画像表示装置及びその制御方法
【課題】輝度ばらつきが低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示するための技術を提供する。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、表示パネルと、補正データを記憶する第1記憶手段と、第2記憶手段と、補正データを転送する転送手段と、第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し補正処理を施す補正手段と、制御手段と、を有し、制御手段は、補正データの一部のデータが第2記憶手段に書き込まれた時点で、一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、映像表示を開始し、残りのデータが第2記憶手段に書き込まれるまで、一部のフレームに対する暫定的な補正処理を省略することによって、補正手段が第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、非読み出し時間を、転送手段が第2記憶手段へ残りのデータを書き込む処理に割り当てる。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、表示パネルと、補正データを記憶する第1記憶手段と、第2記憶手段と、補正データを転送する転送手段と、第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し補正処理を施す補正手段と、制御手段と、を有し、制御手段は、補正データの一部のデータが第2記憶手段に書き込まれた時点で、一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、映像表示を開始し、残りのデータが第2記憶手段に書き込まれるまで、一部のフレームに対する暫定的な補正処理を省略することによって、補正手段が第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、非読み出し時間を、転送手段が第2記憶手段へ残りのデータを書き込む処理に割り当てる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に関する従来技術は、例えば、特許文献1,2に開示されている。
特許文献1には、起動操作が行なわれてから通常の出画が始まるまでの間、所定の静止画または動画を画面に表示させることにより、起動操作が機器に伝達されていることをユーザに認識させる技術が開示されている。
特許文献2には、表示までの処理時間が長い広帯域放送の前に、狭帯域放送を表示させることにより、見かけ上の処理時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−104083号公報
【特許文献2】特開2008−187379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置、特に、平面型表示装置(FPD)として、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)等が知られている。
このようなFPDでは、基板上に多数の表示素子を形成する必要がある。これらの表示素子の発光特性は、製造条件等のわずかな違いにより影響を受ける。そのため、一般に、FPDが有する全ての表示素子の発光特性を完全に均一にすることは困難である。この発光特性の不均一さは、輝度ばらつきの原因となり、画質の劣化をまねく。例えば、FEDの場合、電子放出素子として、表面伝導型電子放出素子、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型等が用いられている。電子放出素子の製造条件等の違いにより電子放出素子の形状等が異なると、電子放出素子の電子放出特性も異なることとなる。その結果、輝度ばらつきが生じ、画質が劣化してしまう。
【0005】
かかる課題に対し、各表示素子の発光特性に応じて映像信号を補正する構成が提案されている(輝度ばらつき補正)。例えば、輝度ばらつきを低減するための調整比率(補正値)を含む補正データを表示素子毎にあらかじめ用意し、入力された映像信号に調整比率を乗算することで輝度ばらつきを低減する方法がある。しかしながら、輝度ばらつきは階調値に依存することがある(ばらつきの階調依存性)。そのため、すべての階調値に対する輝度ばらつきを低減するには、表示素子毎に、各階調値に対応する補正値を用意する必要があり、補正データの容量は膨大になる。また、この容量は画像表示装置の高精細化に伴って更に増加する。
【0006】
一方、前述した補正データは、画像表示装置の電源が切られても保持しておく必要があり、一般的に、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ(ストレージメモリ)に保持される。また、不揮発性メモリは、映像処理の処理レートと比較して低速であるため、画像表示装置の電源を投入する毎に、不揮発性メモリから輝度ばらつき補正用のDRAMなどの高速な揮発性メモリ(ワークメモリ)へ補正データを転送する必要がある。そのため、転送容量(上述した補正データの容量)の増加によって、上記転送に時間がかかり、画像表示装置の起動時間(映像を表示するまでの時間)、及び、該画像表示装置を適用したデジタルテレビセットなどの起動時間が長くなってしまう。
【0007】
この問題に対して、起動時間を短縮するいくつかの手法が考えられる。
ひとつは、補正データの容量を削減、もしくは、圧縮する方法である。しかしながら、補正データの容量を削減することは、補正後の画質(輝度ばらつきの低減度合い)を著しく低下させてしまうため、適切ではない。また、輝度ばらつきは一般にランダムであるために補正データの相関性は低く、圧縮率は向上できない。
もうひとつは、複数の不揮発性メモリを用いた並列処理により、転送速度を上げる方法である。この方法は、非常にコストが高くなるため適切ではない。
【0008】
また、特許文献1,2に開示の技術は、いずれも、放送信号のデコードなどに起因する起動時間を好適に短縮する技術であり、補正データの転送に起因した起動時間を短縮する技術ではない。そのため、特許文献1,2に開示の技術を用いたとしても、補正データの転送に起因した起動時間を短縮することはできない。
【0009】
本発明は、輝度ばらつきが低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始し、前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替え、前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像表示装置の制御方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、を有する画像表示装置の制御方法であって、前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始するステップと、前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替えるステップと、前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、輝度ばらつきが低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の立ち上げシーケンスの一例を示す図。
【図2】本実施例に係る画像表示装置の全体構成の一例を示す図。
【図3】変調信号の一例を示す図。
【図4】電子放出素子の特性の一例を示す図。
【図5】補正値の階調依存性の一例を示す図。
【図6】本実施例に係る輝度ばらつき補正部の構成の一例を示す図。
【図7】従来のシステム制御部の処理の流れを示す図。
【図8】従来の立ち上げシーケンスを示す図。
【図9】実施例1に係るシステム制御部の処理の流れの一例を示す図。
【図10】暫定的な補正処理時におけるメモリアクセスの課題を示す図。
【図11】実施例2の立ち上げシーケンスを示す図。
【図12】補正前の輝度ばらつき分布と目標輝度値の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、輝度ばらつき(複数の表示素子間の輝度ばらつき)が低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示することができる。例えば、輝度ばらつきを低減するための補正処理(輝度ばらつき補正)に用いられる補正データの転送に起因した起動時間(映像表示までの時間)をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短縮することができる。また、輝度ばらつきが階調値に依存する場合には、補正データの容量は大きくなるため、本発明による効果が大いに期待できる。
【0015】
画像表示装置の駆動(変調)方式は特に限定されないが、電圧波形を制御する駆動方式は、輝度ばらつきが階調値に依存するため好ましい。例えば、アクティブマトリクス駆動型や単純マトリクス駆動型であることが好ましい。具体的には、電圧駆動型のパルス幅変調方式(PWM)、パルス振幅変調方式(PHM)及びPWMとPHMの併用型や、電流駆動型(結果的に表示素子に印加される電圧波形が変化するため)であることが好ましい。特に、階調値に応じて変調信号の振幅(電界強度)を変調するPHMやPWMとPHMの併用型などは、輝度ばらつきの階調依存性が顕著になるため好ましい。
【0016】
本発明において用いられる表示素子の種類は特に限定されない。例えば、電子放出素子、EL素子、液晶素子、プラズマ素子などを用いることができる。特に、電界強度で輝度が制御される電子放出素子やEL素子などは、輝度ばらつきの階調依存性の観点から、好適に用いることができる。電子放出素子としては、例えば、表面伝導型、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型、BSD型の電子放出素子を用いることができる。
【0017】
複数の表示素子を用いた大面積の画像表示装置では、複数の表示素子間の放出電流のばらつきが大きくなり易いため、明るさのむら(輝度ばらつき)が発生し易い。そのため、複数の表示素子を用いた大面積(画面の対角サイズが20インチ以上)の画像表示装置は、本発明が適用される好ましい形態である。高精細の画像表示装置では、補正データの容量が大きくなるため、転送容量(及び転送に要する時間)も大きくなる。そのため、高精細(2K1K、4K2Kなどの高精細解像度)の画像表示装置は、本発明が適用される好ましい形態である。
【0018】
また、補正データは、画像表示装置の電源が切られてもフラッシュメモリなどの不揮発
性メモリに保持しておく必要がある。そして、起動時や表示モードの切り替え時に、低速な不揮発性メモリから輝度ばらつき補正用のDRAMなどの高速な揮発性メモリへ転送する必要がある。そのため、補正データの保持用のメモリ(ストレージメモリ)と処理用のメモリ(ワークメモリ)の2つのメモリ間で補正データの転送を行わなければならないシステムや、その転送速度が遅いシステムなどは本発明が適用される好ましい形態である。
更に、ワークメモリに記憶された複数の階調値に対応する複数の補正値の中から最低限必要な補正値のみを選択して読み出す方式は、特に本発明が適用される好ましい形態である。
【0019】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1に係る画像表示装置及びその制御方法について説明する。本実施例では、表示素子として電子放出素子を用い、電子放出素子をPWMを含む変調方式で単純マトリクス駆動する場合の例について説明する。また、本実施例では、補正データは、複数の表示素子のそれぞれについて用意されており、1つの表示素子について、補正データはN個(Nは2以上の整数)の階調値に対応するN個の補正値から構成されているものとする。但し、前述したように、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0020】
図1,2は、本実施例に係る画像表示装置及びその制御方法を説明するための代表図である。図1は、本実施例に係る画像表示装置の起動時におけるシーケンス(立ち上げシーケンス)の一例を表す図であり、図2は本実施例に係る画像表示装置全体の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
(表示制御装置全体について)
まず、図2を用いて本実施例に係る画像表示装置の機能構成について説明する。
符号200は表示パネルを示す。表示パネルはマトリクス状に配置された複数の表示素子を有する。本実施例では、表示パネルとして、リアプレートとフェースプレートをスペーサと呼ばれる支持部材を介して対向させた表示パネルを用いた。リアプレートは、複数の表示素子(例えば、冷陰極素子)がマトリクス状に配列されたマルチ電子源(例えば、水平方向5759(=1920×RGB)×垂直方向1080個の電子放出素子214)を有するものとした。フェースプレートは、ガラス基板、複数の電子放出素子とそれぞれ対向するようにガラス基板上に設けられた複数の蛍光体、及び、複数の蛍光体を覆うメタルバックを有するものとした。
【0022】
複数の電子放出素子214は、複数の変調配線212と複数の走査配線213により単純マトリクス配線されている。変調ドライバ210と走査ドライバ211から変調配線212と走査配線213に信号を印加することにより、所望の電子放出素子から電子が放出される。高圧電源216を用いて上記メタルバックの電位を高電位にすることにより、放出された電子は加速し、メタルバックを通過して蛍光体に衝突する。それにより、蛍光体が発光し、画像(映像)が表示される。なお、複数の電子放出素子を有する表示パネルの構成や製造方法は、例えば、特開2000−250463号公報に詳しく開示されている。
【0023】
次に、本実施例に係る画像表示装置の処理、特に、映像信号が入力されてから映像を表示するまでの処理について説明する。画像表示装置は、例えば、映像信号供給装置に接続され、主に、映像信号S1や同期信号T1などの映像信号を用いた処理を行う部分と、通信信号C1などのコマンド信号を用いた処理を行う部分の2種類で構成される。
【0024】
まず、映像信号供給装置から入力された映像信号S1から、変調ドライバ210に入力する駆動信号S6を生成するまでの処理について説明する。
