画像表示装置の駆動方法
【課題】画像表示装置において、温度特性に起因する発光輝度の変動を改善すること。
【解決手段】有機発光素子OLED、有機発光素子OLEDに電気的に接続され、有機発光素子OLEDの発光を制御する駆動トランジスタTd、および駆動トランジスタTdに一端側が電気的に接続される容量Csを有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度センサと、を備えた画像表示装置を準備するステップと、画像信号を容量Csに供給した後に、温度センサの測定結果に基づいた補正信号を容量Csに供給するステップと、容量Csに供給された画像信号および補正信号に基づいて有機発光素子OLEDを発光させるステップと、を含む。
【解決手段】有機発光素子OLED、有機発光素子OLEDに電気的に接続され、有機発光素子OLEDの発光を制御する駆動トランジスタTd、および駆動トランジスタTdに一端側が電気的に接続される容量Csを有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度センサと、を備えた画像表示装置を準備するステップと、画像信号を容量Csに供給した後に、温度センサの測定結果に基づいた補正信号を容量Csに供給するステップと、容量Csに供給された画像信号および補正信号に基づいて有機発光素子OLEDを発光させるステップと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する電流発光型の有機EL(Electroluminescence)素子を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
この種の画像表示装置では、例えばアモルファスシリコンや多結晶シリコン等で形成された薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)や有機EL素子の一つである有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:以下「OLED」という)などが各画素を構成しており、各画素に適切な電流値が設定されることにより、各画素の輝度が制御される。
【0004】
例えば発光素子と、TFTなどの駆動トランジスタとが直列に配置された画素を複数持つアクティブ・マトリクス型の画像表示装置では、各画素に設けられた駆動トランジスタの閾値電圧のばらつきにより、発光素子に流れる電流値が変化して輝度むらが発生する。この現象を改善するための手法として、例えば駆動トランジスタの閾値電圧を予め検出するとともに、検出した閾値電圧に基づいて発光素子に流れる電流を制御する方式(例えば非特許文献1)や、当該方式に基づく具体的な回路構成(例えば非特許文献2)などが開示されている。
【0005】
【非特許文献1】R.M.A. Dawson,et al.(1998).Design of an Improved Pixel for a Polysilicon Active−Matrix Organic LED Display. SID98 Digest, pp.11−14.
【非特許文献2】S.Ono et al.(2003).Pixel Circuit for a−Si AM−OLED.Proceedings of IDW ’03,pp.255−258.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献などに開示された手法では、画像表示装置を使用する環境の温度変化や、駆動部の発熱などによる温度変化が生じた場合には、その温度変化に起因して表示画像の輝度が変動してしまうという問題点があった。
【0007】
一方、このような温度変化をパラメータにして、階調に対する書き込み電圧の関係を表すデータ(ガンマデータ)を予め保持するとともに、温度変化に起因する表示画像の輝度変動を当該ガンマデータに基づいて調整することも考えられる。
【0008】
しかしながら、このような手法では、上記ガンマデータを測定温度単位(例えば1℃刻み)で持つ必要があり、保持すべきデータが膨大になり、輝度調整が複雑化するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、温度変化に起因して生ずる表示画像の輝度変動の改善を簡易に実現することができる画像表示装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、画像信号を前記容量素子に供給した後に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、画像信号を前記容量素子に供給する前に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度に応じて値が可変することを特徴とする。
【0013】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させることを特徴とする。
【0014】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させることを特徴とする。
【0015】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記補正信号の値は、前記画像信号の値に依存しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる画像表示装置の駆動方法によれば、画像信号とは別に温度変化に起因して生ずる表示画像の輝度変動に応じた補正信号を画素回路に供給することにより、発光素子の輝度調整を行なっていることから、かかる輝度調整を全階調において共通的に改善することができる。その結果、温度特性に起因する発光輝度の変動を簡易に改善することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の画像表示装置の駆動方法にかかる好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、携帯情報端末などの表示部に適用される画像表示装置の概略構成を示す図であり、この画像表示装置の主要部の概略配置を図示している。
【0019】
図1に示す画像表示装置は、マトリックス状に配置される複数の画素から成る発光部1(表示部)を有し、ガラス等を組成とする素子基板2と、ガラス等を組成とし、発光部1の表面を覆うように素子基板2に対向して設けられた封止基板3と、素子基板2と封止基板3との間に配置され、発光部1を取り囲み、素子基板2と封止基板3とを接合(接着)するためのシール材である封止材4と、を備えて構成される。
【0020】
素子基板2は、その上面の発光部1を構成する各画素内に有機EL素子(通常、RGB3色の有機EL素子が存在する)を有している。さらに、素子基板2の上面のうち、発光部1以外の領域には、有機EL素子を駆動するための駆動IC5と、発光部1を構成する有機EL素子の温度−輝度特性にかかるデータ(以下「温度/輝度特性データ」と表記)を記憶保持する、例えばEEPROMである記憶部6と、が備えられている。
【0021】
また、素子基板2の周辺部(素子基板2上でも可)には、サーミスタ等の温度センサ8が設けられる。温度センサ8は、現在の使用環境における温度(環境温度)を検知し、当該環境温度を駆動IC5に伝達する。駆動IC5は、温度センサ8から伝達された環境温度と記憶部6に記憶保持された温度/輝度特性データとに基づいて補正信号が決定され、該補正信号を画素回路に供給することにより、有機EL素子の発光輝度を調整する。
【0022】
図2は、有機EL素子の発光輝度にかかる温度特性の一例を示す図であり、環境温度(横軸)の変化に対する有機EL素子の発光輝度(縦軸)の変化を白表示に対してプロットしたものである。同図に示すように、1℃あたり2〜3cd/m2程度の輝度変化が生じていることが理解できる。
【0023】
図3−1、図3−2は、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法の概念を図2に対応するグラフ上に示した図である。これらの各図の縦軸は有機EL素子の発光輝度、横軸は環境温度である。図3−1、図3−2において、太線で表す基準輝度K1は、目標とする発光輝度レベルを示している。本例では、この基準輝度K1を、常温(25℃)における有機EL素子の輝度レベル(約140cd/m2)に設定している。
【0024】
ここで、図3−1は、測定温度が基準温度より低いときの制御の概念を示している。同図に示すように、温度センサ8が測定した測定温度が基準温度より低いときには、有機EL素子の発光輝度を増加させる制御を行なう。また、発光輝度の増加量は、測定温度と基準温度との差が小さくなるに従って小さくするように制御する。
【0025】
また、図3−2は、測定温度が基準温度より高いときの制御の概念を示している。同図に示すように、温度センサ8が測定した測定温度が基準温度より高いときには、有機EL素子の発光輝度を減少させる制御を行なう。また、発光輝度の減少量は、測定温度と基準温度との差が小さくなるに従って小さくするように制御する。
【0026】
図4は、例えば図1に示した画像表示装置の発光部に設けられる画素回路(1画素)の構成を示す図である。同図に示す画素回路は、マトリックス状に配列されており、各画素回路は、有機EL素子の一つである有機発光素子OLED、駆動トランジスタTd、閾値電圧検出用トランジスタTsおよび閾値電圧(Vth)や画像信号電位を保持する容量Csを備えるように構成されている。
【0027】
図4において、駆動トランジスタTdは、ゲート電極・ソース電極間に与えられる電位差に応じて有機発光素子OLEDに流れる電流量を制御するためのドライバ素子である。また、閾値電圧検出用トランジスタTsは、オン状態となったときに、駆動トランジスタTdのゲート電極とドレイン電極とを電気的に接続することにより、駆動トランジスタTdのゲート電極からドレイン電極に向かって電流を流し、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに近づけ、結果的に、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を閾値電圧Vthに近づけるもしくは閾値電圧Vthとする機能(以下、「Vth検出機能」という)を有している。
【0028】
有機発光素子OLEDは、両端に閾値電圧以上の電位差(アノード−カソード間電圧)が生じることにより電流が流れ、発光する特性を有する素子である。具体的な構造や機能として、有機発光素子OLEDは、Al、Cu、ITO(Indium Tin Oxide)等によって形成されたアノード層およびカソード層と、アノード層とカソード層との間にフタルシアニン、トリスアルミニウム錯体、ベンゾキノリノラト、ベリリウム錯体等の有機系の材料によって形成された発光層とを少なくとも備えた構造を有し、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する。
【0029】
駆動トランジスタTdおよび閾値電圧検出用トランジスタTsは、例えば、薄膜トランジスタである。なお、以下に参照される各図面において、各薄膜トランジスタのチャネル(N型またはP型)については、N型、P型のいずれのタイプを用いてもよいが、本実施形態ではN型を用いるものとする。
【0030】
第1電源線11および第2電源線12は、有機EL素子OLEDや駆動トランジスタTdに電圧を供給するためのものであり、供給電圧は可変可能となっている。走査線13は、閾値電圧検出用トランジスタTsを制御するための信号を供給する。画像信号線14は、有機発光素子OLEDの発光輝度に対応する画像信号を容量Csに供給する。
【0031】
つぎに、図4に示す画素回路の動作について、図5〜図11を参照して説明する。ここで、図5は、図4に示した画素回路の動作を説明するためのシーケンス図であり、図1に示した駆動IC5の制御下で行われる。また、図6〜図11は、図5において区分された6つの期間であるCsリセット期間(図6)、準備期間(図7)、Vth検出期間(図8)、書き込み期間(図9)、Coledリセット期間(図10)および発光期間(図11)の各区間の動作を説明するための図である。なお、図6〜図11において、有機発光素子OLEDに並列に接続されるColedは、有機発光素子OLEDが固有に有している素子容量である。
