説明

画像表示装置および画像表示方法

【課題】映像表現力に優れた画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、画像の明るさを特徴付ける明るさ制御信号を画像信号に基づいて単位時間毎に抽出するパラメータ抽出部32と、パラメータ抽出部32によって抽出された画像パラメータの変化に基づいて、調光処理と伸張処理とに係わる調光係数および伸張係数を決定する比較器33とを備えている。比較器33において、単位時間毎の調光係数および伸張係数の変化量を所定の量、例えば5%以下に制限するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置および画像表示方法に関し、特に映像表現力に優れ、また使用環境や使用者の好みに合った明るさの映像が得られる画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の発達はめざましく、解像度が高く、低消費電力でかつ薄型の画像表示装置の要求が高まり、研究開発が進められている。中でも液晶表示装置は液晶分子の配列を電気的に制御して、光学的特性を変化させることができ、上記のニーズに対応できる表示装置として期待されている。このような液晶表示装置の一形態として、液晶ライトバルブを用いた光学系から射出される映像を投射レンズを通してスクリーンに拡大投射する投射型液晶表示装置(液晶プロジェクタ)が知られている。投射型液晶表示装置は光変調器として液晶ライトバルブを用いたものであるが、投射型表示装置には、液晶ライトバルブの他、デジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device,以下、DMDと略記する)を光変調器としたものも実用化されている。ところが、この種の従来の投射型表示装置は以下のような問題点を有している。
【0003】
(1)光学系を構成する様々な光学要素で生じる光漏れや迷光のため、充分なコントラストが得られない。そのため、表示できる階調範囲(ダイナミックレンジ)が狭く、陰極線管(CRT)を用いた既存のテレビ受像機に比較すると、映像の品質や迫力の点で劣ってしまう。
(2)各種の映像信号処理により映像の品質向上を図ろうとしても、ダイナミックレンジが固定されているために、充分な効果を発揮することができない。
【0004】
このような投射型表示装置の問題点に対する解決策、つまりダイナミックレンジを拡張する方法としては、映像信号に応じて光変調器(ライトバルブ)に入射させる光の量を変化させることが考えられる。それを実現するのに最も簡便な方法は、ランプの光出力強度を変化させることである。投射型液晶表示装置において、メタルハライドランプの出力光の制御を行う方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3−179886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
投射型液晶表示装置に用いるランプとしては高圧水銀ランプが現在主流となっているが、高圧水銀ランプで光出力強度を制御するのは極めて困難な状況である。このことから、ランプの光出力強度自体は変化させなくても、光変調手段への入射光量を映像信号に応じて変化させることのできる方法が求められている。
さらに上記の問題点に加えて、現行の投射型表示装置では光源の明るさが固定されているため、例えば暗めの鑑賞環境においては画面が明るくなりすぎたり、また、投射距離や投射レンズのズーミングにより投射スクリーンサイズを変化させた際に、それに応じて画面の明るさが変化してしまうという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ランプの光出力強度を変化させることなく光変調手段への入射光量を変化させることができ、映像表現力や使用環境への順応性の面で優れた効果を発揮することのできる画像表示装置および画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の画像表示装置は、照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像が調整される画像表示装置であって、画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、前記画像パラメータの時間変化に依存して調光処理と伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する制御パラメータ決定手段とを備え、制御パラメータ決定手段において、単位時間毎のシステム制御パラメータの変化量を所定の量以下に制限することを特徴とする。
【0008】
本発明者は、例えば映像信号、投射拡大率、使用環境下における明るさの状況等の外部からの情報に基づいて光量を調節する調光素子を備えた投射型表示装置を既に出願している。この装置によれば、調光素子を用いることで光源自体の光出力強度を変化させることなく、映像や状況に応じて光変調器への入射光量を調節することができ、上記の目的を達成することができる。しかしながら、画像の明るさが変化した際に、光変調器と調光素子の応答特性が異なることに起因して不要な明るさのちらつきが生じてしまうという問題があった。また、字幕部分などのように、本来明るさが変化して欲しくない個所でも明るさの変動が視認されてしまい、映像を鑑賞する際に違和感が生じていた。