映像信号S1はRGB入力部201に入力される。RGB入力部201は、水平解像度
、走査線数、フレームレート、クロック周波数などが表示パネル200のそれらと整合するように映像信号S1を変換する変換回路や、色温度、ホワイトバランスなどを調整する調整回路などを有する。RGB入力部201は、上記変換回路や調整回路を用いて映像信号S1に所定の処理を施し、信号S2として出力する。
【0025】
信号S2は、逆γ補正部202に入力される。逆γ補正部202は、表示パネルでの輝度値(出力される値)と映像信号の値(データ)が線形になるように、信号S2を変換し、信号S3として出力する。この変換後の信号S3において、データは輝度値に比例するため、以後、信号S3のデータを「輝度データ」と呼ぶ。一般的に、映像信号S1は、CRTディスプレイ装置で表示することを前提として、CRTディスプレイの入力−発光特性に合わせた0.45乗などの非線形変換(ガンマ変換)が施されて伝送あるいは記録さ
れている。逆γ補正部202は、そのような映像信号を、FEDやPDPなどの入力−発光特性が線形な表示デバイスに表示するために、該映像信号に対して、2.2乗などの逆
ガンマ変換を施す。
【0026】
信号S3は、本実施例での特徴となる輝度ばらつき補正部203に入力される。輝度ばらつき補正部203は、信号S3に対し、輝度ばらつき(複数の電子放出素子214間の電子放出特性のばらつき)を低減するための補正処理を施し、信号S4として出力する。輝度ばらつき補正部203の詳細については以降で詳しく説明する。なお、信号S4のデータは輝度ばらつきが補正されたデータであるため、以後、該データを補正輝度データと呼ぶ。
【0027】
信号S4は、蛍光体補正部204に入力される。蛍光体補正部204は、変調ドライバ210の非線形性や蛍光体の輝度飽和特性などを考慮し、選択された表示素子が補正輝度データに比例する輝度で発光するように、信号S4(補正輝度データ)にリニアリティ補正を施し、信号S5として出力する。本実施例では、表示素子として自発光型ではない電子放出素子を想定しているため、選択された電子放出素子に対向する蛍光体が補正輝度データに比例する輝度で発光するように、信号S4にリニアリティ補正を施す。なお、R、G、B各色の蛍光体の輝度飽和特性が異なる場合には、補正輝度データに対し色毎に異なる変換(補正)を施せば良い。
【0028】
信号S5は、駆動変換部205に入力される。駆動変換部205は、RGBパラレルに入力されるデータ(信号S5のデータ)を表示パネル200のRGB蛍光体の配列に対応するように並び替えを行う。また、駆動変換部205は、信号S5のデータを、変調ドライバ210の入力フォーマット(例えば、Mini LVDS、RSDSなど)に合ったデータに変換
し、駆動信号S6として出力する。なお、信号S4,S5のデータは輝度に比例した値をもつデータであるが、駆動信号S6のデータは輝度に対して非線形なデータとなる。
【0029】
なお、各信号処理部(符号201〜205で示される機能)の動作タイミングは、映像信号供給装置から受け取った同期信号T1に基づいてタイミング制御部206が生成する同期信号T2によって制御される。また、各信号処理部(符号201〜205で示される機能)の動作モードは、システム制御部207により、システムバス209を経由して各パラメータを設定することにより制御される。システム制御部207は、論理ロジックのみで構成されていてもよいし、CPUやマイコン、並列演算が可能なメディアプロセッサで構成されていてもよい。制御を行うプログラムはROMに内蔵されていてもよいし、入出力インタフェースを介して外部から転送されてもよい。上記パラメータとしては、データ容量の小さいものから、本実施例での課題にもなっているデータ容量の大きいものまで様々あるが、いずれの場合においても、パラメータは電源遮断時にも記憶されている必要がある。そのため、上記パラメータは、フラッシュメモリなどに代表される大容量の不揮発性メモリ208(ストレージメモリ;第1記憶手段)に格納されており、必要に応じて
システム制御部207により読み出され、設定を行うことができるようになっている。不揮発性メモリ208は、NANDタイプやNORタイプのフラッシュメモリだけではなく、ROMであっても、ハードディスクであっても良い。また、SRAMなどの揮発性メモリを電池駆動により不揮発性メモリのように使う構成であってもよい。
また、システム制御部207は、通信信号C1により、映像信号供給装置側から起動要求や動作モードの切り替え要求などの各種要求を受け取り、エラーがなければその要求に従って画像表示装置の制御を行う。エラーがある場合には、映像信号供給装置側にそれを通知すると共に、画像表示装置のエラー処理(強制シャットダウンなど)をフェイルセーフで行う。
【0030】
次に、駆動変換部205から駆動信号S6が出力されてから、表示パネル200を駆動し、映像表示が行われるまでの処理について説明する。
変調ドライバ210は、駆動変換部205から駆動信号S6を受け取る。そして、変調ドライバ210は、タイミング制御部206からのタイミング制御信号T3に基づき、走査ドライバ211による走査配線の選択期間毎に、変調配線212に変調信号S7を印加する。
走査ドライバ211は、タイミング制御部206からのタイミング制御信号T4に従って順次ライン(走査配線)を選択し、その選択期間に、選択した走査配線へ所定の選択信号を印加する。
駆動電源215は、変調ドライバ210、及び、走査ドライバ211を駆動するための電力を供給する。
【0031】
このように、変調ドライバ210によって、変調配線212が駆動信号S6に応じた変調信号で駆動され、それと同時に、走査ドライバ211によって、走査配線213に選択電位(走査パルス)が出力される。それにより、選択された走査配線213と、変調信号が印加されている変調配線212とに接続されている電子放出素子214は、変調配線212の変調信号に応じた電子放出を行う。
【0032】
高圧電源216は、加速電圧(8〜10kV)を発生し、該加速電圧によりメタルバックの電位を高電位にする。それにより、電子放出素子から放出された電子は、加速し、蛍光体に衝突する。そして、蛍光体への電子の衝突により、該蛍光体が発光する。
全ての走査配線を順次選択して、上記処理を行うことにより、表示パネル200に1画面分の画像が形成(表示)される。
なお、駆動電源215と高圧電源216は、システム制御部207からのコントロール信号C2,C3により適応的に制御可能に構成されていることが好ましい。特に、起動時、電源オフ時、及び、エラー発生時には適切な立ち上げ/立ち下げシーケンスで各電源の駆動順序や、高圧電源の昇圧、降圧方法が制御されることが好ましい。
【0033】
(多値補正の必要性について)
次に、輝度ばらつき補正部203において多値補正が必要となる理由について以下に説明する。多値補正とは、階調値毎に異なる輝度ばらつきに対して、少なくとも2つ以上の階調値に対応する補正値を用いた補正処理のことを意味する。
【0034】
まず、変調ドライバ210の変調信号の一例について説明する。電子放出素子は印加する駆動電圧に応じて放出電流を制御できるので、変調信号のパルス振幅によって輝度を制御することができる。また、変調信号のパルス幅により輝度を制御することもできる。
本実施例では、図3に示すような、パルス幅とパルス振幅を変調する方式で表示パネルを駆動する場合について説明する。図3では、縦軸を電位、横軸を時間として、各階調値に対応する変調信号の波形(駆動波形)が横に並べて示されている。ここで階調値は、変調信号のとりうる信号レベルの小さいものから順につけられた番号であり、駆動変換部2
05から出力される駆動信号S6に相当する。
【0035】
このような変調方式では、注目する階調値の駆動波形とその前後の階調値に対応する駆動波形との間のパルス幅及びパルス振幅の差が小さいほど、注目する階調値における階調性能が高くなる。また、本変調方式では、パルス振幅が一定のPWM変調方式に比べ、低輝度領域(低階調領域;階調値の小さい領域)において上記差を小さくできる。そのため、低階調領域での階調値の数を多くすることができる(低階調領域での階調性能を高くすることができる)。しかしながら、本変調方式では、低階調側でパルス振幅が通常のPWMの場合に比べ低くなるため、輝度ばらつきが低階調側で大きくなる。以下に、このような輝度ばらつきの階調依存性について詳しく説明する。
【0036】
輝度ばらつきの要因について本発明者らが鋭意検討した結果、輝度ばらつきは複数の電子放出素子間の放出電流のばらつきによるものが大きいことがわかった。図4に、横軸を駆動電圧、縦軸を放出電流とする電子放出素子の特性の模式的なグラフを示す。駆動電圧は、電子放出素子214に印加される電圧(Vf)であり、選択信号の電位(−Vss)と変調信号の電位(VA)の差(Vf=VA+Vss)である。また、図4は、選択信号の電位(−Vss)を−7.5V、変調信号の電位(VA)の最大値を7Vとしたときの図である。図4から、選択信号が印加されている電子放出素子からは、変調信号の電位(VA)に応じて電子が放出されることがわかる。一方、選択信号、変調信号、または、それら両方が印加されていない電子放出素子からは電子が放出されないことがわかる。
【0037】
実際の表示パネル200では、複数の電子放出素子間で特性のばらつきが少なからずある。図4には、一例として、2つの電子放出素子の特性を模式的に示した。図4において、Aで示した部分は変調信号の電位が高い部分であり、2つの素子間で放出電流値は比較的一致している。一方、Bで示した部分は変調信号の電位が部分Aよりも低い部分であり、2つの素子間で放出電流値は大きくずれる(ばらつく)ことがわかる。また、部分Aと部分Bの間の駆動電圧では、2つの素子間の放出電流値は、部分Bほどではないが部分Aよりも大きくずれる。この放出電流値のばらつきは、複数の表示素子間の輝度ばらつきが生じる原因となる。また、駆動電圧の値によって放出電流値のばらつきが異なることは、輝度ばらつきの階調依存性が生じる原因となる。
【0038】
また、複数の電子放出素子間で放出点数(電子を放出する位置の数)がばらついた場合には、各電子放出素子の特性は図4の縦軸を定数(放出点数の比)倍させた特性となるため、輝度ばらつきの階調依存性は殆ど生じない。一方、電子放出素子の電界増倍係数(エミッタとゲート間の距離や形状)がばらついた場合には、各電子放出素子の特性は図4の横軸を定数(駆動電界の比)倍させた特性となるため、輝度ばらつきの階調依存性が顕著に発生する。よって、放出点数と電界増倍係数が独立にばらついた場合に、複数の階調値間の輝度ばらつきの関係は、放出点数のばらつきと電界増倍係数のばらつきの内容によって変化する。そのため、正確な補正値を得るためには、少なくとも2つの階調値について輝度のばらつきを計測しなければならない。そして、輝度ばらつきが階調依存性を有する場合があるため、階調値毎に各表示素子用の補正値が必要となる。低階調領域に対して補正処理を施す場合には、低階調領域内の階調値毎の補正値が必要となる。
【0039】
以上の理由から、多値補正が必要となる。
しかしながら、全階調値のそれぞれについて各表示素子用の補正値を用意すると、データ容量が膨大になり、ハードウェアで実現するには現実的ではない。そこで、本実施例では、全階調値のうち何個かの代表階調値を選択し、それ以外の階調値に対応する補正値は、代表階調値に対応する補正値を補間して得られる補正値カーブを用いて生成する。
図5は、補正値の階調依存性を示しており、表示素子A2の輝度に合うように表示素子A1と表示素子A3の階調値を補正する場合の例である。
そして、図5は、表示素子A3のプロット点を理想値とし、階調値m以下を4つの代表階調値に対応する4つの補正値(U(Upper)点、M(Middle)点、L(Lower)点、L’(Lower’)点)を補間した場合を示している。しかしながら、図5の例では、補正値間
をリニア補間しているため、補正値カーブが誤差(補間誤差)を含んでしまう(理想値と補正値カーブから得られる値とにずれが生じてしまう)。補正値カーブの誤差を小さくするためには、代表階調値の数はある程度多くなくてはならない。
【0040】
(多値補正を実現するための具体例)
上述したような補正値カーブを用いた多値補正を実現するためのハードウェア構成について図6を用いて説明する。図6は、輝度ばらつき補正部203の詳細を示すブロック図である。図6は、大きく分けて、補正データ書き込み転送処理系と補正データ読み出し演算処理系の2つの処理系に分けられる。以下に各処理系について詳細に説明する。
【0041】
・補正データ書き込み転送処理系について
この処理系は、輝度ばらつき補正を行う前段階として、起動時に、低速な不揮発性メモリから高速な揮発性メモリへ補正データを転送するために具備されている。具体的には、起動時に、システム制御部207が、システムバス209をメモリ書き込み制御部1000に開放する。そして、準備が整った段階で、システム制御部207が、不揮発性メモリ208に格納された補正データをメモリ書き込み制御部1000に対して連続的に読み出すことで転送が行われる。このような転送は、一般に、DMA転送と呼ばれる。
【0042】
メモリ書き込み制御部1000は、システムバス209を用いて転送された補正データを、内部のバッファに格納すると共に、高速動作が可能な揮発性メモリ1002へ書き込む。なお、メモリ書き込み制御部1000は、補正データを揮発性メモリ1002に書き込む際に、必要に応じてそのフォーマットを変換する。即ち、本実施例では、システム制御部207とメモリ書き込み制御部1000とで、本発明の転送手段が構成されている。揮発性メモリ1002は、ワークメモリとして用いられるメモリ(第2記憶手段)である。揮発性メモリ1002は、安価で高速動作が可能な、SDRAMやDDR2−SDRAMなどを代表するDRAMやSRAMなどで構成するのが一般的である。
【0043】
図5の例では4つの階調値の補正値が転送されるので、表示素子の数を1920×1080×3
(=RGB)、1つの補正値を8bitとすると、転送容量は以下のように計算された。
転送容量=1920×1080×8bit×3(=RGB)×4=199065600bit(=12441600word)
システム制御部207が一般的な16ビットマイコンなどの場合を想定し、上記転送容量の転送時間を計算した。具体的には、システムバス209のバスクロックを25MHzとし、DMA転送の1バスサイクルで1wordのデータが7サイクルの時間で転送されるとすると、転送時間は以下のように計算された。
