説明

画像形成装置

【課題】記録シートに皺が寄りにくく、かつ、現像剤像の転写を良好に行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、記録シート搬送方向に沿って並列配置される複数の感光体ドラムと、ストレート形状またはクラウン形状を有し、各感光体ドラムにそれぞれ対応して設けられ、両端が対応する各感光体ドラムに向けて付勢されている複数の転写ローラ74と、を備えている。複数の転写ローラ74のうち、記録シート搬送方向の最上流側に配置されるブラック用転写ローラ74Kは、ストレート形状を有しており、複数の転写ローラ74のうち、ブラック用転写ローラ74K以外の少なくとも1つはクラウン形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の感光体と、複数の転写ローラとを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式の画像形成装置として、トナー像を担持する感光体と、感光体との間で用紙を挟み、感光体上のトナー像を用紙へ転写する転写ローラとを備えたものが知られている。具体的に、このような画像形成装置においては、転写ローラは、両端部が感光体へ向けて押圧されている。また、転写ローラと感光体の間には、用紙にトナー像を転写するための転写電流が流れている。
【0003】
ところで、上述した画像形成装置において、転写ローラを一定直径としたストレート形状に形成した場合、転写ローラの軸方向における両端部と中央部で、転写ローラの感光体への押圧力に差が生じ、転写ローラと感光体とのニップ幅が不均一となり、均一な転写電流が流れないという問題が生じる。
【0004】
そこで、従来、転写ローラをクラウン形状にした画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このように、転写ローラをクラウン形状にすることで、転写ローラの両端部を感光体へ向けて押圧したときに、転写ローラの中央部と両端部とで、感光体への押圧力が略均一になるので、転写ローラと感光体とのニップ幅が略均一となり、転写電流も略均一にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−22980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記したクラウン形状を有する転写ローラは、形状誤差などから、転写ローラの両端で感光体に対する押圧力にばらつきが生じることがある。そして、このようなクラウン形状を有する転写ローラを、例えば、記録シート搬送方向に沿って複数の感光体が並列配置されているタンデム型のカラープリンタに採用した場合、洋形封筒(長辺側にフタを有する封筒)に印字を行うと、封筒のフタ部分の折り目を転写ローラでしっかりと押さえることができず、フタが封筒本体から浮き上がり、皺が寄ることがあった。また、封筒に皺が寄ることで、転写電流にムラが生じ、転写電流が弱い部分で十分な転写が行われず、下地(用紙)が見えてしまう、いわゆる白抜けが生じてしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、記録シートに皺が寄りにくく、かつ、現像剤像の転写を良好に行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、記録シート搬送方向に沿って並列配置される複数の感光体と、ストレート形状またはクラウン形状を有し、各感光体にそれぞれ対応して設けられ、両端が対応する各感光体に向けて付勢されている複数の転写ローラと、を備えている。
そして、複数の転写ローラのうち、記録シート搬送方向の最上流側に配置される第1転写ローラは、ストレート形状を有しており、複数の転写ローラのうち、第1転写ローラ以外の少なくとも1つはクラウン形状を有している。
【0009】
このように構成された画像形成装置によれば、最上流側に配置されている第1転写ローラがストレート形状であるので、転写ローラと感光体との間で記録シートの幅方向両端部をしっかりと押さえながら、良好に記録シートを搬送することができるので、記録シートに皺が寄りにくい。また、第1転写ローラより記録シート搬送方向の下流側には、クラウン形状の転写ローラを配置されているので、下流側では、現像剤像の転写を良好に行うことができる。
【0010】
そして、前記した画像形成装置において、複数の転写ローラのうち、第1転写ローラ以外はすべてクラウン形状を有していることが望ましい。
【0011】
このように構成された画像形成装置によれば、記録シートの搬送を良好に行いつつ、より現像剤像の転写を良好に行うことができる。
【0012】
また、前記した画像形成装置において、クラウン形状を有する転写ローラは、第1転写ローラに近いものほどクラウン量が小さいことが望ましい。
【0013】
このように構成された画像形成装置によれば、記録シート搬送方向の上流側ほど記録シートの幅方向両端部をしっかりと押さえて、記録シートを搬送できるので、記録シートに皺が寄るのをより抑制しつつ、現像剤像の転写も良好に行うことができる。
【0014】
なお、前記した画像形成装置において、クラウン形状を有する転写ローラは、すべて略同じクラウン量で形成されていてもよい。
【0015】
