説明

画像表示装置

【課題】 電子源基板とアノード基板とをスペーサを介して対向させてなる平面型の画像形成装置において、スペーサ近傍のビーム位置が、長時間の駆動により徐々に初期設計値からずれていく現象を防止する。
【解決方法】 スペーサ表面に次の3つの特徴をもつ炭素膜を被覆する。
(a)X線光電子分光法で炭素の結合状態分析をしたとき、284.5eV以下の領域の積分面積が炭素に起因する領域の積分面積27%以下
(b)X線光電子分光法で炭素の結合状態分析をしたとき、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が18%以下
(c)X線光電子分光法で炭素の結合状態分析をしたとき、287.0eV以上の領域の積分面積が9%以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子と発光部材とを用いてなる平面型の画像表示装置に関し、特に、電子放出素子を形成した電子源基板と、発光部材を備えた基板との距離を保持するための大気圧支持構造(スペーサ)の構成に特徴を有する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、CRTを始めとする画像表示装置は、より一層の大画面化が求められ、大画面化に伴う装置の薄型化・軽量化が重要な課題となっている。このような薄型化・軽量化が可能な画像表示装置として、本出願人は表面伝導型電子放出素子を用いた平面型の画像表示装置を提案している。このような電子放出素子を用いた画像表示装置は、電子放出素子を備えたリアプレートと、電子の照射によって発光する発光部材を備えたフェースプレートとを対向配置させ、周縁部に枠材を介して封止することにより、真空容器を形成してなる。このような画像表示装置においては、真空容器内部と外部との気圧差による基板の変形や破損を防止するため、スペーサと呼ばれる耐大気圧構造体を基板間に介在させている。スペーサは通常、矩形薄板状であり、表面が基板の法線方向に平行になるように、端部を両基板に接して配置される。
【0003】
スペーサは、リアプレート、フェースプレート同様、ガラス部材等の絶縁物で構成されるが、絶縁体であるスペーサの表面が帯電すると、電子放出素子から放出された電子ビームの軌道に影響を与える場合がある。この対策として、スペーサの表面に2次電子放出係数の小さい導電性の被膜を設けることが検討されており、特許文献1には、窒化炭素被膜を有するスペーサが提案されている。
【特許文献1】特開2000−90859号公報(USP6265822)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の窒化炭素被膜を有するスペーサを備えた表示装置を動作しつづけると、電子ビーム軌道が初期状態から変化し、その結果、発光輝点の位置が変化するという現象が生じることを我々は新たに発見した。
【0005】
本願発明は、この新たに発見した課題を解決しえる、新規なスペーサを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、
電子放出素子を有するリアプレートと、
前記電子放出素子から放出された電子の照射を受けて発光する画像形成部材を有するフェースプレートと、
前記リアプレートとフェースプレートとの間に位置するスペーサとを有する画像表示装置であって、
前記スペーサは表面に炭素膜を有し、該炭素膜は、X線光電子分光法によるスペクトルの、284.5eV以下の領域の積分面積が炭素に起因する領域の積分面積の27%以下、且つ、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が18%以下、且つ287.0eV以上の領域の積分面積が9%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスペーサを備える表示装置においては、表示装置を長時間動作させた後も、電子放出素子から放出された電子ビームの軌道を変化させることがないため、良好な表示を維持することが出来る。より具体的には、スペーサ表面に有する炭素膜中に占める化合物の成分として、π共役系の発達した炭素結合sp2の存在比率を制限したことにより、付与した炭素の絶縁性を確保した。さらには、C−O、C=Oの酸素−炭素結合を有した構造の含有比率の下限を規定した事により、長時間の駆動でスペーサが電子線照射を受けても、炭素膜がグラファイト化するのを抑制した。この結果、長時間駆動後においてもスペーサの抵抗が変化することがなく、よって電子ビーム軌道への影響を抑制できる。また、同様に、sp3成分の上限を規定したことにより、長時間の駆動でスペーサが電子線照射を受けても炭素膜がグラファイト化するのを抑制した。この結果、長時間駆動後においてもスペーサの抵抗が変化することがなく、よって電子ビーム軌道への影響を抑制できる。また、炭素の終端部付近にF、I,Cl、Brなどのハロゲン元素が存在する場合、これらハロゲン元素が脱離して他の部材をアタックし、悪影響を与える場合がある。このため、ハロゲン元素の量を、スペーサ表面上に存在する炭素に較べて5%以下とすると良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に、本発明の画像形成装置の一実施形態の表示パネルの構成を模式的に示す。図1は内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。図中、101は電子放出素子、102は行方向配線、103は列方向配線、106はリアプレート(電子源基板)、107は枠材、108はフェースプレート(アノード基板)、109は画像形成部材である蛍光膜、110はメタルバック(アノード電極)である。また111はスペーサ、112はスペーサの固定部材である。
