説明

画像表示用パネルの製造方法

【課題】隔壁間の残膜を簡単に除去することができ、表示特性の劣化を防ぐ事ができる画像表示用パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明である2枚の対向する基板間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与え、画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルの製造方法において、基板14上に隔壁15を形成し、基板14上であって隔壁15の間に残った残膜13aを、隔壁形成された基板14に対しドライエッチングを施すことで除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明である2枚の対向する基板間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与え、画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な画像表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用画像表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、少なくとも一方が透明である2枚の対向する基板間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与え、画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルが知られている。
【非特許文献1】趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”論文集、p.249-252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の画像表示用パネルを製造するにあたり、現状では、フォトレジスト法により基板上に隔壁を形成していた。しかし、この方法では、ラミネート(製膜)、露光、現像などの工程を経るため、工数がかかり、また、現像廃液が多量に出るという問題があった。それに比較して、金型転写法は、金型を熱硬化・光硬化樹脂膜に押し付け、隔壁を形成するという簡単な工程で済む。そのため、隔壁を金型転写法で形成することが行われるようになってきた。
【0008】
しかしながら、金型転写法では、基板上または基板に設けた電極上に隔壁材料を配置し、金型を隔壁材料に押し付けて、金型の形状を転写して隔壁を形成しているが、転写後に、基板上または基板に設けた電極上の隔壁と隔壁との間に残膜が残る問題があった。残膜が残った状態で画像表示用パネルを製造すると、画像表示を繰り返すうちに画像表示媒体の移動に伴って、残膜が帯電し、表示に悪影響を及ぼす問題が生じていた。また、そのような現象を起こさないよう、隔壁材料に工夫が必要で、それにより、他の信頼性が落ちたり、隔壁材料が限定されてしまうといった障害も生じていた。
【0009】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、隔壁間の残膜を簡単に除去することができ、表示特性の劣化を防ぐ事ができる画像表示用パネルの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示用パネルの製造方法は、少なくとも一方が透明である2枚の対向する基板間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与え、画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルの製造方法において、基板上に隔壁を形成し、基板上であって隔壁の間に残った残膜を、隔壁形成された基板に対しドライエッチングを施すことで除去することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の画像表示用パネルの製造方法の好適例としては、基板上に隔壁を形成する方法が金型転写法であること、ドライエッチングの方法がプラズマエッチングまたはRIE(リアクティブイオンエッチング)であること、RIEが酸素RIEであること、及び、画像表示媒体が粒子群または粉流体であること、がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像表示用パネルの製造方法によれば、隔壁形成された基板(または電極付き基板)に対しドライエッチングを施すことで、基板上であって隔壁の間に残った隔壁材料の残膜を、簡単に除去することができる。特に、ドライエッチングの方法として酸素RIEを用いた場合に効果的である。すなわち、酸素RIEは有機物のみをエッチングして除去するため、ガラス等の無機物の基板や、基板(この場合は有機物を含む樹脂基板も含む)上に設けたITO電極あるいはSiO膜とITO電極を、エッチングして除去することがなく、有機物からなる隔壁材料の残膜のみを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明の対象となる画像表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明で用いる画像表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した帯電性を有する画像表示媒体(粒子群または粉流体)に電界が付与される。付与された電界方向に帯電した画像表示媒体が電界の力やクーロン力などによって引き寄せられ、画像表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって往復運動することにより、画像表示がなされる。従って、画像表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、画像表示用パネルを設計する必要がある。ここで、画像表示媒体とする粒子または粉流体にかかる力は、粒子同士または粉流体同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0014】
本発明の画像表示用パネルの例を、図1〜図3に基づき説明する。
図1に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図2に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図3に示す例では、1種の色の粒子3(ここでは白色粒子3W)を、基板1上に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加させることにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させ、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。なお、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
以上の説明は、白色粒子3Wを白色粉流体に、黒色粒子3Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
【0015】
本発明の画像表示用パネルの製造方法の特徴は、上述した構成の画像表示用パネルを製造するにあたり、隔壁の形成を、基板上に隔壁を形成し、基板上であって隔壁の間に残った残膜を、隔壁形成された基板に対しドライエッチングを施すことで除去して行う点にある。以下、本発明の特徴となる隔壁の形成方法について説明する。
【0016】
図4(a)〜(d)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法における隔壁形成工程を工程順に示す図である。図4(a)〜(d)に従って本発明の画像表示用パネルの製造方法を説明する。まず、図4(a)に示すように、内側に隔壁形状のキャビティ11を有する金型12と、表面に隔壁材料13を配置した基板14とを準備する。金型12の材料としては、Ni、シリカ、シリコンなどを使用することができる。隔壁材料13としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などを使用することができる。基板14としては、ガラスなどの無機物からなる基板単独の他、ガラスなどの無機物または樹脂などの有機物からなる基板上に、必要に応じてSiOからなる絶縁層を介してITO電極を設けた電極付き基板を使用することができる。
【0017】
次に、図4(b)に示すように、隔壁材料13として熱硬化性樹脂を使用した場合は加熱した状態で、また、隔壁材料13として光硬化性樹脂を使用した場合は光を照射した状態で、金型12を加圧して隔壁材料13に押し込み、キャビティ11内を隔壁材料13で充填する。その後、図4(c)に示すように、金型12を隔壁材料13から離型することで、基板14上に隔壁15を形成することができる。この際、基板14上であって隔壁15と隔壁15との間に隔壁材料13の残膜13aが残る。最後に、図4(d)に示すように、残膜13aが残った隔壁15を有する基板14に対し、隔壁15を設けた側からドライエッチング処理を行うことで、隔壁15間の残膜13aを除去する。
【0018】
本例において、ドライエッチングの方法は特に限定しないが、プラズマエッチングやRIE(リアクティブイオンエッチング)を用いることができ、RIEとしては酸素RIEを用いることができる。一例として、酸素RIEでは、酸素雰囲気中で電極間に隔壁15を形成した基板14をセットし、電極に電圧を印加することでプラズマを発生させ、発生したプラズマを基板14に対して垂直に当てることで、エッチングを行うことができる。この酸素RIEは有機物のみエッチングするため、本発明の上述した構成の基板14はエッチングされない。また、隔壁15も有機物を含む隔壁材料13から構成されているため酸素RIEによりエッチングされるが、隔壁15の形状が基板14に対してほぼ垂直でありプラズマの流れの影響を受けにくい配置となっていること、および、予めエッチング代を考慮して隔壁15の形状を決めることで、所望の形状の隔壁15を得ることができる。
