説明

画像投射システムおよび画像投射方法

【課題】所望の投射画像の投射中にも投射画像の位置調整を行うことができる画像投射システムおよび画像投射方法を提供する。
【解決手段】表示素子13r,13g1,13g2,13bはスクリーンに画像を投射すると共に、スクリーン枠に位置ずれ検出用のパターン画像を投射する。カメラ7はパターン画像を撮像する。位置ずれ演算装置15は、パターン画像に基づいて各表示素子から投射される投射画像間の位置ずれ量を検出する。この位置ずれ量に基づいて投射画像の位置が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の投射画像間に生じる位置ずれを調整する画像投射システムおよび画像投射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨場感のある高精細な映像の処理技術が急速に普及し、ハイビジョンを超える超高精細映像の表示が実現されつつある。現在、高精細な画像表示においては、投射型ディスプレイが有望であるが、その内部に設けられた表示素子は微細な画素構造となり、複数の表示素子から投射される投射画像間の位置ずれ(画素ずれ)を高精度かつ自動的に調整する技術が必要となっている。
【0003】
従来、投射画像の位置調整は、一般的に調整者が目視観察により調整を行う方法をとっているため、個々の調整者の経験と感によるところが大きく、調整に多大な時間を要する。このため、調整の定量的な評価と自動調整が必要とされている。
【0004】
投射画像の定量的な位置調整技術として特許文献1には、スクリーン上にX方向およびY方向のラインセンサを配置し、各ラインセンサから入力される信号に基づいて調整を行うことが記載されている。また、特許文献2には、スクリーン上に見える領域と見えない領域の位置調整を行うことが記載されている。また、非特許文献1には、高精細投射画像の位置調整方法として、山型の画像パターンの投影によるコンバーゼンス補正と、周期構造パターンの投影による表示素子間の位置関係の検出方法が記載されている。
【特許文献1】特開平8−201937号公報
【特許文献2】特開平7−123427号公報
【非特許文献1】日下部 裕一、他2名,「超高精細映像表示システムのコンバーゼンス誤差と素子位置調整の自動化」,映像情報メディア学会誌,社団法人映像情報メディア学会,Vol.60,No.2,2006,pp.234-241
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の投射画像の位置調整では、画像投射前に長時間のヒートランニングが必要であることと、画面全体を使用して位置調整を行うこととにより、所望の画像の投射開始前に位置調整が行われる。しかし、その位置調整後、所望の画像の投射中には、熱などによって生じる投射画像の位置ずれを自動的に補正し、常時、最適に調整することはできず、安定した高精細画像の表示が困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、所望の投射画像の投射中にも投射画像の位置調整を行うことができる画像投射システムおよび画像投射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、第1の表示領域に投射画像を投射すると共に前記第1の表示領域と異なる第2の表示領域に位置ずれ検出用のパターン画像を投射する複数の画像投射手段と、前記第2の表示領域に投射された前記パターン画像を検出するパターン画像検出手段と、前記パターン画像検出手段によって検出された前記パターン画像に基づいて、前記複数の画像投射手段から投射される前記投射画像間の位置ずれ量を検出する位置ずれ量検出手段と、前記位置ずれ量検出手段によって検出された前記位置ずれ量に基づいて前記投射画像の位置を調整する位置調整手段とを備えたことを特徴とする画像投射システムである。
【0008】
また、本発明の画像投射システムは、前記複数の画像投射手段として第1の画像投射手段と第2の画像投射手段を備え、前記第1の画像投射手段は、所定の空間周波数で輝度が周期的に変化する第1のパターン画像を投射し、前記第2の画像投射手段は、前記所定の空間周波数で輝度が周期的に変化し前記第1のパターン画像とは空間位相特性の異なる第2のパターン画像を投射し、前記位置ずれ量検出手段は、前記パターン画像検出手段によって検出された前記第1のパターン画像と前記第2のパターン画像の合成画像に生じる折り返し成分に基づいて前記位置ずれ量を検出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像投射システムにおいて、前記第1のパターン画像の空間位相特性が一定である方向に沿って前記第2のパターン画像の空間位相特性が変化することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像投射システムにおいて、第1の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