転送時間=12441600word×40ns×7=2.18sec
この数秒かかる転送時間は、本実施例で課題とするものである。
【0044】
・補正データ読み出し演算処理系について
この処理系は、揮発性メモリ1002から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し輝度ばらつき補正を施すために具備されている。具体的には、多値補正演算部1001(補正手段)において、揮発性メモリ1002から読み出した補正値を補間して得られる補正値カーブを用いて、信号S3の階調値が補正され、信号S4として出力される。
【0045】
システム制御部207は、多値補正演算部1001に対して、多値補正の開始を指示する。多値補正演算部1001は、タイミング制御部206からの同期信号T2に同期して、揮発性メモリ1002から、4つの階調値に対応する4つの補正値を読み出す。そして
、セレクタ1003で上記読み出された4つの補正値から多値補正に最低限必要な2つの補正値を選択し、補間演算部1004に出力する。
【0046】
ここで、図5の場合を例にセレクタ1003による選択方法について説明する。
セレクタ1003は、信号S3(輝度データ)の階調値がU点とM点の階調値の間の階調値である場合は、U点とM点を選択する。M点とL点の階調値の間の階調値である場合は、M点とL点を選択する。L点とL’点の階調値の間の階調値である場合は、L点とL’点を選択する。階調値がU点より大きい場合はU点、L’点より小さい場合は、L’点を選択する。
【0047】
上述した、揮発性メモリ1002から4つの補正値を読み出して、セレクタ1003で最適な2つの補正値を選択する方法(4値読み出し2値選択方式)は、メモリの読み出し帯域の観点において無駄が多い。揮発性メモリ1002から最適な2つの補正値を選択的に読み出すことが可能であるならば、そのような方法(2値選択読み出し方式)の方がメモリの読み出し帯域の観点から好ましい。なお、その場合にはセレクタ1003は不要となる。
以下では、4値読み出し2値選択方式を例にして説明する。
【0048】
補間演算部1004における演算方法について具体的に説明する。輝度データの階調値をdinとし、dinがM点とL点の階調値の間の階調値である場合について説明する。M点の座標を(m_th,m_coef),L点の座標を(l_th,l_coef)とすると、階調値dinに対応する
補正値dout(補間後補正値)は以下の式にて算出することができる。
dout
=(1/(m_th−l_th))×((m_coef−l_coef)×din+m_th×l_coef−l_th×m_coef)
=(1/(m_th−l_th))×(l_coef×(m_th−din)+m_coef×(din−l_th))
(但し、l_th<din<m_th)
そして、乗算部1005で補正値doutを輝度データに乗算することにより、補正輝度データ(信号S4)が得られる。そのため、補正値が1の場合には輝度データはそのまま出力され、1未満の場合には階調値を低くする(輝度を下げる)補正がされ、1より大きい場合には階調値を高くする(輝度を上げる)補正がされることになる。なお、dinの値が
U点とM点、L点とL’点の階調値の間の階調値である場合にも、同様の方法で補正値を算出すればよい。また、輝度データの階調値がUとL’の補正値に対応する階調値の間の階調値でない場合は、U点やL’点を補正値とすればよい。
【0049】
(従来の画像表示装置の起動時の処理について)
上述したように、数秒かかる転送時間は、本実施例で課題とするものである。この課題の重要性について、図7、図8を用いて説明する。
図8は、従来の立ち上げシーケンス(各種状態の変化のタイミング)を示す図である。時刻t0で映像信号供給装置が起動すると(映像信号供給装置の電源がオンされると)、0.6sec後の時刻t1に画像表示装置が起動する(画像表示装置の電源がオンされる)。画像表示装置が起動すると、システム制御部207はリセットされ、図7のフローチャートに従い立ち上げ処理を開始する。
【0050】
まず、図7のS101において、リセット処理や初期化処理を行う。この処理は、ブート処理によるプログラムのロード、ハードウェアのリセット処理、内部クロック生成を行うPLLや揮発性メモリ1002などのすべての初期化処理を含み、画像表示装置の状態を正常な動作状態にするための一連の処理である。
そして、S102で初期化完了を確認すると、S103で、駆動変換部205から出力する駆動信号S6を強制的に黒レベルにする(ミュート処理)。これは、例えば、不用意に意図しない映像を出力しないようにするなどの保護目的のために行われる。
【0051】
S104(時刻t2)では、補正転送/反映処理を行う。具体的には、前述したように、S105において、補正データの転送を開始する。そして、S106(時刻t5)にて、表示素子毎にN個(本実施例では、N=4)の補正値が転送された場合には、S107でそれらの補正値(補正データの全部)を用いた補正処理(N値補正処理)を有効(実行可能)にする。補正データの全部を用いた補正処理とは、上述したように、N個の補正値を補間して得られる補正値カーブを用いて入力された映像信号の階調値を変換する処理である。
次に、S108において、時刻t3において有効になった映像信号供給装置からの表示要求信号を検知すると、S109で、ミュート処理をオフにする。具体的には、駆動信号S6を補正データの全部を用いた輝度ばらつき補正が施された映像信号に切り替える。なお、表示要求信号は、映像信号供給装置から安定して映像信号が入力されることを知らせる信号である。具体的には、映像信号供給装置から、同期信号T1と図示しない映像用のクロック出力が安定して出力され、且つ、表示可能な映像信号S1が出力された時に有効となる信号である。なお、表示要求信号が有効になると同時に、放送されている映像信号が表示可能(放送表示可能)となってもよいし、それ以降に放送表示可能となってもよい。
そして、S110で駆動電源215を立ち上げ(駆動)、S108で高圧電源216を立ち上げることにより、表示パネルでの映像表示(輝度ばらつき補正が施された映像信号に基づく映像の表示)が開始される。
【0052】
このように、従来の方法では、映像供給装置を起動してから映像が表示されるまでの時間(起動時間)は3秒前後かかってしまう(図8)。そして、この時間は表示パネル200の階調性向上と、高精細化に伴い更に増える可能性がある。例えば、暗部(低階調領域)の階調性能を向上するには、低階調領域においてより多くの階調値に対応する補正値が必要となるため、起動時間が長くなる。具体的には、4個から6個に補正値が増えると、起動時間は1.5倍の4.5秒になる。また、4K2Kなどデジタルシネマに対応した超
高精細化により、データ量がHDに比べ4倍に増えるので、起動時間は12秒と一気に増えてしまう。
【0053】
本実施例では、画像表示装置の起動後、補正データの一部のデータが揮発性メモリ1002に書き込まれた時点で、多値補正演算部1001により上記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、映像表示を開始する。そして、補正データの残りのデータが揮発性メモリ1002に書き込まれた後に、多値補正演算部1001による補正処理を補正データの全部を用いた補正処理に切り替える。それにより、輝度ばらつきが低減された映像を短時間で表示する。以下、詳しく説明する。
【0054】
(本実施例にかかる画像表示装置の起動時の処理について)
実施例1にかかる画像表示装置の起動時の処理の具体的な例について、図9と図10を用いて説明する。
図9は、図7のS104の補正転送/反映処理に相当し、本実施例の特徴を表わす補正データの段階的な転送と補正の反映方法を示すフローチャート(システム制御部207の処理の流れを示すフローチャート)である。図10は、本実施例の立ち上げシーケンスの一例を示すタイミング図である。なお、本実施例では、システム制御部207、及び、後述する補正値出力制御部2000で本発明の制御手段が構成されている。
【0055】
図7のS103の次に、図10の時刻t2において、システム制御部207は、これから転送すべきN個の補正値の内、最初に転送するn個(nは1以上N未満の整数;本実施例では2つ)の第1補正値を選択する(S201)。以後、n個の第1補正値(補正データの一部のデータ)を第1補正データと呼ぶ。本実施例では、図5の階調値m以下の全域
において、平均的な補間誤差をできる限り減らすような2つの補正値(U点とL’点)を選択するものとした。これらの補正値は、システム制御部207のプリセット値として不揮発性メモリ208に記憶してあり、S201でロードされる。なお、この選択方法はあくまで一例であって、この2点以外の組み合わせを選択しても良い。
【0056】
次に、S202において、不揮発性メモリ208に格納されている上記選択した第1補正値を、揮発性メモリ1002に転送する。
そして、S203(時刻t5)にて第1補正データの転送が終了した場合、S204において、セレクタ1003で強制的に第1補正値(2値)を選択し、第1補正値を用いた補正処理(暫定的な補正処理:第1補正処理)を有効にする。暫定的な補正処理は、n個の補正値(第1補正値)を補間して得られる補正値カーブを用いて入力された映像信号の階調値を変換する処理である(n値補正処理)。
次に、S205において、時刻t3において有効になった表示要求信号を検知すると、S206で、駆動信号S6を暫定的な補正処理が施された映像信号に切り替える(ミュート処理オフ)。そして、S207で駆動電源を立ち上げ、S208で高圧電源を立ち上げることにより、表示パネル200での映像表示が開始される(具体的には、時刻t5は放送表示可能となる時刻t4より後のため、放送表示が開始される)。
【0057】
次に、S209(時刻t5)にて、不揮発性メモリ208に格納されている残りの補正値(第2補正値;本実施例では、M点とL点)を、揮発性メモリ1002に転送する。以下、残りの補正値を第2補正データと呼ぶ。
そして、S210(時刻t6)にて第2補正データの転送が終了した場合、S211において、補正データの全部を用いた補正処理(第2補正処理)を有効にする。換言すれば、補正処理を第1補正処理から第2補正処理に切り替える。それにより、補正値カーブは、図5に示す第1補正値カーブから第2補正値カーブに切り替わる。具体的には、セレクタ1003での補正値の選択方式を、前述した輝度データを参照して2点を選択する方式(4値読み出し2値選択方式)に切り替える。
【0058】
このように、本実施例では、補正データの一部のデータが書き込まれた時点で、暫定的な補正処理及び映像表示を開始する制御を行うことにより、輝度ばらつきが低減された映像を短時間で表示することができる。具体的には、半分の補正データを転送して、暫定的な補正処理及び映像表示を開始する制御を行うことにより、従来と同様のシステム構成で、映像表示までの時間を1/2に短縮することができる。なお、第1補正処理では、第2補正処理に比べ補正値カーブの補間誤差が大きくなるが、比較的短い時間で補正処理は第2補正処理に切り替わるため、映像において見た目の画質的な問題はほとんど生じない。
【0059】
(暫定的な補正処理時におけるメモリアクセスの課題について)
ここで、暫定的な補正処理時におけるメモリアクセスの課題について説明する。図10の時刻t5から時刻t6までの期間では、揮発性メモリ1002への第2補正データの書き込みと、揮発性メモリ1002からの第1補正データの読み出しの両方が行われる。そのため、揮発性メモリ1002に対し、第1補正データ(2値)の読み出しと第2補正データ(2値)の書き込みを時分割で処理できるメモリ帯域を割り当てる必要がある。
【0060】
4値読み出し2値選択方式の場合、時刻t6以降に第1補正データと第2補正データ(4値)の読み出しができるように、メモリ帯域が割り当てられる。そのため、時刻t5から時刻t6までの必要帯域が時刻t6以降の必要帯域を超えることはない。
しかしながら、2値選択読み出し方式の場合、時刻t6以降は、4値から選択された2値の読み出しのみが行われる。そのため、時刻t6以降の必要帯域より時刻t5から時刻t6までの必要帯域が大きくなってしまう。時刻t5から時刻t6までの必要帯域に合わせてメモリ帯域を割り当てれば問題無い。しかしながら、この期間は電源投入時に1回だ
け生じる比較的短い時間(数秒)の期間であるため、この期間のために大きなメモリ帯域を割り当てることは、コストの増加を招き、適切ではない。
【0061】
一方、映像には垂直ブランキング期間(或るフレームの最後のラインを表示してから次のフレームの最初のラインを表示するまでの期間)がある。この垂直ブランキング期間は補正データの読み出しを休止する期間である。そこで、この垂直ブランキング期間を利用して第2補正データ(2値)の書き込みを行う方法も考えられる。この場合の転送時間を概算すると、図10の例では第2補正データの転送時間は1.1秒なので、1フレーム分の処理時間の4%が垂直ブランキング期間である場合、第2補正データの転送に1.1秒/4%=28.72秒要することとなる。このような長い時間、暫定的な補正処理を行うことは画質の観点から問題となる。
【0062】
そこで、本実施例では、第1補正データが揮発性メモリ1002に書き込まれてから第2補正データが不揮発性メモリ1002に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する暫定的な補正処理を省略する。それにより、多値補正演算部1001が不揮発性メモリ1002にアクセスしない非読み出し時間を生成する。そして、このような非読み出し時間を、転送手段が揮発性メモリ1002へ第2補正データを書き込む処理に割り当てる。
【0063】
以下、図1を用いて具体的に説明する。図1は、本実施例において特徴となる立ち上げシーケンスの一例を示す。本実施例に係る立ち上げシーケンスは、2値選択読み出し方式の場合に特に好適に適用できる。図1は映像供給装置側からフレームレートが120Hzの映像信号が入力された場合の例である。
