説明

画像表示方法及びカード

【課題】低コストで、簡易な装置構成により、可視、不可視の表示が可能で、真贋判定に適した画像表示方法及びそれを用いたカードを提供する。
【解決手段】対向する電極間に電界を印加し、電極間の物質の可逆的変化により画像表示する表示素子の画像表示方法において、該表示素子は一対の電極からなり、該表示素子に対し不可逆に潜像を形成する工程と、電界印加の有無により該潜像を可視または不可視にする工程とを有することを特徴とする画像表示方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しい画像表示方法及びそれを用いたカードに関し、特に真贋判定に適したカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードの普及により、各個人が複数枚のカードを所有するようになっている。ICカードは銀行カードやクレジットカードの他に、現金をチャージして物を購入するという、現金の代わりの電子マネーとしての機能や、店舗で購入した金額に対して一定の割合のポイントを付与し、その店でお金と同等の役割をするポイントカードとしての機能を持つようになってきた。
【0003】
電子マネーやポイントカードとしての機能を持つようになると、カードの中にどれくらいの価値のお金又はポイントがあるか記憶していることは難しく、表示機能が必要となり、従来からの表示手段としては、可逆性感熱記録層を用いた表示や、磁気粉末層で表示することが行われてきている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ICチップ内の情報を表示させるためには、別途磁気書き込み装置や、感熱記録装置が必要になったり、常に内部情報が表示されるため、セキュリティの面から好ましくないという欠点があった。
【0004】
このような電子情報の閲覧手段として電気を用いて表示させる液晶ディスプレイやLCD、有機LED、電子ペーパーやフレキシブルディスプレイに用いられる可変表示装置等をカードに使用することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、可変表示してしまうが故、セキュリティや真贋判定等、偽造防止をするための用途としては考えられていなかった。また、高画質、高解像度、フルカラーの各画素ごとに表示制御すると、部品が高コストになったり、制御するためにICチップが必要になり、オペレーションシステム等必要となり、高コストになったり、電力消費量が増加したり、厚みが厚くなったり、耐久性が低下したりしてしまい、カード、タグ、チケット等に搭載することが難しかった。
【特許文献1】特開2005−107658号公報
【特許文献2】特開平10−162111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低コストで、簡易な装置構成により、可視、不可視の表示が可能で、真贋判定に適した画像表示方法及びそれを用いたカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対のベタ電極により構成されている表示素子を用い、該表示素子にオンデマンドにて不可逆に固定潜像を作成し、表示素子の電源のオン、オフにより通常は不可視であるが、必要時に可視化することができるようにしたことを特徴とする画像表示方法である。
【0008】
本発明の画像表示方法に用いられる表示素子は、一対の電極のオン、オフのみの制御とすることにより、多数の画素を制御する必要がなく、それにより制御用ICやオペレーションシステム等の必要がなく、この表示素子をカード、タグ、チケット等に安価に設けることが可能で、低消費電力で簡易な構成により表示素子を作製することができる。
【0009】
本発明の簡易な構成により、通常は、固定の潜像情報は表示されず、電源を供給したときにのみ潜像情報が表示され、再び電源停止で不可視となる、または、徐々に画像が消失して不可視となることで、固定情報を常に表示することなく、必要時のみ表示可能とすることにより、高セキュリティ化することができるようになった。
【0010】
さらに、予め識別可能な個別情報を潜像としてオンデマンドで形成することで、一つ一つを個別に識別可能にすることにより真贋判定や偽変造防止を行うことができ、更に高セキュリティ化することができるものである。
【0011】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0012】
1.対向する電極間に電界を印加し、電極間の物質の可逆的変化により画像表示する表示素子の画像表示方法において、該表示素子は一対の電極からなり、該表示素子に対し不可逆に潜像を形成する工程と、電界印加の有無により該潜像を可視または不可視にする工程とを有することを特徴とする画像表示方法。
【0013】
2.前記表示素子へ電磁誘導または電磁結合による非接触で電界印加することを特徴とする前記1に記載の画像表示方法。
【0014】
3.前記潜像の形成が、活性光線、熱、圧力から選ばれる少なくとも1つの手段により形成されることを特徴とする前記1または2に記載の画像形成方法。
【0015】
