説明

画像生成方法、画像生成装置及びプログラム並びにX線CT装置

【課題】X線CT装置による再構成画像において、アーチファクトを抑えつつ、軟部組織領域のノイズを増加させることなく、高コントラスト領域の空間分解能を向上させる。
【解決手段】 投影データから画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する処理を行うステップと、投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行うステップとを実行する。例えば、投影データに対して、そのプロファイルにおけるエッジ領域を強調する強調処理と、そのプロファイルにおけるコントラストが一定レベル以下の領域を平滑化する平滑化処理とを行い、上記強調処理および平滑化処理が行われた投影データに基づいて画像を再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)画像の画質の最適化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT画像の空間分解能を決定する主要因の一つとして、X線CT装置のX線検出器を構成する検出素子の配列間隔が挙げられる。そのナイキスト(Nyquist)周波数を最大限に引き出して空間分解能を高めようとすると、その高周波成分により、ノイズ(noise)やアーチファクト(artifact)の増大を伴ってしまう。逆に、ノイズやアーチファクトを抑えようとすると、空間分解能が低下してしまう。このように、空間分解能とノイズやアーチファクトの程度とは、通常、トレードオフ(trade off)の関係にある。
【0003】
そのため、従来のX線CT装置では、再構成される画像の高周波成分を調整することにより、空間分解能とノイズやアーチファクトとのバランス(balance)を取り、実用に耐えるようにしている。すなわち、多くのX線CT装置において、軟部組織領域用である低周波強調の再構成関数や、高コントラスト(contrast)領域用である高周波強調の再構成関数など、種々の周波数強調による再構成関数を提供している(例えば特許文献1,段落[0005]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−068229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、観察者は、状況により、軟部組織領域と高コントラスト領域の両方を観察したい場合がある。
【0006】
このような場合には、例えば、軟部組織領域用の再構成関数による画像と、高コントラスト領域用の再構成関数による画像とをそれぞれ再構成する。そして、これら2種類の画像を、モニタ(monitor)に同時に表示させたり、切り換えて表示させたりする。
【0007】
しかし、この方法では、1つの画像のサイズ(size)が小さくなって見づらくなったり、視線の移動が大きくなったりして、観察作業が煩雑になり、診断効率が悪くなる。
【0008】
また、さらにこの問題を解決するため、例えば、まず高コントラスト領域用である高周波強調の再構成関数で画像を再構成し、次に、この画像の軟部組織領域だけにノイズ低減処理を行って、軟部組織領域と高コントラスト領域の両方がそれぞれ適当な画質となっている1画像を得る方法も考えられる。
【0009】
しかし、この方法では、得られた画像において、軟部組織領域のアーチファクトが強調されるなど、副作用が生じやすい。
【0010】
このような事情により、X線CT装置により得られる画像において、アーチファクトを抑えつつ、軟部組織領域のノイズを増加させることなく、高コントラスト領域の空間分解能を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点の発明は、X線CT撮影により得られた撮影対象の投影データ(data)から画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイル(profile)におけるエッジ(edge)領域を強調する処理を行うステップ(step)と、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル(level)以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行うステップとを実行する画像生成方法を提供する。
【0012】
第2の観点の発明は、X線CT撮影により得られた撮影対象の投影データから画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する処理を行う手段と、前記過程において、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行う手段とを備えた画像生成装置を提供する。
【0013】
第3の観点の発明は、コンピュータ(computer)を、X線CT撮影により得られた撮影対象の投影データから画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する処理を行う手段と、前記過程において、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行う手段として機能させるためのプログラム(program)を提供する。
【0014】
第4の観点の発明は、X線CT撮影を行って撮影対象の投影データを収集し、前記投影データから画像を生成するX線CT装置であって、前記画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する手段と、前記過程において、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行う手段とを備えているX線CT装置を提供する。
【0015】
第5の観点の発明は、前記投影データのプロファイルにおけるエッジ領域を強調する強調処理を行う強調手段と、前記プロファイルにおけるコントラストが一定レベル以下の領域を平滑化する平滑化処理を行う平滑化手段と、前記強調処理および平滑化処理が行われた前記投影データに基づいて画像を再構成する再構成手段とを備えた上記第4の観点のX線CT装置を提供する。
【0016】
ここで、「平滑化手段」は、「強調を緩和する処理を行う手段」の一例である。
【0017】
