説明

画像撮影装置、及び画像撮影方法

【課題】パノラマ撮影において撮影範囲の中で最初に撮影した撮影領域と最後に撮影した撮影領域との間の撮影の時間差を短縮して、合成画像の写真品質や情報精度を高めることができる画像撮影装置を提供する。
【解決手段】最初にファーストカメラスキャンを実行して各撮影領域内の撮影対象物の距離情報を取得する。その後、すべての撮影領域の距離情報に基づいて撮影範囲全体の総合距離ヒストグラムを作成し、総合距離ヒストグラムに基づいて本番撮影でレンズに設定する複数種類の焦点位置を設定する。その後、複数種類の焦点位置から選択した焦点位置を撮影領域ごとにレンズに設定して本番撮影を連続的に行うセカンドカメラスキャンを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影範囲を分割して設定したそれぞれの撮影領域でレンズの焦点位置を異ならせた複数枚の写真画像を撮影する画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パノラマ風景写真、医療用高解像度写真、山岳航空写真等の分野において、撮影範囲を分割して設定したそれぞれの撮影領域でレンズの焦点位置を異ならせた複数枚の写真画像を撮影する画像撮影装置が実用化されている。
【0003】
特許文献1には、パノラマ風景写真を自動撮影する画像撮影装置が示される。ここでは、撮影範囲を分割して複数の撮影領域を予め設定すると、デジタルカメラの支持機構がデジタルカメラの画角をそれぞれの撮影領域に自動的に位置決めて連続的に写真撮影する。
【0004】
特許文献2には、医療用高解像度写真の撮影範囲を自動撮影する画像撮影装置が示される。ここでは、撮影領域を分割して設定した撮影領域で写真撮影が行われるごとに撮影した写真を順次合成して表示装置に画像表示している。
【0005】
ところで、写真画像をつなぎ合わせて得られる合成写真の解像度を上げるために、焦点距離の長いレンズを用いて視野角を狭くし、それぞれの領域をより拡大して撮影するという方法がある。しかし、焦点距離の長いレンズでは、焦点距離の短いレンズに比べ、撮影距離、絞り値、焦点位置等の撮影条件が同じであれば、被写界深度が浅くなる。このため撮影領域内に様々な距離の被写体が混在すると、焦点位置付近の被写体にはピントが合うものの、焦点位置から距離が離れた被写体ではピントがぼけて解像度が低下した画像となってしまい、撮影領域全体を高解像度に撮影することができない。
【0006】
このため、1つの撮影領域でレンズの焦点位置を複数段階に変化させて複数枚の写真画像を取り込み、それぞれの写真画像のピントの合った部分だけをつなぎ合わせて隅々までピントが合った画像を合成する技術が実用化されている。
【0007】
特許文献3には、分割されていない1枚の写真撮影において、自動的にレンズの焦点位置を複数段階に変化させて複数枚の写真画像を取り込む制御が示される。ここでは、写真撮影に先立たせて、レンズの焦点位置を複数段階に異ならせて、撮影領域の予備撮影を行って撮影画像内の合焦点を判断し、本番撮影でレンズに設定する複数段階の焦点位置を設定している。
【0008】
特許文献4には、撮影前に被写体(撮影対象物)が存在する位置と距離を事前に把握し、被写体が存在しない焦点位置は撮影しないという制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−324380号公報
【特許文献2】特開平9−173298号公報
【特許文献3】特開2009−92892号公報
【特許文献4】特開平10−108057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これら従来技術の組み合わせで、パノラマ撮影装置を構成した場合、各領域の撮影直前に、毎回被写体状況を取得し、撮影に使用する焦点位置を決定するという前処理を行うため、2つの撮影領域の撮影間隔が広がることになる。
【0011】
撮影領域が2〜5枚程度であれば、前記前処理に要する時間はそれほど問題にならない。しかし、広範囲な撮影領域を長時間かけて多数枚の分割撮影を行う場合、前処理に要する時間も累積的に大きくなり、無視できなくなってくる。その結果、撮影範囲の中で最初に撮影した撮影領域と最後に撮影した撮影領域とでは大きな時間差が発生して、明るさや被写体状況(影の方向、人通り等)が大幅に異なる場合がある。そして、そのような撮影領域の画像を合成して得られた合成写真は、きわめて不自然なものとなり、写真品質や情報精度が低いと評価されてしまう。
【0012】
本発明は、パノラマ撮影において撮影範囲の中で最初に撮影した撮影領域と最後に撮影した撮影領域との間の撮影の時間差を短縮して、合成画像の写真品質や情報精度を高めることができる画像撮影装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像撮影装置は、撮影範囲を分割した個別の撮影領域を撮影可能であって、レンズの焦点位置を変化させて撮影領域内の合焦点情報を出力可能な撮影手段と、前記撮影手段を移動させて異なる前記撮影領域を前記撮影手段に設定可能な移動手段と、前記撮影手段と前記移動手段を制御して、それぞれの撮影領域について撮影画像を取得させる制御手段とを備えるものである。そして、前記制御手段は、前記複数の撮影領域でレンズの焦点位置を変化させて被写体までの距離を測定し、前記複数の撮影領域での測定結果に基いて撮影領域ごとに焦点位置を定めた後に、前記撮影手段と前記移動手段を制御して、撮影領域ごとに定めた焦点位置をレンズに設定して前記複数の撮影領域について連続撮影を実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像撮影装置では、移動手段を用いて複数の撮影領域を次々に撮影手段に設定してレンズの焦点位置の決定に必要な情報をまとめて取得する。そして、取得した情報に基づいて個別の撮影領域で用いるレンズの焦点位置を決定した後に、複数の撮影領域の本番撮影を連続的に実行する。