4.前記1〜3の何れか1項に記載の画像表示方法を用いたことを特徴とするカード。
【0016】
5.前記潜像の情報が、生体情報、住所、氏名、鍵情報の少なくとも1つであることを特徴とする前記4に記載のカード。
【0017】
6.前記カードの表面に可視情報が印字されていることを特徴とする前記4または5に記載のカード。
【0018】
7.前記カードはICチップを搭載し、該ICチップに個別情報を書き込むことを特徴とする前記4〜6の何れか1項に記載のカード。
【0019】
8.前記カードは、予め表示素子が搭載されたカードであり、潜像を形成する工程、カード表面に可視情報を形成する工程、ICチップに電子情報を書き込む工程とにより該情報を設けられたことを特徴とする前記4〜7の何れか1項に記載のカード。
【0020】
9.前記カードが非接触式ICカードであり、非接触式ICカードへの通信用電磁界により得られる起電力により、非接触で電源供給され、IC内情報を読み取り、カード表面の可視情報、可視化された潜像情報のいずれかを照合することにより真贋判定することを特徴とする前記7または8に記載のカード。
【発明の効果】
【0021】
表示素子の表示面を一対の対向電極で構成し、該電極間に、電界印加により、光透過性が可逆変化する物質を存在させた表示素子の、表示面に予め潜像を形成し、電界印加の有無により該潜像を可視、不可視にすることにより、簡易な構成で、情報の表示、非表示を行うことができ、セキュリティの高いカードを安価に提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
【0023】
本発明の画像表示方法を図をもって説明する。
【0024】
図1は、本発明の画像表示方法に用いられる表示素子の一例を示す概略構成図である。
【0025】
表示素子1は、対向する一対の電極2及び電極3を有しており、表示素子面が一対のベタ電極から構成されている。
【0026】
電極2は観察側の電極を示し、透明基板4に透明電極5が形成されたものが用いられる。
【0027】
もう一方の電極3は、前記透明電極に対向する電極であり、基板6に金属電極7が形成されたものを用いる。なお、電極3は不透明の金属板電極であってもよく、また前述の電極2と同様の透明電極であってもよい。
【0028】
電極2,3の間には、該電極2,3と封止剤9とによって濃度変化材層8が保持されている。
【0029】
ここで、本発明に用いられる一対のベタ電極とは、表示素子面が一対の電極のみで形成され、対向する一対の電極に電圧が印加されると、いずれかの電極が正電極、または、負電極となり、両電極に挟まれた濃度変化材層8に濃/淡の一様な画像のみが形成される電極のことを指す。
【0030】
本発明では、該ベタ電極を外から視認した場合に、可視化時には該ベタ電極内に濃(或いは淡)の一様な画像、不可視時には淡(或いは濃)の一様な画像のみが形成され、後述する潜像を介することにより可視画像を表示すことができる。したがって、上記の濃/淡表示が達成可能であれば、特に方式に限定されるものではなく、公知の方式より選択できる。
【0031】
対向する電極間に電圧を印加して一様な濃/淡画像を形成する方法としては、例えば、光学異方性を利用した、コレステリック液晶、双安定性ネマティック液晶、カイラルネマティック液晶強誘電性液晶、帯電粒子移動を利用した電気泳動、粒子移動、マイクロカプセル、酸化還元析出を利用したエレクトロクロミック、エレクトロデポジション、等が用いることができる。非接触で電力、電圧発生を考慮すると、動作電力が低い方式が好ましく、特に好ましくは、濃度変化材層8に電解質を用いたエレクトロデポジションが好ましい。
【0032】
この表示素子には、不図示のオンデマンドで潜像を形成する潜像形成層を有する。該潜像形成層は電極2の基板4の外表面、或いは透明電極5上、または、濃度変化材層8に形成される。
【0033】
潜像を形成する方法としては、観察側の電極2の基板4の外表面、即ち図1中、基板4の表面に形成する方法としては、例えば、インクジェット法等により印字する方法や、熱、圧力、光等のエネルギーに感応する層を形成し、該層にエネルギーを与えることにより層を変化させて潜像を形成する方法等種々の方法を用いる事ができる。
【0034】
潜像を形成する具体的方法としては、例えば、基板表面上に感応する層として感光性樹脂層を形成し、エネルギー線、例えば、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、レーザー光線、等を用いて該感光性樹脂層を露光し、樹脂層を硬化させる、アブレーションで破壊する、溶解性を変化させて溶媒で除去する等の方法で潜像を形成する事ができる。
【0035】
また、潜像の形成方法としては、基板表面に形成する方法を前述したが、基板の内面、即ち図1中、透明電極5の表面或いは濃度変化材層8中に形成する方法であってもよい。基板の内面に潜像を形成する方法としては、電極2の透明電極5の一部に電位が部分的に発生しないように電極を破壊したり、または電位が発生しても濃度変化層8が変化しないように電極2の透明電極5の一部をマスクしたり、濃度変化材層8の一部を破壊したり、電界によって移動できないように硬化させ固定化する等方法等をとることができる。