を前記第2の表示領域内の第1領域に投射すると共に、前記第1の方向と異なる第2の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を前記第2の表示領域内の第2領域に投射した状態で、前記位置調整手段は、前記第1領域および前記第2領域のそれぞれから検出された前記位置ずれ量に基づいて前記第1の方向および前記第2の方向の前記投射画像の位置を調整することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像投射システムにおいて、第1の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を投射する第1の状態と、前記第1の方向と異なる第2の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を投射する第2の状態とを切り替える状態切替手段をさらに備え、前記位置調整手段は、前記第1の状態で検出された前記位置ずれ量と前記第2の状態で検出された前記位置ずれ量とに基づいて前記第1の方向および前記第2の方向の前記投射画像の位置を調整することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の画像投射システムにおいて、前記パターン画像検出手段が前記第2の表示領域内に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、複数の画像投射手段から第1の表示領域に投射画像を投射すると共に前記第1の表示領域と異なる第2の表示領域に位置ずれ検出用のパターン画像を投射し、前記第2の表示領域に投射された前記パターン画像を検出し、検出された前記パターン画像に基づいて、前記複数の画像投射手段から投射される前記投射画像間の位置ずれ量を検出し、検出された前記位置ずれ量に基づいて前記投射画像の位置を調整することを特徴とする画像投射方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の表示領域に投射画像を投射すると共に第2の表示領域に位置ずれ検出用のパターン画像を投射し、そのパターン画像に基づいて投射画像の位置を調整することによって、所望の投射画像の投射中にも投射画像の位置調整を行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態における画像投射の様子を示している。画像投射装置1によってスクリーン2(第1の表示領域)に画像が投射され、スクリーン2上に表示された表示画像4を観察者3が観察する。同時に、スクリーン枠5(第2の表示領域)には位置ずれ検出用のパターン画像6が画像投射装置1によって投射される。このパターン画像6はカメラ7によって撮像される。観察者3は、パターン画像6が投射される側とは反対側から表示画像4を観察するので、パターン画像6は観察者3には見えず、表示画像4の投射中でもパターン画像6が観察の邪魔となることはない。
【0016】
図2は、本実施形態による画像投射システムの構成を示している。投射画像は表示画像信号源8から再生され、位置ずれ検出用のパターン画像は検出パターン発生装置9から生成される。これらはビデスイッチャー等の画像合成器10によって合成されて画像信号処理装置11に入力される。パターン画像の総画素数は投射画像と比較して少なくてよく、また同じパターンをスクリーン枠5の複数領域に表示するのみでよい。また、投射画像に対して検出パターンを画像合成したものを表示画像信号源8から再生してもよい。
【0017】
画像信号処理装置11によって投射画像の歪みや位置ずれの補正処理が施される。画像信号処理装置11の出力信号は画像投射装置1に入力される。画像投射装置1は複数の表示素子を有しており、一例として本実施形態では、R信号に対応した表示素子13r、2種類のG信号に対応した表示素子13g1,13g2、B信号に対応した表示素子13bを有している。これらの表示素子に対して、各信号に基づいた画像が入射し、光学的に合成されてスクリーン2およびスクリーン枠5へ画像が投射される。
【0018】
これらの表示素子としては、透過型や反射型の液晶デバイスや、デジタルマイクロミラーデバイス、グレーティングライトバルブ等が使用可能である。電気制御式の微動ステージ14によって、これらの表示素子の位置を微調整することが可能である。この微動ステージ14としては、ステッピングモータや圧電素子等を基本構成とするものが使用可能であり、表示素子の1画素の大きさの約1/50以下の分解能を有するものを使用することが望ましい。
【0019】
スクリーン枠5に投射されたパターン画像6はカメラ7で撮像され、カメラ7から画像信号が位置ずれ演算装置15へ出力される。カメラ7はアレー状のCCDやCMOSのセンサあるいはフォトダイオード等の受光センサを有しており、カメラレンズを介して入射したパターン像がセンサ位置で結像する。位置ずれ演算装置15は、表示素子13r,13g1,13g2,13bのそれぞれによって投射された画像間の位置ずれ量をカメラ7からの画像信号に基づいて演算(検出)する。位置ずれ演算装置15は画像の歪み量を演算することも可能である。