【0009】
本発明の画像表示装置は、上記の目的を達成すると同時に、上記の問題点をも解決することを目的としたものである。すなわち、本発明の画像表示装置においては、画像信号に基づいて画像パラメータ抽出手段が画像パラメータを単位時間毎に抽出し、また前記画像パラメータの時間変化に依存して制御パラメータ決定手段がシステム制御パラメータを決定する。なお、ここで言う「画像パラメータ」とは画像の明るさを特徴付けるパラメータのことであり、例えば画像の平均明るさ、画像に含まれる最大明るさ、もしくは最大明るさから上位10%の画素が含まれる明るさなどを画像パラメータに用いることができる。また、「システム制御パラメータ」とは、システム内で調光処理や伸張処理を行うのに用いるパラメータのことであり、具体的には後述する調光係数や伸張係数がこれに該当する。また、「単位時間」とは、例えば1フレーム、もしくは1フィールドとすることができる。
【0010】
本発明の第1の画像表示装置においては、制御パラメータ決定手段にて単位時間毎のシステム制御パラメータの変化量が所定の量以下に制限されているので、調光処理や伸張処理による画像の明るさの変動が十分に小さくなる。その結果、調光処理と伸張処理の応答特性が異なっていても、ちらつきの程度が小さくなり、視聴者に視認されにくくなるので、映像の品位を上げることができる。また、調光によって本来明るさが一定であるはずの字幕部分で明るさが多少変化したとしても、単位時間あたりの明るさの変化量が小さいため、視聴者が違和感を感じることがない。
【0011】
上記構成の画像表示装置において、単位時間毎のシステム制御パラメータの変化量を、当該画像表示装置の最大明るさを100%としたときに、画面内の全ての領域で明るさの変化がその5%以内になるように制限することが望ましい。
その理由は、単位時間毎5%以内の変化であれば、調光処理と伸張処理の応答特性が異なっていても、それらの不一致により発生するちらつきが認識されることがないからである。
【0012】
本発明の第2の画像表示装置は、照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像が調整される画像表示装置であって、画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、前記画像パラメータの時間変化に依存して調光処理と伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する制御パラメータ決定手段とを備え、制御パラメータ決定手段において、単位時間毎の画像パラメータの変化量に応じてシステム制御パラメータの単位時間毎の変化量を変えることを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明の第2の画像表示装置は、単位時間毎のシステム制御パラメータの変化量が、常に一定なのではなく、単位時間毎の画像パラメータの変化量に応じて変わるものである。例えば、画像パラメータの変化量がある所定の閾値よりも小さいときのシステム制御パラメータの変化量に対して、画像パラメータの変化量が前記閾値よりも大きいときのシステム制御パラメータの変化量を大きくすることができる。つまり、画像パラメータの変化量が比較的小さい場合、例えば一定の映像シーンの中で明るさがわずかに変化しているような場合には、システム制御パラメータの単位時間あたりの変化量を小さくし、調光や伸張の変化速度を小さくする。一方、画像パラメータの変化量が大きい場合、例えば映像シーンががらりと変わるような場合には、システム制御パラメータの単位時間あたりの変化量を大きくし、調光や伸張の変化速度を大きくする。その結果、同一シーンで画面の変化が小さい場合は視聴者がちらつきや違和感を感じにくい映像を得ることができる一方、シーンが変わるなどで画面が大きく変化する際には、短い応答時間で調整を行うことが可能になる。
【0014】
その他、本発明の第2の画像表示装置において、画像パラメータの変化量が所定の閾値よりも小さいときにはシステム制御パラメータの単位時間毎の変化量を、画像パラメータの変化量に依らず一定にする構成としても良い。
この構成によれば、閾値以下の範囲(画面の変化が小さいとき)では、特に伸張処理、調光処理による明るさ変動を一定にすることによって、ちらつきをより目立たなくすることが可能となる。
【0015】
もしくは、画像パラメータの変化量が所定の閾値よりも大きいときにはシステム制御パラメータの単位時間毎の変化量に制限値を設けないようにする構成としても良い。
この構成によれば、表示画像の大きな変動に対してすばやく調整を行うことが可能となり、伸張処理、調光処理と表示画像とが適合していない期間を最小限にすることができる。
【0016】
もしくは、画像パラメータの変化量が所定の閾値よりも小さいときにはシステム制御パラメータが変化しないようにする構成としても良い。
