説明

画像投射装置

【課題】温度にかかわらず、投射光学系の所定量の電動シフト駆動を安定的に行う。
【解決手段】画像投射装置100は、光変調素子LPにより変調された光を被投射面に投射する投射光学系1aと、該投射光学系を、光変調素子に対して、投射光学系の光軸に直交する方向に移動させるシフト機構3,5,7と、該シフト機構を駆動するアクチュエータ10x,10yと、アクチュエータを制御するコントローラ60と、該コントローラが、投射光学系の移動指示に応じて、シフト機構が所定量だけ駆動されるようにアクチュエータを制御するために用いるパラメータを記憶したメモリ70と、温度を検出する温度検出器50とを有する。コントローラは、メモリから読み出したパラメータを、温度検出器により検出された温度に応じて、移動指示に応じたシフト機構の駆動量が所定量に維持されるように変更し、該変更したパラメータを用いてアクチュエータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタ等の画像投射装置に関し、特に投射光学系のシフト機能を有する画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投射装置には、装置の位置を固定したままスクリーン等の被投射面上での画像投射位置を移動させる機能を有するものがある。この機能は、投射光学系を、液晶パネル等の光変調素子に対して、投射光学系の光軸に直交するシフト方向に移動(シフト)させることで実現される。特許文献1には、モータ等のアクチュエータを用いて投射光学系の電動シフト駆動を行う画像投射装置が開示されている。
【0003】
また、投射光学系をシフト可能に支持するシフト機構には、特許文献1にて開示されているようなガイドバー方式のシフト機構や、いわゆる片寄せ構造を有するシフト機構がある。ガイドバー方式のシフト機構は、投射光学系を支持する支持部材(可動部材)を、シフト方向に延びるガイドバーに対してスライド可能に係合させた構造を有する。また、片寄せ構造を有するシフト機構は、投射光学系を支持する支持部材を、光軸方向での基準面を形成するベース部材に対してばね等の付勢部材の付勢力によって圧接させた片寄せ状態にて、該ベース部材によりシフト方向にガイドする構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−062434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのシフト機構では、画像投射装置を使用する環境の温度の変化に伴い、支持部材とガイドバーとの間や支持部材とベース部材との間といったシフト機構内の摩擦抵抗が変動する。これにより、電動シフト駆動を行うアクチュエータの負荷が変動する。このため、温度にかかわらず、投射光学系の所定移動量の電動シフト駆動を安定的に行うことが困難である。
【0006】
例えば、複数台のプロジェクタによって互いに隣り合って連続する又は一部が重なる複数の画像を投射する場合(マルチスクリーン投射やスタック投射を行う場合)には、0.5画素ピッチでの画像投射位置の微調整が求められる。しかし、シフト機構内での摩擦抵抗が増加すると、制御上では0.5画素に相当する投射光学系の移動量を得るための電動シフト駆動が行われたとしても、実際には0.5画素より小さい画素に相当する投射光学系の移動量しか得られない可能性がある。
【0007】
そして、このような問題は、支持部材をベース部材に対して圧接させている片寄せ構造のシフト機構において特に顕著に生じ得る。
【0008】
本発明は、アクチュエータによる投射光学系の電動シフト駆動が可能な画像投射装置であって、温度にかかわらず、投射光学系の所定量の電動シフト駆動を安定的に行えるようにした画像投射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての画像投射装置は、光源からの光を変調する光変調素子と、該光変調素子により変調された光を被投射面に投射する投射光学系と、該投射光学系を、光変調素子に対して、投射光学系の光軸に直交する方向に移動させるシフト機構と、該シフト機構を駆動するアクチュエータと、アクチュエータを制御するコントローラと、該コントローラが、投射光学系の移動指示に応じて、シフト機構が所定量だけ駆動されるようにアクチュエータを制御するために用いるパラメータを記憶したメモリと、温度を検出する温度検出器とを有する。