画像表示装置
【課題】不要ガスの吸着による影響が少なく、輝度斑やザラツキ感等の画質不良が生じない高品位の画像が得られる画像表示装置を提供する。
【解決手段】上部電極13から電子を放出する電子源アレイの表面に、例えばセシウムやナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の酸化物20が、絶縁層12との界面から上部電極13の表面にかけて拡散され、特に電子源アレイの電子放出部には、上部電極13の電子放出部以外の面内よりもアルカリ金属のアルカリ密度が低く、約20%以上低くして拡散されている。
【解決手段】上部電極13から電子を放出する電子源アレイの表面に、例えばセシウムやナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の酸化物20が、絶縁層12との界面から上部電極13の表面にかけて拡散され、特に電子源アレイの電子放出部には、上部電極13の電子放出部以外の面内よりもアルカリ金属のアルカリ密度が低く、約20%以上低くして拡散されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係わり、特に電子源アレイを用いた自発光型のフラット・パネル・ディスプレイとも称する画像表示装置に関し、詳細には電子源アレイの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小で集積可能な冷陰極型の電子源を利用する画像表示装置(フィールド・エミッション・ディスプレイ:FED)が開発されている。この種の画像表示装置の電子源は、電界放出型電子源とホットエレクトロン型電子源とに分類される。前者には、スピント型電子源、表面伝導型電子源、カーボンナノチューブ型電子源等が属し、後者には金属−絶縁体−金属を積層したMIM(Metal−Insulator−Metal)型、金属−絶縁体−半導体を積層したMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)型、金属−絶縁体−半導体−金属型等の薄膜型電子源がある。
【0003】
MIM型の電子源については、例えば特許文献1、2に開示されている。MIM型電子源の構造と動作は以下のとおりである。すなわち、上部電極と下部電極との間に絶縁層を介在させた構造を有し、上部電極と下部電極との間に電圧を印加することにより、下部電極中のフェルミ準位近傍の電子がトンネル現象により障壁を透過し、電子加速層である絶縁層の伝導帯へ注入されホットエレクトロンとなり、上部電極の伝導帯へ流入する。これらのホットエレクトロンのうち、上部電極の仕事関数φ以上のエネルギーをもって上部電極表面に達したものが真空中に放出される。
【0004】
【特許文献1】特開平7−65710号公報
【特許文献2】特開平10−153979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような薄膜電子源を複数の行(例えば水平方向)と複数の列(例えば垂直方向)とに並べて二次元マトリクスを形成し、各薄膜電子源対応に配列した複数の蛍光体を真空中に配置した蛍光面とで画像表示装置を構成することができる。特に下部電極と上部電極、その間に電子加速層を設けたホットエレクトロン型の薄膜型電子源は、デバイス構造が電界放出型に比べて簡易であり、表示装置への適用が期待される。
【0006】
しかしながら、このような冷陰極型の薄膜電子源は、熱陰極型と比べ低温度で動作させるために電子放出部の表面が不要ガス吸着などの汚染の影響を受け易い。
【0007】
電子源アレイを作製する際には、レジスト,剥離,エッチング等の工程を用いるのが一般的である。これらの工程において用いるガス及び液剤等にS(硫黄),Cl(塩素),F(弗素),N(窒素)分やC(炭素)分等が含まれていると、電子放出面に付着し、電子放出面が汚染されてしまう場合がある。この場合、上部電極から蛍光体への電子放出に妨げとなり、画像が暗くなってしまう等の不具合が生じる。
【0008】
さらに、電子源アレイが形成された陰極基板と蛍光面が形成された陽極基板とを貼り合せるガラス封着工程では、フリットガラスや蛍光面等のペースト中に用いているバインダや溶剤等の有機物が燃焼飛散し、電子源の電子放出部に吸着して電子放出が得られなくなる場合もある。
【0009】
この問題を解決するには、上部電極にS,Cl,F,N分やC分が付着されないようにすること、またはNH3やアミン類,NOX,CH,アルカリ金属,アルカリ金属化合物,アルカリ土類金属化合物等で電子源の電子放出面が汚染されないようにすることが必要不可欠となっている。
【0010】
この方法の一例としては、例えば電子源アレイの電子放出部をアルカリ金属の水溶液に浸漬し、電子放出部の表面に均一にアルカリ金属を吸着させることにより実現される。アルカリ金属や金属酸化物は、電子放出部の固体触媒の活性を向上させる助触媒となるため、封着工程で発生する一酸化炭素や炭化水素の触媒金属上での酸化反応の活性化エネルギーを下げ、有機物の完全燃焼を促進する。不対電子(二重、三重結合等)を有する一酸化炭素や炭化水素は電子放出部の金属と電子の授受をしやすく化学吸着し易いのに対し、不対電子を有しない二酸化炭素や水蒸気は、化学吸着しにくいため、電子放出部の汚染を抑制することができる。
【0011】
しかしながら、薄膜電子源上にアルカリ金属を付着させることにより、表示パネル内の不要ガスを吸着したり、仕事関数を下げたりして電子放射効率を向上させることができる反面、薄膜電子源上のアルカリ金属のアルカリ密度が高いと、ガス吸着量が増え、仕事関数が上がり、電子利用効率が悪化する。また、アルカリ金属のアルカリ密度に斑が生じると、ガス吸着量や仕事関数の増減により電子放射効率にバラツキが生じる。さらには、不要ガス吸着後に仕事関数を上げて電子利用効率を悪化させる。結果として、表示画像の明暗の斑、輝度斑、ザラツキ感が発生する等の画質不良が生じるという課題があった。
【0012】
また、薄膜電子源上のアルカリ金属のアルカリ密度が高いと、アルカリ金属の微粒子が走査線分離孔に詰まり、上部電極が分離できなくなり、走査線分離不良が生じ、さらには、上部電極とのコンタクト抵抗が増大するという課題があった。この結果、上記同様の画質不良が生じる。
【0013】
したがって、本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、不要ガスの吸着による影響が少なく、輝度斑やザラツキ感等の画質不良が生じない高品位の画像が得られる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明による画像表示装置は、電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備え、電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度を他の部分の面内よりも低くすることにより、仕事関数増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0015】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、電子源アレイの電子放出部のアルカリ密度を電子放出部以外の面内よりも20%以上低くしたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による他の画像表示装置は、電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備え、電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度のバラツキ分布を電子放出部の面内で±20%以内とすることにより、仕事関数増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0017】
また、本発明による他の画像表示装置は、電子を放出する電子源アレイを有する陰極基板と蛍光面を有する陽極基板とを備え、陰極基板と陽極基板とに囲まれたパネル内において電子源アレイの電子放出部以外の領域にアルカリ金属が拡散されたことにより、仕事関数増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0018】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、アルカリ金属がアルカリ金属酸化物であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、アルカリ金属がアルカリ金属化合物であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、アルカリ金属がセシウム、ルビジウム、カリウム、ナトリウム、またはリチウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子源アレイの電子放出部のアルカリ密度を他の部分の面内よりも低くしたことにより、電子放出部の仕事関数を低減させ、電子放出閾値を低下させて放出電流を増加させることができるので、高い電流密度の放出電流を取り出すことができる。これによって、画像の明暗斑、輝度斑、ザラツキ感等が生じ難い、光沢感のある高品位の画質が得られるという極めて優れた効果を有する。
