説明

画像表示装置及びその制御方法

【課題】隣接する列配線間の容量結合に起因した輝度変動(クロストーク)、特にその面内分布に起因した画質不良が効果的に抑制できる技術を提供する。
【解決手段】画像表示装置が、隣接する列配線間の容量結合に起因する輝度変動を補正する補正処理を画像信号に対して施す補正手段を有している。この補正手段は、補正対象画素の信号値と補正対象画素の隣の列配線の画素である隣接画素の信号値の組み合わせと、補正対象画素の列方向の位置とに基づいて、補正値を決定する補正値生成手段と、補正値生成手段で生成された補正値を用いて補正対象画素の信号を補正する補正演算手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクス駆動方式の表示パネルに発生するクロストークを抑制した画像表示装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、有機EL表示装置(OLED)、フィールドエミッション表示装置(FED)が知られている。
中でもFEDはパッシブマトリックス構造であり、行配線と列配線との交差点に電界放出素子が位置するシンプルなパネル構造になっているため、低コストでありながら、高速応答という特徴を持つ。
【0003】
図2は、一般的なマトリクス駆動方式の画像表示装置(例えばFED)の基本的な構成例である。背面基板16上には、複数の列配線14と複数の行配線15が形成されており、列配線14と行配線15との各交点に画素(表示素子)が形成されている。列配線14が列配線駆動回路12に接続され、行配線15が行配線駆動回路13に接続されることにより、表示装置モジュールが構成されている。
また図2の画像表示装置は、デジタル映像信号が入力される制御回路11を備えている。行配線駆動回路13は、駆動対象とする行配線15に走査信号(選択電圧)を印加し、他の行配線15に非選択電圧を印加する回路である。行配線15は、例えば1ラインずつ上から順次駆動(走査)される。列配線駆動回路12は、駆動行の映像信号(輝度信号)から各列の駆動波形(変調信号)を生成し、各列配線14に印加する。これにより表示素子の輝度(電子放出素子の電子放出量)が変調されて所望の映像を出力する事ができる。
【0004】
画像表示装置の大サイズ化や高精細化が進むと、配線が長くなったり、配線間の距離が小さくなる。これにより、配線抵抗や配線間容量が増加し、その結果、RC応答時間が増加する。すると、駆動回路から近い画素(駆動端側)に比べて遠い画素(開放端側)が暗くなる。輝度のばらつきを補正する技術としては、表示素子の位置や階調に応じた補正値を用いて映像信号を補正する技術(特許文献1)や、RC遅延による電圧信号のなまりに応じて補正する技術(特許文献2)などが提案されている。これらの技術を用いると一部の表示における表示不良は良好に補正することができる。
【0005】
また、アクティブマトリクス駆動方式の表示装置などでは各画素の画素電極と隣接する信号配線(列配線)との距離が小さいため、容量結合(横電界)に起因したクロストーク(画質不良)が発生する。この問題に対しては、補正対象の画素の表示信号と、その補正対象の画素に影響を与える隣接画素への表示信号とに基づいて補正対象の画素の表示信号を補正する技術(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6097356号明細書
【特許文献2】特開平06−258614号公報
【特許文献3】特開2006−23710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、表示素子の位置に依存する固定む
らは良好に補正できるが、表示画像によってむらの量が変化するいわゆるクロストークに起因した表示不良には効果がえられない。また、特許文献3のように自画素の表示信号と、隣接画素への表示信号とに基づいてクロストークを補正する技術をもちいても補正しきれない表示不良があることがわかった。
【0008】
例えば、一部の映像パタンで図12(A)のように上下方向の輝度傾斜や色度傾斜が発生することがある。また、列配線駆動回路を複数のICで構成して列配線を図13のようなパタンにした場合、図12(B)のようにIC境界部に対応するカラムに縦筋状の(色)むらが発生することがある。
【0009】
また、階調値が同じでも配列が異なるような表示パタンを表示させると明るさが変化する事がある。例えば、図14(A)のように各色単位で市松模様になるパタンと図14(B)のように白(RGB一組)単位で市松模様になるパタンの2つを表示させる。そうすると図14(C)のように、列配線駆動回路に近い駆動端側では良好な表示になるが、開放端側では2つのパタンの明るさが異なり、パタンの境界で輝度段差が発生する。
【0010】
発明者が鋭意検討した結果、上記のような現象が、隣接する列配線間の容量結合に起因したクロストーク、特にその面内分布によるものであることがわかった。
この現象を図15を用いて説明する。図15は、2つの列配線の簡易的な等価回路である。Vn,0(t)は時刻tにおいてn番目の列配線に印加される列配線駆動回路の出力(電圧波形)であり、Vn,y(t)は位置y近傍での列配線電位である(y=1,2,3,4)。Rは位置yでの微小区間あたりの列配線抵抗であり、Cは位置yでの微小区間あたりの隣接配線間容量であるとすると、一般的には列配線は均一であるため、C≒C≒C≒C≒C(一定)、R≒R≒R≒R≒R(一定)とみなせる。また、自画素と自画素の行方向(水平方向)に隣接する画素の変調信号が異なると、Cの両端の電圧が時刻tにおいて変化するため、式(1)のような電流Iが発生する。
【数1】

【0011】