このように構成された画像形成装置によれば、複数の転写ローラをすべて異なる形状にする場合に比べて、コストを低減することができる。
【0016】
また、前記した画像形成装置において、複数の転写ローラのうち、記録シート搬送方向最下流側に配置されている転写ローラのみがクラウン形状を有していてもよい。
【0017】
このように構成された画像形成装置によれば、より記録シートの搬送を良好に行うことができる。
【0018】
そして、前記した画像形成装置において、複数の転写ローラは、記録シート搬送方向下流側に配置されているものほど、絶対値が大きいバイアスが印加されていることが望ましい。
【0019】
このように構成された画像形成装置によれば、記録シート搬送方向の下流側に行くほど、現像剤が転写されている記録シートの電位が高くなり、感光体から記録シートに現像剤が移動しにくいため、転写バイアスを大きくすることで、転写を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の転写ローラのうち、記録シート搬送方向の最上流側に配置されている第1転写ローラは、ストレート形状を有しているので、記録シートを良好に搬送することができる。そして、第1転写ローラより下流側に配置されている転写ローラの少なくとも1つはクラウン形状を有しているので、現像剤像の転写を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの側断面図である。
【図2】各転写ローラに接続される電源装置を示す図である。
【図3】4つの転写ローラを示す図である。
【図4】転写ローラのクラウン量を説明する図である。
【図5】実験の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、カラープリンタ1(画像形成装置)の全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明する。
【0023】
また、以下の説明においては、カラープリンタ1の使用時におけるユーザを基準にした方向で説明することにする。すなわち、図1においては、左側を「前(手前)側」とし、右側を「後(奥)側」とし、紙面垂直方向のうち奥側を「左側」とし、紙面垂直方向のうち手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0024】
<カラープリンタの全体構造>
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを給紙する給紙部20と、給紙された用紙Sに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Sを排出する排紙部90とを備えている。
【0025】
装置本体2の上部には、開口部2Aが形成されている。そして、この開口部2Aは、装置本体2に回動可能に支持されるアッパーカバー3によって開閉されるようになっている。アッパーカバー3の上面は、装置本体2から排出された用紙Sを蓄積する排紙トレイ4となっている。
【0026】
給紙部20は、装置本体2内の下部に設けられ、装置本体2に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Sを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24および分離パッド25を備えている。
【0027】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Sが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、紙粉取りローラ26とピンチローラ27の間を通過する過程で紙粉が除去された後、図示しない搬送経路を通って後ろ向きに方向転換され、一対のレジストローラ28を通過して画像形成部30に供給される。
【0028】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とを備えている。
【0029】
LEDユニット40は、アッパーカバー3の下部に設けられる図示しないLED取付部材に対して揺動可能に連結されており、装置本体2に設けられている図示しない位置決め部材によって適宜位置決めされて支持されている。
【0030】
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー3と給紙部20との間で前後方向に沿って並列配置され、ドラムカートリッジ58と、このドラムカートリッジ58に着脱可能となる現像カートリッジ56とを備えている。
【0031】
現像カートリッジ56は、現像ローラ53と、供給ローラ54と、層厚規制ブレード57と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部55とを主に備えている。
【0032】
また、現像カートリッジ56は、通常時において、ブラック用、イエロー用、マゼンタ用およびシアン用の各色トナーが入った56K,56Y,56M,56Cの符号で示すものが用紙Sの搬送方向の上流側からこの順で並んで配置されている。
【0033】