そして、コントローラは、メモリから読み出したパラメータを、温度検出器により検出された温度に応じて、移動指示に応じたシフト機構の駆動量が所定量に維持されるように変更し、該変更したパラメータを用いてアクチュエータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度にかかわらず、投射光学系の所定量の電動シフト駆動を安定的に行うことが可能な画像投射装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例であるプロジェクタに設けられたレンズシフト機構の正面図。
【図2】図1のレンズシフト機構の部分断面図。
【図3】実施例のプロジェクタの外観を示す図。
【図4】実施例のプロジェクタのレンズシフト機構を含む光学構成を示す図。
【図5】実施例のプロジェクタの制御系の構成を示すブロック図。
【図6】実施例のプロジェクタにおけるレンズシフト制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図3には、本発明の実施例である液晶プロジェクタ(画像投射装置)100の外観を示している。1は投射レンズ鏡筒であり、投射光学系としての投射レンズ1aを内部に保持している。
【0014】
なお、本実施例では、液晶パネルを光変調素子として用いた液晶プロジェクタについて説明するが、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)等の他の光変調素子を用いた画像投射装置も本発明の実施例に含まれる。
【0015】
図4には、液晶プロジェクタ100の光学構成の一部を示している。不図示の光源ランプからの白色の無偏光光は、不図示の偏光変換素子やダイクロイックミラー、および偏光ビームスプリッタPBS等により構成される色分解合成光学系βに入射する。色分解合成光学系βは、入射した光を、R,G,Bの3色の光に分解し、かつ特定の偏光方向を有する偏光光に変換して液晶パネルLPに導く。図4は、3色の光のうち1色の光に対応する液晶パネルLPのみを示している。
【0016】
液晶パネルLPは、液晶プロジェクタ100に外部から入力された映像信号に応じた原画を形成し、該原画によって(つまりは入力映像信号に応じて)入射光を変調する。液晶パネルLPによって変調された1色の光L1は、偏光ビームスプリッタPBSを介して、色分解合成光学系βに含まれるダイクロイックプリズムDPに入射する。また、他の不図示の液晶パネルによって変調された2色の光も、ダイクロイックプリズムDPに導かれる。
【0017】
ダイクロイックプリズムDPは、入射した3色の変調光を合成して、投射レンズ鏡筒1内の投射レンズ1aに導く。該投射レンズ1aは、合成された3色の変調光を不図示のスクリーン等の被投射面に投射する。これにより、入力映像信号に対応する投射画像が被投射面上に表示される。
【0018】
投射レンズ鏡筒1は、後述するレンズシフト機構の一部である可動部材としてのXシフト板3に固定されている。Xシフト板3は、もう1つの可動部材であるYシフト板5により、図4の紙面に垂直な方向Xに移動可能に保持されている。Xシフト板3は、投射レンズ鏡筒1を直接支持する部材であり、かつ投射レンズ鏡筒1とともに方向Xに移動する部材である。
【0019】
Yシフト板5は、固定されたベース部材であるシフトベース7により、図4中の上下方向Yに移動可能に保持されている。Yシフト板5は、投射レンズ鏡筒1とともに上下方向Yに移動する部材である。
【0020】
方向X,Yは、投射レンズ1aの光軸AXLに直交する方向である。以下、方向X,Yをシフト方向ともいう。このように、投射レンズ鏡筒1とXおよびYシフト板3,5は、色分解合成光学系β、液晶パネルLPおよびシフトベース7に対して、シフト方向に移動可能(シフト可能)に保持される。
【0021】