この構成によれば、閾値以下の範囲(画面の変化が小さいとき)では、伸張、調光状態が変化しないので、ちらつきをなくすことが可能になる。
【0017】
本発明の第3の画像表示装置は、照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像が調整される画像表示装置であって、画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、前記画像パラメータの時間変化に依存して調光処理と伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する制御パラメータ決定手段とを備え、制御パラメータ決定手段において、単位時間毎の画像パラメータが明るい側から暗い側に変化する際のシステム制御パラメータの単位時間毎の変化量に対して、単位時間毎の画像パラメータが暗い側から明るい側に変化する際のシステム制御パラメータの単位時間毎の変化量を大きくすることを特徴とする。
【0018】
すなわち、本発明の第3の画像表示装置は、画像が暗い側から明るい側に変化する場合と明るい側から暗い側に変化する場合とでシステム制御パラメータの変化量を変えたものである。画像パラメータが明るい側から暗い側に変化する際のシステム制御パラメータの変化量は小さく、暗い側から明るい側に変化する際のシステム制御パラメータの変化量は大きくしている。その理由は、暗い側では伸張率(伸張係数)が大きいため、明るい側の階調がつぶれた(圧縮された)状態となっている。この状態で明るい側の階調が多く含まれる画像が表示されると、画面全体が明るい側につぶれたものになってしまう。よって、このような表示画像の変化に対しては、できるだけ速やかに調光処理、伸張処理を行うのが視聴する上では好ましい。これに対して、画像が明るい側から暗い側に変化する場合には伸張率(伸張係数)が小さい側から大きい側への変化のため、上のような問題は生じない。その結果、どのような表示画像の変化に対しても視聴者がちらつきや違和感を感じにくいようにすることができる。
【0019】
本発明の第1の画像表示方法は、本発明の第1の画像表示装置に対応するものである。
すなわち、本発明の第1の画像表示方法は、照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像を調整する画像表示方法であって、画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する第1のステップと、前記画像パラメータの時間変化に依存して調光処理と伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する第2のステップとを備え、第2のステップにおいて、単位時間毎のシステム制御パラメータの変化量を所定の量以下に制限することを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の画像表示方法は、本発明の第2の画像表示装置に対応するものである。
すなわち、本発明の第2の画像表示方法は、照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像を調整する画像表示方法であって、画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する第1のステップと、前記画像パラメータの時間変化に依存して調光処理と伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する第2のステップとを備え、第2のステップにおいて、単位時間毎の画像パラメータの変化量に応じてシステム制御パラメータの単位時間毎の変化量を変えることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の画像表示方法は、本発明の第3の画像表示装置に対応するものである。
すなわち、本発明の第3の画像表示方法は、照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像を調整する画像表示方法であって、画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する第1のステップと、前記画像パラメータの時間変化に依存して調光処理と伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する第2のステップとを備え、第2のステップにおいて、単位時間毎の画像パラメータが明るい側から暗い側に変化する際のシステム制御パラメータの変化量に対して、単位時間毎の画像パラメータが暗い側から明るい側に変化する際のシステム制御パラメータの変化量を大きくすることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の画像表示装置および画像表示方法の第1の実施の形態について図1〜図5を参照して詳細に説明する。
