説明

画像材料用支持体

【課題】本発明は、画像材料用支持体において、バックコート層に植物の柔細胞から得られた繊維を含有する、搬送性と塗膜強度に優れ、産業廃棄物を減量することが可能な画像材料用支持体を提供するものである。
【解決手段】基材上にバックコート層を有する画像材料用支持体において、該バックコート層中に、植物の柔細胞から得られた繊維を含有することを特徴とする画像材料用支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像材料用支持体に関するものであり、更に詳しくは、バックコート層に植物の柔細胞から得られた繊維を含有する、搬送性と塗膜強度に優れ、産業廃棄物を減量することが可能な画像材料用支持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物から得られる繊維は、紙、パルプや衣料用途で大量に使われているが、その繊維のほとんどが強固な二次壁からなる細胞壁を有した細長い形状の繊維細胞に由来するものである。一方、二次壁が発達していない柔細胞は、細胞壁が弱く方形の細胞が多いため、従来の繊維細胞と同等の用途に使用することができない。
【0003】
柔細胞が集合した柔組織は、果実や茎の内部に多く存在し、果実からのジュースの搾り粕やサトウキビ、サトウダイコンからのショ糖液の搾り粕に豊富に存在する。しかしながら、これらの搾り粕の多くは農産廃棄物、産業廃棄物として処分されることが多く、有効利用されているケースは少ない。
【0004】
産業廃棄物となる植物の搾り粕を有効利用する方法はいくつか提案されており、ぶどう酒の搾り粕を一定期間発酵後、乾燥、粉砕して家畜の飼料として利用する方法(例えば、特許文献1参照)や、大豆の搾り粕であるおからを焼成炭化させ、粉体または粒体として濾過剤、濾過助剤として利用する方法(例えば、特許文献2参照)、おからに麹菌を接種して乾燥させたものを食品の添加物として利用する方法(例えば、特許文献3参照)等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、飼料や食品の添加物とする場合には成分の点で原料が制限されるため、ぶどう酒の搾り粕やおからといった特定のものにしか適用できないという問題がある。その点、炭化した濾過剤、濾過助剤は原料の制約は少ないものの、逆に原料となり得るものが豊富であるが、搾汁粕のような含水率の高い材料をあえて炭化するのは効率が悪く、原料として不適当であると考えられる。
【0006】
一方、画像材料は、画像材料用支持体と該支持体上に設けられた画像形成層とから構成されたものである。例えば、ハロゲン化銀写真材料、インクジェット記録材料、熱移行型熱転写記録受像材料、感熱記録材料、感光感熱記録材料、電子写真記録材料等は、画像材料用支持体上にそれぞれハロゲン化銀写真構成層、インク受像層、熱移行型熱転写記録受像層、感熱発色層、感光感熱発色層、トナー受像層等の画像形成層及び必要に応じて下引層、保護層等の補助機能層が塗設されたものである。
【0007】
しかしながら、画像形成層を設ける側と反対の面に、用途に応じたバックコート層を設けた画像材料用支持体は、依然としていくつかの重大な問題点を有しており、未だ満足すべき成果が得られていないのが実情である。
【0008】
第一に、搬送性の問題が挙げられる。例えば、インクジェット記録材料では近年、フォトライクの記録シートが要望されるようになり、紙に変わって、紙の表裏にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたポリオレフィン樹脂被覆紙、プラスチックフィルム等が用いられるようになってきた。しかしながら、これらの支持体は、画像形成層を設けた表面の平滑性が高く、印画時に重層が発生しやすく、また印画したシートを重ねて揃える場合に滑りにくい問題があり、これらの現象は、他の記録材料に関しても同様であった。
【0009】
第二に、塗膜強度の問題が挙げられる。バックコート層の塗膜強度が十分でない記録シートを用いた場合、バックコート層とプリンター内部のガイドロールや給紙ロールとの接触により摩擦が発生し、この摩擦がバックコート層にダメージを与え、バックコート層の一部が剥離し塵埃となり、印画そのものができなくなる。特に、熱転写記録シートの様な印画方式の場合、記録シートの表面に、このような塵埃があると、その部分だけトナーの転写が不十分となり、白抜けした画像となってしまう。これらの現象は、他の記録材料に関しても同様であり、近年、ますます高速印画が主流になってきている中で、バックコート層の塗膜強度はますます重要となってきている。
【特許文献1】特開平2002−171916号公報
【特許文献2】特開平11−076813号公報
【特許文献3】特開平5−068503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は画像材料用支持体に関するものであり、更に詳しくは、バックコート層に植物の柔細胞から得られた繊維を含有する、搬送性と塗膜強度に優れた、廃棄物を減量することが可能な画像材料用支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の発明を見いだした。
即ち、第1の発明は、基材上にバックコート層を有する画像材料用支持体において、該バックコート層中に、植物の柔細胞から得られた繊維を含有することを特徴とする画像材料用支持体である。
【0012】
第2の発明は、柔細胞がサトウダイコン由来である第1の画像材料用支持体である。
【0013】
第3の発明は、柔細胞がサトウキビ由来である第1の画像材料用支持体である。
【0014】
第4の発明は、植物の柔細胞から得られた繊維が、懸濁安定性が50%以上にフィブリル化されている第1〜3の画像材料用支持体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、バックコート層に植物の柔細胞から得られた繊維を含有する、搬送性と塗膜強度に優れ、廃棄物を減量することが可能な画像材料用支持体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明における植物の柔細胞から得られる繊維(以下、柔細胞繊維と表記する。)とは、植物の茎や葉、果実等に存在する柔細胞を主体とした部分を、アルカリで処理する等して得られるセルロースを主成分とし、水に不溶な非木材繊維である。柔細胞は、二次壁が発達していない特徴を有する。