ドラムカートリッジ58は、感光体の一例としての感光体ドラム51や、スコロトロン帯電器52などを備えている。なお、本明細書および図面において、トナーの色に対応した感光体ドラム51を特定する場合には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれに対応させて、K、Y、M、Cの記号を付することとする。この4つのドラムカートリッジ58は、4つ(複数)の感光体ドラム51が、用紙搬送方向、つまり、前後方向に沿って並列配置されるように並んで配置されている。
【0034】
転写ユニット70は、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を備えている。
【0035】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間に無端状のベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光体ドラム51に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光体ドラム51との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光体ドラム51に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によってトナーの帯電極性とは異なる極性の転写バイアス(転写電圧)が掛けられる。
【0036】
なお、本明細書および図面において、トナーの色に対応した転写ローラ74を特定する場合には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれに対応させて、K、Y、M、Cの記号を付することとする。また、転写ローラ74の詳細な構成については、後で説明する。
【0037】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の後側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0038】
このように構成される画像形成部30では、例えば、カラー印刷モードの場合、まず、各感光体ドラム51の表面が、各スコロトロン帯電器52により一様に帯電された後、各LEDユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光体ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部55内のトナーは、供給ローラ54を介して現像ローラ53に供給され、現像ローラ53と層厚規制ブレード57の間に進入して一定の厚さの薄層として現像ローラ53上に担持される。なお、トナー収容部55内のトナーは、現像ローラ53が回転するときに、図示しないアジテータにより撹拌される。
【0039】
現像ローラ53上に担持されたトナーは、現像ローラ53が感光体ドラム51に接触して回転することで、現像ローラ53から感光体ドラム51上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム51上にトナー像が形成される。
【0040】
そして、搬送ベルト73上に供給された用紙Sが各感光体ドラム51と搬送ベルト73の内側に配置される各転写ローラ74との間を通過することで、各感光体ドラム51上に形成されたトナー像が用紙S上に転写される。さらに、用紙Sが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙S上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0041】
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、前方に反転するように形成された排紙側搬送経路91と、用紙Sを搬送する複数対の搬送ローラ92を備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Sは、搬送ローラ92によって排紙側搬送経路91を搬送され、装置本体2の外部に排出されて排紙トレイ4に蓄積される。
【0042】
<転写ローラの詳細構成>
次に、本発明の特徴部分である、転写ローラ74の詳細構成について説明する。
【0043】
4つの転写ローラ74は、図2に示すように、各感光体ドラム51にそれぞれ対応して設けられ、用紙搬送方向の最上流側から順に、第1転写ローラの一例としてのブラック用転写ローラ74K、イエロー用転写ローラ74Y、マゼンタ用転写ローラ74M、シアン用転写ローラ74Cが設けられている。各転写ローラ74は、それぞれ対応する感光体ドラム51に向けて、両端部が図示しない付勢手段により付勢されている。
【0044】
また、各転写ローラ74は、装置本体2内に設けられている電源装置100に接続され、転写バイアスが印加されるようになっている。具体的に、4つの転写ローラ74は、用紙搬送方向下流側に配置されているものほど、絶対値が大きいバイアスが印加されている。用紙搬送方向の下流側に行くほど、トナーが転写されている用紙Sの電位が高くなり、感光体ドラム51から用紙Sにトナーが移動しにくいため、上述したように転写バイアスの絶対値を用紙搬送方向の下流側ほど大きくすることで、転写を確実に行うことができるようになっている。
【0045】