【0020】
位置ずれ演算装置15からは、演算された位置ずれ量に基づいた信号が画像信号処理装置11またはステージ制御装置16へ出力される。画像信号処理装置11は位置ずれ演算装置15からの信号に基づいて、各表示素子へ入射させる画像を形成するための画像信号を、位置ずれが解消するように画像処理によって補正(調整)する。また、ステージ制御装置16は微動ステージ14を駆動し、位置ずれが解消するように、水平方向と垂直方向、また必要に応じて回転方向の位置制御を行い、表示素子13r,13g1,13g2,13bの位置を調整する。位置ずれ演算装置15から検出パターン発生装置9へ出力される制御信号に基づいて、位置ずれ検出用の複数のパターン画像を切り替えて表示することも可能である。
【0021】
次に、本実施形態における位置ずれの検出方法を説明する。高精細映像の表示方法として、緑画像用の表示素子を2枚使用し、半画素ずらしで各表示素子からの画像を合成する方法があり、将来の高精細映像表示に有効な方法となっている(M. Kanazawa, et al., Journal of SID, Vol.12, No.1, 2004, pp.93-103)。この方法を本実施形態に適用することも可能である。
【0022】
急速に高精細化が進む画像表示において、より高精度な位置ずれの検出と調整の技術が必要となっているが、2枚の緑画像の位置調整には特に高精度な位置検出・補正の技術が要求される。複数の画像間の位置ずれを検出するのに有効な方法として、周期構造の輝度分布を持つパターンを投射し、画像同士の相対位置のずれにより生じる画像の折り返し成分を検出する方法がある(前述した非特許文献1参照)。以下、本実施形態にこの方法を適用した例を説明する。
【0023】
本実施形態では、2つの画像間の水平方向の位置ずれを検出するために、図3に示す第1のパターン画像300と第2のパターン画像310を用いる。第1のパターン画像300は、水平方向に所定の空間周波数で輝度が変化する周期的な輝度分布を有している。第2のパターン画像310も第1のパターン画像300と同じ空間周波数で輝度が変化する周期的な輝度分布を有しているが、第1のパターン画像300とは空間位相特性が異なっており、第1のパターン画像300と第2のパターン画像310は位相差320を有している。
【0024】
図3においてパターン部分300aは輝度の高い部分であり、パターン部分300bは輝度の低い部分である。図3においては、図の表現上の制約から、パターン部分300a,300bのそれぞれの中での輝度の変化を表していないが、実際には水平方向に沿って輝度が滑らかに変化しているものとする。
【0025】
第1のパターン画像300は、基準となる表示素子(以下、第1の表示素子とする)に入射し、第2のパターン画像310は、位置合わせ対象の画像を投射する表示素子(以下、第2の表示素子とする)に入射する。また、第1のパターン画像300と第2のパターン画像310はスクリーン枠5の同じ位置に投射される。以下で説明するように、位置ずれ演算装置15は、時分割で2つのパターン画像の位相差を変化させながら、2つのパターン画像の合成画像において位置ずれにより生じる折り返し成分を検出し、折り返し成分が最小となる位相差を求め、その位相差に基づいて正規の位置からの位置ずれ量を検出する。
【0026】
一例として、水平方向(x方向)の位置ずれの検出方法を説明する。第1の表示素子に対して、x方向の輝度分布が以下の(1)式のgで表される第1のパターン画像を表示(投射)させる。ただし、fはパターンの空間周波数であり、i(i=1,2,・・・,N)は画素位置であり、δはデルタ関数である。
【0027】
【数1】

【0028】
また、第2の表示素子に対して、第1のパターン画像から半画素ずれた位置が正規の位置であり、x方向の輝度分布が以下の(2)式のgで表される第2のパターン画像を表示(投射)させる。
【0029】
【数2】

【0030】
もし、第2の表示素子によって表示される第2のパターン画像の位置がq画素ずれており、第1のパターン画像を位相の基準として第2のパターン画像に加える位相差を2πfpとした場合、折り返し成分が生じなくなる条件は以下の(3)式で表される。すなわち、折り返し成分が最小となる位相pを求めることで、正規の位置からの位置ずれ量qを求めることができる。なお、第1のパターン画像および第2のパターン画像の輝度分布の周期構造として、上記のような正弦波状の分布の他に矩形波状の分布を用いてもよい。
【0031】
【数3】

【0032】
以下、図4を参照しながら位置ずれ検出の具体的な手順を説明する。検出パターン発生装置9は、固定パターンである第1のパターン画像を生成すると共に、第1のパターン画像に対して所定の位相差を有する第2のパターン画像を生成する(ステップS100)。2つのパターン画像がそれぞれ別々に画像合成器10によって投射画像と合成され、画像信号処理装置11によって処理された後、第1のパターン画像が第1の表示素子によって投射され、第2のパターン画像が第2の表示素子によって投射される(ステップS110)。