【0036】
透明電極5の一部にマスクの形成方法としては、電極表面に前述の感光性樹脂層を形成し、表示素子を形成後、前述のエネルギー線を用いて感光性樹脂層を破壊する等の方法である。
【0037】
本発明の画像表示方法においては、このように構成された表示素子にオンデマンドで予め潜像形成層に潜像を形成する工程と、該潜像を電界印加より表示、非表示とする工程とを有することを特徴とする。
【0038】
本発明に用いられる電界印加方法としては、非接触で対向電極間に電荷を印加できるものが好ましく、特に好ましくは電磁誘導若しくは電磁結合等の方式である。
【0039】
潜像は、形成された部分と形成されていない部分とで光の透過率が異なるもので有ればよいが、通常の非表示の時にはこの潜像は見えず、表示時に見えるようにするためには、潜像形成層は非表示時のバックグランドとほぼ同等の反射率を有するものであることが必要である。
【0040】
本発明でほぼ同等の反射率とは、表示素子の潜像部分の反射率とバックグランドの反射率との差が±5%以内であることであり、より好ましくは1%以内である。
【0041】
本発明の画像表示方法においては、表示素子部分はカード、タグやシートに予め組み込まれた形態として形成されており、その後潜像部分を形成する工程と、電界印加の有無により、該潜像を可視又は不可視にする工程を有することを特徴とするものである。
【0042】
即ち、本発明の潜像情報は、カード毎に特有の個別情報をオンデマンドで記録するものであって、個人情報を記録することに用いるのが好ましい。
【0043】
個人情報としては、氏名、住所、顔画像情報や、生体情報、例えば血液型、DNA、歯形、眼底画像等、或いは鍵情報等の個人の所有する特有の情報であり、これらの情報を必要により表示、非表示とすることにより、カードと個人を識別したり、真贋を判定したりすることに有用となる。
【0044】
本発明の画像表示方法をカードに用いる時、該カードの表面には可視情報が印字されていることが好ましい。
【0045】
可視情報としては、該カードが、例えば定期券として用いる場合は、鉄道会社名、駅名、有効期間、所有者の名前等であり、身分証明書や従業員証として用いる場合は、会社や団体名、住所、電話番号等、発行日、本人の氏名等、である。
【0046】
また、このようなカードにはICが組み込まれていることが好ましい。
【0047】
ICには、更に多くの電子情報を記録することが可能であり、銀行カードやクレジットカード、免許証といったカードやそれらを複合したカードを形成することができる。
【0048】
図2は、本発明の画像表示方法に含まれる各工程の模式図とその断面図である。
【0049】
図2(a)は、図1で示した表示素子の電極間に電界を印加可能とする構成を示す。図2(a′)はその概略断面図である。
【0050】
図中、電極2は透明電極であり、電極3の金属電極7は不透明の電極であり、電極2,3の間には濃度変化材層8が形成されている。
【0051】
図2(b)は、電極2の透明電極5の表面に形成された潜像形成層(不図示)に赤外レーザーを用いて潜像を形成する工程を示す。この場合は、電解質層には白色顔料が含まれており、潜像形成層も白色とすることにより、潜像は視認されない。
【0052】
図2(b′)は、その構成断面であり、透明電極5の表面に潜像としてマスク10を形成した例である。
【0053】
図2(c)は、電界を印加することにより、電解質層の光透過率が変化し、潜像が可視像として表示される工程を示す。
【0054】
図2(c′)はその断面図であり、電界を印加することにより、濃度変化材層8に光透過率が変化する物質11が形成され、潜像が表示される。
【0055】
図3は、本発明の画像表示方法を非接触式ICカードに用いた例を示す。
【0056】
図3(a)は、例えば、従業員証作製のブランクカード20を示す。このカードの表面には、規定のフォーマットが印字されており、表示素子21には何も表示されていない。又、このカードには非接触式IC22が内蔵されている。
【0057】
図3(b)では、予め搭載されている表示素子21に潜像情報として顔画像情報が記録される。
【0058】
図3(c)では、プリント部において、カード表面に顔画像がカラー印字され、その他の個人情報や発行日、有効期限、所属等の情報が印字される。
【0059】
図3(d)では、リーダーライター等によりICにカード表面に印字した情報のほか、個人情報や職歴等の情報が書き込まれる。
【0060】
図3(e)では、カード表面には印字面の保護や改竄防止のための保護層やラミネートが形成される。
【0061】
このようにして作製されたカード(従業員証)は、本人を確認して手渡される。
【0062】
図3(f)では、何らかの事情により従業員証の提示が求められた時、潜像表示装置やリーダーライターにかざす事により、ICに記録された内容をモニターに表示し、表示素子には潜像情報を表示し、カード表面に記載された内容とを比較することにより、カード使用者が保有者本人であるかを確認したり、カードが改竄されたものでないかどうかを容易に判断することができる。
【0063】