【0032】
(Csリセット期間)
Csリセット期間の動作については、図5および図6を参照して説明する。Csリセット期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12が高電位(VDD)、走査線13が高電位(VgH)、画像信号線14がゼロ電位(GND)とされる。これにより、図5に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオン、駆動トランジスタTdがオフとされ、第1電源線11→有機発光素子OLED→閾値電圧検出用トランジスタTs→容量Csという経路で電流が流れ、容量Csが充電されることにより、容量Csの電荷がリセットされる。なお、このCsリセット期間で容量Csを充電する理由は、容量Csに書き込まれている1フレーム前の画像信号電位をリセットするためである。
【0033】
ここで、駆動トランジスタTdのゲート(A点)および駆動トランジスタTdのドレイン(B点)の各電位をVa,Vbとするとき、このCsリセット期間開始直後およびCsリセット期間終了時におけるVa,Vbは、つぎのように表すことができる。なお、有機発光素子OLEDの両端の電圧をVoledとする。
【0034】
・Csリセット期間の開始直後
Va=VDD+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=VDD-Voled
…(1)
・Csリセット期間の終了時
Va=Vb=VDD
…(2)
【0035】
なお、実際のトランジスタには、一般的にゲート・ソース間およびゲート・ドレイン間に寄生容量が存在し、駆動トランジスタTdのゲート(A点)、ドレイン(B点)の各電位は、これらの寄生容量の影響を若干受ける。しかしながら、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法を説明する上で、これらの寄生容量の影響は無視することができる。そこで、上記式およびこれ以降に示す式においては、トランジスタに存在する寄生容量を含まない式を提示する。
【0036】
(準備期間)
準備期間の動作については、図5および図7を参照して説明する。準備期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、走査線13が低電位(VgL)、画像信号線14が高電位(VgH)とされる。これにより、図7に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフ、駆動トランジスタTdがオンとされ、第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ、素子容量Coledに電荷が蓄積される。なお、この準備期間で素子容量Coledに電荷を蓄積する理由は、後述するVth検出期間に駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧を閾値電圧に近づける際に、素子容量Coledを駆動トランジスタTdのドレイン・ソース間に流す電流の供給源として作用させるためである。
【0037】
なお、Csリセット期間と同様に、この準備期間における開始直後および終了時におけるVa,Vbを示すと、以下のように表すことができる。
【0038】
・準備期間の開始直後
Va=VDD+VdH
Vb=-VE
…(3)
・準備期間の終了時
Va=VDD+VdH
Vb=GND
…(4)
【0039】
(Vth検出期間)
つぎに、Vth検出期間の動作について図5および図8を参照して説明する。Vth検出期間では、第1電源線11がゼロ電位(GND)、走査線13が高電位(VgH)とされる。一方で、画像信号線14が高電位(VdH)に、第2電源線12がゼロ電位(GND)に維持される。これにより、図8に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンとなり、駆動トランジスタTdのゲートとドレインとが接続される。
【0040】
また、容量Csおよび素子容量Coledに蓄積されていた電荷が放電され、容量Cs→閾値電圧検出用トランジスタTs→駆動トランジスタTd→第2電源線12および素子容量Coled→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れる。そして、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthに達すると、駆動トランジスタTdがオフとされるため、結果的に、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthが検出される。
【0041】
また、Vth検出期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0042】
・Vth検出期間の開始直後
Va=VDD+VdH
Vb=GND
…(5)
・Vth検出期間の終了時
Va=Vb=Vth
…(6)
【0043】
(書き込み期間)
さらに、書き込み期間の動作について図5および図9を参照して説明する。書き込み期間では、画像信号電位(−Vdata)を容量Csに反映させることにより、駆動トランジスタTdのゲート電位を所望電位に変化させることが行われる。より詳細には、第1電源線11がゼロ電位(GND)に、第2電源線12がゼロ電位(GND)にそれぞれ維持される。また、画像信号線14は、Vth検出期間時の印加電位(VdH)から画像信号電位(Vdata)を差し引いた分の電位(VdH−Vdata)とされ、走査線13は、書き込み期間内の所定期間において、高電位(VgH)とされる。
【0044】
これにより、図9に示したように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオン、素子容量Coledに蓄積された電荷が放電され、素子容量Coled→閾値電圧検出用トランジスタTs→容量Csという経路で電流が流れる。すなわち、素子容量Coledに蓄積されていた電荷が容量Csに移動する。この結果、容量Csには、画像信号電位(Vdata)に基づいて決定される所定の電荷が蓄積される。
【0045】
また、書き込み期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0046】
・書き込み期間の開始直後
Va=Vth-Vdata
Vb=Vth
…(7)
・書き込み期間の終了時
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(8)
【0047】
なお、書き込み期間では、容量Csと素子容量Coledとが直列に接続されるので、容量Csの一端(駆動トランジスタTdのゲートに接続される端)の電位(すなわちA点)の低下量は、画像信号線14の電位低下量Vdataとはならず、上式のように容量Csと素子容量Coledとの容量比の影響を受ける。
【0048】
(Coledリセット期間)
Coledリセット期間の動作については、図5および図10を参照して説明する。Coledリセット期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12もマイナス電位(−VE)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)に維持される。このとき、図10に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフ、駆動トランジスタTdがオンとされ、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、素子容量Coledに残存する電荷が放電される。なお、このColedリセット期間に素子容量Coledの電荷を放電する理由は、素子容量Coledの残存電荷による発光への影響を回避するためである。
【0049】
また、Coledリセット期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0050】
・Coledリセット期間の開始直後
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(9)
・Coledリセット期間の終了時
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=-VE
…(10)
【0051】
なお、Coledリセット期間では、A点とB点とが電気的に非接続の状態で第1電源線11の電位がVdataだけ上昇するので、VaのみがVdata上昇し、Vbは駆動トランジスタTdの導通により、第2電源線12と同電位になる。
【0052】
(発光期間)
最後に、発光期間の動作について図5および図11を参照して説明する。発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)に維持される。これにより、図11に示したように、駆動トランジスタTdのオン、閾値電圧検出用トランジスタTsのオフが継続されるとともに、有機発光素子OLEDに順バイアスの電圧が印加されるので、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、有機発光素子OLEDが発光する。
【0053】
また、発光期間におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
・発光期間の開始直後および終了時
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=VDD-Voled
…(11)
【0054】
図4に示した画素回路の一般的な動作は、上述のとおりである。つぎに、本発明の実施の形態1にかかる制御手法について説明する。ここで、図12は、本発明の実施の形態1にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0055】
図12において、図5に示したシーケンスとの相違点は、書き込み期間とColedリセット期間との間に温度補償期間を設けることにある。書込み期間後に温度補償期間を設ける場合は、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも高いと、有機EL素子の発光輝度を下げるために画像信号線14の電位を下げる必要がある。このため、ΔVの値は正の値をとり、環境温度と基準温度との差が大きくなるにつれてΔVの値が大きくなる。
【0056】
一方、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも低い場合は、有機EL素子の発光輝度を上げるために画像信号線14の電位を上げる必要がある。このため、ΔVの値は負の値をとり、環境温度と基準温度との差が大きくなるにつれてΔVの値が小さくなる(ΔVの絶対値は大きくなる)。本実施形態においては、環境温度が基準温度よりも高い場合を想定し、この温度補償期間では、図12に示すように、有機EL素子の発光輝度を下げるために画像信号線14の電位をΔV(ΔV>0)だけ降下する制御を行っている。なお、この温度補償期間の動作によって、発光輝度を低下させる補償が可能となる。
【0057】
つぎに、実施の形態1の制御シーケンスに基づく動作について説明する。なお、Csリセット期間〜書き込み期間に至るまでの動作は、上述の内容と同一であり、その説明を省略する。
【0058】
(温度補償期間)
まず、温度補償期間に移行する直前の状態は、図9に示した書き込み期間終了時の状態に一致する。なお、このときのA点の電位(Va)およびB点の電位(Vb)は、以下に示すように上記(8)式のとおりである。
【0059】
・書き込み期間終了時の電位
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(8)(再掲)
【0060】
一方、温度補償期間では、図12に示すように、画像信号線14にVdH−ΔVの電位が印加される。ΔVが補正信号電位に対応する。一方、走査線の電位はVgLであり、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフの状態が継続される。したがって、温度補償期間の開始直後におけるA点の電位(Va1)およびB点の電位(Vb1)は、次式で表される。
