説明

画像検査装置および画像形成装置

【課題】従来よりも簡易的な方法で、且つ迅速に検査画像から事前印刷画像を除去した画像を生成し、検査画像の精度を求める。
【解決手段】まず、制御部は、原稿画像データに二値化を行う(SA1)。そして、赤外読取部は、原稿画像と事前印刷画像とが重畳して形成された検査画像に、赤外光源の光を照射して、検査画像の黒およびグレー以外の色を除去した読取画像を表す読取画像データを生成する(SA2)。次に、制御部は、当該読取画像データに二値化を行い、読取画像に含まれるグレーの事前印刷画像を除去する(SA3)。そして、制御部は、検査画像から事前印刷画像のみを除去した画像を表す画像データと、二値化後の原稿画像データとを照合し(SA4)、検査結果を出力する(SA5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置により形成された画像の良否を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置が画像を形成する際には、予期せぬ要因等によって本来の画像が形成されないことがある。そのため、画像形成装置には、画像が正常に形成されたか否かを検査する機能を有するものがある。このような画像形成装置は、シート(用紙)に画像を形成すると、その画像を光学的に読み取り、その画像の基となった画像データと比較してシート上の画像を検査する。
【0003】
ところで、例えば帳票のように、罫線、枠組み、網掛け等の画像が予め印刷されたシートに、項目や金額等の文字を表す画像が重畳して形成されることがある。このような場合には、特許文献1〜3に記載された技術が用いられる。特許文献1〜3には、読み取った画像から、事前にシートに印刷された画像を取り除いた画像に基づいて検査する技術が記載されている。
また、特に帳票等においては、画像形成装置は、黒を用いて文字等の画像を形成するのが一般的である。この場合、ユーザがその内容を視認しやすいように、シートに予め印刷された画像には黒色とは類似しない色が用いられることが比較的多い。よって、このような場合には、例えば特許文献4に記載されているように、画像から黒でない色を除去する技術を用いて、画像形成装置が意図する検査を行うこともできる。
【特許文献1】特開平11−78183号公報
【特許文献2】特開2003−108921号公報
【特許文献3】特開2003−196592号公報
【特許文献4】特許第2882273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のいずれの技術であっても、目的の画像のみを抽出する処理は複雑であるため、高い処理能力が要求される。また、特に、画像形成装置が形成する画像の色とシートに予め印刷された画像の色とが類似する場合、画像形成装置が形成する画像のみを正確に抽出したり、あるいは予め印刷された画像のみを正確に除去することは、極めて困難である。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡易的かつ迅速に不要な画像を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、原稿画像データに基づく画像が形成されたシートに赤外波長域の光を照射する照射手段と、前記シートに形成された画像の基となる前記原稿画像データを取得する取得手段と、前記照射手段によって照射された光のうち前記シートにおいて反射した赤外波長域の反射光を受光し、その受光量に応じた階調を有する読取画像データを所定の階調数で生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された読取画像データの階調数を減ずる減数手段と、前記減数手段によって階調数が減じられた読取画像データと前記原稿画像データとを比較し、その比較結果を表すデータを出力する検査手段とを備えることを特徴とする画像検査装置を提供する。
【0007】
この画像検査装置において、前記減数手段は、前記生成手段によって生成された読取画像データに含まれる階調値と閾値と比較して当該読取画像データの階調数を減ずるものであり、前記読取画像データの階調値に基づいて前記閾値を算出する算出手段を備えるようにしてもよい。
【0008】