【0018】
本発明において、植物の柔細胞を得るためには、茎の内部柔組織や葉の葉肉、果実等を粉砕するなどすればよいが、工業的には食品加工工場や製糖工場等から排出される、果実からのジュースの搾り粕やサトウダイコン、サトウキビ等からの搾汁粕を用いるのが最適である。例えば、サトウダイコンの搾汁粕を利用する際には、粉砕した根を搾汁し、残さの粕をそのまま利用することができる。本発明の柔細胞繊維は、従来産業廃棄物となっていた原料を活用することができる。また、天然物由来なので、画像材料用支持体を廃棄する場合の環境に対する負荷も削減することができる。サトウキビの搾汁粕を利用する際には、搾り粕であるバガスを適当な大きさに粉砕し、目開き1〜2mmのふるいを通過させることにより柔細胞を多く含む部分を得ることができる。
【0019】
本発明において、柔細胞から繊維を得るためには木材からパルプを製造する際のパルプ化処理を適用するのが良い。例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリと混合、加熱してリグニンを分解除去するクラフトパルプ化法やソーダパルプ化法を用いることができる。詳細なパルプ化処理条件は、原料の性状や目的とする繊維の性状、収率等を鑑みて適宜決定すればよい。アルカリを洗浄後、必要に応じて漂白処理を行なう。漂白剤として過酸化水素、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、酸素、オゾン等を用いることができる。漂白後、洗浄して繊維の懸濁液を得ることができる。
【0020】
パルプ化処理により得られた繊維は、そのままでも使用可能だが、フィブリル化処理することにより、比表面積が大きくなり、且つ均一性が高くなるため好ましい。フィブリル化処理には、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも3000psiの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0021】
柔細胞繊維の好ましいフィブリル化の目安は、懸濁安定性が50%以上である。ここで、懸濁安定性が50%以上とは、本発明における0.1質量%濃度の繊維懸濁液をメスシリンダーなどに入れて24時間静置したときに、繊維の沈降面より下の懸濁液の体積が全体の体積の50%以上になることである。この懸濁安定性は分散性と解釈することもでき、繊維の分散性が高く、懸濁液がより均一である程、懸濁安定性が高いと言える。この懸濁安定性は繊維の大きさと関係しており、フィブリル化が進行しているもの程その懸濁液の安定性は高い。
【0022】
懸濁安定性を50%以上にするには、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、回転刃式ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて処理条件を適正化することにより達成できる。
【0023】
本発明に係わる柔細胞繊維の平均繊維径は、0.1μm以下である。また、繊維長は、1〜20μmである。ここで言う平均繊維径とは、繊維を走査型電子顕微鏡で観察し、50カ所の太さを計測した値の平均値である。また、繊維長は光散乱式粒度分布測定装置で繊維スラリーを測定した際に体積平均粒径として算出される値である。
【0024】
本発明の目的は、塗膜強度と搬送性に優れた画像材料用支持体に関するものであるが、塗膜強度があり、搬送性に優れた素材を調査した結果、植物の柔細胞から得られた繊維をバックコート層にバインダーとして用いることが最も有効な手段であることが判明した。この柔細胞繊維は、太さ0.1μm以下の微細なセルロース繊維を主体とし、繊維同士が強固に水素結合するために、塗膜強度に優れ、また、微細な繊維が塗膜の凹部分を埋めることで平滑性が向上する。これにより、塗布・乾燥した後の表面の滑り性に優れていることが判明し、塗膜強度が強く、搬送性に優れ、産業廃棄物の減量が可能なバインダーとして柔細胞繊維を見出すに至った。また、柔細胞繊維のフィブリル化を進行させることで、繊維同士により強固な水素結合が形成され、高い塗膜強度が得られることが判明した。
【0025】
本発明の実施に用いられるバックコートの塗布量としては、その中に含まれる柔細胞繊維の乾燥質量として0.25〜5.0g/mが望ましい。さらに望ましくは0.5〜3.0g/mが良い。この塗布量が少な過ぎると画像材料用支持体に加工した際の塗膜強度と搬送性が不十分となり、逆に多過ぎると経済的ではない。
【0026】
また、本発明に於けるバックコートの塗布装置としてはエアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター及びそれらの組合せ等が挙げられる。また、アプリケート部と計量部を分ける場合のアプリケーターとしてはディップ方式、ロール方式、エクストルージョン方式等、各種の方式から選ぶ事ができる。
【0027】
本発明に於けるバックコートの乾燥装置としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー、等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等各種乾燥装置の中から選ぶ事ができる。熱風乾燥機を用いる場合はバックコート液の塗布量、製造速度及び乾燥装置の長さ等により異なるが、熱風温度は80℃〜160℃、乾燥時間は3〜20秒程度が望ましい。又、必要であれば、乾燥用熱風は除湿する事もできる。
【0028】
本発明に於いてバックコート液を塗布する場合には、何れの場合でもその前にバックコート塗布面に火炎処理、コロナ放電処理等を施して加工面の塗液受容性を向上しておく事が望ましい。
【0029】
本発明の実施に用いられるバックコート層の中には、必要に応じ、各種の添加剤を含有せしめることができる。例えば、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルフォン酸塩、スルホコハク酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、サポニンアルキレンオキサイド化合物等のノニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルフォン酸類、アミノアルコールのエステル類等の両性界面活性剤などを用いることができる。