【0015】
従って、撮影範囲の中で最初に撮影した撮影領域と最後に撮影した撮影領域との間の撮影の時間差を短縮できる。また、すべての撮影領域で取得した情報に基づいてレンズの焦点位置の選択肢を設定できるため、撮影領域ごとにばらばらなレンズの焦点位置で撮影が行われることを回避できる。これにより、合成画像の写真品質や情報精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】パノラマ撮影システムの構成の説明図である。
【図2】手動撮影画面の説明図である。
【図3】設定画面の説明図である。
【図4】自動撮影画面の説明図である。
【図5】パノラマ自動撮影モードのフローチャートである。
【図6】マルチエリアフォーカスセンサによる合焦点検出位置の説明図である。
【図7】ヒストグラムを用いた基本焦点位置の設定の説明図である。
【図8】撮影時間短縮効果の説明図である。
【図9】実施例1におけるパノラマ撮影範囲の説明図である。
【図10】撮影領域の設定の説明図である。
【図11】取得した距離情報の説明図である。
【図12】撮影領域ごとの基本焦点位置の選択の説明図である。
【図13】合焦点の水準の違いによる焦点位置の違いの説明図である。
【図14】実施例2における基本焦点位置の設定の説明図である。
【図15】実施例2における撮影領域ごとの基本焦点位置の選択の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、情報取得のカメラスキャンに続いて写真撮影のカメラスキャンを行う限りにおいて、実施形態の構成の一部又は全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0018】
本実施形態では、パノラマ風景写真の撮影システムを説明するが、本発明は、医療用高解像度写真、山岳航空写真等の分野でも利用できる。
【0019】
なお、特許文献1〜4に示される画像撮影装置の構成やカメラ制御、写真画像のパノラマ合成処理等に関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0020】
<比較例>
近年、デジタルスチルカメラ用撮像素子の高解像度化が進み、高解像度の写真が誰にでも手軽に撮影できるようになった。また、カメラ単体での撮影では得られなかった広範囲を1枚に再現するパノラマ写真も、カメラ内蔵のパノラマ撮影アシスト機能等を利用することで、簡単に得られるようになっている。パノラマ撮影では、カメラの方向を一定角度ずつ移動させながら複数枚の写真を撮影し、撮影後にパソコンのスティッチングソフトを使用して合成処理を行う。
【0021】
カメラ内蔵のパノラマ撮影アシスト機能を利用して風景等のパノラマ撮影を行う場合には、カメラ単体での広角域の撮影可能範囲を補い、より広画角の画像を得ることが目的となる。このため、撮影は広角系のレンズで行われ、分割する枚数も、せいぜい2〜5枚程度である。これに対して業務用途では、望遠系のレンズを使用し、分割する1コマ(撮影領域)の撮影範囲を狭めて高解像度に撮影する高精細多分割パノラマ撮影が、イベントや文化財の保存を目的に行われている。
【0022】
また、風景のパノラマ撮影においては、撮影範囲に含まれる撮影対象物の距離が、近距離から遠距離まで広範囲にわたることがある。このため、高解像度を目的に望遠系のレンズを使用して撮影すると、広角系レンズを使用する場合には問題とならなかった被写界深度の浅さが問題となってくる。
【0023】
被写界深度の浅さを補うために、レンズの焦点位置を複数段階に異ならせて同じ撮影領域を複数枚撮影し、撮影後に複数枚の画像を合成処理して被写界深度を稼ぐ、焦点合成という方法があり、単体の専用ソフトウエアとしても市販され広く利用されている。
【0024】
しかし、高精細パノラマ撮影では、分割枚数が多いことに加え、撮影領域毎に焦点合成用の焦点位置を異ならせた複数枚の画像を撮影する必要があり、トータルの撮影枚数は膨大となる。また、これに伴い撮影時間も長くなり、条件次第では数時間に及ぶこともある。
【0025】
野外で行う高精細パノラマ撮影においては、撮影時間が長くなると、撮影開始時と撮影終了時で環境が大きく変化し、大きな問題を引き起す。一例としては、「太陽の位置による影の向きの変化」、「天候による明るさの変化」、「風による雲の変化」が挙げられる。これらの環境変化があまりにも大きいと、撮影後に行うスティッチング処理で、きれいに繋がらないという不具合を生じ、長時間かけて撮影した写真が使えず無駄になることがある。また、トータルの撮影枚数の多さから、撮影後に行う画像のスティッチングや各焦点位置の画像の合成処理への負担も大きい。
【0026】
また、高精細パノラマ撮影においては、撮影後に行う各焦点位置で撮影した画像の合成やスティッチング合成処理が画質に大きな影響を与える。そのため、できるだけコマ間の撮影条件を一致させておくことが、撮影時間の短縮と並び重要である。
【0027】
ここで、特許文献4に示される制御をパノラマ撮影に応用した場合、被写体が存在しない距離での余分な撮影はしないので、トータルの撮影枚数の削減は行える。しかし、純粋な撮影動作よりも時間のかかる被写体状況の取得を、コマ毎の撮影前に単独で毎回行うことになるので、全てのコマを撮影する時間については長くなる(図8参照)。また、各コマは、そのコマの単独の状況だけを基に独立して撮影されるため、パノラマ撮影の各コマ間の相関を考慮した撮影を行うことは難しい。