本実施例において特徴的なのは、暫定的な補正処理が省略された上記一部のフレーム(補正オフのフレーム)の代わりに黒画面(ミュート)を表示パネルで表示する点である。具体的には、第2補正データの書き込みと第2補正データの読み出しが重なる期間において、黒挿入により、映像のフレームレートを1/2にする。即ち、図1の例では、時刻t5から時刻t6の期間では、60Hzのフレームレートで黒画面の表示が行われ、映像のフレームレートが120Hzから60Hzにされる(黒挿入60Hz駆動)。このとき、補正処理として第1補正データを用いた2値補正処理が行われる。時刻t6以降では、黒挿入が解除され、映像のフレームレートは120Hzに戻される(120Hz駆動)このとき、補正処理として4値補正処理が行われる。
【0064】
本実施例では、補正値出力制御部2000が、映像信号の垂直同期信号を元に、黒挿入の期間(暫定的な補正処理を省略する期間)を識別する信号を書き込み許可信号として生成する。そして、多値補正演算部1001は、書き込み許可信号に基づいて、黒挿入の期間に揮発性メモリ1002からの補正データの読み出しを停止すると共に、補正値セレクタ2001により、補間後の補正値を設定補正値(0.0)に切り替える。また、メモリ書き込み制御部1000は、書き込み許可信号に基づいて、黒挿入の期間にのみ前述したDMA転送を行うようシステム制御部207を制御する。一方、この黒挿入の期間以外の期間では、揮発性メモリ1002からの補正データの読み出しが行われ、補正値セレクタ2001は補間後の補正値の選択を行う。また、システム制御部207は、DMA転送を行わないように制御される。
【0065】
以上説明したような制御を行うことにより、第2補正データの転送時間は図1の例では1.1秒×2=2.2秒と十分に短くすることができる。それにより、暫定的な補正処理による画質への影響を低減することができる。
【0066】
なお、図1の例では、映像信号のフレームと黒画面とを交互に表示する場合(即ち、映像信号のフレームと黒画面の数の比が1:1の場合)を示しているが、映像信号のフレー
ム数:黒画面数は2:1,3:1,4:1・・・などであってもよい。また、映像信号が、オリジナルフレームと、オリジナルフレームを用いて生成された、オリジナルフレーム間を補間する補間フレームとからなる場合、補間フレームの画質はオリジナルフレームの画質に比べ低くなる。そのため、オリジナルフレームではなく、補間フレームに対する暫定的な補正処理を省略することが画質の観点から好ましい。例えば、映像供給装置がオリジナルフレームと補間フレームを区別するフレーム識別信号を出力すればよい。そして、補正値出力制御部2000が、垂直同期信号とフレーム識別信号に従い、補間フレームの期間を黒挿入の期間とする書き込み許可信号を生成すれば良い。
【0067】
また、表示パネル200がインパルス型の表示装置の場合、時刻t5から時刻t6の期間では、同一映像であれば、時刻t6以降の期間より時間平均された表示輝度(時間平均輝度)が暗くなってしまう。具体的には、図1の例の場合、黒画面と映像のフレームとが交互に表示されるため、黒挿入を行わない場合に比べ時間平均輝度は1/2となる。そのため、映像のフレームレートが60Hzから120Hzに切り替わるときに、輝度が変化し(時間平均輝度が2倍になり)、視聴者に違和感を与えてしまう虞がある。
そこで、本実施例では、図2の輝度ばらつき補正部203よりも前段に入力された映像信号の輝度を低減するゲイン乗算回路(不図示;低減手段)を用意する。そして、システム制御部207が、第2補正処理が開始された時点で、入力された映像信号の輝度が、時刻t5から時刻t6の期間の時間平均輝度と等しくなるようにゲイン乗算回路による輝度の低減率を設定する。その後に、低減率が0になるまで、入力された映像信号の輝度を段階的に高める。ゲイン乗算回路でゲイン値を乗じることにより映像信号の輝度を低減する場合には、例えば、時刻t5から時刻t6の期間でゲイン値を1とし、時刻t6以降で、輝度の変化が見えないように、ゲイン値を0.5から1に段階的に近づける制御を行えばよい。なお、上述した輝度制御はあくまで一例であって、輝度の変化によって視聴者に違和感を与えなければどのように制御してもよい。また、低減率は、入力された映像信号によらず、フレームレートの変化(切り替え前後のフレームレート)に応じて、切り替え前後に表示される映像の時間平均輝度の差分を補償するように、予め決められていてもよい。
【0068】
また、表示パネル200がインパルス型の表示装置の場合、時刻t5から時刻t6の期間でフリッカが目立つ可能性がある。そのため、表示パネル200がインパルス型の表示装置の場合には、時刻t5から時刻t6の期間において輝度を絞り(例えば、ゲイン値を約0.5とする)、フリッカを目立たなくすればよい。そして、時刻t6以降では、輝度の変化が見えないようにゲイン値を0.25から段階的に1に近づける制御を行えばよい。
【0069】
以上説明したように、本実施例によれば、補正データの一部のデータが書き込まれた時点で、暫定的な補正処理及び映像表示制御を行うことにより、輝度ばらつきが低減された映像を短時間で表示することができる。また、映像信号の一部のフレームに対する暫定的な補正処理を省略し、その期間を補正データの残りのデータをワークメモリへ書き込む処理に割り当てることにより、上記効果をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく得ることことができる。
【0070】
<実施例2>
実施例1では、黒挿入により映像のフレームレートを1/2に減じる例を説明した。本発明の実施例2では、映像のフレームレートを減じることなく、実施例1と同様の効果を得る方法について、図11を用いて説明する。
図11に示すように、本実施例では、時刻t5以降の全ての期間において120Hzのフレームレートで映像の表示を行う。但し、時刻t5から時刻t6までの転送処理の書き込みと補正処理の読み出しが重なる期間においては、映像のミュートに変えて、2値補正
のオン/オフをフレーム単位で切り替えた映像を表示する(暫定120Hz駆動)。
【0071】
本実施例では、補正値出力制御部2000が、垂直同期信号を元に、暫定的な補正処理を省略する期間(補正オフ期間)を識別する信号を書き込み許可信号として生成する。そして、この書き込み許可信号を用いて、実施例1と同様に揮発性メモリ1002への補正データの書き込み、揮発性メモリ1002からの補正データの読み出しを制御することにより、実施例1と同様の効果が得られる。
【0072】
また、時刻t5から時刻t6の期間において暫定的な補正処理のオン/オフをフレーム単位で切り替えることに対して考慮すべき課題が2つある。1つ目は補正性能の低下である。2つ目は、暫定的な補正処理のオン/オフによる輝度の変化に起因した表示の違和感である。
【0073】
1つ目の課題について説明する。暫定的な補正処理正のオン/オフを切り替える場合、補正誤差が時間方向に平均化されるため、暫定的な補正処理を連続して行う場合と比較して補正誤差が増えてしまう。このような補正誤差の増加は、表示パネル200の輝度ばらつきが少なく、且つ、時刻t5から時刻t6の期間の長さが本実施例のように2.2秒と比較的に短い場合には、見た目ではほとんどわからない。しかしながら、表示パネル200の輝度ばらつきが大きい場合には、補正誤差を低減する(目立たなくする)ことが好ましい。具体的には、暫定的な補正処理のオン/オフの期間のデューティ比を変更可能することが好ましい。デューティ比は暫定的な補正処理を施すフレーム(補正オンフレーム)と、省略するフレーム(補正オフフレーム)との数の比である。例えば、補正オンフレーム:補正オフフレームを3:1とすることにより、補正誤差を目立たなくすることができる。なお、デューティ比(補正オンフレーム:補正オフフレーム)は3:1に限らず、2:1,4:1,5:1などであってもよい。
このような機能は、具体的には、補正値出力制御部2000が、デューティ比によって書き込み許可信号を変更することにより実現できる。しかしながら、補正オフフレームに対する補正オンフレームの数を多くすればするほど、補正誤差は目立たなくなるが、時刻t5から時刻t6の期間の長さは長くなる。例えば、補正オンフレーム:補正オフフレームを3:1とすると、1:1の場合に比べ、時刻t5から時刻t6の期間の長さは2倍(4.4秒)となってしまう。つまり、デューティ比と時刻t5から時刻t6の期間の長さとはトレードオフの関係にあり、両者による画質への影響が最も小さくなるようにデューティ比を決定することが好ましい。
【0074】
2つ目の課題について説明する。輝度ばらつき補正(補正データの一部を用いた補正処理または補正データの全部を用いた補正処理)では、画素毎に、輝度値が目標輝度値(目標値)となるように変換される。そのため、同じ画像を表示する場合に、輝度ばらつき補正がオンの時とオフの時とでは平均輝度が異なる。これについて図12を用いてより詳しく説明する。図12は表示パネル200の補正前の輝度ばらつき分布と目標輝度値の一例を示す図である。補正前の輝度ばらつき分布から、例えば平均輝度より3σ(σは標準偏差)だけ低い位置の輝度値(図12の例では平均輝度の73%)が目標輝度値とされる。もちろん、これらの数値は一例であり、画像表示装置の輝度むらの仕様や補正前の輝度ばらつき分布に応じて適宜設定すればよい。そして、図12の太線(矢印)で示した範囲は補正範囲を示している。即ち、本実施例では、目標輝度値より低い輝度値の画素は、輝度ばらつきの補正の対象とされない(そのような画素は補正残りとなる)。そのため、図12の例では、輝度ばらつき補正を施した後の平均輝度は、輝度ばらつき補正を施す前の平均輝度の約73%となる。
そこで、本実施例では、補正オフフレームの平均輝度が、該補正オフフレームの画像と同じ画像に輝度ばらつき補正を施した場合の平均輝度と等しくなるように、該補正オフフレームの輝度を全体的に所定の割合だけ低減する(補正前の73%とする)。それにより
、暫定的な補正処理のオン/オフによる輝度の変化に起因した表示の違和感を防止することができる。
具体的には、実施例1で述べた輝度制御のためのゲイン値は1とする。そして、暫定的な補正処理を省略する期間において、多値補正演算部1001は、揮発性メモリ1002からの第1補正データの読み出しを停止すると共に、補正値セレクタ2001により、補間後の補正値を設定補正値(0.73)に切り替える。それにより、上記機能を実現することができる。
【0075】
以上説明したような制御を行うことで、フレームレートを減じることなく、実施例1と同等な効果を得ることが可能になる。
なお、本実施例では、補正オフフレームの平均輝度が、該補正オフフレームの画像と同じ画像に輝度ばらつき補正を施した場合の平均輝度と等しくなるように、該補正オフフレームの輝度を全体的に低減する構成とした。しかしながら、そのような制御は行わず、輝度ばらつきが目立たない程度に輝度を全体的に低減する構成であってもよい。そのような構成であっても、実施例1と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
200 表示パネル
207 システム制御部
208 不揮発性メモリ
1000 メモリ書き込み制御部
1001 多値補正演算部
1002 揮発性メモリ
2000 補正値出力制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に関する従来技術は、例えば、特許文献1,2に開示されている。
特許文献1には、起動操作が行なわれてから通常の出画が始まるまでの間、所定の静止画または動画を画面に表示させることにより、起動操作が機器に伝達されていることをユーザに認識させる技術が開示されている。
特許文献2には、表示までの処理時間が長い広帯域放送の前に、狭帯域放送を表示させることにより、見かけ上の処理時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−104083号公報
【特許文献2】特開2008−187379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置、特に、平面型表示装置(FPD)として、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)等が知られている。
このようなFPDでは、基板上に多数の表示素子を形成する必要がある。これらの表示素子の発光特性は、製造条件等のわずかな違いにより影響を受ける。そのため、一般に、FPDが有する全ての表示素子の発光特性を完全に均一にすることは困難である。この発光特性の不均一さは、輝度ばらつきの原因となり、画質の劣化をまねく。例えば、FEDの場合、電子放出素子として、表面伝導型電子放出素子、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型等が用いられている。電子放出素子の製造条件等の違いにより電子放出素子の形状等が異なると、電子放出素子の電子放出特性も異なることとなる。その結果、輝度ばらつきが生じ、画質が劣化してしまう。
【0005】
かかる課題に対し、各表示素子の発光特性に応じて映像信号を補正する構成が提案されている(輝度ばらつき補正)。例えば、輝度ばらつきを低減するための調整比率(補正値)を含む補正データを表示素子毎にあらかじめ用意し、入力された映像信号に調整比率を乗算することで輝度ばらつきを低減する方法がある。しかしながら、輝度ばらつきは階調値に依存することがある(ばらつきの階調依存性)。そのため、すべての階調値に対する輝度ばらつきを低減するには、表示素子毎に、各階調値に対応する補正値を用意する必要があり、補正データの容量は膨大になる。また、この容量は画像表示装置の高精細化に伴って更に増加する。
【0006】
一方、前述した補正データは、画像表示装置の電源が切られても保持しておく必要があり、一般的に、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ(ストレージメモリ)に保持される。また、不揮発性メモリは、映像処理の処理レートと比較して低速であるため、画像表示装置の電源を投入する毎に、不揮発性メモリから輝度ばらつき補正用のDRAMなどの高速な揮発性メモリ(ワークメモリ)へ補正データを転送する必要がある。そのため、転送容量(上述した補正データの容量)の増加によって、上記転送に時間がかかり、画像表示装置の起動時間(映像を表示するまでの時間)、及び、該画像表示装置を適用したデジタルテレビセットなどの起動時間が長くなってしまう。
【0007】
この問題に対して、起動時間を短縮するいくつかの手法が考えられる。
ひとつは、補正データの容量を削減、もしくは、圧縮する方法である。しかしながら、補正データの容量を削減することは、補正後の画質(輝度ばらつきの低減度合い)を著しく低下させてしまうため、適切ではない。また、輝度ばらつきは一般にランダムであるために補正データの相関性は低く、圧縮率は向上できない。