【0030】
帯電防止剤としては、種々の無機および有機帯電防止剤が有用である。好ましい無機帯電防止剤としては、例えばコロイド状シリカがある。好ましい有機帯電防止剤としては、例えばスチレンと無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩、イソブチレンと無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩などの炭素数4以上の不飽和共重合性単量体と無水マレイン酸との共重合体のアルカリ塩、セルロース、デキストラン、デキストリン、アルギン酸、澱粉、ポリビニルアルコールなどの水酸基を有する天然または合成の高分子物質、好ましくはセルロース硫酸エステルのアルカリ塩、ポリスチレンスルフォン酸のアルカリ塩、ポリアクリル酸ナトリウム類(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ−α−エチルアクリル酸のナトリウム塩など)、ポリアクリルカリウム、アクリル酸とアクリル酸メチル共重合体のナトリウム塩などの重合せるアクリル酸類およびアクリル酸共重合体のアルカリなどがある。
【0031】
顔料としては、特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、チサンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、気相法シリカ、α,β,γ,δ−等のアルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂の有機顔料等の白色顔料を1種類以上用いることができる。
【0032】
本発明の基材は、一般に用いられるシート状の基体であれば全て使用できる。例えば、天然パルプ紙、合成パルプ紙、天然パルプと合成パルプの混抄紙などのほか、各種抄き合わせ紙を用いることができる。これらの紙基体には、一般的に製紙で用いられるサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、pH調整剤、顔料、染料などの添加剤が配合されていてもよい。さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、帯電防止剤が表面塗布されてもよい。この他に、紙基体表面に顔料やラテックスなどを塗工したコーテッド紙、ラミネートにより被覆されたレジンコーテッド紙、電子線硬化樹脂を被覆したもの、あるいは、電子線硬化樹脂とポリオレフィン樹脂溶融押出との組み合わせにより被覆して得られる複合体や、ポリオレフィン系樹脂から作られた合成紙、PETフィルムに代表されるようなプラスチックフィルムなどから選ぶことができる。
【0033】
本発明における画像材料用支持体のシート状基体の密度としては、特に制限はなく、適宜使用することができる。また、本発明の実施に用いられるシート状基体の厚みに関しても、特に制限はないが、その坪量は40g/m〜250g/mのものが有用であり、70g/m〜220g/mのものが特に好ましい。
【0034】
本発明に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体の基紙の両側は、フィルム形成能ある樹脂を含む樹脂層で被覆される。それらのフィルム形成能ある樹脂としてはポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びそれらの混合物などの熱可塑性樹脂が好ましく、中でも溶融押し出しコーティング性の点から前記したポリオレフィン樹脂あるいは/及びポリエステル樹脂が更に好ましく、ポリエチレン系樹脂が特に好ましい。また、特公昭60−17104号公報に記載もしくは例示の電子線硬化樹脂から成る樹脂層で被覆してもよい。
【0035】
本発明の実施に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体の表樹脂層用及び裏樹脂層用のポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、エチレンとプロピレン、ブチレン等のα―オレフィンとの共重合体、エチレンとアクリル酸、アクリル酸エチルエステル、無水マイレン酸等の共重合体またはグラフト共重合体である、所謂カルボキシ変性ポリエチレン樹脂等、またオートクレープ型反応器、チューブラ型反応器等を用いた高圧ラジカル重合法によるポリエチレン系樹脂、メタロセン重合触媒を用いて重合製造したポリエチレン系樹脂、チーグラー法、フィリップス法等を用いた、メタロセン以外の金属触媒を用いて重合製造したポリエチレン系樹脂及びこれらの混合物であり、各種の密度、メルトフローレート(以下、JIS K 6760で規定されるメルトフローレートのことを単にMFRと略す)、分子量、分子量分布のものを使用できるが、通常、密度が0.90〜0.97g/cmの範囲、MFRが0.1g/10分〜50g/10分、好ましくは、MFRが0.3g/10分〜40g/10分の範囲のものを単独に或いは混合して有利に使用できる。
【0036】
本発明の実施に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体の裏樹脂層用のポリエチレン樹脂としては、MFRが10g/10分〜40g/10分、好ましくは10g/10分〜30g/10分、密度が0.960g/cm以上である高密度ポリエチレン系樹脂90質量部〜65質量部とMFRが0.2g/10分〜3g/10分、好ましくは、0.2g/10分〜1.5g/10分、密度が0.935g/cm以下である低密度ポリエチレン樹脂または中密度ポリエチレン樹脂10質量部〜35質量部とを予め溶融・混合したコンパウンド樹脂組成物が好ましい。また、低密度ポリエチレン樹脂または中密度ポリエチレン樹脂の分子量分布としては、分子量50万以上の分率が10質量%以上のものが好ましく、12質量%以上のものが特に好ましい。該樹脂の分子量50万以上の分率が10質量%より少ないと成形加工性、特にネックインが大きくなり好ましくない。
【0037】
