説明

画像投射装置

【課題】被投射面の色が一様でない場合でも、良好な投射画像の色補正を行う。
【解決手段】画像投射装置は、画像信号に応じて光変調素子17を駆動し、該光変調素子からの光により形成される投射画像を被投射面33に投射する。該画像投射装置は、被投射面にて設定された検出エリアで反射した反射光を受けて、該検出エリアの色を検出する色検出手段27と、検出エリアの色に基づいて投射画像の色を補正するように画像信号に対する補正処理を行う補正手段14と、検出エリアの位置およびサイズのうち少なくとも一方をユーザの選択操作に応じて変更する検出エリア変更手段24,31とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被投射面からの反射光を用いて投射画像の色補正(いわゆる壁色補正)を行う機能を有するプロジェクタ等の画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタによって画像を投射する被投射面としては、専用の白色スクリーンだけでなく、壁やパーテーションといった白色ではない被投射面が含まれる。また、プロジェクタは、暗室だけでなく照明された室内で使用されることも多い。
被投射面の色や照明による投射画像の色調(色バランス)への影響を光センサやCCDカメラ等の検出器を用いて検出し、投射画像の色(ホワイトバランス)を自動的に補正する壁色補正機能を有するプロジェクタが特許文献1に開示されている。このプロジェクタでは、白色画像の投射時の赤(R)、緑(G)および青(B)成分をそれぞれ検出し、必要なホワイトバランスが得られるようにR、GおよびB成分のゲインを調整する。
ただし、特許文献1のプロジェクタでは、被投射面の色が一様でない、入力信号のフォーマットの違いによって投射画像のサイズが異なる、投射画像をシフトしたりズームしたりすると、検出器による検出エリアと被投射面とが一致しない場合がある。この場合、被投射面の色や照明による投射画像の色調への影響について正しい検出を行えず、壁色補正に誤差が生じることが多い。
このため、特許文献2にて開示されたプロジェクタでは、被投射面を複数のエリアに分割し、分割されたエリアごとの色レベルを色光センサで計測し、分割されたエリアごとに色補正レベルを決定する。そして、分割されたエリアごとに色変換テーブルを用意して、エリアごとに色補正を行う。これにより、被投射面の色が一様でない場合にも良好な壁色補正を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−333611号公報
【特許文献2】特開2006−349792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2にて開示されたプロジェクタでは、分割されたエリアごとに用意された変換テーブルを用いて補正を行うためにエリアごとに諧調特性が異なり、エリアごとに色が変動する不自然な投射画像に補正されてしまうおそれがある。
本発明は、被投射面の色が一様でない、入力信号のフォーマットの違いによって投射画像のサイズが異なる、投射画像がシフトされたりズームされたりした場合でも、良好な壁色補正を行えるようにした画像投射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての画像投射装置は、画像信号に応じて光変調素子を駆動し、該光変調素子からの光により形成される投射画像を被投射面に投射する。該画像投射装置は、被投射面にて設定された検出エリアで反射した反射光を受けて、該検出エリアの色を検出する色検出手段と、検出エリアの色に基づいて投射画像の色を補正するように画像信号に対する補正処理を行う補正手段と、検出エリアの位置およびサイズのうち少なくとも1つを、ユーザの選択操作に応じて変更する検出エリア変更手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被投射面の色を検出するために適した検出エリアをユーザが選択することができる。このため、被投射面の色が一様でない、入力信号のフォーマットの違いによって投射画像のサイズが異なる、投射画像がシフト又はズームされている等の様々な状況下でも、良好な壁色補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例であるプロジェクタの構成を示す図。
【図2】実施例のプロジェクタによる画像投射領域と色検出センサによる色検出エリアを示す図。
【図3】実施例のプロジェクタでの壁色補正処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例である画像投射装置としてのプロジェクタの構成を示す。11はプロジェクタの外部から入力される入力映像信号であり、映像入力回路12に入力されてA/D変換等の信号処理を受ける。入力映像信号のフォーマットには様々なものがあり、フォーマットによって投射される画像のサイズが異なる。
映像入力回路12による信号処理を受けた入力映像信号は、デジタル信号処理回路13に入力され、解像度変換等のデジタル信号処理を受けて投射映像信号(画像信号)に変換される。デジタル信号処理回路13からの投射映像信号は、色補正回路(補正手段)14に入力され、ここで色補正処理(いわゆる壁色補正処理)を受ける。
色補正回路14は、主として色ゲイン補正回路15とガンマ補正回路16により構成される。色補正回路14は、入力された投射映像信号に対してゲイン補正、オフセット補正およびガンマ補正を行い、さらに後述する映像補正量算出回路21からの色ゲイン補正信号に基づく補正も行う。