【0022】
また、本発明によれば、電子放出部への封着工程で発生する不要ガスの吸着が少なくなるので、電子放出面のガス吸着の少ない清浄な冷陰極を用いたFEDパネルが形成できるという極めて優れた効果が得られる。
【0023】
また、本発明によれば、電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度のバラツキ分布が電子放出部の面内で±20%以内とすることにより、単位面積当りの不要ガス吸着量及び仕事関数が面内で略均一となり、電子放射効率のバラツキが少なくなるので、輝度斑やザラツキ感等が生じ難い、光沢感のある高品位の画質が得られるという極めて優れた効果を有する。
【0024】
また、本発明によれば、陰極基板と陽極基板とに囲まれたパネルにおいて電子源アレイの電子放出部以外の領域にアルカリ金属が付着されたことにより、電子源アレイの面内に付着させた場合の副作用が発生し難くなるとともに、電子源アレイの面内に付着させるよりも多くのアルカリ金属を付着させることができるので、不要ガスによる影響が少なくなり、プロセス裕度を大きくとれるとともに、輝度斑の生じ難い、光沢感のある高品位の画質が得られるという極めて優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明による画像表示装置を、MIM型電子源を用いた画像表示装置を例として説明する。しかし、本発明は、MIM型電子源に限るものではなく、背景技術の欄で説明したホットエレクトロン型(下部電極と上部電極との間に電子加速層を設けた電子源)に有効である。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1の説明図であり、MIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置を例とした模式平面図である。なお、図1では、主として電子源を有する一方の陰極基板10の平面を示すが、一部に蛍光体を形成した他方の陽極基板(蛍光体基板)110は、その内面に有するブラックマトリクス120及び蛍光体111,112,113のみを部分的に示してある。
【0027】
陰極基板10には、信号線駆動回路50に接続する信号線(データ線)を構成する下部電極11、走査線駆動回路60に接続して信号線と直交配置された走査線21を構成する金属膜下層16、金属膜中間層17、金属膜上層18、保護絶縁膜(フィールド絶縁膜)14、その他の後述する機能膜等が形成されている。なお、陰極(電子放出部)は、上部バス電極に接続し、絶縁層を介して下部電極11に積層する上部電極(図示せず)で形成され、絶縁層の薄層部分で形成される絶縁層(トンネル絶縁層)12の部分から電子が放出される。
【0028】
本発明の陰極では、上部電極から電子を放出する電子源アレイの表面にアルカリ金属としての例えばセシウムやナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属化合物が絶縁層12との界面から上部電極13の表面にかけて拡散され、特に電子源アレイの電子放出部には、上部電極13の面内よりもアルカリ金属のアルカリ密度が低い、例えば約20%程度以上低くして拡散されているのが特徴である。
【0029】
図2は、MIM型電子源の原理説明図である。この電子源は、上部電極13と下部電極11との間に駆動電圧Vdを印加してトンネル絶縁層12内の電界を約1MV/cm〜10MV/cm程度にすると、下部電極11中のフェルミ準位近傍の電子はトンネル現象により障壁を透過し、電子加速層である絶縁層12の伝導帯へ注入されホットエレクトロンとなり、上部電極13の伝導帯へ流入する。これらのホットエレクトロンのうち、上部電極13の仕事関数φ以上のエネルギーをもって上部電極13の表面に達したものが真空中に放出される。
【0030】
図1に戻り、陽極基板110の内面には、表示画像のコントラストを向上させる遮光層、すなわちブラックマトリクス120と、赤色蛍光体111と緑色蛍光体112と青色蛍光体113とからなる蛍光面とが形成されている。蛍光体としては、例えば、赤色にY2O2S:Eu(P22−R)、緑色にZnS:Cu、Al(P22−G)、青色にZnS:Ag、Cl(P22−B)を用いることができる。陰極基板10と陽極基板110とはスペーサ30で所定の間隔で保持され、表示領域の外周に封止枠(図示せず)を介在させて封着した後、内部が真空封止される。
【0031】
スペーサ30は、陰極基板10の上部バス電極配線で構成する走査電極21上に配置し、蛍光面基板のブラックマトリクス120の下に隠れるように配置する。下部電極11は信号線駆動回路50へ接続し、上部バス電極配線である走査電極21は走査線駆動回路60に接続する。
【0032】
本発明による画像表示装置について、陰極の製造プロセスを図3〜図12を参照して説明する。ここでは、層間絶縁層を用いた場合の例を示す。先ず、図3に示したようにガラス材からなる陰極基板10上に下部電極11用の金属膜を成膜する。下部電極11の材料としてAl系材料を用いる。Al系材料を用いるのは、陽極酸化により良質の絶縁膜を形成することができる。ここでは、Ndを2原子量%ドープしたAl−Nd合金を用いた。成膜には、例えば、スパッタリング法を用いる。膜厚は約300nmとした。
【0033】
成膜後はパターニング工程、エッチング工程によりストライプ形状の下部電極11を形成した(図4)。下部電極11の電極幅は画像表示装置のサイズや解像度により異なるが、そのサブピクセルのピッチ程度、ほぼ約100μm〜200μm程度とする。エッチングは、例えば燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる。この電極は幅の広い簡易なストライプ構造のため、レジストのパターニングは安価なプロキシミティ露光法や印刷法等を用いて行うことができる。
【0034】
次に、電子放出部を制限し、下部電極11のエッジへの電界集中を防止する保護絶縁層14と、絶縁層12とを形成する。まず、図5に示した下部電極11上の電子放出部となる部分をレジスト膜25でマスクし、その他の部分を選択的に厚く陽極酸化して保護絶縁層14とする。化成電圧を約100Vとすれば、厚さ約136nmの保護絶縁層14が形成される。その後、レジスト膜25を除去して残りの下部電極11の表面を陽極酸化する。例えば、化成電圧を約6Vとすれば、下部電極11上に厚さ約10nmの絶縁層(トンネル絶縁層)12が形成される(図6)。
【0035】
次に、層間膜(層間絶縁膜)15と、上部電極13への給電線となる上部バス電極とスペーサ30を配置するためのスペーサ電極となる金属膜とを例えばスパッタリング法等で成膜する(図7)。層間膜15としては、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化膜などを用いることができる。ここでは、アルカリ金属の析出防止能力の高いシリコン窒化膜を用い、膜厚は約100nmとした。この層間膜15は、陽極酸化で形成する保護絶縁層14にピンホールがあった場合、その欠陥を埋め、下部電極11と上部バス電極との配線間の絶縁を保つ役割を果たす。
【0036】
金属膜は、金属膜中間層17に純Al、金属膜下層16及び金属膜上層18にCrを用いた。純Alの膜厚は配線抵抗を低減するため、可能な限り厚くしておく。ここでは、金属膜下層16を約100nm、金属膜中間層17を約4.5μm、金属膜上層18を約100nmの膜厚とした。
【0037】
続いて、2段階のパターニングとエッチング工程により金属膜上層18と金属膜中間層17とを下部電極11とは直交するストライプ形状に加工する。金属膜上層18のCrのエッチングは例えば硝酸アンモニウムセリウム水溶液でのウェットエッチング、金属膜中間層17の純Alのエッチングは例えば燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる(図8)。金属膜上層18の電極幅は金属膜中間層の電極幅より狭くし、金属膜上層18が庇状にならないようにする。
【0038】