そして、4つの転写ローラ74は、図3に示すように、ストレート形状またはクラウン形状を有している。具体的に、用紙搬送方向の最上流側に配置されているブラック用転写ローラ74Kは、ストレート形状を有しており、4つの転写ローラ74のうちブラック用転写ローラ74K以外の転写ローラ74Y,74M,74Cは、すべてクラウン形状を有している。
【0046】
より詳細には、クラウン形状を有する転写ローラ74Y,74M,74Cは、ブラック用転写ローラ74Kに近いものほどクラウン量が小さくなっている。そして、クラウン形状を有する転写ローラ74Y,74M,74Cのうち、最もブラック用転写ローラ74Kから離れた位置に配置されている、つまり、最もクラウン量が大きいシアン用転写ローラ74Cのクラウン量は、軸方向両端部が感光体ドラム51へ向けて付勢されたときに、軸方向における両端部と中央部の感光体ドラム51に対する押圧力が略均一となるような最適なクラウン量であることが望ましい。
【0047】
ここで、本実施形態におけるクラウン量について図4を参照して説明する。
クラウン量Xは、転写ローラ74の通紙範囲の両端部における外径をφA,φCとし、転写ローラ74の通紙範囲の中央部における外径をφBとしたとき、X=φB−(φA+φC)/2で定義される。なお、各転写ローラ74に与えるクラウン量Xは、実験等を行って決定される。
【0048】
例えば、転写ローラ74が、金属製のシャフト74A(直径5mm、長さ240mm)と、シャフト74Aを被覆するゴム74B(軸方向中央部の直径12.5mm、長さ220mm、ゴム硬度Asker−C 30°)とから構成され、転写ローラ74の両端部を感光体ドラム51に向けて500gfの圧力で押圧した場合、転写ローラ74の最適なクラウン量Xは、0.3mmである。
【0049】
つまり、上記の寸法の転写ローラを採用する場合、シアン用転写ローラ74Cのクラウン量Xは、0.30mmであるのがよい。そして、例えば、マゼンタ用転写ローラ74Mのクラウン量Xは、0.25mm、イエロー用転写ローラ74Yのクラウン量Xは、0.20mmと設定することができる。なお、本実施形態におけるストレート形状とは、クラウン量Xが0.1mm未満のものである。
【0050】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用および効果を得ることができる。
4つの転写ローラ74のうち、用紙搬送方向の最上流側に配置されるブラック用転写ローラ74Kは、ストレート形状を有しているので、用紙Sを感光体ドラム51との間でしっかりと挟んで搬送することができる。これにより、洋形封筒に印字を行った場合でも、フタが浮き上がらないので、封筒に皺が寄るのを抑えることができる。
【0051】
そして、4つの転写ローラ74のうち、ブラック用転写ローラ74K以外の転写ローラ74Y,74M,74Cは、クラウン形状を有しているので、普通紙に印字を行った場合、ブラック用転写ローラ74Kよりも用紙搬送方向下流側においては、トナー像の転写を良好に行うことができる。また、洋形封筒に印字を行った場合でも、ブラック用転写ローラ74Kによって幅方向両端部をしっかりと押さえられているので、ブラック用転写ローラ74K以外の転写ローラ74Y,74M,74Cがクラウン形状を有していても、トナー像の転写を良好に行うことができる。
【0052】
また、クラウン形状を有する転写ローラ74Y,74M,74Cは、ブラック用転写ローラ74Kに近いものほどクラウン量が小さくなっているため、用紙搬送方向の上流側ほど用紙Sの幅方向両端部をしっかりと押さえて搬送できるので、用紙Sに皺が寄るのをより抑制しつつ、トナー像の転写も良好に行うことができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0054】
前記実施形態では、4つの転写ローラ74のうち、ブラック用転写ローラ74K以外のすべての転写ローラ74Y,74M,74Cがクラウン形状を有していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、4つの転写ローラ74のうち、ブラック用転写ローラ74K以外の転写ローラ74Y,74M,74Cの少なくとも1つがクラウン形状を有していればよい。例えば、4つの転写ローラ74のうち、用紙搬送方向の最下流側に配置されているシアン用転写ローラ74Cのみがクラウン形状を有していてもよい。
【0055】
このように、用紙搬送方向の最下流側に配置されている転写ローラ74のみクラウン形状とすることで、より用紙の搬送が良好になる。
【0056】
そして、前記実施形態では、クラウン形状を有する転写ローラ74Y,74M,74Cは、ブラック用転写ローラ74Kに近いものほどクラウン量が小さく設定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、クラウン形状を有する転写ローラ74Y,74M,74Cは、すべて略同じクラウン量で形成されていてもよい。
【0057】
このように構成することにより、転写ローラ74Y,74M,74Cをすべて異なる形状にする場合に比べて、コストを低減することができる。
【0058】
前記実施形態では、像担持体として感光体ドラム51を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体を採用してもよい。
【0059】