本発明の実施に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体の裏樹脂層用のポリエチレン系樹脂としては、予め溶融・混合して調製したコンパウンド樹脂が好ましい。低密度ポリエチレン樹脂あるいは中密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂とを予め溶融・混合してコンパウンド樹脂を調製する方法としては、単純溶融混合法、多段溶融混合法等を用いることができる。例えば、押し出し機、二軸押し出し機、加熱ロール練り機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いて、所定量の低密度あるいは中密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂、更に必要に応じて酸化防止剤、滑剤等の各種の添加剤を加えて溶融・混合した後、その混合物をペレット化する方法が有利に用いられる。
【0038】
本発明の実施に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体は、走行する基紙上に表樹脂層中及び裏樹脂層中の樹脂が熱可塑性樹脂、好ましくはポリオレフィン樹脂、特に好ましくはポリエチレン系樹脂の場合には、表樹脂層用及び裏樹脂層用の樹脂組成物を溶融押し出し機を用いて、そのスリットダイからフィルム状に流延して被覆する、いわゆる溶融押し出しコーティング法によって製造される。通常は、走行する基紙上に溶融押し出し機を用いて、そのスリットダイから溶融した樹脂組成物をフィルム状に押し出し、流延して被覆し、加圧ロールと冷却ロールとの間で圧着し、冷却ロールから剥離されるという一連の工程で生産される。その際、溶融フィルムの温度は280℃及至340℃であることが好ましい。スリットダイとしては、T型ダイ、L型ダイ、フィッシュテイル型ダイのフラットダイが好ましく、スリット開口径は0.1mm乃至2mmであることが望ましい。また、樹脂組成物を基紙にコーティングする前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すのが好ましい。また、特公昭61−42254号公報に記載の如く、基紙に接する側の溶融樹脂組成物にオゾン含有ガスを吹きつけた後に走行する基紙に樹脂層を被覆しても良い。また、表、裏の樹脂層は逐次、好ましくは連続的に、押し出しコーティングされる、いわゆるタンデム押し出しコーティング方式で基紙に被覆されるのが好ましく、必要に応じて表または裏の樹脂層を二層以上の多層構成にする、多層押し出しコーティング方式で被覆しても良い。また、画像材料用支持体の表樹脂層面は光沢面、特公昭62−19732号公報に記載の微粗面、マット面あるいは絹目面等に加工することができ、裏樹脂層は通常無光沢面に加工するのが好ましい。
【0039】
また、本発明の実施に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体の表、裏の樹脂層の厚さとしては、特に制限はないが、表樹脂層の厚さとしては、9μm〜60μmの範囲が有用であり、好ましくは12μm〜45μmの範囲である。裏樹脂層の厚さとしては、5μm〜60μmの範囲が有用であるが、好ましくは8μm〜40μmの範囲である。また、表樹脂層に比して裏樹脂層の被覆量を少なくして表・裏の樹脂層中の樹脂被覆量の差を3g/m以上にするのが好ましい。
【0040】
本発明の実施に好ましく用いられる樹脂被覆型の画像材料用支持体の表、裏樹脂層中には、各種の添加剤を含有せしめることができる。特公昭60−3430号、特公昭63−11655号、特公平1−38291号、特公平1−38292号、特開平1−105245号等の各公報に記載もしくは例示の酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、特開平1−105245号に記載もしくは例示のヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、リン系、硫黄系等の各種酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルー系の顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガンバイオレット等のマゼンタ系の顔料や染料、特開平2−254440号公報に記載もしくは例示の蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて含有せしめることができる。それらの添加剤は、樹脂のマスターバッチあるいはコンパウンドとして含有せしめるのが好ましい。特に、本発明の実施に用いられる裏樹脂層用のコンパウンド樹脂組成物中にこれらの添加剤を含有せしめる方法としては、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂あるいは中密度ポリエチレン樹脂に予め加えるか、あるいはコンパウンド樹脂の調製時に加えるか、または、該樹脂に高濃度に添加したマスターバッチを予め作製し、このマスターバッチを溶融押し出し被覆時に該樹脂に加えてもよい。
【0041】
本発明の支持体において、塗布前の表面ポリオレフィン被覆層に、あるいはゼラチン下引き層に施される活性化処理は、従来知られているコロナ放電処理、火焔処理、活性化薬品処理、または低温プラズマ処理などから、必要に応じて選ぶことができる。この様にして活性化された表面に画像形成層、及びゼラチン下引き層が形成される。
【0042】
本発明において、塗布液としてゼラチンを主成分とする下引き層用塗布液を用いる場合に、好ましく用いられる下引き層のためのゼラチンとしては、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、例えば二塩基酸の無水物と反応したゼラチンなど各種のものを挙げることができる。また、ゼラチンと併用してポリビニルアルコール、澱粉などのその他の親水性ポリマーを用いることもできる。また、下引塗液のpHとしては、特に制限はないが、写真材料の保存性の観点からpH8以下が好ましく、pH7以下が更に好ましい。
【0043】