【0028】
特許文献3では、被写界状況に応じて各被写体に合焦点した画像を効率良く取得しているが、パノラマ撮影に適用した場合には、特許文献4と同様、各コマ独立での撮影となるため、コマ間の撮影条件を統一することが難しい。
【0029】
<実施の形態>
これに対して、本実施例では、撮影時間の短縮とコマ毎の相関を考慮した撮影が可能な、高精細画像のパノラマ撮影システムが提供される。本実施例のパノラマ画像の撮影方法は、レンズの焦点位置を変化させて撮影領域の合焦点情報を出力可能なカメラを用いて、撮影範囲に設定した複数の撮影領域の画像を撮影する。
【0030】
第1工程の一例であるファーストカメラスキャンでは、個別の撮影領域でレンズの焦点位置を変化させて、撮影領域内の複数の検出位置について所定水準の合焦点が得られる焦点位置を測定する操作を、複数の撮影領域で連続的に実行する。
【0031】
続く第2工程の一例である撮影条件設定では、ファーストカメラスキャンでの測定結果に基いて、複数の撮影領域のすべての検出位置について所定水準の合焦点が得られる複数種類の基本焦点位置を定める。
【0032】
さらに、第3工程の一例であるセカンドカメラスキャンでは、複数の撮影領域の撮影を連続的に実行する。撮影条件設定で設定した複数種類の基本焦点位置から選択した個別の焦点位置をレンズに設定して、それぞれの撮影領域でレンズの焦点位置を異ならせた複数回の撮影を行う。
【0033】
そして、第2工程の一例である撮影条件設定では、すべてのコマの距離情報に基づいて撮影範囲全体の総合距離ヒストグラムを作成し、総合距離ヒストグラムに基づいて撮影に使用する複数の基本焦点位置を設定する。
【0034】
<画像撮影装置>
図1はパノラマ撮影システムの構成の説明図である。図2は手動撮影画面の説明図である。図3は設定画面の説明図である。図4は自動撮影画面の説明図である。
【0035】
図1の(a)、(b)に示すように、パノラマ撮影システム200は、カメラ201を自動雲台202に取り付けており、カメラ201及び自動雲台202は、表示部204を有する制御装置203によって総合的に制御される。制御装置203は、入力部205を通じて撮影条件等が入力操作され、演算処理した各種情報を表示部204に表示する。
【0036】
自動雲台202のパン機構206は、カメラ201を垂直な軸の周りで回転させて水平方向に画角を移動させる。自動雲台202のチルト機構207はカメラ201を水平な軸の周りで回転させて垂直方向に画角を移動させる。自動雲台202のモータコントローラ208は、制御装置203からの指令信号に応じてパン機構206及びチルト機構207を作動させる。
【0037】
パノラマ撮影システム200を起動すると、制御装置203の表示部204に、図2に示すように、手動撮影画面400が表示される。図1を参照して示すように、パノラマ撮影システム200は、手動撮影画面400を表示した状態で手動撮影モードの撮影を実行可能である。手動撮影画面400は、表示部204に撮影範囲を表示し、撮影範囲の中に設定された複数のコマ(撮影領域)401を一覧表示する。そして、個別のコマを撮影するごとに、制御装置203は、撮影範囲の対応するコマ位置に撮影画像の縮小画像を表示する。
【0038】
表示部204に撮影範囲を表示して、撮影範囲内のコマ401を指定してボタン402を操作すると、自動雲台202が作動して、カメラ201の画角を実際の撮影範囲の指定されたコマ401に位置決める。そして、ボタン404を押すと、指定されたコマ401の写真撮影が実行される。
【0039】
手動撮影画面400のボタン406を押すと、図3に示すように、パノラマ撮影条件に関する設定画面300が表示される。図1を参照して示すように、パノラマ撮影システム200は、表示部204を通じてパノラマ撮影条件の設定を行うことで、その設定内容に応じたパノラマ自動撮影モードを実行可能である。パノラマ自動撮影モードでは、撮影範囲を分割したそれぞれのコマ(撮影領域)でカメラ201のレンズの焦点位置を段階的に変化させて、撮影対象物までの距離を測定する。すべての撮影領域で測定を実行し終わると、制御装置203は、測定結果に基いて複数段階の基本焦点位置を求めた後、コマ毎の撮影に使用する焦点位置を、基本焦点位置の中から選択する。
【0040】
そして、その結果を図4に示すように、距離ヒストグラムと共に距離情報取得結果表示画面1600に表示する。そして、撮影者が焦点位置の確認を行った後、撮影開始ボタン1603を押すと、制御部203は、パノラマ撮影条件の設定画面300で設定された条件を用いて複数のコマの連続撮影を一気に実行する。
【0041】
図3に示すように、設定画面300には、設定項目ごとの現在の設定状況が表示され、それぞれの設定項目を選択すると、各設定項目に対する選択肢301の設定画面が追加表示される。図3の例では、絞り値にF16を設定する時の様子を表している。
【0042】
設定できる項目は、パノラマ撮影条件に関するものであり、表1に一覧として示す。ここに挙げた項目は代表的なものであり、撮影目的等により、さらに細かな設定項目を追加してもよいし、不要な項目を省いてシステムを簡略化してもよい。
【0043】
【表1】

【0044】
表1中、最低限、手動で設定が必要な項目としては、全体の撮影範囲を指定する「撮影画角範囲」のみである。他の項目については、撮影者に設定させることも可能であるし、制御装置203による推奨値での自動設定とすることも可能である。
【0045】
表1の各項目の他に、カメラ201の基本設定として、一般的に設定する必要がある項目、例えば、記録画質やISO感度等は、設定画面300の項目に追加することも可能であるが、システムの動作説明においては必須ではない。よって、カメラ本体で別途設定されているものとし、説明からは省略する。