・Cが小さい場合、Vn,y(t)が位置yによらずほぼ一定になるため、Vn−1,y(t)−Vn,y(t)は位置yによらずほぼ一定になる。また式(1)よりI≒I≒I≒I≒Iとみなせる。そのため、列配線の位置yにおける電位変動(クロストーク)は、式(2)〜式(5)のように隣接配線間容量Cの充放電電流Iと列配線抵抗RによるIRドロップの駆動端から位置yまでの積算値によって決まる。つまり、図12(A)のような表示不良は、隣接列配線に印加される変調信号の差異による隣接配線間容量の充放電電流と列配線抵抗によるIRドロップにより発生する。そして、IRドロップが駆動端側から積算されていくため開放端の方がクロストーク(IRドロップ)量が大きいために、図12(A)のような輝度傾斜や色傾斜が発生する。
【数2】

【0012】
一般的な大型表示装置の場合、列配線駆動回路は、複数のICから構成される。そのため、パネル内の列配線パタンは図13のように、表示領域では均一で平行であるが、表示領域外では、各列配線をドライバICの端子に接続するために、配線の取り出し部がテーパー状に形成される。よって、表示領域外の隣接配線間容量は不均一な分布をもつ事になる。例えばIC境界部の列配線では、その他の列配線に比べて片側の隣接配線との距離が大きい為、表示領域外での隣接配線間容量がその他の信号配線に比べて約半分になる。この影響を図15のモデルを用いて考えると、例えばC≒0.5×Cとした場合がIC境界部での列配線に相当し、C≒Cとした場合がIC境界部以外の列配線に相当する。するとIC境界部に相当する列配線の各位置での電位変動は下記式(6)〜(9)のようになる。
【数3】

【0013】
IC境界部の列配線における位置1での電位変動が式(2)の場合の4×I・Rに対して3.5×I・Rとなり、位置2、3、4についても一律で0.5×I・Rだけ電位変動が変わる。つまり、表示領域外における隣接列配線間容量の分布は、一律にそのラインのクロストーク量の分布に反映されることになり、図12(B)のようなIC境界部に対応するカラムに縦筋状の(色)むらが発生する。
【0014】
以上では、表示領域外における隣接列配線間容量に分布がある場合を例に説明したが、表示領域外における配線抵抗に分布があっても同様なことがいえる。すなわち、表示領域外における列配線とその他の列配線との配線抵抗(R)の差異(分布)、及び、表示領域外における隣接配線間容量(C)の差異(分布)の両方が、列方向(上下方向)のクロストーク量の分布に影響を与え得る。
【0015】
また、図14(C)に示した輝度段差は、図14(A)のパタンと図14(B)のパタ
ンとで、列配線間のクロストーク量が異なるために発生する。例えばGの列配線に注目すると、図14(A)のパタンでは隣接するR、Bの列配線は定電位であるのに対して、図14(B)のパタンでは隣接するR、B列配線にも変調信号が印加される。それゆえ、G
の列配線におけるクロストーク量は図14(A)と図14(B)の表示パタンでは異なる。しかも、クロストーク量は開放端に近づくほど大きくなるために、2つのパタンの輝度段差は開放端に近づくほど顕著になる。
【0016】
特許文献3の補正方法は、局所的な容量結合や横電界(または縦電界)に起因したクロストーク、つまりクロストーク量に面内分布が生じない現象を対象にしたものである。よって、上述した課題のようにクロストーク量の上下(列方向)の分布が大きかったり、左右(行方向)の分布があると、従来の補正方法ではほとんど効果が得られない。
【0017】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、隣接する列配線間の容量結合に起因した輝度変動(クロストーク)、特にその面内分布に起因した画質不良が効果的に抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1態様は、複数の行配線と複数の列配線の各交点に配置された複数の画素を有する画像表示装置であって、前記複数の行配線に接続され、駆動対象とする行配線に走査信号を順次出力する行配線駆動手段と、前記複数の列配線に接続され、輝度信号に基づき生成した各列の変調信号を前記複数の列配線に出力する列配線駆動手段と、画像信号に基づいて前記輝度信号を生成し前記列配線駆動手段に出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は、隣接する列配線間の容量結合に起因する輝度変動を補正する補正処理を画像信号に対して施す補正手段を有しており、前記補正手段は、補正対象画素の信号値と前記補正対象画素の隣の列配線の画素である隣接画素の信号値の組み合わせと、前記補正対象画素の列方向の位置とに基づいて、補正値を決定する補正値生成手段と、前記補正値生成手段で生成された補正値を用いて前記補正対象画素の信号を補正する補正演算手段と、を有する画像表示装置を提供する。
【0019】
本発明の第2態様は、複数の行配線と複数の列配線の各交点に配置された複数の画素と、前記複数の行配線に接続され、駆動対象とする行配線に走査信号を順次出力する行配線駆動手段と、前記複数の列配線に接続され、各列の変調信号を前記複数の列配線に出力する列配線駆動手段と、を備える画像表示装置の制御方法であって、画像信号に基づいて、補正対象画素の信号値と前記補正対象画素の隣の列配線の画素である隣接画素の信号値の組み合わせと、前記補正対象画素の列方向の位置とに基づいて、補正値を決定するステップと、前記補正値を用いて前記補正対象画素の信号を補正することにより、隣接する列配線間の容量結合に起因する輝度変動を補正する補正処理を画像信号に対して施すステップと、前記補正処理が施された画像信号を前記列配線駆動手段に出力するステップと、を有する画像表示装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隣接する列配線間の容量結合に起因した輝度変動(クロストーク)、特にその面内分布に起因した画質不良を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態におけるクロストーク補正部の構成例を説明するための図。