本発明の画像表示方法を用いた画像表示装置の一例として、R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる色毎に液晶ライトバルブを備えた3板式の投射型表示装置を用いて説明する。
【0023】
図1は、投射型表示装置の一例を示した概略構成図である。本実施の形態の投射型表示装置は、図1に示すように、光源510、調光素子26、ダイクロイックミラー513、514、反射ミラー515、516、517、リレーレンズ518、519、520、赤色光用液晶ライトバルブ522、緑色光用液晶ライトバルブ523、青色光用液晶ライトバルブ524、クロスダイクロイックプリズム525、投射レンズ系526を備えている。
調光素子26としては、例えば、透過率が可変とされた液晶パネルを用いても良いし、可動式の遮光板などを用いても良い。液晶パネルを用いた調光素子は応答速度が比較的速いものである一方、可動式遮光板などを用いた機械的な調光素子は応答速度が比較的遅いものである。いずれにしても、これら調光素子と液晶ライトバルブとの応答速度は異なるものであり、それでもちらつき等が視認され難くなる点で本発明の技術が有効である。
【0024】
光源510は、超高圧水銀灯等のランプ511とランプ511の光を反射するリフレクタ512とから構成されている。この光源510とダイクロイックミラー513との間には、光源510からの光量を調節する調光素子26が配置されている。
青色光・緑色光反射のダイクロイックミラー513は、光源510からの白色光のうちの赤色光LRを透過させるとともに、青色光LBと緑色光LGとを反射する。透過した赤色光LRは反射ミラー517で反射され、赤色光用液晶ライトバルブ522に入射される。
一方、ダイクロイックミラー513で反射された緑色光LGは、緑色光反射用のダイクロイックミラー514によって反射され、緑色光用液晶ライトバルブ523に入射される。
また、ダイクロイックミラー513で反射された青色光LBは、ダイクロイックミラー514も透過し、リレーレンズ518、反射ミラー515、リレーレンズ519、反射ミラー516、リレーレンズ520からなるリレー系521を経て、青色光用液晶ライトバルブ524に入射される。
【0025】
各液晶ライトバルブ522、523、524により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム525に入射する。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されたものである。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ系526によってスクリーン527上に投射され、画像が拡大されて表示される。各液晶ライトバルブ522、523、524には、画像信号に基づいて、各色光に所定の画像処理を施す画像処理部(図1では図示を省略)が接続されている。
【0026】
図2は、投射型表示装置の駆動回路の構成を示したブロック図である。図2に示すように、画像処理部21には画像解析部24が接続されており、画像解析部24によって決定された画像処理のパラメータ(伸張係数、システム制御パラメータ)に基づいて、画像信号に対する所定の画像処理、ここでは明るさ伸張処理が施されるようになっている。画像処理部21で所定の画像処理が施された画像信号は、ライトバルブドライバ22を介して各液晶ライトバルブ522、523、524に供給される。一方、画像解析部24によって決定された調光処理のパラメータ(調光係数、システム制御パラメータ)に基づいて、調光素子ドライバ25,調光素子26によって光源511からの射出光に対して調光処理を施すようになっている。
【0027】
図3は、画像解析部24の構成を示すブロック図である。図3に示すように、画像信号と水平・垂直同期信号の双方がヒストグラム作成部31(画像パラメータ抽出手段)に入力され、ヒストグラム作成部31においてヒストグラムが作成される。そして、そのヒストグラムに基づいてパラメータ抽出部32(画像パラメータ抽出手段)において、画像パラメータが抽出、決定されるとともに、調光係数、伸張係数などのシステム制御パラメータが抽出、決定される。ただし、ここで決定されるシステム制御パラメータは個々のフレームに対応した仮の値であって、次段の比較器33(制御パラメータ決定手段)において、画像パラメータの時間変化に依存した真のシステム制御パラメータ(実際に調光処理や伸張処理に用いられるシステム制御パラメータ)が決定される。
調光の方法に関しては、例えば明るい映像シーンでは光量が多くなり、暗いシーンでは光量が少なくなるような表示映像に適応した明るさ制御を行う他、投射拡大率による制御(投射レンズのズーミングに合わせた制御)、外部からの制御(使用者の好み等による制御)などを行っても良いが、ここでは、表示映像適応型の制御の場合を例として、画像パラメータとシステム制御パラメータの抽出を同じ方法で行う場合について説明する。
【0028】
