説明

画像表示装置

【課題】 電子放出素子から放出された電子がフェースプレートを照射する位置が、スペーサの長手方向に沿ってずれることを抑制することを目的とする。
【解決手段】 複数の電子放出素子を有するリアプレートと、アノード電極を有するフェースプレートと、板状のスペーサであって、該スペーサの長手方向に沿って形成される導電性部材を有するスペーサと、前記複数の電子放出素子のうち第1の電子放出素子から放出された電子によって照射される前記フェースプレート上の位置から前記スペーサまでの距離と、該第1の電子放出素子に対して該スペーサの長手方向に配置される第2の電子放出素子から放出された電子によって照射される前記フェースプレート上の位置から該スペーサまでの距離との差を補償するように、前記導電性部材に該スペーサの長手方向に沿って電位勾配を形成する電位供給手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関する。特に、電子放出素子とスペーサとを有する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型画像表示装置として、電子放出素子を用いた電界放出ディスプレイ(FED)が知られている。この電界放出ディスプレイにおいては、電子放出素子を有するリアプレートと蛍光体を有するフェースプレートとの間にスペーサを設ける構成が知られている。
【0003】
電界放出ディスプレイにおいてスペーサが帯電することにより、電子放出素子から放出された電子の軌道が偏向されることが知られている(特許文献1参照)。スペーサの近傍と非近傍とで電子の軌道が偏向される度合いが異なることによりスペーサが視認されることは、画像表示装置としては好ましいものではない。
【0004】
また、スペーサの側壁に電極を形成し、その電極に電位を供給する構成が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−029697号公報
【特許文献2】特許第3340440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、板状のスペーサを用いた場合、スペーサの長手方向に沿って、電子軌道の偏向方向や大きさに分布が生じることを見出した。
【0006】
本発明は、電子放出素子から放出された電子がフェースプレートを照射する位置が、スペーサの長手方向に沿ってずれることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示装置は、複数の電子放出素子を有するリアプレートと、前記複数の電子放出素子から放出された電子を加速するアノード電極を有するフェースプレートと、前記リアプレートと前記フェースプレートとの間に配置される板状のスペーサであって、該スペーサの長手方向に沿って形成される導電性部材を有するスペーサと、前記複数の電子放出素子のうち第1の電子放出素子から放出された電子によって照射される前記フェースプレート上の位置から前記スペーサまでの距離と、該第1の電子放出素子に対して該スペーサの長手方向に配置される第2の電子放出素子から放出された電子によって照射される前記フェースプレート上の位置から該スペーサまでの距離との差を補償するように、前記導電性部材に該スペーサの長手方向に沿って電位勾配を形成する電位供給手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子放出素子から放出された電子がフェースプレートを照射する位置が、スペーサの長手方向に沿ってずれることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態の画像表示装置は、電子の照射によって画像を表示する装置である。電子放出素子としては、電界放出型素子、MIM型素子、表面伝導型放出素子などを包含している。
【0011】
本発明の実施の形態について、表面伝導型放出素子を用いた画像表示装置を例に挙げ、具体的に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の画像表示装置の構造の一例を示す斜視図であり、その内部構造を示すために一部を切り欠いて示している。
【0013】
まず、本実施形態の画像表示装置に用いるリアプレートについて説明する。リアプレート8上には、走査配線12、変調配線13、走査配線と変調配線との間を絶縁する層間絶縁層(不図示)及び複数の電子放出素子5を形成した電子源基板14が固定されている。電子源基板14はリアプレート8と兼ねても良い。
【0014】
電子放出素子5は、一対の素子電極間に電子放出部を有する導電性膜が接続された表面伝導型放出素子である。電子放出素子5をN×M個配置し、それぞれ等間隔で形成したM本の走査配線12とN本の変調配線13とでマトリクス状に接続されている。また、走査配線12が層間絶縁層を介して変調配線13上に位置している。走査配線12には引出端子Dx1〜Dxmを介して走査信号が印加され、変調配線13には引出端子Dy1〜Dynを介して変調信号が印加される。
【0015】
次に、本実施形態の画像表示装置に用いるフェースプレートについて説明する。