また、本発明は、第1の画像が形成されたシートに、原稿画像データに基づいて赤外波長域の光を吸収する第2の画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって前記第2の画像が形成されたシートに、赤外波長域の光を照射する照射手段と、前記照射手段によって照射された光のうち前記シートにおいて反射した赤外波長域の反射光を受光し、その受光量に応じた階調を有する読取画像データを所定の階調数で生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された読取画像データの階調数を減ずる減数手段と、前記減数手段によって階調数が減じられた読取画像データと前記原稿画像データとを比較し、その比較結果を表すデータを出力する検査手段とを備えることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0009】
この画像形成装置において、前記減数手段は、供給される画像データに基づいて前記閾値を決定する閾値決定手段を有し、自装置の動作を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、前記照射手段に、前記画像形成手段によって前記画像が形成されていないシートに光を照射させ、前記生成手段に、前記画像が形成されていないシートからの反射光に応じた読取画像データを生成させ、前記閾値決定手段に、前記画像が形成されていないシートからの反射光に応じた読取画像データを供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、簡易的かつ迅速に不要な画像を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)第1実施形態
図1は、画像形成装置1の構成を示したブロック図である。図1に示すように、画像形成装置1は、画像形成部10と、赤外読取部20と、制御部30と、記憶部40と、UI(User Interface)部50と、通信部60とを備えている。
画像形成部10は、供給された画像データに基づいてシートに画像を形成する。赤外読取部20は、赤外光源により光を照射し、シートに形成された画像を光学的に読み取って画像データを生成する。制御部30は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)や作業用のワークエリアを提供するRAM(Random Access Memory)および各種制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)を備え、制御プログラムに記述された手順に従って演算処理を行う。記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を備え、各種データを記憶する。UI部50は、タッチパネルや各種ボタンを備え、ユーザからの操作を受け付けるとともに、画像や音声により情報の通知を行う。通信部60は、ネットワークを介して通信を行うためのインターフェース装置であり、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、図示せぬコンピュータ等の外部端末から画像データを受信する。
【0012】
続いて、図2を参照し、画像形成部10および赤外読取部20の構成を説明する。
画像形成部10は、複数のトレイ11と、複数の搬送ロール12と、画像形成ユニット13と、定着器14とを備える。
トレイ11は、所定のサイズのシートをそれぞれ収容している。トレイ11に収容されているシートには、予め画像が形成されている。すなわち、本実施形態におけるシートは、いわゆるプレプリント用紙である。なお、シートに予め形成されている画像のことを、以下においては「事前印刷画像」という。
【0013】
ここで、事前印刷画像について説明する。図3は、事前印刷画像が形成されたシートを例示した図である。事前印刷画像は、インク等の色材を用いて、白色無地のシートSに形成されている。図3においては、事前印刷画像A1と事前印刷画像A2とを示している。事前印刷画像A1およびA2は、罫線や網掛画像により構成される。なお、網掛画像とは、網点等により表されるハーフトーン画像のことであり、図3においては、これをハッチングで示している。
また、事前印刷画像A1は、黒色以外の色材により形成されている。一方、事前印刷画像A2は、低明度のグレーの色材、すなわち黒色の色材をある程度含む色材により形成されている。事前印刷画像A2が低明度のグレーであるのは、これと重なって形成される文字等の画像の視認性(見やすさ)を妨げないためである。
なお、以下においては、必要に応じて、事前印刷画像A1およびA2を総称して「事前印刷画像A」という。
【0014】
