形成方式として電子写真方式が利用される。これは、コロナ帯電器や帯電ロール等の帯電装置によって帯電された感光体に対して、レーザやLEDアレイを用いて光イメージを照射することで静電潜像を形成し、この形成された静電潜像に対し帯電したトナーを用いて現像することで静電潜像を可視像化するようにしたものである。
【0003】
これに対し、感光体を使用せずに、静電潜像を形成する方式の画像形成装置も既に提案され、ドラム上にマトリクス状に画素電極を設ける方式が開示されている。
特許文献1には、画素電極の一部に光導電材料を用い、光像を静電像に変換する構成が記載されている。また、特許文献2には、縦横にスイッチング素子を配した像担持体にて、スイッチング素子の走査ライン毎に設けた受光素子にレーザ光を当ててアクティブにする方式が記載されている。更に、特許文献3には、画素電極上の保護層として光導電層を用い、現像時には光照射を行うことで現像電界を有効に作用させるようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3233463号公報(実施例、図14)
【特許文献2】特許第3826013号公報(実施の形態9、図6)
【特許文献3】特開2010−83032号公報(実施の形態1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画素電極を用いて画像を形成する際、画素電極に対する画像信号に基づく潜像の形成に要する処理時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、循環回転が可能な支持体と、この支持体上に設けられ且つ当該支持体の回転方向を列方向として画素単位毎に行列配置された複数の画素電極と、を有する像保持体と、この像保持体の複数の画素電極に対して画像信号に基づく潜像電位を与えることで像保持体上に画素電極単位の潜像を形成する潜像形成手段と、この潜像形成手段にて潜像電位が形成された画素電極に対し、像保持体との対向領域である現像領域にて現像剤を用いて現像する現像手段と、を備え、前記潜像形成手段は、前記画素電極単位の潜像を形成するに当たり、像保持体の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極群に対し、像保持体の回転方向での潜像形成の処理順を指定する指定信号及び各画素電極に与えられる画像信号に基づく潜像電位に対応する潜像形成信号を生成する信号生成手段と、この信号生成手段にて生成された指定信号に基づいて対応する画素電極群を指定対象とする指定線と、前記信号生成手段にて生成された潜像形成信号を対応する各画素電極に供給する信号線と、前記各画素電極に対応して像保持体に行列配置され、前記指定線及び前記信号線に接続されると共に前記指定信号及び前記潜像形成信号に基づいて断続に関して切り替え動作し、切り替え動作に係る通電経路中に光電変換部を有する切替器と、処理対象である画素電極群を指定するときに、当該画素電極群への潜像形成処理時又はその前に、処理対象である画素電極群に対応する切替器群の光電変換部に光を照射し、潜像形成処理時における切替器の切り替え動作時間を短縮する光照射手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記光照射手段は、前記現像領域又は当該現像領域より像保持体の回転方向における上流側の予め決められた位置にて、光照射を行うことを特徴とする画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る画像形成装置のうち前記処理対象である画素電極群が前記現像領域より像保持体の回転方向における上流側位置に設定される態様において、前記処理対象である画素電極群が潜像形成処理を終了した位置と前記現像領域との間には前記処理対象である画素電極群に対応する切替器群の光電変換部に光が当たらないように遮光する遮光手段を更に備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る画像形成装置のうち前記光照射手段による像保持体の回転方向に沿った光照射域内に像保持体の回転方向に対して複数の切替器が配置される態様において、前記信号生成手段は、前記複数の切替器のうち、前記光照射域の像保持体の回転方向における下流側端部に位置する切替器に対応した画素電極が前記処理対象となるように、前記指定信号及び前記潜像形成信号を生成することを特徴とする画像形成装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る画像形成装置において、前記現像手段は、一つの像保持体に対向して複数設けられ、前記潜像形成手段は、隣り合って配置される二つの現像手段のうち、像保持体の回転方向における下流側の現像手段の現像領域を含み且つ上流側の現像手段の現像領域に至るまでの範囲内の予め決められた位置で、前記像保持体の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極群に対して前記下流側の現像手段に対応する前記潜像形成信号を供給すると共に、予め決められた処理順に沿って夫々の現像手段に対応する前記潜像形成信号を夫々の範囲内の予め決められた位置で該当する画素電極群に供給することを特徴とする画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係る画像形成装置において、前記切替器は、チャネル層を前記光電変換部とした薄膜トランジスタで構成されていることを特徴とする画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係る画像形成装置において、前記光照射手段は、前記像保持体の回転軸方向に沿って複数の発光ダイオードを配列したLEDアレイを用いることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに係る画像形成装置において、前記像保持体の回転方向に沿った最大の画像形成領域に相当する寸法が当該像保持体の一回転を超える長さに設定されていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、画素電極を用いて画像を形成する際、画素電極に対する画像信号に基づく潜像の形成に要する処理時間を短縮することができる。
請求項2に係る発明によれば、画素電極に対する潜像の形成に要する処理時間を短縮し、かつ、形成された潜像に対して同じ条件で現像に供することができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画素電極に形成された潜像電位を現像領域までより安定に維持することができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画素電極に形成された潜像電位の安定性を高めることができる。
請求項5に係る発明によれば、一つの像保持体に複数色の潜像を形成するに当たって、画素電極に対する各色夫々の潜像の形成に要する処理時間を短縮できる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、既存の切替器を利用して画素電極への潜像の形成に要する処理時間を短縮できる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、周辺スペースが狭いところでも設置でき、かつ、光照射域を絞り込むこともできる。
請求項8に係る発明によれば、像保持体の周長以上の画像を周長が大きいものよりも潜像の形成に要する処理時間を速くして対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図であり、(b)は(a)の画素電極及び切替器を示す拡大図、(c)は切替器の一例としての薄膜トランジスタを示す。
【図2】実施の形態1の画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の像保持体の概要を示す斜視図である。
【図4】(a)は実施の形態1で用いられる像保持体の画素電極の配置例を示す説明図、(b)はその一つの画素電極を示す説明図、(c)は画素電極への配線例を示す説明図である。
【図5】(a)はマトリクスパネルの部分断面、(b)はTFTの構成を示す説明図である。
【図6】マトリクスパネルの配線構成を示す説明図である。
【図7】潜像形成装置の一例を示すブロック図である。
【図8】実施の形態1で用いられる現像装置の一例を示す説明図である。
【図9】(a),(b)は現像装置で用いられる導電性トナーの一例を示す説明図である。
【図10】(a)〜(c)はTFTでの作用を示す説明図である。
【図11】光照射と書込位置との関係を示す説明図である。
【図12】(a)は実施の形態2の画像形成装置の概要を示す説明図であり、(b)は(a)のマトリクスパネルの部分断面を示す。