第6の観点の発明は、前記強調処理が、エッジの鋭さが所定範囲内であるエッジ領域のみを強調する処理である上記第5の観点のX線CT装置を提供する。
【0018】
第7の観点の発明は、前記強調処理が、前記投影データのプロファイルの高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が正の第1の閾値以上であり所望の上限値以下である領域と、前記データ値が負の第2の閾値以下であり所望の下限値以上である領域とを強調する処理である上記第6の観点のX線CT装置を提供する。
【0019】
第8の観点の発明は、前記強調処理が、前記投影データのチャネル(channel)方向、列方向およびビュー(view)方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行われる上記第5の観点から第7の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0020】
第9の観点の発明は、前記平滑化処理が、前記投影データのプロファイルの高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が正の第3の閾値以下であり負の第4の閾値以上である領域を平滑化する処理である上記第5の観点から第8の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0021】
第10の観点の発明は、前記平滑化処理が、前記投影データのチャネル方向、列方向およびビュー方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行われる上記第7の観点から第11の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0022】
第11の観点の発明は、前記投影データのプロファイルにおけるエッジ領域を強調する強調処理を行う強調手段と、前記強調処理が行われた前記投影データに基づいて第1の画像を再構成する第1の再構成手段と、前記強調処理が行われていない前記投影データに基づいて第2の画像を再構成する第2の再構成手段と、前記第1の画像または第2の画像において、コントラストが一定レベルを超える第1の領域に前記第1の画像の対応領域の画像を充てており、コントラストが該一定レベル以下である第2の領域に前記第2の画像の対応領域の画像を充てた画像を生成する生成手段とを備えた上記第4の観点のX線CT装置を提供する。
【0023】
ここで、「第1の再構成手段」、「第2の再構成手段」および「生成手段」は、「強調を緩和する処理を行う手段」の一例である。
【0024】
第12の観点の発明は、前記強調処理が、前記投影データの高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が正の第1の閾値以上である領域と、前記データ値が負の第2の閾値以下である領域とを強調する処理である上記第11の観点のX線CT装置を提供する。
【0025】
第13の観点の発明は、前記強調処理が、前記投影データのチャネル方向、列方向およびビュー方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行われる上記第11の観点または第12の観点のX線CT装置を提供する。
【0026】
第14の観点の発明は、前記第1の領域が、前記第1の画像または第2の画像における、画素値のバラツキの程度が一定レベルを超える領域であり、前記第2の領域が、該バラツキの程度が該一定レベル以下である領域である上記第11の観点から第13の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0027】
第15の観点の発明は、前記第1の領域が、前記第1の画像または第2の画像の所望方向の高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が一定レベルを超える領域であり、前記第2の領域が、該データ値が該一定レベル以下である領域である上記第11の観点から第13の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0028】
第16の観点の発明は、前記第1および第2の閾値が、前記第1の再構成手段が画像の再構成に用いる再構成関数の種類に応じて変化する上記第7の観点または第12の観点のX線CT装置を提供する。
【0029】
第17の観点の発明は、前記強調処理が、先鋭化処理である上記第5の観点から第16の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【発明の効果】
【0030】
上記観点の発明によれば、エッジ領域の強調を、アーチファクトの発生要因である過補正の調整が難しい再構成関数や画像空間で行うのではなく、過補正の調整が容易な投影データ空間で行い、これに伴う画像上での非高コントラスト領域の不要な強調や、本来的に発生するノイズを抑える処理を、投影データ空間または画像空間で行うことができ、再構成画像において、アーチファクトを抑えつつ、軟部組織領域のノイズを増加させることなく、高コントラスト領域の空間分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第一実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】第一実施形態における中央処理装置の機能ブロック(block)図である。
【図3】第一実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー(flow)図である。
【図4】第一実施形態に係るX線CT装置における処理の要部を概念的に示す図である。
【図5】投影データ空間におけるエッジ領域強調処理の一例を示す図である。
【図6】投影データ空間における非高コントラスト領域平滑化処理の一例を示す図である。
【図7】第一実施形態による画像と他の画像とにおけるMTF(modulation transfer function)曲線の比較結果を示す図である。
【図8】第一実施形態による画像と他の画像におけるMTF値の比較結果を示す図である。
【図9】第一実施形態による画像と他の画像におけるノイズレベルの比較結果を示す図である。
【図10】第一実施形態による画像と他の画像におけるエリアシングアーチファクト(aliasing artifact)の比較結果を示す図である。