【0016】
フェースプレート1の基板としては、光透過性の基板が用いられ、ガラス基板が好適に用いられる。フェースプレート1の内面には、電子の照射により発光する蛍光体2が形成されている。本実施形態では、赤、青、緑の3色の蛍光体が形成されている。蛍光体の間には、ストライプ状もしくはマトリクス状の黒色部材(不図示)が配置されている。
【0017】
蛍光体のリアプレート側表面には、CRTの分野で公知であるメタルバック4が形成されている。メタルバック4には、高圧端子Hvを通して電子放出素子からの電子を加速する加速電圧が印加される。すなわち、メタルバック4は電子放出素子からの電子を加速するアノード電極としての機能を有している。
【0018】
次に、スペーサ7について説明する。電子放出素子を利用した画像表示装置では、画像表示パネル内を真空にする必要がある。そのため、フェースプレート1並びにリアプレート8には大気圧がかかることになる。従って、フェースプレート1とリアプレート8の間にはスペーサ7が必要となる。また、スペーサ7は高電圧のかかるフェースプレート1とリアプレート8の間に配置されるため、絶縁耐圧が必要となる。
【0019】
更に、スペーサ7は、スペーサ近傍と非近傍とで電位分布の差をできるだけ小さくするものであることが好ましい。スペーサ近傍と非近傍とで電位分布の差が大きくなると、スペーサ近傍と非近傍とで電子の軌道が異なり、画質が劣化するためである。特に、電子が照射されることによりスペーサが帯電すると、電位分布が変化してしまう。そこで、スペーサ7の帯電を緩和するため、スペーサ7に抵抗性を持たせることが好ましい。スペーサに抵抗性を持たせるためには、スペーサ基材そのものに導電性を付与する方法や、ガラスでできたスペーサ基材表面に高抵抗な膜を形成する方法がある。
【0020】
スペーサ基材そのものに導電性を付与する場合、遷移金属酸化物(例えば、酸化鉄、チタニア、クロミア、酸化バナジウム、または酸化ニッケル)を電気絶縁性のセラミック(アルミナ等)と結合することによって形成される電気抵抗性セラミック組成物を用いる方法が挙げられる。遷移金属酸化物をアルミナと結合することによって、10〜1015Ωcmという所望の範囲の電気抵抗率を有するセラミックを得ることができる。
【0021】
スペーサ基材表面に高抵抗膜を形成する場合、高抵抗膜に必要とされる機能は、上述したように帯電を緩和する為に微小電流が流れることである。抵抗値が低すぎると、電流が流れすぎるため消費電力が増加し、当該部分の温度が上昇するため好ましくない。また、抵抗値が高すぎると、帯電を緩和する為に微小電流が流れるという効果が得られない。そのため、高抵抗膜の抵抗値としては、シート抵抗値で10〜1016Ω/□であることが好ましい。
【0022】
このような高抵抗膜の材料として、例えば、金属酸化物を用いることが出来る。金属酸化物の中でも、クロム、ニッケル、銅の酸化物が好ましい材料である。これらの酸化物は二次電子放出効率が比較的小さく、帯電しにくいためである。金属酸化物以外にも、炭素は二次電子放出効率が小さく好ましい材料である。
【0023】
高抵抗膜の他の材料としては、ゲルマニウムと遷移金属との合金の窒化物は遷移金属の組成を調整することにより、良伝導体から絶縁体まで広い範囲に抵抗値を制御できるので好適な材料である。遷移金属元素としてはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zr,Nb、Mo,Hf,W等があげられる。
【0024】
この窒化物はスパッタ、窒素ガス雰囲気中での反応性スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着法等の薄膜形成手段によりスペーサ基板上に形成される。金属酸化膜も同様の薄膜形成法で作製することができるが、この場合窒素ガスに代えて酸素ガスを使用する。その他、CVD法、アルコキシド塗布法でも金属酸化膜を形成できる。カーボン膜を用いる際には蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法で作製され、特に非晶質カーボンを作製する場合には、成膜中の雰囲気に水素が含まれるようにするか、成膜ガスに炭化水素ガスを使用する。
【0025】
本実施形態のスペーサ7は、走査配線12に沿って形成されているが、変調配線13に沿って形成される場合であっても本発明を適用することができる。
【0026】
15は支持枠であり、この支持枠15にリアプレート8、フェースプレート1がフリットガラス等を介して取り付けられている。
【0027】
図1のスペーサ近傍におけるX方向の断面図を図2に示す。図1と同様の部材については同一の符号を用いているため、これらについての説明は省略する。
【0028】