続いて、パターニングとエッチング工程により金属膜下層16を下部電極11とは直交するストライプ形状に加工する(図9)。エッチングは、例えば硝酸アンモニウムセリウム水溶液でのウェットエッチングで行う。その際、金属膜下層16の片側は金属膜中間層17より張り出させて、後の工程で上部電極との接続を確保するコンタクト部とし、金属膜下層16の反対側では金属膜上層18と金属膜中間層17の一部とをマスクとしてアンダーカットを形成し、後の工程で上部電極13を分離する庇を形成する。金属膜下層16、金属膜中間層17、金属膜上層18で形成する走査電極21の電極幅は画像表示装置のサイズや解像度により異なるが、低抵抗化のためできるだけ幅広とし、走査線ピッチの半分以上、約300μm〜400μm程度とする。
【0039】
続いて、層間膜15を加工し、電子放出部を開口する。電子放出部はピクセル内の1本の下部電極11と、下部電極11と直交する2本の上部バス電極に挟まれた空間の直交部の一部に形成する。エッチングは、例えばCF4やSF6を主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングによって行うことができる(図10)。
【0040】
次に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の無機塩や有機塩の水溶液を塗布し、乾燥する。乾燥により、水溶液中にあったこれらの無機塩19が絶縁層12及び層間膜15の表面に吸着した状態で残る。アルカリ金属としてはCs,Rb,K,Na,Li,Fr等が有効であるが、性能、コスト及び原料の扱い易さ等からCsまたはKが好適である。また、水溶液の塗布方法としては、スクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法、リフトオフ法等を用いることができる(図11)。
【0041】
塩としては、リン酸塩,ケイ酸塩,炭酸塩,炭酸水素塩,硝酸塩,硫酸塩,酢酸塩,ホウ酸塩,塩化物,水酸化物等が適用できる。アルカリ土類金属は、難溶性のものが多いが、例えば水酸化物を用いることができる。アルカリ土類金属としてはMg,Ca,Sr,Ba等を用いることができる。
【0042】
ここで、無機塩19は、層間膜15及び絶縁層12上に吸着されるが、本実施例では、電子源アレイの電子放出部となる絶縁層12の表面に吸着させる無機塩19は、層間膜15上に吸着される無機塩19のアルカリ密度よりも約20%以上少ないアルカリ密度で吸着させる。
【0043】
続いて、上部電極13の成膜をスパッタ法等で行う。上部電極13としては、ホットエレクトロンの透過率の高い例えば8族の白金族、1b族の貴金属が有効である。特にPd,Pt,Rh,Ir,Ru,Os,Au,Agやそれらの積層膜などが有効である。ここでは例えばIr,Pt,Auの積層膜を用い、膜厚比を1:2:3とし、膜厚は例えば約3nmとした(図12)。
【0044】
次に、画像表示装置を構成する陰極基板と陽極基板はスペーサと枠部材を介し、ガラスフリットを用いて約400℃〜450℃の高温プロセスにより焼成して封着される。この際、上述した無機塩19は酸化し、かつ上部電極13中に混合、上部電極材料と合金相を有する一部は合金化し、アルカリ金属やアルカリ土類金属がその酸化物20として上部電極13内に拡散された状態になる。例えば、炭酸Csで処理した場合は、炭酸が分解、酸化して酸化Csとなり、その一部はAuと反応してAuCsやAu5Cs等の金属間化合物を形成する。この際、炭酸塩の分解には白金族のIrやPtが触媒として作用し、分解を促進する効果がある。
【0045】
このようにすると、上部電極13の電極材料よりイオン化傾向の強いアルカリ金属やアルカリ土類金属、それらの酸化物20を絶縁層12との界面に拡散させることができる(図12)。この場合、電子放出部となる絶縁層12の表面に拡散させるアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度は、層間膜15上に吸着されるアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度よりも約20%少なくなって拡散されることになる。
【0046】
このような形成方法によれば、電子放出部となる絶縁層12の表面上でアルカリ密度は、上部電極13上に拡散されるアルカリ密度よりも約20%以上低く拡散され、それ以外の電子放出部を除く上部電極13では、絶縁膜12に対して約20%程度多いアルカリ密度で拡散されて形成されることになる。
【0047】
つまり、上部電極13内に拡散されたアルカリ金属酸化物20の全体分布量を100%としたとき、電子放出部のアルカリ密度が約20%以上低く、電子放出部を除く上部電極13のアルカリ密度が約20%以上高くなっており、電子源アレイの面内分布が±20%以内となる均一なアルカリ密度分布となる。
【0048】
このような構成によれば、電子放出部となる絶縁層12の表面に吸着するアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度を約20%以上低くすることによって、仕事関数の増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなる。また、上部電極13の電子放出部を除く電子源アレイの面内にアルカリ密度が約20%以上高いアルカリ金属酸化物20を拡散させたことにより、アルカリ密度が高くなった分、パネル化工程での不要ガスの吸着効果をさらに拡大させることができる。
【0049】
なお、ここで、電子放出部となる絶縁層12上の上部電極13内のアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度を、陰極基板面内に対して約20%以上低くした場合について説明したが、このアルカリ密度が約20%以上高いと、電子放出部上のアルカリ金属が不要ガスを吸着し、仕事関数を上がり、電子の放出を妨げ、電子利用効率悪化させることなる。したがって、電子放出部のアルカリ密度は陰極基板面内に対して約20%以上低く抑えることが発明者等の実験の結果、明らかとなった。なお、このアルカリ密度の分布は、例えば蛍光X線分析装置を用いた測定方法により容易に判別することできる。
【実施例2】
【0050】
図13は、本発明による画像表示装置の他の実施例を説明する電子源アレイの電子放出部の要部拡大断面図であり、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図13において、電子源アレイの電子放出部となる絶縁層(トンネル絶縁層)12上に形成するアルカリ金属酸化物20を拡散した上部電極13を、膜厚の厚い厚膜電極13aと膜厚の薄い薄膜電極13bとで形成することによって絶縁層12上の面内における上部電極13の厚さのバラツキを±20%以内となるように形成したものである。これによって絶縁層12上の上部電極13内のアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度は約±20%以内となる。
【0051】
なお、絶縁層12上に形成する上部電極13のアルカリ金属酸化物20を拡散させた厚膜電極13a及び薄膜電極13bは、エアナイフによる液切り法またはスピン法等による加工法により容易に形成することができる。
【0052】
このような構成によれば、絶縁層12上のアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度が電子源アレイの面内でほぼ均一(±20%)となるので、単位面積当りの不要ガス吸着量や仕事関数が均一となり、電子放射効率のバラツキが少なくなるので、明暗斑や輝度斑やザラツキ感等の無い艶々感のある画質が得られる。
【0053】
図14は、本発明による画像表示装置の他の実施例を説明する電子源アレイの電子放出部の要部拡大断面図であり、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図14において、絶縁層(トンネル絶縁層)12上のアルカリ金属酸化物20を拡散させた上部電極13を、厚肉部13cと薄肉部13dとで形成することによって絶縁層12上の上部電極13の面内におけるアルカリ酸化物20のアルカリ密度のバラツキを±20%以内となるように形成したものである。この場合も、アルカリ金属酸化物20のアルカリ密度は、蛍光X線分析装置を用いて容易に測定することができる。
【0054】
このような構成においても、不要ガスの吸着量や仕事関数を絶縁層12の面内でほぼ均一にすることができるので、単位面積当りのガス吸着量や仕事関数が均一となり、電子放射効率のバラツキが少なくなるので、明暗斑や輝度斑やザラツキ感等の無い良質な画像が得られる。
【実施例3】
【0055】
