説明

画像表示装置

【課題】
周辺組織との濃度差が小さい異常部位や周辺に同濃度値の組織が存在する異常部位を視覚的に効率よく表示することを目的とする。
【解決手段】
医用画像撮影装置によって取得した被検体の画像データセットを読み込み、その画像データセットから濃度情報を算出する対象となる対象臓器を抽出する。次に、対象臓器の任意の断面像を作成し、断面像における対象臓器領域内の任意の回転中心、又は領域を基準として径方向に連続する濃度情報(プロファイル)を算出する。算出された濃度情報が、特異量(正常の濃度情報とどれだけ異なっているかを表す指標)を算出し、その特異量の分布を示す特異量マップを作成・表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係り、特に医用画像内にある被検体の血管や気管支、腸などの管腔臓器内の異常部位を操作者に効率的に提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置により得られた被検体の画像内にある血管や気管支などの管腔臓器を表示する場合には、視点を管腔臓器内に置き、あたかも内視鏡で観察しているように管腔臓器の内表面を3次元的に表示する仮想内視鏡表示が用いられている(特許文献1参照)。また管腔臓器の内部が観察できるように管腔臓器の芯線に沿った曲面の断面像を表示する方法も提案されている(特許文献2参照)。これらの表示技術は例えば血管の狭窄や径の計測、大腸のポリープなどの発見に用いられている。また芯線を基準として管腔臓器を角度方向に展開し、径方向の濃度情報を管腔臓器の走行方向に並べて表示する方法も提案されている。
【特許文献1】特開平08-016813号公報
【特許文献2】特開平11-318884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の手法では周辺組織との濃度差が小さい異常部位や周辺に同濃度値の組織が存在する異常部位、例えば血管壁周辺に存在するソフトプラークの分布を把握することは困難である。
【0004】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、臓器内の異常部位の有無や分布を視覚的に効率よく表示することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像表示装置は、医用画像撮影装置によって取得した被検体の画像データセットを読み込む画像読込み手段と、前記読み込まれた画像データセットから濃度情報を算出する対象となる対象臓器を抽出する対象臓器抽出手段と、前記抽出された対象臓器の任意の断面像を作成する断面像作成手段と、前記断面像における対象臓器領域内の任意の回転中心点又は任意の回転中心領域を基準として径方向に連続する濃度情報を算出する濃度情報算出手段と、前記算出された濃度情報が、前記対象臓器内に異常部位がない状態における濃度情報を示す基準濃度情報からどれだけ異なっているかを表す指標である特異量及びその特異量が算出された前記対象臓器内における位置を示す位置情報を求める特異量算出手段と、前記算出された特異量及び前記位置情報に基づいて、前記対象臓器における特異量の分布を示す特異量マップを作成する特異量マップ作成手段と、前記作成された特異量マップを表示するため特異量マップ表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
ここで、「前記対象臓器における特異量の分布を示す」とは、特異量の位置を示す点をマーカにより指図するなどで一次元的に示すことと、特異量の形状を描画することで2次元的に示すこととが含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記の手法では周辺組織との濃度差が小さい異常部位や周辺に同濃度値の組織が存在する異常部位、例えば血管壁周辺に存在するソフトプラークの有無や分布を視覚的に効率よく表示することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像表示システムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0009】
<第一実施形態>
図1は本発明の一実施形態による画像表示システムの概略構成図である。画像表示システム1は、医用画像撮影装置2と、医用画像撮影装置で撮影した画像データを格納する画像データベース3と、画像データに基づいて対象臓器内のソフトプラークなどの異常部位を抽出して表示した特異量マップを生成・表示する画像処理装置10と、医用画像撮影装置2、画像データベース3、画像処理装置10とを互いに接続するネットワーク4とを備える。ネットワーク4には、端末装置5を接続し、画像処理装置10から特異量マップを端末装置5に対して送信し、端末装置5がこれを受信して表示してもよい。