【0009】
本発明においては、電子源基板であるリアプレート106とアノード基板であるフェースプレート108とが、周縁部において枠材107を介して封止され、気密容器を形成している。当該気密容器内は、10−4Pa程度の真空に保持されるため、大気圧や不意の衝撃などによる損傷を防止するために、耐大気圧構造体として矩形薄板状のスペーサ111を備えている。そして該スペーサ111は、画像表示領域外において端部を固定部材112により固定されている。
【0010】
リアプレート106には、表面伝導型の電子放出素子101がN×M個形成されており、M本の行方向配線102とN本の列方向配線103により単純マトリクス配置されている(M、Nは正の整数)。行方向配線102と列方向配線103との交差部は不図示の層間絶縁層にて絶縁されている。尚、本実施形態においては表面伝導型の電子放出素子を単純マトリクス配置した構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。電界放出型(FE型)やMIM型などの電子放出素子においても好ましく適用され、また、単純マトリクス配置に限定されるものではない。
【0011】
図1の構成において、フェースプレート108には、蛍光膜109と、アノード電極としてCRTの分野では公知のメタルバック110を設けられている。蛍光膜109は赤、緑、青、の3原色の蛍光体に塗り分けられ、各色の蛍光体の間には黒色導電体(ブラックストライプ)が設けてある。蛍光体(画像形成部材)の配列は電子源の配列に応じて、例えばストライプ、デルタ、マトリクス状配列などをとる。
【0012】
本発明で用いられるスペーサはカソード電極である行方向配線102に平行に配置され、行方向配線102及びアノード電極であるメタルバック110とに電気的に接続されている。
【0013】
また、本発明にかかるスペーサは、アノード電極と電子源とに当接しており、該当接面に別途導電性膜を付設してもよい。
【0014】
図1に示したスペーサは矩形薄板状であり、本発明において好ましく用いられるが、本発明においては当該形状に限定されるものではなく、同等の効果が得られる範囲で柱状等適宜選択することができる。
【0015】
以下に、本発明に用いられるスペーサ111の構成上の特徴と作用について説明する。
【0016】
上述のとおり、本発明者等の鋭意なる検討の結果、従前のスペーサ(表面に窒化炭素膜を有するスペーサ)を有する表示装置を駆動しつづけると、スペーサ近傍の電子ビームの軌道が時間ともに変化するという新たな現象を確認した。そして、駆動初期の時点におけるスペーサと、長時間の駆動を経験したスペーサとでは、スペーサ表面の抵抗分布状態に違いがあることが判明した。このような違いが生じる詳細なメカニズムは不明な点もあるが、以下に説明する。
【0017】
内部にスペーサを有する表示装置を用意し、この表示装置の特定の領域だけを駆動させ、電子ビームの軌道の変化が確認されたところで表示装置を分解し、駆動領域と、非駆動領域とのスペーサを取り出した。これは駆動初期のスペーサと、長時間駆動後のスペーサとを用意することを意味し、非駆動領域に位置するスペーサは駆動初期状態のスペーサに対応し、駆動領域に位置するスペーサは長時間駆動後のスペーサに対応する。そして各々のスペーサの表面組成をX線光電子分光法(XPS)で組成分析した。この結果、駆動領域のスペーサ表面では非駆動領域のスペーサ表面に比べて、graphiteの成分比率が高いことが判明した。特に、このスペーサのフェースプレート側の部分にgraphiteが多く存在することも確認された。これは、表示装置の駆動によって、スペーサ表面にフェースプレートからの反射電子等が照射されることにより、スペーサ表面のsp3結合がsp2結合に変性した結果であると考えられる。このようにスペーサ表面が部分的にgraphite化すると、この部分では導電性が高くなったため、スペーサ表面全体では抵抗分布が生じる。この結果、スペーサ表面の電位分布状態が初期状態と異なったため、電子ビームの軌道が変化したものと考えられる。
【0018】
そこで、このような現象を防止するため、我々が鋭意研究した結果、本発明に至った。つまり、スペーサは表面に炭素膜を有し、該炭素膜は、X線光電子分光法によるスペクトルの、284.5eV以下の領域の積分面積が全体(炭素に起因する領域の積分面積)の27%以下、且つ、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が全体の18%以下、且つ287.0eV以上の領域の積分面積が全体の9%以上である。
【0019】
次に本発明のスペーサ表面に設けられる炭素膜の分析法について説明する。
【0020】