前記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ1を例示したが、本発明はこれに限定されず、複合機やコピー機に本発明を適用することもできる。
【実施例】
【0060】
次に、転写ローラの形状の違いによる、印字状態および搬送性について比較した実験について説明する。
【0061】
1.印字テスト
現像カートリッジを、用紙搬送方向上流側から、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順で配列し、普通紙および洋形封筒に、複数の四角形の画像を印字した。
【0062】
(1)印字結果の評価
印字が終了した普通紙および洋形封筒を観察して、印字がされているべき箇所において白抜けが生じているか否かを確認した。
【0063】
(2)封筒の搬送性の評価
印字が終了した封筒に、皺が寄っていないか確認した。
【0064】
2.各実施例および各比較例の条件
各実施例および比較例の条件は、以下に説明する通りとした。
[実施例1]
各色に対応した転写ローラを以下の形状とした。
ブラック(K):ストレート
イエロー(Y):ストレート
マゼンタ(M):ストレート
シアン (C):クラウン
【0065】
[実施例2]
各色に対応した転写ローラを以下の形状とした。
ブラック(K):ストレート
イエロー(Y):ストレート
マゼンタ(M):クラウン
シアン (C):クラウン
【0066】
[実施例3]
各色に対応した転写ローラを以下の形状とした。
ブラック(K):ストレート
イエロー(Y):クラウン
マゼンタ(M):クラウン
シアン (C):クラウン
【0067】
[比較例1]
すべての転写ローラをストレート形状とした。
【0068】
[比較例2]
すべての転写ローラをクラウン形状とした。
【0069】
3.結果
実施例1〜3および比較例1,2における、印字テストの結果をまとめたのが図5である。
普通紙に印字を行った場合、比較例1では、白抜けが目立ち、比較例2では、白抜けが見られなかった。そして、実施例1〜3では、印字には問題ない程度の白抜けが見られた。
【0070】
封筒に印字を行った場合、比較例1では、白抜けが見られず、比較例2では、白抜けが目立っていた。そして、実施例1〜3では、印字には問題ない程度の白抜けが見られた。
【0071】
また、封筒に印字を行った場合、比較例1では、封筒に皺が寄っておらず、比較例2ではフタ部分や用紙搬送方向における封筒の中央部分において、はっきりとした皺が確認された。そして、実施例1〜3では、用紙搬送方向における封筒の後端側に小さな皺が寄っているのが確認された。
【0072】
以上の結果から、普通紙への転写性と、封筒への転写性および封筒の搬送性を両立させるためには、実施例1〜3のように少なくとも最上流側にストレート形状の転写ローラを配置し、下流側のいずれかにクラウン形状の転写ローラを配置した形態が望ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0073】
1 カラープリンタ
51 感光体ドラム
74 転写ローラ
74C シアン用転写ローラ
74K ブラック用転写ローラ
74M マゼンタ用転写ローラ
74Y イエロー用転写ローラ
S 用紙
X クラウン量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シート搬送方向に沿って並列配置される複数の感光体と、
ストレート形状またはクラウン形状を有し、各前記感光体にそれぞれ対応して設けられ、両端が対応する各前記感光体に向けて付勢されている複数の転写ローラと、を備えた画像形成装置であって、
前記複数の転写ローラのうち、記録シート搬送方向の最上流側に配置される第1転写ローラは、ストレート形状を有しており、
前記複数の転写ローラのうち、前記第1転写ローラ以外の少なくとも1つはクラウン形状を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の転写ローラのうち、前記第1転写ローラ以外はすべてクラウン形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
クラウン形状を有する前記転写ローラは、前記第1転写ローラに近いものほどクラウン量が小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
クラウン形状を有する前記転写ローラは、すべて略同じクラウン量で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の転写ローラのうち、記録シート搬送方向の最下流側に配置されている転写ローラのみがクラウン形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数の転写ローラは、記録シート搬送方向下流側に配置されているものほど、絶対値が大きいバイアスが印加されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97092(P2013−97092A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238420(P2011−238420)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】