【0061】
・温度補償期間開始直後の電位
Va1=Va-ΔV= Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(12)
なお、これらの電位は温度補償期間終了時にも維持される。すなわち、上記(12)式と同一式で表される。
・温度補償期間終了時の電位
Va1=Va-ΔV= Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(13)
【0062】
なお、ΔVの値は、温度センサ8によって測定される環境温度によって可変する。かかるΔVの値は、予め記憶部6に複数記憶されており、温度センサ8によって測定された環境温度と記憶部6に記憶された温度/輝度データに基づいて適切なΔVの値が駆動IC5によって選択される。そして選択されたΔVが所定のタイミングで画像信号線14に供給される。この補正信号は、有機EL素子の階調には依存しない値を採用するため、補正信号を決定するために必要なデータが複雑化することを良好に防止している。
【0063】
(Coledリセット期間)
Coledリセット期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12もマイナス電位(−VE)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH−ΔV)にそれぞれ維持される。したがって、Coledリセット期間の開始直後および終了時におけるA点の電位(Va1)およびB点の電位(Vb1)は、次式で表される。
【0064】
・Coledリセット期間の開始直後
Va1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(14)
・Coledリセット期間の終了時
Va1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=-VE
…(15)
【0065】
(発光期間)
発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH−ΔV)にそれぞれ維持される。したがって、発光期間におけるA点の電位(Va1)およびB点の電位(Vb1)は、次式で表される。
【0066】
・発光期間の開始直後および終了時
Va1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=VDD-Voled
…(16)
【0067】
ここで、図5に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点(駆動トランジスタTdのゲート)の電位(上記(11)式参照)と、図12に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点の電位(上記(16)式参照)とを比較する。まず、(16)式で示したVa1と(11)式で示したVaとの偏差δV1を算出すると、次式のようになる。
【0068】
δV1=Va1-Va
=[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV]
-[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata]
=-ΔV
…(17)
【0069】
このδV1が示す意味は、つぎのように説明することができる。すなわち、図12に示すシーケンスでは、書き込み期間とColedリセット期間との間に画像信号線14の電位をΔV(ΔV>0)だけ降下させる温度補償期間を設けるとともに、当該電位を発光期間に至るまで維持するように制御する。その結果、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を降下させることができ、発光期間における発光輝度を低下させることができる。なお、このシーケンスは、上記の説明から明らかなように、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、各階調毎に補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。
【0070】
ところで、図12のシーケンスおよび図10の画素回路からも理解されるように、温度補償期間からColedリセット期間にかけて走査線13は低電位(VgL)が維持されているので、閾値電圧検出用トランジスタTsはオフを継続する。このため、A点の電位を決定する容量Csの電荷の逃げ場がないので、Coledリセット期間における画像信号線14の電位が(VdH−ΔV)である必要はない。すなわち、Coledリセット期間における画像信号線14の電位は任意である。
【0071】
なお、温度補償期間における画像信号線14の電位低下量ΔVが比較的大きい場合であり、かつ、温度補償期間における印加電位(VdH−ΔV)をColedリセット期間において維持した場合に、素子容量Coledに蓄積された電荷の放電が不十分になることが懸念される。このような場合には、図5に示す従来シーケンスのように、Coledリセット期間において、画像信号線14の電位を、例えばVdHに戻す一方で、発光期間において、再度、画像信号線14の電位をΔVだけ降下させるような制御を行うことが好ましい。
【0072】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2にかかる制御手法について説明する。図13は、本発明の実施の形態2にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0073】
図13に示すシーケンスは、書き込み期間とColedリセット期間との間に画像信号線14の電位を|ΔV|(ΔV<0)だけ上昇させる温度補償期間を設けるとともに、当該電位を発光期間に至るまで維持するように制御する点に特徴がある。なお、その他については、図12に示す実施の形態1にかかるシーケンスと同一または同等であり、その詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施の形態においては、環境温度が基準温度よりも低い。それ故、有機EL素子の発光輝度を上昇させるべく、温度補償期間において、画像信号線14の電位をΔVだけ上昇させる制御を行っている。すなわち、実施形態2におけるΔVの値は負の値をとっている。その結果、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を上昇させることができ、発光期間における発光輝度を増加することができる。また、このシーケンスは、実施の形態1の場合と同様に、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、画像信号電位の補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。なお、Coledリセット期間における画像信号線14の電位が任意である点については、実施の形態1と同一である。
【0075】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3にかかる制御手法について説明する。図14は、本発明の実施の形態3にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0076】
図14において、図12に示した実施の形態1にかかるシーケンスとの相違点は、温度補償期間を書み込み期間前に設けているところにある。具体的には、温度補償期間をVth検出期間と書き込み期間との間に設けている。このように書込み期間前に温度補償期間を設ける場合、実施形態1,2とは異なり、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも高いと、有機EL素子の発光輝度を下げるために画像信号線14の電位を上昇させる。一方、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも低いと、有機EL素子の発光輝度を上げるために画像信号線14の電位を下降させる。本実施形態においては、環境温度が基準温度よりも低い場合を想定し、この温度補償期間で、図14に示すように、有機EL素子の発光輝度を上げるために画像信号線14の電位をΔV(ΔV>0)だけ降下する制御を行っている。なお、この温度補償期間の動作によって、発光輝度を増加させる補償が可能となる。
【0077】
つぎに、実施の形態3の制御シーケンスに基づく動作について説明する。なお、Csリセット期間〜Vth検出期間に至るまでの動作は、従来シーケンスと同一であり、その説明を省略する。
【0078】
(温度補償期間)
まず、温度補償期間終了時、すなわちVth検出期間終了時の状態は、図8に示したVth検出期間の終了時の状態に一致する。したがって、温度補償期間終了時の電位はVth検出期間終了時の電位と等しくなる。このときのA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、以下に示すように上記(6)式のとおりである。
【0079】
・温度補償期間終了時の電位(Vth検出期間終了時の電位)
Va2=Vb2=Vth
…(18)
【0080】
一方、温度補償期間では、図14に示すように、画像信号線14にVdH−ΔV(ΔVは補正信号)の電位が印加される。一方、走査線の電位はVgHであり、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンの状態が継続される。温度補償期間を開始した時には既にVth検出が開始されているが、温度補償期間の開始直後におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)としたときに、Va2とVb2がVth+ΔVよりも大きな電位になっていないと、補正信号電位が画像信号線14に印加されたときに、Vgsの値がVthよりも小さい値となり、Vthを正しく検出できなくなってしまうことから、Va2,Vb2は、次式の条件を満足している必要がある。
【0081】
・温度補償期間開始直後の電位
Va2=Vb2≧Vth+ΔV
…(19)
【0082】
(書き込み期間)
書き込み期間では、第1電源線11のゼロ電位(GND)と、第2電源線12のゼロ電位(GND)とが維持される。一方、画像信号線14は、Vth検出期間時の印加電位(VdH)から画像信号電位(Vdata)を差し引いた分の電位(VdH−Vdata)とされ、走査線13は、書き込み期間内の所定期間において、高電位(VgH)とされる。
【0083】
その結果、書き込み期間の開始直後および終了時におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、次式で表される。
【0084】
・書き込み期間の開始直後の電位
Va2=Vth-(Vdata-ΔV)=Vth-Vdata+ΔV
Vb2=Vth
…(20)
・書き込み期間の終了時
Va2=Vb2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
…(21)
【0085】
なお、書き込み期間の開始時において、B点とA点との間の電位差(Vb2−Va2)は、Vth−(Vth−Vdata+ΔV)=Vdata−ΔVであり、この電位差が書き込み時に印加される点に注意が必要である。
【0086】
(Coledリセット期間)
Coledリセット期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12もマイナス電位(−VE)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)にそれぞれ維持される。したがって、Coledリセット期間の開始直後および終了時におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、次式で表される。
【0087】
・Coledリセット期間の開始直後