次に、図1および図2を用いて、レンズシフト機構の構成についてより詳細に説明する。図1はレンズシフト機構を投射レンズの光軸方向から見たときの構成を、図2は該レンズシフト機構の一部の側面断面を示している。なお、レンズシフト機構において、X,Yシフト板3,5、X,Y片寄せビス4,6およびその他の一部の構成要素を除き、投射レンズ鏡筒1を図4中のX方向(左右方向)に移動させるための構成要素には符号の最後にxを付す。また、投射レンズ鏡筒1を図4中のY方向(上下方向)に移動させるための構成要素には符号の最後にyを付す。さらに、投射レンズの光軸方向のうち被投射面側を前側とし、その反対側(液晶パネル側)を後側とする。
【0022】
投射レンズ鏡筒1のフランジ部は、ビス2によりXシフト板3に固定されている。Xシフト板3の4つの角部には、X方向に延びる長穴部であるXガイド穴部3aが形成されている。また、Yシフト板5の4つの角部には、Y方向に延びる長穴部であるYガイド穴部5aが形成されている。
【0023】
図2に示すように、シフトベース7には円筒形状の突出部7pが前方に突出するように形成されており、この突出部7pは、Yシフト板5のYガイド穴部5aに挿入されている。なお、突出部7pは、シフトベース7の4箇所に形成されており、これら4箇所の突出部7pがそれぞれ4つのYガイド穴部5aに挿入されている。
【0024】
突出部7pの外周には、光軸方向前後に2分割されたカラー8a,8bが組み付けられている。カラー8a,8bのそれぞれに形成されたフランジ部の間には、Y片寄せばね(付勢部材)9が配置されている。Y片寄せばね9は、カラー8a,8bを光軸方向前後に互いに離すように付勢力を作用させる。
【0025】
突出部7pの内周部には、Y片寄せビス6の軸部が締め込まれ、その頭部がカラー8aのフランジ部におけるY片寄せばね9側とは反対側の面(前面)に当接する。一方、カラー8bのフランジ部におけるY片寄せばね9側とは反対側の面(後面)は、Yシフト板5におけるYガイド穴部5aとこれよりも前側にて広く形成された穴部5bとの段差面に当接する。このようなY片寄せガイド構造により、Y片寄せばね9の付勢力が、Yシフト板5を、光軸方向での位置決め基準面となるシフトベース7の前面に圧接させながら、Yシフト板5をシフトベース7に対してY方向にガイドする。
【0026】
また、詳しくは図示しないが、Xシフト板3をYシフト板5に対してX方向にガイドするX片寄せガイド構造も、Y片寄せガイド構造と同様に構成されている。すなわち、Yシフト板5には円筒形状の突出部(図示せず)が前方に突出するように形成されており、この突出部は、Xシフト板3のXガイド穴部3aに挿入されている。なお、突出部は、Yシフト板5の4箇所に形成されており、これら4箇所の突出部がそれぞれ4つのXガイド穴部3aに挿入されている。
【0027】
突出部の外周には、光軸方向前後に2分割されたカラー8a′,8b′が組み付けられている。カラー8a′,8b′のそれぞれに形成されたフランジ部の間には、不図示のX片寄せばね(付勢部材)が配置されている。X片寄せばねは、カラー8a′,8b′を光軸方向前後に互いに離すように付勢力を作用させる。
【0028】
また、突出部の内周部には、X片寄せビス4の軸部が締め込まれ、その頭部がカラー8a′のフランジ部におけるX片寄せばね側とは反対側の面(前面)に当接する。一方、カラー8b′のフランジ部におけるX片寄せばね側とは反対側の面(後面)は、Xシフト板3におけるXガイド穴部3aとこれよりも前側にて広く形成された穴部3bとの段差面に当接する。このようなX片寄せガイド構造により、X片寄せばねの付勢力が、Xシフト板3を、Yシフト板5を介してシフトベース7の前面に圧接させながら、Xシフト板3をYシフト板5およびシフトベース7に対してX方向にガイドする。
【0029】
そして、以上説明したX,Y片寄せガイド構造により、投射レンズ鏡筒1は、シフトベース7に対して光軸方向においてガタなく保持される。したがって、レンズシフト機構内に光軸方向のガタが存在する場合に液晶プロジェクタを机や台の上に据え置いた状態と天井から吊した状態とで投射レンズ鏡筒が上下方向における互いに反対側に傾き、投射画像の画質が変動するという問題を解消できる。
【0030】
図1において、10yはアクチュエータとしてのYモータであり、モータビス11yによってシフトベース7に固定されている。Yモータ10yは、DCモータにより構成されている。
【0031】