【0046】
<パノラマ自動撮影モード>
図5はパノラマ自動撮影モードのフローチャートである。図6はマルチエリアフォーカスセンサによる合焦点検出位置の説明図である。図7はヒストグラムを用いた撮影基本焦点位置の設定の説明図である。図8は撮影時間短縮効果の説明図である。
【0047】
図1を参照して図5に示すように、撮影者が設定画面300を通じてパノラマ撮影条件を設定し(S101)、その後、図2の設定画面300の下部にある「距離情報取得開始」ボタン302が押される(S102)。
【0048】
すると、制御装置203は、自動雲台202を作動させて、設定された最初のコマ(撮影領域)へ向けてカメラ201の画角を位置決める(S103)。続いて、カメラ201のレンズのフォーカスリング211を無限遠(∞)へ移動させ、撮影対象物の距離情報の取得を開始する(S104)。
【0049】
図6に示すように、マルチエリアフォーカスセンサ500は、カメラ201の撮影領域全体を等間隔に区切って8×8のフォーカスポイント501を配置している。なお、マルチエリアフォーカスセンサの分割数や配置分布位置については、分割数を増やして複雑な距離情報を持つ被写体に対応する等、撮影目的に応じて変更してもよい。
【0050】
制御装置203は、レンズのフォーカスリング211を回転しながら、マルチエリアフォーカスセンサ500により、8×8のフォーカスポイント501における撮影対象物の合焦点を検出する(S105)。最初の距離、すなわち∞で合焦点が検出できなかった場合(S105のN)、焦点位置が予め設定された位置まで到達していなければ(S108のN)、レンズのフォーカスリング211を至近側へ1ステップ移動させる(S106)。そして、再び合焦点検出を行う(S105)。
【0051】
一方、マルチエリアフォーカスセンサ500が、どこかのフォーカスポイント501で合焦点を検出できた場合(S105のY)、制御装置203は、検出した距離とフォーカスポイントの数をメモリに記録する。
【0052】
その後、焦点位置が、予め設定された位置まで到達していなければ(S108のN)、レンズのフォーカスリング211を1ステップ至近側へ移動させて(S106)、再び合焦点検出を行う(S105)。
【0053】
そして、最終的に、焦点位置が、予め設定された位置まで到達したら(S108のY)、そのコマ(撮影領域)の合焦点検出は終了となる。
【0054】
次に、全コマの距離情報取得が終了していなければ(S109のN)、自動雲台202を次のコマ位置に移動する(S103)。そして、1コマ目と同様に、レンズのフォーカスリング211を移動させて、マルチエリアフォーカスセンサ500を用いた合焦点検出を行って距離情報を取得する。このようにして、撮影範囲に予め設定された全コマ(全撮影領域)について距離情報の取得を繰り返す。
【0055】
なお、距離情報取得において、撮影対象物が青空等の場合、合焦点の判断が難しく、どの距離においても合焦点を検出できないことがある。その場合、距離情報が得られず、そのコマは全く撮影されないこととなる。そうなると、後で繋げてパノラマ合成画像を形成する時に不具合が生じる。これを避けるため、どの距離においても合焦点を検出できないフォーカスポイントは青空とみなして、∞で合焦点を検出したものとして扱う。
【0056】
制御装置203は、全コマの距離情報が取得できたら、全てのコマで共通な焦点位置の選択肢である撮影基本焦点位置(基本焦点位置)を決定する(S110〜S112)。隣接する2つの撮影領域にわたる撮影対象物の画像では、撮影時の焦点位置を揃えないと、つなぎ目が不自然になるからである。
【0057】
制御装置203は、まず、各コマの情報を全て合計した総合の合焦点数を算出する(S110)。そして、算出した合焦点数を基に、図7に示すように、距離の刻みごとの合焦点検出フォーカスポイント数を現わす総合距離ヒストグラム1300を作成する(S111)。そして、作成した総合距離ヒストグラム1300を被写界深度A〜Dで分割して、撮影範囲全体に渡って撮影対象物が存在する全距離で合焦点が得られる最小段階数の基本焦点位置1301〜1304を設定する(S112)。また、設定した複数の基本焦点位置1301〜1304の中から、個別のコマで撮影対象物が存在する全距離で合焦点が得られる基本焦点位置を選択する(S113、S114)。
【0058】
制御装置203は、基本焦点位置の演算が終了すると、表示部204に、図4に示すように距離情報取得結果表示画面1600を表示する(S115)。ここでは、撮影範囲全体に渡る総合距離ヒストグラム1601と設定された基本焦点位置、並びにコマ毎の距離ヒストグラム1602と選択された基本焦点位置が表示される。
【0059】
撮影者は、表示部203に表示された基本焦点位置等の設定に問題がなければ、距離情報取得結果表示画面1600の下部にある「撮影開始」ボタン1603を押す(S116)。すると、制御装置203は、自動雲台202を最初のコマに移動させ、カメラ201を最初に撮影するコマ方向へ向ける(S117)。そして、レンズのフォーカスリング211を、コマごとに設定された基本焦点位置の内で最遠方の値に移動させて(S118)撮影を行う(S119)。
【0060】
現在撮影中のコマに、基本焦点位置が複数選択されている場合は、設定した基本焦点位置の全てで撮影が終了するまで(S120のN)、次の基本焦点位置へレンズのフォーカスリング211を移動させて(S118)撮影を繰り返す(S119)。
【0061】
1コマ目の撮影が全て終了したら(S120のY)、自動雲台202を作動させてカメラ201の画角を次のコマ位置へ移動して(S117)同様な撮影手順(S117〜S120)を実行する。これを撮影範囲の全コマの撮影が終了するまで(S120のY)繰り返す。