【図13】実施の形態3の画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図14】(a)は実施の形態3の画像形成装置における四箇所の書込位置を示す説明図であり、(b)〜(f)は書込位置の変化を示す説明図である。
【図15】TFTの充電特性を示すグラフである。
【図16】画素密度、充電時定数及びプロセススピードの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用される画像形成装置の一例としての実施の形態の概要を示す説明図であり、(b)は(a)の行列配置された画素電極及び切替器を示す拡大図、(c)は切替器の一例として薄膜トランジスタ(ここでは電界効果型トランジスタ:FET)の例を示す説明図である。
同図において、画像形成装置は、循環回転が可能な支持体2と、この支持体2上に設けられ且つ支持体2の回転方向を列方向として画素単位毎に行列配置された複数の画素電極3と、を有する像保持体1と、この像保持体1の複数の画素電極3に対して画像信号に基づく潜像電位を与えることで像保持体1上に画素電極3単位の潜像を形成する潜像形成手段4と、この潜像形成手段4にて潜像電位が形成された画素電極3に対し、像保持体1との対向領域である現像領域DRにて現像剤を用いて現像する現像手段10と、を備え、潜像形成手段4は、画素電極3単位の潜像を形成するに当たり、像保持体1の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極3群に対し、像保持体1の回転方向での潜像形成の処理順を指定する指定信号及び各画素電極3に与えられる画像信号に基づく潜像電位に対応する潜像形成信号を生成する信号生成手段5と、この信号生成手段5にて生成された指定信号に基づいて対応する画素電極3群を指定対象とする指定線Lgと、信号生成手段5にて生成された潜像形成信号を対応する各画素電極3に供給する信号線Lsと、各画素電極3に対応して像保持体1に行列配置され、指定線Lg及び信号線Lsに接続されると共に指定信号及び潜像形成信号に基づいて断続に関して切り替え動作し、切り替え動作に係る通電経路中に光電変換部7を有する切替器6と、処理対象である画素電極3群を指定するときに、当該画素電極3群への潜像形成処理時又はその前に、処理対象である画素電極3群に対応する切替器6群の光電変換部7に光を照射し、潜像形成処理時における切替器6の切り替え動作時間を短縮する光照射手段9と、を備えたものである。
【0011】
ここで、画像信号とは、像保持体1での画素毎に対応した画像データの信号を意味するものであり、また、潜像形成信号とは、画素電極3に画像信号に対応する潜像電位が形成されるように画素電極3に与えられる電位信号を意味する。
【0012】
更に、支持体2は回転可能な構成であればよく、ドラム状、ベルト状いずれであっても差し支えないが、構成を簡略化するにはドラム状が好適である。また、画素電極3としては、支持体2の回転方向及び回転方向に交差する交差方向に行列配置(所謂マトリクス状に配置)されていればよく、その配置密度が形成可能な画素密度に相当する。
更にまた、切替器6は、対応する画素電極3に対して潜像形成信号の画素電極3への断続時期(潜像電位の書込時期に相当)を切り替えるもので、通常、対応する画素電極3の近くに配置され、画素電極3と同様に行列配置される。
【0013】
切替器6の光電変換部7とは、光照射により自由電子または自由正孔を発生させる(キャリアを発生させることに相当)ことが可能な部位を意味し、この光電変換部7に光照射が行われることで、光電変換部7自体のキャリア移動度が大きくなる。したがって、図1(c)のように、切替器6として例えば薄膜トランジスタを形成し、ゲート電極Gに制御電圧を作用させた状態で空乏層が小さくなる結果、チャネル層(光電変換部7に相当)を介してソース電極Sとドレイン電極Dとの間が導通する(ON状態となる)。この際、光電変換部7に光照射を行うと、チャネル層でのキャリア移動度が光照射を行わない場合に比べて増加し、結果的にソース電極Sとドレイン電極D間でのON状態に至る動作速度が光照射を行わない場合に比べて速くなる。尚、図中、符号8はゲート電極G側に設けられる絶縁部である。
【0014】
このような光電変換部7としては、薄膜トランジスタのチャネル層に設ける構成のみならず、例えばトランジスタのベース側(例えばベース抵抗)に光電変換部7を設け、これに走査信号のタイミングで光照射する構成等にも適用される。
【0015】
また、切替器6は、例えば図1(b)に示すように、像保持体1を表面から見たときに画素電極3と交差しない位置に配置されてもよいし、例えば画素電極3が光照射手段9によって照射される光が透過可能な構成であれば、画素電極3の直下(画素電極3より支持体2寄り)に配置してもよい。更には、支持体2が光照射手段9による光が透過可能な構成であり、切替器6の光電変換部7に支持体2側から光照射を可能とする構成の場合にも、画素電極3の直下に配置してもよい。
【0016】
そして、潜像形成手段4は、各画素電極3に対して画像信号に基づく潜像電位が形成されるように、像保持体1の回転方向に対する予め決められた処理順に、像保持体1の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極3群に対して画像信号に基づく潜像電位を与えるものである。ここで、「像保持体1の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極3群」とは、像保持体1の回転方向に交差する方向に並ぶ画素電極3群であり、この画素電極3群が像保持体1の回転方向に複数設けられている。尚、画素単位の画素電極3の数量は特に限定されず、例えば複数の画素電極3を一つの画素単位として扱うようにしてもよい。
【0017】
そのため、潜像形成手段4は、指定信号及び潜像形成信号を生成する信号生成手段5、切替器6、信号生成手段5からの各種信号を切替器6に供給するための指定線Lgや信号線Lsを備えたものとなっている。ここで、指定信号とは、線順次方式における走査信号を意味し、具体的には、指定線Lgに対し像保持体1の回転方向に沿った処理順に従ってON/OFF信号を供給するものである。尚、信号生成手段5による指定信号や潜像形成信号は、像保持体1の回転速度を考慮して決められることは言うまでもない。
【0018】
また、光照射手段9は、指定信号によって像保持体1の回転方向に交差する行方向に並ぶ一つの画素電極3群が処理対象として指定されたとき、潜像形成処理時又はその前に、処理対象である画素電極3群に対応する切替器6群の光電変換部7に光を照射するようになっていればよい。そのため、信号生成手段5によって潜像電位が与えられるとき(潜像が書き込まれるときに相当)の画素電極3、または、この画素電極3に潜像電位が与えられる前に、対応する切替器6の光電変換部7に光照射手段9による光照射がなされればよい。このような光照射手段9に用いられる光は、光電変換部7が活性化する波長の光を含んでいればよく、エネルギー的には波長の短い方がよいが、例えば赤外光であっても差し支えない。
【0019】
つまり、その光照射のタイミングは、潜像形成手段4によって潜像形成信号が処理対象となる画素電極3群に供給されるタイミングに合わせるようになっていればよく、まさに供給されるタイミングのとき、あるいは、それより以前であればよい。ただし、後者においては光電変換部7が光電変換された状態が維持できる程度の時間内であることは言うまでもない。そのため、光照射手段9を移動させるようにしても差し支えないが、像保持体1が回転することを考慮すると、通常、光照射手段9は固定して配置される。
【0020】
このような光照射を一定したタイミングで行う観点からすれば、光照射手段9は、現像領域DR又は現像領域DRより像保持体1の回転方向における上流側の予め決められた位置にて、光照射を行うことが好ましい。このとき、光照射位置が現像領域DRにあっても現像が完了していない状態であればよく、より好ましくは、光照射手段9が現像領域DRより像保持体1の回転方向における上流側の予め決められた位置に設けられる方がよい。これによれば、光照射から現像に至るまでの時間が一定に保たれ、画素電極3に形成された潜像電位が現像領域DRに至るまでに一定の変化に保たれる。
【0021】
また、この場合、光照射手段9は、指定信号によって像保持体1の回転方向に交差する行方向に並ぶ処理対象の画素電極3群に対応する切替器6群の光電変換部7に対して光照射することが好ましい。このように、画素電極3に対する潜像電位が形成されるそのときに光照射を行うことで、光照射によって動作速度が速められた切替器6を用いて、潜像形成信号の画素電極3への供給がなされるようになる。
【0022】
