説明

画像表示装置、及び撮像装置

【課題】本発明は、画像効果としてソフトフォーカスモードを選択した場合においても、撮影時のピント合わせの確認をユーザが容易に行うことができる画像表示装置、撮像装置を提供する。
【解決手段】輝度信号から輪郭成分を抽出する時のパラメータとして、高域強調周波数、高域強調ゲイン、ノイズ除去のためのベースクリップの閾値を有し、それぞれ複数の設定値を持つ。これら複数の設定値は通常モードの画像に適したものと、ソフトフォーカス処理により高域が減衰した画像に適したものをとする。通常モードのパラメータで抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算した通常モードの焦点状態確認用の表示と、ソフトフォーカスモードのパラメータで抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算したソフトフォーカスモード時の焦点状態確認用の表示とを切り換え可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラ等の撮像装置において画像確認等に用いられる画像表示装置、これを備える撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、動画の撮影および記録を行う装置としてカメラと記録再生装置とを一体化したカメラ一体型記録再生装置(以下、「カムコーダ」とも記す)が普及している。このカムコーダは、撮像系で捉えた被写体画像をユーザが小型モニタで確認しながら記録媒体に記録し、また小型モニタに再生することが可能である。
【0003】
記録媒体としては、従来、磁気テープが一般的であったが、現在は光ディスク、ハードディスクドライブ、さらには半導体メモリへと、小型で高密度なものへと置き換わりつつある。それに応じてカムコーダ本体の大きさも小型化している。
【0004】
カムコーダで撮影された映像はテレビで鑑賞されることが主であるが、家庭用テレビは薄型・大型のハイビジョンテレビが普及しつつあるため、カムコーダの記録フォーマットも大画面での鑑賞に堪えうるようにハイビジョン化されつつある。ここで、高解像度の映像信号を記録再生できるハイビジョン信号を大型の画面で鑑賞すると、撮影時のピントのずれが従来にも増して顕著に目立つようになる。
【0005】
しかし、撮影時の被写体画像を確認するためのモニタ装置(画像表示装置)には、カムコーダ本体の大きさに合わせて、3インチ程度の小型の液晶モニタが用いられている。このような小型の液晶モニタは、解像度がQVGA(Quarter Video Graphics Array:320X240ピクセル)クラスしかなく、ハイビジョンの高解像度信号を表示させるほどのクオリティを有していない。そのため、小型の液晶モニタを用いた微妙なピント合わせには不向きである。
【0006】
そこで、ピント合わせを行い易く補助するためには、映像信号の輪郭強調を行なうことが考えられる。例えば、映像信号の輪郭を強調すべく、強調した輪郭信号に色を付けるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
映像信号に高域強調を行うと、ピントが合っている被写体映像、すなわち輪郭のはっきりした映像信号は、輪郭に高域成分が多く含まれているためその輪郭がより強調される。一方、ピントが合っていない被写体映像は、その輪郭に高域成分が少ないために高域強調を行っても輪郭はあまり強調されない。よって、高域強調した映像信号の輪郭部分に注目して見ると、ピントが合っている場合と、ピントが合っていない場合とで見え方が異なるため、被写体のどこにピントが合っているのかが分かり易い。
【0008】
一方、カムコーダの普及に伴い、従来のように被写体画像をありのままに記録するだけではなく、撮影時に画像に種々の特殊画像効果をかけて記録するモードを設けたカムコーダが製品化されつつある。特殊画像効果とは、例えば、色褪せた昔の写真のような色合いで記録するセピアモード、画像のコントラストを上げて記録するダイナミックモード、画像にソフトフィルタをかけて幻想的な印象で記録するソフトフォーカスモード等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平06−028392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来例では、ソフトフォーカスモードを選択しソフトフィルタをかけた状態でピント合わせを行おうとすると、ソフトフィルタの影響で被写体画像の高域成分が減衰するため、ピント合わせが行いにくくなるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、画像効果としてソフトフォーカスをかけた状態でも撮影時のピント合わせの確認をユーザが容易に行うことが可能な画像表示装置、撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の画像表示装置は、撮像手段により得られた被写体像の映像信号から輝度信号を抽出する輝度信号抽出手段と、抽出した輝度信号から、複数のパラメータを選択的に切り替えて輪郭成分を抽出することが可能な輪郭成分抽出手段と、抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算する輪郭成分加算手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