例えば0〜255の256ステップの階調数を含む映像信号を想定する。連続した映像を構成する任意の1フレームに着目した場合、そのフレームに含まれる画素データの階調数毎の出現数分布(ヒストグラム)が、図4(a)のようになったとする。この例の場合、ヒストグラムに含まれる最も明るい階調数が190であるので、この階調数190を画像パラメータb(t)とする。この最大の明るさの階調数を画像パラメータとする方法は、入力される映像信号に対し、最も忠実に明るさを表現できる方法である。あるいは、最大の明るさから出現数について一定の割合(例えば10%)となる階調数を画像パラメータとしてもよい。この方法の場合、小さな領域での明るさ変動の影響を受けないようにすることができる。
【0029】
このようにして、パラメータ抽出部32において、例えば任意の1フレームでの階調数190が画像パラメータb(t)に決定されると、この画像パラメータb(t)に基づいて仮の調光係数x'(t)が計算される。例えば階調と明るさの関係を線形とした場合、最大明るさ(階調数255)を100%とすると、仮の調光係数x'(t)は、x'(t)=190/255=0.75(75%)となる。一方、パラメータ抽出部32において仮の伸張係数も計算されるが、例えば最大階調範囲にまで伸張する場合、上記の例では仮の伸張係数y'(t)は、y'(t)=255/190=1.34となる。
【0030】
ここで、本実施の形態の場合、1フレーム毎の調光係数の変化量Δxおよび伸張係数の変化量Δyが、画面内で最も明るさが変化する部分の変化が、画面の最大明るさを100%としたときの5%以下となるように制限されている。したがって、任意の1フレームにおける仮の調光係数x'(t)および仮の伸張係数y'(t)がパラメータ抽出部32で計算されると、これらが比較器33に送られ、比較器33においてそれら調光係数x'(t)、伸張係数y'(t)とメモリ34に記憶されたその一つ前のフレームにおける調光係数x'(t−1)、伸張係数y'(t−1)とが比較される。例えば映像が明るい側から暗い側に変化しているとすると、比較結果はx'(t)<x'(t−1)、y'(t)>y'(t−1)となる。この場合、明るさ変化の方向を反映した真の調光係数x(t)は、x(t)=x'(t−1)−Δx、真の伸張係数y(t)は、y(t)=y'(t−1)+Δyとそれぞれ設定され、これら調光係数x(t)、伸張係数y(t)が出力される。
【0031】
また、調光係数と伸張係数とは1フレーム内で同期して変化するようにする。つまり、調光係数の変化量Δxおよび伸張係数の変化量Δyを、1フレーム内で調整可能な変化量に抑えることが重要である。これにより、応答がフレームをまたがないようにする。なお、「調光係数」とは、照明光の調光率のことであり、標準表示を行う場合(明るさ最大のとき)を1として1以下で変化する。「伸張係数」とは、液晶ライトバルブに表示する画像データの伸張率のことであり、標準表示を行う場合を1として1以上で変化する。調光係数と伸張係数とは略反比例の関係にあり、調光係数×伸張係数≒1となる。
例えば階調と明るさの関係を線形とした場合、最大明るさ(階調数255)を100%とすると、仮の調光係数x'は、x'=190/255=0.75(75%)となり、これに基づいて真の調光係数xが算出され、その調光係数xに対応する光量が得られるように調光素子26を駆動すればよいことになる。一方、伸張係数については、例えば最大階調範囲にまで伸張する場合、上記の例では仮の伸張係数y'は、y'=255/190=1.34となり、これに基づいて真の伸張係数yが算出され、この伸張係数yに基づいて、画像処理部21において図4(a)に示した階調数0〜190までの映像信号が、図4(b)に示すように階調数0〜255まで伸張される。このような調光処理と伸張処理の組み合わせによって、映像のダイナミックレンジを拡張しつつ、滑らかな階調表現を実現することができる。
【0032】
本実施の形態のような調光素子26を用いることで光源自体の光強度を変化させることなく、映像に応じて液晶ライトバルブへの入射光量を調節することができ、ダイナミックレンジが広く、映像表現力に優れた投射型表示装置を実現することができる。しかしながら、通常、調光素子と液晶ライトバルブの応答速度が異なるため、例えば図8(a)、(b)に示すように、調光素子の応答速度の方がライトバルブよりも速い場合、図8(c)に示すように、スクリーン上の映像の明るさにおいて不要な明るさ変動(オーバーシュートS)が生じてしまい、ちらつきとして視認されるという問題があった。また、字幕部分などのように、本来明るさが変化して欲しくない個所においても明るさの変動が視認されてしまい、映像を鑑賞する際に違和感が生じていた。
【0033】
これに対して、本実施の形態においては、調光処理と伸張処理を行うに際して、1フレーム毎の調光係数の変化量Δxおよび伸張係数の変化量Δyが、例えば明るさ変化が5%以下というように制限されている。すなわち、これらの係数の変化量が小さいため、例えば図5(a)、(b)に示すように、調光素子の明るさおよびライトバルブの明るさが1フレーム毎に少しずつ変化する。その結果、図5(c)に示すように、スクリーン上の映像の明るさにおいても不要な明るさ変動(符号S’)がわずかとなり、ちらつきを視認され難くすることができる。また、字幕部分などのように、本来明るさが変化して欲しくない個所においても明るさの変動が視認され難く、視聴者が違和感を感じることなく、見やすい映像を提供することができる。