更に、一旦画素電極3に形成された潜像電位を現像領域DRまでより安定に維持する観点からすれば、処理対象である画素電極3群が現像領域DRより像保持体1の回転方向における上流側位置に設定される態様において、処理対象である画素電極3群が潜像形成処理を終了した位置と現像領域DRとの間には処理対象である画素電極3群に対応する切替器6群の光電変換部7に光が当たらないように遮光する遮光手段11を更に備えることが好ましい。このような遮光手段11としては、光照射手段9による光照射後に設ける態様の他、例えば光照射前も遮光するようにしても差し支えない。このような遮光手段11による遮光対象としては外光や光照射手段9からの光が挙げられる。
【0023】
このような遮光手段11を用いることで、潜像形成手段4による画素電極3への潜像形成処理位置は、切替器6が遮光手段11の直前にある位置であってもよいし、切替器6が遮光手段11の位置にある場合であっても差し支えないが、遮光手段11の位置にある場合には、光照射によって光電変換部7が光電変換状態であることは言うまでもない。尚、遮光手段11としては、光照射手段9による光照射がなされる方向、つまり、像保持体1の表面側に光照射手段9が設けられる態様にあっては、像保持体1の表面側に配置され、一方、像保持体1の裏面側に光照射手段9が設けられる態様にあっては、像保持体1の裏面側に配置される。また、現像装置全体が遮光される態様にあっては、遮光手段11を不要としてもよいし、光照射手段9による光照射域を明確にするためにスリット状の開口を有する遮光手段11を用いるようにしてもよい。
【0024】
このような光電変換部7への光照射は、画素電極3に対する潜像形成処理が終了したとき、つまり、画素電極3に対応する潜像電位が形成された後に行うことは避ける方がよい。光電変換部7に光照射がなされることでキャリアの発生が行われるが、この発生したキャリアが画素電極3に形成された潜像電位に影響を及ぼす虞がある。そのため、潜像形成後のキャリアの発生を防ぐ方が好適である。
【0025】
このような観点からすれば、光照射手段9による光照射を行う場合、像保持体1の回転方向に沿った光照射域内に像保持体1の回転方向に対して複数の切替器6が配置される態様では、信号生成手段5は、複数の切替器6のうち、光照射域の像保持体1の回転方向における下流側端部に位置する切替器6に対応した画素電極3が処理対象となるように、指定信号及び潜像形成信号を生成することが好ましい。
【0026】
また、光照射手段9による光照射が画素電極3の潜像電位に影響しない態様としては、信号生成手段5は、光照射手段9による像保持体1の回転方向における光照射域の下流側端部に隣接する非照射域に位置する切替器6に対応した画素電極3が処理対象となるように、指定信号及び潜像形成信号を生成するようにしてもよい。尚、この場合には、書き込み動作が光照射域から離れ過ぎた位置でなされると、光電変換部7での光電変換性能が低下し、切替器6の動作速度が速くない状態になることから、光電変換部7での光電変換性能が維持されている程度の近い距離に設けられることは言うまでもない。
【0027】
そして、複数色の画像を一つの像保持体1上で多重化させるには、現像手段10は、一つの像保持体1に対向して複数設けられ、潜像形成手段4は、隣り合って配置される二つの現像手段10のうち、像保持体1の回転方向における下流側の現像手段10の現像領域DRを含み且つ上流側の現像手段10の現像領域DRに至るまでの範囲内の予め決められた位置で、像保持体1の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極3群に対して下流側の現像手段10に対応する潜像形成信号を供給すると共に、予め決められた処理順に沿って夫々の現像手段10に対応する潜像形成信号を夫々の範囲内の予め決められた位置で該当する画素電極3群に供給するようにすればよい。この場合、現像手段10の数量は特に限定されず、いくつあっても差し支えないが、フルカラー画像を構成するには、通常、四つの現像手段10が用いられる。
【0028】
そして、光電変換部7の構成材料としては、例えば、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、テルル化カドミウム、セレン化インジウム銅、その他有機半導体など(適宜不純物を含む)が挙げられるが、切替器6の構成を簡略化する観点から、切替器6は、チャネル層を光電変換部7とした薄膜トランジスタで構成されることが好ましい。このような薄膜トランジスタとしては、通常、電界効果型トランジスタ(FET)が適用される。更に、薄膜トランジスタをある程度大きな面積で形成するには、チャネル層としてアモルファスシリコンを用いることが好ましい。尚、アモルファスシリコンであれば特に限定されず、水素添加タイプであってもよいし、水素添加タイプでなくても差し支えなく、光照射によって光電変換機能が発揮されるものであればよい。
【0029】
一方、光照射手段9としては、LEDアレイ、レーザアレイ、各種ランプ等を用いてもよいが、装置構成を小型化する観点からすれば、光照射手段9は、像保持体1の回転軸方向に沿って複数の発光ダイオードを配列したLEDアレイを用いることが好ましい。
【0030】
更に、像保持体1を小型化する観点からすれば、像保持体1の回転方向に沿った最大の画像形成領域に相当する寸法が像保持体1の一回転を超える長さに設定されていることが好ましい。このように、像保持体1の一回転の長さが最大画像より短い場合、像保持体1が一回転を超える回転を行うことで、一つの画像が形成され、画像形成領域が異なる複数の画像を形成する場合、例えば像保持体1の一回転以内で形成される画像と、一回転を超える範囲で形成される画像とを切り替えることもなされる。
【0031】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、本発明が適用された実施の形態1の画像形成装置を示す。
<画像形成装置の全体構成>
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて各色成分(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等)のトナー像が形成される像保持体20(20a〜20d)を略鉛直方向に並列配置すると共に、これらの像保持体20に対向して循環回転する中間転写ベルト50を略鉛直方向に掛け渡し、この中間転写ベルト50上で像保持体20上の各色トナー像を多重化するようにしたものである。
【0032】
本実施の形態において、像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像装置40と、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃装置62とが設けられている。更に、像保持体20と中間転写ベルト50とを挟んで対向する位置には、現像された像保持体20上のトナー像を中間転写ベルト50上に転写する転写装置63が設けられている。そして、像保持体20の回転方向における清掃装置62より下流側で現像装置40より上流側には、像保持体20に向かって光照射を行う光照射手段としてのLEDアレイ90が、像保持体20の回転軸方向に沿って複数のLEDが配列された状態で配置されている。尚、符号41は現像装置40内にて像保持体20に直接トナーを供給する現像ロールである。
【0033】
一方、中間転写ベルト50は、複数の張架ロール51〜53(本例では三個)に張架され、例えば張架ロール51を駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、張架ロール53に対し中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には二次転写装置60が設けられ、中間転写ベルト50上で多重化された多重トナー像が後述する記録材供給装置70から供給された記録材上に一括転写される。尚、二次転写装置60は張架ロール53を対向ロールとして、両者の間に予め定めた二次転写バイアスが印加されている。
【0034】
装置筐体15内の下方には、記録材を供給する記録材供給装置70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、ピックアップロール72及び捌き機構73にて一枚毎に鉛直方向に延びる記録材搬送路74に向かって供給される。記録材供給装置70から記録材搬送路74に供給された記録材は、記録材搬送路74の下流側に設けられた位置合わせロール75にて一旦位置合わせされた後、予め定めたタイミングで下流側の二次転写装置60に向かって搬送される。その後、二次転写装置60による二次転写部位にて中間転写ベルト50上の多重トナー像が記録材上に一括転写され、トナー像が一括転写された記録材は定着装置76にて定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出される。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)78や図示外の搬送案内部材等が適宜設けられている。