炭素の分析法は多数存在するが、本発明のスペーサ表面に設けられる炭素膜の場合、XPS(X線光電子分光分析法)が最適である。これは、表面10nm程度までの情報が得られること、結合状態が分離できることにより、炭素の状態が推測できること、微小の存在量(膜厚換算で3nm以下程度)の炭素を変質させることなく測定可能であることなどによる。
【0021】
XPSのほかに、炭素の状態を分析する方法はいくつか挙げられる。例えば、ラマン分光法や、赤外分光法、GC−MSなどである。だが、ラマンや、赤外分光法では、ある程度多量の炭素が存在しないと正確な分析を行うことが難しい。また、GC−MSは微少量分析に優れ、補助的に用いるには有用であるが、加熱によって気化しにくい成分の分析に難がある。
【0022】
これらの理由により、筆者らはXPSを炭素の分析法として用いている。
【0023】
以下、XPS分析の概要について述べる。
【0024】
炭素に関する結合状態は多数存在し、化合物によっては結合状態が重畳し、分離が難しいものもあるが、以下に挙げる成分については比較的容易に分離、推測をすることが出来る。
【0025】
まず、結合エネルギー、284.5eV以下の領域である。この領域は、グラファイトのC−C結合と、炭化物のC−M結合、C−H結合に帰属される。この中で、C−H結合だけは導電性に寄与しない。この、C―H成分を、他の二つの導電性成分と、分離することは難しいが、本発明者らは、284.5eV以下の結合エネルギーをもつ成分が、ある一定以上の割合で存在すると、前述したスペーサの特性に悪影響を及ぼすことを見出した。これは、何らかの形で、グラファイトや炭化物の導電性成分がスペーサの特性に影響を与えていることを示唆していると考えられる。そのため、本発明では、まず最初に284.5eV以下の結合エネルギーをもつ成分の割合(上限)を定義し、炭素膜の絶縁性を確保している。
【0026】
一方、287.0eV以上の結合エネルギーをもつ領域には、主にC−O、C=Oなどの酸素と炭素が結びついた結合の領域である。この領域には、酸素のほかに、電子吸引性の強い元素が結合した場合に現れる。いずれにしろ、炭素の末端の官能基が存在することを示唆する結合領域である。この領域が多く現れるということは、炭素膜がそれほど高い秩序を持っておらず、結晶端、あるいは分子端など、末端領域を多くもっていることを示唆している。
【0027】
上述のような高い秩序性のない炭素は、加熱や、電子線、イオン照射などにより、グラファイト化しにくいと考えられている。
【0028】
また、286.0eVから、287.0eVの結合エネルギーの領域には、Sp成分が現れることが多い。sp3成分の多い炭素成分というものは、間接的にではあるが、ある程度秩序を持った微結晶性の炭素の存在を示唆している。この成分自体は、導電性には寄与しないが、以上に述べた結晶性の観点から考えると、スペーサ特性には、必ずしも好ましい成分ではない。
【0029】
なぜならば、結晶性を持った炭素成分は、導電性グラファイトへの変化が比較的容易に起こるからである。
【0030】
以上述べたとおり、本発明者は以上に挙げた、三つの領域の存在割合を定義することにより、本発明の炭素膜を定義することとした。
【0031】
通常、XPSで、上述したような結合成分の分離を行うには、得られたスペクトルを数学的な処理により波形分離して、それぞれの成分を規定するのが一般的である。しかし、この方法には多少の問題がある。まず、波形分離の際に与えるパラメータにより、波形分離結果に任意性が生まれるということである。例えば、ある結合エネルギーをもつ成分を何種類か仮定しても、その半値幅や、近似波形成分の割合(ローレンシアン/ガウシアンの割合)の設定によって、結果は任意に変わってしまう。
【0032】
これらの設定パラメータを本発明において定義してしまうことも可能であるが、本発明では、そのような方法を用いず、次に述べるような定義を行うこととする。
【0033】
すなわち、バックグランドを差し引いたあとの炭素のスペクトルについて、ピーク分離を行わず、上述の領域についての積分面積をもって、定義する。
【0034】
例えば、低抵抗炭素成分については、284.5eV以下の領域をすべて積分し、割合算出に用いることとする。グラファイトの理論的ピークについては、284.5eV付近に現れるので、この定義だと、グラファイトの存在量の約半分が算入されないし、グラファイト以外にもC−H成分などが算入されてしまう。しかし、このことに大きな不都合はない。グラファイトの含有量が増えるに従って284.5eV以下の領域割合が増えることが示唆されており、この領域の面積と、本発明で望ましいとされるスペーサの特性とは密接な相関がある。
【0035】
287.0eV以上の領域も同様である。ここはCとOが結びついた結合のピークが現れる領域であり、この領域の積分面積を算出するとC−O結合の存在量の一部は算入されない可能性があるし、逆に他の成分が一部算入されているが、それに関して特に不都合はない。いずれにせよ287.0eV以上の領域の炭素成分は、末端基の存在を示しており、本発明で望ましいとされるスペーサの特性と密接な関連があり、定義とし用いるのに好適である。
【0036】
同様のことが、286.0eV〜287.0eVの領域にも言える。必ずしも仮定した成分が全て反映されているわけではないが、実際に本発明で用いるスペーサの特性と大きな相関がある。
【0037】