【図11】第二実施形態における中央処理装置の機能ブロック図である。
【図12】第一実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー図である。
【図13】第二実施形態に係るX線CT装置における処理の要部を概念的に示す図である。
【図14】第1の画像と第2の画像との合成処理の例を示す図である。
【図15】第二実施形態による画像と他の画像とにおけるMTF曲線の比較結果を示す図である。
【図16】第二実施形態による画像と他の画像におけるMTF値の比較結果を示す図である。
【図17】第二実施形態による画像と他の画像におけるノイズレベルの比較結果を示す図である。
【図18】第二実施形態による画像と他の画像におけるエリアシングアーチファクトの比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明が限定されるものではない。
【0033】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【0034】
X線CT装置100は、操作コンソール(console)1と、撮影テーブル(table)10と、走査ガントリ(gantry)20とを具備している。
【0035】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを具備している。
【0036】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部Bに入れ出しするクレードル(cradle)12を具備している。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0037】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有する。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線81をファンビーム(fan
beam)或いはコーンビーム(cone beam)に整形するアパーチャ(aperture)23と、被検体40を透過したX線81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力をX線投影データに変換して収集するDAS(Data Acquisition System)(データ収集装置ともいう)25と、X線コントローラ22,アパーチャ23,DAS25の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。本体部20aは、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を具備する。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0038】
X線管21およびX線検出器24は、被検体40が載置される撮影空間、すなわち走査ガントリ20の空洞部Bを挟んで互いに対向して配置されている。回転部15が回転すると、X線管21およびX線検出器24は、その位置関係を維持したまま、被検体40の周りを回転する。X線管21から放射されアパーチャ23で整形されたファンビーム或いはコーンビームのX線81は、被検体40を透過し、X線検出器24の検出面に照射される。このファンビーム或いはコーンビームのX線81のxy平面における広がり方向をチャネル方向、z方向における広がり方向もしくはz方向そのものを列方向という。
【0039】
X線検出器24は、チャネル方向および列方向に配列された複数の検出素子を有している。DAS25は、個々の検出素子で得られた検出信号を個々のチャネルデータに変換し、これらをX線投影データとして収集する。
【0040】
図2に、第一実施形態における中央処理装置の機能ブロック図を示す。図2に示すように、第一実施形態における中央処理装置3は、機能的には、エッジ領域強調部301、非高コントラスト領域平滑化部302、および画像再構成部303を備えている。
【0041】
エッジ領域強調部301は、X線投影データP1に対して、そのプロファイルにおけるエッジ領域を強調するエッジ領域強調処理を行う。
【0042】
非高コントラスト領域平滑化部302は、X線投影データP1に対して、そのプロファイルにおける非高コントラスト領域を平滑化する非高コントラスト領域平滑化処理を行う。
【0043】
画像再構成部303は、エッジ領域強調処理および非高コントラスト領域平滑化処理が行われた処理済X線投影データP2に基づいて、画像SG1を再構成する。
【0044】
なお、エッジ領域強調部301は、発明における強調手段の一例であり、非高コントラスト領域平滑化部302は、発明における平滑化手段の一例であり、画像再構成部303は、発明における再構成手段の一例である。
【0045】
これより、第一実施形態に係るX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0046】
図3は、第一実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー図である。また、図4は、当該処理の要部である、投影データ空間でのエッジ領域強調処理および非高コントラス領域平滑化処理を概念的に示す図である。
【0047】
ステップ(step)S1では、被検体のスキャン(scan)を行って、複数ビューのX線投影データP0を収集する。各ビューのX線投影データP0は、それぞれ、X線検出器24を構成する検出素子、すなわちチャネル方向および列方向に配列された個々の検出素子により得られたチャネルデータにより構成されている。なお、収集されたX線投影データP0には、通常、ビームハードニング補正、検出器チャネル間特性補正、X線強度補正などを含む前処理が行われるが、ここでは、説明を省略する。
【0048】
ステップS2では、エッジ領域強調部301が、収集された各ビューのX線投影データに対して、図4(a)に示すように、投影データ空間におけるエッジ領域強調処理を行う。エッジ領域強調処理は、例えば、X線投影データのビュー方向、チャネル方向および列方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行う。
【0049】
図5に、投影データ空間におけるエッジ領域強調処理の一例を示す。