【0035】
<像保持体>
次に、本実施の形態で用いられる像保持体20について説明する。
本実施の形態の像保持体20は、図3に示すように、多数の画素電極34等が行列配置された(所謂マトリクス状に配置)マトリクスパネル30を、所謂薄膜製造プロセスを用いて形成し、その後、循環回転が可能な支持体である剛体ドラム21上に巻き付けて固着したものである。
【0036】
マトリクスパネル30は、画素電極34を行列配置すると共に、これらの画素電極34夫々に対して画像信号に基づく潜像が形成されるように前記画像信号に基づく潜像形成信号の各画素電極34への供給時期が切り替え可能な切替器としての薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を行列配置する他、コンデンサや配線パターンを形成した構成のものとなっている。尚、画素電極34の周辺構造についてはTFT共々後に詳述する。
【0037】
そして、本実施の形態の像保持体20は、マトリクスパネル30のうち剛体ドラム21の回転軸方向における両端部側に、潜像形成信号をTFTに供給するためのデータ用ドライバ31や、剛体ドラム21の回転軸方向に並ぶ画素電極34群に対し、剛体ドラム21の回転方向での潜像形成の処理順を走査する指定信号としての走査信号をTFTに供給するための走査用ドライバ32が、例えばTAB(Tape Automated Bonding)方式やTCP(Tape Carrier Package)方式等の実装方式を用いて、予め決められた位置に搭載されている。
【0038】
このような高密度での実装を実現するには、例えばTABやTCPにはんだバンプを設け、このはんだバンプをマトリクスパネル30側の接続点にはんだ接続するようにしてもよいし、例えば異方導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介在させて、加熱加圧することで、ACFの厚み方向にのみ導通を図る方式などを適用してもよい。更には、その他の公知の方式を採用しても差し支えない。また、本例では、データ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を剛体ドラム21の回転軸方向の夫々異なる端部側に配置する態様を示したが、いずれか一方に両者を配置するようにしてもよい。
【0039】
本実施の形態の像保持体20には、剛体ドラム21の両側面側を塞ぐ側板22が設けられている。この側板22には一部切欠部22aが設けられ、この切欠部22aを通して、マトリクスパネル30に搭載されたデータ用ドライバ31や走査用ドライバ32から、剛体ドラム21の内側に設けられたリジッド板301に実装された後述する潜像形成手段としての潜像形成装置100の一要素である信号生成部101へと繋がる配線パターンを形成する配線部材302,303が設けられている。そのため、データ用ドライバ31や走査用ドライバ32は、配線部材302,303を介して信号生成部101と接続される。
【0040】
更に、側板22の中央部で剛体ドラム21の軸中心部には例えばスリップリング23が設けられ、このスリップリング23を介して信号生成部101と外部との配線接続がなされる。そして、スリップリング23より外方にはスリップリング23からの配線が引き出され、これらの配線からの信号によってスリップリング23、信号生成部101を介してマトリクスパネル30側に信号が伝達される。
【0041】
−回転駆動方式−
像保持体20の回転駆動方式は、図示外の駆動源(例えば駆動モータ)からの駆動力を伝達する駆動伝達機構を介して剛体ドラム21に回転力が伝達されるようになっていればよい。また、この駆動伝達機構の方式は、特に限定されず、例えば剛体ドラム21の周面の回転軸方向における端部側を他の回転ロールに圧接させて回転駆動させるようにしてもよいし、スリップリング23を覆うように大きい径のスリーブを側板22に設け、このスリーブを回転軸として回転させるようにしても差し支えなく、公知の方式を適宜選定すればよい。
【0042】
−画素電極の周辺構造−
次に、マトリクスパネル30の画素電極34を含む周辺構造について説明する。
本実施の形態において、画素電極34の周辺構造の基本的構成は、図4(a)〜(c)に示すようになっている。画素単位毎に設けられた画素電極34が行列配置されており、各画素電極34は、所謂アクティブマトリクス方式に構成され、切替器(スイッチング素子)としてTFT(Thin Film Transistor)33を用い、このTFT33に対してコンデンサ35及びこれらを結ぶ配線、すなわち、剛体ドラム21(図3参照)の回転方向に並ぶTFT33のソース電極Sが互いに接続されている信号線Lsと、夫々の信号線Lsとデータ用ドライバ31(図3参照)とが接続される信号伝達線Ldと、剛体ドラム21の回転軸方向に並ぶTFT33のゲート電極Gが互いに接続されると共に走査用ドライバ32(図3参照)に接続される指定線としての走査線Lgと、を有している。
【0043】
ここで、信号線Lsは、像保持体20の回転軸方向に並ぶ画素電極34の夫々に対して後述する潜像形成信号を供給するものであり、走査線Lgは、像保持体20の回転軸方向に並ぶ画素電極34群に対して走査信号を供給するものである。
【0044】
図5(a)はマトリクスパネル30の部分断面を示すもので、画素電極34とTFT33との関係を示している。本実施の形態では、マトリクスパネル30を表面側からみたときに、TFT33は画素電極34と交差しない位置に配置されている。また、マトリクスパネル30の基材30a上に設けられた走査線LgにはTFT33のゲート電極Gが接続され、TFT33のソース電極Sは信号線Lsに接続されている。更に、TFT33のドレイン電極Dは画素電極34とコンデンサ35に並列接続され、コンデンサ35の他方の電極は、走査線Lgと略平行に配置された線(図示せず)に接続されている。更にまた、画素電極34を覆うように表面には、絶縁性の保護膜36が形成されている。
【0045】
このような構成は、例えば薄膜製造技術によって形成されるが、形成される順番等は特に限定されず、図のような構成がなされる方式であればよい。
特に、TFT33は、図5(b)に示すように、ゲート電極Gの上に例えば酸化シリコン膜を形成したゲート絶縁膜33aと、この上に例えばアモルファスシリコン(a−Si)膜で形成されたチャネル層33bと、このチャネル層33bの表面に予め定めた間隔で配置した二つの電極、ソース電極S及びドレイン電極Dとで構成されている。それ故、本実施の形態では、TFT33のチャネル層33bが光電変換特性を有する光電変換部となっている。
【0046】
本実施の形態では、TFT33を画素電極34とは交差しない位置に配置するようにしているが、マトリクスパネル30における画素電極34の面積を大きく確保するには、画素電極34を透光性の材料(例えば透明電極)で構成し、画素電極34より剛体ドラム21表面に近い側にTFT33を設けるようにしてもよい。
【0047】
本実施の形態の像保持体20は、このように各画素電極34がマトリクス状に多数並べられたマトリクスパネル30を用いているため、その駆動方式は次のようになる。
図6は、本実施の形態における潜像形成装置100の一要素である信号生成部101による制御方式を示す模式図である。データライン及び走査ライン毎に予め決められた数の画素がまとめられ、データライン毎にTFT33のソース電極Sが接続された信号線Lsは、夫々の信号線Lsに接続された信号伝達線Ldを介してデータ用ドライバ31へ接続される。一方、走査ライン毎にTFT33のゲート電極Gが接続された走査線Lgは夫々走査用ドライバ32に接続される。また、データ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、信号生成部101によって制御される。そのため、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が予め決められたタイミングで駆動されることで、所望の画素電極34に画像信号に基づく潜像形成信号が供給され、潜像電位が形成される。
【0048】
また、コンデンサ35の二つの電極のうち、TFT33に接続された側と異なる側の電極は、例えば隣り合う走査線Lgに接続されていてもよいし、走査線Lgを接地したり、予め決められた基準電圧を有する電源に接続してもよい。
【0049】
ここで、データ用ドライバ31としては、例えばサンプルホールド付きのシフトレジスタ、ラッチ、バッファ等で構成され、走査用ドライバ32としては、例えばカウンタ、ラッチ、バッファ等で構成されている。尚、図6では画素電極34は省略しているが、図4(c)に示すように、TFT33のドレイン電極Dとコンデンサ35との間に画素電極34が接続されていることは言うまでもない。