【0062】
図8に示すように、本実施例による方法でパノラマ撮影を行った場合の時間短縮効果を、コマ毎に距離情報を取得する比較例と対比して示した。本実施例では、撮影範囲全体の距離ヒストグラムから撮影に使用する基本焦点位置を事前に設定しておく。そして、各コマの撮影には、その基本焦点位置の中から当該コマの距離ヒストグラムに応じて撮影する基本焦点位置を選択する。
【0063】
これにより、異なるコマ間においても、同じ距離域にある撮影対象物は、共通の基本焦点位置で撮影されるため、合焦点具合を一致させることができ、見た目にもばらつきのない自然な画像を得ることができる。
【0064】
また、情報取得とは別に、後からまとめて純粋な撮影だけを行うことで、短時間で全コマをそれぞれ複数段階の焦点位置で撮影できる。これにより、環境変化に対する影響を最小限にする。
【0065】
このため、コマ毎の撮影の度に情報取得を行う従来例での撮影時間1701に対し、本実施例による方法では、事前にまとめて情報取得を行っているので大幅に撮影時間1702が短縮できている。
【0066】
<実施例1>
図9は実施例1におけるパノラマ撮影範囲の説明図である。図10は撮影領域の設定の説明図である。図11は取得した距離情報の説明図である。図12は撮影領域ごとの基本焦点位置の選択の説明図である。
【0067】
実施例1では、取得した距離情報から割り当てまでの方法について、具体的な撮影例を挙げて詳細に説明する。
【0068】
図9の(a)に示すように、パノラマ撮影したい撮影範囲600には、(b)に示す各距離に撮影対象物が存在する。遠距離物601として山があり、中距離物602として木があり、近距離物603として家がある。図9の(b)は、同じ撮影対象範囲を横から眺めたイメージで、各撮影対象物の距離を表している。遠距離物701は40mより後方に、中距離物702は15m付近に、近距離物703は10m付近に位置する。
【0069】
図10に示すように、撮影範囲は、4分割パノラマ撮影される。ここでは、説明を簡単にするため、撮影範囲全体を縦2枚、横2枚に4分割して4つのコマ(撮影領域)801を撮影する場合を想定した。コマ801の撮影に使用するレンズは、焦点距離200mm、絞りはF16を使用する。
【0070】
撮影範囲を4分割パノラマ撮影する時、一コマ801分の撮影範囲は、全体の撮影範囲の1/4の面積より少し広い範囲を撮影している。これは、撮影後に画像処理によるつなぎ合わせ(スティッチング)を行うため、各コマ間で重複撮影される範囲802、803、804を含むためである。
【0071】
上述したように、図6に示すマルチフォーカスエリアセンサ500をコマ801に重ねて撮影領域内の8×8のフォーカスポイント501で合焦点検出が行われて、距離情報取得が実行される。4つのコマ801で合焦点検出が行われた結果が、図11に示すように、フォーカスポイント(501:図6)ごとに距離(m)を書き入れて表される。上述したように、空や距離検出不能箇所は∞として扱っている。
【0072】
表2は、コマ番号1〜4の各コマ801で距離別に検出されたフォーカスポイント数の集計結果である。右側の列に各コマの情報を全て合計した総合の合焦点点数を算出して示している。これらの数値が距離情報として制御装置203に記憶される。なお、重複撮影される範囲802,803,804については、いずれかのコマの距離情報だけをカウントする、または、重複コマ間の平均値を取る等の方法により、重複カウントがないようにして集計される。
【0073】
【表2】

【0074】
制御装置203は、表2の距離情報を用いて、図7に示すように、距離別の頻度をグラフ化した総合距離ヒストグラム1300を作成する。そして、総合距離ヒストグラム1300に基づいて基本焦点位置1301〜1304の設定を行う。基本焦点位置1301、1302、1303、1304は、被写界深度内に撮影対象物が存在する距離が入るよう、無限遠から順番に並べて、被写界深度A、B、C、Dがお互いに繋がるようにする。ただし、途中に撮影対象物が存在しない距離域があれば、そこは飛び越すように設定して、最終的に用いる基本焦点位置の数をなるべく減らすようにしている。
【0075】
図7は、総合距離ヒストグラム1300に4つの基本焦点位置1301、1302、1303、1304を設定した結果を表している。作成した総合距離ヒストグラム1300を基に、使用するレンズの絞り値と焦点位置によって決まる被写界深度A、B、C、Dで総合距離ヒストグラム1300を距離方向に分割する。そして、撮影対象物が存在する全距離を被写界深度A、B、C、Dがカバーするように基本焦点位置1301、1302、1303、1304を設定している。
【0076】
撮影範囲の全体を通じて撮影対象物が存在しない距離範囲を除いて、撮影対象物が存在する全距離を被写界深度A、B、C、Dが4分割している。これにより、各コマ801の撮影領域における8×8のフォーカスポイント501がいずれかの撮影画像で所定水準の合焦点となる。
【0077】
ここで、合焦点の品質は、許容錯乱円径で表される。許容錯乱円径とは、点の撮影対象物に合焦点させた時、本来なら点として撮像されるものが、焦点位置がずれていくにつれ点ではなく、ぼけた円形状に撮像される。これを錯乱円と呼び、この錯乱円が人の眼に点としてみえる許容限界が許容錯乱円径である。例えば、フルサイズと呼ばれる35mmカメラでは、Eサイズのプリントを想定して、許容錯乱円径を1/30mm=0.033mmとして、被写界深度を計算するのが一般的である。
【0078】