【0010】
画像処理装置10は、主として各構成要素の動作を制御する中央処理装置(CPU)11と、画像表示システムの制御プログラムが格納された主メモリ12と、データ記録装置13と、被検体の画像データを一時記憶する表示メモリ14と、この表示メモリ14からの画像データに基づいて画像を表示する画像表示装置15と、画像表示装置(ディスプレイ)15上のソフトスイッチを操作するためのマウス16、トラックボール、タッチパネル等のポインティングデバイス及びポインティングデバイスコントローラ16aと、各種パラメータ設定用のキーやスイッチを備えたキーボード17と、画像表示システムをローカルエリアネットワーク、電話回線、インターネット等のネットワークに接続するためのネットワークアダプタ18と、上記各構成要素を接続するデータバス19とから構成される。データ記録装置13は、画像表示システムに内蔵又は外付けされたメモリ、磁気ディスク等の記憶装置や、取り出し可能な外部メディアに対してデータの書き込みや読み出しを行う装置や、外部記憶装置とネットワークを介してデータを送受信する装置でもよい。画像表示システム1は、ネットワークアダプタ及びネットワークを介して外部の医用画像撮影装置2や画像データベース3と接続してそれらとの間で画像データを送受信する。
【0011】
図2は、画像処理装置10にインストールされる画像処理プログラムを示すブロック図である。
【0012】
画像処理プログラムは、医用画像撮影装置2によって取得した被検体の断層像を積み上げた画像データセット(ボリューム画像ということもある。)を読み込む画像読込部11a、画像データセットから濃度情報を算出する対象となる対象臓器を抽出する対象臓器抽出部11b、対象臓器の任意の断面像を作成する断面像作成部11c、各断面像における対象臓器領域内の任意の回転中心点又は回転中心領域を基準として径方向に連続する濃度情報を算出する濃度情報算出部11d、算出された濃度情報と、対象臓器内に異常部位がない状態における濃度情報を示す基準濃度情報と、の差異を示す特異量及びその特異量が算出された前記対象臓器内における位置を示す位置情報を求める特異量算出部11e、算出された特異量及び位置情報に基づいて、対象臓器における特異量の分布を示す特異量マップを作成する特異量マップ作成部11f、及び作成された特異量マップを表示するため制御を行う表示制御部11gを備える。これらのプログラムは主メモリ12にロードされ、CPU11により実行させることによりその機能を果たす。表示制御部11gは、画像処理装置10において特異量マップを表示しない場合には不要であり、代わりに、他の端末装置5に対して特異量マップを送信するための通信制御部を備えてもよい。
【0013】
図3は、以上のように構成された画像処理装置10によって管腔臓器内の異常部位を効率的に表示する処理の一例を示すフローチャートである。CPU11はこのフローチャートに従って画像処理装置10を制御する。以下では各々のステップについて説明する。
【0014】
(ステップS1)
ステップS1では、画像読込部11aは、医用画像撮影装置2によって撮影された複数の医療画像(画像データセット)をデータ記録装置13又は画像データベース3から読み出し、主メモリ12に展開する(S1)。
【0015】
(ステップS2)
ステップS2では、対象臓器抽出部11bは、処理を行う対象臓器の抽出を行う(S2)。ステップS1において読み込まれた画像をディスプレイ15上に表示し、操作者はポインティングデバイスを使用して対象臓器の指定及び処理範囲を設定する。範囲の設定は、アキシャル像、MPR画像、ボリュームレンダリングなどの3D画像上の範囲を指定することで行われる。また対象臓器が血管等の管腔臓器の場合、公知の方法(例えば特願2003-313424)により管腔臓器の芯線を算出する。
【0016】
(ステップS3)
ステップS3では、断面像作成部11cが、抽出した対象臓器の断面像を作成する(S3)。断面像の断面位置、角度は操作者によって決定され、断面形状としては、体軸方向の直交断面、MPR(Multi Planner Reconstruction)画像、管腔臓器の芯線に直交する断面(CPR(Curved Planner Reconstruction)画像)などがある。ここで後述するステップS5で対象臓器全体に渡る特異量を算出する場合は、断面位置、角度の異なる複数の断面像を作成する。
【0017】
(ステップS4)