【0050】
−潜像形成装置−
本実施の形態の潜像形成装置100は、図7に示すように、画像信号や基準信号に基づいて、画素電極34に画像信号に基づく潜像電位が形成されるように、TFT33の動作やLEDアレイ90の点灯動作を制御している。
【0051】
信号生成部101は、行列配置された画素電極34を走査するための走査信号及びこの走査信号に合わせて各画素電極34に対応する潜像形成信号を生成するもので、画素電極34での潜像電位の基となる画像信号、マトリクスパネル30に対する潜像形成の開始タイミング等を決める基準信号等を入力とし、次のように構成される。画像信号からの画像データを記憶するメモリ部102、メモリ部102からの画像データを階調変換する階調変換部103、この階調変換部103にて階調変換された情報に基づいて該当する画素電極34に書き込まれる各種潜像電位を供給するための潜像電位用電源部104、基準信号に基づいて各種のタイミングを設定するタイミング設定部105等を有している。
【0052】
そのため、信号生成部101からの潜像形成信号がデータ用ドライバ31に伝達され、一方、走査用ドライバ32には走査信号が伝達されることで、予め定めたタイミングで走査対象とされた走査ラインに配列された夫々の画素電極34に対し、夫々のデータラインを用いて画像信号に基づいた潜像電位がTFT33の切り替え動作によって形成される。このような各種タイミングの設定は、像保持体20の回転速度を考慮して決めていることは言うまでもなく、例えば像保持体20の回転速度に対して、走査速度は、これと等速で反対方向に行うようにしている。結果的に、プロセス速度(像保持体20の回転速度に関連する速度)に合わせて走査速度を決定し、画素電極34に対する潜像形成処理位置(書込位置に相当)が相対的に一定の位置になるようにしている。
【0053】
また、信号生成部101のタイミング設定部105によって光照射部110が制御されることで、潜像形成処理位置に対応する走査ラインに合わせてLEDアレイ90の点灯がなされるようになっている。本実施の形態の潜像形成装置100では、光照射部110によるLEDアレイ90の点灯制御を行うようにしているが、LEDアレイ90の点灯は、画像形成時には必要となるため、例えば信号生成部101とは無関係に、画像形成装置の稼働時には常に点灯させるようにする方がよい。尚、画像形成時において、例えば画像がない部分でLEDアレイ90を消灯させるという制御を行うようにしてもよいことは言うまでもない。また、光照射部110を信号生成部101内に設けるようにしても差し支えない。
【0054】
<現像装置>
−現像装置の構成例−
本実施の形態における現像装置40は、図8に示すように、導電性トナー(以降適宜トナーと略す)が収容される現像容器40aを有し、この現像容器40aには像保持体20に対向して現像用開口40bが開設されると共に、この現像用開口40bに面して像保持体20と離れて配置され且つ対向部位で互いに異なる方向に回転する現像ロール41が設けられ、像保持体20と現像ロール41とが対向する部位のうちトナーによって現像可能な現像領域DRにて像保持体20上に形成された潜像を現像し可視像化する。
【0055】
また、現像容器40a内には、現像ロール41に対向する位置に、トナーを現像ロール41に供給する供給ロール42を備え、この供給ロール42より現像ロール41の回転方向下流側で現像領域DRとの間には、現像ロール41上のトナーに電荷注入を行う電荷注入ロール43が備えられている。更に、供給ロール42には、この供給ロール42上のトナーの層厚を規制する層規制ブレード44が設けられ、供給ロール42上のトナーの層厚を略均一な厚さにする。更にまた、供給ロール42の奥側には、供給ロール42にトナーを攪拌しながら供給するアジテータ45が設けられている。
【0056】
そして、現像ロール41にはバイアス電源46からの現像バイアスが印加される一方、供給ロール42と現像ロール41とが同電位になっている。また、電荷注入ロール43にはバイアス電源47が接続され、現像バイアスより大きい電荷注入バイアスが電荷注入ロール43に印加される。それ故、像保持体20と現像ロール41との間には現像電界が作用し、現像ロール41と電荷注入ロール43との間には電荷注入電界が作用する。
【0057】
本実施の形態において、現像ロール41は、例えば表面をアルマイト処理したアルミニウム合金製のロール部材で構成される。また、電荷注入ロール43は、サンドブラスト法や化学エッチング法等により表面に小さく均一な凹凸面が形成されたアルミニウム合金製のロール部材で構成される。そして、現像ロール41と電荷注入ロール43とは軽く接触又は微小間隙をもって支持される。更に、層規制ブレード44は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレス製の板ばねにシリコーンゴムやEPDMゴムを接着剤等により固着し、その一端は供給ロール42の表面に軽く接触させ、他端は現像容器40aの一部に支持される。
【0058】
そして、本実施の形態のLEDアレイ90は現像領域DRに至る前の像保持体20に対向して配置されると共に、このLEDアレイ90に合わせて、像保持体20の表面には、像保持体20と離間した位置に、像保持体20の回転軸方向に延びるスリット状の開口91aが開いた遮光手段としての遮光部材91が設けられている。そのため、この遮光部材91の開口91aを介してLEDアレイ90からの光照射がなされる。
【0059】
−導電性トナーの構成例−
また、本実施の形態で用いられる導電性トナーは、例えば図9(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)81を有し、この導電性コア81の周囲を絶縁性被覆層(例えば絶縁性樹脂層)82で被覆すると共に、導電性コア81の一部が露出するように絶縁性被覆層82に適宜数の凹部83を設けたものが用いられる。導電性トナーは、重合法や各種公知のカプセル化技術等で作製することができる。この時、導電性コア81は、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等に導電性カーボンやITO等の透明導電粉などの導電剤を分散させたり、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等からなる粒子表面を前記導電剤にて被覆することによって、作製される。
【0060】
このような態様の導電性トナーは、高電界が印加されると低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界の大きさについては、トナーの主として凹部83の占有割合、あるいは、絶縁性被覆層82の厚さなどに依存する。このメカニズムについては、次のように推測される。つまり、導電性コア81が絶縁性被覆層82にて被覆されているため、導電性コア81自体がコア同士接触することや直接電極部材等に接触することが殆どなく、絶縁性被覆層82を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が印加された時、トンネル効果等により導通することによる。
【0061】
また、導電性トナーの他の態様としては、例えば図9(b)に示すように、導電性コア81を絶縁性若しくは半導電性の被覆層84にて被覆し、被覆層84の厚さhを適宜調整することにより、トナーの抵抗を調整可能としたものが挙げられる。このとき、半導電性の被覆層84については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。そして、導電性コア81としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面の近くに導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0062】
このような構成におけるLEDアレイ90による光照射作用について図10の模式図を用いて説明する。
今、図10(a)に示すように、ゲート電極Gに予め定めたプラス電圧が印加されると、ゲート絶縁膜33aを介して、チャネル層33bではキャリアである自由電子がゲート電極G側に吸引され集まってくる。ただし、絶縁層を通り抜けることはできない。こうしてn型のチャネル層33bができあがる。このチャネル層33bができあがることによって、電子はソース電極S側からドレイン電極D側に移動することができる。こうしてTFT33を電流が流れ、導通(ON状態)となる。
【0063】
次に、(b)のように、ゲート電極Gに例えばゼロ電圧を印加すると、チャネル層33bでの自由電子がチャネル層33b中に広がり、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間では高抵抗状態が保たれる。そのため、ソース電極Sとドレイン電極Dの間は高抵抗に保たれ、不導通(OFF状態)となる。