【0033】
スクリーン枠5に表示された第1のパターン画像および第2のパターン画像の合成画像がカメラ7によって撮像され、位置ずれ演算装置15へ画像信号が出力される(ステップS120)。位置ずれ演算装置15はカメラ7からの画像信号に基づいて、撮像された画像から、位置ずれ検出用のパターン画像が投射された領域の画像を抽出する(ステップS130)。
【0034】
位置ずれ演算装置15は、この領域の画像に対してFFT(Fast Fourier Transform)を行い(ステップS140)、折り返し成分の大きさを検出する(ステップS150)。予め設定された位相差の条件のうち、まだ折り返し成分の検出を行っていない条件がある場合(ステップS160でNOの場合)、検出パターン発生装置9は、位置ずれ演算装置15から出力される制御信号に基づいて、第2のパターン画像に与える位相量を変更する(ステップS170)。
【0035】
予め設定された全ての位相差の条件で折り返し成分の検出を行うまで、第2のパターン画像の位相量を微小に変化させながら、上記のステップS100〜S170が繰り返される。予め設定された全ての位相差の設定条件で折り返し成分の検出を行った場合には、位置ずれ演算装置15は各位相差の設定条件で検出された折り返し成分の最小値を求める(ステップS180)。さらに、位置ずれ演算装置15は、その最小値に相当する位相量から2つのパターン画像の位置ずれ量を(3)式により算出すると共に、スクリーン枠5上の複数箇所で求めた位置ずれ量を補間演算することによって、スクリーン2上の位置ずれ量を算出する(ステップS190)。
【0036】
上記の方法により位置ずれ量を精度良く検出するためには、第2のパターン画像に与える位相量の変化量を小さくし、上記のステップS100〜S170の繰り返し回数を増やすことが望ましい。または、位相量の変化量を大きくして位置ずれ量を粗く検出した後、位相量の変化量を小さくして位置ずれ量を検出することによって精度を上げてもよい。また、上記の方法では、水平方向の位置ずれ検出の場合、画像の縦方向については画像を加算平均し、画像に重畳しているランダムノイズを低減してもよい。
【0037】
次に、位置ずれ検出の他の方法を説明する。図5に示す第1のパターン画像500を第1の表示素子に表示させると共に、第2のパターン画像510を第2の表示素子に表示させてもよい。第1のパターン画像500と第2のパターン画像510の空間周波数は同じであるが、第2のパターン画像510の空間位相特性は、第1のパターン画像500の空間位相特性が一定である方向(図5の垂直方向)に沿って変化している。すなわち、第1のパターン画像500と第2のパターン画像510の同じ垂直方向位置における位相差は、垂直方向位置に応じて変化している。
【0038】
以下、図6を参照しながら、図5に示した2つのパターン画像を用いた位置ずれ検出の手順を説明する。検出パターン発生装置9は、図5に示した第1のパターン画像および第2のパターン画像を生成する(ステップS200)。2つのパターン画像がそれぞれ別々に画像合成器10によって投射画像と合成され、画像信号処理装置11によって処理された後、第1のパターン画像が第1の表示素子によって投射され、第2のパターン画像が第2の表示素子によって投射される(ステップS210)。
【0039】
スクリーン枠5に表示された第1のパターン画像および第2のパターン画像の合成画像がカメラ7によって撮像され、位置ずれ演算装置15へ画像信号が出力される(ステップS220)。位置ずれ演算装置15はカメラ7からの画像信号に基づいて、撮像された画像から、位置ずれ検出用のパターン画像が投射された領域の画像を抽出する(ステップS230)。
【0040】
位置ずれ演算装置15は、この領域の画像に対してFFTを行い(ステップS240)、折り返し成分の大きさを検出する(ステップS250)。このとき、位置ずれ演算装置15は図5の垂直方向の複数位置で折り返し成分の大きさを検出する。
【0041】
続いて、位置ずれ演算装置15は各垂直方向位置で検出された折り返し成分の最小値を求める(ステップS260)。さらに、位置ずれ演算装置15は、その最小値に相当する位相量から2つのパターン画像の位置ずれ量を(3)式により算出すると共に、スクリーン枠5上の複数箇所で求めた位置ずれ量を補間演算することによって、スクリーン2上の位置ずれ量を算出する(ステップS270)。上記のように、垂直方向の各位置で位相差の異なる第1のパターン画像および第2のパターン画像を用いることによって、図4に示した、時分割で位相差を変化させる方法で生じる繰り返し操作は不要となり、位置調整を高速に行うことができる。
【0042】
上記では、水平方向の位置ずれの検出方法を説明したが、垂直方向の位置ずれの検出方法も同様である。例えば、図7に示すように、垂直方向に周期的な輝度変化を有する第1のパターン画像700を、基準となる第1の表示素子に表示させると共に、水平方向の各位置における空間位相特性が変化している第2のパターン画像710を、位置合わせ対象の画像を投射する第2の表示素子に表示させ、上記と同様の方法で位置ずれを検出すればよい。