【0034】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態について図6を用いて説明する。
本実施の形態の投射型表示装置の基本構成は第1の実施の形態と全く同様であり、1フレーム毎の調光係数や伸張係数の変化のさせ方が異なるのみである。したがって、本実施の形態では投射型表示装置の構成や駆動回路の構成に関する説明は省略する。
【0035】
第1の実施の形態においては、1フレーム毎の画像パラメータb(t)の変化量に関わらず、1フレーム毎の調光係数および伸張係数の変化量を例えば5%以下というように一律に制限していた。これに対して、本実施の形態においては、1フレーム毎の画像パラメータb(t)の変化量Δb(Δb=b(t)−b(t−1))に応じて調光係数および伸張係数の変化量を変えている。図6は、調光係数および伸張係数の変化量の変え方の一例を示している。図6の例では、画像パラメータの変化量Δb(横軸)が所定の閾値よりも小さいときの調光係数の変化量Δx(縦軸)に対して、画像パラメータの変化量Δbが所定の閾値よりも大きいときの調光係数の変化量Δxの方を大きくしている。ここでは閾値を80〜100程度に設定しており、Δbが正の場合(映像が暗い側から明るい側に変化する場合)と負の場合(映像が明るい側から暗い側に変化する場合)とで調光係数の変化量Δxは絶対値を等しくしている。また、図6では調光係数を例として挙げたが、伸張係数についても同様に設定することができる。
なお、第2の実施の形態においても、画像パラメータの変化量Δbが小さい領域では、第1の実施の形態と同様、単位時間あたりの調光係数の変化量Δxに上限値を設けることが望ましい。
【0036】
本実施の形態においては、画像パラメータの変化量Δbが比較的小さい(例えば80未満)場合、言い換えると一定の映像シーンの中で明るさがわずかに変化しているような場合には、調光係数の変化量Δxが小さく、調整の度合が小さくなる。一方、画像パラメータの変化量Δbが大きい(例えば100以上)場合、言い換えると映像シーンが明るいシーンから暗いシーンにがらりと変わるような場合には、調光係数の変化量Δxが大きく、調整の度合も大きくなる。
第1の実施の形態においては、シーンの変化などで急激に画面の明るさが変化する場合には、画面の調整に長い時間を要したが、本実施の形態においてはそのような場合でもすばやく画面を調整することができる。また、同一シーンなどで画面の変化が小さい場合には、第1の実施の形態と同様、視聴者がちらつきや違和感を感じにくい映像を得ることができる。
【0037】
なお、図6の例では画像パラメータの変化量Δbが所定の閾値よりも小さい場合に、調光係数の変化量ΔxをΔbの値に応じて大きくしているが、この構成に代えて、画像パラメータの変化量Δbが所定の閾値よりも小さい場合に、調光係数の変化量Δxを、画像パラメータの変化量Δbに依らず一定にしても良い。
この構成によれば、閾値以下の範囲(画面の変化が小さいとき)では、特に伸張処理、調光処理による明るさ変動を一定にすることによって、ちらつきをより目立たなくすることが可能となる。
もしくは、画像パラメータの変化量Δbが所定の閾値よりも小さい場合に、調光係数(伸張係数)が変化しないようにする構成としても良い。
この構成によれば、閾値以下の範囲(画面の変化が小さいとき)では、調光(伸張)状態が変化しないので、ちらつきをなくすことが可能になる。
【0038】
また、画像パラメータの変化量Δbが所定の閾値よりも大きい場合に、調光係数の変化量Δxに制限値を設けないようにする構成としても良い。
この構成によれば、表示画像の大きな変動に対してすばやく調整を行うことが可能となり、伸張処理、調光処理と表示画像とが適合していない期間を最小限にすることができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施の形態について図7を用いて説明する。
本実施の形態の投射型表示装置の基本構成は第1の実施の形態と全く同様であり、1フレーム毎の調光係数や伸張係数の変化のさせ方が異なるのみである。したがって、本実施の形態では投射型表示装置の構成や駆動回路の構成に関する説明は省略する。
【0040】
第1の実施の形態においては、1フレーム毎の画像パラメータb(t)の変化量に関わらず、1フレーム毎の調光係数および伸張係数の変化量を例えば5%以下で一律に制限していた。また、第2の実施の形態においては、画像パラメータb(t)の変化量に応じて調光係数の変化量Δxを変えるが、画像パラメータの変化量Δbが正の場合と負の場合とで調光係数の変化量Δxの絶対値を等しく設定していた。これに対して、本実施の形態においては、画像パラメータの変化量Δbが正の場合と負の場合とで調光係数の変化量Δxの絶対値を変えている。具体的には、図7に示すように、画像パラメータの変化量Δb(横軸)が正の場合、すなわち映像が暗い側から明るい側に変化する際の調光係数の変化量Δx(縦軸)は大きく、画像パラメータの変化量Δbが負の場合、すなわち映像が明るい側から暗い側に変化する際の調光係数の変化量Δxは小さくしている。また、図7では調光係数を例として挙げたが、伸張係数についても同様に設定することができる。