【0064】
更に、(a)の段階でチャネル層33bに光照射を行えば、(c)に示すように、光照射による自由電子の発生により、チャネル層33b内では(a)よりも多くの自由電子が存在することとなり、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の抵抗は大きく低下する。そのため、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間でのキャリア移動度が増加し、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間でのスイッチング速度が上昇する結果となる。
【0065】
近年の画像形成装置に対する高密度化、高速化の要求は大きく、これにつれて、画素密度が向上し、潜像形成装置100での単位時間当たりに走査すべき走査ライン数は増加の一途を辿っている。このような状況下において、画素電極34を充電するため(コンデンサ35の容量等も含む)の充電時定数に着目すると、このような充電時定数は、TFT33のON抵抗と、現像領域等による負荷容量の積で表され、潜像形成信号と同様(約99%)の安定電位にまで充電させるには、充電時定数の約5倍の時間の間、TFT33をON状態にしておく必要がある。
【0066】
一方、TFT33をON状態に維持できる時間は、一走査ラインを走査している時間にほぼ等価であるため、プロセススピードと画素密度の積の逆数になる。したがって、高密度化、高速化になるほど、充電時定数を小さくする必要が生じる。
充電時定数を小さくするには、TFT33のON抵抗を小さくすることが必要となる。TFT33のON抵抗は、キャリア移動度と物理的な大きさ(例えば図10(a)のソース電極Sとドレイン電極Dとの間の奥行き長さに相当する)との積に反比例するが、大きさは画素密度に制限されるため大きくできない。一方、キャリア移動度は、p型シリコンや酸化物半導体を用いたTFTなど高い移動度を有する材料が実用化され始めているが、これらの材料ではある程度大きな面積のものが製造し難く、また、製造コストも高くつくなどの弱点がある。
【0067】
本実施の形態では、TFT33のチャネル層33bにa−Siを用い、光電変換機能をもたせることで、光照射によってチャネル層33bの移動度が高まっている状態でTFT33を走査対象となるようにしている(TFT33がON状態となる)ので、キャリア移動度が光照射されない場合よりも大きくなり、TFT33自体の動作速度が速くなる。
【0068】
また、画素電極34での潜像電位の変化に着目すると、通常、画素電極34に潜像形成信号を供給した後、つまり、画素電極34に潜像電位が形成された後には、TFT33の特性にもよるが画素電極34における潜像電位は緩やかに減衰する。本実施の形態では、潜像形成装置100による潜像形成処理位置にある走査ラインは、像保持体20の回転方向における現像領域DRより上流側の一定位置となるため、この潜像形成処理位置(潜像電位を画素電極34に書き込む書込位置に相当する)から現像領域に達するまでに要する経過時間が、一枚の画像形成領域内においては常に一定となるため、現像領域での潜像電位が画素電極34の位置に依らず、一様の減衰傾向となり、画素電極34での潜像電位の均一性が確保される。
【0069】
更に、本実施の形態では、遮光部材91を用いて、LEDアレイ90によって光照射されたTFT33に対し、光照射後の余分の光が当たらないようになっているため、チャネル層33bでの余分のキャリア発生がなく、現像に至るまでに画素電極34の潜像電位に与える影響も抑えられる。仮に、TFT33がOFF状態からON状態に切り替わった後にも、光照射が行われると、TFT33のOFF抵抗が十分に大きくならないため、潜像電位の減衰が速くなる。
【0070】
図11は、本実施の形態におけるLEDアレイ90による光照射に対し、潜像形成装置100での画素電極34への好適な潜像形成処理位置を模式化したものである。
同図において、像保持体20が回転することで、マトリクスパネル30中の画素電極34やTFT33にはLEDアレイ90からの光が遮光部材91の開口91aを通して照射される。本実施の形態では、遮光部材91の開口91aが複数の画素電極34に跨がる大きさで開いているものを想定すると、複数の画素電極34に対応する複数のTFT33に光照射がなされる。
【0071】
このような場合、潜像形成装置100による画素電極34への潜像形成処理位置(以下書込位置と称す)は、画素電極34に対応するTFT33が光照射を受けている期間中で、遮光部材91の開口91aによる光照射域の最後の位置、つまり、図中開口91aの右側の位置とすることがよい。この場合、光照射によって見かけ上の動作速度が速くなっているTFT33に対し、潜像形成信号の書き込み処理が行われるため、速やかに画素電極34の潜像電位が画像信号に基づく潜像形成信号と同等の値になる。ここでは、画素電極34に潜像電位が書き込まれた後には、遮光部材91によって対応するTFT33に光照射が行われないため、一旦書き込まれた潜像電位はそのまま安定に持続される。したがって、現像後の画像品質も向上する結果となる。
【0072】
ここで、仮に、潜像形成装置100での書込位置が、図中開口91aによる光照射域の左側部分となると、一旦画素電極34に書き込まれた潜像電位は、画素電極34に対応するTFT33に光照射が継続するため、TFT33のソース電極Sとドレイン電極Dとの間の抵抗が低くなり、その分、潜像電位の値も変化し易くなり、結果的に一旦書き込まれた潜像電位が変化する虞がある。したがって、潜像形成装置100での書込位置は遮光部材91の開口91aによる光照射域のうち、後ろ側とする方がよい。
【0073】
また、光照射によってTFT33のチャネル層33bでキャリアが増加している期間は光照射が中止された後にも短時間継続するため、この期間内に潜像形成装置100による書込位置を持ってくるようにしてもよい。つまり、本実施の形態では、LEDアレイ90による光照射と、潜像形成装置100による書き込みとが略同様の位置で行われる態様を示したが、必ずしも同様の位置で行われる必要はなく、LEDアレイ90による光照射により発生したキャリアは、短時間ではあるが持続することから、潜像形成装置100による書込位置の直前にLEDアレイ90による光照射を行うようにしても差し支えない。
【0074】
また、遮光部材91としては、開口91aを設ける構成を示したが、開口91aは光が透過できるものであればよいため、例えば遮光部材91を、透光性の部材、例えばガラスやアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いて、遮光部分には、光を遮光する部材を塗布した構成のものとしてもよい。更に、光照射を行う場合、LEDアレイ90の代わりに、レーザアレイ等の照射幅(像保持体20の回転方向に沿う長さ)の狭い光源を用いるようにすれば、遮光部材91を使用しなくてもよい。
【0075】
そして、本実施の形態では、マトリクスパネル30を剛体ドラム21に固着する方式を示したが、剛体ドラム21上に直接TFT33や画素電極34を形成するようにしても差し支えない。剛体ドラム21を、例えばアルミニウム合金等の導電体を用いた場合、マトリクスパネル30としては、導電体の表面に絶縁被膜を物理的あるいは化学的方法で形成し、その上にTFT33や画素電極34等を形成するようにすればよい。
【0076】
本実施の形態では、画像形成装置として、図2に示すカラー画像形成装置を示したが、像保持体20としてはカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置に適用しても差し支えない。また、現像装置40としては図8の構成を示したが、像保持体20上の画素電極34による潜像を現像できるものであれば公知の現像装置が適用される。
【0077】
◎実施の形態2
図12(a)は、実施の形態2の画像形成装置の概要を示すもので、(b)は(a)のマトリクスパネル30の部分断面を示す。本実施の形態の画像形成装置はモノクロ用画像形成装置の構成を示すものであり、実施の形態1の画像形成装置とは、LEDアレイ90の位置が異なっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0078】
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、像保持体20の支持体である剛体ドラム21が、例えばガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる透光性の構成となっている。マトリクスパネル30は剛体ドラム21の外周側に設けられる一方、LEDアレイ90は剛体ドラム21の内側に配置されている。また、剛体ドラム21の内側には、LEDアレイ90からの光をスリット状の開口91aで遮光する遮光部材91が設けられている。