Yモータ10yの回転は、モータギヤ12yおよびこれに噛み合うスクリューシャフトギヤ13yを介して、モータ支持板16yにより回転可能に支持されたスクリューシャフト14yに伝達される。モータ支持板16yは、ビス17yによってシフトベース7に固定されている。スクリューシャフト14yには、ナット15yが噛み合っている。ナット15yは、Yシフト板5に形成されたナット保持部5cにより保持されている。
【0032】
スクリューシャフト14yが回転すると、ナット15yがスクリューシャフト14yに沿ってY方向に移動する。これにより、ナット保持部5cによってナット15yを保持したYシフト板5、つまりは投射レンズ鏡筒1がY方向に駆動(電動シフト駆動)される。
【0033】
また、10xはアクチュエータとしてのXモータであり、モータビス11xによってシフトベース7に固定されている。Xモータ10xは、DCモータにより構成されている。
【0034】
Xモータ10xの回転は、モータギヤ12xおよびこれに噛み合うスクリューシャフトギヤ13xを介して、モータ支持板16xにより回転可能に支持されたスクリューシャフト14xに伝達される。モータ支持板16xは、ビス17xによってシフトベース7に固定されている。スクリューシャフト14xには、ナット15xが噛み合っている。ナット15xは、Xシフト板3に形成されたナット保持部3cにより保持されている。
【0035】
スクリューシャフト14xが回転するとナット15xがスクリューシャフト14xに沿ってX方向に移動する。これにより、ナット保持部3cによってナット15xを保持したXシフト板3、つまりは投射レンズ鏡筒1がX方向に駆動(電動シフト駆動)される。
【0036】
以上のように構成されたレンズシフト機構では、X,Yシフト板3,5がそれぞれ、片寄せ付勢力によって、Yシフト板5およびシフトベース7に圧接される。このため、X,Yシフト板3,5がそれぞれX方向およびY方向に移動する際には、Xシフト板3とYシフト板5との間およびYシフト板5とシフトベース7との間に摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗を低減するためにXシフト板3とYシフト板5との間およびYシフト板5とシフトベース7との間にグリスが塗布されるが、液晶プロジェクタ100の周囲温度(又は内部温度)の変化により摩擦抵抗が変動する。具体的には、高温では摩擦抵抗が小さくなり、低温では摩擦抵抗が大きくなる。
【0037】
このような摩擦抵抗の変動は、先に説明したマルチスクリーン投射やスタック投射を行う場合に要求される、0.5画素(約5μm)ピッチ等の微小量ずつの画像投射位置の調整に対応した投射レンズ鏡筒1の微小所定量の駆動を安定的に行うことを困難にする。
【0038】
そこで、本実施例では、液晶プロジェクタ100の制御系を図5に示すように構成している。
【0039】
40は投射レンズ鏡筒1のシフト方向への移動を指示する(以下、レンズ移動指示を入力するという)ためにユーザにより操作される操作部材としてのシフトスイッチである。シフトスイッチ40の1回のオン操作により、後述するコントローラ60に対して、1回のレンズ移動指示の入力が行われる。なお、シフトスイッチ40は、液晶プロジェクタ100の各種機能を遠隔操作するためのリモコン装置に設けられていてもよい。
【0040】
50は液晶プロジェクタ100の周囲温度(環境温度)又は内部温度を検出する温度センサ(温度検出器)である。コントローラ60は、レンズ移動指示の入力に応じてXモータ10xおよびYモータ10yを制御する。
【0041】
70はコントローラ60がXモータ10xおよびYモータ10yを制御するために用いる基準パラメータを記憶したメモリである。基準パラメータは、所定温度(例えば、常温)下において、コントローラ60が、1回のレンズ移動指示の入力に応じて、レンズシフト機構(投射レンズ鏡筒1)が所定量だけ駆動されるようにX,Yモータ10x,10yを制御するために用いられる。所定量は、例えば、投射画像の0.5画素に相当する駆動量である。
【0042】
そして、コントローラ60は、メモリ70から読み出した基準パラメータを、温度センサ50により検出された温度に応じて、1回のレンズ移動指示の入力に応じたレンズシフト機構の駆動量が上述した所定量に維持されるように変更(補正)する。そして、コントローラ60は、該変更後のパラメータ(以下、補正パラメータという)を用いてX,Yモータ10x,10yを制御する。