ひとつ注意しなければならないのが、炭素の終端部付近に、F、I,Cl、Brなどのハロゲン元素が存在する場合である。この場合は、基本的には末端終末基の存在を示しており、スペーサ特性に悪影響を与えるものではない。しかし、ハロゲン元素が、画像表示装置内で脱離するようなことがあると、エッチング効果により、他の部材をアタックしたりして悪影響を及ぼすことが考えられる。そのため、ハロゲン元素はスペーサ表面上に存在しないことが望ましい。ハロゲン元素の量が、スペーサ表面上に存在する炭素に較べて5%以下ならば、電子放出素子をはじめとする画像表示装置の構成要素に影響を与えない。
【0038】
なお、バックグランドの算出方法によっても多少数値の増減があるので、ここで定義を行う。すなわち、バックグランド(BG)は、シャーリー法によって算出するものとする。バックグランドの定義範囲は次のようにする。低エネルギー側は、283eVから279eVの範囲で、最も検出カウントの低い地点とし、高エネルギー側は290eVから296eVの範囲で最も検出カウントの低い地点とする。この2点をシャーリー法で結んだものを本発明でのバックグランドと定義し、これを差し引いた残りの成分が炭素に帰属されるもの(スペクトルの炭素に起因する領域)と定義する。図8(a)、(b)に本発明の炭素膜を有するスペーサの表面組成をX線光電子分光法(XPS)で組成分析した結果を示す。図8(a)はバックグランド(BG)を差し引く前の分析結果、図8(b)はバックグランド(BG)を差し引いた結果である。本例では、284.5eV以下の領域の積分面積が25%、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が11.2%、287.0eV以上の領域の積分面積が10.9%である。
【0039】
尚、本発明においては非常に微小量の炭素を測定するので、試料の取り扱いについてもある程度の注意を払う必要がある。基本的には、試料の保管、運搬などについては、脱脂した石英ケースか、アルミホイルに包んで行うものとする。もし、これらが守られていれば、雰囲気については、極端に有機物で汚染されたりしていなければ通常の大気でかまわない。
【0040】
XPS測定の際は、試料を十分に真空引きし、高真空中で測定を行うので、通常大気中に存在する程度の試料汚染は、取り除かれることになる。また、その量も微量であり、測定結果に影響を及ぼさない。
【0041】
とはいうものの、大気暴露の時間は短いに越したことはなく、可能ならば、窒素雰囲気や、真空雰囲気中で保管、運搬をすることが望ましい。
【0042】
次に、表面に存在する炭素量の定量法であるが、これにもXPSを用いることとする。
【0043】
XPSは、表面から10nm以下の範囲が検出されることになる。XPSで測定したときに検出される元素比を、そのまま本発明での存在量の定義とする。ただし、XPSでは水素は検出されないので、水素を除いた他の元素の総計で存在量を規定する。
【0044】
また、存在量は、検出深さによって左右されるので、測定の際、検出器の試料に対する取り出し角度は、標準的に75度を用いて定義する(入射角15°)。測定に用いる、X線は、通常XPSで最もよく使われるmonochromated AlKα線を用いる。
【0045】
上述の方法に基づいた炭素の定量方法により、本発明の目的の一つであるビーム位置の移動現象の抑制に有効な炭素の範囲を決定できることがわかった。有効な範囲は以下の条件(1)(2)(3)を同時に満たす場合であった。
【0046】
(1)X線光電子分光法で炭素の結合状態分析をしたとき、284.5eV以下の領域の積分面積が全体(炭素に起因する領域の積分面積)の27%以下
以下に記す条件(2)、(3)を満たしているものの、上記(1)の領域の積分面積が全体の27%より大きくなると、画像形成装置における長時間駆動時の低階調側ビーム位置の変化が大きくなり、実用にそぐわないレベルになる。すなわち、1000時間以上の駆動した後の電子ビーム照射位置は、駆動初期の電子ビーム照射位置に対して、素子ピッチの1%以上変化しており、高品位な画像形成に影響を与えるレベルとなる。
【0047】
(2)X線光電子分光法で炭素の結合状態分析をしたとき、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が全体の18%以下
同様に、条件(1)、(3)を満たしているものの、条件(2)の領域の積分面積が全体の18%より大きくなると、上述の(1)と同様、画像形成装置における長時間駆動時の低階調側ビーム位置の変化が大きくなり、実用にそぐわないレベルになる。すなわち、1000時間以上の駆動した後の電子ビーム照射位置は、駆動初期の電子ビーム照射位置に対して、素子ピッチの1%以上変化しており、高品位な画像形成に影響を与えるレベルとなる。
【0048】
(3)X線光電子分光法で炭素の結合状態分析をしたとき、287.0eV以上の領域の積分面積が全体の9%以上
また、条件(1)、(2)を満たしているものの、条件(3)の領域の積分面積が全体の9%より小さくなると、画像形成装置における長時間駆動時の低階調側ビーム位置の変化が大きくなり、実用にそぐわないレベルになる。すなわち、1000時間以上の駆動した後の電子ビーム照射位置は、駆動初期の電子ビーム照射位置に対して、素子ピッチの1%以上変化しており、高品位な画像形成に影響を与えるレベルとなる。