Va2=Vb2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
…(22)
・Coledリセット期間の終了時
Va2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
Vb2=-VE
…(23)
【0088】
(発光期間)
発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH−ΔV)にそれぞれ維持される。したがって、発光期間におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、次式で表される。
【0089】
・発光期間の開始直後および終了時
Va2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
Vb2=VDD-Voled
…(24)
【0090】
ここで、図5に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点(駆動トランジスタTdのゲート)の電位(上記(11)式参照)と、図14に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点の電位(上記(24)式参照)とを比較する。まず、(24)式で示したVa2と(11)式で示したVaとの偏差δV2を算出すると、次式のようになる。
【0091】
δV2=Va2-Va
=[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV]
-[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata]
=Cs/(Coled+Cs)×ΔV
…(25)
【0092】
このδV2が示す意味は、つぎのように説明することができる。すなわち、図14に示すシーケンスでは、Vth検出期間と書き込み期間との間に画像信号線14の電位を通常の電位(VdH)から−ΔVだけ降下させる温度補償期間を設ける。その結果、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を、(25)式で示される電位量だけ実質的に上昇させることができ、発光期間における発光輝度を増大することができる。なお、この補正信号は、上記の説明から明らかなように、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、各階調毎の補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。
【0093】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4にかかる制御手法について説明する。図15は、本発明の実施の形態4にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0094】
本実施形態においては、環境温度が基準温度よりも高い場合を想定し、図15に示すように、Vth検出期間と書き込み期間との間に画像信号線14の電位を|ΔV|(ΔV<0)だけ上昇させる温度補償期間を設ける点に特徴がある。なお、その他については、図14に示す実施の形態3にかかるシーケンスと同一または同等であり、その詳細な説明を省略する。
【0095】
上述のように、本実施の形態にかかるシーケンスでは、温度補償期間において、画像信号線14の電位を|ΔV|だけ上昇させる制御を行っているので、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を実質的に降下させることができ、発光期間における発光輝度を低下することができる。また、このシーケンスは、実施の形態3の場合と同様に、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、画像信号電位の補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。
【0096】
ところで、上記の説明では、図12〜図15に示すような制御シーケンスを図4に示す構成の画素回路に適用する場合について説明してきたが、本発明は、図4に示す画素回路以外でも当然に適用が可能である。
【0097】
例えば、図4に示す画素回路は閾値電圧を検出する機能を有する画素回路として構成されているが、閾値電圧を検出する機能を有さない場合についても、本発明を適用することができる。
【0098】
また、図4に示す画素回路は駆動トランジスタを含むトランジスタの数が2つの場合を一例として説明したが、トランジスタの数が3つの場合もしくは4つの場合、またはそれ以上の場合についても、本発明を適用することができる。
【0099】
肝要な点は、補正信号を画素回路に供給することにより、駆動トランジスタTdにおけるゲート電位を可変することができる回路構成となっていればよい。
【0100】
つぎに、実際の測定結果について説明する。
【0101】
図16は、書き込み期間後に温度補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。図17は、書き込み期間前に温度補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。図16,17において、縦軸は発光素子の白色発光輝度、横軸は温度補償期間に画像信号線に供給される補正信号(ΔV)の電位を示す。発光素子の白色発光輝度は、赤色発光素子(R)、緑色発光素子(G)、青色発光素子(B)の光によって構成された白色光の輝度を示す。なお、縦軸の値は、ΔV=0Vである場合の発光素子の白色発光輝度を1としたときの輝度値として示している。また、図16において、ΔV=0Vの時の発光素子の白色発光輝度は110cd/m2、図17においては、ΔV=0Vの時の発光素子の白色発光輝度は250cd/m2である。また、図16および図17の双方の場合において、VdHの値はRGB共通で10Vであり、Vdataの値はRで10V,Gで7.5V、Bで8.9Vである。図16、図17に示すように、ΔVの電位を上下することにより、発光輝度をほぼリニアに可変することが理解できる。
【0102】
つぎに、上述の実施の形態1〜4にかかる駆動方法について、書き込み時の画像信号線の電位を変化させる駆動方法との間でその優位性を比較する。ここで、図18−1は、環境温度が25℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図であり、図18−2は、環境温度が40℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図である。図18−1、図18−2は縦軸が書込み期間における画像信号線の電位、横軸が階調を示す。
【0103】
上記のような環境温度が25℃の場合と40℃の場合とを比較して見ても明らかように、階調に対する書き込み電圧は環境温度によってかなり変化する。したがって、画像表示装置の輝度をある程度以上の精度で制御するためには、環境温度の測定刻みを、細かく(例えば1℃刻み等)行わなければならない。この場合、例えば図18−1に示す1枚の補正カーブであっても、階調ごとの書き込み電位の値を保持しなければならない上、さらに1℃刻みごとのデータを保持することになると、これらの補正データだけでも膨大な量のデータとなる。
【0104】
これに対して、実施の形態1〜4にかかる駆動方法では、画像信号線の電位を上昇または降下させる変化量は、全ての階調で共通となるため、保持すべきデータ量が削減できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、画素回路における発光輝度の温度特性改善に大きく寄与することができる発明として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】携帯情報端末などの表示部に適用される画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】有機EL素子の発光輝度にかかる温度特性の一例を示す図である。
【図3−1】本発明にかかる画像表示装置の駆動方法の概念(測定温度<基準温度)を示す図である。
【図3−2】本発明にかかる画像表示装置の駆動方法の概念(測定温度>基準温度)を示す図である。
【図4】図1に示した画像表示装置の発光部に設けられる画素回路(1画素)の構成を示す図である。
【図5】図4に示した画素回路の一般的な動作を説明するためのシーケンス図である。
【図6】図5に示すシーケンスのCsリセット期間における動作を説明する図である。
【図7】図5に示すシーケンスの準備期間における動作を説明する図である。
【図8】図5に示すシーケンスのVth検出期間における動作を説明する図である。
【図9】図5に示すシーケンスの書き込み期間における動作を説明する図である。
【図10】図5に示すシーケンスのColedリセット期間における動作を説明する図である。
【図11】図5に示すシーケンスの発光期間における動作を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態1にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図14】本発明の実施の形態3にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図15】本発明の実施の形態4にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図16】書き込み期間後に温度補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。
【図17】書き込み期間前に温度保補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。
【図18−1】環境温度が25℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図である。
【図18−2】環境温度が40℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
1 発光部
2 素子基板
3 封止基板
4 封止材
5 駆動IC
6 記憶部
8 温度センサ
11 第1電源線
12 第2電源線
13 走査線
14 画像信号線
OLED 有機発光素子
Coled 素子容量
Cs 容量
Td 駆動トランジスタ
Ts 閾値電圧検出用トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する電流発光型の有機EL(Electroluminescence)素子を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
この種の画像表示装置では、例えばアモルファスシリコンや多結晶シリコン等で形成された薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)や有機EL素子の一つである有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:以下「OLED」という)などが各画素を構成しており、各画素に適切な電流値が設定されることにより、各画素の輝度が制御される。
【0004】
例えば発光素子と、TFTなどの駆動トランジスタとが直列に配置された画素を複数持つアクティブ・マトリクス型の画像表示装置では、各画素に設けられた駆動トランジスタの閾値電圧のばらつきにより、発光素子に流れる電流値が変化して輝度むらが発生する。この現象を改善するための手法として、例えば駆動トランジスタの閾値電圧を予め検出するとともに、検出した閾値電圧に基づいて発光素子に流れる電流を制御する方式(例えば非特許文献1)や、当該方式に基づく具体的な回路構成(例えば非特許文献2)などが開示されている。
【0005】
【非特許文献1】R.M.A. Dawson,et al.(1998).Design of an Improved Pixel for a Polysilicon Active−Matrix Organic LED Display. SID98 Digest, pp.11−14.