図7では、許容錯乱円径が1/30mm=0.033mm以下となるように、基本焦点位置1301、1302、1303、1304が被写界深度A、B、C、Dを接続している。人が眼で見た時に合焦点であると感じる被写界深度A、B、C、Dの限界を、許容錯乱円径=0.033mmまでと想定して、その幅で隣り合う被写界深度幅を順番に繋いでいる。
【0079】
なお、人が眼で見た時に合焦点であると感じる許容錯乱円径の値は、最終的な引き伸ばしサイズや画像の種類等によっては、0.033mmが最適な値とは限らない。そのため、目的に応じて許容錯乱円径の値は変えても良い。
【0080】
具体的には、まず、1つ目の基本焦点位置1301を、無限遠が被写界深度の後端ぎりぎりに入る距離である過焦点距離に設定する。レンズ焦点距離f、絞り値N、許容錯乱円径cとした時、過焦点距離Hは以下の式で求められる。
【0081】
【数1】

【0082】
また、表3に代表的なレンズの焦点距離と絞り値による過焦点距離の一覧を示した。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示すように、実施例1では、レンズ焦点距離200mm、絞り値F16なので、基本焦点位置1301の被写界深度Aにおける長距離側の過焦点距離は75.8mとなる。従って、75.8mに基本焦点位置を設定すると、そこから後方は全て被写界深度内に入る。
【0085】
これに対して、短距離側の過焦点距離の場合は、その1/2の距離、すなわち約38mまで被写界深度に入る。このため、基本焦点位置1301は、38mから無限遠の範囲をカバーできる。
【0086】
次に、2つ目の基本焦点位置1302の設定を行う。総合距離ヒストグラム1300を見ると、約20mから40mの間には何も撮影物が存在していない。このため、その間は飛ばして、2つ目の基本焦点位置1302は、次に撮影対象物が存在する20m付近から割り当てていく。
【0087】
撮影対象物までの距離s、被写界深度前端距離D、被写界深度後端距離Dとした時、被写界深度は以下の式で求められる。
【0088】
【数2】

【0089】
ここで求めた被写界深度幅を基に、さらに基本焦点位置1302の被写界深度Bの前端に、3つ目の基本焦点位置1303の被写界深度Cの後端をつなぎ、同じように4つ目の基本焦点位置1304の被写界深度Dをつなぐ。
【0090】
このようにして、撮影対象物が存在する距離範囲の全てをカバーできるまで被写界深度A、B、C、Dを連結できたら、基本焦点位置1301〜1304の設定が終了となる。実施例1では、4つの基本焦点位置1301〜1304を設定することで、存在する撮影対象物までの全ての距離をカバーできる。
【0091】
次に、制御装置203は、図12に示すように、コマ番号1〜4のコマ801毎の合焦点分布ヒストグラムを作成する。
【0092】
その後、4つの基本焦点位置1301〜1304の中から、コマ801毎の合焦点分布ヒストグラムに、それぞれのコマに存在する撮影対象物全てをカバーできる基本焦点位置を各々選択して割り当てる。
【0093】
実施例1では、コマ番号1の撮影領域では、基本焦点位置1301が選択される。コマ番号2の撮影領域でも基本焦点位置1301が選択される。コマ番号3の撮影領域では、基本焦点位置1301、1302が選択される。コマ番号4の撮影領域では、基本焦点位置1301、1303、1304が選択される。その結果、撮影範囲全体での撮影枚数は7枚となる。
【0094】
実施例1の方法では、予めパノラマ撮影範囲全体の総合距離ヒストグラムを作成し、各コマの距離ヒストグラムに対応した基本焦点位置を選択し、最後にまとめて全体の撮影を行う。これにより、無駄な撮影をなくして、撮影時間短縮と、撮影画像の後処理の負荷軽減が図れる。また、隣接コマ間の撮影条件が統一されているので、画像合成した時につながりが良く、見た目にも自然で違和感の少ないパノラマ写真画像が得られる。
【0095】
<実施例1の効果>
実施例1のパノラマ撮影システム200では、撮影手段の一例であるカメラ201は、撮影範囲を分割した個別の撮影領域を撮影可能であって、レンズの焦点位置を変化させて撮影領域内の合焦点情報を出力可能である。移動手段の一例である自動雲台202は、カメラ201を移動させて異なる撮影領域をカメラ201に設定可能である。制御手段の一例である制御装置203は、カメラ201と自動雲台202を制御して、それぞれの撮影領域について撮影画像を取得させる。
【0096】
制御装置203は、複数の撮影領域でレンズの焦点位置を変化させて被写体までの距離を測定する。そして、複数の撮影領域での測定結果に基いて、撮影領域ごとに焦点位置を定めた後に、カメラ201と自動雲台202を制御して、撮影領域ごとに定めた焦点位置をレンズに設定して複数の撮影領域について連続撮影を実行する。
【0097】
このため、被写体までの距離を測定して焦点位置を定めて撮影画像を取得するサイクルを撮影領域ごとに繰り返す場合よりも、カメラ201の撮影開始から撮影終了までの時間を短縮できる。
【0098】
表示手段の一例である表示部204は、レンズの焦点位置を変化させて合焦点と判断した検出位置の数の焦点位置に対する分布を示すヒストグラムを表示する。このため、撮影開始前に、使用する焦点位置が適正か否かをユーザーが的確に判断できる。
【0099】
制御装置203は、複数の撮影領域について共通に設定された複数種類の焦点位置から選択した焦点位置をレンズに設定して、それぞれの撮影領域でレンズの焦点位置を異ならせた複数回の撮影を実行可能である。このため、複数の焦点位置の画像を合成した高品質なパノラマ画像が得られる。撮影領域ごとの焦点位置の検出に時間がかかる分、カメラ201の撮影開始から撮影終了までの時間短縮効果はさらに顕著になる。
【0100】