又、下引き層中には、各種の添加剤を含有せしめることができる。防腐剤として、特開平1−102551号公報に記載もしくは例示のp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物、ベンズイソチアゾロン化合物、イソチアゾロン化合物等、界面活性剤として、アニオン系界面活性剤の他に、サポニン、アルキレンオキサイド系等のノニオン系界面活性剤、特公昭47−9303号公報、米国特許第3,589,906号等に記載のフルオロ化した界面活性剤、スルフォベタイン系両性界面活性剤、アミノ酸類、アミノアルコールのエステル類等の両性界面活性剤、硬膜剤として、活性ハロゲン化合物、ビニルスルフォン化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、アクリロイル化合物、イソシアネート化合物等の硬膜剤の他調色剤、蛍光増白剤、マット化剤、カブリ抑制剤あるいは安定剤、pH調整剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0044】
また、下引き層の塗設量としては特に制限はないが、ゼラチンの塗設量として、0.1質量%〜10質量%の水性塗液を1g/m〜40g/m塗布するのが良く、画像形成層用塗布液の液付き性及び支持体と画像形成層との接着性の改良効果の点から、固形質量で0.005g/m〜2.0g/mの範囲が好ましく、0.01g/m〜1.0g/mの範囲が一層好ましく、0.02g/m〜0.5g/mの範囲が特に好ましい。この時の塗布速度としては150m/min以上、好ましくは200m/min以上において塗布ムラのない安定した下引き層が維持されるので、生産効率の点からも好ましい。
【0045】
下引層を表側に設ける方法としては、走行する基紙面に樹脂層を被覆した後、巻き取るまでの間に画像形成層を設ける側の表側に、下引き層用塗布液を塗布・乾燥して下引き層を設ける、いわゆるオンマシン法で行うのが好ましい。また、支持体を巻き取ってから、必要に応じて巻取りを貯蔵後、改めて下引き層を設ける、いわゆるオフマシン法で行うこともできる。下引き層の塗布に際しては塗布に先立ち、コロナ放電処理を施すことの他に火炎処理等のその他の活性化処理を施してもよい。塗布された塗布液の乾燥装置としては直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等各種乾燥装置をあげることができる。また、乾燥条件は任意であるが、一般には40℃〜150℃で数秒〜10分で行われる。
【0046】
本発明における画像材料用支持体は、各種の写真構成層が塗設されてカラー写真印画紙用、白黒写真印画紙用、写植印画紙用、複写印画紙用、反転写真材料用、銀塩拡散転写法ネガ用及びポジ用、印刷材料用等各種の用途に用いることができる。例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀乳剤層を設けることができる。ハロゲン化銀写真乳剤層にカラーカプラーを含有せしめて、多層ハロゲン化銀カラー写真構成層を設けることができる。また、銀塩拡散転写法用写真構成層を設けることができる。それらの写真構成層の結合剤としては、通常のゼラチンの他に、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、多糖類の硫酸エステル化合物などの親水性高分子物質を用いることができる。また、上記の写真構成層には各種の添加剤を含有せしめることができる。例えば、増感色素として、シアニン色素、メロシアニン色素など、化学増感剤として、水溶性金化合物、イオウ化合物など、カブリ防止剤もしくは安定剤として、ヒドロキシ−トリアゾロピリミジン化合物、メルカプト−複素環化合物など、硬膜剤としてホルマリン、ビニルスルフォン化合物、アジリジン化合物など、塗布助剤として、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、スルホコハク酸エステル塩など、汚染防止剤として、ジアルキルハイドロキノン化合物など、そのほか蛍光増白剤、鮮鋭度向上色素、帯電防止剤、pH調整剤、カブらせ剤、更にハロゲン化銀の生成・分散時に水溶性イリジウム、水溶性ロジウム化合物などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0047】
本発明に係る写真材料は、その写真材料に合わせて「写真感光材料と取扱法」(共立出版、宮本五郎著、写真技術講座2)に記載されている様な露光、現像、停止、定着、漂白、安定などの処理を行うことができる。また、多層ハロゲン化銀カラー写真材料は、ベンジルアルコール、タリウム塩、フェニドンなどの現像促進剤を含む現像液で処理してもよいし、ベンジルアルコールを実質的に含まない現像液で処理することもできる。
【0048】
本発明における画像材料用支持体は、各種の熱転写記録受像層が塗布されて各種の熱転写記録受像材料用支持体として用いることができる。それらの熱転写記録受像層に用いられる合成樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレンアクリレート樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂等のエステル結合を有する樹脂、ポリウレタン樹脂等のウレタン結合を有する樹脂、ポリアミド樹脂等のアミド結合を有する樹脂、尿素樹脂等の尿素結合を有する樹脂、その他ポリカプロラクタム樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられる。これら樹脂に加えて、これらの混合物もしくは共重合体等も使用できる。
【0049】
本発明に係わる熱転写記録受像層中には、上記合成樹脂の他に離型剤、顔料等を加えても良い。上記離型剤としては、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(R)パウダー等の固形ワックス類、弗素系、リン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル類等が挙げられる。これら離型剤の中でシリコーンオイルが最も好ましい。上記シリコーンオイルとしては、油状の物も使用できるが、硬化型のものが好ましい。硬化型のシリコーンオイルとしては、反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等が挙げられるが、反応硬化型のシリコーンオイルが特に好ましい。反応硬化型シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。上記反応性シリコーンオイルの添加量は、受像層中に0.1質量%〜20質量%が好ましい。上記顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の体質顔料が好ましい。また、受像層の厚さとしては、0.5μm〜20μmが好ましく、2μm〜10μmがさらに好ましい。