【図2】一般的なマトリクス駆動方式の表示装置の基本的な構成の例。
【図3】制御回路の構成及び信号の流れを説明するための図。
【図4】変調信号の波形の例。
【図5】クロストークによる変調信号の波形乱れを説明するための図。
【図6】自画素と隣接画素の信号値の組み合わせと補正値を対応付けるLUTの例。
【図7】列方向用補正値生成部の構成例を説明するための図。
【図8】第2の実施形態におけるクロストーク補正部の構成例を説明するための図。
【図9】配線抵抗や列配線間容量に行方向の分布がある場合のクロストーク量の差。
【図10】行方向用補正値生成部の構成例を説明するための図。
【図11】第3の実施形態におけるクロストーク補正部の構成例を説明するための図。
【図12】クロストークに起因した表示不良の例。
【図13】列配線駆動回路を複数のICから構成した場合の列配線パタンの例。
【図14】表示不良が発生する表示パタンの例。
【図15】表示不良を発生させるメカニズムを説明するための等価回路の例。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明は、マトリクス駆動方式の表示パネルにおいて、隣接する列配線間の容量結合に起因するクロストークを補正するための技術に関する。以下の実施形態では、画素(表示素子)として電界放出素子(電子放出素子)を用いた画像表示装置(FED)に本発明を適用した例について具体的に説明を行う。ただし、本発明の適用範囲はこれに限られず、マトリクス駆動方式の表示パネルをもつ画像表示装置であれば、FED以外の画像表示装置にも適用できる。
【0023】
(画像表示装置全体の構成)
図2は、一般的なFEDの基本的な全体構成の例である。背面基板16は、FEDパネルのカソードパネルを構成するガラス基板である。背面基板16上には、複数の列配線14と複数の行配線15がマトリクス状に形成されている。列配線14と行配線15との各交点には、画素(表示素子)が形成されている。また図示は省略しているが、カソードパネルに対向するように、蛍光体及びアノード電極(メタルバック)を具備するアノードパネルが配置される。列配線14が列配線駆動回路12に接続され、行配線15が行配線駆動回路13に接続され、各駆動回路12、13は制御回路11に接続される。以上により、FEDモジュールが構成されている。ここで、列配線が超伝導体で構成されていて配線抵抗を有していない場合、クロストークが発生しないため、本発明を適用しても効果を得ることができない。しかし、Al、Cu、Agなどの配線抵抗を有する一般的な配線材であれば、隣接する列配線間の充放電電流と配線抵抗に起因した電圧降下(クロストーク)が発生するため本発明を効果的に適用できる。
【0024】
(駆動回路の構成)
次に各駆動回路と階調表現方法について説明する。
行配線駆動回路13は、行配線15に走査信号(選択電圧)を順次出力する行配線駆動手段であり、例えば、駆動対象の行配線15には−20Vの選択電圧、他の行配線15には7Vの非選択電圧を印加する。列配線駆動回路12は、1ライン分(1水平期間分)の輝度信号に基づき生成した変調信号をそれぞれ列配線14に出力する列配線駆動手段である。列配線駆動回路12は、1ライン分の輝度信号を入力するためのシフトレジスタ、輝度信号を1ライン時間保持するためのラインメモリ、輝度信号に応じて駆動波形(変調信号)Vxを生成し列配線に印加する変調信号生成部などで構成される。輝度信号は例えばR、G、B各色のデジタル信号であり、制御回路11で生成され列配線駆動回路12に供給される。変調信号としては、パルス幅、振幅、またはその両方を変調した電圧波形を用いることができる。
【0025】
FEDに画像を表示する際には、行配線15を1ラインまたは複数ラインずつ順次駆動(走査)するのと同期して列配線14に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これにより、蛍光体への電子ビーム照射量を制御し、画像を1ラインまたは複数ラインずつ表示する。電子ビームの照射量、つまり画素の輝度は、変調信号のパルス幅や振幅を変えることで制御可能である。
【0026】
本発明は駆動方式によらず適用することができる。アクティブマトリクス駆動方式の表示装置の場合、大画面かつ高精細(1920×1080画素、3840×2160画素など)でフレームレートが高い(120Hz、240Hzなど)ものほど、画素への書き込み時間が短くなるため、本発明の効果は大きい。書き込み期間が短くなると、現在一般的に用いられているアモルファスSiでは移動度が小さく十分な充電率を確保できない。そうすると、隣接する配線に印加される変調信号によって到達電位が変動し(隣接する配線に印加される変調信号が高電位の場合は到達電位が高電位側へ変動し、逆の場合は到達電位が低電位側へ変動する)、クロストークによる表示不良が発生するからである。また、パッシブマトリクス駆動方式の表示装置では、(充電完了時の電位ではなく)変調信号の駆動波形(パルスの幅や振幅など)で輝度が変わるため、隣接する列配線の変調信号の振幅が変位した際に生じるクロストークがそのまま輝度へ反映される。それゆえ、パッシブマトリクス駆動方式の表示装置には、本発明を効果的に適用できる。
【0027】
さらに、本発明は変調方式によらず適用することができる。特にパルス幅が変化する変調方式では、パルス幅が小さい場合(低階調)にはパルス幅が大きい場合(高階調)に比べて、クロストークによる実効的なパルス幅の変動比率が大きくなるため、輝度むらが発生しやすい。それゆえ、上述したクロストークによる表示不良が顕著に表れるため、本発明を効果的に適用できる。
【0028】
(制御回路の構成)
次に図3を基に制御回路の信号の流れを説明する。図3は、図2の制御回路11の構成及び信号の流れを説明する図である。制御回路11は、入力された画像信号S1に対して各種の信号処理や補正処理を施して、表示パネルに適した形式の輝度信号及び制御信号を生成し、それらを列配線駆動回路12及び行配線駆動回路13に出力する制御手段である。