【非特許文献2】S.Ono et al.(2003).Pixel Circuit for a−Si AM−OLED.Proceedings of IDW ’03,pp.255−258.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献などに開示された手法では、画像表示装置を使用する環境の温度変化や、駆動部の発熱などによる温度変化が生じた場合には、その温度変化に起因して表示画像の輝度が変動してしまうという問題点があった。
【0007】
一方、このような温度変化をパラメータにして、階調に対する書き込み電圧の関係を表すデータ(ガンマデータ)を予め保持するとともに、温度変化に起因する表示画像の輝度変動を当該ガンマデータに基づいて調整することも考えられる。
【0008】
しかしながら、このような手法では、上記ガンマデータを測定温度単位(例えば1℃刻み)で持つ必要があり、保持すべきデータが膨大になり、輝度調整が複雑化するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、温度変化に起因して生ずる表示画像の輝度変動の改善を簡易に実現することができる画像表示装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、画像信号を前記容量素子に供給した後に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、画像信号を前記容量素子に供給する前に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度に応じて値が可変することを特徴とする。
【0013】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させることを特徴とする。
【0014】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させることを特徴とする。
【0015】
また、つぎの発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、上記の発明において、前記補正信号の値は、前記画像信号の値に依存しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる画像表示装置の駆動方法によれば、画像信号とは別に温度変化に起因して生ずる表示画像の輝度変動に応じた補正信号を画素回路に供給することにより、発光素子の輝度調整を行なっていることから、かかる輝度調整を全階調において共通的に改善することができる。その結果、温度特性に起因する発光輝度の変動を簡易に改善することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の画像表示装置の駆動方法にかかる好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、携帯情報端末などの表示部に適用される画像表示装置の概略構成を示す図であり、この画像表示装置の主要部の概略配置を図示している。
【0019】
図1に示す画像表示装置は、マトリックス状に配置される複数の画素から成る発光部1(表示部)を有し、ガラス等を組成とする素子基板2と、ガラス等を組成とし、発光部1の表面を覆うように素子基板2に対向して設けられた封止基板3と、素子基板2と封止基板3との間に配置され、発光部1を取り囲み、素子基板2と封止基板3とを接合(接着)するためのシール材である封止材4と、を備えて構成される。
【0020】
素子基板2は、その上面の発光部1を構成する各画素内に有機EL素子(通常、RGB3色の有機EL素子が存在する)を有している。さらに、素子基板2の上面のうち、発光部1以外の領域には、有機EL素子を駆動するための駆動IC5と、発光部1を構成する有機EL素子の温度−輝度特性にかかるデータ(以下「温度/輝度特性データ」と表記)を記憶保持する、例えばEEPROMである記憶部6と、が備えられている。
【0021】
また、素子基板2の周辺部(素子基板2上でも可)には、サーミスタ等の温度センサ8が設けられる。温度センサ8は、現在の使用環境における温度(環境温度)を検知し、当該環境温度を駆動IC5に伝達する。駆動IC5は、温度センサ8から伝達された環境温度と記憶部6に記憶保持された温度/輝度特性データとに基づいて補正信号が決定され、該補正信号を画素回路に供給することにより、有機EL素子の発光輝度を調整する。
【0022】
図2は、有機EL素子の発光輝度にかかる温度特性の一例を示す図であり、環境温度(横軸)の変化に対する有機EL素子の発光輝度(縦軸)の変化を白表示に対してプロットしたものである。同図に示すように、1℃あたり2〜3cd/m2程度の輝度変化が生じていることが理解できる。
【0023】
図3−1、図3−2は、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法の概念を図2に対応するグラフ上に示した図である。これらの各図の縦軸は有機EL素子の発光輝度、横軸は環境温度である。図3−1、図3−2において、太線で表す基準輝度K1は、目標とする発光輝度レベルを示している。本例では、この基準輝度K1を、常温(25℃)における有機EL素子の輝度レベル(約140cd/m2)に設定している。
【0024】
ここで、図3−1は、測定温度が基準温度より低いときの制御の概念を示している。同図に示すように、温度センサ8が測定した測定温度が基準温度より低いときには、有機EL素子の発光輝度を増加させる制御を行なう。また、発光輝度の増加量は、測定温度と基準温度との差が小さくなるに従って小さくするように制御する。
【0025】
また、図3−2は、測定温度が基準温度より高いときの制御の概念を示している。同図に示すように、温度センサ8が測定した測定温度が基準温度より高いときには、有機EL素子の発光輝度を減少させる制御を行なう。また、発光輝度の減少量は、測定温度と基準温度との差が小さくなるに従って小さくするように制御する。
【0026】
図4は、例えば図1に示した画像表示装置の発光部に設けられる画素回路(1画素)の構成を示す図である。同図に示す画素回路は、マトリックス状に配列されており、各画素回路は、有機EL素子の一つである有機発光素子OLED、駆動トランジスタTd、閾値電圧検出用トランジスタTsおよび閾値電圧(Vth)や画像信号電位を保持する容量Csを備えるように構成されている。
【0027】
図4において、駆動トランジスタTdは、ゲート電極・ソース電極間に与えられる電位差に応じて有機発光素子OLEDに流れる電流量を制御するためのドライバ素子である。また、閾値電圧検出用トランジスタTsは、オン状態となったときに、駆動トランジスタTdのゲート電極とドレイン電極とを電気的に接続することにより、駆動トランジスタTdのゲート電極からドレイン電極に向かって電流を流し、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに近づけ、結果的に、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を閾値電圧Vthに近づけるもしくは閾値電圧Vthとする機能(以下、「Vth検出機能」という)を有している。
【0028】
有機発光素子OLEDは、両端に閾値電圧以上の電位差(アノード−カソード間電圧)が生じることにより電流が流れ、発光する特性を有する素子である。具体的な構造や機能として、有機発光素子OLEDは、Al、Cu、ITO(Indium Tin Oxide)等によって形成されたアノード層およびカソード層と、アノード層とカソード層との間にフタルシアニン、トリスアルミニウム錯体、ベンゾキノリノラト、ベリリウム錯体等の有機系の材料によって形成された発光層とを少なくとも備えた構造を有し、発光層に注入された正孔と電子とが発光再結合することによって光を生じる機能を有する。
【0029】
駆動トランジスタTdおよび閾値電圧検出用トランジスタTsは、例えば、薄膜トランジスタである。なお、以下に参照される各図面において、各薄膜トランジスタのチャネル(N型またはP型)については、N型、P型のいずれのタイプを用いてもよいが、本実施形態ではN型を用いるものとする。
【0030】
第1電源線11および第2電源線12は、有機EL素子OLEDや駆動トランジスタTdに電圧を供給するためのものであり、供給電圧は可変可能となっている。走査線13は、閾値電圧検出用トランジスタTsを制御するための信号を供給する。画像信号線14は、有機発光素子OLEDの発光輝度に対応する画像信号を容量Csに供給する。
【0031】
つぎに、図4に示す画素回路の動作について、図5〜図11を参照して説明する。ここで、図5は、図4に示した画素回路の動作を説明するためのシーケンス図であり、図1に示した駆動IC5の制御下で行われる。また、図6〜図11は、図5において区分された6つの期間であるCsリセット期間(図6)、準備期間(図7)、Vth検出期間(図8)、書き込み期間(図9)、Coledリセット期間(図10)および発光期間(図11)の各区間の動作を説明するための図である。なお、図6〜図11において、有機発光素子OLEDに並列に接続されるColedは、有機発光素子OLEDが固有に有している素子容量である。
【0032】
(Csリセット期間)
Csリセット期間の動作については、図5および図6を参照して説明する。Csリセット期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12が高電位(VDD)、走査線13が高電位(VgH)、画像信号線14がゼロ電位(GND)とされる。これにより、図5に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオン、駆動トランジスタTdがオフとされ、第1電源線11→有機発光素子OLED→閾値電圧検出用トランジスタTs→容量Csという経路で電流が流れ、容量Csが充電されることにより、容量Csの電荷がリセットされる。なお、このCsリセット期間で容量Csを充電する理由は、容量Csに書き込まれている1フレーム前の画像信号電位をリセットするためである。
【0033】
ここで、駆動トランジスタTdのゲート(A点)および駆動トランジスタTdのドレイン(B点)の各電位をVa,Vbとするとき、このCsリセット期間開始直後およびCsリセット期間終了時におけるVa,Vbは、つぎのように表すことができる。なお、有機発光素子OLEDの両端の電圧をVoledとする。
【0034】
・Csリセット期間の開始直後
Va=VDD+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=VDD-Voled
…(1)
・Csリセット期間の終了時
Va=Vb=VDD
…(2)
【0035】
なお、実際のトランジスタには、一般的にゲート・ソース間およびゲート・ドレイン間に寄生容量が存在し、駆動トランジスタTdのゲート(A点)、ドレイン(B点)の各電位は、これらの寄生容量の影響を若干受ける。しかしながら、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法を説明する上で、これらの寄生容量の影響は無視することができる。そこで、上記式およびこれ以降に示す式においては、トランジスタに存在する寄生容量を含まない式を提示する。
【0036】
(準備期間)
準備期間の動作については、図5および図7を参照して説明する。準備期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、走査線13が低電位(VgL)、画像信号線14が高電位(VgH)とされる。これにより、図7に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフ、駆動トランジスタTdがオンとされ、第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ、素子容量Coledに電荷が蓄積される。なお、この準備期間で素子容量Coledに電荷を蓄積する理由は、後述するVth検出期間に駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧を閾値電圧に近づける際に、素子容量Coledを駆動トランジスタTdのドレイン・ソース間に流す電流の供給源として作用させるためである。