本実施形態においては、走査配線12が形成される方向であるX方向がスペーサ7の長手方向となるように、スペーサ7が形成されている。本実施形態に用いるスペーサ7の長手方向は、画像表示装置のX方向における画像表示領域よりも長い。更に、スペーサ7は、その長手方向が画像表示領域を跨って配置されている。これは、スペーサ7の典型的なサイズが、Z方向の高さが数mm程度、X方向が数mm〜数千mmであるのに対し、Y方向の厚さが数十μm〜数百μmというようにアスペクト比の大きい形状となっているため、スペーサを固定する固定部材9が必要となることに起因する。固定部材9が画像表示領域内に存在すると、電子の軌道に影響を与えることとなるため、固定部材9は画像表示領域外に設けることが好ましい。そのため、スペーサ7の長手方向が画像表示領域を跨って配置されることとなる。ここで、画像表示領域とは、画像表示装置の画像が表示される領域を意味する。
【0029】
次に、スペーサの長手方向に沿って形成される導電性部材22について説明する。導電性部材22は、スペーサ7の電位分布を規定するために設けられるものである。電位を規定する為には、抵抗性を有するスペーサの抵抗値よりも導電性部材22の抵抗値が低いことが必要であり、典型的には金属膜や金属酸化物膜で形成される。特に抵抗値の調整が必要でない場合には、Pt、Au、Al、W、Cuなどの金属材料を使用することができる。また、抵抗値の調整が必要な場合には、ゲルマニウムと遷移金属との合金の窒化物などや、金属酸化物を用いることができる。導電性部材22を形成する方法としては、スパッタ、窒素ガス雰囲気中での反応性スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着法等の薄膜形成手段や、アルコキシド塗布法などでも形成できる。またパターニングが必要な為、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、スクリーン印刷法、インクジェット法などで形成することができる。
【0030】
本実施形態では、導電性部材22がリアプレートと対向するスペーサの面に形成されるため、導電性部材22と配線とを絶縁するための絶縁層20が形成されている。図2においては、変調配線13の上に形成される走査配線12を図示していないが、絶縁層20はこの走査配線12と導電性部材22との間にも形成されている。絶縁層20は、例えば、ガラスフリットやアルミナなどのセラミックス、SiOなどの絶縁膜が用いられ、フォトリソグラフィー法、印刷法などで形成される。
【0031】
導電性部材22の両端には、図3(a)に示すように、電位供給手段23、24が接続されている。本実施形態では、電位供給手段23は電位供給手段24よりも高い電位を供給する。そのため、導電性部材22には図3(b)に示すような電位勾配が形成される。すなわち、本実施形態によれば、スペーサ7の長手方向に沿って電位勾配を形成することが可能となる。このようにスペーサ7の長手方向に沿って電位勾配を形成することの作用について、図4、図5を用いて説明する。
【0032】
図4、図5はスペーサ近傍の電位分布を示す図である。図中の破線は、等電位線を示すものである。
【0033】
図4は、導電性部材22の電位が電子放出素子5と近い場合の等電位線を示す図である。この場合、等電位線が全体的にZ方向に持ち上がることとなり、電子は図4に示すように、スペーサから遠ざかる軌道をとる。一方、導電性部材22により高い電位が印加されると、電位の与え方によっては図5に示すように電子放出素子5のほぼ直上に電子が照射されることとなる。
【0034】
このように、導電性部材22の電位に応じて、フェースプレート上に電子が照射される位置を調整することができる。
【0035】
次に、本実施形態において、電子放出素子から放出された電子がフェースプレートを照射する位置が、スペーサの長手方向に沿ってずれることを抑制するための具体的な方法について、図6を用いて説明する。
【0036】
図6は、画像表示領域内における電子の照射位置を示す図である。図中11は画像表示領域を示している。また、図中7はスペーサを示している。図中(a)、(b)、(c)は、画像表示領域の左側、中央、右側における電子の照射位置を拡大したものである。また、破線30は、スペーサがない場合に電子が照射されるべき位置(以下、便宜上、正規の電子照射位置と呼ぶ。)を示しており、32は実際の電子の照射位置を示している。(a)では、正規の電子照射位置30に対し、実際の電子の照射位置32はスペーサ7に近づく方向にずれている。一方、(c)では、正規の電子照射位置30に対し、実際の電子の照射位置32はスペーサ7から遠ざかる方向にずれている。(b)は(a)と(c)の中間的な状態であり、正規の電子照射位置30と実際の電子の照射位置32とが近い位置となっている。実際の電子の照射位置32がスペーサ7の長手方向に沿って分布を持つことの明確な原因は不明である。しかし、本発明者らは、実際の電子の照射位置32がスペーサ7の長手方向に沿って分布を持つ場合があることを見出した。
【0037】