図15は、本発明による画像表示装置のさらに他の実施例を説明する画像表示パネルの要部拡大断面図であり、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図15において、参照符号10は陰極基板(背面基板)、30はスペーサ、110は陽極基板(前面基板)、120はブラックマトリクス(遮光用のBM膜)、130はメタルバック(金属薄膜からなる加速電極)、140は表示領域、150は映像信号配線、160は走査信号配線、170は電子源、180,180Aは接続配線、190は接着部材、200は蛍光体層、210は絶縁膜(層間絶縁膜)である。
【0056】
このような構成において、実施例1及び実施例2と異なる点は、陰極基板10上の電子源170の電子放出部以外であるメタルバック130等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面にアルカリ金属酸化物20が付着されている。なお、このアルカリ金属酸化物20は、パネル構成部材の設置位置によってはその裏面側に付着させても良い。この場合、陰極基板10上の電子源170の電子放出部にはアルカリ金属酸化物20は付着されていない。
【0057】
また、実施例3では、パネル内面の露出するメタルバック130の表面にアルカリ金属酸化物20を付着させた場合について説明したが、この箇所以外にBM膜120,蛍光体層200または図示しないが枠体等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面にはアルカリ金属酸化物20を付着させても良い。
【0058】
なお、実施例3ではメタルバック130,BM膜120,蛍光体層200または図示しないが枠体等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面の何れか一方にアルカリ金属酸化物20を付着させても良い。
【0059】
また、実施例3では、パネル内面の露出するメタルバック130の表面にアルカリ金属酸化物20を付着させた場合について説明したが、この箇所以外にBM膜120,蛍光体層200または図示しないが枠体等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面にはアルカリ金属酸化物20を付着させても良い。
【0060】
また、これらの構成部材へのアルカリ金属酸化物20の付着は、構成部材の単体、複合体または陽極基板110をアルカリ金属やアルカリ土類金属に無機塩や有機塩の水溶液に浸漬し、乾燥させることにより、その表面に吸着した状態で残るので、容易に付着させることができる。なお、このアルカリ金属酸化物20の付着は、スクリーン印刷法、スプレー塗布法またはインクジェット法等を用いて成膜し、乾燥させて形成しても良い。
【0061】
このような構成によれば、電子源アレイ上にアルカリ金属酸化物20を付着させるよりも多くのアルカリ金属酸化物20を付着させることができるので、電子源アレイ上のアルカリ金属のアルカリ密度を増やさず、表示パネル内にトータルのアルカリ金属密度が増加するので、パネル化工程で発生する不要ガスをより多く吸着することができる。また、電子源アレイにアルカリ金属酸化物20を付着させた場合の副作用が発生し難くなる。また、不要ガスの影響が少なく、プロセス裕度が大きくなる。さらには、これらのアルカリ金属酸化物20がパネル化工程や点灯時に電子源170の電子放出面に付着すると、仕事関数を低下させる役割も果たす。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1を説明するMIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置を例とした模式平面図である。
【図2】本発明に係わる薄膜型電子源の動作原理を示す図である。
【図3】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図である。
【図4】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図3に続く図である。
【図5】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図4に続く図である。
【図6】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図5に続く図である。
【図7】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図6に続く図である。
【図8】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図7に続く図である。
【図9】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図8に続く図である。
【図10】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図9に続く図である。
【図11】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図10に続く図である。
【図12】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図11に続く図である。
【図13】本発明の実施例2を説明するMIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置の薄膜型電子源の要部拡大断面図である。
【図14】本発明による画像表示装置のMIM型薄膜電子源の他の構成を示す要部拡大断面図である。
【図15】本発明による画像表示装置の実施例3の構成を示す表示パネルの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10・・・陰極基板(背面基板)、11・・・下部電極、12・・・薄膜状絶縁層(トンネル絶縁層)、13・・・上部電極、13a・・・厚膜電極、13b・・・薄膜電極、13c・・・厚肉部、13d・・・薄肉部、14・・・保護絶縁層、15・・・層間膜、16・・・金属膜下層、17・・・金属膜中間層、18・・・金属膜上層、19・・・アルカリ金属無機塩、20・・・アルカリ金属酸化物、21・・・走査電極(上部バス電極配線)、23・・・白金族電極、25・・・レジスト膜、30・・・スペーサ、50・・・信号線駆動回路、60・・・走査線駆動回路、110・・・陽極基板(前面基板)、111・・・赤色蛍光体、112・・・緑色蛍光体、113・・・青色蛍光体、120・・・ブラックマトリクス(遮光用のBM膜)、130・・・メタルバック(金属薄膜からなる加速電極)、140・・・表示領域、150・・・映像信号配線、160・・・走査信号配線、170・・・電子源、180,180A・・・接続配線、190・・・接着部材、200・・・蛍光体層、210・・・絶縁膜(層間絶縁膜)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係わり、特に電子源アレイを用いた自発光型のフラット・パネル・ディスプレイとも称する画像表示装置に関し、詳細には電子源アレイの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小で集積可能な冷陰極型の電子源を利用する画像表示装置(フィールド・エミッション・ディスプレイ:FED)が開発されている。この種の画像表示装置の電子源は、電界放出型電子源とホットエレクトロン型電子源とに分類される。前者には、スピント型電子源、表面伝導型電子源、カーボンナノチューブ型電子源等が属し、後者には金属−絶縁体−金属を積層したMIM(Metal−Insulator−Metal)型、金属−絶縁体−半導体を積層したMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)型、金属−絶縁体−半導体−金属型等の薄膜型電子源がある。
【0003】
MIM型の電子源については、例えば特許文献1、2に開示されている。MIM型電子源の構造と動作は以下のとおりである。すなわち、上部電極と下部電極との間に絶縁層を介在させた構造を有し、上部電極と下部電極との間に電圧を印加することにより、下部電極中のフェルミ準位近傍の電子がトンネル現象により障壁を透過し、電子加速層である絶縁層の伝導帯へ注入されホットエレクトロンとなり、上部電極の伝導帯へ流入する。これらのホットエレクトロンのうち、上部電極の仕事関数φ以上のエネルギーをもって上部電極表面に達したものが真空中に放出される。
【0004】
【特許文献1】特開平7−65710号公報