【0037】
なお、Csリセット期間と同様に、この準備期間における開始直後および終了時におけるVa,Vbを示すと、以下のように表すことができる。
【0038】
・準備期間の開始直後
Va=VDD+VdH
Vb=-VE
…(3)
・準備期間の終了時
Va=VDD+VdH
Vb=GND
…(4)
【0039】
(Vth検出期間)
つぎに、Vth検出期間の動作について図5および図8を参照して説明する。Vth検出期間では、第1電源線11がゼロ電位(GND)、走査線13が高電位(VgH)とされる。一方で、画像信号線14が高電位(VdH)に、第2電源線12がゼロ電位(GND)に維持される。これにより、図8に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンとなり、駆動トランジスタTdのゲートとドレインとが接続される。
【0040】
また、容量Csおよび素子容量Coledに蓄積されていた電荷が放電され、容量Cs→閾値電圧検出用トランジスタTs→駆動トランジスタTd→第2電源線12および素子容量Coled→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れる。そして、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthに達すると、駆動トランジスタTdがオフとされるため、結果的に、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthが検出される。
【0041】
また、Vth検出期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0042】
・Vth検出期間の開始直後
Va=VDD+VdH
Vb=GND
…(5)
・Vth検出期間の終了時
Va=Vb=Vth
…(6)
【0043】
(書き込み期間)
さらに、書き込み期間の動作について図5および図9を参照して説明する。書き込み期間では、画像信号電位(−Vdata)を容量Csに反映させることにより、駆動トランジスタTdのゲート電位を所望電位に変化させることが行われる。より詳細には、第1電源線11がゼロ電位(GND)に、第2電源線12がゼロ電位(GND)にそれぞれ維持される。また、画像信号線14は、Vth検出期間時の印加電位(VdH)から画像信号電位(Vdata)を差し引いた分の電位(VdH−Vdata)とされ、走査線13は、書き込み期間内の所定期間において、高電位(VgH)とされる。
【0044】
これにより、図9に示したように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオン、素子容量Coledに蓄積された電荷が放電され、素子容量Coled→閾値電圧検出用トランジスタTs→容量Csという経路で電流が流れる。すなわち、素子容量Coledに蓄積されていた電荷が容量Csに移動する。この結果、容量Csには、画像信号電位(Vdata)に基づいて決定される所定の電荷が蓄積される。
【0045】
また、書き込み期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0046】
・書き込み期間の開始直後
Va=Vth-Vdata
Vb=Vth
…(7)
・書き込み期間の終了時
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(8)
【0047】
なお、書き込み期間では、容量Csと素子容量Coledとが直列に接続されるので、容量Csの一端(駆動トランジスタTdのゲートに接続される端)の電位(すなわちA点)の低下量は、画像信号線14の電位低下量Vdataとはならず、上式のように容量Csと素子容量Coledとの容量比の影響を受ける。
【0048】
(Coledリセット期間)
Coledリセット期間の動作については、図5および図10を参照して説明する。Coledリセット期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12もマイナス電位(−VE)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)に維持される。このとき、図10に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフ、駆動トランジスタTdがオンとされ、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、素子容量Coledに残存する電荷が放電される。なお、このColedリセット期間に素子容量Coledの電荷を放電する理由は、素子容量Coledの残存電荷による発光への影響を回避するためである。
【0049】
また、Coledリセット期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0050】
・Coledリセット期間の開始直後
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(9)
・Coledリセット期間の終了時
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=-VE
…(10)
【0051】
なお、Coledリセット期間では、A点とB点とが電気的に非接続の状態で第1電源線11の電位がVdataだけ上昇するので、VaのみがVdata上昇し、Vbは駆動トランジスタTdの導通により、第2電源線12と同電位になる。
【0052】
(発光期間)
最後に、発光期間の動作について図5および図11を参照して説明する。発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)に維持される。これにより、図11に示したように、駆動トランジスタTdのオン、閾値電圧検出用トランジスタTsのオフが継続されるとともに、有機発光素子OLEDに順バイアスの電圧が印加されるので、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、有機発光素子OLEDが発光する。
【0053】
また、発光期間におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
・発光期間の開始直後および終了時
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=VDD-Voled
…(11)
【0054】
図4に示した画素回路の一般的な動作は、上述のとおりである。つぎに、本発明の実施の形態1にかかる制御手法について説明する。ここで、図12は、本発明の実施の形態1にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0055】
図12において、図5に示したシーケンスとの相違点は、書き込み期間とColedリセット期間との間に温度補償期間を設けることにある。書込み期間後に温度補償期間を設ける場合は、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも高いと、有機EL素子の発光輝度を下げるために画像信号線14の電位を下げる必要がある。このため、ΔVの値は正の値をとり、環境温度と基準温度との差が大きくなるにつれてΔVの値が大きくなる。
【0056】
一方、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも低い場合は、有機EL素子の発光輝度を上げるために画像信号線14の電位を上げる必要がある。このため、ΔVの値は負の値をとり、環境温度と基準温度との差が大きくなるにつれてΔVの値が小さくなる(ΔVの絶対値は大きくなる)。本実施形態においては、環境温度が基準温度よりも高い場合を想定し、この温度補償期間では、図12に示すように、有機EL素子の発光輝度を下げるために画像信号線14の電位をΔV(ΔV>0)だけ降下する制御を行っている。なお、この温度補償期間の動作によって、発光輝度を低下させる補償が可能となる。
【0057】
つぎに、実施の形態1の制御シーケンスに基づく動作について説明する。なお、Csリセット期間〜書き込み期間に至るまでの動作は、上述の内容と同一であり、その説明を省略する。
【0058】
(温度補償期間)
まず、温度補償期間に移行する直前の状態は、図9に示した書き込み期間終了時の状態に一致する。なお、このときのA点の電位(Va)およびB点の電位(Vb)は、以下に示すように上記(8)式のとおりである。
【0059】
・書き込み期間終了時の電位
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(8)(再掲)
【0060】
一方、温度補償期間では、図12に示すように、画像信号線14にVdH−ΔVの電位が印加される。ΔVが補正信号電位に対応する。一方、走査線の電位はVgLであり、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフの状態が継続される。したがって、温度補償期間の開始直後におけるA点の電位(Va1)およびB点の電位(Vb1)は、次式で表される。
【0061】
・温度補償期間開始直後の電位
Va1=Va-ΔV= Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(12)
なお、これらの電位は温度補償期間終了時にも維持される。すなわち、上記(12)式と同一式で表される。
・温度補償期間終了時の電位
Va1=Va-ΔV= Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(13)
【0062】
なお、ΔVの値は、温度センサ8によって測定される環境温度によって可変する。かかるΔVの値は、予め記憶部6に複数記憶されており、温度センサ8によって測定された環境温度と記憶部6に記憶された温度/輝度データに基づいて適切なΔVの値が駆動IC5によって選択される。そして選択されたΔVが所定のタイミングで画像信号線14に供給される。この補正信号は、有機EL素子の階調には依存しない値を採用するため、補正信号を決定するために必要なデータが複雑化することを良好に防止している。
【0063】
(Coledリセット期間)
Coledリセット期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12もマイナス電位(−VE)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH−ΔV)にそれぞれ維持される。したがって、Coledリセット期間の開始直後および終了時におけるA点の電位(Va1)およびB点の電位(Vb1)は、次式で表される。
【0064】
・Coledリセット期間の開始直後
Va1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(14)
・Coledリセット期間の終了時
Va1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=-VE
…(15)
【0065】
(発光期間)
発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH−ΔV)にそれぞれ維持される。したがって、発光期間におけるA点の電位(Va1)およびB点の電位(Vb1)は、次式で表される。
【0066】
・発光期間の開始直後および終了時
Va1=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV
Vb1=VDD-Voled
…(16)
【0067】
ここで、図5に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点(駆動トランジスタTdのゲート)の電位(上記(11)式参照)と、図12に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点の電位(上記(16)式参照)とを比較する。まず、(16)式で示したVa1と(11)式で示したVaとの偏差δV1を算出すると、次式のようになる。