【0049】
一方逆に、前述の(1)、(2)、(3)を全て満たす炭素化合物がスペーサ上に存在した場合、長時間駆動した場合での低階調側ビーム移動が素子ピッチの1%を超えず、高品位な画像形成を長時間継続することが可能であることを見出した。
【0050】
ここで、このビームずれ量が素子ピッチの1%というのは、人間の目で見て画像の乱れを識別できる検知限界から来ており、次のような官能試験から検知限界を求めた。
【0051】
まず、視力1.2以上の色覚異常のない者を10人被験者として抽出した。
【0052】
画面上、スペーサに垂直な方向(図1のY方向)の素子ピッチは700μmとした。
【0053】
視距離は、一般的な家庭における平均的なディスプレイの視距離として1.7mとした。
【0054】
このとき、正規のビーム位置からビーム位置をずらしたとき、被験者がそのことをどのように感じるかで次のような評点をつけてもらった。
1点 位置ずれが非常に邪魔になる。
2点 位置ずれが邪魔になる。
3点 位置ずれが気になるが邪魔にならない。
4点 位置ずれがわかるが気にならない
5点 位置ずれが全くわからない。
【0055】
そして10人の被験者の評点を平均した結果、次の図7のような関係があることがわかった。
【0056】
すなわち、官能検査において、スペーサに垂直な方向におけるビームの位置ずれが素子ピッチの1%を越えるとそこに画像の乱れを認める人が出始める。そして1%を境にして、ビーム位置ずれ量の増加に伴い、急激に画像の乱れを感じる人が増えることが確認できる。従って、ビームの位置ずれ許容量はスペーサに垂直な方向の素子ピッチに対し1%以下であることが好ましい。
【0057】
この条件を満たすのが、上述の(1)(2)(3)の条件を満たす炭素を表面に有するスペーサであり、以下の実施例に基づき、本願発明のスペーサを具体的に説明する。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
次に、図1、図2を用いて本発明を適用した画像表示装置の表示パネルの製造法について、具体的な例を示して説明する。
【0059】
(リアプレート工程)
<工程1:配線、電極の形成 図2参照>
洗浄した青板ガラス2006(リアプレート)の表面に、0.5[μm]のSiO2層をスパッタリングにより形成し、スパッタ成膜法とフォトリソグラフィー法を用いて表面伝導型電子放出素子の素子電極2001を形成する。材質はTiとNiを積層したものである。また、素子電極間隔は2[μm]とした(図2(a))。
【0060】
続いて、Agペーストを所定の形状に印刷し、焼成することにより列方向配線2002を形成した。列方向配線2002は電子源形成領域の外部まで延長され、電子源駆動用配線となる(図2(b))。
【0061】
次に、PbOを主成分とし、ガラスバインダを混合したペーストを用い、同じく印刷法により絶縁層2003を形成する。これは上記列方向配線2002と後述の行方向配線2004を絶縁するものである。尚、絶縁層2003の素子電極2001上の部分には切り欠き(不図示)を設けて、行方向配線2004と素子電極2001の接続をとるようにしてある(図2(c))。
【0062】
続いて、行方向配線2004を上記絶縁層2003上に形成する(図2(d))。方法は列方向配線2002の場合と同じである。
【0063】
<工程2:電子ビーム源作製>
続いて、PdOよりなる導電性膜1005を形成する。導電性膜1005の形成方法は、行・列方向配線2002・2004を形成した基板(リアプレート)2006上に、スパッタリング法によりCr膜を形成し、フォトリソグラフィー法により、導電性膜1005の形状に対応する開口部をCr膜に形成する。続いて、有機Pd錯体化合物の溶液を塗布して、大気中300[℃]の焼成を行って、PdO膜を形成した後、上記Cr膜をウェットエッチングにより除去して、リフトオフにより所定の形状の素子膜1005とする(図2(e))。
【0064】
次に図1に戻って説明する。ここで、リアプレート106には表面伝導型放出素子101がN×M個形成されている(N,Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。本実施例においては、N=2400,M=800とした)。尚、リアプレート106は上述図2のリアプレート2006に対応する。
【0065】
また、本実施例の画像表示装置は、そのサイズが大きいため、耐大気圧支持構造(スペーサと表記することもある)111が必要となる。スペーサ111は行方向配線102上に設置され、リアプレート106とフェースプレート108の間隔を規定する。本実施例ではスペーサ111の高さを2mmとした。スペーサ111の作成法については後述する。
【0066】
上記リアプレート106を、不図示の真空排気装置内に設置する。装置内の圧力が10−4[Pa]以下となったところで、フォーミング処理を行う。フォーミング工程は、各行方向配線に、波高値の漸増するパルス電圧を印加して行った。尚、フォーミング用のパルスの電流値を測定して、電子放出素子の抵抗値を同時に測定し、1素子あたりの抵抗値が1[MΩ]を越えたところで、その行のフォーミング処理を終了し、次の行の処理に移る。これを繰り返して、全ての行についてフォーミング処理を完了する。
【0067】