本実施形態においては、図4、図5を用いて説明したように、導電性部材22に印加される電位が高くなるにつれて、電子放出素子から放出された電子の軌道がスペーサ7に近づく。そのため、図7に示すように、X方向に単調に増加する電位勾配が導電性部材22に印加されるように電位供給手段23、24から導電性部材22に電位を印加することにより、電子の照射位置のずれを抑制することができる。ここで、図6の(a)の位置にある電子放出素子(これを「第1の電子放出素子」とする。)から放出された電子によって照射されるフェースプレート上の位置からスペーサ7までの距離をL1とする。また、第1の電子放出素子に対してスペーサ7の長手方向(X方向)に位置する(c)の位置にある電子放出素子(これを「第2の電子放出素子」とする。)から放出された電子によって照射されるフェースプレート上の位置からスペーサ7までの距離をL2とする。本発明は、L1とL2との差を補償することによってL1とL2の差が小さくなるような電位勾配を導電性部材22に与えるように、電位供給手段23、24が導電性部材22に電位を供給するものである。従って、本発明を適用することができる電位勾配の大きさは、ある程度の幅を有するものである。
【0038】
また、本実施形態においては、リアプレート8と対向するスペーサ7の面に導電性部材22が形成されるため、かかる導電性部材22に印加する電位を低い電位とすることができる。
【0039】
<第2の実施形態>
本発明の別の実施形態について以下に説明する。
【0040】
第1の実施形態では、走査配線12が層間絶縁層を介して変調配線13上に位置していたのに対し、本実施形態では、変調配線13が層間絶縁層を介して走査配線12上に位置している点が異なる。また、スペーサ7に形成される導電性部材22の構成が第1の実施形態とは異なる。
【0041】
本実施形態における導電性部材22の構成を図8に示す。第1の実施形態は、導電性部材22がリアプレートと対向するスペーサの面に形成されるものであった。本実施形態の導電性部材22は、第1の実施形態よりもZ方向に位置し、スペーサ7の側面に形成されている。そのため、本実施形態では、導電性部材22と配線とを絶縁するための絶縁層20が不要となる。これは、スペーサ7の抵抗がある程度高い抵抗値であるため、導電性部材22と配線との間の絶縁を確保することができるからである。そのため、変調配線13の上にスペーサ7が直接配置される構成となる。
【0042】
導電性部材22の両端には、図9(a)に示すように、電位供給手段23、24が接続されている。本実施形態では、電位供給手段23は電位供給手段24よりも高い電位を供給する。そのため、導電性部材22には図9(b)に示すような電位勾配が形成される。第1の実施形態と異なり、本実施形態では周期的に配置される変調配線13がスペーサ7に接しているため、変調配線13の電位の影響を受けて、図9(b)に示すように、周期的に電位が変動している。しかし、周期的な電位変動の中心を示す図9(b)の破線は、スペーサ7の長手方向に沿って電位勾配を形成している。本発明はかかる構成にも適用することができる。
【0043】
本実施形態の場合、導電性部材22はスペーサ7のリアプレート側端面よりも、メタルバック4に近い位置に形成される。そのため、導電性部材22に印加すべき電位は第1の実施形態に比べて高い電位となる。すなわち、導電性部材22が形成されるZ方向の位置が大きくなるにつれて、導電性部材22に印加すべき電位の値は大きくなる。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
本実施例では、導電性部材を有するスペーサの製造方法と、電子照射位置の調整方法の一例を詳細に説明する。
【0045】
(工程1:スペーサ基材)
スペーサの基材としては、機械的強度、電気的絶縁性に優れたガラスを用い、加熱延伸法を用いて、母材となるガラスを引き伸ばして、長い板状のスペーサ基材を得た。
【0046】
(工程2:高抵抗膜形成)
工程1で作製したスペーサ基材の表面に、高抵抗膜としてゲルマニウムとタングステンとの合金の窒化物をスパッタ法により成膜した。高抵抗膜の膜厚は100nmとし、シート抵抗値は1×1011Ω/□程度であった。
【0047】
(工程3:導電性部材形成)
工程2で形成した高抵抗膜つきスペーサに、Cuの導電性部材22を形成した。導電性部材22をスペーサ7のリアプレート側端面に形成するため、図10に示すように、まず、成膜治具40によりスペーサ7を挟み込んだ。そして、成膜治具40からスペーサ7が所望の高さ突き出るように配置した状態で、スパッタ法によりCuを成膜した。成膜したCu膜のシート抵抗値は1×10Ω/□程度であった。
【0048】
(工程4:スペーサ固定、導電性部材への給電)
工程3で作製したスペーサ7を、リアプレート8に固定する。固定には、Agのフィラーとセラミックス粉が水ガラスに分散された導電性接着剤を用いた。リアプレート8のうち画像表示領域外の領域でスペーサ7を接着する部分に、不図示の配線を設け、外部電源である電位供給手段23、24から給電できるようにした。なお、リアプレート8とスペーサ7との画像領域内での接触部は、リアプレート8上に絶縁層20を設けることで絶縁した。
【0049】
(工程5 電子照射位置測定、導電性部材への給電)