【0041】
本実施の形態において、伸張処理について考えると、画像が暗い側では伸張率(伸張係数)が大きいため、明るい側の階調がつぶれた(圧縮された)状態となっている。この状態で明るい側の階調が多く含まれる画像を表示すると、画面全体が明るい側につぶれたものになってしまう。よって、このような表示画像の変化に対しては、できるだけ速やかに調光処理、伸張処理を行う方が視聴する上では好ましい。よって、画像が暗い側から明るい側に変化する場合には調光係数や伸張係数の変化量が大きい方が望ましいのである。これに対して、画像が明るい側から暗い側に変化する場合には伸張率(伸張係数)が小さい側から大きい側への変化のため、上記のような明るい側での階調つぶれの問題は生じない。その結果、本実施の形態においても、第1,第2の実施の形態と同様、視聴者がちらつきや違和感を感じにくい映像を得ることができる。
なお、第3の実施の形態においても、画像パラメータの変化量Δbが小さい領域では、第1の実施の形態と同様、単位時間あたりの調光係数の変化量Δxに上限値を設けることが望ましい。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施の形態では、本発明の画像表示方法の利用が可能な画像表示装置として、投射型表示装置を用いて説明してきたが、これに限られるものではなく、例えば、直視型表示装置などであってもよい。また、投射型表示装置の駆動回路の具体的な構成についても適宜変更が可能である。
また、本発明の画像表示方法は、LCD、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイ、デジタルミラーデバイス、フィールドエミッションデバイスなどの画像信号の処理にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態の投射型表示装置の概略構成図である。
【図2】同、投射型表示装置の駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図3】同、駆動回路の画像解析部の構成を示すブロック図である。
【図4】同、画像解析部のヒストグラム作成部にて作成されるヒストグラムの一例を示す図である。
【図5】本実施形態の調光素子、ライトバルブ、スクリーン映像の明るさ変化の傾向を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態における調光係数の変化の様子を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態における調光係数の変化の様子を示す図である。
【図8】一般の調光素子、ライトバルブ、スクリーン映像の明るさ変化の傾向を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
21…画像処理部、24…画像解析部、26…調光素子、31…ヒストグラム作成部(画像パラメータ抽出手段)、32…パラメータ抽出部(画像パラメータ抽出手段)、33…比較器(制御パラメータ決定手段)、522〜524…液晶ライトバルブ(光変調器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像が調整される画像表示装置であって、
画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、前記画像パラメータの時間変化に依存して前記調光処理と前記伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する制御パラメータ決定手段とを備え、
前記制御パラメータ決定手段において、前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を所定の量以下に制限することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を、当該画像表示装置の最大明るさを100%としたときに、画面内の全ての領域で明るさの変化がその5%以内になるように制限することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像が調整される画像表示装置であって、
画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、前記画像パラメータの時間変化に依存して前記調光処理と前記伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する制御パラメータ決定手段とを備え、