カメラ201は、撮影領域に分散して設定された複数の検出位置の合焦点情報を出力可能であって、制御装置203は、複数の撮影領域に含まれるすべての検出位置について所定水準の合焦点が得られるように複数種類の焦点位置を設定する。このため、画面の隅々までピントの合った撮影領域の画像を合成できる。各コマでばらばらの焦点位置を用いる場合よりもパノラマ合成された画像の品質が高まる。
【0101】
カメラ201は、個別の撮影領域の撮影に際しては、その撮影領域に含まれるすべての検出位置について所定水準の合焦点が得られるように複数種類の焦点位置の中から選択した焦点位置をレンズに設定する。このため、画面の隅々までピントの合った撮影領域の画像を合成できる。複数種類の焦点位置をすべて設定して撮影領域の撮影を行う場合よりも撮影画像の枚数を削減して、カメラ201の撮影開始から撮影終了までの時間短縮効果はさらに顕著になる。
【0102】
<実施例2>
図13は合焦点の水準の違いによる焦点位置の違いの説明図である。図14は実施例2における基本焦点位置の設定の説明図である。図15は実施例2における撮影領域ごとの基本焦点位置の選択の説明図である。
【0103】
実施例2では、パノラマ撮影の基本的な制御の流れは実施例1と共通である。また、図1〜図6を参照して説明したパノラマ撮影システムの構成及び制御についても実施例1と同様である。
【0104】
実施例1との違いは、基本焦点位置の設定に際して前提とする合焦点の水準にある。実施例1では、合焦点とみなす被写界深度の限界は、許容錯乱円径=0.033mmで固定として、その幅で隣り合う焦点域を繋いでいた。しかし、実施例1で説明したように、許容錯乱円径の値をどこまで被写界深度とみなすかは、最終的な画像の鑑賞サイズと視聴距離により変化する。
【0105】
完成した画像を大きく引き伸ばして展示するケースでは、2つの基本焦点位置の合焦点領域のつなぎ目付近の焦点が甘いと感じる可能性もある。そこで、許容錯乱円径を小さくして、全体的によりシャープな仕上がりとすることが提案された。しかし、許容錯乱円径を小さくすると、それぞれの基本焦点位置に割り当てる被写界深度が狭くなり、基本焦点位置の数が増えて本番撮影の撮影回数が増えてしまう。結果として、撮影枚数が大幅に増えて、それに伴い撮影時間も延びてしまう。
【0106】
図13に示すように、焦点距離200mmのレンズを使用して絞り値F16で撮影する場合の、許容錯乱円径=0.033mmと、0.025mmの場合の、基本焦点位置の数の比較を示した。
【0107】
これによると、許容錯乱円径=0.033mmでの割り当て例1801では、7mから無限遠までの距離を6分割でカバーしている。これに対して、許容錯乱円径=0.025mmでの割り当て例1802では、7.4mから無限遠までの距離を7分割でカバーしている。
【0108】
そこで、実施例2では、撮影範囲の中で目に付き易い面積の大きな距離範囲について、合焦点の水準を高くしている。撮影範囲に占める面積の小さな距離範囲は、目立たないので合焦点の水準を低くしている。
【0109】
図14に示すように、総合距離ヒストグラムに閾値を設け、閾値を境にして、その上と下で総合距離ヒストグラムの高さに応じて2段階の許容錯乱円径を設定し、許容する被写界深度の幅を変えている。
【0110】
総合距離ヒストグラムの高い部分は、同じ距離域の撮影対象物の面積が広いことを表しており、この部分に関して許容錯乱円径=0.025mmを設定して被写界深度を狭く割り当てて、撮影対象物がシャープに写るようにする。
【0111】
図14は、実施例1での撮影例と同じ撮影範囲に実施例2の基本焦点位置を適用した場合の撮影範囲全体における基本焦点位置の割り当て結果である。実施例1の許容錯乱円0.033mm固定による方法では、4分割だったものが、実施例2では5分割(1901〜1905)になっている。なお、許容錯乱円径の設定、閾値の設定は、図3の設定画面の項目に追加しても良いし、システムによる推奨値での自動設定としても良い。
【0112】
図15に示すように、コマ番号1〜4の撮影領域に割り当てる基本焦点位置が、コマ毎のヒストグラムに基づいて選択される。コマ番号1の撮影領域では、基本焦点位置1901のみを割り当てて被写界深度aの撮影が1回だけ実行される。コマ番号2の撮影領域では、基本焦点位置1901のみを割り当てて被写界深度aの撮影が1回だけ実行される。コマ番号3の撮影領域では、基本焦点位置1901、1902、1903を割り当てて3つの被写界深度a、b、cを繋いだ3回の撮影が実行される。最後に、コマ番号4の撮影領域では、基本焦点位置1901、1902、1904、1905を割り当てて4つの被写界深度a、b、d、eを繋いだ4回の撮影が実行される。
【0113】
これにより、撮影範囲全体での撮影枚数は、実施例1では7枚だったものが2枚増えて9枚となっている。しかし、これにより、図9の(a)に示す撮影領域の中で目立つ撮影対象物601の見かけの解像度、明瞭度、自然さが高められている。
【0114】
実施例2でも、基本焦点位置の設定は、実施例1と同じように、無限遠側から順番に全焦点域を網羅していくように並べていく。まず、1つ目の基本焦点位置を無限遠が被写界深度の後端ぎりぎりに入る距離である、過焦点距離に設定する。ただし、この時、割り当てようとする距離領域の距離ヒストグラムが閾値より高ければ、許容錯乱円径=0.025mmとし、通常よりやや狭い被写界深度範囲を使用して基本焦点位置を設定する。
【0115】
また、逆に割り当てようとする距離領域の距離ヒストグラムが閾値より低い場合は、通常の許容錯乱円径=0.033mmの被写界深度範囲を使用する。2つ目以降の基本焦点位置設定についても同様に、引き始めの距離ヒストグラムの高さが閾値より高いか低いかにより、いずれかの被写界深度幅を選択して繋いでいく。これにより、距離ヒストグラムが閾値より高い範囲では、許容錯乱円径=0.025mmの被写界深度範囲を使用することになり、焦点合成したつなぎ目の画質が向上する。