ステップS4では、濃度情報算出部11dが、ステップS3で作成した断面像の濃度情報を算出する(S4)。ここで濃度情報とは断面像上の任意の線分上に連続して存在する画素値の情報であり、画像プロファイルとも呼ばれる。図4、5に濃度情報の一例を示す。図4はX線CT装置で撮影された造影血管40の芯線41に直交する断面像42を示したものである。図4の断面像42上の芯線41を通る線分L‐L’の濃度情報を図5に示す。図5のようにX線CT装置で撮影された造影血管40は芯線41付近で最大の濃度値(CT値)となり、芯線41を中心として径方向に濃度値が減衰する傾向がある。
【0018】
図5のような濃度情報を操作者が入力した任意の位置・角度で作成する。また後述するステップS5で断面像42上全体の特異量を算出する場合は、位置・角度の異なる複数の濃度情報を作成する。図6はその一例を示したものであり、造影血管40の芯線41を中心として、角度方向の異なる線分A‐A’, B‐B’, C‐C’, D‐D’,を設定し、各々線分から角度の異なる複数の濃度情報、Pa, Pb, Pc, Pdを算出する。
【0019】
図6では芯線41を中心として角度方向の異なる複数の濃度情報を作成したが、芯線の走行位置の異なる複数の濃度情報を算出しても良い。図7はその一例を示したものであり、造影血管40の芯線41を基準として走行位置の異なる複数の直交断面像42を設定し、各々の直行断面像42に設定した線分E‐E’, F‐F’, G‐G’, H‐H’から複数の濃度情報、Pe, Pf, Pg, Phを算出する。
【0020】
(ステップS5)
ステップS5では、特異量算出部11eが、S6で算出した濃度情報から特異量を算出する(S5)。ここで特異量とは、対象臓器にソフトプラークなどの異常部位がない状態、すなわち正常な状態における濃度情報と、ステップS4で算出した濃度情報との差異の大きさを表す指標である。例えば正常な造影血管の濃度情報は図5のようなほぼ正規分布の形状をとる。しかし、造影血管40にソフトプラークなどの異常部位43がある場合、図8のようにソフトプラーク43に相当する径位置に濃度値の差異が生じる。図8の濃度プロファイル44において、異常部位43付近では、濃度プロファイル44が正規形状とは異なる形状を示す。この形状変化や後述する濃度勾配の急激な変化に基づいて、濃度値の差異を操作者に提示することで、操作者は効率的に異常部位の有無や位置を把握することが可能となる。以下では特異量を算出する方法について説明する。
【0021】
一つには予めファントム撮影や実際の医療画像から得られた異常部位の無い濃度情報の形状を画像処理装置10のデータ記憶装置13等に記憶しておき、その情報を正常な濃度情報とする方法である。図9は、図8の濃度プロファイル44のうち、芯線41位置からM’までの濃度プロファイル(濃度情報)44と、それと比較すべき正常濃度情報45を重ねて表示した模式図である。この濃度情報44と正常濃度情報45との差異が、特異量46のグラフとして求められる。
【0022】
正常濃度情報45は、上記のように予め用意したものだけでなく、操作者がステップS4で作成した濃度情報から正常らしい濃度情報を選択して、正常な濃度情報としてもよい。
【0023】
ステップS4で作成した濃度情報をディスプレイ15に表示し、操作者が表示された濃度情報のうち、正常であると判断した濃度情報の領域47を、マウスカーソル16cを操作してドラッグすることにより範囲指定する。この範囲指定された濃度情報を正常な濃度情報とする方法である。
【0024】
特異量算出部11dは、特異量を算出した部位の位置を示す位置情報を、特異量と関連づけて求めておく。この位置情報としては、例えば図7では、造影血管40に沿った直交断面42のうちのどの直交断面から特異量を求めたかがわかるように、直交断面の造影血管40の走行方向における位置情報や、直交断面に連続番号が付されている場合にはその番号などがある。
【0025】
以上の方法において、正常な濃度情報と特異量算出対象となる濃度情報との尺度が異なる場合は、波高や裾幅の比をとり縮尺を合わせる。
【0026】
更に正常な濃度情報を決定する方法として、ステップS4で算出した濃度情報に対し、その濃度情報に近似した関数(ガウス関数、Sinc関数等)フィッティングを行い、フィッティング後の関数を正常な濃度情報とする。そしてフィッティング後の関数とステップS4で算出した濃度情報とに基づいて、特異量分布を算出する。
【0027】
濃度情報に基づいて特異量を求める方法として、上記のように正常濃度情報とステップS4で算出した濃度情報との差分量から特異量を求める方法の他に、濃度情報の濃度勾配に基づいて特異量を求める方法がある。
【0028】