もうひとつは、複数の不揮発性メモリを用いた並列処理により、転送速度を上げる方法である。この方法は、非常にコストが高くなるため適切ではない。
【0008】
また、特許文献1,2に開示の技術は、いずれも、放送信号のデコードなどに起因する起動時間を好適に短縮する技術であり、補正データの転送に起因した起動時間を短縮する技術ではない。そのため、特許文献1,2に開示の技術を用いたとしても、補正データの転送に起因した起動時間を短縮することはできない。
【0009】
本発明は、輝度ばらつきが低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始し、前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替え、前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像表示装置の制御方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、を有する画像表示装置の制御方法であって、前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始するステップと、前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替えるステップと、前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、輝度ばらつきが低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の立ち上げシーケンスの一例を示す図。
【図2】本実施例に係る画像表示装置の全体構成の一例を示す図。
【図3】変調信号の一例を示す図。
【図4】電子放出素子の特性の一例を示す図。
【図5】補正値の階調依存性の一例を示す図。
【図6】本実施例に係る輝度ばらつき補正部の構成の一例を示す図。
【図7】従来のシステム制御部の処理の流れを示す図。
【図8】従来の立ち上げシーケンスを示す図。
【図9】実施例1に係るシステム制御部の処理の流れの一例を示す図。
【図10】暫定的な補正処理時におけるメモリアクセスの課題を示す図。
【図11】実施例2の立ち上げシーケンスを示す図。
【図12】補正前の輝度ばらつき分布と目標輝度値の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、輝度ばらつき(複数の表示素子間の輝度ばらつき)が低減された映像をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短時間で表示することができる。例えば、輝度ばらつきを低減するための補正処理(輝度ばらつき補正)に用いられる補正データの転送に起因した起動時間(映像表示までの時間)をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく短縮することができる。また、輝度ばらつきが階調値に依存する場合には、補正データの容量は大きくなるため、本発明による効果が大いに期待できる。
【0015】
画像表示装置の駆動(変調)方式は特に限定されないが、電圧波形を制御する駆動方式は、輝度ばらつきが階調値に依存するため好ましい。例えば、アクティブマトリクス駆動型や単純マトリクス駆動型であることが好ましい。具体的には、電圧駆動型のパルス幅変調方式(PWM)、パルス振幅変調方式(PHM)及びPWMとPHMの併用型や、電流駆動型(結果的に表示素子に印加される電圧波形が変化するため)であることが好ましい。特に、階調値に応じて変調信号の振幅(電界強度)を変調するPHMやPWMとPHMの併用型などは、輝度ばらつきの階調依存性が顕著になるため好ましい。
【0016】
本発明において用いられる表示素子の種類は特に限定されない。例えば、電子放出素子、EL素子、液晶素子、プラズマ素子などを用いることができる。特に、電界強度で輝度が制御される電子放出素子やEL素子などは、輝度ばらつきの階調依存性の観点から、好適に用いることができる。電子放出素子としては、例えば、表面伝導型、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型、BSD型の電子放出素子を用いることができる。
【0017】
複数の表示素子を用いた大面積の画像表示装置では、複数の表示素子間の放出電流のばらつきが大きくなり易いため、明るさのむら(輝度ばらつき)が発生し易い。そのため、複数の表示素子を用いた大面積(画面の対角サイズが20インチ以上)の画像表示装置は、本発明が適用される好ましい形態である。高精細の画像表示装置では、補正データの容量が大きくなるため、転送容量(及び転送に要する時間)も大きくなる。そのため、高精細(2K1K、4K2Kなどの高精細解像度)の画像表示装置は、本発明が適用される好ましい形態である。
【0018】
また、補正データは、画像表示装置の電源が切られてもフラッシュメモリなどの不揮発
性メモリに保持しておく必要がある。そして、起動時や表示モードの切り替え時に、低速な不揮発性メモリから輝度ばらつき補正用のDRAMなどの高速な揮発性メモリへ転送する必要がある。そのため、補正データの保持用のメモリ(ストレージメモリ)と処理用のメモリ(ワークメモリ)の2つのメモリ間で補正データの転送を行わなければならないシステムや、その転送速度が遅いシステムなどは本発明が適用される好ましい形態である。
更に、ワークメモリに記憶された複数の階調値に対応する複数の補正値の中から最低限必要な補正値のみを選択して読み出す方式は、特に本発明が適用される好ましい形態である。
【0019】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1に係る画像表示装置及びその制御方法について説明する。本実施例では、表示素子として電子放出素子を用い、電子放出素子をPWMを含む変調方式で単純マトリクス駆動する場合の例について説明する。また、本実施例では、補正データは、複数の表示素子のそれぞれについて用意されており、1つの表示素子について、補正データはN個(Nは2以上の整数)の階調値に対応するN個の補正値から構成されているものとする。但し、前述したように、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0020】
図1,2は、本実施例に係る画像表示装置及びその制御方法を説明するための代表図である。図1は、本実施例に係る画像表示装置の起動時におけるシーケンス(立ち上げシーケンス)の一例を表す図であり、図2は本実施例に係る画像表示装置全体の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
(表示制御装置全体について)
まず、図2を用いて本実施例に係る画像表示装置の機能構成について説明する。
符号200は表示パネルを示す。表示パネルはマトリクス状に配置された複数の表示素子を有する。本実施例では、表示パネルとして、リアプレートとフェースプレートをスペーサと呼ばれる支持部材を介して対向させた表示パネルを用いた。リアプレートは、複数の表示素子(例えば、冷陰極素子)がマトリクス状に配列されたマルチ電子源(例えば、水平方向5759(=1920×RGB)×垂直方向1080個の電子放出素子214)を有するものとした。フェースプレートは、ガラス基板、複数の電子放出素子とそれぞれ対向するようにガラス基板上に設けられた複数の蛍光体、及び、複数の蛍光体を覆うメタルバックを有するものとした。
【0022】
複数の電子放出素子214は、複数の変調配線212と複数の走査配線213により単純マトリクス配線されている。変調ドライバ210と走査ドライバ211から変調配線212と走査配線213に信号を印加することにより、所望の電子放出素子から電子が放出される。高圧電源216を用いて上記メタルバックの電位を高電位にすることにより、放出された電子は加速し、メタルバックを通過して蛍光体に衝突する。それにより、蛍光体が発光し、画像(映像)が表示される。なお、複数の電子放出素子を有する表示パネルの構成や製造方法は、例えば、特開2000−250463号公報に詳しく開示されている。
【0023】
次に、本実施例に係る画像表示装置の処理、特に、映像信号が入力されてから映像を表示するまでの処理について説明する。画像表示装置は、例えば、映像信号供給装置に接続され、主に、映像信号S1や同期信号T1などの映像信号を用いた処理を行う部分と、通信信号C1などのコマンド信号を用いた処理を行う部分の2種類で構成される。
【0024】
まず、映像信号供給装置から入力された映像信号S1から、変調ドライバ210に入力する駆動信号S6を生成するまでの処理について説明する。
映像信号S1はRGB入力部201に入力される。RGB入力部201は、水平解像度
、走査線数、フレームレート、クロック周波数などが表示パネル200のそれらと整合するように映像信号S1を変換する変換回路や、色温度、ホワイトバランスなどを調整する調整回路などを有する。RGB入力部201は、上記変換回路や調整回路を用いて映像信号S1に所定の処理を施し、信号S2として出力する。
【0025】
信号S2は、逆γ補正部202に入力される。逆γ補正部202は、表示パネルでの輝度値(出力される値)と映像信号の値(データ)が線形になるように、信号S2を変換し、信号S3として出力する。この変換後の信号S3において、データは輝度値に比例するため、以後、信号S3のデータを「輝度データ」と呼ぶ。一般的に、映像信号S1は、CRTディスプレイ装置で表示することを前提として、CRTディスプレイの入力−発光特性に合わせた0.45乗などの非線形変換(ガンマ変換)が施されて伝送あるいは記録さ
れている。逆γ補正部202は、そのような映像信号を、FEDやPDPなどの入力−発光特性が線形な表示デバイスに表示するために、該映像信号に対して、2.2乗などの逆
ガンマ変換を施す。
【0026】
信号S3は、本実施例での特徴となる輝度ばらつき補正部203に入力される。輝度ばらつき補正部203は、信号S3に対し、輝度ばらつき(複数の電子放出素子214間の電子放出特性のばらつき)を低減するための補正処理を施し、信号S4として出力する。輝度ばらつき補正部203の詳細については以降で詳しく説明する。なお、信号S4のデータは輝度ばらつきが補正されたデータであるため、以後、該データを補正輝度データと呼ぶ。
【0027】
信号S4は、蛍光体補正部204に入力される。蛍光体補正部204は、変調ドライバ210の非線形性や蛍光体の輝度飽和特性などを考慮し、選択された表示素子が補正輝度データに比例する輝度で発光するように、信号S4(補正輝度データ)にリニアリティ補正を施し、信号S5として出力する。本実施例では、表示素子として自発光型ではない電子放出素子を想定しているため、選択された電子放出素子に対向する蛍光体が補正輝度データに比例する輝度で発光するように、信号S4にリニアリティ補正を施す。なお、R、G、B各色の蛍光体の輝度飽和特性が異なる場合には、補正輝度データに対し色毎に異なる変換(補正)を施せば良い。
【0028】
信号S5は、駆動変換部205に入力される。駆動変換部205は、RGBパラレルに入力されるデータ(信号S5のデータ)を表示パネル200のRGB蛍光体の配列に対応するように並び替えを行う。また、駆動変換部205は、信号S5のデータを、変調ドライバ210の入力フォーマット(例えば、Mini LVDS、RSDSなど)に合ったデータに変換
し、駆動信号S6として出力する。なお、信号S4,S5のデータは輝度に比例した値をもつデータであるが、駆動信号S6のデータは輝度に対して非線形なデータとなる。
【0029】
なお、各信号処理部(符号201〜205で示される機能)の動作タイミングは、映像信号供給装置から受け取った同期信号T1に基づいてタイミング制御部206が生成する同期信号T2によって制御される。また、各信号処理部(符号201〜205で示される機能)の動作モードは、システム制御部207により、システムバス209を経由して各パラメータを設定することにより制御される。システム制御部207は、論理ロジックのみで構成されていてもよいし、CPUやマイコン、並列演算が可能なメディアプロセッサで構成されていてもよい。制御を行うプログラムはROMに内蔵されていてもよいし、入出力インタフェースを介して外部から転送されてもよい。上記パラメータとしては、データ容量の小さいものから、本実施例での課題にもなっているデータ容量の大きいものまで様々あるが、いずれの場合においても、パラメータは電源遮断時にも記憶されている必要がある。そのため、上記パラメータは、フラッシュメモリなどに代表される大容量の不揮発性メモリ208(ストレージメモリ;第1記憶手段)に格納されており、必要に応じて
システム制御部207により読み出され、設定を行うことができるようになっている。不揮発性メモリ208は、NANDタイプやNORタイプのフラッシュメモリだけではなく、ROMであっても、ハードディスクであっても良い。また、SRAMなどの揮発性メモリを電池駆動により不揮発性メモリのように使う構成であってもよい。
また、システム制御部207は、通信信号C1により、映像信号供給装置側から起動要求や動作モードの切り替え要求などの各種要求を受け取り、エラーがなければその要求に従って画像表示装置の制御を行う。エラーがある場合には、映像信号供給装置側にそれを通知すると共に、画像表示装置のエラー処理(強制シャットダウンなど)をフェイルセーフで行う。
【0030】
次に、駆動変換部205から駆動信号S6が出力されてから、表示パネル200を駆動し、映像表示が行われるまでの処理について説明する。
変調ドライバ210は、駆動変換部205から駆動信号S6を受け取る。そして、変調ドライバ210は、タイミング制御部206からのタイミング制御信号T3に基づき、走査ドライバ211による走査配線の選択期間毎に、変調配線212に変調信号S7を印加する。
走査ドライバ211は、タイミング制御部206からのタイミング制御信号T4に従って順次ライン(走査配線)を選択し、その選択期間に、選択した走査配線へ所定の選択信号を印加する。
駆動電源215は、変調ドライバ210、及び、走査ドライバ211を駆動するための電力を供給する。
【0031】