【0043】
また、垂直方向および水平方向の位置ずれを1画面内で検出するには以下のようにすればよい。すなわち、図8に示すように、図5における水平方向の位置ずれ検出用の第1のパターン画像500および第2のパターン画像510をスクリーン枠5内の第1領域800に投射すると共に、図7における垂直方向の位置ずれ検出用の第1のパターン画像700および第2のパターン画像710をスクリーン枠5内の第2領域810に投射する。
【0044】
位置ずれ演算装置15は、カメラ7で撮像された画像のうち、第1領域800の画像から水平方向の位置ずれ量を算出すると共に、第2領域810の画像から垂直方向の位置ずれ量を算出する。算出された位置ずれ量に基づいて、水平方向および垂直方向の投射画像の位置調整が行われる。
【0045】
あるいは、以下のようにしてもよい。すなわち、図5における水平方向の位置ずれ検出用の第1のパターン画像500および第2のパターン画像510をスクリーン枠5に投射する第1の状態と、図7における垂直方向の位置ずれ検出用の第1のパターン画像700および第2のパターン画像710をスクリーン枠5に投射する第2の状態とを時分割で切り替えるようにする。
【0046】
このため、位置ずれ演算装置15は検出パターン発生装置9へ制御信号を出力し、第1の状態と第2の状態を切り替えながら、第1の状態で撮像された画像から水平方向の位置ずれ量を算出し、第2の状態で撮像された画像から垂直方向の位置ずれ量を算出する。算出された位置ずれ量に基づいて、水平方向および垂直方向の投射画像の位置調整が行われる。
【0047】
この方法によれば、水平方向および垂直方向の位置ずれ検出用のパターン画像を同時に投射する方法と比較して、スクリーン枠5の領域をより広く使用して各方向の位置ずれを検出することが可能となるので、位置ずれ検出の精度を向上することができる。また、パターン画像の表示領域が比較的狭い領域に限られている場合には、パターン画像の輝度変化の周波数fを最適に選び、表示領域に応じて適した周波数帯域に折り返し成分を発生させるようにしてもよい。
【0048】
次に、受光センサの配置位置の他の例を説明する。上記では、受光センサを有するカメラ7でパターン画像を撮像する説明を行ったが、投射画像のサイズが比較的小さい場合、受光センサをスクリーン枠5上に直接取り付けてもよい。図9は、受光センサ70をスクリーン枠5内に配置した状態を示している。
【0049】
受光センサ70をスクリーン枠5内に配置すると、画像投射装置1から投射されたパターン画像が受光センサ70に直接入射する。これによって、カメラ7でパターン画像を撮像する場合と比較して、カメラレンズの歪みや口径食の影響を受けなくなる。また、パターン画像を受光センサ70上に直接結像するため、高精細かつ高効率に受光することができる。さらに、スクリーン2に表示された投射画像の輝度や反射の影響を少なくすることができ、画像投射中の位置ずれ検出に有利である。
【0050】
上述したように、本実施形態によれば、スクリーン2に画像を投射すると共に、スクリーン枠5に位置ずれ検出用のパターン画像を投射し、そのパターン画像に基づいてパターン画像間の位置ずれを検出し、投射画像の位置を調整する。これによって、所望の画像の投射中にも投射画像の位置調整を行うことができ、常時、最適な投射画像を表示することができる。また、位置ずれ検出に係る構成を比較的に簡単なものとすることができる。
【0051】
また、同じ空間周波数を有すると共に異なる空間位相特性を有する2種類のパターン画像を投射し、それらの合成画像に生じる折り返し成分に基づいて位置ずれ量を検出することによって、半画素未満の精度で位置ずれ量を高精度に検出することができる。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態における画像投射の様子を示す参考図である。
【図2】本発明の一実施形態による画像投射システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるパターン画像を模式的に示す参考図である。
【図4】本発明の一実施形態における位置ずれ検出の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態におけるパターン画像を模式的に示す参考図である。
【図6】本発明の一実施形態における位置ずれ検出の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態におけるパターン画像を模式的に示す参考図である。
【図8】本発明の一実施形態における水平方向および垂直方向の位置ずれの検出方法を説明するための参考図である。