【0050】
図5の例では、まず、図5(a)に示すような、X線投影データのプロファイルf0にハイパスフィルタ(highpass filter)を適用するなどして、図5(b)に示すような、プロファイルf0の高周波成分を表す高周波成分プロファイルf1を得る。
【0051】
次に、図5(c)に示すように、この高周波成分プロファイルf1において、データ値が、所望の第1の閾値Th1(>0)以上となる領域と、所望の第2の閾値Th2(<0)以下となる領域とを、強調処理の対象となるエッジ領域EPとして検出する。
【0052】
ただし、ここでは、高周波成分プロファイルf1におけるデータ値が、所望の上限値Lt1(>Th1>0)以上である領域と、所望の下限値Lt2(<Th2<0)以下である領域とは、強調処理の対象としてのエッジ領域EPからは除外する。このようにする理由は、既に急峻な傾きを持っている鋭いエッジに対してさらに強調処理を行うと、再構成画像におけるCT値のオーバーシュート(overshoot)やアンダーシュート(undershoot)などの過補正を生じさせ、それに伴うアーチファクトを発生させる要因となるからである。なお、上記の上限値Lt1および下限値Lt2の適正値は、例えば、シミュレーション(simulation)の結果や、実際の試行結果により求める。
【0053】
エッジ領域EPが検出されたら、図5(d)に示すように、X線投影データのプロファイルf0において、その検出されたエッジ領域EPを強調する強調処理を行う。この強調処理としては、例えば、ラプラシアンフィルタ(Laplacian filter)やアンシャープマスク(unsharp mask)による先鋭化(鮮鋭化)処理、エッジ領域EPのチャネルデータ値に1より大きい所定の係数を乗算する処理などが考えられる。
【0054】
このように、投影データ空間でエッジ領域EPの強調を行うと、再構成画像において、高コントラスト領域がより強調され、空間分解能を向上させることができる。また、エッジ領域EPの強調を再構成関数や画像空間で行う場合と比較して、再構成画像におけるCT値のオーバーシュートやアンダーシュートなどの過補正の調整が容易であり、その過補正に伴うアーチファクトの発生を抑えることができる。また、X線投影データのプロファイルf0において、既に鋭いエッジを表すエッジ領域に対しては強調処理を行わないため、再構成画像におけるCT値の過補正を防ぐことができ、それに伴うアーチファクトの発生をさらに抑えることができる。
【0055】
本例では、このようなエッジ領域EPの検出および強調処理を、X線投影データのビュー方向、チャネル方向および列方向のそれぞれのプロファイルについて行うものとする。
【0056】
ところで、このように、画像空間ではなく投影データ空間でエッジ領域EPの強調を行うと、上述の利点がある一方、逆投影などの画像再構成法の特性により、再構成画像において本来高コントラストでない領域さえもが不必要に強調される。すなわち、再構成画像における非高コントラスト領域つまり軟部組織領域においても、ノイズが増大してしまう。
【0057】
これは、図4(a)を参照すると分かるように、エッジ領域EPが強調されたX線投影データP1を逆投影すると、強調されたエッジ領域EPのデータが、その逆投影されるパス(path)と重なるすべての画像領域に反映され、その画像領域のコントラストが上がり、ノイズが増大するためである。
【0058】
そこで、次ステップにおいては、このノイズの増大を抑えるため、図4(b)に示すように、X線投影データのプロファイルf0において、エッジ領域強調処理に加えて、非高コントラスト領域平滑化処理を行う。非高コントラスト領域NPが平滑化されたX線投影データP2を逆投影すると、平滑化された非高コントラスト領域NPのデータが、その逆投影されるパスと重なるすべての画像領域に反映され、その画像領域のコントラストが下がり、ノイズが減少する。多数のビュー方向から同様に逆投影すれば、エッジ領域EPのデータが1回または少ない回数しか逆投影されていない画像領域については、他の方向から逆投影される投影データによって平滑化される。ただし、再構成画像においての本来のエッジ領域は、多数の方向からエッジ領域EPが強調されたデータが逆投影されるので、平滑化された非高コントラスト領域NPのデータに打ち消されることなく、強調されたまま残る。
【0059】
このように、投影データ空間でエッジ領域EPの強調と非高コントラスト領域NPの平滑化とを組み合わせて行うことにより、再構成画像に展開した場合に、高コントラスト領域での空間分解能を向上させつつ、軟部組織領域でのノイズの増大を防ぐことができる。ちなみに、投影データ空間におけるエッジ領域EPの強調と非高コントラスト領域NPの平滑化の調整次第では、逆にノイズを低下させることも可能であることが分かっている。
【0060】
ステップS3では、非高コントラスト領域平滑化部302が、エッジ領域強調処理が行われた各ビューのX線投影データP1に対して、投影データ空間における非高コントラスト領域平滑化処理を行う。非高コントラスト領域平滑化処理は、例えば、X線投影データP0のビュー方向、チャネル方向および列方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行う。
【0061】
図6に、投影データ空間における非高コントラスト領域平滑化処理の一例を示す。
【0062】
図6の例では、まず、図6(a)に示すような、X線投影データのプロファイルf0において、図6(b)に示すように、チャネルデータ値のバラツキ程度を表すバラツキ指標値σ1、例えばプロファイル方向の単位幅当たりにおけるチャネルデータ値の標準偏差を算出する。そして、図6(c)に示すように、バラツキ指標値σ1が所望の第3の閾値Th3(>0)以下となる領域を非高コントラスト領域NPとして検出する。
【0063】
非高コントラスト領域NPが検出されたら、図6(d)に示すように、その検出された非高コントラスト領域NPを平滑化する平滑化処理を行う。この平滑化処理としては、例えば、移動平均フィルタ(平均化フィルタ)やガウシアンフィルタ(Gaussian filter)を用いた平滑化処理が考えられる。
【0064】
このように、投影データ空間でエッジ領域強調処理と非高コントラスト平滑化処理とを組み合わせて行うことにより、再構成画像に展開した場合の軟部組織領域でのノイズの増大を防ぐことができ、かつ、調整次第でノイズを低下させることも可能になる。