次に、活性化工程処理を行う。この処理に先立ち、上記真空装置を、圧力を10−5[Pa]以下まで下げる。続いて、アセトンを真空装置内に導入する。圧力は1.3×10−2[Pa]となるよう導入量を調整した。続いて、行方向配線にパルス電圧を印加する。1パルス毎にパルスを加える行方向配線を隣の行に切り替え、順次行方向の各配線にパルスを印加することを繰り返す。この処理の結果、各電子放出素子の電子放出部近傍に炭素を主成分とする堆積膜が形成され、素子電流Ifおよび放出電流Ieが大きくなる。このようにして画像表示装置の電子ビーム源101を作製した。
【0068】
(フェイスプレート工程)
<工程1;アノード電極作製>
洗浄を行ったガラス基板に、アノード電極110を作製した。アノード電極110はスパッタリングにより透明導電膜であるITOを成膜した。
【0069】
<工程2;蛍光体膜作製>
この工程は図3を用いて説明する。ガラスペーストおよび黒色顔料および銀粒子を含有したペーストを用い、図3(a)のようなマトリクス状のブラックマトリクス2101を、スクリーン印刷法により厚さ10μmで作製した。またここで、ブラックマトリクス2101は、蛍光体の混色防止や、電子ビームが多少ずれても色ずれを起さない様にするためや、外光を吸収し画像のコントラストを向上する、等の理由で設けられる。本実施例ではスクリーン印刷法によりブラックマトリックス2101を作製したが、もちろんこれに限定されるものではなく、たとえばフォトリソグラフィー法をもちいて作製してもよい。また、ブラックマトリクス2101の材料として、ガラスペーストと黒色顔料および銀粒子を含んだペーストを用いたが、もちろんこれに限定されるものではなく、たとえばカーボンブラックなどを用いてもよい。またブラックマトリクス2101は、本実施例では図3(a)のように、マトリクス状に作製したが、もちろんこれに限定される訳ではなく、図3(b)のようなデルタ状配列やストライプ状配列(不図示)やそれ以外の配列であっても良い。
【0070】
次に、図3(a)に示すように、ブラックマトリクス2101の開口部に、赤色・青色・緑色の蛍光体ペーストを用いてスクリーン印刷法により、3色の蛍光体(画像形成部材)2102を1色づつ3回に分けて作製した。本実施例ではスクリーン印刷法を用いて蛍光体膜2102を作製したが、もちろんこれに限定される訳ではなく、たとえばフォトリソグラフィー法などにより作製しても良い。また蛍光体はCRTの分野で用いられているP22の蛍光体とし、赤色(P22−RE3;Y2O2S:Eu3+)、青色(P22−B2;ZnS:Ag,Al)、緑色(P22−GN4;ZnS:Cu,Al)のものを用いた。しかし、もちろんこれに限定されるわけではなく、その他の蛍光体を用いても良い。
【0071】
(スペーサ作成工程及び分析)
スペーサ基材としては、日本板硝子製のディスプレイ用低アルカリガラス、PD200を用いた。この材料を用い、加熱延伸法を使って、図4のようなスペーサ基材(1201、2201)を作成した。図4(a)はスペーサ平面図、図4(b)はスペーサの部分断面図である。本例では、図4(a)に示すように、長さ900mm、高さ2mm、厚さ0.2mm(図1中の方向のサイズ)のスペーサ基材を作成した。
【0072】
本実施例ではスペーサ表面に、スペーサ長手方向に沿ったストライプ状の凹凸を設けており、その形状は、図4(b)に示すような、略正弦波状で、ピッチが40μm、深さが7μmである。またスペーサ上部(フェースプレートと接合される側)には、凹凸溝を設けない領域を作り、その幅はスペーサ上端部から200μmとした。
【0073】
次に、スペーサ基材上に、帯電防止膜を設ける。材質は、タングステンとゲルマニウムとの窒化膜とし、窒素、アルゴン混合ガスをスパッタガスとすることにより、スパッタ法により前述の基材上に膜を設けた。抵抗調整は、タングステンとゲルマニウムの含有比を変化させることによって行った。
【0074】
帯電防止膜は2層構成になっており、第一層は、膜厚200nm、シート抵抗2E12Ω/□、第二層は膜厚900nm、シート抵抗2.5E13Ω/□に設定した。
【0075】
次に、本発明の特徴部である第三層の炭素膜の形成を行った。炭素膜は上述の第二層の上に形成した。形成は次のように行った。図5を用いて説明する。まず、真空気密容器2301中に、一定範囲のスキャンのできる電子銃2304を備え、指定範囲に均一に電子線を照射することができるようになっている。電子銃2304は、タクトタイム短縮のため、複数設けてもかまわない。
【0076】
また、炭素源は、別のアンプル管に格納され、リークバルブを開くことにより、真空系に微量に導入されるようになっている。
【0077】
その中にスペーサ2302配置し、くまなく電子が照射されるようにした。その結果、スペーサ2302に電子が照射されるときには、スペーサ表面の帯電と、雰囲気中に極微量に存在する炭素成分により、スペーサ表面に、炭素膜が堆積することになる。
【0078】
スペーサ2302表面に堆積した炭素膜は、再度の電子照射により、一部は脱離していくが、脱離しないものや、電子線重合して、固定化されるものがあり、スペーサ2302表面には、少しずつ、炭素膜が堆積していくことになる。従って、固定化される炭素は、必ずしも炭素源と同じ物ではなく、それらが電子線照射により構造を変化させられたり、重合したものが堆積していく。