図10は、図8の濃度プロファイル44の濃度勾配49を示す。図10のように濃度情報に異常部位に起因する肩状のピークPeak1が発生した場合、同位置に濃度勾配のピークPeak2が現れる。このPeak2における濃度勾配値Aoを特異量とし、Peak2が現れた位置の位置情報を求めてもよい。
【0029】
以上の方法によって求めた特異量の分布、あるいは特異量のピーク値を操作者に提示することで、操作者は効率的に異常部位の有無や位置を把握することが可能となる。
【0030】
(ステップS6)
ステップS6では、特異量マップ作成部11fが、特異量マップを作成する(S6)。ここで特異量マップとは、ステップS5で算出した複数の特異量を医療画像上の位置に対応させて並べ替えたものである。この特異量マップを操作者に表示することによって操作者は異常部位の観察を行う。以下では特異量マップの作成方法と表示方法について説明する。
【0031】
図11は、ステップS3で作成した断面像42上に、ステップS6として作成した特異量マップを表示する方法を示す。特異量マップ作成部11fは、図6に示す断面像42上の角度の異なる複数の濃度情報Pa,Pb,Pc,Pdから得られる特異量を再構成することで断面像上の位置に対応する特異量マップ50を作成する。次に、特異量マップ作成部11fは、断面像42の異常部位43位置に、特異量マップ50を合成(重ね合わせ)し、特異量マップ合成断面像51を作成する。断面像42では、異常部位43が臓器壁や臓器内の腔領域とは異なる値で表示されるが、特異量マップ合成断面像51では、異常部位43位置に特異量マップ50が重ねて表示されるため、断面像42に比べてより異常部位43が他の領域と明確に区別して表示される。その結果、操作者は異常部位の観察を効率良く行うことが可能となる。ここで特異量マップは特異量に相当する画素値で表示しても良いし、任意の閾値以上の特異量を持つ画像領域に相当する図形を、例えば操作者の注意を促すような色や模様を付けて表示しても良い。
【0032】
また図7で示した断面位置の異なる複数の濃度情報Pe,Pf,Pg,Phから得られる特異量を再構成することでも特異量マップ61を作成することができる。図12はその一例を示したものであり、造影血管40のCPR像60上の特異量マップ表示例を示している。図11と同様に、CPR像60に特異量マップ61を重ねて表示した特異量マップ合成CPR像62を作成することで、操作者は臓器の走行方向に沿って分布する異常部位の観察を効率良く行うことが可能となる。
【0033】
<第二実施形態>
第二実施形態は、特異量マップとして特異量の最大値や、特異量が最大となる対象臓器の位置を操作者に表示する実施形態である。
【0034】
図13は濃度勾配49を特異量とする場合を例として最大特異量と最大特異量位置の定義を説明したものである。ステップS5で算出した特異量のうち径方向に最大となる特異量を最大特異量、また特異量が最大となる径方向の位置を最大特異量位置と定義する。また、異常部位に対応する濃度値、例えばX線CT装置で撮影された造影血管の画像からソフトプラークに相当する特異量マップを作成する場合には、ソフトプラークが取りうる濃度値(CT値)を濃度値範囲130として設定し、濃度値範囲130内に現れる濃度勾配49のピークPeak2の濃度値を最大特異量として求めても良い。これにより、万一、濃度勾配49に異常部位の存在以外の原因でピークが現れたときにも、そのピークを異常部位として誤って抽出することを防ぐことができる。
【0035】
最大特異量と最大特異量位置を用いて特異量マップを作成することで操作者に対して異常部位の位置を効率的に提示することが可能となる。以下にその例を示す。
【0036】
図14は、最大特異量位置を用いて特異量が最大となる対象臓器の位置、つまり異常部位の位置を操作者に提示した画面表示例である。
【0037】
図14(a)は、ソフトプラークを有する血管の走行方向に直交する断面像42を示したものである。この断面像42上で特異量が最も高い位置を操作者に提示するため、最大特異量位置に相当する断面像上の位置を指示する図形140を表示する。この図形140を最大特異量マークと定義する。最大特異量マークには三角形、矢印など操作者が最大特異量の位置を明確に認識できる形状のものが望ましい。図14(a)のように最大特異量マークを表示することによって操作者は異常部位の位置を効率的に把握することが可能となる。また最大特異量マークに最大特異量の値に相当する色付けや模様付けを行って表示することで操作者は異常部位の位置と異常の程度を同時に把握することが可能となる。
【0038】