【0029】
制御回路11には、入力画像信号として、ディジタルコンポーネント信号S1が入力される。信号S1は、RGB入力部101のスケーラにより、表示パネルの走査線数と同じ走査線数の画像信号S2に変換される。画像信号S2がCRTの特性を打ち消すためのガンマ補正がかけられた信号である場合、階調補正部102は画像信号S2に対して逆ガンマ補正を行う。階調補正部102は例えばメモリを用いたテーブルで簡単に実現できる。
【0030】
データ並べ替え部103は、表示パネルの蛍光体配列に対応するように、画像信号S3のRGBデータを並べ替え、信号S4を出力する。この信号S4は、階調補正部102で逆ガンマ補正されているので、輝度に比例した値をもつデータ(以降、「輝度データ」または「輝度信号」と呼ぶ)である。本実施形態では、輝度データに対して後述する補正処理(104〜106)を施すこととしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばガンマ補正がかけられたデータの場合でも、そのガンマ特性に応じて補正値を決定すれば、同じような補正効果がえられる。
【0031】
輝度データS4は、輝度むら補正部104に入力され輝度むらを補正できるデータ(S5)(以降、「補正輝度データS5」と呼ぶ。)になるように補正される。輝度むら補正部104が補正する輝度むらは、表示素子自身の特性、位置、階調などによって固定的に決まるむらである(クロストークによる輝度むらと区別するため、「固定むら」と呼ぶ。)。補正輝度データS5は、クロストーク補正部105に入力されクロストークを補正できるデータ(S6)になるように補正される。この補正輝度データS6は、リニアリティ補正部106に入力され、蛍光体の飽和特性および変調信号(列配線駆動波形)による非線形性が補正される。R、G、B各色の蛍光体の飽和特性が異なる場合はR、G、B各色で異なったテーブルを持つと良い。
【0032】
リニアリティ補正部106から出力される輝度データ(輝度信号)S7は列配線駆動回路12に入力される。列配線駆動回路12は輝度データS7の値に応じた変調信号S8を生成し、1ライン分の全列配線14(フルハイビジョンの場合X1〜X5760の5760本)に出力する。また、これと同期して、行配線駆動回路13が駆動対象の行配線15に選択電圧(走査信号)を出力する。選択された行配線15に接続されている電子放出素子は、列配線14に印加された変調信号に応じた電子放出を行う。放出された電子はアノード電圧により加速され蛍光体に衝突する。これにより蛍光体が発光し、画像が表示される。
【0033】
以上において、クロストーク補正部105は、輝度むら補正部104の後、且つリニアリティ補正部106の前で、補正処理を行う。これは、クロストーク量が変調信号(S7やS8)の組合せによって決まる為、できるだけ後段で補正処理を行ったほうが補正演算の誤差が発生しにくく、また、明るさに対してリニアな信号(輝度データや補正輝度データ)の方が便宜上説明しやすいためである。しかし、図3のような構成に限定されるものではなく、輝度むら補正部104の前、または、リニアリティ補正部106の後で、クロストーク補正を行ってもよい。その場合は、補正の前後関係に応じて各補正処理で用いる補正値を適宜調整すればよい。
【0034】
また、本発明は変調方式によらず適用できるが、以下では便宜上、図4のような変調信号を用いた場合について説明する。図4において、縦軸が電圧値、横軸が時間であり、リニアリティ補正部106の出力S7の各値に対応した変調信号S8の波形が横に並べて示されている。ここで出力S7は、変調信号S8のとりうる信号レベルに対応した値をとり、出力S7の値が小さいほど変調信号S8の信号レベルも小さい。図4は、パルス幅変調方式の変調信号において、その立上がりと立下りに直線的な傾きをつけた波形を示している。出力S7が小さい場合(低階調)、振幅が最大振幅Vxまで到達せず三角波形(実際は立上りと立下りがまるまった三角波形)になり、出力S7がn+1より大きい場合は、振幅が最大振幅Vxに達し台形波形(実際は立上りと立下りがまるまった台形波形)になる。この変調方式は結果的にパルス幅と振幅が変調される方式であるため変調範囲が大きくダイナミックレンジの大きい画像が得られる。
【0035】
上述した内容は、以下に述べる各実施形態に共通の構成である。以下、クロストーク補正部の具体的な実施形態について説明を行う。
【0036】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態におけるクロストーク補正部について図1を用いて説明する。クロストーク補正部105は主に、データ並び替え部201、階調組み合わせ補正部202、列方向補正部203、補正演算部204などから構成する事ができる。本実施形態では、階調組み合わせ補正部202及び列方向補正部203が本発明の補正値生成手段に対応し、補正演算部204が本発明の補正演算手段に対応する。
【0037】
データ並び替え部201には、固定むらが補正された補正輝度データS5が入力される。データ並び替え部201は、クロストーク補正の補正対象画素(自画素)の(図1ではGの)補正輝度データS5と補正対象画素に隣接する画素(隣接画素)の(図1ではRとBの)補正輝度データを階調組合せ補正部へ出力する。ここで「隣接する画素」とは、自画素と同じ行配線に接続され、かつ、自画素の列配線の隣の列配線に接続された画素のことである。
【0038】
(階調組合せ補正部)
階調組合せ補正部202では、自画素Gの補正輝度データと隣接画素Rの補正輝度データがGR用補正値生成部301に入力される。GR用補正値生成部301は、自画素の信