【0065】
ステップS4では、画像再構成部303が、エッジ領域強調処理および非高コントラスト領域平滑化処理が行われた処理済X線投影データP2に基づいて画像SG1を再構成する。再構成には、例えば、三次元フィルタ逆投影法を用いる。
【0066】
ステップS5では、再構成画像SG1を表示する。
【0067】
これより、第一実施形態の方法により得られた画像と他の方法により得られた画像との比較結果について説明する。
【0068】
図7に、MTF曲線の比較結果を示す。比較対象は、エッジ領域強調処理および非コントラスト領域平滑化処理を行わないオリジナル(original)画像OG、単純に再構成関数(recon kernel)をブースト(boost)して高周波成分を強調したカーネルブースト画像BG、および、エッジ領域強調処理および非高コントラスト領域平滑化処理を行った第一実施形態の方法による画像SG1である。これらの画像は、いずれも同一のX線投影データに基づいて生成されたものである。本比較結果における撮影対象は、空間分解能測定用のファントム(phantom)である。図7に示すグラフの横軸は、空間分解能(line-pair/cm)を表している。同グラフの縦軸は、MTF値を表しており、オリジナル画像OGのMTF値を100%とした場合の相対値である。
【0069】
第一実施形態による画像SG1のMTF曲線は、カーネルブースト画像BGと同様に、オリジナル画像OGのMTF曲線より周波数特性がよくなっており、空間分解能が向上しているのが分かる。
【0070】
図8に、上記の各画像におけるMTF値の比較結果を示す。本比較結果における撮影対象は、空間分解能測定用のファントムである。図8に示すグラフの縦軸は、MTF値の相対値がそれぞれ5%,10%,50%になるときの空間分解能(lp/cm)を表しており、オリジナル画像OGにおける上記の各空間分解能を100%とした場合の相対値である。
【0071】
この結果から、第一実施形態による画像SG1のMTF曲線は、カーネルブースト画像BGのものと同様に、オリジナル画像OGよりもMTF値を向上させることができることが分かる。
【0072】
図9に、上記の各画像におけるノイズレベル(CT値(HU)のSD値)の比較結果を示す。本比較結果における撮影対象は、空間分解能測定用のファントムである。図9に示すグラフの縦軸は、互いに異なる第1〜第3の関心領域ROI1〜ROI3についてのノイズレベル(CT値のSD値)を表しており、オリジナル画像OGにおける上記の各ノイズレベルを100%とした場合の相対値である。
【0073】
一般的に、MTF値などで表される空間分解能を向上させた場合、その画像のノイズレベルは上昇し、悪化するものである。再構成関数でブーストしたカーネルブースト画像BGの場合は、この例に漏れず、そのノイズレベルが上昇し、悪化している。これに対して、第一実施形態による画像SG1では、空間分解能を示すMTF値が向上しているにもかかわらず、そのノイズレベルは小さくなり、改善されている。
【0074】
このように、第一実施形態によれば、一般的にはトレードオフの関係になる、空間分解能の改善とノイズレベルの低減といった背反する項目を両立させることができるという非常に優れた効果を奏する。
【0075】
図10に、上記の各画像におけるエリアシングアーチファクトの比較結果を示す。本比較結果における撮影対象は、人体の頭部である。単純に再構成関数でブーストしたカーネルブースト画像BGの場合には、そのエリアシングアーチファクトが増加してしまうが、第一実施形態の場合には、そのエリアシングアーチファクトは、オリジナル画像と同等か、場合によっては低下して改善されるケースもある。
【0076】
以上、第一実施形態によれば、エッジ領域の強調を、アーチファクトの発生要因である過補正の調整が難しい再構成関数や画像空間で行うのではなく、過補正の調整が容易な投影データ空間で行い、これに伴う画像上での非高コントラスト領域の不要な強調や、本来的に発生するノイズを抑える処理として、投影データ空間で非高コントラスト領域の平滑化を行うことができ、その結果、X線CT装置により得られる画像において、アーチファクトを抑えつつ、軟部組織領域のノイズを増加させることなく、高コントラスト領域の空間分解能を向上させることができる。
【0077】
また、第一実施形態によれば、強調処理の対象となるエッジ領域の検出に際し、上限値Lt1,下限値Lt2を設けているので、エッジ領域の強調による過補正およびそれに伴って発生するアーチファクトの抑制効果を高めることができる。
【0078】
(第二実施形態)
図11に、第二実施形態における中央処理装置の機能ブロック図を示す。図11に示すように、第二実施形態において、中央処理装置3は、機能的には、エッジ領域強調部311、第1の画像再構成部312、第2の画像再構成部313、および画像合成部314を備えている。
【0079】
エッジ領域強調部311は、第一実施形態におけるエッジ領域強調部301とほぼ同様に、X線投影データに対して、そのプロファイルにおけるエッジ領域を強調するエッジ領域強調処理を行う。ただし、エッジ領域の検出に際し、上限値Lt1、下限値Lt2は、必ずしも設ける必要はない。
【0080】
第1の画像再構成部312は、エッジ領域強調処理が行われた処理済X線投影データP1に基づいて、第1の画像G1を再構成する。
【0081】
第2の画像再構成部313は、エッジ領域強調処理が行われる前のX線投影データP0に基づいて、第2の画像G0を再構成する。
【0082】
画像合成部314は、第1の画像G1または第2の画像G0の画像領域において、高コントラスト領域には第1の画像G1の対応領域の画像を充て、非高コントラスト領域には、第2の画像G0の対応領域の画像を充てる合成処理を行い、合成画像SG2を得る。
【0083】
なお、エッジ領域強調部311は、発明における強調手段の一例であり、第1の画像再構成部312は、発明における第1の再構成手段の一例であり、第2の画像再構成部313は、発明における第2の再構成手段の一例であり、画像合成部314は、発明における生成手段の一例である。
【0084】
これより、第二実施形態に係るX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0085】