複数の搬送ロール12は、それぞれ、上述した事前印刷画像Aが形成されたシートSを、画像の形成に合わせて搬送する。画像形成ユニット13は、電子写真方式により画像を形成する。すなわち、画像形成ユニット13は、感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、転写部等を有し、トナーによりシートSに画像を形成する。なお、画像形成ユニット13は、黒色のトナーにより画像を形成する。感光体ドラムは、軸を中心にして所定の速度で周回するドラム状の部材である。帯電部は、感光体ドラム表面を所定の電位に帯電する。露光部は、帯電した感光体ドラムにビームを照射して静電潜像を形成する。現像部は、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを付着させて画像を現像する。定着器14は、シートを加熱および加圧するためのロール部材を備えており、シートSに転写された画像を定着させる。このような構成のもと、画像形成部10は、供給された画像データに基づいて黒色のトナーを用いて画像を形成する。この、画像形成部10により形成される画像のことを、以下では「原稿画像」という。
【0015】
ここで、原稿画像について説明する。図4は、原稿画像の一例である原稿画像Bが形成されたシートSを示した図である。上述したように、原稿画像Bは、複数の文字や記号からなり、黒色のトナーにより形成されている。なお、シートSのうちの原稿画像Bが形成されていない領域は、シートSがそのまま露出しているため、白色である。なお、以下においては、シートSのうちの原稿画像Bが形成された領域のことを「画像領域」といい、原稿画像Bが形成されていない領域のことを「背景領域」という。
【0016】
原稿画像を表す原稿画像データは、階調数が「256」である画素データの集合によって構成されている。画素データは、階調値が「0」である場合に黒色、「255」である場合に白色を示し、その他の場合には中間調、すなわちグレーを示す。
なお、以下においては、原稿画像データが表す原稿画像の左上端を原点とし、図3に示したX軸およびY軸による直交座標を定め、その画素データの座標を(x1,y1)と表記する。
【0017】
次に、赤外読取部20の構成を説明する。図2に示したように、赤外読取部20は、画像形成部10の定着器14よりも下流側に設けられており、画像形成部10により原稿画像が形成されたシートを光学的に読み取る。図5は、赤外読取部20の装置構成を示した図である。図5に示したように、赤外読取部20は、赤外光源21と、結像レンズ22と、イメージセンサ23とを備える。
【0018】
赤外光源21は、赤外波長域の光を照射する光源である。赤外光源21は、搬送されるシートに対して所定の位置で光を照射する。なお、赤外光源21が照射する光は、赤外波長域を成分として含んでいればよく、その他の成分を含んでいてもよい。結像レンズ22は、シートからの反射光をイメージセンサ23の位置で結像する。イメージセンサ23は、赤外波長域に感度を有する撮像素子を有する。イメージセンサ23は、結像された光を受光し、その受光量に応じた画像データを生成して出力する。赤外読取部20が生成する画像データは、階調数が「256」である画素データにより構成される。すなわち、赤外読取部20は、階調値が8ビット(256階調)で表される画素データの値の大小によってシートに形成された原稿画像の濃淡を表す。本実施形態においては、階調値が大きいほど明度が高く(明るく)、階調値が小さいほど明度が低い(暗い)とする。
なお、以下においては、赤外読取部20が生成する画像データを「読取画像データ」といい、他の画像データと区別する。また、読取画像データが表す読取画像の左上端を原点とし、原稿画像と同様の直交座標を定め、その画素データの座標を(x2,y2)と表記する。
【0019】
また、制御部30は、画像形成装置1の各部を制御するための演算処理に加えて、画像データに適用する種々の画像処理を実行する。制御部30が実行する画像処理の一部を図示すると、例えば図6のようになる。図6は、制御部30がROMに記憶された制御プログラムを実行することにより実現される機能を示す機能ブロック図である。なお、図中の矢印は、データの流れを概略的に示したものである。
制御部30は、原稿画像データと、この原稿画像データに基づいてシートに形成された画像を読み取って生成された読取画像データとを比較することにより画像の検査を行う機能を実現する。この機能は、減数処理部31と、照合部32とによって実現される。
【0020】