号値(階調レベル)と隣接画素の信号値(階調レベル)の組合せに応じて補正値C1を決定し、出力する。また、自画素Gの補正輝度データと隣接画素Bの補正輝度データはGB用補正値生成部302に入力される。GB用補正値生成部302は、自画素の信号値(階調レベル)と隣接画素の信号値(階調レベル)の組合せに応じて補正値C2を決定し、出力する。補正値C1、C2は合算され補正値C3が出力される。
【0039】
ここで、GR用補正値生成部301の動作を図5、図6を用いて説明する。図5は、自画素について3つの変調信号におけるクロストークによる変調信号の変動を模式的に示した図である。図5は、8bit(256階調)の変調信号の例であり、左から順に、パルス幅が小さい変調信号、パルス幅が中の変調信号、パルス幅が大きい変調信号を示している。図中の括弧内の数字は信号S7の値(階調レベル)を示している。自画素の変調信号のパルス幅が大きく(例えばS7=256)、隣接画素の変調信号のパルス幅が小さい(例えばS7=108)の場合、隣接画素の変調信号の立下り時に容量結合を介して自画素の変調信号の電圧が変動する。これにより、自画素の輝度が低下する(例えば、輝度変動率で−1%、輝度変動値で−1cd/m)。隣接画素のパルス幅が同じ(S7=108)で、自画素のパルス幅が半分(S7=128)になると、自画素のパルス幅が大きい(S7=256)場合に比べて、クロストークによる輝度の変動率は約2倍(−2%)となる。輝度変動値はパルス幅が大きい場合とほぼ同じ(−1cd/m)である。また、自画素のパルス幅が小さい(S7=64)場合、クロストークによる輝度の変動率は大きくなり(例えば、5%)、輝度変動値は逆に小さくなる(例えば、0.5cd/m)。こ
れは、電子放出特性の電圧依存性が指数関数的になっているため、同じ電圧変動が起きても、もともとの電圧値が小さいほど電子放出量の絶対値の変化が小さくなるためである。また、図5からわかるように例えば自画素のパルス幅が小さいとき(例えばS7=64)、隣接画素のパルス幅が自画素のパルス幅より小さい(例えばS7=59)と自画素は暗く(例えば、輝度変動率で−5%、輝度変動値で−0.5cd/m)なる。一方、隣接
画素のパルス幅が自画素のパルス幅より大きい(例えばS7=69)と自画素は逆に明るく(例えば、輝度変動率で+5%、輝度変動値で+0.5cd/m)なる。
【0040】
以上説明したように、自画素と隣接画素の信号値(階調レベル)の組合せに依存して、自画素の輝度の変動率や変動値は変化する。したがって、GR用補正値生成部は、図6(A)や図6(B)に模式的に示すような2次元ルックアップテーブルを、補正値の決定に用いることができる。図6(A)は、輝度の変動率に基づく補正値である。この場合、変動率の逆数が補正値として用いられ、補正値を自画素の信号に乗算することにより補正が行われる。図6(B)は、輝度の変動値に基づく補正値である。この場合、変動値の反数が補正値として用いられ、補正値を自画素の信号に加算することにより補正が行われる。
【0041】
図6(C)はルックアップテーブルの具体例を示している。ここで、自画素と隣接画素の信号値(階調レベル)の全ての組合せについて補正値をもつと、膨大なメモリが必要となる。そこで、補正値の変化が人間の検知限(1%前後)程度変化するような間隔でルックアップテーブルを作成すれば、実用的な回路で実現する事ができる。また、補正値は色毎に若干ではあるが変化するため、色の組合せ毎にもつほうが好ましい。
【0042】
また、上記では自画素と隣接画素の信号値の組合せ毎に補正値をもつルックアップテーブルの例を説明した。しかし、変調方式や補正対象の信号(上記の例では補正輝度データ)を最適化(または変換)することにより、自画素の信号と隣接画素の信号の差分値に応じて補正値を持つようなルックアップテーブルにした構成などに設計してもよい。自画素と隣接画素の変調信号の組合せに応じて補正値を決定する手段を有していれば、その細かい構成の内容は限定されるものではない。
【0043】
(列方向補正部)
次に列方向補正部203について、図1と図7を用いて説明する。列方向補正部203は、自画素の列方向の位置に応じた列方向用調整値C4を用いて補正値C3を調整する回路である。このような列方向補正(列方向調整)を行う目的は、列配線の配線抵抗による電圧降下に起因する輝度変動量(クロストーク量)の列方向分布を補正するためである。
列方向補正部203には、階調組合せ補正部202から出力される補正値C3と水平同期信号が入力される。列方向補正部203は、走査行情報生成部401と列方向用補正値生成部402と列方向補正値演算部から構成する事ができる。走査行情報生成部401は、カウンタ回路により水平同期信号をカウントし、信号S5が属する行配線番号に相当する情報を列方向用補正値生成部402へ出力する。
【0044】
ここで仮に、列配線駆動回路12に一番近い行配線15の番号を1とし、開放端(パネル上部)へいくほど1ずつ増加するものとする。また、補正対象の信号が輝度に比例する信号であり、階調組合せ補正部202の補正値C3が輝度の変動率を補正するために補正対象の信号に乗算されるものであるとする。この場合、列方向用補正値生成部402は図7のような1次元のルックアップテーブルで構成する事ができる。
【0045】