表示素子に電界を非接触で印加するための電磁界を発生する装置としては、非接触ICカード等の情報を読書きするリーダーライター機能を持たなくても良いが、利便性からリーダーライターを兼用することが好ましく、本例は兼用して用いた例である。
【0064】
図4は、本発明の画像表示方法を診察券10として用いた例である。
【0065】
カード表面には医療機関名、ロゴ、氏名、生年月日、登録番号等が印字されている。また、電子マネーを搭載しても良い。
【0066】
表示素子11には、潜像情報として顔画像情報が記録されている。
【0067】
リーダーライター等の表示装置にかざす事により、潜像情報が表示され、カード使用者がカード保有者本人で有る事が確認され、診療や医療費の支払いがされることになる。
【0068】
以下に、本発明の趣旨に反しなければ特に制限なく用いられるが、画像表示方法に用いられる表示素子を構成する材料について説明する。
【0069】
〈電源供給用アンテナ〉
表示素子に電界印加する方式としては、電磁誘導または電磁結合による非接触の起電力で印加する方法が好ましく、非接触方式としては、例えば規格化されている125−134kHz帯、13.56MHz帯、860−960MHz帯、2.45GHz帯等の波長に対し好適な共振点を持つ特徴のアンテナを用いることができるが、非接触ICカードで用いられる13.56MHz近傍がICカードのリーダーライターと兼用することができるため好ましい。
【0070】
アンテナは、予め表示素子に最適な起電力を得られるように共振可能な共振周波数を公知の方法にて調整をする。調整する方法としては、アンテナの形状、材質、コンデンサー容量等を調整する方法が知られている。アンテナ材質は、導電性が高い金属が好ましく用いられ、例えばアルミニウム、銅、銀、また、カーボン、等が用いられる。また、非接触ICカードに該表示素子を実装する場合、非接触ICカード用アンテナに並列に接続し共用してもよいし、ICカード用アンテナとは別に専用アンテナを用いても良い。
【0071】
〈電力制御〉
表示素子に電力供給制御は公知の方法で行われ特に制限がない。非接触で起電力した電圧で、表示素子を動作する場合、表示素子の方式によっては、大きな電圧を必要とする場合があり、その場合、適宜昇圧回路等の回路を用いても良い。これらの電源制御は、表示素子だけの制御用の回路を実装したICチップを用いてもよく、個人情報、電子マネーを用いるICチップに制御用回路を実装しても良い。
【0072】
〈表示素子〉
〈電極〉
本発明に用いられる表示素子の対向電極を形成する電極材料としては、金属電極または透明電極を用いることができる。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0073】
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極を形成するには、例えば、後述する基板上にITO膜をスパッタリング法等で蒸着する。
【0074】
〈基板〉
本発明に用いられる表示素子の対向電極を支える基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。
【0075】
光透過性の無い基板としては、電極を兼ねたアルミやステンレス等の金属製基板や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルム等を基板として用いることができる。
【0076】
〈電界印加より可逆的に光透過率が変化する物質〉
表示素子の電界印加より可逆的に光透過率が変化する物質としては、例えば、液晶物質や、電解質中にエレクトロクロミック物質やエレクトロデポジション物質が溶解されたもの帯電粒子の電気泳動、回転、粒子移動等、種々の材料及び方法を用いる事ができる。
【0077】
〈濃度変化材層〉
本発明に用いられる表示素子の対向電極間には前記電界印加より可逆的に光反射率が変化することができる物質を保持する層が形成されている。
【0078】
光反射率は、濃度変化材層8の着色材が粒子移動、分子移動、変色して変化しても良く、濃度変化材層の光透過率が変化し、電極3の濃度との差異を変化として用いても良く、また、電極2、3へ濃度変化材層からの物質を析出、溶解することで行っても良い。また、可視、または不可視時の背景色の調整のため適宜濃度変化材層内に有色層を設けてもよい。
【0079】
〈電解質層形成材料〉
本発明に用いられる表示素子の対向電極間には、例えば前記電界印加より可逆的に光透過率が変化する物質を保持する電解質層が形成されているものも好ましく使用できる。
【0080】
電解質層は、電解質と必要によりバインダーと溶媒から構成される。
【0081】
電解質としては、以下の様なものが挙げられる。例えば、カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。更に、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0082】
電解質層を形成する溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及び水から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。
【0083】