減数処理部31は、比較の対象となる読取画像データと原稿画像データとを取得し、これらの各々の画素データの階調数を所定の閾値に基づいて減ずる処理を行う。本実施形態においては、減数処理部31は、画素データの階調数を256階調から2階調に減ずる、いわゆる二値化処理を実行する。減数処理部31は、読取画像データおよび原稿画像データに二値化処理を行うと、画素データの階調値は「0」または「1」のいずれかになる。以下においては、画素データの階調値が「0」である画素を「黒画素」といい、画素データの階調値が「1」である画素を「白画素」という。照合部32は、減数処理部31において二値化処理が行われた読取画像データおよび原稿画像データを取得して、これらの画像データを比較して一致度を求める。この照合処理においては、照合部32は、例えば残差逐次検定法等を用いて、各画素データについて階調値が一致するか否かを判定する。照合部32は、各画素データについて判定を行った後、読取画像データと原稿画像データの一致の度合いを示すデータを生成して出力する。
【0021】
以上の構成のもと、画像形成装置1は、原稿画像データに基づいた画像をシートに形成する。また、画像形成装置1は、必要に応じて、画像形成部10によって画像が形成されたシートを、赤外読取部20を用いて検査する。画像形成装置1が検査を行うタイミングは、ユーザに指示されたときでもよいし、予め決められた周期であってもよい。もちろん、画像形成部10が画像を形成する毎に検査を行ってもよい。
図7は、画像形成装置1が画像を検査する動作の手順を示したフローチャートである。以下では、このフローチャートに沿って画像形成装置1の動作を説明する。
【0022】
まず、制御部30は、画像形成装置1に対して原稿画像Bを形成することが指示されると、この原稿画像Bを表す原稿画像データに減数処理、すなわち二値化処理を行う(ステップSA1)。そして、制御部30は、二値化後の原稿画像データを記憶部40に記憶させる。
【0023】
次に、制御部30は、受信した原稿画像データを画像形成部10に供給して画像を形成するよう指示する。この指示に応じて、画像形成部10は、供給される原稿画像データに基づいて原稿画像Bを形成する。このとき、シートには、原稿画像Bと事前印刷画像Aとが重畳されて形成されている。赤外読取部20は、このような画像を検査対象として読み取る。そこで、以下では、この状態の画像のことを「検査画像」という。図8は、シートSに形成された検査画像Cを例示した図である。検査画像Cは、図3に示した事前印刷画像Aが形成されたシートSに、図4に示した原稿画像Bが重畳して形成された画像である。
【0024】
続いて、制御部30は、赤外読取部20に検査画像Cを読み取ることで得られる読取画像データを生成させる(ステップSA2)。図9は、この読取画像データが表す読取画像Caを示した図である。図9より、読取画像データが表す読取画像Caは、検査画像Cから網掛画像A1を除去した画像となる。これは、赤外読取部20が、シートSからの赤外波長域の反射光に応じて、読取画像データを生成しているからである。
【0025】
一般に、トナーやインク等の色材においては、黒色の色材が赤外波長域の光を吸収する一方で、その他の色の色材は赤外波長域の光をほとんど反射する。また、シートSの表面も白色であるため、赤外波長域の光をほとんど反射する。すなわち、赤外波長域の光を吸収するのは、実質的に黒色の色材で画像が形成されている領域のみとなる。本実施形態においては、原稿画像Bはいずれも黒色のトナーで形成されている一方、事前印刷画像Aについては、事前印刷画像A1が黒色以外の色材で形成されているのに対して、事前印刷画像A2が黒色の色材を含む色材で形成されている。それゆえ、読取画像Caは、検査画像Cから事前印刷画像A1を除いたような画像となる。
【0026】
続いて、制御部30は、赤外読取部20から読取画像データが供給されると、所定の閾値に基づいて、この読取画像データに二値化処理を行う(ステップSA3)。すなわち、制御部30は、読取画像データの各画素データの階調値を所定の閾値と比較し、階調値が閾値以上である画素データの階調値を「1」に変換し、階調値が閾値未満である画素データの階調値を「0」に変換する。つまり、読取画像データの階調数は、「256」から「2」へと減じられる。
【0027】
ここで、ステップSA3で用いられる閾値の決定方法について説明する。上述したように、原稿画像Bの画像領域には黒色のトナーが用いられ、事前印刷画像A2には低明度のグレーのインク等が用いられる。よって、閾値は、事前印刷画像A2に用いられるグレーに対応する階調値と、原稿画像データの階調値とに基づいて設定されればよい。具体的には、閾値は、事前印刷画像A2に対応する画素データの階調値と原稿画像Bの画像領域に対応する画素データの階調値との中間の階調値に設定される。本実施形態では、この閾値は、読取画像データを構成する全ての画素データについて同一であるとする。
【0028】