色補正回路14により補正された投射映像信号は、光変調素子としての液晶パネル17用のドライバ(図示せず)に入力される。ドライバは、投射映像信号に応じて液晶パネル17を駆動する。これにより、液晶パネル17上に投射映像信号に応じた映像(原画)が形成される。液晶パネル17は不図示の光源からの照明光によって照明されており、液晶パネル17上の原画によって変調された光(画像光)によって形成される投射画像が投射光学系18によりスクリーンや壁等の被投射面33に投射される。
図1では液晶パネル17を1つしか示していないが、実際にはR,G,B用の3つの液晶パネルが設けられており、該3つの液晶パネルからの画像光が合成されることで、フルカラー画像を投射することができる。
投射光学系18は、上下左右にシフト可能である。投射光学系18をシフトさせることにより、被投射面33上での投射画像の投射位置をシフトさせることができる。
また、プロジェクタには、コントローラ19が設けられている。該コントローラ19は、色検出センサ(色検出手段)27を駆動するセンサ駆動部20と、色検出センサ27による色検出エリアを設定するエリア選択部24とを含む。さらに、コントローラ19は、色ゲイン補正回路15に入力される色ゲイン補正信号34を算出する映像補正量算出部21を含む。色ゲイン補正信号34に応じて投射映像信号のR,G,Bのうちいずれかの色ゲインが補正され、その結果、投射画像の色が補正される。
色検出センサ27は、プロジェクタの筐体内に設けてもよいし、筐体の外部に(プロジェクタの近傍にプロジェクタ本体とは別体として)設置してもよい。また、色検出センサ27は色検出専用のセンサでもよいし、投射光学系18のAFのための測距センサ等としても用いられるセンサであってもよい。
32はユーザによって操作される不図示のリモコンユニット(操作手段)からのリモコン信号を検出するリモコン受光部である。
31は色検出エリアとして選択可能な複数の色検出可能エリア(これについては後述する)を被投射面33上に表示させるとともに、実際に色検出を行う色検出エリアをユーザに選択させるエリア表示/選択部である。エリア表示/選択部31は、リモコンユニットからのエリア選択開始信号をリモコン受光部32で受信することに応じて色検出可能エリアをOSC部28を通じて被投射面33上に表示させる。また、エリア表示/選択部31は、リモコンユニットからのエリア選択信号を通じて色検出エリアをユーザに選択させる。エリア表示/選択部31およびエリア選択部24により検出エリア変更手段が構成される。
次に、本実施例における壁色補正について説明する。図2は、本実施例のプロジェクタによって投射される画像(投射画像)の投射領域と色検出センサ27による色検出エリアとの関係を示している。
45は本実施例のプロジェクタを示している。46は図1に示した投射光学系18を収容した投射レンズである。43は投射レンズ46から被投射面Sに投射画像が投射されている領域(以下、画像投射領域という)である。投射画像は、被投射面Sのうち第1の色領域40と第2の色領域41にまたがるように投射されている。
42は色検出センサ27の色検出可能エリア(最大色検出可能エリア)であり、図2では画像投射領域43より若干大きなサイズを有する。ただし、色検出可能エリアを画像投射領域と同じに又は画像投射領域より小さくしてもよい。
色検出可能エリア42内において実際に色の検出を行う色検出エリアの選択を容易にするために、本実施例では、色検出可能エリア42を色検出センサ27に設けられた複数の受光領域に対応するように複数に分割している。そして、分割された複数の色検出可能エリア(以下、分割色検出可能エリアという)を示す分割線が被投射面S上に投射される。具体的には、分割線の画像データをOSD(オンスクリーン表示)部28を通じてデジタル信号処理回路13に入力し、デジタル信号処理回路13において生成される投射映像信号(例えば、白色画像)に重畳されるようにする。図2には、色検出可能エリアが縦方向に9分割され、横方向に10分割されて、90個の分割色検出可能エリアが形成されている例を示している。
ユーザは、リモコンユニット(又はプロジェクタ上に設けられたスイッチ等)の操作を通じて90個の分割色検出可能エリアから色検出を行うべきエリアである色検出エリアを選択する。リモコンユニットの操作により、色検出エリアの位置およびサイズのうち少なくとも一方を変更することができる。
図2では、6つのひとまとまりの分割色検出可能エリアのグループが色検出エリア44として選択された場合を示している。ただし、色検出エリアとして選択可能な分割色検出可能エリアは1つでもよいし、6つ以外の2つ以上の複数個であってもよい。
図2に示す例では、投射画像が被投射面S上において互いに色が異なる第1の色領域40と第2の色領域41に投射されるが、投射画像のうち中央を含む主要部が第1の色領域40に投射される。このため、色検出エリア44を第1の色領域40内から選択している。これにより、被投射面Sのうち投射画像の主要部が投射される領域(第1の色領域40)の色に応じた精度の高い壁色補正が可能となる。
投射光学系18のズーム状態が変更されることによって画像投射領域43が変化した場合は、該ズーム状態の変更に応じて自動的に色検出エリア44の位置およびサイズが変更されるようにすることが好ましい。これにより、投射光学系18のズーム状態にかかわらず、精度の高い壁色補正が可能となる。
次に、図1と図3のフローチャートを用いて、本実施例のプロジェクタの壁色補正処理の手順について説明する。この処理は、CPU等によって構成されるコントローラ19がコンピュータプログラムに従って実行する。