【0068】
δV1=Va1-Va
=[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata-ΔV]
-[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata]
=-ΔV
…(17)
【0069】
このδV1が示す意味は、つぎのように説明することができる。すなわち、図12に示すシーケンスでは、書き込み期間とColedリセット期間との間に画像信号線14の電位をΔV(ΔV>0)だけ降下させる温度補償期間を設けるとともに、当該電位を発光期間に至るまで維持するように制御する。その結果、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を降下させることができ、発光期間における発光輝度を低下させることができる。なお、このシーケンスは、上記の説明から明らかなように、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、各階調毎に補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。
【0070】
ところで、図12のシーケンスおよび図10の画素回路からも理解されるように、温度補償期間からColedリセット期間にかけて走査線13は低電位(VgL)が維持されているので、閾値電圧検出用トランジスタTsはオフを継続する。このため、A点の電位を決定する容量Csの電荷の逃げ場がないので、Coledリセット期間における画像信号線14の電位が(VdH−ΔV)である必要はない。すなわち、Coledリセット期間における画像信号線14の電位は任意である。
【0071】
なお、温度補償期間における画像信号線14の電位低下量ΔVが比較的大きい場合であり、かつ、温度補償期間における印加電位(VdH−ΔV)をColedリセット期間において維持した場合に、素子容量Coledに蓄積された電荷の放電が不十分になることが懸念される。このような場合には、図5に示す従来シーケンスのように、Coledリセット期間において、画像信号線14の電位を、例えばVdHに戻す一方で、発光期間において、再度、画像信号線14の電位をΔVだけ降下させるような制御を行うことが好ましい。
【0072】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2にかかる制御手法について説明する。図13は、本発明の実施の形態2にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0073】
図13に示すシーケンスは、書き込み期間とColedリセット期間との間に画像信号線14の電位を|ΔV|(ΔV<0)だけ上昇させる温度補償期間を設けるとともに、当該電位を発光期間に至るまで維持するように制御する点に特徴がある。なお、その他については、図12に示す実施の形態1にかかるシーケンスと同一または同等であり、その詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施の形態においては、環境温度が基準温度よりも低い。それ故、有機EL素子の発光輝度を上昇させるべく、温度補償期間において、画像信号線14の電位をΔVだけ上昇させる制御を行っている。すなわち、実施形態2におけるΔVの値は負の値をとっている。その結果、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を上昇させることができ、発光期間における発光輝度を増加することができる。また、このシーケンスは、実施の形態1の場合と同様に、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、画像信号電位の補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。なお、Coledリセット期間における画像信号線14の電位が任意である点については、実施の形態1と同一である。
【0075】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3にかかる制御手法について説明する。図14は、本発明の実施の形態3にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0076】
図14において、図12に示した実施の形態1にかかるシーケンスとの相違点は、温度補償期間を書み込み期間前に設けているところにある。具体的には、温度補償期間をVth検出期間と書き込み期間との間に設けている。このように書込み期間前に温度補償期間を設ける場合、実施形態1,2とは異なり、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも高いと、有機EL素子の発光輝度を下げるために画像信号線14の電位を上昇させる。一方、環境温度が基準温度(例えば常温である25℃)よりも低いと、有機EL素子の発光輝度を上げるために画像信号線14の電位を下降させる。本実施形態においては、環境温度が基準温度よりも低い場合を想定し、この温度補償期間で、図14に示すように、有機EL素子の発光輝度を上げるために画像信号線14の電位をΔV(ΔV>0)だけ降下する制御を行っている。なお、この温度補償期間の動作によって、発光輝度を増加させる補償が可能となる。
【0077】
つぎに、実施の形態3の制御シーケンスに基づく動作について説明する。なお、Csリセット期間〜Vth検出期間に至るまでの動作は、従来シーケンスと同一であり、その説明を省略する。
【0078】
(温度補償期間)
まず、温度補償期間終了時、すなわちVth検出期間終了時の状態は、図8に示したVth検出期間の終了時の状態に一致する。したがって、温度補償期間終了時の電位はVth検出期間終了時の電位と等しくなる。このときのA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、以下に示すように上記(6)式のとおりである。
【0079】
・温度補償期間終了時の電位(Vth検出期間終了時の電位)
Va2=Vb2=Vth
…(18)
【0080】
一方、温度補償期間では、図14に示すように、画像信号線14にVdH−ΔV(ΔVは補正信号)の電位が印加される。一方、走査線の電位はVgHであり、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンの状態が継続される。温度補償期間を開始した時には既にVth検出が開始されているが、温度補償期間の開始直後におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)としたときに、Va2とVb2がVth+ΔVよりも大きな電位になっていないと、補正信号電位が画像信号線14に印加されたときに、Vgsの値がVthよりも小さい値となり、Vthを正しく検出できなくなってしまうことから、Va2,Vb2は、次式の条件を満足している必要がある。
【0081】
・温度補償期間開始直後の電位
Va2=Vb2≧Vth+ΔV
…(19)
【0082】
(書き込み期間)
書き込み期間では、第1電源線11のゼロ電位(GND)と、第2電源線12のゼロ電位(GND)とが維持される。一方、画像信号線14は、Vth検出期間時の印加電位(VdH)から画像信号電位(Vdata)を差し引いた分の電位(VdH−Vdata)とされ、走査線13は、書き込み期間内の所定期間において、高電位(VgH)とされる。
【0083】
その結果、書き込み期間の開始直後および終了時におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、次式で表される。
【0084】
・書き込み期間の開始直後の電位
Va2=Vth-(Vdata-ΔV)=Vth-Vdata+ΔV
Vb2=Vth
…(20)
・書き込み期間の終了時
Va2=Vb2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
…(21)
【0085】
なお、書き込み期間の開始時において、B点とA点との間の電位差(Vb2−Va2)は、Vth−(Vth−Vdata+ΔV)=Vdata−ΔVであり、この電位差が書き込み時に印加される点に注意が必要である。
【0086】
(Coledリセット期間)
Coledリセット期間では、第1電源線11がマイナス電位(−VE)、第2電源線12もマイナス電位(−VE)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)にそれぞれ維持される。したがって、Coledリセット期間の開始直後および終了時におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、次式で表される。
【0087】
・Coledリセット期間の開始直後
Va2=Vb2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
…(22)
・Coledリセット期間の終了時
Va2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
Vb2=-VE
…(23)
【0088】
(発光期間)
発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH−ΔV)にそれぞれ維持される。したがって、発光期間におけるA点の電位(Va2)およびB点の電位(Vb2)は、次式で表される。
【0089】
・発光期間の開始直後および終了時
Va2=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV
Vb2=VDD-Voled
…(24)
【0090】
ここで、図5に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点(駆動トランジスタTdのゲート)の電位(上記(11)式参照)と、図14に示すシーケンスに基づいて制御する場合の発光期間におけるA点の電位(上記(24)式参照)とを比較する。まず、(24)式で示したVa2と(11)式で示したVaとの偏差δV2を算出すると、次式のようになる。
【0091】
δV2=Va2-Va
=[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata+Cs/(Coled+Cs)×ΔV]
-[Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata]
=Cs/(Coled+Cs)×ΔV
…(25)
【0092】
このδV2が示す意味は、つぎのように説明することができる。すなわち、図14に示すシーケンスでは、Vth検出期間と書き込み期間との間に画像信号線14の電位を通常の電位(VdH)から−ΔVだけ降下させる温度補償期間を設ける。その結果、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を、(25)式で示される電位量だけ実質的に上昇させることができ、発光期間における発光輝度を増大することができる。なお、この補正信号は、上記の説明から明らかなように、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、各階調毎の補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。
【0093】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4にかかる制御手法について説明する。図15は、本発明の実施の形態4にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【0094】