上述のように作製したスペーサ7と、リアプレート8、フェースプレート1を用いて画像表示装置を形成した。まずは、導電性部材22への給電を、電位供給手段23、24ともに10Vとして、画像表示装置から画像を表示させ、電子照射位置を測定するカメラにより、フェースプレート上における電子の照射位置を撮影した。本実施例の測定結果は、図6に示すようになった。スペーサ近傍の電子の照射位置は、電位供給手段23側でスペーサ7に近づき(図6(a))、電位供給手段24側でスペーサ7から遠ざかっていた(図6(c))。そこで、電位供給手段23から8Vを、電位供給手段24から12Vを導電性部材22に印加し、スペーサ7の長手方向に沿って導電性部材22に電位勾配を形成した。その結果、L1は大きくなる一方、L2は小さくなり、L1とL2の差が小さくなった。これにより、画像表示装置の画質が向上した。
【0050】
(実施例2)
本実施例では、図8に示したように、導電性部材22をスペーサ7のリアプレート側端面ではなく、スペーサ7の側面に形成した。その他の構成については第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
工程1、工程2は実施例1と同様である。
【0052】
(工程3:導電性部材形成)
工程2で形成した高抵抗膜つきスペーサの側面に、酸化スズの微粒子を分散した溶液をインクジェット法により形成した。
【0053】
(工程4:スペーサ固定、導電性部材への給電)
工程3で作製したスペーサ7を、リアプレート8に固定する。固定には、Agのフィラーとセラミックス粉が水ガラスに分散された導電性接着剤を用いた。リアプレート8のうち画像表示領域外の領域でスペーサ7を接着する部分に、不図示の配線を設け、外部電源である電位供給手段23、24から導電性部材22に給電できるようにした。
【0054】
(工程5 電子照射位置測定、導電性部材への給電)
上述のように作製したスペーサ7と、リアプレート8、フェースプレート1を用いて画像表示装置を形成した。まずは、導電性部材22への給電を、電位供給手段23、24ともに400Vとして、画像表示装置から画像を表示させ、電子照射位置を測定するカメラにより、フェースプレート上における電子の照射位置を撮影した。本実施例の測定結果は、図6に示すようになった。スペーサ近傍の電子の照射位置は、電位供給手段23側でスペーサ7に近づき(図6(a))、電位供給手段24側でスペーサ7から遠ざかっていた(図6(c))。そこで、電位供給手段23から400Vを、電位供給手段24から600Vを導電性部材22に印加し、スペーサ7の長手方向に沿って導電性部材22に電位勾配を形成した。その結果、L1は大きくなる一方、L2は小さくなり、L1とL2の差が小さくなった。これにより、画像表示装置の画質が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】画像表示装置の構造の一例を示す斜視図である。
【図2】スペーサ近傍における画像表示装置の断面図である。
【図3】導電性部材の電位分布を示す図である。
【図4】スペーサ近傍の電位分布を示す図である。
【図5】スペーサ近傍の電位分布を示す図である。
【図6】画像表示領域内における電子の照射位置を示す図である。
【図7】第1の実施形態における導電性部材の電位分布を示す図である。
【図8】スペーサ近傍における画像表示装置の断面図である。
【図9】導電性部材の電位分布を示す図である。
【図10】導電性部材を形成する工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
1 フェースプレート
4 メタルバック
5 電子放出素子
7 スペーサ
8 リアプレート
11 画像表示領域
22 導電性部材
23、24 電位供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子放出素子を有するリアプレートと、
前記複数の電子放出素子から放出された電子を加速するアノード電極を有するフェースプレートと、
前記リアプレートと前記フェースプレートとの間に配置される板状のスペーサであって、該スペーサの長手方向に沿って形成される導電性部材を有するスペーサと、
前記複数の電子放出素子のうち第1の電子放出素子から放出された電子によって照射される前記フェースプレート上の位置から前記スペーサまでの距離と、該第1の電子放出素子に対して該スペーサの長手方向に配置される第2の電子放出素子から放出された電子によって照射される前記フェースプレート上の位置から該スペーサまでの距離との差を補償するように、前記導電性部材に該スペーサの長手方向に沿って電位勾配を形成する電位供給手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記リアプレートと対向する前記スペーサの面に、前記導電性部材が形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記スペーサは、その長手方向が画像表示領域を跨って配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−123500(P2010−123500A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298179(P2008−298179)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】