次に、制御部30は、ステップSA1で二値化を行った原稿画像データを記憶部40から読み出し、二値化後の読取画像データと比較する照合処理を行う(ステップSA4)。この照合処理において、制御部30は、例えば残差逐次検定法を用いて画素単位でのテンプレートパターンマッチングを行う。そして、制御部30は、これらの画像データについて、対応する位置の画素データの階調値どうしを比較し、これらが不一致である画素として特定する。その後、制御部30は、この不一致である画素の数や位置に基づいて、不一致である画素が所定の許容量を超えるか否かを判断し、その旨を示すデータを生成して出力する(ステップSA5)。そして、制御部30は、このデータが示す判断結果に基づいて、不一致である画素が許容量を超えていると判断すれば、例えば「印刷不良です。」というメッセージをUI部50に表示させるなどして、ユーザに報知する。一方、制御部30は、不一致である画素が許容量内であると判断すれば、その旨を示すデータを生成して出力し、その示す判断結果に基づいて、例えば「正常に印刷されています。」というメッセージをUI部50に表示させるなどしてユーザに通知する。
なお、制御部30は、不一致の画素が許容量を超えていると判断した場合に、対応するシートSに「印刷不良」等の文字の画像を重畳して形成させ、ユーザが誤って使用することを防止できるようにしてもよい。
【0029】
以上述べた第1実施形態によれば、画像形成装置1は、検査画像に赤外光源21の光を照射することにより、検査画像の黒色以外の色材で形成された事前印刷画像を除去した読取画像データを生成する。さらに、画像形成装置1は、この読取画像データに二値化を行い、読取画像に含まれる黒色以外の色材で形成された事前印刷画像を除去する。このようにすれば、画像形成装置1は、検査画像から事前印刷画像のみを取り除いた画像を表す読取画像データと、二値後の原稿画像データとを比較して検査することができる。すなわち、本実施形態の画像形成装置1によれば、赤外光源21を用い、二値化処理(減数処理)を行うという比較的簡易な方法を用いて、迅速に検査画像から事前印刷画像を除去した画像を生成し、精度よく検査を行うことができる。
【0030】
(2)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態は、上述した第1実施形態とは動作が異なるものの、装置構成については同様である。そこで、本実施形態においては、その動作について説明する。
【0031】
図10は、本実施形態において、画像形成装置1が検査画像を検査する動作の手順を示したフローチャートである。図10より、制御部30は、まず、二値化処理に用いる閾値を読取画像データを構成する各画素データについて算出する(ステップSB1)。この閾値は、画素データの座標毎に異なる値となるため、以下ではこれを「閾値Thx2,y2(px1,y1)」とする。
ここで、閾値Thx2,y2(px1,y1)の算出方法について説明する。制御部30は、読取画像データの座標(x2,y2)の画素データの閾値Thx2,y2(px1,y1)を算出するべく、原稿画像データの座標(x1,y1)の画素データの階調値を用いて、次式(1)に示す演算を行う。
(数1)
Thx2,y2(px1,y1)=(T−T)*px1,y1/255+T・・・(1)
【0032】
式(1)において、px1,y1は、原稿画像の座標(x1,y1)の画素を注目画素としたX軸方向に3個分とY軸方向に3個分の9個の画素群(以下、「近傍画素群」という)の階調値の平均値である。また、Tは、px1,y1=0のときの座標(x2,y2)の画素データの閾値であり、Tはpx1,y1=255のときの座標(x2,y2)の画素データの閾値である。TおよびTは、あらかじめ決められた値である。
【0033】
図11は、式(1)によって表される階調値px1,y1と閾値Thx2,y2(px1,y1)との関係を図示したグラフである。図11より、閾値Thx2,y2(px1,y1)は、px1,y1の値に応じて増加する線形関数によって特定される。このように、原稿画像データを構成する画素データの階調値に応じて閾値が決められることにより、制御部30が読取画像データを二値化する際に、事前印刷画像をより精度良く除去することができるようになる。以下では、具体的に、原稿画像データの階調値の一例を用いて、画素データ毎に算出される閾値Thx2,y2(px1,y1)について説明する。
【0034】