【図9】本発明の一実施形態において、受光センサをスクリーン枠内に配置した状態を示す参考図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・画像投射装置、2・・・スクリーン、5・・・スクリーン枠、7・・・カメラ(パターン画像検出手段)、8・・・表示画像信号源、9・・・検出パターン発生装置、10・・・画像合成器、11・・・画像信号処理装置(位置調整手段)、13r,13g1,13g2,13b・・・表示素子(画像投射手段)、14・・・微動ステージ、15・・・位置ずれ演算装置(位置ずれ量検出手段、状態切替手段)、16・・・ステージ制御装置(位置調整手段)、70・・・受光センサ(パターン画像検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示領域に投射画像を投射すると共に前記第1の表示領域と異なる第2の表示領域に位置ずれ検出用のパターン画像を投射する複数の画像投射手段と、
前記第2の表示領域に投射された前記パターン画像を検出するパターン画像検出手段と、
前記パターン画像検出手段によって検出された前記パターン画像に基づいて、前記複数の画像投射手段から投射される前記投射画像間の位置ずれ量を検出する位置ずれ量検出手段と、
前記位置ずれ量検出手段によって検出された前記位置ずれ量に基づいて前記投射画像の位置を調整する位置調整手段と、
を備えたことを特徴とする画像投射システム。
【請求項2】
前記複数の画像投射手段として第1の画像投射手段と第2の画像投射手段を備え、
前記第1の画像投射手段は、所定の空間周波数で輝度が周期的に変化する第1のパターン画像を投射し、
前記第2の画像投射手段は、前記所定の空間周波数で輝度が周期的に変化し前記第1のパターン画像とは空間位相特性の異なる第2のパターン画像を投射し、
前記位置ずれ量検出手段は、前記パターン画像検出手段によって検出された前記第1のパターン画像と前記第2のパターン画像の合成画像に生じる折り返し成分に基づいて前記位置ずれ量を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像投射システム。
【請求項3】
前記第1のパターン画像の空間位相特性が一定である方向に沿って前記第2のパターン画像の空間位相特性が変化することを特徴とする請求項2に記載の画像投射システム。
【請求項4】
第1の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を前記第2の表示領域内の第1領域に投射すると共に、前記第1の方向と異なる第2の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を前記第2の表示領域内の第2領域に投射した状態で、前記位置調整手段は、前記第1領域および前記第2領域のそれぞれから検出された前記位置ずれ量に基づいて前記第1の方向および前記第2の方向の前記投射画像の位置を調整することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像投射システム。
【請求項5】
第1の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を投射する第1の状態と、前記第1の方向と異なる第2の方向の前記位置ずれ量を検出するための前記第1のパターン画像および前記第2のパターン画像を投射する第2の状態とを切り替える状態切替手段をさらに備え、
前記位置調整手段は、前記第1の状態で検出された前記位置ずれ量と前記第2の状態で検出された前記位置ずれ量とに基づいて前記第1の方向および前記第2の方向の前記投射画像の位置を調整する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像投射システム。
【請求項6】
前記パターン画像検出手段が前記第2の表示領域内に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像投射システム。
【請求項7】
複数の画像投射手段から第1の表示領域に投射画像を投射すると共に前記第1の表示領域と異なる第2の表示領域に位置ずれ検出用のパターン画像を投射し、
前記第2の表示領域に投射された前記パターン画像を検出し、
検出された前記パターン画像に基づいて、前記複数の画像投射手段から投射される前記投射画像間の位置ずれ量を検出し、
検出された前記位置ずれ量に基づいて前記投射画像の位置を調整する
ことを特徴とする画像投射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−219148(P2008−219148A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50173(P2007−50173)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人情報通信研究機構委託研究「多並列・像再生型立体テレビシステムに関する研究開発」(H18−H22)、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】