【0050】
本発明における画像材料用支持体は、各種のインク受像層が塗布されて各種のインクジェット記録材料用支持体として用いることができる。それらのインク受像中にはインクの乾燥性、画像の鮮鋭性等を向上させる目的で各種のバインダーを含有せしめることができる。それらのバインダーの具体例としては、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、例えばフタール酸、マレイン酸、フマール酸等の二塩基酸の無水物と反応したゼラチン等の各種のゼラチン、各種ケン化度の通常のポリビニルアルコール、カルボキシ変性、カチオン変性及び両性のポリビニルアルコール及びそれらの誘導体、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジウムハライド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸メタクリル酸共重合体塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体及びそれらの塩、ポリエチレンイミン等の合成ポリマー、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系重合体ラテックス、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系重合体または共重合体のラテックス、塩化ビニリデン系共重合体ラテックス等或はこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性接着剤及びポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニルコーポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤、特公平3−24906号、特開平3−281383号、特願平4−240725号等に記載もしくは例示のアルミナゾル、シリカゾル等の無機系バインダー等を挙げることができ、これらを単独或は併用して含有せしめることができる。
【0051】
本発明に係わるインクジェット記録材料のインク受像層中には、バインダーの他に各種の添加剤を含有せしめることができる。例えば、界面活性剤として、長鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、長鎖、好ましくは分枝アルキルスルホコハク酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、長鎖、好ましくは分岐アルキル基含有フェノールのポリアルキレンオキサイドエーテル、長鎖アルキルアルコールのポリアルキレンオキサイドエーテル等のノニオン系界面活性剤、特公昭47−9303号公報、米国特許3,589,906号明細書等に記載のフルオロ化した界面活性剤など、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ポリマーの硬膜剤として、活性ハロゲン化合物、ビニルスルフォン化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、アクリロイル化合物、イソシアネート化合物等の硬膜剤、防腐剤として、特開平1−102551号公報に記載もしくは例示のP−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物、ベンズイソチアゾロン化合物、イソチアゾロン化合物等、特開昭63−204251号、特開平1−266537号等の各公報に記載もしくは例示の着色顔料、着色染料、蛍光増白剤など、黄変防止剤としてヒドロキシメタンスルフォン酸ナトリウム、P−トルエンスルフィン酸ナトリウム等、紫外線吸収剤として、ヒドロキシ−ジ−アルキルフェニル基を2位に有するベンゾトリアゾール化合物など、酸化防止剤として、特開平1−105245号公報に記載もしくは例示のポリヒンダードフェノール化合物など、鉛筆加筆剤として、澱粉粒、硫酸バリウム、二酸化珪素等の有機または無機の粒子径0.2μm〜5μmの微粒子、特公平4−1337号公報等に記載もしくは例示のオルガノポリシロキサン化合物、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸など、オクチルアルコール、シリコン系消泡剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0052】
本発明における画像材料用支持体は、各種のトナー受像層が塗布されて各種の電子写真記録材料用支持体として用いることができる。それらのトナー受像中には画像の濃度、トナーの定着性、搬送性等を向上させる目的で各種のバインダー、帯電防止剤、顔料等を含有せしめることができる。バインダーの具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレンアクリレート樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂等のエステル結合を有する樹脂、ポリウレタン樹脂等のウレタン結合を有する樹脂、ポリアミド樹脂等のアミド結合を有する樹脂、尿素樹脂等の尿素結合を有する樹脂、その他ポリカプロラクタム樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられる。これら樹脂に加えて、これらの混合物もしくは共重合体等も使用できる。帯電防止剤の具体例としては、特に制限無く、各種帯電防止剤を用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪族アマイドの硫酸塩類、リン酸エステル塩類、スルフォン酸塩類、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、及びベタイン系両性塩類、イミダゾリン系両性塩類、アラニン系両性塩類などが挙げられ、金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウムなどを挙げることができる。顔料の具体例としては、特に制限はないが、各種無機及び有機顔料、例えばクレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カリウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、プラスチックピグメントなどの一般塗工用顔料を用いることができる。また必要に応じて、離型剤、可塑剤、界面活性剤、染料などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は以下に示す実施例に限られるものではない。