本実施形態においては、環境温度が基準温度よりも高い場合を想定し、図15に示すように、Vth検出期間と書き込み期間との間に画像信号線14の電位を|ΔV|(ΔV<0)だけ上昇させる温度補償期間を設ける点に特徴がある。なお、その他については、図14に示す実施の形態3にかかるシーケンスと同一または同等であり、その詳細な説明を省略する。
【0095】
上述のように、本実施の形態にかかるシーケンスでは、温度補償期間において、画像信号線14の電位を|ΔV|だけ上昇させる制御を行っているので、発光期間において、駆動トランジスタTdのゲートに印加する電位を実質的に降下させることができ、発光期間における発光輝度を低下することができる。また、このシーケンスは、実施の形態3の場合と同様に、画像信号電位Vdataの値に左右されることがないので、画像信号電位の補正データを持つ必要がなく、発光輝度の調整を簡易に行うことができる。
【0096】
ところで、上記の説明では、図12〜図15に示すような制御シーケンスを図4に示す構成の画素回路に適用する場合について説明してきたが、本発明は、図4に示す画素回路以外でも当然に適用が可能である。
【0097】
例えば、図4に示す画素回路は閾値電圧を検出する機能を有する画素回路として構成されているが、閾値電圧を検出する機能を有さない場合についても、本発明を適用することができる。
【0098】
また、図4に示す画素回路は駆動トランジスタを含むトランジスタの数が2つの場合を一例として説明したが、トランジスタの数が3つの場合もしくは4つの場合、またはそれ以上の場合についても、本発明を適用することができる。
【0099】
肝要な点は、補正信号を画素回路に供給することにより、駆動トランジスタTdにおけるゲート電位を可変することができる回路構成となっていればよい。
【0100】
つぎに、実際の測定結果について説明する。
【0101】
図16は、書き込み期間後に温度補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。図17は、書き込み期間前に温度補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。図16,17において、縦軸は発光素子の白色発光輝度、横軸は温度補償期間に画像信号線に供給される補正信号(ΔV)の電位を示す。発光素子の白色発光輝度は、赤色発光素子(R)、緑色発光素子(G)、青色発光素子(B)の光によって構成された白色光の輝度を示す。なお、縦軸の値は、ΔV=0Vである場合の発光素子の白色発光輝度を1としたときの輝度値として示している。また、図16において、ΔV=0Vの時の発光素子の白色発光輝度は110cd/m2、図17においては、ΔV=0Vの時の発光素子の白色発光輝度は250cd/m2である。また、図16および図17の双方の場合において、VdHの値はRGB共通で10Vであり、Vdataの値はRで10V,Gで7.5V、Bで8.9Vである。図16、図17に示すように、ΔVの電位を上下することにより、発光輝度をほぼリニアに可変することが理解できる。
【0102】
つぎに、上述の実施の形態1〜4にかかる駆動方法について、書き込み時の画像信号線の電位を変化させる駆動方法との間でその優位性を比較する。ここで、図18−1は、環境温度が25℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図であり、図18−2は、環境温度が40℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図である。図18−1、図18−2は縦軸が書込み期間における画像信号線の電位、横軸が階調を示す。
【0103】
上記のような環境温度が25℃の場合と40℃の場合とを比較して見ても明らかように、階調に対する書き込み電圧は環境温度によってかなり変化する。したがって、画像表示装置の輝度をある程度以上の精度で制御するためには、環境温度の測定刻みを、細かく(例えば1℃刻み等)行わなければならない。この場合、例えば図18−1に示す1枚の補正カーブであっても、階調ごとの書き込み電位の値を保持しなければならない上、さらに1℃刻みごとのデータを保持することになると、これらの補正データだけでも膨大な量のデータとなる。
【0104】
これに対して、実施の形態1〜4にかかる駆動方法では、画像信号線の電位を上昇または降下させる変化量は、全ての階調で共通となるため、保持すべきデータ量が削減できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法は、画素回路における発光輝度の温度特性改善に大きく寄与することができる発明として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】携帯情報端末などの表示部に適用される画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】有機EL素子の発光輝度にかかる温度特性の一例を示す図である。
【図3−1】本発明にかかる画像表示装置の駆動方法の概念(測定温度<基準温度)を示す図である。
【図3−2】本発明にかかる画像表示装置の駆動方法の概念(測定温度>基準温度)を示す図である。
【図4】図1に示した画像表示装置の発光部に設けられる画素回路(1画素)の構成を示す図である。
【図5】図4に示した画素回路の一般的な動作を説明するためのシーケンス図である。
【図6】図5に示すシーケンスのCsリセット期間における動作を説明する図である。
【図7】図5に示すシーケンスの準備期間における動作を説明する図である。
【図8】図5に示すシーケンスのVth検出期間における動作を説明する図である。
【図9】図5に示すシーケンスの書き込み期間における動作を説明する図である。
【図10】図5に示すシーケンスのColedリセット期間における動作を説明する図である。
【図11】図5に示すシーケンスの発光期間における動作を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態1にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図14】本発明の実施の形態3にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図15】本発明の実施の形態4にかかる制御手法を図4に示す画素回路に適用した場合のシーケンス図である。
【図16】書き込み期間後に温度補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。
【図17】書き込み期間前に温度保補償期間を設けた場合の輝度変化の測定結果を示す図である。
【図18−1】環境温度が25℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図である。
【図18−2】環境温度が40℃の場合の階調に対する書き込み電位を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
1 発光部
2 素子基板
3 封止基板
4 封止材
5 駆動IC
6 記憶部
8 温度センサ
11 第1電源線
12 第2電源線
13 走査線
14 画像信号線
OLED 有機発光素子
Coled 素子容量
Cs 容量
Td 駆動トランジスタ
Ts 閾値電圧検出用トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、
画像信号を前記容量素子に供給した後に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、
前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、
を含むことを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項2】
発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、
画像信号を前記容量素子に供給する前に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、
前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、
を含むことを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項3】
前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度に応じて値が可変することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項4】
前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、
前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項5】
前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、
前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記補正信号の値は、前記画像信号の値に依存しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項1】
発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、
画像信号を前記容量素子に供給した後に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、
前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、
を含むことを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項2】
発光素子、前記発光素子に電気的に接続され、前記発光素子の発光を制御するドライバ素子、および前記ドライバ素子に一端側が電気的に接続される容量素子を有する複数の画素回路と、該画素回路周辺の環境温度を測定する温度測定素子と、を備えた画像表示装置を準備するステップと、
画像信号を前記容量素子に供給する前に、前記温度測定素子の測定結果に基づいた補正信号を前記容量素子に供給するステップと、
前記容量素子に供給された前記画像信号および前記補正信号に基づいて前記発光素子を発光させるステップと、
を含むことを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項3】
前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度に応じて値が可変することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項4】
前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、
前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項5】
前記画像信号および前記補正信号は前記容量素子の他端側より供給され、
前記補正信号は、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも低い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を降下させ、前記温度測定素子が測定した測定温度が基準温度よりも高い場合には、前記容量素子の前記他端側の電位を上昇させることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記補正信号の値は、前記画像信号の値に依存しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【公開番号】特開2008−26734(P2008−26734A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201163(P2006−201163)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]