【0079】
このような構成において、像保持体20の周囲には、LEDアレイ90による光照射域に対向する位置を走査ラインに対する書込位置、つまり、画素電極34への潜像形成信号の書込位置とするように潜像形成装置100が設けられている。また、像保持体20の周りには、潜像が形成された画素電極34を現像する現像装置40(符号41は現像装置40に設けられた現像ロールである)、現像装置40にて現像された像保持体20上のトナー像を図示外の供給装置から供給された記録材P上に転写する転写装置63、転写後の像保持体20を清掃する清掃装置62等が設けられている。尚、転写装置63にて画像が転写された記録材Pは、図示外の定着装置にて定着され、排出される。
【0080】
このような構成の画像形成装置におけるマトリクスパネル30の部分断面は、(b)のようになっている。剛体ドラム21に貼り付けられるマトリクスパネル30の基材30aは、例えばポリエステル樹脂等の透光性の材質のものが適用され、それと共に、TFT33のゲート電極Gには例えばITO等の透明電極が用いられている。更に、ゲート絶縁膜33aには例えば酸化シリコン等の透光性素材を用いることで、剛体ドラム21の内側からの光は、TFT33のチャネル層33bに十分到達できるようになっている。
【0081】
このような構成において、LEDアレイ90によって照射された光は、遮光部材91の開口91aから剛体ドラム21を透過し、更に、基材30a、ゲート電極G及びゲート絶縁膜33aをも透過して、チャネル層33bに到達する。そのため、実施の形態1と同様に、光照射されたTFT33は動作速度が光照射されない場合に比べて速くなる。それ故、画素密度が高い場合にも十分適用される。
【0082】
本実施の形態では、モノクロ用の画像形成装置を示したが、カラー用の画像形成装置に適用してもよいことは言うまでもない。また、本実施の形態の像保持体20の周長を最大の画像形成領域に相当する寸法より短くし、画像形成時に像保持体20を一回転以上させて画像形成を行うようにしてもよい。この場合、像保持体20の直径はより小さくでき、その分、画像形成装置としての小型化がなされる。
【0083】
◎実施の形態3
図13は、実施の形態3の画像形成装置の概要を示すもので、実施の形態1の画像形成装置(図2参照)と異なり、一つの像保持体20の周囲に複数(本例では四つ)の現像装置400(400a〜400d)が備えられたものとなっている。また、本実施の形態の画像形成装置では、実施の形態2の像保持体20(図12参照)と同様に、像保持体20は、透光性の剛体ドラム21上にマトリクスパネル30を固着させたもので、四つのLEDアレイ90(90A〜90D)は剛体ドラム21の中に配置され、更に、LEDアレイ90に合わせて四つの遮光部材91(91A〜91D)が設けられている。
【0084】
本実施の形態の像保持体20は実施の形態1と略同様に構成されているが、マトリクスパネル30が透光性基材(図示せず)を使用していること、画素電極34に対応して配置されるTFT(図示せず)がゲート電極Gに透光性の電極を用いている点が異なる。
【0085】
像保持体20の周囲には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した現像装置400(400a〜400d)が配置されており、像保持体20に形成された各色に対応する潜像を各現像装置400で夫々現像することで、像保持体20上には多重化されたトナー像が形成される。更に、像保持体20の周囲には、現像装置400dと現像装置400aとの間に像保持体20上に形成された多重化トナー像を記録材P上に転写する転写装置420が設けられ、更に、この転写装置420と現像装置400aとの間には清掃装置200が設けられている。
【0086】
本実施の形態における現像装置400としては、実施の形態1のように導電性トナーを使用するタイプの現像装置40(例えば図8参照)を用いるようにしてもよいし、通常の摩擦帯電型トナーを使用するタイプの現像装置を用いるようにしてもよい。尚、現像装置400の種類や順番などは適宜選定すればよい。
【0087】
このような構成の画像形成装置における潜像形成工程や現像工程について説明する。
今、図13のように、LEDアレイ90(90A〜90D)による光照射がなされている位置(夫々の光照射域)に対応した画素電極34側の位置を、夫々の走査ラインに対する書込位置Pa〜Pdで表す。これらの書込位置Pa〜Pdでは光照射された状態で、画素電極34への潜像形成信号の供給がなされる。
【0088】
このような態様において、夫々の書込位置Pa〜Pdでは夫々対応する現像装置400の現像領域に対する書き込みがなされる。先ず、一つの走査ラインが書込位置Paに達したタイミングで、像保持体20のこの走査ラインである走査線に対してON電圧を加え、TFT33(図示せず)をONする。また、このタイミングに合わせて、現像装置400aに対応する例えばイエローの画像信号に応じた潜像形成信号を夫々のデータラインである信号線に供給することで、一つの走査ライン上の画素電極34に対しイエローの画像信号に応じた潜像電位が形成される。
【0089】
次に、書込位置Pbにある走査ラインに対して、同様の操作を行い、例えばマゼンタの画像信号に応じた潜像電位が形成される。更に、書込位置Pc及び書込位置Pdを順次同様に操作することで、例えばシアンやブラックの走査ラインでの潜像電位が夫々形成される。そして、このような操作を順次繰り返した後、もう一度書込位置Paに戻り、同様の操作を繰り返す。
【0090】
一方、現像装置400では、現像領域にて夫々の書込位置Pa〜Pdで潜像電位が形成された画素電極34に対して各色のトナーによる現像がなされる。尚、一枚目の潜像電位の書き込みは、例えば書込位置Paで選択された走査ラインが書込位置Pbに達するまでは、非画像部(背景部)となる潜像形成信号を各信号線に加えるようにすればよい。また、このことを、書込位置PcやPdにて同様に行うことで、最後の現像装置400dを通過した像保持体20上には多重化されたトナー像が形成される。つまり、時分割駆動により夫々の現像装置400a〜400dに対応する潜像電位を夫々の書込位置Pa〜Pdにて順次書き込み、書き込まれた潜像電位に応じて現像装置400にて現像することで、像保持体20上には各色トナー像が順次多重化される。そして、この多重化されたトナー像が転写装置420にて記録材P上に転写される。
【0091】
図14(a)は、これらをわかり易くするために、像保持体20を直線状に示したものである。同図において、画素電極34は図中矢印で示す方向(図中右方向)に移動し、Pa〜Pdが書込位置となっている。また、LEDアレイ90A〜90Dは、遮光部材91A〜91Dを介して夫々の位置で画素電極34に向かって光照射されている。尚、ここでは、光照射はTFT33(図示せず)になされることで効果を発揮するが、ここではわかり易くするために、画素電極34のみを示している。
【0092】
図14(b)〜(f)は、画素電極34(G1〜G8)の動きに合わせて書込位置Pa〜Pdでの書込タイミングを示している。先ず、(b)のように、書込位置Paにおいて画素電極G1に書き込みがなされる。次に、(c)のように、書込位置Pbにおいて画素電極G2に書き込みがなされ、(d)では、書込位置Pcにおいて画素電極G3に書き込みがなされる。更に、(e)では、書込位置Pdにおいて画素電極G4に書き込みがなされる。更に、(f)では、初めに戻って書込位置Paにおいて画素電極G5に書き込みがなされる。
【0093】
つまり、一つの画素電極34(例えばG1)に対して書込位置(例えば書込位置Pa)で書き込みを行った後に、像保持体20の回転方向における上流側に隣り合う画素電極34(G5)が同じ書込位置Paに来たときに、この画素電極34に書き込みがなされるように、その間に他の書込位置(Pb〜Pd)での書き込みを終える必要がある。そのため、本実施の形態では、一つの像保持体20に一つの現像装置を対応させる方式に比べて、より短時間に書き込みを終える必要がある。
【0094】
これにより、例えば一つの画素電極G1に着目すると、書込位置Paで書き込まれた潜像電位に対して、現像装置400a(図13参照)で現像がなされ、順次、書込位置Pb〜Pdでの書き込み、現像装置400b〜400d(図13参照)での現像がなされることで、像保持体20上の画素電極G1上には、四つの現像装置400による多重化されたトナー像が形成される。このとき、トナーの重なりの多い部分の画素電極34の潜像電位は重なりの少ない部分の画素電極34より潜像電位が大きくなっており、その分、一つの画素電極34上で多色のトナーを吸引できるようになっていることは言うまでもない。
【0095】