このように、変調ドライバ210によって、変調配線212が駆動信号S6に応じた変調信号で駆動され、それと同時に、走査ドライバ211によって、走査配線213に選択電位(走査パルス)が出力される。それにより、選択された走査配線213と、変調信号が印加されている変調配線212とに接続されている電子放出素子214は、変調配線212の変調信号に応じた電子放出を行う。
【0032】
高圧電源216は、加速電圧(8〜10kV)を発生し、該加速電圧によりメタルバックの電位を高電位にする。それにより、電子放出素子から放出された電子は、加速し、蛍光体に衝突する。そして、蛍光体への電子の衝突により、該蛍光体が発光する。
全ての走査配線を順次選択して、上記処理を行うことにより、表示パネル200に1画面分の画像が形成(表示)される。
なお、駆動電源215と高圧電源216は、システム制御部207からのコントロール信号C2,C3により適応的に制御可能に構成されていることが好ましい。特に、起動時、電源オフ時、及び、エラー発生時には適切な立ち上げ/立ち下げシーケンスで各電源の駆動順序や、高圧電源の昇圧、降圧方法が制御されることが好ましい。
【0033】
(多値補正の必要性について)
次に、輝度ばらつき補正部203において多値補正が必要となる理由について以下に説明する。多値補正とは、階調値毎に異なる輝度ばらつきに対して、少なくとも2つ以上の階調値に対応する補正値を用いた補正処理のことを意味する。
【0034】
まず、変調ドライバ210の変調信号の一例について説明する。電子放出素子は印加する駆動電圧に応じて放出電流を制御できるので、変調信号のパルス振幅によって輝度を制御することができる。また、変調信号のパルス幅により輝度を制御することもできる。
本実施例では、図3に示すような、パルス幅とパルス振幅を変調する方式で表示パネルを駆動する場合について説明する。図3では、縦軸を電位、横軸を時間として、各階調値に対応する変調信号の波形(駆動波形)が横に並べて示されている。ここで階調値は、変調信号のとりうる信号レベルの小さいものから順につけられた番号であり、駆動変換部2
05から出力される駆動信号S6に相当する。
【0035】
このような変調方式では、注目する階調値の駆動波形とその前後の階調値に対応する駆動波形との間のパルス幅及びパルス振幅の差が小さいほど、注目する階調値における階調性能が高くなる。また、本変調方式では、パルス振幅が一定のPWM変調方式に比べ、低輝度領域(低階調領域;階調値の小さい領域)において上記差を小さくできる。そのため、低階調領域での階調値の数を多くすることができる(低階調領域での階調性能を高くすることができる)。しかしながら、本変調方式では、低階調側でパルス振幅が通常のPWMの場合に比べ低くなるため、輝度ばらつきが低階調側で大きくなる。以下に、このような輝度ばらつきの階調依存性について詳しく説明する。
【0036】
輝度ばらつきの要因について本発明者らが鋭意検討した結果、輝度ばらつきは複数の電子放出素子間の放出電流のばらつきによるものが大きいことがわかった。図4に、横軸を駆動電圧、縦軸を放出電流とする電子放出素子の特性の模式的なグラフを示す。駆動電圧は、電子放出素子214に印加される電圧(Vf)であり、選択信号の電位(−Vss)と変調信号の電位(VA)の差(Vf=VA+Vss)である。また、図4は、選択信号の電位(−Vss)を−7.5V、変調信号の電位(VA)の最大値を7Vとしたときの図である。図4から、選択信号が印加されている電子放出素子からは、変調信号の電位(VA)に応じて電子が放出されることがわかる。一方、選択信号、変調信号、または、それら両方が印加されていない電子放出素子からは電子が放出されないことがわかる。
【0037】
実際の表示パネル200では、複数の電子放出素子間で特性のばらつきが少なからずある。図4には、一例として、2つの電子放出素子の特性を模式的に示した。図4において、Aで示した部分は変調信号の電位が高い部分であり、2つの素子間で放出電流値は比較的一致している。一方、Bで示した部分は変調信号の電位が部分Aよりも低い部分であり、2つの素子間で放出電流値は大きくずれる(ばらつく)ことがわかる。また、部分Aと部分Bの間の駆動電圧では、2つの素子間の放出電流値は、部分Bほどではないが部分Aよりも大きくずれる。この放出電流値のばらつきは、複数の表示素子間の輝度ばらつきが生じる原因となる。また、駆動電圧の値によって放出電流値のばらつきが異なることは、輝度ばらつきの階調依存性が生じる原因となる。
【0038】
また、複数の電子放出素子間で放出点数(電子を放出する位置の数)がばらついた場合には、各電子放出素子の特性は図4の縦軸を定数(放出点数の比)倍させた特性となるため、輝度ばらつきの階調依存性は殆ど生じない。一方、電子放出素子の電界増倍係数(エミッタとゲート間の距離や形状)がばらついた場合には、各電子放出素子の特性は図4の横軸を定数(駆動電界の比)倍させた特性となるため、輝度ばらつきの階調依存性が顕著に発生する。よって、放出点数と電界増倍係数が独立にばらついた場合に、複数の階調値間の輝度ばらつきの関係は、放出点数のばらつきと電界増倍係数のばらつきの内容によって変化する。そのため、正確な補正値を得るためには、少なくとも2つの階調値について輝度のばらつきを計測しなければならない。そして、輝度ばらつきが階調依存性を有する場合があるため、階調値毎に各表示素子用の補正値が必要となる。低階調領域に対して補正処理を施す場合には、低階調領域内の階調値毎の補正値が必要となる。
【0039】
以上の理由から、多値補正が必要となる。
しかしながら、全階調値のそれぞれについて各表示素子用の補正値を用意すると、データ容量が膨大になり、ハードウェアで実現するには現実的ではない。そこで、本実施例では、全階調値のうち何個かの代表階調値を選択し、それ以外の階調値に対応する補正値は、代表階調値に対応する補正値を補間して得られる補正値カーブを用いて生成する。
図5は、補正値の階調依存性を示しており、表示素子A2の輝度に合うように表示素子A1と表示素子A3の階調値を補正する場合の例である。
そして、図5は、表示素子A3のプロット点を理想値とし、階調値m以下を4つの代表階調値に対応する4つの補正値(U(Upper)点、M(Middle)点、L(Lower)点、L’(Lower’)点)を補間した場合を示している。しかしながら、図5の例では、補正値間
をリニア補間しているため、補正値カーブが誤差(補間誤差)を含んでしまう(理想値と補正値カーブから得られる値とにずれが生じてしまう)。補正値カーブの誤差を小さくするためには、代表階調値の数はある程度多くなくてはならない。
【0040】
(多値補正を実現するための具体例)
上述したような補正値カーブを用いた多値補正を実現するためのハードウェア構成について図6を用いて説明する。図6は、輝度ばらつき補正部203の詳細を示すブロック図である。図6は、大きく分けて、補正データ書き込み転送処理系と補正データ読み出し演算処理系の2つの処理系に分けられる。以下に各処理系について詳細に説明する。
【0041】
・補正データ書き込み転送処理系について
この処理系は、輝度ばらつき補正を行う前段階として、起動時に、低速な不揮発性メモリから高速な揮発性メモリへ補正データを転送するために具備されている。具体的には、起動時に、システム制御部207が、システムバス209をメモリ書き込み制御部1000に開放する。そして、準備が整った段階で、システム制御部207が、不揮発性メモリ208に格納された補正データをメモリ書き込み制御部1000に対して連続的に読み出すことで転送が行われる。このような転送は、一般に、DMA転送と呼ばれる。
【0042】
メモリ書き込み制御部1000は、システムバス209を用いて転送された補正データを、内部のバッファに格納すると共に、高速動作が可能な揮発性メモリ1002へ書き込む。なお、メモリ書き込み制御部1000は、補正データを揮発性メモリ1002に書き込む際に、必要に応じてそのフォーマットを変換する。即ち、本実施例では、システム制御部207とメモリ書き込み制御部1000とで、本発明の転送手段が構成されている。揮発性メモリ1002は、ワークメモリとして用いられるメモリ(第2記憶手段)である。揮発性メモリ1002は、安価で高速動作が可能な、SDRAMやDDR2−SDRAMなどを代表するDRAMやSRAMなどで構成するのが一般的である。
【0043】
図5の例では4つの階調値の補正値が転送されるので、表示素子の数を1920×1080×3
(=RGB)、1つの補正値を8bitとすると、転送容量は以下のように計算された。
転送容量=1920×1080×8bit×3(=RGB)×4=199065600bit(=12441600word)
システム制御部207が一般的な16ビットマイコンなどの場合を想定し、上記転送容量の転送時間を計算した。具体的には、システムバス209のバスクロックを25MHzとし、DMA転送の1バスサイクルで1wordのデータが7サイクルの時間で転送されるとすると、転送時間は以下のように計算された。
転送時間=12441600word×40ns×7=2.18sec
この数秒かかる転送時間は、本実施例で課題とするものである。
【0044】
・補正データ読み出し演算処理系について
この処理系は、揮発性メモリ1002から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し輝度ばらつき補正を施すために具備されている。具体的には、多値補正演算部1001(補正手段)において、揮発性メモリ1002から読み出した補正値を補間して得られる補正値カーブを用いて、信号S3の階調値が補正され、信号S4として出力される。
【0045】
システム制御部207は、多値補正演算部1001に対して、多値補正の開始を指示する。多値補正演算部1001は、タイミング制御部206からの同期信号T2に同期して、揮発性メモリ1002から、4つの階調値に対応する4つの補正値を読み出す。そして
、セレクタ1003で上記読み出された4つの補正値から多値補正に最低限必要な2つの補正値を選択し、補間演算部1004に出力する。
【0046】
ここで、図5の場合を例にセレクタ1003による選択方法について説明する。
セレクタ1003は、信号S3(輝度データ)の階調値がU点とM点の階調値の間の階調値である場合は、U点とM点を選択する。M点とL点の階調値の間の階調値である場合は、M点とL点を選択する。L点とL’点の階調値の間の階調値である場合は、L点とL’点を選択する。階調値がU点より大きい場合はU点、L’点より小さい場合は、L’点を選択する。
【0047】
上述した、揮発性メモリ1002から4つの補正値を読み出して、セレクタ1003で最適な2つの補正値を選択する方法(4値読み出し2値選択方式)は、メモリの読み出し帯域の観点において無駄が多い。揮発性メモリ1002から最適な2つの補正値を選択的に読み出すことが可能であるならば、そのような方法(2値選択読み出し方式)の方がメモリの読み出し帯域の観点から好ましい。なお、その場合にはセレクタ1003は不要となる。
以下では、4値読み出し2値選択方式を例にして説明する。
【0048】
補間演算部1004における演算方法について具体的に説明する。輝度データの階調値をdinとし、dinがM点とL点の階調値の間の階調値である場合について説明する。M点の座標を(m_th,m_coef),L点の座標を(l_th,l_coef)とすると、階調値dinに対応する
補正値dout(補間後補正値)は以下の式にて算出することができる。
dout
=(1/(m_th−l_th))×((m_coef−l_coef)×din+m_th×l_coef−l_th×m_coef)
=(1/(m_th−l_th))×(l_coef×(m_th−din)+m_coef×(din−l_th))
(但し、l_th<din<m_th)
そして、乗算部1005で補正値doutを輝度データに乗算することにより、補正輝度データ(信号S4)が得られる。そのため、補正値が1の場合には輝度データはそのまま出力され、1未満の場合には階調値を低くする(輝度を下げる)補正がされ、1より大きい場合には階調値を高くする(輝度を上げる)補正がされることになる。なお、dinの値が
U点とM点、L点とL’点の階調値の間の階調値である場合にも、同様の方法で補正値を算出すればよい。また、輝度データの階調値がUとL’の補正値に対応する階調値の間の階調値でない場合は、U点やL’点を補正値とすればよい。
【0049】
(従来の画像表示装置の起動時の処理について)
上述したように、数秒かかる転送時間は、本実施例で課題とするものである。この課題の重要性について、図7、図8を用いて説明する。
図8は、従来の立ち上げシーケンス(各種状態の変化のタイミング)を示す図である。時刻t0で映像信号供給装置が起動すると(映像信号供給装置の電源がオンされると)、0.6sec後の時刻t1に画像表示装置が起動する(画像表示装置の電源がオンされる)。画像表示装置が起動すると、システム制御部207はリセットされ、図7のフローチャートに従い立ち上げ処理を開始する。
【0050】
まず、図7のS101において、リセット処理や初期化処理を行う。この処理は、ブート処理によるプログラムのロード、ハードウェアのリセット処理、内部クロック生成を行うPLLや揮発性メモリ1002などのすべての初期化処理を含み、画像表示装置の状態を正常な動作状態にするための一連の処理である。
そして、S102で初期化完了を確認すると、S103で、駆動変換部205から出力する駆動信号S6を強制的に黒レベルにする(ミュート処理)。これは、例えば、不用意に意図しない映像を出力しないようにするなどの保護目的のために行われる。
【0051】
S104(時刻t2)では、補正転送/反映処理を行う。具体的には、前述したように、S105において、補正データの転送を開始する。そして、S106(時刻t5)にて、表示素子毎にN個(本実施例では、N=4)の補正値が転送された場合には、S107でそれらの補正値(補正データの全部)を用いた補正処理(N値補正処理)を有効(実行可能)にする。補正データの全部を用いた補正処理とは、上述したように、N個の補正値を補間して得られる補正値カーブを用いて入力された映像信号の階調値を変換する処理である。
次に、S108において、時刻t3において有効になった映像信号供給装置からの表示要求信号を検知すると、S109で、ミュート処理をオフにする。具体的には、駆動信号S6を補正データの全部を用いた輝度ばらつき補正が施された映像信号に切り替える。なお、表示要求信号は、映像信号供給装置から安定して映像信号が入力されることを知らせる信号である。具体的には、映像信号供給装置から、同期信号T1と図示しない映像用のクロック出力が安定して出力され、且つ、表示可能な映像信号S1が出力された時に有効となる信号である。なお、表示要求信号が有効になると同時に、放送されている映像信号が表示可能(放送表示可能)となってもよいし、それ以降に放送表示可能となってもよい。