【特許文献2】特開平10−153979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような薄膜電子源を複数の行(例えば水平方向)と複数の列(例えば垂直方向)とに並べて二次元マトリクスを形成し、各薄膜電子源対応に配列した複数の蛍光体を真空中に配置した蛍光面とで画像表示装置を構成することができる。特に下部電極と上部電極、その間に電子加速層を設けたホットエレクトロン型の薄膜型電子源は、デバイス構造が電界放出型に比べて簡易であり、表示装置への適用が期待される。
【0006】
しかしながら、このような冷陰極型の薄膜電子源は、熱陰極型と比べ低温度で動作させるために電子放出部の表面が不要ガス吸着などの汚染の影響を受け易い。
【0007】
電子源アレイを作製する際には、レジスト,剥離,エッチング等の工程を用いるのが一般的である。これらの工程において用いるガス及び液剤等にS(硫黄),Cl(塩素),F(弗素),N(窒素)分やC(炭素)分等が含まれていると、電子放出面に付着し、電子放出面が汚染されてしまう場合がある。この場合、上部電極から蛍光体への電子放出に妨げとなり、画像が暗くなってしまう等の不具合が生じる。
【0008】
さらに、電子源アレイが形成された陰極基板と蛍光面が形成された陽極基板とを貼り合せるガラス封着工程では、フリットガラスや蛍光面等のペースト中に用いているバインダや溶剤等の有機物が燃焼飛散し、電子源の電子放出部に吸着して電子放出が得られなくなる場合もある。
【0009】
この問題を解決するには、上部電極にS,Cl,F,N分やC分が付着されないようにすること、またはNH3やアミン類,NOX,CH,アルカリ金属,アルカリ金属化合物,アルカリ土類金属化合物等で電子源の電子放出面が汚染されないようにすることが必要不可欠となっている。
【0010】
この方法の一例としては、例えば電子源アレイの電子放出部をアルカリ金属の水溶液に浸漬し、電子放出部の表面に均一にアルカリ金属を吸着させることにより実現される。アルカリ金属や金属酸化物は、電子放出部の固体触媒の活性を向上させる助触媒となるため、封着工程で発生する一酸化炭素や炭化水素の触媒金属上での酸化反応の活性化エネルギーを下げ、有機物の完全燃焼を促進する。不対電子(二重、三重結合等)を有する一酸化炭素や炭化水素は電子放出部の金属と電子の授受をしやすく化学吸着し易いのに対し、不対電子を有しない二酸化炭素や水蒸気は、化学吸着しにくいため、電子放出部の汚染を抑制することができる。
【0011】
しかしながら、薄膜電子源上にアルカリ金属を付着させることにより、表示パネル内の不要ガスを吸着したり、仕事関数を下げたりして電子放射効率を向上させることができる反面、薄膜電子源上のアルカリ金属のアルカリ密度が高いと、ガス吸着量が増え、仕事関数が上がり、電子利用効率が悪化する。また、アルカリ金属のアルカリ密度に斑が生じると、ガス吸着量や仕事関数の増減により電子放射効率にバラツキが生じる。さらには、不要ガス吸着後に仕事関数を上げて電子利用効率を悪化させる。結果として、表示画像の明暗の斑、輝度斑、ザラツキ感が発生する等の画質不良が生じるという課題があった。
【0012】
また、薄膜電子源上のアルカリ金属のアルカリ密度が高いと、アルカリ金属の微粒子が走査線分離孔に詰まり、上部電極が分離できなくなり、走査線分離不良が生じ、さらには、上部電極とのコンタクト抵抗が増大するという課題があった。この結果、上記同様の画質不良が生じる。
【0013】
したがって、本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、不要ガスの吸着による影響が少なく、輝度斑やザラツキ感等の画質不良が生じない高品位の画像が得られる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明による画像表示装置は、電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備え、電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度を他の部分の面内よりも低くすることにより、仕事関数増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0015】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、電子源アレイの電子放出部のアルカリ密度を電子放出部以外の面内よりも20%以上低くしたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による他の画像表示装置は、電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備え、電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度のバラツキ分布を電子放出部の面内で±20%以内とすることにより、仕事関数増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0017】
また、本発明による他の画像表示装置は、電子を放出する電子源アレイを有する陰極基板と蛍光面を有する陽極基板とを備え、陰極基板と陽極基板とに囲まれたパネル内において電子源アレイの電子放出部以外の領域にアルカリ金属が拡散されたことにより、仕事関数増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0018】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、アルカリ金属がアルカリ金属酸化物であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、アルカリ金属がアルカリ金属化合物であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明による他の画像表示装置は、好ましくは、上記構成において、アルカリ金属がセシウム、ルビジウム、カリウム、ナトリウム、またはリチウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子源アレイの電子放出部のアルカリ密度を他の部分の面内よりも低くしたことにより、電子放出部の仕事関数を低減させ、電子放出閾値を低下させて放出電流を増加させることができるので、高い電流密度の放出電流を取り出すことができる。これによって、画像の明暗斑、輝度斑、ザラツキ感等が生じ難い、光沢感のある高品位の画質が得られるという極めて優れた効果を有する。
【0022】
また、本発明によれば、電子放出部への封着工程で発生する不要ガスの吸着が少なくなるので、電子放出面のガス吸着の少ない清浄な冷陰極を用いたFEDパネルが形成できるという極めて優れた効果が得られる。
【0023】
また、本発明によれば、電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度のバラツキ分布が電子放出部の面内で±20%以内とすることにより、単位面積当りの不要ガス吸着量及び仕事関数が面内で略均一となり、電子放射効率のバラツキが少なくなるので、輝度斑やザラツキ感等が生じ難い、光沢感のある高品位の画質が得られるという極めて優れた効果を有する。
【0024】
また、本発明によれば、陰極基板と陽極基板とに囲まれたパネルにおいて電子源アレイの電子放出部以外の領域にアルカリ金属が付着されたことにより、電子源アレイの面内に付着させた場合の副作用が発生し難くなるとともに、電子源アレイの面内に付着させるよりも多くのアルカリ金属を付着させることができるので、不要ガスによる影響が少なくなり、プロセス裕度を大きくとれるとともに、輝度斑の生じ難い、光沢感のある高品位の画質が得られるという極めて優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明による画像表示装置を、MIM型電子源を用いた画像表示装置を例として説明する。しかし、本発明は、MIM型電子源に限るものではなく、背景技術の欄で説明したホットエレクトロン型(下部電極と上部電極との間に電子加速層を設けた電子源)に有効である。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1の説明図であり、MIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置を例とした模式平面図である。なお、図1では、主として電子源を有する一方の陰極基板10の平面を示すが、一部に蛍光体を形成した他方の陽極基板(蛍光体基板)110は、その内面に有するブラックマトリクス120及び蛍光体111,112,113のみを部分的に示してある。