輪郭成分を抽出する時のパラメータとして、高域強調周波数、高域強調ゲイン、ノイズ除去のためのベースクリップの閾値にそれぞれ複数の設定値を持ち、前記映像信号を標準的な状態で表示する通常の表示と、第1のパラメータで抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算する第1の焦点状態確認用の表示と、第2のパラメータで抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算する第2の焦点状態確認用の表示とを切り換える表示変更手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の撮像装置は、前記画像表示装置と被写体像を撮像する撮像装置とを備え、さらに被写体画像にソフトフォーカス処理を行うソフトフォーカス手段を備える。
【0015】
被写体画像を標準的な状態で撮影する通常撮影時の焦点状態確認用には前記第1の焦点状態確認用の表示とし、ソフトフォーカス処理した画像を撮影する時の焦点状態確認用には前記第2の焦点状態確認用の表示とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、画像効果としてソフトフォーカスモードを選択した場合においても、撮影時のピント合わせの確認をユーザが容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置を用いた撮像装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】輪郭信号抽出パラメータ
【図3】本実施の形態の動作処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像表示装置を用いた撮像装置の基本構成を示すブロック図である。本発明の実施形態における撮像装置は、図示のような構成を有するカムコーダである。
【0019】
カムコーダは、撮像光学系1、センサ2、カメラ信号処理回路3、記録再生信号処理回路4、記録媒体5、輝度信号抽出回路6、輪郭信号抽出回路7、輪郭信号抽出パラメータ設定手段8、加算器12、選択スイッチ13、液晶表示装置14を備える。また更に、バックライト15、マイコン16、フォーカスアシストモード選択スイッチ17およびソフトフォーカスモード選択スイッチ18を備える撮像装置である。
【0020】
撮像光学系1は、センサ2上に被写体像を結像するためのレンズ群である。撮像光学系1は、不図示の焦点調節機構によりその一部または全部を光軸に沿って移動することにより、被写体像の焦点位置を調節する。この焦点調節機構の動作は、オートフォーカスとマニュアルフォーカスとを撮影者が選択することにより切り換えて行われる。
【0021】
センサ2は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いて被写体像を光電変換して映像信号とする。そして、これをカメラ信号処理回路3へ伝える撮像部である。
【0022】
カメラ信号処理回路3は、映像信号を画像処理し、記録再生信号処理回路4へ送る。記録再生信号処理回路4は、映像信号を記録信号処理して記録媒体5に送る。これと同時に、映像信号は、選択スイッチ13の一方の入力端子に供給されると共に、輝度信号抽出回路6および加算器12の一方の入力端子に供給される。記録媒体5は、内蔵メモリやメモリカード等であり、記録信号処理された映像信号を記録する。
【0023】
輝度信号抽出回路6では、映像信号の色成分を除去して輝度成分のみを抽出する。抽出された輝度信号は輪郭信号抽出回路7に供給され、輪郭信号抽出パラメータ設定手段8にて設定されるパラメータにより輪郭信号を抽出する。
【0024】
抽出された輪郭成分は加算器12の他方の入力端子に供給され、元の映像信号に加算される。加算器12にて輪郭信号の加算された映像信号は選択スイッチ13の他方の入力端子に供給される。
【0025】
選択スイッチ13の出力は、液晶表示装置14に供給される。液晶表示装置14は背面からバックライト15により白色光を照射され、表示面に画像を表示する。
【0026】
マイコン16は、カムコーダ全体の動作を統括的に制御する制御部であり、選択スイッチ11、選択スイッチ13の制御も行う。
【0027】
具体的には、マイコン16はフォーカスアシストモード選択スイッチ17が通常表示モードとフォーカスアシスト表示モードのいずれかを選択しているかにより、選択スイッチ13を次のように制御する。
【0028】
フォーカスアシストモード選択スイッチ17がフォーカスシスト表示モードを選択した場合は、映像信号と輪郭信号の加算器12を通った映像信号を選択する側の信号経路に選択スイッチ13を切り換える。一方、フォーカスアシストモード選択スイッチ17が通常表示モードを選択した場合は、映像信号が加算器12を通らない信号経路側に選択スイッチ13を切り換える。
【0029】
また、マイコン16はソフトフォーカスモード選択スイッチ18が標準画質モードとソフトフォーカスモードのいずれかを選択しているかにより、選択スイッチ11を次のように制御する。
【0030】
ソフトフォーカスモード選択スイッチ18が標準画質モードを選択した場合は、標準画質用の輪郭信号抽出パラメータ9を選択する側にスイッチ11を切り換える。一方、ソフトフォーカスモード選択スイッチ18がソフトフォーカスモードを選択した場合は、ソフトフォーカス用の輪郭信号抽出パラメータ10を選択する側に選択スイッチ11を切り換える。さらにカメラ信号処理回路3に作用し映像信号にソフトフォーカス画像処理を行う。
【0031】
本実施形態では、マイコン16および選択スイッチ11、選択スイッチ13を組み合わせて用いることにより、カメラ信号処理3での画質処理、および液晶表示装置14の表示を変更する変更手段として機能する。
【0032】
ここで輪郭信号抽出パラメータについて図2を用いて説明する。図2に示すように、輪郭信号抽出パラメータとして高域強調周波数(f)、高域強調ゲイン(G)、ベースクリップ閾値(Th)の3種を有する。そして、それぞれのパラメータにつき標準画質撮影モードに適したデータ群(f1、G1、Th1)、およびソフトフォーカス撮影モードに適したデータ群(f2、G2、Th2)を有する。