図14(b)は、ソフトプラークを有する血管の芯線を通る断面像(CPR像)60に最大特異量マーク140を表示する例を示したものである。血管周辺の最大特異量位置に相当する座標に最大特異量マーク140を表示する。このように走行方向を基準とした断面像で診断を行う場合にも最大特異量マークは有効である。
【0039】
図14(c)は、心臓の三次元画像70上に最大特異量マークを表示する例を示したものである。冠動脈周辺の最大特異量位置に相当する座標に最大特異量マークを表示する。このように三次元画像上で診断を行う場合にも最大特異量マークは有効である。
【0040】
<第三実施形態>
第三実施形態は、複数の最大特異量位置を用いて特異量が最大となる対象臓器の領域、つまり異常部位の位置を操作者に提示する実施形態である。この複数の最大特異量位置から得られる最大特異量の分布を最大特異量マップと定義する。
【0041】
図15(a)は血管の走行方向に直交する断面像42を示したものであるが、血管壁を取り囲む円弧を最大特異量マップ80として表示している。この様な形状のマップを作成するには図5のように芯線を中心とし、角度の異なる複数の濃度情報から最大特異量を算出する。算出した最大特異量を各々の角度に相当する円弧上に並べ替えることで最大特異量マップ80を作成する。この最大特異量マップ80を最大特異量に相当する画素値やパターンとして表示する。このように最大特異量マップを表示することによって操作者は血管の芯線を中心としたどの角度位置に異常部位があるのかを効率的に把握することが可能となる。
【0042】
図15(b)は血管の芯線を通る断面像(CPR像)60を示したものであるが、血管の走行方向に沿った帯状の図形を最大特異量マップ81として表示している。この様な形状のマップを作成するには図7のように血管の走行方向の位置の異なる複数の濃度情報から最大特異量を算出する。算出した走行位置の異なる最大特異量を走行位置に相当する帯状の図形として並べ替えることで最大特異量マップ81を作成する。この最大特異量マップ81を最大特異量に相当する画素値やパターンとして表示する。このように最大特異量マップ81を表示することによって操作者は血管の走行方向のどの位置に異常部位があるのかを効率的に把握することが可能となる。
【0043】
図15(c)は血管の仮想内視鏡画像(CEV)65を示したものであるが、血管壁上に最大特異量マップ82を表示している。この様なマップを作成するには血管の芯線を中心にした角度と走行位置の異なる複数の濃度情報から最大特異量を算出する。算出した最大特異量を仮想内視鏡画像65の血管壁に相当する位置に図形に並べ替えることで最大特異量マップを作成する。この最大特異量マップを最大特異量に相当する画素値やパターンとして表示する。このように最大特異量マップを表示することによって操作者は血管壁のどの位置に異常部位があるのかを効率的に把握することが可能となる。
【0044】
また最大特異量マップは管腔臓器展開画像(特願2005-132401)にも適用可能である。管腔臓器展開画像とは図16のように管腔臓器90の芯線(芯軸)91を基準として、径方向(r方向)の投影値を角度方向(θ方向)と管腔臓器90の走行方向(z方向)に展開して表示する方法である。例えば径方向の最大値を投影値とした場合、血管壁周辺に存在する石灰化などの病変の分布を効率的に把握することが可能である。しかし、この手法ではソフトプラークなど周辺臓器との濃度差が小さい病変の描出は難しい。
【0045】
この問題を解決するには図17に示したように最大特異量マップ83を管腔臓器展開画像92に重ねて表示すればよい。図17は血管壁周辺に存在する石灰化の管腔臓器展開画像92を示したものであり、ソフトプラークに相当する位置に最大特異量マップ83を重ねて表示している。このように管腔臓器展開画像92と最大特異量マップ83とを組み合わせることで、石灰化93とソフトプラークなど性状の異なる異常部位の分布を1枚の画像上で把握することが可能となる。
【0046】
画面表示例として、例えば、CPR像を実際の曲がり形状に沿って表示した例、CPR像を直線状に表示した例、曲線状又は直線上の任意の断面位置の濃度プロファイル、展開画像に特異量マップを重ねて表示した例の何れか一つを表示したり、任意の組み合わせを並べて表示したりしてもよい。その際、濃度プロファイルの肩状の段差に三角形状のマーカを付してもよい。これにより特異量及びその存在位置がわかる。さらに、展開画像上にCPRの断面位置を示す点線を重ねて表示したり、展開画像やCPR像に特異量の具体的な数値を特異量マップとともに表示したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のハードウェア構成図
【図2】本発明に係る画像処理プログラムのブロック図