【0054】
実施例1
下記支持体1の裏樹脂層面にコロナ放電処理後、下記のバックコート層用塗工液1を、乾燥質量分として、1.0g/mになるようにバーコーター塗工方式にて塗工した。
【0055】
更に、表樹脂層面にコロナ放電処理後、下記下塗り層1を乾燥塗工量が10g/mとなるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、こうして得た下塗り層上に、下記上塗り層1を乾燥塗工量が10g/mになるようにエアーナイフコーターで塗工、乾燥しインクジェット記録材料を得た。
【0056】
<支持体1>
坪量170g/mの原紙に、画像形成層を設ける側とは反対側の基紙面(裏面)をコロナ放電処理した後、ポリエチレン樹脂を25μmの厚さで、樹脂層の表面が粗面となるような冷却ロールを用いて、溶融押し出しコーティングした。引き続き、基紙の表面をコロナ放電処理した後、該表面にポリエチレン樹脂を25μmの厚さで、樹脂層の面がグロッシー面となるような冷却ロールを用いて、溶融押し出しコーティングし、支持体1を得た。
【0057】
<バックコート層用塗工液1>
下記により調整した柔細胞繊維1をバックコート層用の塗工液とした。
【0058】
<柔細胞繊維1>
サトウダイコンの搾り粕からなる市販のビートパルプを10L容のオートクレーブに投入した。液比4、有効アルカリ添加率15質量%となるように水酸化ナトリウムを混合し、保持温度120℃、保持時間30分の条件で処理した。ろ過による洗浄後、試料濃度8質量%とし、試料に対して有効塩素濃度2質量%となるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて攪拌し、室温で8時間漂白した後、ろ過により洗浄した。これによりサトウダイコン柔細胞由来の柔細胞繊維が得られた。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後の柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は15%であった。以下、これを柔細胞繊維1と表記する。
【0059】
<下塗り層1>
ゲル法シリカ(P78D、水澤化学工業株式会社製)100部をホモジナイザーを用いて水400部に分散し、これに10質量%ポリビニルアルコール(R1130、株式会社クラレ製)水溶液350部、湿潤剤(ノプコウェット50、サンノプコ株式会社製)0.3部、25質量%水酸化ナトリウム水溶液8部を添加し、固形分濃度16質量%の下塗り層1を調製した。
【0060】
<上塗り層1>
水400部に、50質量%ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)8部、気相法シリカ(平均一次粒子径20nm、BET法による比表面積90m/g)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を使用して予備分散液を作製した。得られた予備分散液を高圧ホモジナイザーで処理してシリカ分散液を得た。こうして得たシリカ分散液500部、4質量%ホウ酸水溶液10部、8質量%ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500)250部、30質量%アルカリ増粘型エマルジョン(SNシックナー926、サンノプコ株式会社製)0.3部(固形分換算で0.09部)を混合し、固形分濃度15.0質量%になるように水で調製して上塗り層1を調製した。
【0061】
以上のようにして得られたインクジェット画像材料用支持体のバックコート層の塗膜強度、搬送性の評価方法としては、以下に記載の方法で評価した。
【0062】
[搬送性の評価]
A4サイズに断裁した50枚の画像材料を、23℃、50%RHの環境下でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−880Cにセットし、連続して搬送させた。この時の搬送の様子を目視にて観察し、搬送性を判定した。
◎:重送が全く発生せず良好。
○:重送が少し発生したが、実用上問題なし。
△:重送が発生したが、実使用上の範囲内。
×:重送が発生し、実使用上不可。
【0063】
[塗膜強度の評価方法]
直径1mmのステンレス棒を、荷重の程度を変化させ、速度:20mm/sec、試験区間:20mmの条件で擦り、塗膜の表面を光学顕微鏡で観察して、バックコート層表面に現れたキズの程度から評価を行った。
○:バックコート層の削れが無く良好。
○:バックコート層の削れが少し発生したが、実用上問題なし。
△:バックコート層の削れが発生したが、実使用上の範囲内。
×:バックコート層の削れが発生し、実使用上不可。
【0064】
実施例2〜10
実施例1で使用した柔細胞繊維1の替わりに、下記に示した柔細胞繊維2、フィブリル化柔細胞繊維1〜5を用い、表1に示した塗布量とすること以外は、実施例1と同様に作製した。
【0065】
<柔細胞繊維2>
サトウキビの搾り粕からなるバガスを粉砕し、目開き1mmのふるいにかけて、ふるいを通過した分を収集した。これを<柔細胞繊維1>の製法と同様にして漂白と洗浄し、サトウキビ柔細胞由来の柔細胞繊維を得た。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後の柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は11%であった。以下、これを柔細胞繊維2又と表記する。
【0066】
<フィブリル化柔細胞繊維1>
柔細胞繊維1を1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を10000rpmで1分間処理して、フィブリル化柔細胞繊維を作製した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は48%であった。以下、これをフィブリル化柔細胞繊維1と表記する。