図12は、ある原稿画像データの領域Wに注目し、この領域Wに位置する各画素データの階調値を示している。図12より、領域Wは「H」型の画像領域を含んでおり、この画像領域は画素データの階調値が「0」の黒画素によって構成されている。このような画像領域を含む領域Wについて、制御部30が式(1)に基づいて読取画像データの画素データ毎に閾値Thx2,y2(px1,y1)を算出すると、その閾値Thx2,y2(px1,y1)は図13のようになる。図13より、注目画素を含む近傍画素群に多くの黒画素が位置するほど、近傍画素群の階調値は小さくなり、注目画素に対応する閾値は小さくなる。近傍画素群の階調値が小さいということは、注目画素を含む近傍画素群には比較的濃度が高い画素が存在することを意味する。よって、読取画像データの注目した画素が画像領域に位置する場合には、閾値が比較的小さくても事前印刷画像と誤って除去されることはない。これに対して、注目した画素が背景領域に位置する場合には、閾値が小さいため、グレーの事前印刷画像の濃度がある程度は高くても除去される。
【0035】
一方、注目画素を含む近傍画素群に多くの白画素が位置するほど、近傍画素群の階調値は大きくなり、注目画素に対する閾値は大きくなる。近傍画素群の階調値が大きいということは、注目画素を含む近傍画素群には比較的濃度が低い画素が存在することを意味する。よって、読取画像データの注目画素が画像領域に位置する場合には、閾値が比較的大きいから事前印刷画像と誤って除去されることはない。これに対して、注目画素が背景領域に位置する場合には、ある程度の濃度以下の事前印刷画像が除去される。
なお、上述した式(1)では、原稿画像を構成する画素データの階調値px1,y1を変数とした線形関数(一次関数)で閾値Thx2,y2(px1,y1)を算出しているが、関数はこれに限らない。例えば、一次関数よりもさらに高次の式で表される曲線関数であってもよい。
【0036】
ここで図10の説明に戻る。閾値Thx2,y2(px1,y1)を算出したら、制御部30は、原稿画像データに二値化を行い(ステップSB2)、赤外読取部20に検査画像の読取画像データを生成させる(ステップSB3)。そして、制御部30は、ステップSB1で求めた閾値Thx2,y2(px1,y1)に基づいて、読取画像データに二値化を行う(ステップSB4)。そして、制御部30は、二値化後の読取画像データと、ステップSB2で二値化を行った原稿画像データとの照合処理を行い(ステップSB5)、不一致である画素が所定の許容量を超えるか否かを判断し、その旨を示すデータを生成して出力する(ステップSB6)。なお、ステップSB2、SB3、SB5およびSB6の動作は、上述した第1実施形態のステップSA1、SA2、SA3およびSA5の動作と同様である。
【0037】
以上述べた第2実施形態によれば、画像形成装置1は、原稿画像データを構成する画素データの階調値に応じて、読取画像データを構成する各画素データの閾値を求める。このことにより、読取画像データの注目した画素が画像領域であれば、事前印刷画像と誤って除去されることを回避できるし、注目した画素が背景領域であれば、ある程度は高濃度の事前印刷画像であっても、二値化により精度良く事前印刷画像が除去される。
【0038】
(3)変形例
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々の態様にて実施することが可能である。具体的には、例えば以下のような変形が挙げられる。なお、これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
【0039】
上述した実施形態においては、画像検査装置を一体に構成した画像形成装置1を例示して説明したが、例えば、画像検査装置に相当する構成のみを着脱自在なオプション装置として構成してもよい。すなわち、この画像検査装置は、上述した赤外読取部20と、制御部30とを備え、外部装置である画像形成装置から原稿画像データを取得するものである。
【0040】
上述した第1実施形態では、読取画像データの二値化に用いる閾値を、ユーザが設定していたが、事前印刷画像に応じて画像形成装置1が設定してもよい。
例えば、ユーザが、トレイ11に、異なる事前印刷画像が形成されたシートを新たに収容した場合に、UI部50を操作して、画像形成装置1に閾値を更新する処理を行うように指示する。この指示に応じて、制御部30は、トレイ11に収容されたシートを、搬送ロール12に1枚だけ搬送させる。このとき、画像形成ユニット13および定着器14は、画像形成時の動作を行わず停止しており、シートの搬送のみが行われる。赤外読取部20は、シートが搬送ロール12上の所定の位置に搬送されると、事前印刷画像を読み取った画像を表す事前印刷画像データを生成する。この事前印刷画像データを構成する画素データの階調値は、上述した読取画像データと同様に、256階調の濃度を表す値となる。