本実施の形態では、夫々の書込位置Pa〜Pdにおいて、LEDアレイ90A〜90Dによる光照射を行うことで、TFT33(図示せず)の動作速度が光照射を行わない場合に比べて速くなり、より短時間に書き込みが終わる。
【0096】
本実施の形態のように、像保持体20上で形成した各色トナー像をそのまま像保持体20上で多重化する方式は、複数の像保持体20上で各色トナー像を形成し、夫々の像保持体20から転写されたトナー像を多重化する方式のものに比べ、構成部品自体が少なくなり、結果的に装置の小型化や低コスト化にとっても有利なものとなる。
【0097】
本実施の形態では、LEDアレイ90(90A〜90D)を像保持体20の内側に配置する態様を示したが、像保持体20の外側に配置するようにしてもよい。尚、この場合、遮光部材91を像保持体20の外側に設けたり、剛体ドラム21やゲート電極Gの透光性を不要とすることは言うまでもない。
【実施例】
【0098】
本実施例は、TFTの充電時定数とプロセススピードとの関係について調査したものである。TFTは、ゲート絶縁膜をSiO2、チャネル層をa−Si(アモルファスシリコン)とし、ソース電極とドレイン電極との間は間隔Lが5μm、幅Wが5μmとした。また、コンデンサとしては、容量1pFとした。
【0099】
図15は、上述のTFTを用いた場合の動作特性をシミュレーションにて求めた結果を示すグラフである。ここで、横軸は時間(Time)、縦軸はソース電圧(データ電圧に相当するもの)をVとしたときのドレイン電圧の割合を示している。
同図において、ドレイン電圧は、時間経過につれて急激に増加し、約2/3の63.2%になる時間は10μsであった。この値を充電時定数τとすると、ドレイン電圧はこれを境に増加傾向が緩和され、充電時定数の2倍の2τでは86.5%、3倍の3τでは95.0%、5倍の5τでは99.3%となった。
【0100】
このような充電時定数τは、TFTのON抵抗と負荷容量の積で表され、画素電極の潜像電位がデータ電圧と同等の安定な電位になるまで充電されるには、充電時定数τの5倍の時間(5τ)の間、TFTをON状態に保つ必要がある。一方、TFTをON状態にできる時間は、一ライン(像保持体の回転軸方向に並ぶ一群の画素電極)を走査している時間にほぼ等価となる。
つまり、像保持体の回転方向に対して現像領域より上流側の一定の位置で常に走査するには、走査速度を像保持体の回転速度に対し、逆方向で且つ等速度で走査させればよく、この場合、走査時間はプロセススピードと画素密度の積の逆数となる。
【0101】
それ故、像保持体の画素密度を高密度にし、更に、像保持体を高速動作させるには、充電時定数を小さくする必要がある。
図16は、画素密度、プロセススピード及び必要な充電時定数の関係をグラフにしたもので、例えば1200dpiの画素密度で600mm/sのプロセススピードを実現しようとすれば、必要な充電時定数は約7μsとなる。また、2400dpiの画素密度で400mm/sのプロセススピードを実現しようとすれば、必要な充電時定数は約5μsとなる。
【0102】
しかしながら、a−Siを用いたTFTでは、図15にも示したように、充電時定数が10μs程度のため、これを用いた場合には、1200dpiの画素密度では、約400mm/s以下のプロセススピードが可能であり、また、2400dpiの画素密度の場合には約200mm/s以下のプロセススピードが可能となる。したがって、例えば400〜600mm/s程度の高い印刷速度を要する印刷市場には、適用困難となっていた。
【0103】
これに対し、TFTに対し光照射を行うことで、チャネル層でのキャリア移動度が2〜3倍以上になり、見かけ上のTFTの充電時定数が通常の10μsから5μs以下に低下することが確認された。それ故、光照射しない場合に比べて、より高密度化、高速化される印刷に対応されるようになる。
【符号の説明】
【0104】
1…像保持体,2…支持体,3…画素電極,4…潜像形成手段,5…信号生成手段,6…切替器,7…光電変換部,8…絶縁部,9…光照射手段,10…現像手段,11…遮光手段,DR…現像領域,Lg…指定線,Ls…信号線,S…ソース電極,G…ゲート電極,D…ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環回転が可能な支持体と、この支持体上に設けられ且つ当該支持体の回転方向を列方向として画素単位毎に行列配置された複数の画素電極と、を有する像保持体と、
この像保持体の複数の画素電極に対して画像信号に基づく潜像電位を与えることで像保持体上に画素電極単位の潜像を形成する潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて潜像電位が形成された画素電極に対し、像保持体との対向領域である現像領域にて現像剤を用いて現像する現像手段と、を備え、
前記潜像形成手段は、
前記画素電極単位の潜像を形成するに当たり、像保持体の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極群に対し、像保持体の回転方向での潜像形成の処理順を指定する指定信号及び各画素電極に与えられる画像信号に基づく潜像電位に対応する潜像形成信号を生成する信号生成手段と、
この信号生成手段にて生成された指定信号に基づいて対応する画素電極群を指定対象とする指定線と、
前記信号生成手段にて生成された潜像形成信号を対応する各画素電極に供給する信号線と、
前記各画素電極に対応して像保持体に行列配置され、前記指定線及び前記信号線に接続されると共に前記指定信号及び前記潜像形成信号に基づいて断続に関して切り替え動作し、切り替え動作に係る通電経路中に光電変換部を有する切替器と、
処理対象である画素電極群を指定するときに、当該画素電極群への潜像形成処理時又はその前に、処理対象である画素電極群に対応する切替器群の光電変換部に光を照射し、潜像形成処理時における切替器の切り替え動作時間を短縮する光照射手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記光照射手段は、前記現像領域又は当該現像領域より像保持体の回転方向における上流側の予め決められた位置にて、光照射を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置のうち前記処理対象である画素電極群が前記現像領域より像保持体の回転方向における上流側位置に設定される態様において、
前記処理対象である画素電極群が潜像形成処理を終了した位置と前記現像領域との間には前記処理対象である画素電極群に対応する切替器群の光電変換部に光が当たらないように遮光する遮光手段を更に備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置のうち前記光照射手段による像保持体の回転方向に沿った光照射域内に像保持体の回転方向に対して複数の切替器が配置される態様において、
前記信号生成手段は、前記複数の切替器のうち、前記光照射域の像保持体の回転方向における下流側端部に位置する切替器に対応した画素電極が前記処理対象となるように、前記指定信号及び前記潜像形成信号を生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記現像手段は、一つの像保持体に対向して複数設けられ、
前記潜像形成手段は、隣り合って配置される二つの現像手段のうち、像保持体の回転方向における下流側の現像手段の現像領域を含み且つ上流側の現像手段の現像領域に至るまでの範囲内の予め決められた位置で、前記像保持体の回転方向に交差する行方向に並ぶ画素電極群に対して前記下流側の現像手段に対応する前記潜像形成信号を供給すると共に、予め決められた処理順に沿って夫々の現像手段に対応する前記潜像形成信号を夫々の範囲内の予め決められた位置で該当する画素電極群に供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記切替器は、チャネル層を前記光電変換部とした薄膜トランジスタで構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記光照射手段は、前記像保持体の回転軸方向に沿って複数の発光ダイオードを配列したLEDアレイを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記像保持体の回転方向に沿った最大の画像形成領域に相当する寸法が当該像保持体の一回転を超える長さに設定されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−78907(P2013−78907A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220421(P2011−220421)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】