【0067】
<フィブリル化柔細胞繊維2>
柔細胞繊維1を1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を15700rpmで1分間処理した。次いで、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を50MPaの圧力で45秒間循環処理してフィブリル化柔細胞繊維を作製した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は50.5%であった。以下、これをフィブリル化柔細胞繊維2と表記する。
【0068】
<フィブリル化柔細胞繊維3>
柔細胞繊維1を1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を15700rpmで1分間処理した。次いで、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を50MPaの圧力で5分間循環処理してフィブリル化柔細胞繊維を作製した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は100%であった。以下、これをフィブリル化柔細胞繊維3と表記する。
【0069】
<フィブリル化柔細胞繊維4>
柔細胞繊維1を1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を15700rpmで1分間処理した。次いで、シングルディスクリファイナーを用いて処理し、フィブリル化柔細胞繊維を作製した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は90%であった。以下、これをフィブリル化柔細胞繊維4と表記する。
【0070】
<フィブリル化柔細胞繊維5>
柔細胞繊維2を1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を15700rpmで1分間処理した。次いで、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を50MPaの圧力で10分間循環処理してフィブリル化柔細胞繊維を作製した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は100%であった。以下、これをフィブリル化柔細胞繊維5と表記する。
【0071】
比較例1〜5
実施例1で使用した柔細胞繊維1の替わりに、下記に示したフィブリル化セルロース繊維1、バクテリアセルロース繊維1、表1に示した市販バインダーを用いること以外は実施例1と同様に作製した。
【0072】
<フィブリル化セルロース繊維1>
95質量%以上が仮道管細胞である針葉樹パルプをパルパーで離解した後、ダブルディスクリファイナーで叩解処理し、さらに高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を50MPaの圧力で20分間循環処理してフィブリル化セルロース繊維を作製した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化セルロース繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は60%であった。以下、これをフィブリル化セルロース繊維1と表記する。
【0073】
<バクテリアセルロース繊維1>
酢酸菌が産生した微細なセルロース繊維からなる市販のバクテリアセルロース繊維(ナタデココ、フジッコ社製)を水洗いした後、1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を15700rpmで1分間処理した。これを0.1質量%に調整して100mL容のメスシリンダーに入れて静置し、24時間後のフィブリル化柔細胞繊維の沈降体積を測定した結果、懸濁安定性は80%であった。以下、これをバクテリアセルロース繊維1と表記する。
【0074】
得られた結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、画像材料用の支持体のバックコート層のバインダーとして、柔細胞を用いた本発明の画像材料用支持体は、塗膜強度と搬送性に優れた画像材料用支持体であることが判る。また、柔細胞繊維のフィブリル化を促進することで、塗膜強度が強くなり、バックコートの塗布量を増やすことで搬送性と塗膜強度が強くなることが判る。針葉樹パルプを原料とした微細繊維をバインダーとして用いた比較例1は、フィブリル化程度が十分でなく、繊維の太さが大きいことから、搬送性が安定しなかった。バクテリアセルロース繊維をバインダーとして用いた比較例2は、繊維の結晶化度が高いために、繊維同士のミクロな結合がゆるく、塗膜強度が上がらなかった。比較例3〜5の市販バインダーを用いたものは、搬送性能が不足した。
【0077】
本発明により、バックコート層に植物の柔細胞から得られた繊維を含有する、搬送性と塗膜強度に優れ、産業廃棄物を減量することが可能な画像材料用支持体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ハロゲン化銀写真材料、インクジェット記録材料、熱移行型熱転写記録受像材料、感熱記録材料、感光感熱記録材料、電子写真記録材料等の画像材料用支持体に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にバックコート層を有する画像材料用支持体において、該バックコート層中に、植物の柔細胞から得られた繊維を含有することを特徴とする画像材料用支持体。
【請求項2】
柔細胞がサトウダイコン由来である請求項1記載の画像材料用支持体。
【請求項3】
柔細胞がサトウキビ由来である請求項1記載の画像材料用支持体。
【請求項4】
植物の柔細胞から得られた繊維が、懸濁安定性が50%以上にフィブリル化されている請求項1〜3記載の画像材料用支持体。

【公開番号】特開2008−6631(P2008−6631A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177774(P2006−177774)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】