【0027】
陰極基板10には、信号線駆動回路50に接続する信号線(データ線)を構成する下部電極11、走査線駆動回路60に接続して信号線と直交配置された走査線21を構成する金属膜下層16、金属膜中間層17、金属膜上層18、保護絶縁膜(フィールド絶縁膜)14、その他の後述する機能膜等が形成されている。なお、陰極(電子放出部)は、上部バス電極に接続し、絶縁層を介して下部電極11に積層する上部電極(図示せず)で形成され、絶縁層の薄層部分で形成される絶縁層(トンネル絶縁層)12の部分から電子が放出される。
【0028】
本発明の陰極では、上部電極から電子を放出する電子源アレイの表面にアルカリ金属としての例えばセシウムやナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属化合物が絶縁層12との界面から上部電極13の表面にかけて拡散され、特に電子源アレイの電子放出部には、上部電極13の面内よりもアルカリ金属のアルカリ密度が低い、例えば約20%程度以上低くして拡散されているのが特徴である。
【0029】
図2は、MIM型電子源の原理説明図である。この電子源は、上部電極13と下部電極11との間に駆動電圧Vdを印加してトンネル絶縁層12内の電界を約1MV/cm〜10MV/cm程度にすると、下部電極11中のフェルミ準位近傍の電子はトンネル現象により障壁を透過し、電子加速層である絶縁層12の伝導帯へ注入されホットエレクトロンとなり、上部電極13の伝導帯へ流入する。これらのホットエレクトロンのうち、上部電極13の仕事関数φ以上のエネルギーをもって上部電極13の表面に達したものが真空中に放出される。
【0030】
図1に戻り、陽極基板110の内面には、表示画像のコントラストを向上させる遮光層、すなわちブラックマトリクス120と、赤色蛍光体111と緑色蛍光体112と青色蛍光体113とからなる蛍光面とが形成されている。蛍光体としては、例えば、赤色にY2O2S:Eu(P22−R)、緑色にZnS:Cu、Al(P22−G)、青色にZnS:Ag、Cl(P22−B)を用いることができる。陰極基板10と陽極基板110とはスペーサ30で所定の間隔で保持され、表示領域の外周に封止枠(図示せず)を介在させて封着した後、内部が真空封止される。
【0031】
スペーサ30は、陰極基板10の上部バス電極配線で構成する走査電極21上に配置し、蛍光面基板のブラックマトリクス120の下に隠れるように配置する。下部電極11は信号線駆動回路50へ接続し、上部バス電極配線である走査電極21は走査線駆動回路60に接続する。
【0032】
本発明による画像表示装置について、陰極の製造プロセスを図3〜図12を参照して説明する。ここでは、層間絶縁層を用いた場合の例を示す。先ず、図3に示したようにガラス材からなる陰極基板10上に下部電極11用の金属膜を成膜する。下部電極11の材料としてAl系材料を用いる。Al系材料を用いるのは、陽極酸化により良質の絶縁膜を形成することができる。ここでは、Ndを2原子量%ドープしたAl−Nd合金を用いた。成膜には、例えば、スパッタリング法を用いる。膜厚は約300nmとした。
【0033】
成膜後はパターニング工程、エッチング工程によりストライプ形状の下部電極11を形成した(図4)。下部電極11の電極幅は画像表示装置のサイズや解像度により異なるが、そのサブピクセルのピッチ程度、ほぼ約100μm〜200μm程度とする。エッチングは、例えば燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる。この電極は幅の広い簡易なストライプ構造のため、レジストのパターニングは安価なプロキシミティ露光法や印刷法等を用いて行うことができる。
【0034】
次に、電子放出部を制限し、下部電極11のエッジへの電界集中を防止する保護絶縁層14と、絶縁層12とを形成する。まず、図5に示した下部電極11上の電子放出部となる部分をレジスト膜25でマスクし、その他の部分を選択的に厚く陽極酸化して保護絶縁層14とする。化成電圧を約100Vとすれば、厚さ約136nmの保護絶縁層14が形成される。その後、レジスト膜25を除去して残りの下部電極11の表面を陽極酸化する。例えば、化成電圧を約6Vとすれば、下部電極11上に厚さ約10nmの絶縁層(トンネル絶縁層)12が形成される(図6)。
【0035】
次に、層間膜(層間絶縁膜)15と、上部電極13への給電線となる上部バス電極とスペーサ30を配置するためのスペーサ電極となる金属膜とを例えばスパッタリング法等で成膜する(図7)。層間膜15としては、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化膜などを用いることができる。ここでは、アルカリ金属の析出防止能力の高いシリコン窒化膜を用い、膜厚は約100nmとした。この層間膜15は、陽極酸化で形成する保護絶縁層14にピンホールがあった場合、その欠陥を埋め、下部電極11と上部バス電極との配線間の絶縁を保つ役割を果たす。
【0036】
金属膜は、金属膜中間層17に純Al、金属膜下層16及び金属膜上層18にCrを用いた。純Alの膜厚は配線抵抗を低減するため、可能な限り厚くしておく。ここでは、金属膜下層16を約100nm、金属膜中間層17を約4.5μm、金属膜上層18を約100nmの膜厚とした。
【0037】
続いて、2段階のパターニングとエッチング工程により金属膜上層18と金属膜中間層17とを下部電極11とは直交するストライプ形状に加工する。金属膜上層18のCrのエッチングは例えば硝酸アンモニウムセリウム水溶液でのウェットエッチング、金属膜中間層17の純Alのエッチングは例えば燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる(図8)。金属膜上層18の電極幅は金属膜中間層の電極幅より狭くし、金属膜上層18が庇状にならないようにする。
【0038】
続いて、パターニングとエッチング工程により金属膜下層16を下部電極11とは直交するストライプ形状に加工する(図9)。エッチングは、例えば硝酸アンモニウムセリウム水溶液でのウェットエッチングで行う。その際、金属膜下層16の片側は金属膜中間層17より張り出させて、後の工程で上部電極との接続を確保するコンタクト部とし、金属膜下層16の反対側では金属膜上層18と金属膜中間層17の一部とをマスクとしてアンダーカットを形成し、後の工程で上部電極13を分離する庇を形成する。金属膜下層16、金属膜中間層17、金属膜上層18で形成する走査電極21の電極幅は画像表示装置のサイズや解像度により異なるが、低抵抗化のためできるだけ幅広とし、走査線ピッチの半分以上、約300μm〜400μm程度とする。
【0039】
続いて、層間膜15を加工し、電子放出部を開口する。電子放出部はピクセル内の1本の下部電極11と、下部電極11と直交する2本の上部バス電極に挟まれた空間の直交部の一部に形成する。エッチングは、例えばCF4やSF6を主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングによって行うことができる(図10)。
【0040】
次に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の無機塩や有機塩の水溶液を塗布し、乾燥する。乾燥により、水溶液中にあったこれらの無機塩19が絶縁層12及び層間膜15の表面に吸着した状態で残る。アルカリ金属としてはCs,Rb,K,Na,Li,Fr等が有効であるが、性能、コスト及び原料の扱い易さ等からCsまたはKが好適である。また、水溶液の塗布方法としては、スクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法、リフトオフ法等を用いることができる(図11)。
【0041】
塩としては、リン酸塩,ケイ酸塩,炭酸塩,炭酸水素塩,硝酸塩,硫酸塩,酢酸塩,ホウ酸塩,塩化物,水酸化物等が適用できる。アルカリ土類金属は、難溶性のものが多いが、例えば水酸化物を用いることができる。アルカリ土類金属としてはMg,Ca,Sr,Ba等を用いることができる。
【0042】
ここで、無機塩19は、層間膜15及び絶縁層12上に吸着されるが、本実施例では、電子源アレイの電子放出部となる絶縁層12の表面に吸着させる無機塩19は、層間膜15上に吸着される無機塩19のアルカリ密度よりも約20%以上少ないアルカリ密度で吸着させる。
【0043】
続いて、上部電極13の成膜をスパッタ法等で行う。上部電極13としては、ホットエレクトロンの透過率の高い例えば8族の白金族、1b族の貴金属が有効である。特にPd,Pt,Rh,Ir,Ru,Os,Au,Agやそれらの積層膜などが有効である。ここでは例えばIr,Pt,Auの積層膜を用い、膜厚比を1:2:3とし、膜厚は例えば約3nmとした(図12)。