図12は、第二実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー図である。また、図13は、当該処理の要部である、投影データ空間でのエッジ領域強調処理および画像空間での画像合成処理(非高コントラス領域の強調緩和)を概念的に示す図である。
【0086】
ステップ(step)S11では、被検体のスキャン(scan)を行って、複数ビューのX線投影データP0を収集する。
【0087】
ステップS12では、エッジ領域強調部311が、収集された各ビューのX線投影データP0に対して、図13(a)に示すように、X線投影データのプロファイルf0におけるエッジ領域EPに対して強調処理を行う。ここでのエッジ領域の強調処理は、第一実施形態と同様に、例えば、X線投影データのビュー方向、チャネル方向および列方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行う。ただし、第一実施形態では、エッジ領域EPの検出に際しては、上限値Lt1および下限値Lt2を設けるなどして、急峻な傾きを持つエッジを強調処理の対象から除外しているが、ここではこのような除外をしなくてもよい。
【0088】
第一実施形態と同様、このように、投影データ空間でエッジ領域の強調を行うと、再構成画像における高コントラスト領域がより強調され、空間分解能が向上する。また、エッジ領域の強調を再構成関数や画像空間で行う場合と比較して、過補正の調整が容易であり、その過補正に伴うアーチファクトの発生をより抑えることができる。
【0089】
本例では、このようなエッジ領域の検出および強調処理を、X線投影データのビュー方向、チャネル方向および列方向のそれぞれのプロファイルについて行うものとする。
【0090】
ところで、第一実施形態でも説明したが、このように、画像空間ではなく投影データ空間でエッジ領域EPに強調処理を行うと、上述の利点がある一方、逆投影などの画像再構成法の特性により、再構成画像に展開した場合の軟部組織領域、つまり高コントラストではない領域さえも不必要に強調されて、ノイズが増大してしまう。
【0091】
これは、図13(a)を参照すると分かるように、エッジ領域EPが強調されたX線投影データを逆投影すると、強調されたエッジ領域EPのデータが、その逆投影されるパスと重なるすべての画像領域に反映され、その画像領域のコントラストが上がり、ノイズが増大するためである。
【0092】
そこで、次ステップ以降においては、このノイズの増大を抑えるため、図13(b)に示すように、エッジ領域の強調処理が行われたX線投影データP1に基づいて再構成された第1の画像G1、またはエッジ領域の強調処理が行われていないX線投影データP0に基づいて再構成された第2の画像G0において、CT値のバラツキ等により、高コントラスト領域HMと非高コントラスト領域NMとを求める。そして、高コントラスト領域HMには、エッジ領域の強調が行われた第1の画像G1の対応領域の画像を充て、それ以外の非高コントラスト領域NMに対しては、エッジ領域強調処理が行われていない第2の画像G0の対応領域の画像を充てる。これにより、再構成画像に展開した場合の軟部組織領域でのノイズの増大を防ぐことができ、かつ、調整次第でノイズを低下させることも可能になる。
【0093】
ステップS13では、第1の画像再構成部312が、エッジ領域強調処理が行われた処理済X線投影データP1に基づいて第1の画像G1を再構成する。再構成には、例えば、3次元フィルタ逆投影法を用いる。
【0094】
ステップS14では、第2の画像再構成部313が、エッジ領域強調処理が行われる前の(行われていない)X線投影データP0に基づいて第2の画像G0を再構成する。再構成には、例えば、3次元フィルタ逆投影法を用いる。
【0095】
ステップS15では、画像合成部314が、第1の画像G1と第2の画像G0とを、第1の画像G1または第2の画像G0の画像領域において、高コントラスト領域であるか、非高コントラスト領域であるかに応じて合成する。高コントラスト領域HMには、第1の画像G1の対応領域の画像を充て、非高コントラスト領域NMには、第2の画像G0の対応領域の画像を充てて、画像の合成処理を行い、合成画像SG2を得る。
【0096】
図14に、第1の画像と第2の画像との合成処理の例を示す。
【0097】
図14の例では、まず、第1の画像G1または第2の画像G0において、各局所領域ごとに、CT値のバラツキ程度を示す指標値σ2、例えば単位面積当たりにおけるCT値の標準偏差を算出する。そして、このバラツキ指標値σ2が所望の第4の閾値Th4(>0)以下である領域を非高コントラスト領域NM、それ以外の領域を高コントラスト領域HMとして検出する。
【0098】
なお、第1の画像G1または第2の画像G0上の一方向におけるCT値のプロファイルにおいて、CT値のバラツキ程度が一定レベル以下の領域、例えばプロファイルの単位幅当たりにおけるCT値の標準偏差が所望の閾値Th4′以下である領域を非高コントラスト領域NM、それ以外を高コントラスト領域HMとして検出し、さらに、このような検出を、第1の画像G1または第2の画像G0上の多方向において行い、高コントラスト領域および非高コントラスト領域を2次元的に検出するようにしてもよい。
【0099】
高コントラスト領域HMおよび非高コントラスト領域NMが検出されたら、高コントラスト領域HMには、エッジ領域強調処理が行われた第1の画像G1の対応領域の画像を充て、非高コントラスト領域NMには、エッジ領域強調処理が行われていない第2の画像G0の対応領域の画像を充てることにより、第1の画像G1と第2の画像G0との合成画像SG2を生成する。これにより、エッジ領域強調処理により画像上の非高コントラスト領域NMに対して現れる不本意な強調を抑制することができる。
【0100】
このように、投影データ空間でエッジ領域強調処理をすることと、画像空間で非高コントラスト領域の画像を、エッジ領域強調処理を行っていないX線投影データに基づく画像に代えることとを組み合わせることにより、再構成画像に展開した場合の軟部組織領域でのノイズの増大を防ぐことができ、かつ、調整次第でノイズを低下させることも可能になる。
【0101】
ステップS16では、その生成された合成画像SG2を表示する。
【0102】
これより、第二実施形態の方法により得られた画像と他の方法により得られた画像との比較結果について説明する。
【0103】