リモコンユニットからのエリア選択開始信号に応じて壁色補正がスタートすると、コントローラ19は、ステップS101において白色画像に分割色検出可能エリアの分割線を重畳した画像を被投射面Sに投射させる。
次に、ステップS102では、コントローラ19は、リモコンユニットからのエリア選択信号がリモコン受光部32を通じて入力されたか否か(リモコンユニットが操作されたか否か)を判別する。エリア選択信号が入力された場合はステップS103に進み、入力されない場合はステップS104に進む。
ステップS103では、コントローラ19は、エリア表示/選択部31に、エリア選択信号に応じて複数の分割色検出可能エリアのなかから色検出エリアを設定させる。このとき、エリア選択信号に応じて色検出エリアとして設定される領域が上下左右にシフトしたりグループ化されたりして色検出エリアの位置やサイズが変更される。そして、色検出エリアが確定されると、エリア表示/選択部31からエリア選択信号30がコントローラ19内のエリア選択部24に入力されるとともに、エリア表示信号29がOSD部28に入力される。コントローラ19はステップS104に進む。
ステップS104では、コントローラ19は、リモコンユニットにおいてズーム操作がなされたか否かを判別する。ズーム操作がなされた場合はステップS105に進み、ズーム操作がなされていない場合はステップS106に進む。
ステップS105では、コントローラ19は、投射光学系18のズーム状態を変更するとともに、該ズーム状態に応じて色検出エリアの位置およびサイズを変更する。そして、ステップS106に進む。
ステップS106では、コントローラ19は、センサ駆動部20を通じて色検出センサ27を駆動し、被投射面33のうち色検出可能エリア(図2中の43で示すエリア)からの反射光を光電変換させる。そして、該光電変換により生成された色センサ検出信号26をエリア選択部24に入力させる。エリア選択部24は、色センサ検出信号26のうちエリア選択信号30に応じて選択された色検出エリアからの信号のみを、色センサ出力信号23として映像補正量算出回路21に入力する。
そして、ステップS107では、コントローラ19内の映像補正量算出回路21は、入力された色センサ出力信号23を用いて被投射面33の色を検出し、該検出した色に基づいて色ゲイン補正信号34を演算して色補正回路14内の色ゲイン補正回路15に入力する。色ゲイン補正回路15は、色ゲイン補正信号34の値に応じて、被投射面33に投射された白色画像の反射光が所定の白色になるように、投射映像信号のR,G,Bのうちいずれかの色ゲインを補正する。
なお、本実施例では、色補正をR,G,Bの3原色のゲインを補正することにより行うが、色差による色補正等を行ってもよい。
本実施例によれば、被投射面33の色を検出するために適した色検出エリアの位置およびサイズのうち少なくとも一方を、ユーザの選択操作に応じて変更することができる。このため、被投射面33の色が一様でない、入力信号のフォーマットの違いによって投射画像(画像投射領域43)のサイズが異なる、投射画像がシフト又はズームされる等の様々な状況下でも、良好な壁色補正を行うことができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
上記実施例では、光変調素子として液晶パネルを用いたプロジェクタについて説明したが、マイクロミラーデバイス(DMD)等の他の光変調素子を用いたプロジェクタにも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
良好な壁色補正を行える画像投射装置を提供できる。
【符号の説明】
【0010】
14 色補正回路
17 液晶パネル
19 コントローラ
27 色検出センサ
31 エリア表示/選択部
33 被投射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じて光変調素子を駆動し、該光変調素子からの光により形成される投射画像を被投射面に投射する画像投射装置であって、
前記被投射面にて設定された検出エリアで反射した反射光を受けて、該検出エリアの色を検出する色検出手段と、
前記検出エリアの色に基づいて前記投射画像の色を補正するように前記画像信号に対する補正処理を行う補正手段と、
前記検出エリアの位置およびサイズのうち少なくとも1つを、ユーザの選択操作に応じて変更する検出エリア変更手段とを有することを特徴とする画像投射装置。
【請求項2】
前記色検出手段は、前記反射光を受ける複数の受光領域を有し、
前記検出エリア変更手段は、前記複数の受光領域に対応する複数の検出可能エリアを前記光変調素子を介して前記被投射面に投射させ、該複数の検出可能エリアの中からユーザの選択操作によって選択された1つの検出可能エリア又は2つ以上の検出可能エリアのグループを前記検出エリアとして設定することを特徴とする請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項3】
前記投射画像を前記被投射面に投射する投射光学系を有し、
前記検出エリア変更手段は、前記投射光学系のズーム状態に応じて前記検出エリアの位置およびサイズを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−133746(P2011−133746A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294452(P2009−294452)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】