【0079】
本実施例においては、炭素源には、グリセリンを用いた。実際の電子照射に関しては、電子の加速電圧を1kVから徐々に上げていき、最終的には6kVまで上げて、20時間キープした。電子放出量は、20μAで、ビーム径は、150μmとした。電子照射プロファイル(加速電圧と時間の関係)を図6に示す。これを、スペーサ2302表裏両面に行い、炭素膜を堆積させた。
【0080】
本実施例では、このような方法で、炭素膜の堆積を行ったが、炭素源を変えたり、ビーム照射条件を変えることにより、タクトタイムを短縮することが可能であり、必ずしも本実施例に制限されるものではない。
以上がスペーサの製造方法である。
【0081】
(一体化(封着)工程)
<封着工程>
図1を用いて説明する。気密容器を組み立てるにあたっては、各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため封着する必要がある。本実施例においては、最初にフリットガラスを接合部に塗布し、窒素雰囲気中で、摂氏400〜500度で10分以上焼成することにより図1の107に示す枠と、リアプレート基板の接着を行った。
【0082】
その後に、前述の工程で作成したスペーサをリアプレートに固定した。固定の方法はスペーサ111の長手方向両端部のリアプレート106側に、スペーサ固定部材112を使用しスペーサ111をリアプレート106に固定した。この両端固定部は、画像領域外に位置し、画像の品位に影響を及ぼさない。また、本実施例ではリアプレート106側にスペーサ111を固定したが、もちろんこれに限定されるわけではない。たとえばフェースプレート108側に固定したり、自立するようなスペーサを固定せずに配置するだけでもよい。
【0083】
その後に、その枠の上に、低融点金属であるInを用いて、不活性雰囲気中で接合部だけを局所的に加熱し、FP(フェースプレート)と枠との接着を行い、気密容器の封着を完成した。
【0084】
また、気密容器内部を真空に排気するには、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポンプとを接続し、気密容器内を10のマイナス5乗[Pa]程度の真空度まで排気する。その後、排気管を封止するが、気密容器内の真空度を維持するために、封止の直前あるいは封止後に気密容器内の所定の位置にゲッター膜(不図示)を形成する。ゲッター膜とは、たとえばBaを主成分とするゲッター材料をヒーターもしくは高周波加熱により加熱し蒸着して形成した膜である。このゲッター膜の吸着作用により気密容器内は1×10マイナス3乗ないしは1×10マイナス5乗[Pa]の真空度に維持される。
このようにして本発明の画像形成装置を作成した。
【0085】
この画像形成装置に、電子加速電圧10kVを印加して、画像を表示して連続駆動を行った。本実施例の画像形成装置においては、1000時間駆動後においても、スペーサの長手方向に対して垂直な方向における、電子ビームのずれ量が素子ピッチの1%以下であり、高品位な画像が得られた。
【0086】
また、その後、画像形成装置の気密容器(パネル)を分解し、スペーサの表面に存在するカーボンのXPSによる分析を行った。分析条件は以下のとおりである。
【0087】
まず、通常のクリーンルーム室内で、パネルを分解し、スペーサを取り出した後、手早くアルミホイルに包んで、脱脂した石英ケースに収納した。
【0088】
さらに、時間をおかず、XPS分析の試料台にセットし、測定装置の予備排気室に収納した。
【0089】
測定器としてはアルバックファイ社のカンテラを用いた。測定条件は、以下のとおりである。
スポットサイズ 100μm
検出器take off angle 75°
Pass energy 140eV
step size 0.125eV
積算回数30回
その結果、スペーサ表面に存在する炭素に起因するスペクトルのうち、284.5eV以下の結合エネルギーの領域の積分面積が全体の10.2%、287.0eV以上の結合エネルギーの領域の積分面積が、全体の25.6%、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が全体の13.8%であった。
【0090】
また、この条件で測定したときの炭素の全元素中の割合は、22%であった。(ただし水素は測定できないので算入されていない)また、ハロゲン元素は検出されなかった。
【0091】
(実施例2)
実施例2においては、パネル(気密容器)を組み立ててから、炭素膜を堆積させる方法でスペーサを作成した。まず実施例1と同様に、タングステンとゲルマニウムとの窒化膜を2層設けたスペーサを用意し、リアプレート、フェースプレート、枠とともにパネルを形成した。
【0092】
このパネルの、アノード電極に電子加速電圧Vaを印加し、また走査配線(行方向配線)と信号配線(列方向配線)に電圧を印加することにより、電子放出を行い、画像を表示した。
【0093】
1素子あたり5μA平均で電子放出するように設定された。その際のVf(走査配線と信号配線間に印加される電圧)はおよそ18Vとした。
また各ラインを、全て同じ波形(10μsec.)で駆動した。
その際、画像形成装置を、恒温室内に安置し、室内温度を50℃に設定した。
【0094】