以下においては、事前印刷画像データが表す画像の左上隅を原点とし、原稿画像と同様の直交座標を定め、その画素データの座標を(x3,y3)と表す。
そして、制御部30は、この事前印刷画像データに基づいて、読取画像データの閾値Thx2,y2(px3,y3)を算出するべく、次式(2)に示す演算を行う。
(数2)
Thx2,y2(px3,y3)≦px3,y3+α(x3,y3)・・・(2)
【0041】
式(2)は、読取画像データの座標アドレス(x2,y2)の画素データが取り得る閾値Thx2,y2(px3,y3)の範囲を指定するものであり、画素データの階調値px3,y3にオフセットα(x3,y3)を加えたものよりも小さくなるようにしている。このようにすれば、制御部30が読取画像データに二値化を行った際に、事前印刷画像のみをより確実に除去することができる。
ここで、画素データの階調値px3,y3にオフセットα(x3,y3)を加える理由について説明する。スキャナ等の画像読取手段においては、イメージセンサ等の各部材にゴミが付着して、これが光路上に存在する場合、面内で濃度が不均一となる面内ムラが発生することがある。したがって、赤外読取部20が生成する画素データの階調値px3,y3にも、本来の値とは異なってしまうことがある。このような場合に、単に閾値Thx2,y2(px3,y3)が、階調値px3,y3以下であればよいという条件では、事前印刷画像が除去されなかったり、原稿画像の画像が誤って除去されてしまう虞がある。よって、赤外読取部20が、階調値が既知である画像データに基づいてシートに画像を形成する。そして、制御部30が、当該画像を読み取って生成された画像データを構成する各画素データについて、階調値を本来の値に補正するための補正値を求める。そして、制御部30は、この補正値をオフセットα(x3,y3)として用いれば、事前印刷画像データを表す画像が面内ムラの影響を受けていても、所望の閾値Thx2,y2(px3,y3)を求めることができる。
【0042】
上述した第1実施形態では、読取画像データに対応する閾値は、読取画像データを構成する全ての画素データについて同一としていたが、制御部30は、位置に応じて異なる閾値を用いて事前印刷画像を除去するようにしてもよい。例えば、読取画像データを複数の領域に分割し、想定し得る事前印刷画像に対応する画素データの階調値が比較的大きな領域の閾値を大きくし、階調値が小さな領域の閾値を小さくする、という具合に閾値を設定する。特に、検査画像において、原稿画像と事前印刷画像とが重畳するような領域付近では、より確実に事前印刷画像を除去されるべきであるから、対応する領域の閾値を小さくし、原稿画像データに含まれる階調値に近づけるようにしてもよい。
このようにすれば、検査画像に様々な明度のグレーが含まれている場合にも、制御部30は、読取画像から事前印刷画像のみを、さらに精度良く取り除くことができる。
【0043】
上述した実施形態では、制御部30は、ステップSA4やステップSB5の照合処理において、各々の画像データ全体を比較する処理を行っていたが、画像データの一部を比較する照合処理を行ってもよい。例えば、事前印刷画像に文字が含まれる場合などには、事前印刷画像にも黒の画像が含まれることがある。この場合、二値化後の読取画像Cにも事前印刷画像を表す画像が残ってしまい、制御部30が照合処理を行ったとしても、それに応じた不一致の画素が現れてしまう。そこで、制御部30は、原稿画像の画像領域付近に対応する画素データのみについて照合処理を行うようにする。これは、仮に事前印刷画像に黒の画像が含まれたとしても、この事前印刷画像は、原稿画像の内容の視認性を妨げることがないよう、原稿画像の画像領域とは異なる領域に限定して用いられることが多いからである。
【0044】
上述した第1実施形態では、制御部30は、ステップSA1で原稿画像データに二値化を行っていたが、ステップSA4における照合処理までに行えばよいので、制御部30は、ステップSA2における読取画像データの生成後や、ステップSA3における二値化後に行ってもよい。また、上述した第2実施形態においても、制御部30は、ステップSB5における照合処理までに原稿画像データに二値化を行えばよい。
また、制御部30は、原稿画像データや読取画像データに二値化を行っていたが、4階調等の異なる階調数に減数してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】画像形成装置の構成のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の装置構成を説明する図である。