【図3】本発明の処理例を示すフローチャート
【図4】濃度分布の算出方法を説明する図
【図5】濃度分布の一例を示す図
【図6】複数条件の濃度分布の算出方法を説明する図
【図7】複数条件の濃度分布の算出方法を説明する図
【図8】異常部位を有する臓器の濃度分布の一例を示す図
【図9】特異量算出方法の一例を示す図
【図10】特異量算出方法の一例を示す図
【図11】特異量マップの表示方法を説明する図
【図12】特異量マップの表示方法を説明する図
【図13】最大特異量と最大特異量位置の表示方法を説明する図
【図14】最大特異量マークの表示方法を説明する図
【図15】最大特異量マップの表示方法を説明する図
【図16】管腔臓器展開表示法を説明する図
【図17】管腔臓器展開表示画像と最大特異量マップとの合成画像の一例を説明する図
【符号の説明】
【0048】
1…画像表示システム、2…医用画像撮影装置、3…画像データベース、4…ネットワーク、5…端末装置、10…画像処理装置、11…中央処理装置(CPU)、12…主メモリ、13…データ記録装置、15…画像表示装置、11a…画像読込部、11b…対象臓器抽出部、11c…断面像作成部、11d…濃度情報算出部、11e特異量算出部、11f…特異量マップ作成部、11g…表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像撮影装置によって取得した被検体の画像データセットを読み込む画像読込み手段と、
前記読み込まれた画像データセットから濃度情報を算出する対象となる対象臓器を抽出する対象臓器抽出手段と、
前記抽出された対象臓器の任意の断面像を作成する断面像作成手段と、
前記断面像における対象臓器領域内の任意の回転中心点又は任意の回転中心領域を基準として径方向に連続する濃度情報を算出する濃度情報算出手段と、
前記算出された濃度情報が、前記対象臓器内に異常部位がない状態における濃度情報を示す基準濃度情報からどれだけ異なっているかを表す指標である特異量及びその特異量が算出された前記対象臓器内における位置を示す位置情報を求める特異量算出手段と、
前記算出された特異量及び前記位置情報に基づいて、前記対象臓器における特異量の分布を示す特異量マップを作成する特異量マップ作成手段と、
前記作成された特異量マップを表示するため特異量マップ表示手段と、
を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記特異量マップ表示手段は、前記特異量マップを前記画像データセットから再構成された再構成像に重ねて表示する、
又は前記特異量マップ作成手段が前記再構成像の輪郭形状に沿った特異量マップを作成し、前記特異量マップ表示手段は、前記再構成像と並べて表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記特異量算出手段は、前記算出された特異量のうちの最大値である最大特異量及びその最大特異量が存在する位置を示す位置情報を求め、
前記特異量マップ作成手段は、前記画像データセットから再構成された再構成像又は前記特異量マップにおける前記最大特異量が存在する位置にマーカを付加する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記特異量算出手段は、前記断面像の各径方向の特異量のうちの最大値である最大特異量、又は前記対象臓器の複数の断面像において各断面像について求められた特異量のうちの最大値である最大特異量を求め、
前記特異量マップ作成手段は、前記断面像の各径方向の最大特異量に基づいて、前記断面像の周方向に沿った最大特異量の分布を示す最大特異量マップを作成する、又は前記対象臓器の複数の断面像を構成する断面像毎に求めた最大特異量に基づいて、前記対象臓器の走行方向に沿った最大特異量の分布を示す最大特異量マップを作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記特異量マップ作成手段は、前記特異量の値に応じて前記特異量マップにおける特異量又は前記マーカの表示態様を変更した特異量マップを作成する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像表示装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−275141(P2007−275141A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102515(P2006−102515)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】