図7は、横軸が行配線番号を示し、縦軸が列方向用調整値C4を示す。図15や式(1)〜(5)を用いて説明した通り、クロストーク量は、隣接配線間容量の充放電電流と配線抵抗による電圧降下を各行配線に対応する位置まで積算した値に依存する。それゆえ、補正対象の列配線内の配線抵抗分布と、前記補正対象の列配線と前記列配線に隣接する列配線との配線間容量の(列方向)分布に応じて、列配線駆動回路12から遠い(開放端側)ほど調整値C4が大きくなる。さらに、行配線番号が小さい領域では、電流値が大きく、行配線番号の変化に対して電流値の変化率が小さい(ほぼ一定とみなせる)ため、配線抵抗による電圧降下が支配的にあり、調整値C4は、ほぼ線形にかつ急峻な変化をする。それに対して、行配線番号が大きい領域では、電流値が小さく、行配線番号の変化に対して電流値の変化率が大きい(開放端側の最上部の電流は、最上部から2番目の行に対応する位置の電流の約半分、3番目の位置の電流の3分の1)。そのため、図7の曲線は、上に凸で且つ傾きが小さくなる。この曲線は、配線間容量と配線抵抗と変調信号がわかっていれば、簡単な計算で算出することができる。また自画素と隣接画素の変調信号の組合せと列方向の位置を変えて実際に輝度を計測しても簡単に取得する事ができる。また、図7の縦軸の絶対値(スケール)は、階調組合せ補正部202の出力C3に応じて調整すればよい。例えば、出力C3が行配線番号が最大(開放端)での補正値になるように、階調組合せ補正部202のルックアップテーブルを構成した場合は、図7のように、行配線番号が最大(開放端)での調整値C4を1にすればよい。
【0046】
列方向補正値演算部は、階調組合せ補正部202の出力C3と列方向用補正値生成部402の出力C4を演算して、クロストーク補正用の最終補正値C5を出力する。この列方向補正値演算部は、上記の例では乗算器にすればよい。補正対象の信号が対数信号系で変動率を加減算して補正するためのものであれば、列方向補正値演算部は加算器にすればよい。補正対象の信号や補正値の形式や構成に応じて最適に設計すればよく、その細かい構成の内容は限定されるものではない。
【0047】
補正演算部204では、列方向補正部203の出力C5と補正対象のG信号を演算する。補正値C5が輝度変動率の逆数である場合、補正演算部204は乗算器から構成でき、補正値C5が輝度変動値の反数である場合は、補正演算部204は加算器から構成できる。これにより、自画素と隣接画素の信号値の組合せと自画素の列方向位置によって決まるクロストークが正確に補正されたクロストーク補正輝度信号S6がリニアリティ補正部106へ出力される。なお、補正演算部204は補正対象の信号や補正値の形式や構成に応じて最適に設計すればよく、その細かい構成の内容は限定されるものではない。
以上述べたように、本実施形態では、自画素と隣接画素の信号値の組み合わせと、自画
素の列方向の位置とに基づいて、クロストーク補正のための補正値C5を決定する。具体的には、自画素と隣接画素の信号値の組み合わせに対応する補正値C3を求めた後、当該補正値C3を自画素の列方向の位置に応じた調整値C4を用いて調整している。このような構成により、列配線間の容量結合に起因する輝度変動(クロストーク)及びその列方向のばらつきを補正し、図12(A)や図14(C)に示したような表示不良の発生を抑制することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態におけるクロストーク補正部について図8を用いて説明する。第2の実施形態は、列配線駆動回路12のIC境界部に発生し得る図12(B)のような表示不良を解決するためのクロストーク補正部の構成例である。以下、第1の実施形態と異なるところのみを説明する。
【0049】
第2の実施形態におけるクロストーク補正部105は図8に示したとおり、データ並び替え部201、第1の階調組み合わせ補正部202、第1の列方向補正部203、第1の補正演算部204を有している。これらの構成は第1の実施形態(図1)のものと同じである。さらに、本実施形態のクロストーク補正部105は、第2の階調組み合わせ補正部206、第2の列方向補正部207、第2の補正演算部208、補正データ選択部209を備えている。
【0050】
データ並び替え部201には、固定むらが補正された補正輝度データS5が入力される。データ並び替え部201は、補正対象の画素(自画素)とその隣接画素の補正輝度データを第1の階調組み合わせ補正部202又は第2の階調組み合わせ補正部206に対して出力する。このとき、データ並び替え部201は、自画素の行方向の位置に基づいて、自画素の列配線がIC境界部の列配線(ICの一番端の端子に接続された列配線)であるか否かを判断する。そして、自画素の列配線がIC境界部の列配線である場合は、補正輝度データは第2の階調組み合わせ補正部206に出力され、それ以外の場合は、第1の階調組み合わせ補正部202に出力される。
【0051】
第1の階調組み合わせ補正部202、第1の列方向補正部203では、補正用のルックアップテーブルにIC境界部以外の列配線に対応する値が格納されている。一方、第2の階調組み合わせ補正部206、第2の列方向補正部207では、補正用のルックアップテーブルにIC境界部の列配線に対応する値が格納されている。すなわち、第1の補正演算部204の出力C6は、上述した式(2)〜(5)で求まるクロストーク量が補正された補正輝度データであり、第2の補正演算部208の出力C7は、式(6)〜(9)で求まるクロストーク量が補正された補正輝度データである。式(2)〜(9)からわかるように、C6>C7である。出力C6及びC7は、補正データ選択部209に入力される。
【0052】
補正データ選択部209は、補正対象の画素がIC境界部以外の列配線に接続された画素である場合は、出力C6を選択してクロストーク補正輝度データS6として出力する。一方、補正対象の画素がIC境界部の列配線に接続された画素である場合は、補正データ選択部209は、出力C7をクロストーク補正輝度データS6として出力する。これにより、IC境界部の列配線の場合の補正値をそれ以外の配線の場合の補正値よりも小さくすることができる。なお補正データ選択部209は例えばセレクタ回路で構成する事ができる。
【0053】
第2の実施形態では、IC境界部の列配線用の回路と、IC境界部以外の列配線用の回路の2種類の補正値生成回路(補正値生成手段)を設けているが、本発明はこれに限定されず、自画素の行方向の位置ごとに2種類以上の補正値生成回路を設けることもできる。また、第2の実施形態では、「セレクタ+2つの階調組み合わせ補正部+2つの列方向補