【0116】
以上のようにして、実施例2では、距離ヒストグラムの高さに応じて被写界深度の許容幅を変更する。面積の大きい距離域の被写界深度に対する許容値を厳しくし、全体的な撮影枚数増加を抑えつつ、最終的な仕上がりの改善、特に焦点のつなぎ目の画質向上を図っている。
【0117】
実施例2のパノラマ撮影システム200では、複数の撮影領域に含まれるすべての検出位置について複数種類の焦点位置のそれぞれで合焦点とみなせる検出位置の数を求めている。そして、それぞれの焦点位置で合焦点とみなす検出位置の数の差が少なくなるように、複数種類の焦点位置のそれぞれにおける合焦点の水準を異ならせている。すなわち、それぞれの焦点位置の焦点深度範囲における総合距離ヒストグラム下の面積差が小さくなるように実施例1とは、焦点深度範囲を変更する。合焦点の検出数が多い(ヒストグラム下面積が大きい)焦点位置範囲では、焦点位置の刻みを小さくして、各焦点位置に割り当てるヒストグラム面積差を小さくする。許容錯乱円を小さく選択することで、合焦点の水準を高くする。
【符号の説明】
【0118】
201 カメラ、202 自動雲台、203 制御装置
204 表示部、205 入力部、206 パン機構
207 チルト機構、208 モータコントローラ
300 設定画面、500 マルチエリアフォーカスセンサ
601、602 撮影対象物、1300 総合距離ヒストグラム
1301、1302、1303、1304 基本焦点位置
1600 距離情報取得結果表示画面
1601 総合距離ヒストグラム、1602 コマ毎の距離ヒストグラム
1603 撮影開始ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影範囲を分割した個別の撮影領域を撮影可能であって、レンズの焦点位置を変化させて撮影領域内の合焦点情報を出力可能な撮影手段と、
前記撮影手段を移動させて異なる前記撮影領域を前記撮影手段に設定可能な移動手段と、
前記撮影手段と前記移動手段を制御して、それぞれの撮影領域について撮影画像を取得させる制御手段とを備える画像撮影装置において、
前記制御手段は、前記複数の撮影領域でレンズの焦点位置を変化させて被写体までの距離を測定し、前記複数の撮影領域での測定結果に基いて撮影領域ごとに焦点位置を定めた後に、前記撮影手段と前記移動手段を制御して、撮影領域ごとに定めた焦点位置をレンズに設定して前記複数の撮影領域について連続撮影を実行することを特徴とする画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の撮影領域について共通に設定された複数種類の焦点位置から選択した焦点位置をレンズに設定して、それぞれの撮影領域でレンズの焦点位置を異ならせた複数回の撮影を実行可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像撮影装置。
【請求項3】
前記撮影手段は、撮影領域に分散して設定された複数の検出位置の合焦点情報を出力可能であって、
前記制御手段は、前記複数の撮影領域に含まれるすべての前記検出位置について所定水準の合焦点が得られるように前記複数種類の焦点位置を設定することを特徴とする請求項2に記載の画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、個別の撮影領域の撮影に際しては、その撮影領域に含まれるすべての前記検出位置について所定水準の合焦点が得られるように前記複数種類の焦点位置の中から選択した焦点位置をレンズに設定することを特徴とする請求項3に記載の画像撮影装置。
【請求項5】
前記複数の撮影領域に含まれるすべての前記検出位置について前記複数種類の焦点位置のそれぞれで合焦点とみなせる前記検出位置の数を求めたとき、それぞれの焦点位置で合焦点とみなす前記検出位置の数の差が少なくなるように、前記複数種類の焦点位置のそれぞれにおける合焦点の水準を異ならせていることを特徴とする請求項4に記載の画像撮影装置。
【請求項6】
レンズの焦点位置を変化させて合焦点と判断した前記検出位置の数の焦点位置に対する分布を示すヒストグラムを表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の画像撮影装置。
【請求項7】
レンズの焦点位置を変化させて撮影領域の合焦点情報を出力可能な撮影手段を用いて、撮影範囲に設定した複数の撮影領域の画像を撮影するパノラマ画像の撮影方法において、
個別の撮影領域でレンズの焦点位置を変化させて撮影領域内の複数の検出位置について所定水準の合焦点が得られる焦点位置を測定する操作を、複数の撮影領域で連続的に実行する第1工程と、
前記第1工程の測定結果に基いて、前記複数の撮影領域のすべての前記検出位置について所定水準の合焦点が得られる複数種類の焦点位置を定める第2工程と、
前記複数の撮影領域の撮影を連続的に実行する第3工程と、を有し、
前記第3工程では、前記複数種類の焦点位置から選択した焦点位置をレンズに設定して、それぞれの撮影領域でレンズの焦点位置を異ならせた複数回の撮影を行うことを特徴とするパノラマ画像の撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−237713(P2011−237713A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110887(P2010−110887)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】