【0033】
ソフトフォーカスモードの画質は標準モードの画質に対して高域が減衰しているため、標準画質モードと同じパラメータで高域強調しても高域成分、すなわち画像の輪郭成分は抽出されにくい。そこで、
高域強調周波数:f2<f1
高域強調ゲイン:G2>G1
ベースクリップ閾値:TH2<TH1
とすることにより、高域成分が減衰したソフトフォーカス処理された映像信号からでも輪郭信号を抽出し易くする。
【0034】
このように標準画質モードにおいてもソフトフォーカスモードにおいても最適な輪郭信号を抽出することが可能となり、マニュアルフォーカス時のピント合わせが行い易くなる。
【0035】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施例に係るカムコーダの撮像装置の動作について説明する。
【0036】
ステップS1にてソフトフォーカスモード選択スイッチ18がソフトフォーカスモードを選択しているか否かを判別する。ソフトフォーカスモードが選択されたと判別したとき、次にステップS2にてフォーカスアシストモード選択スイッチ17がフォーカスアシストモードを選択しているか否かを判別する。フォーカスアシストモードが選択されたと判別したとき、ステップS3にて高域強調の中心周波数を下げる。次にステップS4にて高域強調ゲインを上げる。さらにステップS5にてベースクリップの閾値を下げる。
【0037】
ステップS1にてソフトフォーカスモードが選択されていないと判別したとき、ならびに、ステップS2にてフォーカスアシストモードが選択されていないと判別したときはステップS3からステップS5の一連の処理は行わない。
【0038】
本実施形において、画像表示装置を備える撮像装置としてカムコーダを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば電子スチルカメラであってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、マイコン16と選択スイッチ17および選択スイッチ18を組み合わせて用いることにより、液晶表示装置14の表示を変更する表示変更手段として機能させている例を示したが、これに限らない。例えば、この表示変更手段を選択スイッチ17、選択スイッチ18に相当する機械式スイッチのみで構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1‥‥撮像光学系
2‥‥センサ
3‥‥カメラ信号処理回路
4‥‥記録再生信号処理回路
5‥‥記録媒体
6‥‥輝度信号抽出回路
7‥‥輪郭信号抽出回路
8‥‥輪郭信号抽出パラメータ設定手段
9‥‥標準画質用パラメータ
10‥‥ソフトフォーカス用パラメータ
11‥‥選択スイッチ
12‥‥加算器
13‥‥選択スイッチ
14‥‥液晶表示装置
15‥‥バックライト
16‥‥マイコン
17‥‥フォーカスアシストモード選択スイッチ
18‥‥ソフトフォーカスモード選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段により得られた被写体像の映像信号から輝度信号を抽出する輝度信号抽出手段と、
抽出した輝度信号から、複数のパラメータを選択的に切り替えて輪郭成分を抽出することが可能な輪郭成分抽出手段と、
抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算する輪郭成分加算手段と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
輪郭成分を抽出する時のパラメータとして、高域強調周波数、高域強調ゲイン、ノイズ除去のためのベースクリップの閾値にそれぞれ複数の設定値を持つことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記映像信号を標準的な状態で表示する通常の表示と、第1のパラメータで抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算する第1の焦点状態確認用の表示と、第2のパラメータで抽出した輪郭成分を元の輝度信号に加算する第2の焦点状態確認用の表示とを切り換える表示変更手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の画像表示装置と、被写体像を撮像する撮像手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
被写体画像にソフトフォーカス処理を行うソフトフォーカス手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記被写体画像を標準的な状態で撮影する通常の撮影と、ソフトフォーカス処理した画像を撮影するソフトフォーカス撮影とを切り換える撮影変更手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
被写体画像を標準的な状態で撮像する通常撮影時の焦点状態確認用には第1の焦点状態確認用の表示とし、ソフトフォーカス処理した画像を撮影する時の焦点状態確認用には第2の焦点状態確認用の表示とすることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−160942(P2012−160942A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19806(P2011−19806)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】