そして、S110で駆動電源215を立ち上げ(駆動)、S108で高圧電源216を立ち上げることにより、表示パネルでの映像表示(輝度ばらつき補正が施された映像信号に基づく映像の表示)が開始される。
【0052】
このように、従来の方法では、映像供給装置を起動してから映像が表示されるまでの時間(起動時間)は3秒前後かかってしまう(図8)。そして、この時間は表示パネル200の階調性向上と、高精細化に伴い更に増える可能性がある。例えば、暗部(低階調領域)の階調性能を向上するには、低階調領域においてより多くの階調値に対応する補正値が必要となるため、起動時間が長くなる。具体的には、4個から6個に補正値が増えると、起動時間は1.5倍の4.5秒になる。また、4K2Kなどデジタルシネマに対応した超
高精細化により、データ量がHDに比べ4倍に増えるので、起動時間は12秒と一気に増えてしまう。
【0053】
本実施例では、画像表示装置の起動後、補正データの一部のデータが揮発性メモリ1002に書き込まれた時点で、多値補正演算部1001により上記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、映像表示を開始する。そして、補正データの残りのデータが揮発性メモリ1002に書き込まれた後に、多値補正演算部1001による補正処理を補正データの全部を用いた補正処理に切り替える。それにより、輝度ばらつきが低減された映像を短時間で表示する。以下、詳しく説明する。
【0054】
(本実施例にかかる画像表示装置の起動時の処理について)
実施例1にかかる画像表示装置の起動時の処理の具体的な例について、図9と図10を用いて説明する。
図9は、図7のS104の補正転送/反映処理に相当し、本実施例の特徴を表わす補正データの段階的な転送と補正の反映方法を示すフローチャート(システム制御部207の処理の流れを示すフローチャート)である。図10は、本実施例の立ち上げシーケンスの一例を示すタイミング図である。なお、本実施例では、システム制御部207、及び、後述する補正値出力制御部2000で本発明の制御手段が構成されている。
【0055】
図7のS103の次に、図10の時刻t2において、システム制御部207は、これから転送すべきN個の補正値の内、最初に転送するn個(nは1以上N未満の整数;本実施例では2つ)の第1補正値を選択する(S201)。以後、n個の第1補正値(補正データの一部のデータ)を第1補正データと呼ぶ。本実施例では、図5の階調値m以下の全域
において、平均的な補間誤差をできる限り減らすような2つの補正値(U点とL’点)を選択するものとした。これらの補正値は、システム制御部207のプリセット値として不揮発性メモリ208に記憶してあり、S201でロードされる。なお、この選択方法はあくまで一例であって、この2点以外の組み合わせを選択しても良い。
【0056】
次に、S202において、不揮発性メモリ208に格納されている上記選択した第1補正値を、揮発性メモリ1002に転送する。
そして、S203(時刻t5)にて第1補正データの転送が終了した場合、S204において、セレクタ1003で強制的に第1補正値(2値)を選択し、第1補正値を用いた補正処理(暫定的な補正処理:第1補正処理)を有効にする。暫定的な補正処理は、n個の補正値(第1補正値)を補間して得られる補正値カーブを用いて入力された映像信号の階調値を変換する処理である(n値補正処理)。
次に、S205において、時刻t3において有効になった表示要求信号を検知すると、S206で、駆動信号S6を暫定的な補正処理が施された映像信号に切り替える(ミュート処理オフ)。そして、S207で駆動電源を立ち上げ、S208で高圧電源を立ち上げることにより、表示パネル200での映像表示が開始される(具体的には、時刻t5は放送表示可能となる時刻t4より後のため、放送表示が開始される)。
【0057】
次に、S209(時刻t5)にて、不揮発性メモリ208に格納されている残りの補正値(第2補正値;本実施例では、M点とL点)を、揮発性メモリ1002に転送する。以下、残りの補正値を第2補正データと呼ぶ。
そして、S210(時刻t6)にて第2補正データの転送が終了した場合、S211において、補正データの全部を用いた補正処理(第2補正処理)を有効にする。換言すれば、補正処理を第1補正処理から第2補正処理に切り替える。それにより、補正値カーブは、図5に示す第1補正値カーブから第2補正値カーブに切り替わる。具体的には、セレクタ1003での補正値の選択方式を、前述した輝度データを参照して2点を選択する方式(4値読み出し2値選択方式)に切り替える。
【0058】
このように、本実施例では、補正データの一部のデータが書き込まれた時点で、暫定的な補正処理及び映像表示を開始する制御を行うことにより、輝度ばらつきが低減された映像を短時間で表示することができる。具体的には、半分の補正データを転送して、暫定的な補正処理及び映像表示を開始する制御を行うことにより、従来と同様のシステム構成で、映像表示までの時間を1/2に短縮することができる。なお、第1補正処理では、第2補正処理に比べ補正値カーブの補間誤差が大きくなるが、比較的短い時間で補正処理は第2補正処理に切り替わるため、映像において見た目の画質的な問題はほとんど生じない。
【0059】
(暫定的な補正処理時におけるメモリアクセスの課題について)
ここで、暫定的な補正処理時におけるメモリアクセスの課題について説明する。図10の時刻t5から時刻t6までの期間では、揮発性メモリ1002への第2補正データの書き込みと、揮発性メモリ1002からの第1補正データの読み出しの両方が行われる。そのため、揮発性メモリ1002に対し、第1補正データ(2値)の読み出しと第2補正データ(2値)の書き込みを時分割で処理できるメモリ帯域を割り当てる必要がある。
【0060】
4値読み出し2値選択方式の場合、時刻t6以降に第1補正データと第2補正データ(4値)の読み出しができるように、メモリ帯域が割り当てられる。そのため、時刻t5から時刻t6までの必要帯域が時刻t6以降の必要帯域を超えることはない。
しかしながら、2値選択読み出し方式の場合、時刻t6以降は、4値から選択された2値の読み出しのみが行われる。そのため、時刻t6以降の必要帯域より時刻t5から時刻t6までの必要帯域が大きくなってしまう。時刻t5から時刻t6までの必要帯域に合わせてメモリ帯域を割り当てれば問題無い。しかしながら、この期間は電源投入時に1回だ
け生じる比較的短い時間(数秒)の期間であるため、この期間のために大きなメモリ帯域を割り当てることは、コストの増加を招き、適切ではない。
【0061】
一方、映像には垂直ブランキング期間(或るフレームの最後のラインを表示してから次のフレームの最初のラインを表示するまでの期間)がある。この垂直ブランキング期間は補正データの読み出しを休止する期間である。そこで、この垂直ブランキング期間を利用して第2補正データ(2値)の書き込みを行う方法も考えられる。この場合の転送時間を概算すると、図10の例では第2補正データの転送時間は1.1秒なので、1フレーム分の処理時間の4%が垂直ブランキング期間である場合、第2補正データの転送に1.1秒/4%=28.72秒要することとなる。このような長い時間、暫定的な補正処理を行うことは画質の観点から問題となる。
【0062】
そこで、本実施例では、第1補正データが揮発性メモリ1002に書き込まれてから第2補正データが不揮発性メモリ1002に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する暫定的な補正処理を省略する。それにより、多値補正演算部1001が不揮発性メモリ1002にアクセスしない非読み出し時間を生成する。そして、このような非読み出し時間を、転送手段が揮発性メモリ1002へ第2補正データを書き込む処理に割り当てる。
【0063】
以下、図1を用いて具体的に説明する。図1は、本実施例において特徴となる立ち上げシーケンスの一例を示す。本実施例に係る立ち上げシーケンスは、2値選択読み出し方式の場合に特に好適に適用できる。図1は映像供給装置側からフレームレートが120Hzの映像信号が入力された場合の例である。
本実施例において特徴的なのは、暫定的な補正処理が省略された上記一部のフレーム(補正オフのフレーム)の代わりに黒画面(ミュート)を表示パネルで表示する点である。具体的には、第2補正データの書き込みと第2補正データの読み出しが重なる期間において、黒挿入により、映像のフレームレートを1/2にする。即ち、図1の例では、時刻t5から時刻t6の期間では、60Hzのフレームレートで黒画面の表示が行われ、映像のフレームレートが120Hzから60Hzにされる(黒挿入60Hz駆動)。このとき、補正処理として第1補正データを用いた2値補正処理が行われる。時刻t6以降では、黒挿入が解除され、映像のフレームレートは120Hzに戻される(120Hz駆動)このとき、補正処理として4値補正処理が行われる。
【0064】
本実施例では、補正値出力制御部2000が、映像信号の垂直同期信号を元に、黒挿入の期間(暫定的な補正処理を省略する期間)を識別する信号を書き込み許可信号として生成する。そして、多値補正演算部1001は、書き込み許可信号に基づいて、黒挿入の期間に揮発性メモリ1002からの補正データの読み出しを停止すると共に、補正値セレクタ2001により、補間後の補正値を設定補正値(0.0)に切り替える。また、メモリ書き込み制御部1000は、書き込み許可信号に基づいて、黒挿入の期間にのみ前述したDMA転送を行うようシステム制御部207を制御する。一方、この黒挿入の期間以外の期間では、揮発性メモリ1002からの補正データの読み出しが行われ、補正値セレクタ2001は補間後の補正値の選択を行う。また、システム制御部207は、DMA転送を行わないように制御される。
【0065】
以上説明したような制御を行うことにより、第2補正データの転送時間は図1の例では1.1秒×2=2.2秒と十分に短くすることができる。それにより、暫定的な補正処理による画質への影響を低減することができる。
【0066】
なお、図1の例では、映像信号のフレームと黒画面とを交互に表示する場合(即ち、映像信号のフレームと黒画面の数の比が1:1の場合)を示しているが、映像信号のフレー
ム数:黒画面数は2:1,3:1,4:1・・・などであってもよい。また、映像信号が、オリジナルフレームと、オリジナルフレームを用いて生成された、オリジナルフレーム間を補間する補間フレームとからなる場合、補間フレームの画質はオリジナルフレームの画質に比べ低くなる。そのため、オリジナルフレームではなく、補間フレームに対する暫定的な補正処理を省略することが画質の観点から好ましい。例えば、映像供給装置がオリジナルフレームと補間フレームを区別するフレーム識別信号を出力すればよい。そして、補正値出力制御部2000が、垂直同期信号とフレーム識別信号に従い、補間フレームの期間を黒挿入の期間とする書き込み許可信号を生成すれば良い。
【0067】
また、表示パネル200がインパルス型の表示装置の場合、時刻t5から時刻t6の期間では、同一映像であれば、時刻t6以降の期間より時間平均された表示輝度(時間平均輝度)が暗くなってしまう。具体的には、図1の例の場合、黒画面と映像のフレームとが交互に表示されるため、黒挿入を行わない場合に比べ時間平均輝度は1/2となる。そのため、映像のフレームレートが60Hzから120Hzに切り替わるときに、輝度が変化し(時間平均輝度が2倍になり)、視聴者に違和感を与えてしまう虞がある。
そこで、本実施例では、図2の輝度ばらつき補正部203よりも前段に入力された映像信号の輝度を低減するゲイン乗算回路(不図示;低減手段)を用意する。そして、システム制御部207が、第2補正処理が開始された時点で、入力された映像信号の輝度が、時刻t5から時刻t6の期間の時間平均輝度と等しくなるようにゲイン乗算回路による輝度の低減率を設定する。その後に、低減率が0になるまで、入力された映像信号の輝度を段階的に高める。ゲイン乗算回路でゲイン値を乗じることにより映像信号の輝度を低減する場合には、例えば、時刻t5から時刻t6の期間でゲイン値を1とし、時刻t6以降で、輝度の変化が見えないように、ゲイン値を0.5から1に段階的に近づける制御を行えばよい。なお、上述した輝度制御はあくまで一例であって、輝度の変化によって視聴者に違和感を与えなければどのように制御してもよい。また、低減率は、入力された映像信号によらず、フレームレートの変化(切り替え前後のフレームレート)に応じて、切り替え前後に表示される映像の時間平均輝度の差分を補償するように、予め決められていてもよい。
【0068】
また、表示パネル200がインパルス型の表示装置の場合、時刻t5から時刻t6の期間でフリッカが目立つ可能性がある。そのため、表示パネル200がインパルス型の表示装置の場合には、時刻t5から時刻t6の期間において輝度を絞り(例えば、ゲイン値を約0.5とする)、フリッカを目立たなくすればよい。そして、時刻t6以降では、輝度の変化が見えないようにゲイン値を0.25から段階的に1に近づける制御を行えばよい。
【0069】
以上説明したように、本実施例によれば、補正データの一部のデータが書き込まれた時点で、暫定的な補正処理及び映像表示制御を行うことにより、輝度ばらつきが低減された映像を短時間で表示することができる。また、映像信号の一部のフレームに対する暫定的な補正処理を省略し、その期間を補正データの残りのデータをワークメモリへ書き込む処理に割り当てることにより、上記効果をワークメモリの処理帯域の増加を招くことなく得ることことができる。
【0070】
<実施例2>
実施例1では、黒挿入により映像のフレームレートを1/2に減じる例を説明した。本発明の実施例2では、映像のフレームレートを減じることなく、実施例1と同様の効果を得る方法について、図11を用いて説明する。
図11に示すように、本実施例では、時刻t5以降の全ての期間において120Hzのフレームレートで映像の表示を行う。但し、時刻t5から時刻t6までの転送処理の書き込みと補正処理の読み出しが重なる期間においては、映像のミュートに変えて、2値補正
のオン/オフをフレーム単位で切り替えた映像を表示する(暫定120Hz駆動)。
【0071】