正部+2つの補正演算部+セレクタ」という構成にしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、「階調組み合わせ補正部+セレクタ+2つの列方向補正部+セレクタ+補正演算部」という構成や、「セレクタ+2つの階調組み合わせ補正部+セレクタ+列方向補正部+補正演算部」という構成にしても類似の効果が得られる。
【0054】
以上述べた第2の実施形態では、自画素の行方向の位置(IC内での接続位置)に応じて補正値を異ならせている。よって、第1の実施形態と同様の効果に加え、列配線間の容量の差に起因する輝度変動量の行方向のばらつきを補正し、図12(B)に示したような縦筋状の表示不良の発生を抑制することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態におけるクロストーク補正部について図9、図10、図11を用いて説明する。第3の実施形態は、表示領域と列配線駆動回路12の間(つまり表示領域外)において、列配線抵抗や隣接する列配線間容量に行方向の分布(差)がある表示装置におけるクロストーク補正部の構成例である。
列配線抵抗や列配線間容量に行方向の分布がある場合、第2の実施形態のように複数種類の補正回路を設けることで、各列配線の配線抵抗や列配線間容量に応じた補正を実現することも可能である。しかしその構成では、補正回路の数が増えるほどメモリ及び回路構成が増大しコストアップを招いてしまうという問題がある。これに対し、第3の実施形態では、列配線抵抗や列配線間容量の行方向分布に対応したルックアップテーブルを用いて補正値の行方向の調整を行うことにより、簡易な回路で正確な補正を実現する。
【0056】
図9は、表示領域と列配線駆動回路の間において列配線抵抗や列配線間容量に行方向の分布がある場合のクロストーク量を説明するための図であり、横軸が行配線番号で縦軸が列方向用調整値C4である。図9のAのプロットは、表示領域外における列配線抵抗や列配線間容量が一番大きい(例えばIC境界部より1本内側の)列配線に相当する。また、Cのプロットは表示領域外における列配線抵抗や列配線間容量が一番小さい(例えばIC境界部の)列配線に相当し、BのプロットはAとBの中間の列配線に相当する。図9からわかる通り、各列配線(A、B、C)のクロストーク量は行配線番号によらず一律にシフトしている。ここから、行方向の分布の補正(調整)は、最終段で補正値に対し調整値を一律に加算又は減算すればよいことがわかる。つまり、列方向用調整値を用いた調整の後に、行方向用調整値を用いた調整を行うようにすれば、補正値の行方向の調整を簡易な構成で実現できる。但し、その調整値は、自画素と隣接画素の変調信号の組合せによって異なる事から、階調組合せ補正部の出力と、表示領域外における列配線抵抗や列配線間容量の分布に応じたルックアップテーブルと、を参照して調整値を決定するとよい。
【0057】
図11は、以上のようなクロストークの発生原理を考慮した第3の実施形態におけるクロストーク補正部の構成例である。クロストーク補正部105は、データ並び替え部201、階調組み合わせ補正部202、列方向補正部203、行方向補正部205、補正演算部204などから構成する事ができる。本実施形態では、階調組み合わせ補正部202、列方向補正部203、及び行方向補正部205が本発明の補正値生成手段に対応する。以下、第1の実施形態と異なるところのみを説明する。
【0058】
データ並び替え部201は、自画素の(図11ではGの)補正輝度データS5と隣接画素の(図11ではRとBの)補正輝度データS5を階調組合せ補正部202へ出力するとともに、行方向補正部205へ列配線情報を出力する。列配線情報は、例えば列配線駆動回路12を構成するICにおける配線番号(端子番号)である。ICの出力数が80本ならば、列配線情報は1から80の値をとる。
【0059】
階調組み合わせ補正部202は、第1の実施形態と異なり、補正値C1とC2を合算せ
ずにそのまま出力する。この補正値C1及びC2は、列方向補正部203及び行方向補正部205に入力される。本実施形態では、GR用補正値生成部301及びGB用補正値生成部302は、最もクロストークが多い列配線(例えばIC境界部より1本内側の列配線)における開放端、つまり最もクロストークが多い位置での補正値を、C1及びC2として出力する。すなわち、GR用補正値生成部301やGB用補正値生成部302は、最もクロストークが多い列配線における開放端でのクロストーク量に相当する補正値が格納されたルックアップテーブルから構成される。よって、この段階の補正値C1、C2は、最もクロストークが多い位置以外の画素に対しては、補正量が最適になっていない。そこで、列方向補正部203で列方向のクロストーク量の分布に応じた補正値の調整を行うとともに、行方向補正部205で行方向のクロストーク量の分布に応じた補正値の調整を行う。
【0060】
列方向補正部203は、補正値C1とC2に対して、図9のAのプロットのようなルックアップテーブルを用いた調整値C4を乗算し、列方向のクロストーク量の分布が補正された補正値C9とC10を出力する。つづく行方向補正部205は、補正値C1とC2に対して行方向用補正値生成部501の出力C8を乗算して調整値C11とC12を生成し、列方向補正部203の出力C9とC10からそれぞれ調整値C11とC12を減算して補正値C13、C14を得る。そして、行方向補正部205は補正値C13とC14を合算して、行方向のクロストーク量の分布が調整された補正値C15を補正演算部204へ出力する。補正演算部204は、この補正値C15を用いて自画素の輝度データS5を補正し、クロストーク補正輝度データS6を出力する。
【0061】
ここで、行方向用補正値生成部501は図10のようなルックアップテーブルで構成することができる。図10は、横軸が列配線情報(つまりIC内の列配線の接続位置)であり、縦軸が行方向用調整値C8である。IC境界部の列配線で調整値C8が最大(約0.