図15に、MTF曲線の比較結果を示す。比較対象は、第一実施形態と同様に、オリジナル画像OG、カーネルブースト画像BG、および、第二実施形態の方法による画像SG2である。これらの画像は、いずれも同一のX線投影データに基づいて生成されたものである。本比較結果における撮影対象は、空間分解能測定用のファントムである。図15に示すグラフの横軸は、空間分解能(lp/cm)を表している。同グラフの縦軸は、MTF値を表しており、オリジナル画像OGのMTF値を100%とした場合の相対値である。
【0104】
第二実施形態による画像SG2のMTF曲線は、カーネルブースト画像BGと同様に、オリジナル画像OGのMTF曲線より周波数特性がよくなっており、空間分解能が向上しているのが分かる。
【0105】
図16に、上記の各画像におけるMTF値の比較結果を示す。本比較結果における撮影対象は、空間分解能測定用のファントムである。図16に示すグラフの縦軸は、MTF値の相対値がそれぞれ5%,10%,50%になるときの空間分解能(lp/cm)を表しており、オリジナル画像OGにおける上記の各空間分解能を100%とした場合の相対値である。
【0106】
この結果から、第二実施形態による画像SG2のMTF曲線は、カーネルブースト画像BGのものと同様に、オリジナル画像OGよりもMTF値を向上させることができることが分かる。
【0107】
図17に、上記の各画像におけるノイズレベル(CT値(HU)のSD値)の比較結果を示す。本比較結果における撮影対象は、空間分解能測定用のファントムである。図17に示すグラフの縦軸は、互いに異なる第1〜第3の関心領域ROI1〜ROI3についてのノイズレベル(CT値のSD値)を表しており、オリジナル画像OGにおける上記の各ノイズレベルを100%とした場合の相対値である。
【0108】
カーネルブースト画像BGの場合は、ノイズレベルが上昇し、悪化している。これに対して、第二実施形態による画像SG2では、空間分解能を示すMTF値が向上しているにもかかわらず、そのノイズレベルは維持されており、カーネルブースト画像BGとの比較では、より小さくなっており、改善されている。
【0109】
このように、第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、一般的にはトレードオフの関係になる、空間分解能の改善とノイズレベルの低減といった背反する項目を両立させることができる。
【0110】
図18に、上記の各画像におけるエリアシングアーチファクトの比較結果を示す。本比較結果における撮影対象は、人体の頭部である。単純に再構成関数でブーストしたカーネルブースト画像BGの場合には、そのエリアシングアーチファクトが増加してしまうが、第二実施形態による画像SG2の場合には、第一実施形態と同様に、そのエリアシングアーチファクトは、オリジナル画像OGと同等である。
【0111】
以上、第二実施形態によれば、エッジ領域の強調を、アーチファクトの発生要因である過補正の調整が難しい再構成関数や画像空間で行うのではなく、過補正の調整が容易な投影データ空間で行い、これに伴う画像上での非高コントラスト領域の不要な強調や、本来的に発生するノイズを抑える処理として、画像上での非高コントラスト領域に、エッジ領域の強調を行っていない画像を充てて、画像空間での平滑化に相当する処理を行うことができ、その結果、X線CT装置により得られる画像において、アーチファクトを抑えつつ、軟部組織領域のノイズを増加させることなく、高コントラスト領域の空間分解能を向上させることができる。
【0112】
なお、発明は、これらの実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0113】
例えば、第一実施形態において、強調処理の対象となるエッジ領域の検出に際し、閾値Th1,Th2,Th3、上限値Lt1、下限値Lt2の少なくともいずれかを、画像再構成に用いる再構成関数(kernel)に応じて調整してもよい。これにより、再構成関数で強調あるいは抑制される、画像の周波数成分を考慮して、ノイズ低減やアーチファクト抑制、空間分解能の向上といった複数のファクタの総合的なバランスを最適化することができる。
【0114】
また例えば、第二実施形態において、強調処理の対象となるエッジ領域の検出に際し、第一実施形態と同様、上限値Lt1,下限値Lt2を設けてもよい。この場合、エッジ領域の強調による過補正およびそれに伴って発生するアーチファクトの更なる抑制が期待できる。また、閾値Th1,Th2,Th4(Th4′),上限値Lt1,下限値Lt2の少なくともいずれかを、画像再構成に用いる再構成関数に応じて調整してもよい。これにより、再構成関数で強調あるいは抑制される、画像の周波数成分を考慮して、ノイズ低減やアーチファクト抑制、空間分解能の向上といった複数のファクタ(factor)の総合的なバランスを最適化することができる。
【0115】
また例えば、第一および第二実施形態は、X線CT装置であるが、発明は、X線CT装置とPETまたはSPECTとを組み合わせたPET−CT装置やSPECT−CT装置などの他、撮影手段を有していない画像生成装置などにも適用可能である。また、コンピュータを、上述の画像生成機能を備えた画像生成装置として機能させるためのプログラム、当該プログラムが記憶された記憶媒体もまた、発明の実施形態の一例である。
【符号の説明】
【0116】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 アパーチャ
24 X線検出器
25 DAS
26 回転部コントローラ
29 制御コントローラ
30 スリップリング
40 被検体
81 X線
100 X線CT装置
301 エッジ領域強調部
302 非高コントラスト領域平滑化部
303 画像再構成部
311 エッジ領域強調部
312 第1の画像再構成部
313 第2の画像再構成部
314 画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT撮影により得られた撮影対象の投影データから画像を生成する過程において、
投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する処理を行うステップと、
前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行うステップとを実行する画像生成方法。
【請求項2】
X線CT撮影により得られた撮影対象の投影データから画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する処理を行う手段と、