【図3】事前印刷画像の一例を示す図である。
【図4】原稿画像の一例を示す図である。
【図5】赤外読取部の構成を説明する図である。
【図6】制御部と記憶部により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図7】第1実施形態に係る制御部が画像を検査する動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】検査画像の一例を示す図である。
【図9】検査画像を読み取った画像の一例を示す図である。
【図10】同実施形態に係る制御部が画像を検査する動作の手順を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る原稿画像を構成する画素データの階調値と閾値との関係を示すグラフである。
【図12】同実施形態に係る原稿画像の領域Wを構成する画素データの階調値を示す図である。
【図13】同実施形態に係る領域Wを構成する画素データの閾値の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1…画像形成装置、10…画像形成部、11…トレイ、12…搬送ロール、13…画像形成ユニット、14…定着器、20…赤外読取部、21…赤外光源、22…結像レンズ、23…イメージセンサ、30…制御部、31…減数処理部、32…照合部、40…記憶部、50…UI部、60…通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像データに基づく画像が形成されたシートに赤外波長域の光を照射する照射手段と、
前記シートに形成された画像の基となる前記原稿画像データを取得する取得手段と、
前記照射手段によって照射された光のうち前記シートにおいて反射した赤外波長域の反射光を受光し、その受光量に応じた階調を有する読取画像データを所定の階調数で生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された読取画像データの階調数を減ずる減数手段と、
前記減数手段によって階調数が減じられた読取画像データと前記原稿画像データとを比較し、その比較結果を表すデータを出力する検査手段と
を備えることを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
前記減数手段は、前記生成手段によって生成された読取画像データに含まれる階調値と閾値と比較して当該読取画像データの階調数を減ずるものであり、
前記読取画像データの階調値に基づいて前記閾値を算出する算出手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
第1の画像が形成されたシートに、原稿画像データに基づいて赤外波長域の光を吸収する第2の画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって前記第2の画像が形成されたシートに、赤外波長域の光を照射する照射手段と、
前記照射手段によって照射された光のうち前記シートにおいて反射した赤外波長域の反射光を受光し、その受光量に応じた階調を有する読取画像データを所定の階調数で生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された読取画像データの階調数を減ずる減数手段と、
前記減数手段によって階調数が減じられた読取画像データと前記原稿画像データとを比較し、その比較結果を表すデータを出力する検査手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記減数手段は、供給される画像データに基づいて前記閾値を決定する閾値決定手段を有し、
自装置の動作を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記照射手段に、前記画像形成手段によって前記画像が形成されていないシートに光を照射させ、
前記生成手段に、前記画像が形成されていないシートからの反射光に応じた読取画像データを生成させ、
前記閾値決定手段に、前記画像が形成されていないシートからの反射光に応じた読取画像データを供給する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−149539(P2008−149539A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338767(P2006−338767)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】