【0044】
次に、画像表示装置を構成する陰極基板と陽極基板はスペーサと枠部材を介し、ガラスフリットを用いて約400℃〜450℃の高温プロセスにより焼成して封着される。この際、上述した無機塩19は酸化し、かつ上部電極13中に混合、上部電極材料と合金相を有する一部は合金化し、アルカリ金属やアルカリ土類金属がその酸化物20として上部電極13内に拡散された状態になる。例えば、炭酸Csで処理した場合は、炭酸が分解、酸化して酸化Csとなり、その一部はAuと反応してAuCsやAu5Cs等の金属間化合物を形成する。この際、炭酸塩の分解には白金族のIrやPtが触媒として作用し、分解を促進する効果がある。
【0045】
このようにすると、上部電極13の電極材料よりイオン化傾向の強いアルカリ金属やアルカリ土類金属、それらの酸化物20を絶縁層12との界面に拡散させることができる(図12)。この場合、電子放出部となる絶縁層12の表面に拡散させるアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度は、層間膜15上に吸着されるアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度よりも約20%少なくなって拡散されることになる。
【0046】
このような形成方法によれば、電子放出部となる絶縁層12の表面上でアルカリ密度は、上部電極13上に拡散されるアルカリ密度よりも約20%以上低く拡散され、それ以外の電子放出部を除く上部電極13では、絶縁膜12に対して約20%程度多いアルカリ密度で拡散されて形成されることになる。
【0047】
つまり、上部電極13内に拡散されたアルカリ金属酸化物20の全体分布量を100%としたとき、電子放出部のアルカリ密度が約20%以上低く、電子放出部を除く上部電極13のアルカリ密度が約20%以上高くなっており、電子源アレイの面内分布が±20%以内となる均一なアルカリ密度分布となる。
【0048】
このような構成によれば、電子放出部となる絶縁層12の表面に吸着するアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度を約20%以上低くすることによって、仕事関数の増大の影響が少なくなり、電子放射効率の低下も少なくなる。また、上部電極13の電子放出部を除く電子源アレイの面内にアルカリ密度が約20%以上高いアルカリ金属酸化物20を拡散させたことにより、アルカリ密度が高くなった分、パネル化工程での不要ガスの吸着効果をさらに拡大させることができる。
【0049】
なお、ここで、電子放出部となる絶縁層12上の上部電極13内のアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度を、陰極基板面内に対して約20%以上低くした場合について説明したが、このアルカリ密度が約20%以上高いと、電子放出部上のアルカリ金属が不要ガスを吸着し、仕事関数を上がり、電子の放出を妨げ、電子利用効率悪化させることなる。したがって、電子放出部のアルカリ密度は陰極基板面内に対して約20%以上低く抑えることが発明者等の実験の結果、明らかとなった。なお、このアルカリ密度の分布は、例えば蛍光X線分析装置を用いた測定方法により容易に判別することできる。
【実施例2】
【0050】
図13は、本発明による画像表示装置の他の実施例を説明する電子源アレイの電子放出部の要部拡大断面図であり、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図13において、電子源アレイの電子放出部となる絶縁層(トンネル絶縁層)12上に形成するアルカリ金属酸化物20を拡散した上部電極13を、膜厚の厚い厚膜電極13aと膜厚の薄い薄膜電極13bとで形成することによって絶縁層12上の面内における上部電極13の厚さのバラツキを±20%以内となるように形成したものである。これによって絶縁層12上の上部電極13内のアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度は約±20%以内となる。
【0051】
なお、絶縁層12上に形成する上部電極13のアルカリ金属酸化物20を拡散させた厚膜電極13a及び薄膜電極13bは、エアナイフによる液切り法またはスピン法等による加工法により容易に形成することができる。
【0052】
このような構成によれば、絶縁層12上のアルカリ金属酸化物20のアルカリ密度が電子源アレイの面内でほぼ均一(±20%)となるので、単位面積当りの不要ガス吸着量や仕事関数が均一となり、電子放射効率のバラツキが少なくなるので、明暗斑や輝度斑やザラツキ感等の無い艶々感のある画質が得られる。
【0053】
図14は、本発明による画像表示装置の他の実施例を説明する電子源アレイの電子放出部の要部拡大断面図であり、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図14において、絶縁層(トンネル絶縁層)12上のアルカリ金属酸化物20を拡散させた上部電極13を、厚肉部13cと薄肉部13dとで形成することによって絶縁層12上の上部電極13の面内におけるアルカリ酸化物20のアルカリ密度のバラツキを±20%以内となるように形成したものである。この場合も、アルカリ金属酸化物20のアルカリ密度は、蛍光X線分析装置を用いて容易に測定することができる。
【0054】
このような構成においても、不要ガスの吸着量や仕事関数を絶縁層12の面内でほぼ均一にすることができるので、単位面積当りのガス吸着量や仕事関数が均一となり、電子放射効率のバラツキが少なくなるので、明暗斑や輝度斑やザラツキ感等の無い良質な画像が得られる。
【実施例3】
【0055】
図15は、本発明による画像表示装置のさらに他の実施例を説明する画像表示パネルの要部拡大断面図であり、前述した図と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図15において、参照符号10は陰極基板(背面基板)、30はスペーサ、110は陽極基板(前面基板)、120はブラックマトリクス(遮光用のBM膜)、130はメタルバック(金属薄膜からなる加速電極)、140は表示領域、150は映像信号配線、160は走査信号配線、170は電子源、180,180Aは接続配線、190は接着部材、200は蛍光体層、210は絶縁膜(層間絶縁膜)である。
【0056】
このような構成において、実施例1及び実施例2と異なる点は、陰極基板10上の電子源170の電子放出部以外であるメタルバック130等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面にアルカリ金属酸化物20が付着されている。なお、このアルカリ金属酸化物20は、パネル構成部材の設置位置によってはその裏面側に付着させても良い。この場合、陰極基板10上の電子源170の電子放出部にはアルカリ金属酸化物20は付着されていない。
【0057】
また、実施例3では、パネル内面の露出するメタルバック130の表面にアルカリ金属酸化物20を付着させた場合について説明したが、この箇所以外にBM膜120,蛍光体層200または図示しないが枠体等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面にはアルカリ金属酸化物20を付着させても良い。
【0058】
なお、実施例3ではメタルバック130,BM膜120,蛍光体層200または図示しないが枠体等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面の何れか一方にアルカリ金属酸化物20を付着させても良い。
【0059】
また、実施例3では、パネル内面の露出するメタルバック130の表面にアルカリ金属酸化物20を付着させた場合について説明したが、この箇所以外にBM膜120,蛍光体層200または図示しないが枠体等のパネル内面に露出しているパネル構成部材の表面にはアルカリ金属酸化物20を付着させても良い。
【0060】
また、これらの構成部材へのアルカリ金属酸化物20の付着は、構成部材の単体、複合体または陽極基板110をアルカリ金属やアルカリ土類金属に無機塩や有機塩の水溶液に浸漬し、乾燥させることにより、その表面に吸着した状態で残るので、容易に付着させることができる。なお、このアルカリ金属酸化物20の付着は、スクリーン印刷法、スプレー塗布法またはインクジェット法等を用いて成膜し、乾燥させて形成しても良い。
【0061】