【0043】
なお、「駆動量が所定量に維持されるように」とは、必ずしも駆動量が所定量から外れることを禁止する意味ではなく、駆動量が所定量に対して一定の許容範囲(所定量と同じとみなせる範囲)に含まれればよい。
【0044】
基準パラメータの変更処理(補正処理)を行うためには、予め温度ごとにレンズシフト機構の駆動量を所定量とするのに実際に必要なパラメータを測定しておき、該測定パラメータと基準パラメータとの差を補正量として温度に対応付けてメモリ70に記憶させておく。そして、温度センサ50により検出された温度に対応する補正量をメモリ70から読み出し、その補正量と基準パラメータとから補正パラメータを求める。
【0045】
補正対象のパラメータとしては、X,Yモータ10x,10yをPWM制御方式で駆動する場合には、各モータにパルス駆動信号を印加する時間である駆動時間および該パルス駆動信号のデューティ比のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0046】
例えば、補正対象のパラメータとして各モータの駆動時間を用いる場合は、デューティ比を固定する。そして、温度センサ50により所定温度より低い温度が検出された場合は、その検出温度に対応した補正量だけ駆動時間を長くするように補正して、低温下で摩擦抵抗が増加しても、1回のレンズ移動指示の入力に応じたレンズシフト機構の駆動量を所定量に維持する。一方、温度センサ50により所定温度より高い温度が検出された場合は、その検出温度に対応した補正量だけ駆動時間を短くするように補正して、高温下で摩擦抵抗が減少しても、1回のレンズ移動指示の入力に応じたレンズシフト機構の駆動量を所定量に維持する。
【0047】
また、補正対象のパラメータとしてデューティ比を用い、駆動時間を固定してもよいし、駆動時間とデューティ比の両方を補正対象のパラメータとして用いてもよい。
【0048】
さらに、X,Yモータ10x,10yをPWM制御方式ではなく印加電圧制御方式で駆動する場合には、補正対象のパラメータとして、各モータに印加する駆動電圧を用いることもできる。
【0049】
なお、レンズ移動指示が複数回続けて入力された場合は、レンズシフト機構の所定量の駆動がレンズ移動指示の入力回数分行われる。これにより、ユーザの任意のシフト方向での位置まで投射レンズ鏡筒1を移動させることができる。
【0050】
図6のフローチャートには、本実施例においてコントローラ60が行うレンズシフト制御の手順を示している。
【0051】
ステップS101において、コントローラ60は、シフトスイッチ40がオン操作されたか否か(レンズ移動指示が入力されたか否か)を判別する。シフトスイッチ40がオン操作された場合はステップS102に進み、コントローラ60は、メモリ70から基準パラメータを読み出す。
【0052】
次に、ステップS103において、コントローラ60は、温度センサ50を通じて温度(周囲温度または内部温度)を検出する。
【0053】
そして、ステップS104において、コントローラ60は、検出された温度に対応する補正量をメモリ70から読み出して、該補正量と基準パラメータとから補正パラメータを算出する。
【0054】
次に、ステップS105において、コントローラ60は、算出した補正パラメータを用いてX,Yモータ10x,10yを制御する。そして、ステップS101に戻る。
【0055】
以上説明したように、本実施例によれば、レンズシフト機構が片寄せ構造を有する場合であっても、温度(周囲温度または内部温度)にかかわらず、投射レンズ鏡筒1の所定量の電動シフト駆動を安定的に行うことができる。
【0056】
本実施例では、レンズシフト機構が片寄せ構造を有する場合について説明したが、レンズシフト機構が特許文献1に開示されているようなガイドバー方式である場合でも、本実施例にて説明したレンズシフト制御を用いることができる。
【実施例2】
【0057】
実施例1では、温度センサ50により検出された温度が所定温度から変化した場合に基準パラメータを補正することについて説明した。しかし、検出された温度が所定温度であるか否かにかかわらず、レンズシフト機構の駆動方向(投射レンズ鏡筒1の移動方向)および液晶プロジェクタ100の姿勢のうち少なくとも一方に応じて基準パラメータを補正してもよい。