バインダーとしては、電解質、非電解質の高分子材料が挙げられ、例えば、ゼラチン、カゼイン等の天然高分子材料や、PVAやアセタール樹脂等合成高分子材料等が用いられる。
【0084】
〈有色層〉
有色層は、可視、または不可視時の背景色の調整のため適宜設けることができる。有色層は、白色層、または黒色層とすることがコントラストの観点で好ましい。白色層に用いられる物質としては、光反射性、または、散乱性があるものが好ましい。また、電解質層と併用する場合、電解質が電極間を移動できるよう、空隙を持っていることが好ましい。本発明に用いられる表示素子おいては、例えば、対向電極間の電解質層に、電解質層の溶媒に実質的に溶解しない白色顔料を分散物として含有することができる。
【0085】
白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。
【0086】
〈潜像形成〉
例えば、潜像を形成する層を、赤外レーザーで破壊する場合は、以下のような白色赤外線吸収層を用いることができる。
【0087】
波長800〜1000nmに最大の吸収域を有する赤外吸収剤として、酸化鉄、酸化セリウム、酸化スズや酸化アンチモン等の金属酸化物、またはインジウム−スズ酸化物、六塩化タングステン、塩化スズ、硫化第二銅、クロム−コバルト錯塩、チオール−ニッケル錯体またはアミニウム化合物、ジイモニウム化合物、フタロシアニン化合物等の有機系赤外線吸収剤等を用いてもよい。
【0088】
また、バインダーとして、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン系樹脂等から選択することができる。
【0089】
白色粒子として、例えば酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライトなどが用いられる。
【0090】
バインダー100質量部に対して赤外線吸収剤2〜10質量部、白色粒子3〜40質量部を分散する。必要に応じて有機溶剤を加えて粘度を調整し、公知の塗布や印刷方法を用いて潜像形成層を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の画像表示方法に用いる表示素子の概略構成図を示す。
【図2】本発明の画像表示方法に含まれる各工程の模式図である。
【図3】本発明の画像表示方法を非接触式ICカードに用いた例を示す。
【図4】本発明の画像表示方法を診察券として用いた例を示す。
【符号の説明】
【0092】
1 表示素子
2,3 電極
4,6 基板
5 透明電極
7 金属電極
8 濃度変化材層
9 封止剤
10 マスク
15 診察券
20 従業員証作製のブランクカード
21 表示素子
22 IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する電極間に電界を印加し、電極間の物質の可逆的変化により画像表示する表示素子の画像表示方法において、該表示素子は一対の電極からなり、該表示素子に対し不可逆に潜像を形成する工程と、電界印加の有無により該潜像を可視または不可視にする工程とを有することを特徴とする画像表示方法。
【請求項2】
前記表示素子へ電磁誘導または電磁結合による非接触で電界印加することを特徴とする請求項1に記載の画像表示方法。
【請求項3】
前記潜像の形成が、活性光線、熱、圧力から選ばれる少なくとも1つの手段により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の画像表示方法を用いたことを特徴とするカード。
【請求項5】
前記潜像の情報が、生体情報、住所、氏名、鍵情報の少なくとも1つであることを特徴とする請求項4に記載のカード。
【請求項6】
前記カードの表面に可視情報が印字されていることを特徴とする請求項4または5に記載のカード。
【請求項7】
前記カードはICチップを搭載し、該ICチップに電子情報を書き込むことを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のカード。
【請求項8】
前記カードは、予め表示素子が搭載されたカードであり、潜像を形成する工程、カード表面に可視情報を形成する工程、ICチップに電子情報を書き込む工程とにより該情報を設けられたことを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載のカード。
【請求項9】
前記カードが非接触式ICカードであり、非接触式ICカードへの通信用電磁界により得られる起電力により、非接触で電源供給され、IC内情報を読み取り、カード表面の可視情報、可視化された潜像情報のいずれかと照合することにより真贋判定することを特徴とする請求項7または8に記載のカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−125994(P2009−125994A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301329(P2007−301329)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】