このような構成によれば、電子源アレイ上にアルカリ金属酸化物20を付着させるよりも多くのアルカリ金属酸化物20を付着させることができるので、電子源アレイ上のアルカリ金属のアルカリ密度を増やさず、表示パネル内にトータルのアルカリ金属密度が増加するので、パネル化工程で発生する不要ガスをより多く吸着することができる。また、電子源アレイにアルカリ金属酸化物20を付着させた場合の副作用が発生し難くなる。また、不要ガスの影響が少なく、プロセス裕度が大きくなる。さらには、これらのアルカリ金属酸化物20がパネル化工程や点灯時に電子源170の電子放出面に付着すると、仕事関数を低下させる役割も果たす。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1を説明するMIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置を例とした模式平面図である。
【図2】本発明に係わる薄膜型電子源の動作原理を示す図である。
【図3】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図である。
【図4】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図3に続く図である。
【図5】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図4に続く図である。
【図6】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図5に続く図である。
【図7】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図6に続く図である。
【図8】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図7に続く図である。
【図9】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図8に続く図である。
【図10】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図9に続く図である。
【図11】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図10に続く図である。
【図12】本発明に係わる薄膜型電子源の製造方法を示す図11に続く図である。
【図13】本発明の実施例2を説明するMIM型薄膜電子源を用いた画像表示装置の薄膜型電子源の要部拡大断面図である。
【図14】本発明による画像表示装置のMIM型薄膜電子源の他の構成を示す要部拡大断面図である。
【図15】本発明による画像表示装置の実施例3の構成を示す表示パネルの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10・・・陰極基板(背面基板)、11・・・下部電極、12・・・薄膜状絶縁層(トンネル絶縁層)、13・・・上部電極、13a・・・厚膜電極、13b・・・薄膜電極、13c・・・厚肉部、13d・・・薄肉部、14・・・保護絶縁層、15・・・層間膜、16・・・金属膜下層、17・・・金属膜中間層、18・・・金属膜上層、19・・・アルカリ金属無機塩、20・・・アルカリ金属酸化物、21・・・走査電極(上部バス電極配線)、23・・・白金族電極、25・・・レジスト膜、30・・・スペーサ、50・・・信号線駆動回路、60・・・走査線駆動回路、110・・・陽極基板(前面基板)、111・・・赤色蛍光体、112・・・緑色蛍光体、113・・・青色蛍光体、120・・・ブラックマトリクス(遮光用のBM膜)、130・・・メタルバック(金属薄膜からなる加速電極)、140・・・表示領域、150・・・映像信号配線、160・・・走査信号配線、170・・・電子源、180,180A・・・接続配線、190・・・接着部材、200・・・蛍光体層、210・・・絶縁膜(層間絶縁膜)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備えた画像表示装置であって、
前記電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、且つ前記電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度を他の部分の面内よりも低くしたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記電子放出部の前記アルカリ密度を他の部分の面内よりも20%以上低くしたことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備えた画像表示装置であって、
前記電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、且つ前記電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度のバラツキ分布を前記電子放出部の面内で±20%以内としたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
電子を放出する電子源アレイを有する陰極基板と蛍光面を有する陽極基板とを備えた画像表示装置であって、
前記陰極基板と前記陽極基板とに囲まれたパネル内において前記電子源アレイの電子放出部以外の領域にアルカリ金属が拡散されたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
前記アルカリ金属は、セシウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、リチウムまたはフランシウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記アルカリ金属は、アルカリ金属酸化物であることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記アルカリ金属は、アルカリ金属化合物であることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項1】
電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備えた画像表示装置であって、
前記電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、且つ前記電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度を他の部分の面内よりも低くしたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記電子放出部の前記アルカリ密度を他の部分の面内よりも20%以上低くしたことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
電子を放出する電子源アレイと蛍光面とを備えた画像表示装置であって、
前記電子源アレイの面内にアルカリ金属が拡散され、且つ前記電子源アレイの電子放出部のアルカリ金属のアルカリ密度のバラツキ分布を前記電子放出部の面内で±20%以内としたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
電子を放出する電子源アレイを有する陰極基板と蛍光面を有する陽極基板とを備えた画像表示装置であって、
前記陰極基板と前記陽極基板とに囲まれたパネル内において前記電子源アレイの電子放出部以外の領域にアルカリ金属が拡散されたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
前記アルカリ金属は、セシウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、リチウムまたはフランシウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記アルカリ金属は、アルカリ金属酸化物であることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記アルカリ金属は、アルカリ金属化合物であることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−59594(P2009−59594A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226082(P2007−226082)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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