前記制御パラメータ決定手段において、前記画像パラメータの前記単位時間毎の変化量に応じて前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を変えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記画像パラメータの変化量が小さいときの前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量に対して、前記画像パラメータの変化量が大きいときの前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記画像パラメータの変化量が所定の閾値よりも小さいときには前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を、前記画像パラメータの変化量に依らず一定にすることを特徴とする請求項3または4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記画像パラメータの変化量が所定の閾値よりも大きいときには前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量に制限値を設けないようにすることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像パラメータの変化量が所定の閾値よりも小さいときには前記システム制御パラメータが変化しないようにすることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像が調整される画像表示装置であって、
画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する画像パラメータ抽出手段と、前記画像パラメータの時間変化に依存して前記調光処理と前記伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する制御パラメータ決定手段とを備え、
前記制御パラメータ決定手段において、前記単位時間毎の画像パラメータが明るい側から暗い側に変化する際の前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量に対して、前記単位時間毎の画像パラメータが暗い側から明るい側に変化する際の前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を大きくすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像を調整する画像表示方法であって、
画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する第1のステップと、前記画像パラメータの時間変化に依存して前記調光処理と前記伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する第2のステップとを備え、
前記第2のステップにおいて、前記単位時間毎の前記システム制御パラメータの変化量を所定の量以下に制限することを特徴とする画像表示方法。
【請求項10】
照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像を調整する画像表示方法であって、
画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する第1のステップと、前記画像パラメータの時間変化に依存して前記調光処理と前記伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する第2のステップとを備え、
前記第2のステップにおいて、前記単位時間毎の画像パラメータの変化量に応じて前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を変えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項11】
照明光の調光処理と画像信号の伸張処理とによって表示画像を調整する画像表示方法であって、
画像の明るさを特徴付ける画像パラメータを画像信号に基づいて単位時間毎に抽出する第1のステップと、前記画像パラメータの時間変化に依存して前記調光処理と前記伸張処理とに係わるシステム制御パラメータを決定する第2のステップとを備え、
前記第2のステップにおいて、前記単位時間毎の画像パラメータが明るい側から暗い側に変化する際の前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量に対して、前記単位時間毎の画像パラメータが暗い側から明るい側に変化する際の前記システム制御パラメータの前記単位時間毎の変化量を大きくすることを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−282048(P2008−282048A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201270(P2008−201270)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【分割の表示】特願2002−326715(P2002−326715)の分割
【原出願日】平成14年11月11日(2002.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】