尚、アノード電極への印加電圧Vaは、2kVから徐々に上げていった。その際、1kV上げるごとに、15分間キープし、最終的に10kVまで上げて、5時間この状態を続けた。
その後、Va,Vfをオフにして、画像形成装置を完成した。
この画像形成装置を、実施例1と同様に、画像の評価を行った。
【0095】
本実施例の画像形成装置においても、1000時間駆動後においても、スペーサの長手方向に対して垂直な方向における、電子ビームのずれ量が素子ピッチの1%以下であり、高品位な画像が得られた。
【0096】
また、評価が終わった後の画像形成装置を分解し、スペーサの表面分析を、実施例1と同様に行った。その結果、スペーサ表面に存在する炭素に起因するスペクトルのうち、284.5eV以下の結合エネルギー領域の積分面積が全体の10.8%、287.0eV以上の結合エネルギーの領域の積分面積が全体の26.3%、286.0eV〜287.0eVの結合エネルギーの領域の積分面積が全体の14.1%であった。
また、この条件で測定したときの炭素の全元素中の割合は、26.5%であった。
また、ハロゲン元素は検出されなかった。
【0097】
(実施例3)
実施例3においては実施例2と同様に、スペーサに事前に特殊な処理をすることなく、画像形成装置を組み立てた。
その後、実施例2と同様にVa、Vfを印加し、駆動を行った。
【0098】
その際、実施例2と同様に、恒温室で駆動を行った。その際、外気の温度は50℃に設定された。ただし、画像表示装置には、上からIRランプを照射し、内部のスペーサが効果的に温度が上がるように設定された。
【0099】
実施例2と同じく、印加するVaは、2kVから徐々に上げていった。その際、1kV上げるごとに、15分間キープし、最終的に10kVまで上げて、5時間この状態を続けた。
【0100】
その後、Va,Vfをオフにして、画像形成装置を完成した。
この画像形成装置を、実施例2と同様に駆動して、画像の評価を行った。
その結果、1000時間駆動後においても、スペーサの長手方向に対して垂直な方向における、電子ビームのずれ量が素子ピッチの1%以下であり、高品位な画像が得られた。
【0101】
また、評価が終わった後の画像形成装置を分解し、スペーサの表面分析を、実施例1と同様に行った。その結果、スペーサ表面に存在する炭素に起因するスペクトルのうち、284.5eV以下の結合エネルギー領域の積分面積が全体の8.6%、287.0eV以上の結合エネルギーの領域の積分面積が全体の27.8%、286.0eV〜287.0eVの結合エネルギーの領域の積分面積が全体の13.1%であった。
【0102】
また、この条件で測定したときの炭素の全元素中の割合は、25.6%であった。
また、ハロゲン元素は検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の表示パネルの構成を模式的に示す斜視図。
【図2】本発明の画像形成装置に用いられる、リアプレート基板の作成工程を示す図。
【図3】本発明の画像形成装置に用いられるフェースプレートの構造を示す図。
【図4】本発明の実施例に用いられるスペーサの形状をあらわす図。
【図5】本発明の実施例1で用いた、電子線照射装置を模式的に示した図。
【図6】本発明の実施例1で使用した、画像形成装置の電子ビーム照射時の印加Vaの上昇の方法を示したグラフ。
【図7】スペーサ近傍でのビームずれと画像の乱れの関係を示す官能試験結果を示す図。
【図8】本発明のスペーサをXPSで組成分析した結果を示す図。
【符号の説明】
【0104】
101 電子放出素子
102 行方向配線
103 列方向配線
106 リアプレート
107 枠材
108 フェースプレート
109 蛍光膜
110 アノード電極(メタルバック)
111 スペーサ
1005 導電性膜
2001 素子電極
2002 列方向配線
2003 絶縁層
2004 行方向配線
2006 リアプレート
2101 ブラックマトリクス
2102 蛍光体
2201 スペーサ
2301 真空気密容器
2302 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出素子を有するリアプレートと、
前記電子放出素子から放出された電子の照射を受けて発光する画像形成部材を有するフェースプレートと、
前記リアプレートとフェースプレートとの間に位置するスペーサとを有する画像表示装置であって、
前記スペーサは表面に炭素膜を有し、該炭素膜は、X線光電子分光法によるスペクトルの、284.5eV以下の領域の積分面積が炭素に起因する領域の積分面積の27%以下、且つ、286.0eV〜287.0eVの領域の積分面積が18%以下、且つ287.0eV以上の領域の積分面積が9%以上であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記炭素膜はハロゲン元素(I、Cl、F、Br)を有し、該ハロゲン元素の存在量が5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−9929(P2009−9929A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113900(P2008−113900)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】