【0019】
なお、上述した例では、基板14上に隔壁15を形成するために金型転写法を利用したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、他の隔壁形成法によってできた残膜除去や、フォトリソ法で作製した基板のレジスト除去にも応用することができる。
【0020】
以下、本発明の対象となる画像表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0021】
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から画像表示媒体の色が確認できる透明な基板1であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板2は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型画像表示用パネルとする場合に不都合がある。前述したように、本発明のうち酸素RIEエッチングを用いる場合、高分子材料からなる基板に対してはその露出部分はエッチングされることを留意しておく必要がある。
【0022】
必要に応じて設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。なお、高分子材料は酸素RIEでエッチングされるので、電極材料として用いる場合には留意する必要がある。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。視認側基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した視認側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0023】
隔壁4については、その形状は表示にかかわる画像表示媒体の種類により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0024】
これらのリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図5に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。ここで、本発明を適用する金型転写法以外の隔壁形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法においても、形成された隔壁間の基板表面に残った隔壁材料の残膜除去に対して本発明は効果的に適用できる。
【0025】
次に、本発明の画像表示媒体としての粉流体について説明する。なお、本発明の画像表示媒体としての粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標)」の権利を得ている。
【0026】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0027】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0028】
本発明の対象となる画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、画像表示媒体として例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に例えば用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0029】
次に、本発明の画像表示媒体としての粒子について説明する。粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0030】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0031】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0032】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0033】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0034】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0035】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0036】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0037】
また、本発明の画像表示媒体として用いる粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0038】
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0039】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
【0040】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0041】
画像表示媒体の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示用パネルにおける画像表示媒体の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に画像表示媒体の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0042】
更に、本発明においては基板間の画像表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1〜図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体3)の占有部分、隔壁4の占有部分(存在する場合)、装置シール部分を除いた、いわゆる画像表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、画像表示媒体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0043】
本発明の画像表示装置が備える画像表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、画像表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における画像表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には画像表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
本発明に用いる画像表示媒体として、気体中で用いる粒子群や粉粒体について説明してきたが、本発明は液晶や液中分散した電気泳動粒子群を画像表示媒体とする画像表示用パネルにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルは、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の対象となる画像表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】本発明の対象となる画像表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】本発明の対象となる画像表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図4】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法における隔壁形成工程を工程順に示す図である。
【図5】本発明の対象となる画像表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1、2 基板
3 画像表示媒体(粒子または粉流体)
3W 白色粒子(白色粉流体)
3B 黒色粒子(黒色粉流体)
4 隔壁
5、6 電極
11 キャビティ
12 金型
13 隔壁材料
13a 残膜
14 基板
15 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明である2枚の対向する基板間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与え、画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルの製造方法において、基板上に隔壁を形成し、基板上であって隔壁の間に残った残膜を、隔壁形成された基板に対しドライエッチングを施すことで除去することを特徴とする画像表示用パネルの製造方法。
【請求項2】
基板上に隔壁を形成する方法が金型転写法である請求項1に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項3】
ドライエッチングの方法がプラズマエッチングまたはRIE(リアクティブイオンエッチング)である請求項1または2に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項4】
RIEが酸素RIEである請求項3に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項5】
画像表示媒体が粒子群または粉流体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示用パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−39106(P2006−39106A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217238(P2004−217238)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】