前記過程において、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行う手段とを備えた画像生成装置。
【請求項3】
コンピュータを、
X線CT撮影により得られた撮影対象の投影データから画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する処理を行う手段と、
前記過程において、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行う手段として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
X線CT撮影を行って撮影対象の投影データを収集し、前記投影データから画像を生成するX線CT装置であって、
前記画像を生成する過程において、投影データ空間にて、データ値のプロファイルにおけるエッジ領域を強調する手段と、
前記過程において、前記投影データ空間または画像空間にて、データ値のコントラストが一定レベル以下の領域に対して、強調を緩和する処理を行う手段とを備えているX線CT装置。
【請求項5】
前記投影データのプロファイルにおけるエッジ領域を強調する強調処理を行う強調手段と、
前記プロファイルにおけるコントラストが一定レベル以下の領域を平滑化する平滑化処理を行う平滑化手段と、
前記強調処理および平滑化処理が行われた前記投影データに基づいて画像を再構成する再構成手段とを備えた請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記強調処理は、エッジの鋭さが所定範囲内であるエッジ領域のみを強調する処理である請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記強調処理は、前記投影データのプロファイルの高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が正の第1の閾値以上であり所望の上限値以下である領域と、前記データ値が負の第2の閾値以下であり所望の下限値以上である領域とを強調する処理である請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記強調処理は、前記投影データのチャネル方向、列方向およびビュー方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行われる請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記平滑化処理は、前記投影データのプロファイルの高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が正の第3の閾値以下であり負の第4の閾値以上である領域を平滑化する処理である請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記平滑化処理は、前記投影データのチャネル方向、列方向およびビュー方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行われる請求項7から請求項11のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記投影データのプロファイルにおけるエッジ領域を強調する強調処理を行う強調手段と、
前記強調処理が行われた前記投影データに基づいて第1の画像を再構成する第1の再構成手段と、
前記強調処理が行われていない前記投影データに基づいて第2の画像を再構成する第2の再構成手段と、
前記第1の画像または第2の画像において、コントラストが一定レベルを超える第1の領域に前記第1の画像の対応領域の画像を充てており、コントラストが該一定レベル以下である第2の領域に前記第2の画像の対応領域の画像を充てた画像を生成する生成手段とを備えた請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記強調処理は、前記投影データの高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が正の第1の閾値以上である領域と、前記データ値が負の第2の閾値以下である領域とを強調する処理である請求項11に記載のX線CT装置。
【請求項13】
前記強調処理は、前記投影データのチャネル方向、列方向およびビュー方向の少なくとも一つのプロファイルにおいて行われる請求項11または請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項14】
前記第1の領域は、前記第1の画像または第2の画像における、画素値のバラツキの程度が一定レベルを超える領域であり、
前記第2の領域は、該バラツキの程度が該一定レベル以下である領域である請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項15】
前記第1の領域は、前記第1の画像または第2の画像の所望方向の高周波成分を表すプロファイルにおけるデータ値が一定レベルを超える領域であり、
前記第2の領域は、該データ値が該一定レベル以下である領域である請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項16】
前記第1および第2の閾値は、前記第1の再構成手段が画像の再構成に用いる再構成関数の種類に応じて変化する請求項7または請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項17】
前記強調処理は、先鋭化処理である請求項5から請求項16のいずれか一項に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図9】
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【図10】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−27520(P2013−27520A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165178(P2011−165178)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】