本実施例では、補正値出力制御部2000が、垂直同期信号を元に、暫定的な補正処理を省略する期間(補正オフ期間)を識別する信号を書き込み許可信号として生成する。そして、この書き込み許可信号を用いて、実施例1と同様に揮発性メモリ1002への補正データの書き込み、揮発性メモリ1002からの補正データの読み出しを制御することにより、実施例1と同様の効果が得られる。
【0072】
また、時刻t5から時刻t6の期間において暫定的な補正処理のオン/オフをフレーム単位で切り替えることに対して考慮すべき課題が2つある。1つ目は補正性能の低下である。2つ目は、暫定的な補正処理のオン/オフによる輝度の変化に起因した表示の違和感である。
【0073】
1つ目の課題について説明する。暫定的な補正処理正のオン/オフを切り替える場合、補正誤差が時間方向に平均化されるため、暫定的な補正処理を連続して行う場合と比較して補正誤差が増えてしまう。このような補正誤差の増加は、表示パネル200の輝度ばらつきが少なく、且つ、時刻t5から時刻t6の期間の長さが本実施例のように2.2秒と比較的に短い場合には、見た目ではほとんどわからない。しかしながら、表示パネル200の輝度ばらつきが大きい場合には、補正誤差を低減する(目立たなくする)ことが好ましい。具体的には、暫定的な補正処理のオン/オフの期間のデューティ比を変更可能することが好ましい。デューティ比は暫定的な補正処理を施すフレーム(補正オンフレーム)と、省略するフレーム(補正オフフレーム)との数の比である。例えば、補正オンフレーム:補正オフフレームを3:1とすることにより、補正誤差を目立たなくすることができる。なお、デューティ比(補正オンフレーム:補正オフフレーム)は3:1に限らず、2:1,4:1,5:1などであってもよい。
このような機能は、具体的には、補正値出力制御部2000が、デューティ比によって書き込み許可信号を変更することにより実現できる。しかしながら、補正オフフレームに対する補正オンフレームの数を多くすればするほど、補正誤差は目立たなくなるが、時刻t5から時刻t6の期間の長さは長くなる。例えば、補正オンフレーム:補正オフフレームを3:1とすると、1:1の場合に比べ、時刻t5から時刻t6の期間の長さは2倍(4.4秒)となってしまう。つまり、デューティ比と時刻t5から時刻t6の期間の長さとはトレードオフの関係にあり、両者による画質への影響が最も小さくなるようにデューティ比を決定することが好ましい。
【0074】
2つ目の課題について説明する。輝度ばらつき補正(補正データの一部を用いた補正処理または補正データの全部を用いた補正処理)では、画素毎に、輝度値が目標輝度値(目標値)となるように変換される。そのため、同じ画像を表示する場合に、輝度ばらつき補正がオンの時とオフの時とでは平均輝度が異なる。これについて図12を用いてより詳しく説明する。図12は表示パネル200の補正前の輝度ばらつき分布と目標輝度値の一例を示す図である。補正前の輝度ばらつき分布から、例えば平均輝度より3σ(σは標準偏差)だけ低い位置の輝度値(図12の例では平均輝度の73%)が目標輝度値とされる。もちろん、これらの数値は一例であり、画像表示装置の輝度むらの仕様や補正前の輝度ばらつき分布に応じて適宜設定すればよい。そして、図12の太線(矢印)で示した範囲は補正範囲を示している。即ち、本実施例では、目標輝度値より低い輝度値の画素は、輝度ばらつきの補正の対象とされない(そのような画素は補正残りとなる)。そのため、図12の例では、輝度ばらつき補正を施した後の平均輝度は、輝度ばらつき補正を施す前の平均輝度の約73%となる。
そこで、本実施例では、補正オフフレームの平均輝度が、該補正オフフレームの画像と同じ画像に輝度ばらつき補正を施した場合の平均輝度と等しくなるように、該補正オフフレームの輝度を全体的に所定の割合だけ低減する(補正前の73%とする)。それにより
、暫定的な補正処理のオン/オフによる輝度の変化に起因した表示の違和感を防止することができる。
具体的には、実施例1で述べた輝度制御のためのゲイン値は1とする。そして、暫定的な補正処理を省略する期間において、多値補正演算部1001は、揮発性メモリ1002からの第1補正データの読み出しを停止すると共に、補正値セレクタ2001により、補間後の補正値を設定補正値(0.73)に切り替える。それにより、上記機能を実現することができる。
【0075】
以上説明したような制御を行うことで、フレームレートを減じることなく、実施例1と同等な効果を得ることが可能になる。
なお、本実施例では、補正オフフレームの平均輝度が、該補正オフフレームの画像と同じ画像に輝度ばらつき補正を施した場合の平均輝度と等しくなるように、該補正オフフレームの輝度を全体的に低減する構成とした。しかしながら、そのような制御は行わず、輝度ばらつきが目立たない程度に輝度を全体的に低減する構成であってもよい。そのような構成であっても、実施例1と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
200 表示パネル
207 システム制御部
208 不揮発性メモリ
1000 メモリ書き込み制御部
1001 多値補正演算部
1002 揮発性メモリ
2000 補正値出力制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、
前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、
ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、
前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、
前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、
制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始し、
前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替え、
前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、
前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てる
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記暫定的な補正処理が省略された前記一部のフレームの輝度を全体的に所定の割合だけ低減する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記暫定的な補正処理が省略された前記一部のフレームの代わりに黒画面を前記表示パネルで表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
入力された映像信号の輝度を低減する低減手段を更に有し、
前記制御手段は、前記補正データの全部を用いた補正処理が開始された時点で、前記低減手段に、それ以降に表示される映像の時間平均輝度と、前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間に表示される映像の時間平均輝度との差分を補償するように予め設定された低減率で、入力された映像信号の輝度を低減させ、
前記低減率は、入力された映像信号の輝度を段階的に高めるように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記所定の割合は、前記一部のフレームの平均輝度が、該フレームの画像と同じ画像に前記補正処理を施した場合の平均輝度と等しくなるように設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記入力された映像信号は、オリジナルフレームと、オリジナルフレームを用いて生成された、オリジナルフレーム間を補間する補間フレームとからなり、
前記制御手段は、前記補間フレームに対する前記暫定的な補正処理を省略する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示素子は、電子放出素子である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、
前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、
ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、
前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、
前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、
を有する画像表示装置の制御方法であって、
前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始するステップと、
前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替えるステップと、
前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てるステップと、
を有することを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、
前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、
ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、
前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、
前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、
制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始し、
前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替え、
前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、
前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てる
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記暫定的な補正処理が省略された前記一部のフレームの輝度を全体的に所定の割合だけ低減する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記暫定的な補正処理が省略された前記一部のフレームの代わりに黒画面を前記表示パネルで表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
入力された映像信号の輝度を低減する低減手段を更に有し、
前記制御手段は、前記補正データの全部を用いた補正処理が開始された時点で、前記低減手段に、それ以降に表示される映像の時間平均輝度と、前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間に表示される映像の時間平均輝度との差分を補償するように予め設定された低減率で、入力された映像信号の輝度を低減させ、
前記低減率は、入力された映像信号の輝度を段階的に高めるように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記所定の割合は、前記一部のフレームの平均輝度が、該フレームの画像と同じ画像に前記補正処理を施した場合の平均輝度と等しくなるように設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記入力された映像信号は、オリジナルフレームと、オリジナルフレームを用いて生成された、オリジナルフレーム間を補間する補間フレームとからなり、
前記制御手段は、前記補間フレームに対する前記暫定的な補正処理を省略する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示素子は、電子放出素子である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
マトリクス状に配置された複数の表示素子を有する表示パネルと、
前記複数の表示素子間の輝度ばらつきを低減するための補正処理で用いられる補正データを記憶する第1記憶手段と、
ワークメモリとして用いられる第2記憶手段と、
前記補正データを前記第1記憶手段から前記第2記憶手段へ転送する転送手段と、
前記第2記憶手段から補正データを読み出して、入力された映像信号に対し前記補正処理を施す補正手段と、
を有する画像表示装置の制御方法であって、
前記転送手段により前記補正データの一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれた時点で、前記補正手段により前記一部のデータを用いた暫定的な補正処理を開始するとともに、前記表示パネルでの映像表示を開始するステップと、
前記転送手段により前記補正データの残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれた後に、前記補正手段による補正処理を前記補正データの全部を用いた補正処理に切り替えるステップと、
前記一部のデータが前記第2記憶手段に書き込まれてから前記残りのデータが前記第2記憶手段に書き込まれるまでの期間において、入力された映像信号の一部のフレームに対する前記暫定的な補正処理を省略することによって、前記補正手段が前記第2記憶手段にアクセスしない非読み出し時間を生成し、前記非読み出し時間を、前記転送手段が前記第2記憶手段へ前記残りのデータを書き込む処理に割り当てるステップと、
を有することを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−253056(P2011−253056A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126892(P2010−126892)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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