【0058】
例えば、液晶プロジェクタ100が通常の据え置き状態であっても、レンズシフト機構の駆動方向が上方向である場合と下方向である場合とでは、重力が負荷として作用するか否かが異なる。このため、例えば、重力が負荷として作用する上方向への駆動においては、X,Yモータ10x,10yの駆動時間を長くしたり印加電圧を上げたりするようにパラメータ補正を行うとよい。
【0059】
また、液晶プロジェクタ100が天吊り状態である場合には、据え置き状態での下方向に相当する上方向への駆動において、X,Yモータ10x,10yの駆動時間を長くしたり印加電圧を上げたりするようにパラメータ補正を行うとよい。
【0060】
さらに、レンズシフト機構の駆動方向が左右方向である場合に、駆動方向が上下方向である場合と異なるパラメータを用いてX,Yモータ10x,10yを制御するようにパラメータ補正を行うようにしてもよい。
【0061】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
温度にかかわらず安定的な投射光学系のシフト駆動を行える画像投射装置を提供できる。
【符号の説明】
【0063】
1 投射レンズ鏡筒
3,5 シフト板
7 シフトベース
10x,10y モータ
50 温度センサ
60 コントローラ
70 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を変調する光変調素子と、
該光変調素子により変調された光を被投射面に投射する投射光学系と、
該投射光学系を、前記光変調素子に対して、前記投射光学系の光軸に直交する方向に移動させるシフト機構と、
該シフト機構を駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御するコントローラと、
該コントローラが、前記投射光学系の移動指示に応じて、前記シフト機構が所定量だけ駆動されるように前記アクチュエータを制御するために用いるパラメータを記憶したメモリと、
温度を検出する温度検出器とを有し、
前記コントローラは、前記メモリから読み出した前記パラメータを、前記温度検出器により検出された温度に応じて、前記移動指示に応じた前記シフト機構の駆動量が前記所定量に維持されるように変更し、該変更したパラメータを用いて前記アクチュエータを制御することを特徴とする画像投射装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記アクチュエータの駆動時間、前記アクチュエータに印加するパルス駆動信号のデューティ比および前記アクチュエータに印加する駆動電圧のうちいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項3】
前記シフト機構は、前記投射光学系を支持する又は該投射光学系とともに前記光軸に直交する方向に移動する可動部材と、前記投射光学系の光軸方向における前記可動部材の位置決め基準となるとともに該可動部材を前記シフト方向にガイドするベース部材と、前記可動部材を前記ベース部材に圧接させる付勢力を発生する付勢部材とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投射装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記光軸に直交する方向のうち前記シフト機構による前記投射光学系の移動方向および該画像投射装置の姿勢のうち少なくとも一方に応じて前記パラメータを変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像投射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168418(P2012−168418A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30432(P2011−30432)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】