06)になっている。これは、IC境界部では表示領域外における隣接配線間容量が他のラインの約半分になっている分、最もクロストークが多い列配線に属する画素に比べて補正値C9やC10を小さくする必要があるからである。よってIC境界部の列配線に対応する最終補正値C15の絶対値は最小になる。一方、IC境界部より1本内側の列配線で調整値C8が最小(0)になる。これは、図8からわかる通り、IC境界部の隣の列配線は、配線長が長い為、配線抵抗が最大で尚且つ隣接配線間の容量も最大になる為、クロストーク量が全ての列配線の中で最大となるからである。このとき最終補正値C15の絶対値は最大になる。
【0062】
以上述べたように、第3の実施形態では、列方向の調整を行った補正値C9及びC10に対して、調整値C11及びC12を一律に演算することで、配線抵抗の差若しくは列配線間容量の差、又はその両方に起因する輝度変動量の行方向のばらつきを補正することができる。これにより、図12(B)に示したような縦筋状の表示不良の発生などを抑制することができる。しかも、列方向の調整、行方向の調整のそれぞれを1次元のルックアップテーブルで構成できるため、コストアップを招くことなく、簡易な回路で実現できる。
【符号の説明】
【0063】
11:制御回路、12:列配線駆動回路、13:行配線駆動回路、14:列配線、15:行配線、105:クロストーク補正部、201:データ並び替え部、202:階調組み合わせ補正部、203:列方向補正部、204:補正演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行配線と複数の列配線の各交点に配置された複数の画素を有する画像表示装置であって、
前記複数の行配線に接続され、駆動対象とする行配線に走査信号を順次出力する行配線駆動手段と、
前記複数の列配線に接続され、輝度信号に基づき生成した各列の変調信号を前記複数の列配線に出力する列配線駆動手段と、
画像信号に基づいて前記輝度信号を生成し前記列配線駆動手段に出力する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、隣接する列配線間の容量結合に起因する輝度変動を補正する補正処理を画像信号に対して施す補正手段を有しており、
前記補正手段は、
補正対象画素の信号値と前記補正対象画素の隣の列配線の画素である隣接画素の信号値の組み合わせと、前記補正対象画素の列方向の位置とに基づいて、補正値を決定する補正値生成手段と、
前記補正値生成手段で生成された補正値を用いて前記補正対象画素の信号を補正する補正演算手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記補正値生成手段は、前記補正対象画素の信号値と前記隣接画素の信号値の組み合わせに対応する補正値を求める回路と、該補正値を前記補正対象画素の列方向の位置に応じた列方向用調整値を用いて調整する回路と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記列方向用調整値は、列配線の配線抵抗による電圧降下に起因する輝度変動量の列方向分布を補正するためのものである
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記補正値生成手段は、前記補正対象画素と前記隣接画素の信号値の組み合わせと、前記補正対象画素の列方向の位置と、さらに、前記補正対象画素の行方向の位置とに基づいて、補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記列配線駆動手段は、各々に複数の列配線が接続されている複数のICから構成されており、
前記補正値生成手段は、前記補正対象画素の行方向の位置に基づいて前記補正対象画素の列配線がICの一番端に接続されている配線であるか否かを判断し、ICの一番端に接続されている配線の場合の補正値をそれ以外の配線の場合の補正値よりも小さくする
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記列配線駆動手段は、各々に複数の列配線が接続されている複数のICから構成されており、
前記補正値生成手段は、前記補正対象画素の信号値と前記隣接画素の信号値の組み合わせに対応する補正値を求める回路と、該補正値を前記補正対象画素の列方向の位置に応じた列方向用調整値を用いて調整する回路と、該補正値を前記補正対象画素の列配線のIC内の接続位置に応じた行方向用調整値を用いて調整する回路と、を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記行方向用調整値は、列配線の配線抵抗の差若しくは隣接する列配線間の容量の差、
又は、その両方に起因する輝度変動量の行方向分布を補正するためのものである
ことを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記補正値生成手段は、列方向用調整値を用いた調整の後に、行方向用調整値を用いた調整を行う
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
複数の行配線と複数の列配線の各交点に配置された複数の画素と、前記複数の行配線に接続され、駆動対象とする行配線に走査信号を順次出力する行配線駆動手段と、前記複数の列配線に接続され、各列の変調信号を前記複数の列配線に出力する列配線駆動手段と、を備える画像表示装置の制御方法であって、
画像信号に基づいて、補正対象画素の信号値と前記補正対象画素の隣の列配線の画素である隣接画素の信号値の組み合わせと、前記補正対象画素の列方向の位置とに基づいて、補正値を決定するステップと、
前記補正値を用いて前記補正対象画素の信号を補正することにより、隣接する列配線間の容量結合に起因する輝度変動を補正する補正処理を画像信号に対して施すステップと、
前記補正処理が施された画像信号を前記列配線駆動手段に出力するステップと、
を有することを特徴とする画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−42611(P2012−42611A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182460(P2010−182460)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】